スペシャルオレンジたちはキタサンブラックに呼ばれて、寮の食堂へと集まっていた。最後に両手いっぱいのお菓子を持ってきたキタサンブラックが現れると、辺りをキョロキョロ見渡した。
「…あれ?シュヴァルちゃんは?」
「来週のレースに出走するから遠慮するって…」
「私も月末にはデビュー戦だから…」
「キタちゃん、やっぱり今日のところは…」
「いやー、ここを借りれそうなの今日だけだったから。」
「そりゃ、そうでしょ…今日は凱旋門賞何だから。みんな、モニター室か自室にいるわよ。」
「……あぁ!!そうだった!ゴルシさんとジャスタさんが走るのにすっかり忘れてたーー!!」
キタサンブラックが頭を抱える。結果、お菓子の袋が落ちて辺りに散らばったので…慌てて拾う。
「キタちゃん…」
「タブレットあるから時間が来たらそれで見よっか…ん?マンゴー姉……はぁ!?見てよ、これ!マンゴー姉、現地にいるし!『ナカヤマフェスタ』と…誰だろ?」
LANEに反応し、スマホを見始めるスペシャルオレンジ…その写真をみんなに見せた。それはキングマンゴーと3人のウマ娘が一緒に取った写真だった。
「マンゴーさんの左にいるウマ娘って…G1を5勝した『ケープブランコ』さんだ!確か3年前にマンゴーさんと一緒に出走していたアイルランドのウマ娘でトゥインクルシリーズはもう引退してるけど…」
「ダイヤちゃん、詳しいね…」
「当然だよ!凱旋門賞だからね!」
「…」
対して、サトノクラウンの顔が青くなる。
「クラちゃん?」
「オレンジ、ダイヤ…その…キタサンも…うん。もう一人のウマ娘なんだけど…『フランケル』よ。」
「フランケル?」
「一昨年のWBRRで140ポンドを記録した世界最強のウマ娘。14戦13勝内G1を9勝で連対率100%…ほぼ全てのレースを圧勝した怪物よ!」
「へー…G1を9勝か。そんな凄いウマ娘とマンゴーさんってお友達なんだ。」
「凄いね!」
「…はぁ、どうしよ。この子たち、本当に意味が分かっているかしら?…いや、冷静に考えるとG1を17勝したキングマンゴーがおかしいのでは?」
楽しそうに会話をするキタサンブラックとサトノダイヤモンドらに対して大量の汗が流れだすサトノクラウン、そんな3人を余所にスペシャルオレンジはタブレットとにらめっこしていた。
「んー、タブレットがネットに…なかなか繋がらないな。」
「回線が混雑してるみたいね…」
「じゃあ、タブレットが見れるまで…オレンジちゃんのお祝いしようかな!」
「これって私のお祝いだったの!?」
「当然♪みんな、コップは持った?」
「「持ったわよ。」」
「待って!…私もオッケー。」
「じゃあ、オレンジちゃん…初勝利おめでとう!杯を乾かすと書いて…」
『乾杯!』
カランッ
4つのグラスがぶつかり、全員がグラスに入ったにんじんジュースを一気に飲む。そして、軽い祝勝会が始まった。
………
「それでそれで、スペ先輩が3000円分の商品券をシーザリオさんから……はっ!今何時?」
「嘘でしょ…凱旋門賞の出走時刻を過ぎてるわよ!オレンジ、タブレットは?」
「もう繋がってる!すぐに映すから!」
スペシャルオレンジがタブレットを操作して凱旋門賞のライブ映像を映す。既にレースは終盤…最後の長い直線へと入っていた。
「ゴルシさん!ジャスタさん!頑張れ!!」
「『ハープスター』さんが大外に回ったよ!」
「でもかなり後方ね…捉えることが出来るかしら?」
「ゴールドシップ…宝塚記念での伸びがない。」
『最内からトレヴが抜け出して先頭にたった!
それを後ろから追うジャスタウェイ!
大外からはハープスター!
