フリ魔転生!~穏やかに暮らしたい~   作:如月SQ

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タイトル変えて見ました!長かったので。


リーちゃん

「私は魔法が大好きでね」

 

「彼の『腐敗の賢老クヴァール』が人生の大半を掛けて『人を殺す魔法』を開発したように、我々魔族は長い寿命の中で一つの魔法の研究に生涯を捧げる……」

 

「年月を掛けて日々探求し、積み重ねていく。10年後の魔法は今よりもっと優れたものになり、我々の力をより強固なものとする」

 

「最近……その好きの中にレーベと共に行う農業も含まれるようになった。農業も同じだ、年月を掛けて、様々な試行錯誤を積み重ねていく」

 

「そうして出来た作物が、我々の生活を豊かにしていく。お前達人間にも行き渡る予定すらあった。レーベの、どうせならばもっと多くの人にという要望に応える形でな」

 

「だが、それをお前達は裏切った。レーベを悲しませた。このような感情は初めてだ。お前が領主でなければ、とうに殺していただろう」

 

「……話が逸れたか。この街の防護結界、あれは素晴らしいものだ。研鑽を積んできた筈の今の魔法を未だに凌駕している。だがそれは同時に、大魔法使いフランメ……1000年前の天才の魔法を未だに越えられていない事も意味している」

 

「……天才は嫌いだ、積み重ねたものの美しさがない」

 

「代々結界の管理を任されてるのは、貴方がたグラナト家だ。魔族の私達がこの街に入れたという事は、操作する魔法が存在する筈……それを教えろ」

 

「…………」

 

「……だろうな。少し、時間を置こう。泣き疲れて眠ってしまったレーベも起きる頃だろう……食事にでも……」

 

「随分と……奥方には甘いんだな?」

 

「……勘違いしているようだが、私とレーベの関係は飽くまでもお前達人類を油断させる為のものだ。そこに私自身の感情は――」

 

「そうか?ならば彼女が嫌な思いをしようと悲しもうと、関係ない筈だ。にも関わらず、儂を連れてわざわざ別室で痛め付ける……彼女を気遣っているようにしか見えんな?」

 

「……随分饒舌だな」

 

「何故それだけ他者を思う事が出来て、他者を思う心が理解出来て、人類に牙を剥く?この街の中にどれだけの人間が思い合いながら暮らしていると思う。貴様らの行動で、どれだけの人間が悲しみ苦しむか、わからないのか?」

 

「……黙れ」

 

「儂にはまるで、恋を覚えたての小僧が、その感情に振り回されているように見える。はっ、長き時を魔法の研鑽に捧げてきた魔族の姿かそれが?」

 

「黙れ!」

 

ガッ!

 

「……ペッ……反吐が出る。クソガキが」

 

「っ……少し、時間を置かせて貰う。よく考える事だ。どちらにせよ……吐かねば待ってるのは拷問の続きだけだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リュー様!」

 

「レーベ……か」

 

 レーベが目を覚ました時、ガラスが割れるような音が響き渡っていた。

 慌ててその音がした部屋へと飛び込めば、壁に背を預けたリュグナーが脇腹を抉られ、血を流していた。

 慌てて駆け寄り、リュグナーの側で膝をつく。

 割れた窓ガラスからは何者かが飛び出していき、リーニエが窓に向かって身構えていた。

 

「あわわわ、血が……!リュー様……!」

 

 先刻、グラナト伯爵の元に助けの手が差し伸べられていた。

 赤髪の、昼間に捕まった魔法使いの仲間らしき冒険者……。

 その男はもう一人の紫髪の女と上手く連携を取り、リーニエの魔力探知を掻い潜り、リュグナーに痛手を負わせた。

 致命傷ではなかったものの、まんまとグラナト伯爵を奪われ、逃げられてしまっていた。

 

 リュグナーの左腕は吹き飛び、左脇腹は抉れ……傍目には致命傷だが、血を操る魔法を使うリュグナーにとっては問題ではない。

 それよりも、逃走を許してしまった事のほうが面倒であった。

 心配そうに顔を歪めるレーベの頭に手を乗せ、リュグナーは安心させるように小さく笑みを浮かべた。

 

「大丈夫だ、直に血は止まる……

 リーニエ、止血が終わり次第追うぞ。お前は戦士の方をやれ。

 あの二人には私の血が付着している。見失う事はない」

 

 リーニエはその言葉に小さく首を振った。

 その視線は、顔を歪めたレーベを捉えている。

 

「リュグナー様はレーベといてあげてよ。魔法使いも私が始末……」

 

「お前があの魔法を食らっていたら死んでいた」

 

 その言葉に、リーニエは口を閉ざし、レーベの肩が震えた。

 

「魔族を殺す事に特化させた魔法……最早『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』とは呼べんな……。

 レーベ、お前も気を付けろ、分身体でもどうなるかわからん」

 

「はい……でも、リュー様はそんなのを受けて、大丈夫なんですか……?」

 

「どうにか……いや、そうか、私は昔この魔法を受けた事がある……。

 思い返せば、あの小娘の所作には何処か覚えがあった」

 

ズキン

 

「っ……?」

 

 リュグナーが何かを思い出すように、言葉を紡いでいく。

 そんな中で、その言葉を聞いていたレーベに、不意の頭痛が走った。

 レーベは思わず顔をしかめ、頭に手を添えた。

 

「そうか……思い出した()()()()()だ」

 

ズキンッ

 

「ッ……!」

 

 更に強い頭痛がレーベを襲う。

 

「人類の『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の研究解析に大きく貢献し……歴史上で最も多くの魔族を葬り去った魔法使い……」

 

ズキンッズキンッ!

