フリ魔転生!~穏やかに暮らしたい~   作:如月SQ

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リュー様

「まったく師匠め……変な理論押し付けやがって……。

 頭まで筋肉で出来てんじゃねぇのか……」

 

 立ち去ろうとするリーニエを、呼び止めるような形でシュタルクは立ち上がる。

 それに呆れたように少し目を細めて、リーニエは顔だけ振り向いた。

 

「大人しく寝てれば良かったのに……もう負けたんだから」

 

「……俺はまだ立っている」

 

 シュタルクの言葉に、リーニエは少し目を見開いた。

 

「それに、思い出したんだ。師匠の技はもっと重かった」

 

 ボロボロの体で、血を流しながら、俯いて。

 けれど確かな確信を持ってシュタルクは語る。

 

「やっぱりお前のはただの真似事だ」

 

 リーニエはその言葉に微かな苛立ちを感じた。

 これだけボロ負けしておいて?

 此方には攻撃が掠りもしていないのに?

 

「なら、その真似事で引導を渡してあげよう」

 

 苛立ちのまま、リーニエは斧を構え、魔法を発動する。

 

「『模倣する魔法(エアファーゼン)』!」

 

 姿勢を低く、弾かれるように飛び出し、目の前の男を切り捨てる。

 何をしようと対応して、必ず目にものを見せてやる。

 その思いで近接し……そして拍子抜けしてしまう。

 

(大振り……防御もなし。血迷ったな)

 

 ただただ大きく振りかぶったシュタルクの体は隙だらけ……。

 先程までの戦いは、あの言葉はなんだったのだろうか。

 所詮最後に負け惜しみを口に出しただけかと、微かな呆れを滲ませながら、リーニエはシュタルクのがら空きの胴体へと、斧を叩き込んだ。

 

ブシュッ!

 

 血が吹き出し、リーニエの眼前を赤く染め……。

 

「相討ち覚悟だったのに、ビビッて損したぜ」

 

 それだけだった。

 リーニエの斧はシュタルクの腹を切り裂き、血は吹き出た。

 だが、そこまでだった。

 それ以上リーニエの斧は進まず、真っ二つにするつもりで放った一撃は、シュタルクの体を1/3も断つ事が出来ず、止まってしまった。

 

 リーニエはその現実を信じられず、大きく瞳が揺れた。

 

「やっぱり……全然重たくねぇや」

 

 そして、固まるリーニエに、シュタルクの最期の一撃が振り下ろされる。

 

「『閃天撃』」

 

 上から全力で振り下ろされた一撃は、リーニエの肩からその体を容易く切り裂いた。

 

「あ……」

 

 驚愕に目を見開くリーニエの体は、切断面から急速に塵と化していく。

 あっという間にそれはリーニエの体全体に行き渡っていった。

 最期に何か残す事もなく、リーニエの体はそのまま塵と化してしまったのだった。

 

「リーニエ!」

 

 それを遠くから感じ取ってしまったリュグナーの悲痛な声が、リーニエが最期に聞こえた音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、リーニエがやられた事に一瞬気取られてしまったリュグナー、それによって此方の決着もついてしまった。

 今まで集中して対応する事によって、どうにか対処していたフェルンの魔法。

 最中に一瞬、ほんの一瞬気を取られてしまった事。

 それがリュグナーの敗因となった。

 

「しまっ……」

 

「『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』」

 

 フェルンが放った一条の光線が、リュグナーの血の防御を掻い潜り、砕き、左胸を穿った。

 信じられない思いで目を見開くリュグナーに対して、フェルンは油断なく、静かな面持ちで眺めていた。

 

 リュグナーはどうにか血を止めようとするも、心臓を撃ち抜かれてしまっていては流石に無理だった。

 城壁に背を預け、そのまま力なくずり落ちる。

 抉れた体から溢れる血が、城壁を濡らした。

 

「血が止まらん……ここまで、か」

 

「これで貴方達の計画は失敗です」

 

 リュグナーの目の前に降り立ったフェルンは、静かな口調で言い放ち、杖を向ける。

 それに対してリュグナーは諦めたように俯いた。

 

「……そうだな。だが、フリーレンは無事では済むまい。

 奴は今頃アウラ様と戦っている筈だ……。

 前回は勇者一行のせいで撤退を余儀無くされたが、今はもう彼女を守る勇者達は存在しない。

 ……確かにフリーレンは我らの脅威だ……だが、魔力はアウラ様に遠く及ばず……。

 正面から戦えば、フリーレンは必ず負ける」

 

 それでも、不敵に笑いながらリュグナーは語る。

 結局の所、アウラさえいれば負けはないと。

 フリーレンは負け、いずれこの街は滅ぼされるのだと。

 そう勝ち誇っていた。

 

「なら、フリーレン様が勝ちますね」

 

 だが、それをフェルンは切って捨てる。

 

「あの人は魔族と正面から戦うような真似はしません。

 必ずアウラを欺いて倒します」

 

 その確信めいた言い方に、リュグナーの片眉が吊り上がった。

 

「なに……?馬鹿な、いつだって奴は、正面から我らを……」

 

 解せぬその言い分に、死の間際、リュグナーの頭が高速で回る。

 そもそも何故この小娘は私を押し切る事が出来たのか?