ゴールドシップはまだ後方だ。
頑張れ日本のウマ娘たち!
しかし、先頭はトレヴ…トレヴが今、1着でゴールイン!
連覇達成!
日本ウマ娘3人の思いは届かず…!
キングマンゴーに続く2人目は今年も現れず…』
フランスのロンシャンレース場で行われた凱旋門賞…日本からは3人のウマ娘が参戦していたものの…勝利は出来なかった。
ーーー
翌日、スペシャルオレンジは黒沼トレーナーに呼び出されていた。そして、チーム部屋に入ると既に黒沼トレーナーとミホノブルボンが椅子へと座っており、スペシャルオレンジも座るように指示される。
「次はいきなり重賞出走…ですか?」
「あぁ。オレンジの実力なら十分に戦えると判断した。」
「私たちが推奨しますレースは『デイリー杯ジュニアS』です。あなたの適正は1600~2400m辺り、また左回りより右回りの動きがよく見えます。ですので現時点ではこのレースが最適だと思われます。そして結果次第では、年末に行われますG1レース『阪神JF』にも出走が可能かと。」
「メロン姉が勝ったレースで…そしてG1…むむ!」
「俺らで考えたプランだか…まだ未定の段階だ。オレンジの希望があれば聞くぞ。」
「分かりました。私が出走したいレースは…」
ーーー
『シュヴァルグラン、抜け出した!
外からアルバートドックが足を伸ばすが…セーフティーリード!
シュヴァルグラン、ゴールイン!!』
「…よし!」
ーーー
時は流れ、場所は東京レース場…
「『東京スポーツ杯ジュニアS』…"クラシックの登竜門"とも呼ばれる重賞G3レース。」
「どうした急に。」
「一昨年のダービーウマ娘『ディープブリランテ』に今年の皐月ウマ娘『イスラボニータ』などが勝利したレース。2着になったウマ娘でも、オークスを勝利した『ラウンドピーチ』、クラシック2冠を達成した『メイショウサムソン』、そして…史上7人目のクラシック3冠を達成した果実王『キングマンゴー』も出走していたレースだ。」
「この中からもクラシックの冠を勝ち取るウマ娘が出てくるかもしれないな。…やっぱり注目はラウンドピーチを母に、そしてキングマンゴーを姉に持つ『スペシャルオレンジ』だろうか。」
「デビューして勝利後のウマ娘たちが出走している中で重賞での実績があるのは1番人気の『アヴニールマルシェ』だけ。正直、誰に注目すればいいのか分からないところも面白い。」
「…来年のためにもここでの活躍をしっかりと目に焼き付けておかないとな!」
「クラちゃん!頑張ってー!」
「「頑張れー!!」」
「…僕はオレンジを応援するよ。キタサン、君は?」
「うぅ、どうしよう…どちらか1人だけなんて選べないよ…」
………
パドックが終わり、地下バ道…スペシャルオレンジとサトノクラウンが並んで歩いていた。
「あなたがいるとは思わなかったわ…オレンジ。」
「クラウンちゃん…私、負けないから!ここで勝って…ダービーウマ娘になるんだ!」
「それは私も同じよオレンジ。まずはクラシックの登竜門を乗りきって…サトノのジンクスを破ってやるわ!しゃっ!!」
「…クラウンちゃん、すごい気合い。」
そして、レースのファンファーレが響いた。
『…サトノクラウン、ゲートの中で興奮気味か…落ち着くのを待ちましょう。
最後に14番スワーヴジョージが収まり、全員ゲートイン完了!
…スタートしました!
ペガサスボス、いいスタートを切ったか。
しかし、ハナを取ったのはグリュイエール。』
ゲートが開き、各ウマ娘たちが飛び出した。スペシャルオレンジは出遅れはなく、前の集団へとついたのだ。
『外からマイネルシュバリエがハナを取りに一気にペースを上げてきます。
少し間が空いてアヴニールマルシェとスペシャルオレンジの上位人気ウマ娘2人。
グァンチャーレとジャストドゥイングが追走している。』
順位はそのまま向こう正面へと入る。
『後方はサトノクラウンとクラージュシチーとここも上位人気ウマ娘の2人。
その間を突こうとソールインパクト。
1バ身離れ…スワーヴジョージとエミネスクが続き…ディアコンチェルトが最後方。
800mの標識を通過!