 

「いっ……!っくぅっ…………!」

 

 更に強い頭痛がレーベを襲い、その表情は酷く苦しげに歪んだ。

 突然の事に理由も原因もわからず、レーベは呻くしか出来ない。

 ……それでも、リュグナーは最後まで言葉を紡いだ。

 

「『葬送のフリーレン』」

 

ズグンッ!

 

 その言葉と共に、レーベの頭に耐え難い程の鋭い痛みが走った。

 

「……私の嫌いな天才だ」

 

プツッ

 

ドサッ

 

 同時にレーベは気を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

 

「「レーベ!」」

 

 悲痛な二人の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーニエは、斧を構えて目を細める。

 目の前には赤髪の男……シュタルクが同じように斧を構えて此方を驚いたように見つめていた。

 

 レーベが倒れた後、リュグナーとリーニエの二人は暫し狼狽え、迷った。

 暫く悩んだが、結局はレーベを貴賓室で寝かせ、逃げて行った奴等の後を二人で追う事にした。

 リーニエは一人で充分だと思っていたが、負ける事はないだろうが、万全を期すというリュグナーの判断に従う形だ。

 レーベは、安らかとは言い難い表情で眠っていた。

 

『ドラートが死んだ事がよっぽど辛かったのだろう。

 ……リーニエ、決して油断するな。

 生きて、レーベと共にアウラ様の所に帰るぞ』

 

 レーベの頭を撫でながら、リーニエを真っ直ぐ見つめて、リュグナーは言う。

 それに力強く頷き、リーニエもレーベの頭を撫でた。

 

『すぐに終わらせてくる。

 帰ったら、また美味しいお菓子作ってね』

 

 そして二人は逃げた二人、赤髪の男と紫髪の女を発見した。

 城壁にいた二人を、先刻の不意打ちの返礼として、魔力を隠蔽し不意打ち。

 男を城壁外へと弾き飛ばし、女をリュグナーが壁に張り付け。

 見事に分断する事に成功していた。

 

 だが、リュグナーの方が意外な事に旗色が悪そうであった。

 拘束を解いた女の攻撃は苛烈で、リュグナーは対応に手一杯。

 それを横目で確認したリーニエは、しぶとく立ち上がるシュタルクを弾き飛ばした。

 

「リュグナー様!少し待ってて。今、片付ける!」

 

 そう宣言し、シュタルクへと駆け寄る。

 だが、リーニエは勝利を確信していた。

 シュタルクの動き、斧捌き。

 そこから見て取れる情報からして、敗北はない。

 

「その斧捌き……どういう事だ。それは師匠の技だ」

 

 シュタルクの狼狽しながら呟いたその言葉が、それを裏付けていた。

 

「やっぱり思った通り……それなら、私の勝ちは揺るがない」

 

ガイィンッ!

 

「くっ!」

 

 リーニエの振るう斧を、シュタルクはどうにか受け流す。

 体勢の崩れた所で手に持つ斧を消し、剣を出して素早く切りかかった。

 

「剣!?」

 

 不安定な姿勢ながらも体を反らし、どうにかと言った様子で避け続けるシュタルクに対して、リーニエは語る。

 

「私は魔力を読み取るのが得意でさ。この剣も……」

 

 体を低くして、距離を取ろうとするシュタルクに対し、剣を直ぐ様槍に変えて追撃。

 

「槍も」

 

 斧の柄で受け流されたのを見た瞬間にそれを消し、突然負荷が消えた事でつんのめったシュタルクへ一気に詰め寄る。

 そうして、両逆手の短剣へと変えて、絶え間無く斬撃を浴びせた。

 

「短剣も……」

 

 シュタルクは急所への攻撃は防ぎつつも、あちこちを切りつけられ、苦悶の声を漏らす。

 

「っぐう……っらぁっ!」

 

 多少の傷を気にすること無く大きく振るわれた斧を、リーニエはふわりと後ろに下がって避ける。

 シュタルクは体のあちこちから血を流すも、その傷はいずれも浅い。

 

「人が動いている時の魔力を見て覚えて……模倣出来るんだよね。

 ……しかし呆れた頑丈さだ。やっぱり……これか」

 

 リーニエは改めて斧を出し、構える。

 その構えは奇しくも似たような構え……。

 

「そうか……やっぱり」

 

 狼狽するシュタルクが、何処か精細の欠いた動きで向かってくるのを、リーニエは姿勢を下げ、その下に滑り込むように潜り込んだ。

 

「そう……私は戦士アイゼンの動きを模倣している」

 

ドォンッ!

 

 そのまま大きく切り上げ、シュタルクの体が宙を舞う。

 

「私が以前見た、最強の戦士の動きだ。

 ……こんな偶然あるんだね、運命ってのは、面白い。

 でも、それも終わり……漸く()()()か……」

 

ドシャッ

 

 力無く地面に倒れたシュタルクを見下ろし、リーニエは小さく息を吐く。

 そして、立ち上がらないのを見て、踵を返した。

 

「急がないと……リュグナー様に怒られちゃう」




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