 攻撃は脅威だった。早く、正確で。

 だがそれでも、事前に感じた魔力量からすれば、あれ程の飽和攻撃を繰り返せば、先に魔力が尽きる筈……。

 まさか。

 そこまで考え、弾き出された答えに、驚きに目を見開いた。

 

「そうか、そう言う事か。フリーレンも、そうなんだな……?」

 

 リュグナーの問いに、フェルンは何を問いかけているのか察したのだろう、言葉もなく頷いた。

 

「……呆れたものだ、それ程の魔力制御を常にだと……?

 正気の沙汰とは思えん。……フリーレンの本気の魔力は、どれ程のものなのだ……?アウラ様を上回っているのか?」

 

「私もちゃんと見たことはありません。ですが、フリーレン様ならば必ずアウラを倒すと私は信じているのです」

 

「くくっ……そう、か」

 

 信じる、か。

 下らない、という言葉は口から出る事はなかった。

 リュグナーの傷口が、ボロリと塵となりほどけ始めた。

 

 そんな時だった。

 

「リュー、様……」

 

 いつの間にか、リュグナーの隣にはレーベが座っていた。

 フェルンがぎょっと目を見開き、思わず杖を向ける。

 ちり、と魔力が集うのを見て、リュグナーは思わずと言った様子で口を開く。

 

「やめろ小娘!レーベに手を出すな!」

 

 そんな、常に冷静な態度を崩さなかったリュグナーの文字通り血を吐くような叫びに、フェルンの動きが止まり、その瞳が揺れた。

 あるいは……その言葉に込められた魔族らしからぬ感情の強さに、動揺してしまったのかもしれない。

 

ポロリ

 

 血を吐くリュグナーの姿を見たレーベの瞳から、大粒の涙が溢れる。

 

「リーちゃんも……死んじゃったんですね……。

 リュー様も、もう助からないんですか……?」

 

「ああ……すまないな。もう、守れない」

 

 震える右手を伸ばし、レーベの頬を撫でる。

 親指でレーベの涙を拭い、小さな笑みを浮かべた。

 

「お前は、どうにかこの街から出て、アウラ様の所に……」

 

 そこまで言って、リュグナーは一度言葉を切る。

 

「いや……何処でもいい、逃げろ。兎に角生きるんだレーベ」

 

「はい……リュー様ぁ……」

 

 その華奢な体を抱き寄せ、リュグナーはその温もりに目を瞑る。

 自らの背中に回される腕が酷く心地よかった。

 

 ああ、なんて。

 人殺しの猛獣にしては。

 上等な最期だろうか。

 

「……殺すがいい、小娘……」

 

 そう呟いたリュグナーは、レーベを抱き締め、その頭を優しく撫でた。

 その表情は死の間際だと言うのに、不思議と満たされていた。

 

「っ………!」

 

 フェルンは数瞬の思巡の後、振り払うようにその杖を構え直す。

 そして……そこから巨大な光線が放たれた。

 直進する光線はいとも容易くそのまま、レーベとリュグナーを飲み込んだ。

 

「レ――」

 

ドゴオンッ!

 

 もうもうと煙が舞い上がり、やがて治まった時、そこには何も存在していなかった。

 フェルンはほっと息を吐き、杖を下ろした。

 リュグナーに貫かれた肩を押さえ、顔をしかめる。

 その表情に浮かんだ苦い感情は、果たして傷の痛みからなのだろうか。

 それは、フェルンにしかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レーベ……私、死んじゃった……」

 

「そう、ですね……」

 

「やだなぁ……もっと、美味しいもの……食べたかった……」

 

「私も、リーちゃんともっといたかったです」

 

「……ねえ、私どうなるの?死ぬってなに?」

 

「……わかりません」

 

「もう二度と目が覚めないの?眠るのとは違うの?」

 

「…………」

 

「私……どうなるの……?」

 

「……死ぬってのは、そういうものなんです」

 

「やだ、死にたくないよ、レーベ……。私、まだ皆と一緒にいたいよ。

 皆の言うこともっときくし、もっと農作業手伝う。

 まだまだ、皆と一緒に…………」

 

「大丈夫、ですよ……大丈夫。ずっと、一緒です」

 

「本当?本当に?レーベと一緒?」

 

「ええ……ずっと、一緒です」

 

「そっ……か……それ、なら…………良かっ――」




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