先頭はマイネルシュバリエ!』
「ここから…仕掛ける!」
ダンッ
『ここでスペシャルオレンジが外から一気に先頭に立った!
スペシャルオレンジ、最後の直線へと入る!
他のウマ娘たちも仕掛けてきたが…スペシャルオレンジとの差は縮まるのか!
5バ身ほど離し…横一線だ!
残り400!
先頭はスペシャルオレンジ!』
「はあぁぁぁ!!」
「前が防がれ…けど、焦らない!焦らない……ここだっ!!」
ダンッ
『内からアヴニールマルシェが伸びる!
ソールインパクトも迫る。
ここで間を突いたサトノクラウン!
サトノクラウンだ!
サトノクラウンが抜け出した!
しかし、スペシャルオレンジが今ゴールイン!!
2着はサトノクラウンかアヴニールマルシェか。
勝ったのはスペシャルオレンジ。
母ラウンドピーチが…姉キングマンゴーが勝てなかったこのレースで…重賞初勝利です!!』
「おめでとうスペシャルオレンジ!!」
「流石は果実姉妹!これからも応援するからなー!」
「クラちゃん…」
「オレンジはもう重賞ウマ娘…」
「…凄いなオレンジちゃん。あたしもデビューして…ふふっ!」
たくさんの歓声が聞こえるなか…足を緩め、息を整え始めるスペシャルオレンジ。そんな彼女にサトノクラウンが歩みよってきた。
「…おめでとう、ピーチ。悔しいけど…私の完敗ね。」
「クラウンちゃん…まずは私の1勝だね。」
「えぇ…次は負けないわ!覚悟しなさい!」
「いや、私が勝つよ!」
そして、2人は笑顔で互いの拳を軽くぶつけあった。
ーーー
ウイニングライブが終わり、控え室に戻ると黒沼トレーナーとミホノブルボンが出迎えてくれた。
「お疲れですオレンジさん。重賞初勝利、おめでとうございます。」
「ありがとうございますブルボンさん。…トレーナー、その…今回の走りは…」
「…ロングスパートで早めに先頭とったはいいが…最後はかなり垂れていた。スタミナがない今、あまりするべき走りでは無い。」
「そうですか…」しゅん
「だが…それにより集団に掴まることは無かった。結果を見れば今回の走りで正解だ…オレンジ、よくやった。」
「ーー!ありがとうございます!!」
黒沼トレーナーからの言葉により、顔がパアッと明るくなるスペシャルオレンジ。ミホノブルボンがカレンダーを拡げながらスペシャルオレンジへとペンを向ける。
「では次走の目標を考えましょう。今のあなたであれば全てのレースが選択肢になります。私とマスターとで考えた『阪神JF』、私やキングマンゴーさんが勝利した『朝日杯FS』、クラシックにて『皐月賞』を考えるのであれば『ホープフルS』…また、クラシック級のG1レースである『桜花賞』や『皐月賞』へと直行するのも可能かと思われます。」
「うーん、贅沢だと分かっているのですが…悩みますね…。とりあえず、『東京優駿』には出走したいです。」
「…年内の重賞はお前のトレーニングでの動きを見て決める。だが、今週はトレーニングは無しだ…ゆっくり休んで考えろ。次のミーティングで答えを聞く。」
「はい!!」
「ブルボン、オレンジ…俺の奢りだ。うまい焼き肉屋に連れていってやる。今日じゃなくてもいいが…この後は時間はあるか?」
「問題ありませんマスター。」
「私もです!!ありがとうございますトレーナー!」
「…オレンジ、好きなだけ食え。」
「はいっ!」
翌日の学内で…太り気味になったスペシャルオレンジの姿があった。
次回は来月に投稿出来れば…