それは夏休みが終わったある日のこと…スペシャルオレンジは黒沼トレーナーに呼ばれていた。
「オレンジ、…半月後の阪神に出走登録をした。」
「それってつまり…」
「メイクデビューだ…気を抜くなよ?」
「はい!」
「それに向けてウイニングライブの練習も追加し、さらに坂路トレーニングも一本増やす…すぐに行け。」
「はいっ!よろしくお願いします!」
合図と共にスペシャルオレンジはターフへと足を向けて…今日もトレーニングに励む。
ーーー
翌日の教室…スペシャルオレンジは早速、キタサンブラックとサトノダイヤモンドへと話した。
「え?デビューするの?」
「うん。"本格化"がきて…身体も出来てきたからそろそろ…キタちゃんは?」
「あたしは…多分、来年になるかな。"本格化"は来てるけど…トレーナーにはまだだって言われているし。ダイヤちゃんはどうなの?」
「私はそもそも"本格化"もまだだから…早くても2人より1年は後になるかな…」
「そっか…オレンジちゃんはどこで走るの?」
「阪神だよ…セントウルSの日。5レース目に出走する予定。」
「セントウルSか…確か去年『グレープスカイ』さんが出走していたレースだよね。」
「一昨年もね…どっちも3着だったけど。」
「…」
突然にサトノダイヤモンドが黙ってしまった。
「ダイヤちゃん?」
「…オレンジちゃんが走るそのレース…サトノ家のウマ娘も出走するの。だから立場的にオレンジちゃんを応援するわけにいかないんだ…ごめんね。」
「うん、全然気にしなくていいよ。それにこっちも手を抜かないで走るだけだから。」
「うぅ…あたしは…あたしは…」
「焦らないでトレーナーの指示に従いなって…、来年デビューするのも珍しくないことでしょ?」
「どっちを応援しよう…」
「そこ!?」
「キタちゃんはサトノ家じゃないから普通にオレンジちゃんを応援していいからね?」
「オレンジがデビューか。僕もそろそろ…」
ーーー
場所は阪神レース場…スペシャルオレンジはそこで初めてトゥインクルシリーズのレースへと出走する。全員がゲートへと収まり…開かれた。
『スタートしました!
…上位人気のウマ娘たちが前に行きます…しかし、先頭を取ったのは10番人気のオレンジピークス!
サトノフラムが2番手、ディファースト、フィドゥーシア、スペシャルオレンジの3番争い。』
スペシャルオレンジはスタートを決めて、前の方から先頭を見る走りを行った。
『その後ろの集団、内にライムチェイサー、外からはコンコードとタイガーボスがきており残りは1200。
続いての中団にフォースフィールドとアクスワンダフル。
ハイイノベージョン下がったか。
アクアブルーパサー、ヤマニンマンドールと続き残り1000m。
2バ身開き、ジェネラルゴジップ、最後方はエンドオブジアース。
各ウマ娘が3,4コーナーへと入ります。』
「はっ…はっ…!よしっ!」
ダンッ
『オレンジピークス先頭だが…スペシャルオレンジ、仕掛けてきたか!
4番手から一気に先頭に立ってきた!
それを追うサトノフラムとフィドゥーシア。
最後の直線…スペシャルオレンジが抜け出した!』
「はあぁぁぁ!!」
『先頭はスペシャルオレンジ、後続を離しにかかる。
サトノフラムがそれを追う。
ヤマニンマンドールも外から追い込んでくる!
残り200!
スペシャルオレンジ、先頭のままだ!
サトノフラムがそれに食らいつく…しかし、スペシャルオレンジ!
スペシャルオレンジが1バ身の差を着けゴールイン!
『果実姉妹』スペシャルオレンジ、デビュー戦を見事に勝ちました!』
「…よしっ!」
………
ウイニングライブが終わり、黒沼トレーナーと合流としたスペシャルオレンジ。隣にはミホノブルボンもいた。
「…」
「お疲れ様ですオレンジさん。見事な勝利でした。」
「ブルボンさん、ありがとうございます。」
「…」
しかし、黒沼トレーナーは無言でスペシャルオレンジを見ているだけだ。
「トレーナー、どうかしましたか?」
「3、4コーナーからのロングスパート。あれは必要だったのか?」
「ー!」
「…マスター。オレンジさんは…」
「必要だったのか?」
「……ありませんでした。」
「なぜ仕掛けた。」
「直線で抜け出せるイメージが出来なくて…指示を守れなくてすみませんでした…」
「俺の指示を聞けないなら俺もお前の希望を聞かないぞ。」
「…はい。」
「…次は無い、嫌なら契約解除でもいい。今ならまだ他のトレーナーにも変えれるからな…ブルボン、後は頼んだ。」
黒沼トレーナーはその場を後にした。そして、スペシャルオレンジはその場でペタリと座り込んでしまった。
「…」
「オレンジさん。マスターは…その…」
「分かっていますよ。ケガの心配ですよね。」
「…」
「バナナ姉、ユズ姉…どちらもレース中のケガにより引退となった『果実姉妹』です。だから…契約解除って言ったのも…私にも同じ思いをして欲しくないって思うトレーナーの優しさなのでしょう…多分。」
「…」
「ブルボンさん、トレーナーに伝えてくだい。明日からもよろしくお願いします、と。」
「…承知しました。だ、そうですよマスター!!」
「…」
ミホノブルボンが大声で黒沼トレーナーが去った方へと叫んだ。
「ブルボンさん!?さすがに聞こえませんって…」
「私の自己満足です。後でまた報告するので問題ありません。では、トレセン学園へと帰りましょう。」
「はい…」
「…その前にオレンジさん。こちらを…」
落ち込んだスペシャルオレンジにミホノブルボンがあるものを渡す…缶ジュースだ。
「あっ!私の好きな…」
「私も気に入りました。ですので、これを飲んでから帰るといたしましょう。」カシュ
「いいですね!」カシュ
「改めてオレンジさん…お疲れ様でした。…乾杯です。」
「はい♪乾杯です!」
カンッ
「…」コンッ
そこには3つの缶を叩く音が響いた。
ーーー
『先頭はドラゴンヴァース、振り切ってゴールイン!
シュヴァルグランは際どく追い上げましたが僅かに届かずの2番手。』
「……クっ!!」
ストーリーのストックはここまでです。