フリ魔転生!~穏やかに暮らしたい~   作:如月SQ

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わあ、お気に入りがもう100件越えた!?
ありがとうございます、嬉しいです!
評価もいっぱいついてて……ま、まぁ低評価もついちゃってますが……。
一言つき☆1評価の内容が「.」なのは……なんなのでしょうか。
何か意味があるのでしょうかね。


魔族食堂

「さて!アーちゃん達お腹空いてるみたいなので、まずはごはんにしましょう!

 丁度お昼時……トマトだけでは足りませんよね?」

 

 ちら、とアウラが空を見上げれば太陽は真上にある。

 確かにトマトは美味しかったが、確かにこれ一つでは足りない。

 空腹のままでかなりの距離を移動した為に、むしろ空腹が増した感覚すらある。

 

「……そうね。レーベ、私達の為にお昼ごはんを作りなさい」

 

キィイイイイイン

 

「……はい!わかりました!」

 

 もしや服従出来ていないのでは?という疑惑が頭を過り、試す意味で、アウラは自身の魔法を意識して命令を行った。

 その結果、一瞬硬直したレーベは一度無表情となった後、元気よく返事をして踵を返す。

 その手応えは今まで何度も感じた事のある、『服従させる魔法(アゼリューゼ)』が正しく機能していると判断出来るものだった。

 その事実にアウラは胸を撫で下ろすも……むしろ疑問が増えてしまっていた。

 

「(間違いなく服従に成功している……なのになんであんなに自由なのかしら……?)」

 

 確かに自身の魔法は強い意志を持つ相手だと抵抗され、完全に機能しない事もある。

 それでも強く命令すれば、それを拒否する事は出来ない筈なのだ。

 長年の経験から、アウラは自身の魔法を正しく把握している。

 様々なパターンを試し、活用方法を見出だし、自らの魔法を使いこなしているアウラにとって……彼女の自由さは初めての経験だった。

 

「アウラ様、宜しいのですか?」

 

 難しい顔をして頭を捻るアウラに気付いたのだろう、リュグナーがトマトの最後の一切を飲み込み、その顔を覗き込んだ。

 

「……大丈夫よ。『服従させる魔法(アゼリューゼ)』は完璧に機能してる。

 彼女を取り入れる事には成功してるの。何も問題はないわ」

 

「いえ、そうではなく……リーニエとドラートはもう、あの魔族の後を追って行ってしまいましたが……行かなくて宜しいのですか?と」

 

「…………」

 

 きょろりと辺りを見回せばリーニエとドラートの姿は既になく、自分とリュグナー、二人の姿しか見受けられなかった。

 確かに最近まともに食べさせてあげれなかったし、あのトマトは美味しかった。

 だからと言ってまさか自らの主を置いていく配下がいるとは思わなかった。

 

「……なんなのよ!」

 

ぺしっ

 

 手の中に残ったトマトのへたを地面に投げつけ、アウラはぷりぷりしながらレーベが消えていった方向、家らしき場所へと足を進めるのだった。

 その後を、リュグナーは静かに追っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあさ、まずはサラダ!トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼですよ!

 スライスしたチーズとトマトを、同時にお食べになってください!

 このチーズもうちの牛さんのお乳から作ったんですよー」

 

 まずは、とレーベが用意したのは、トマトと真っ白いチーズがスライスされ、交互に折り重なっているもの。

 その上には黄色い液体がかけられ、黒い粒々があちこちに散らばっていた。

 

「これは、油か?……本当に食えるのか?」

 

 家の外に用意された四人がけのテーブルの上に乗せられた皿、そこに乗っているものに対して、ドラートは怪訝な表情を浮かべた。

 ドラートにとって、油といえば火攻めの時などに使ったり使われたりするもので、あまり食べるという感覚はなかった。

 

「食べれますよぉ、この油もこの農場で採れたオリーブオイルなので、とっても美味しいですよ!」

 

「はむっ……」

 

 警戒するドラートを後目に、リーニエは言われた通りにそのチーズとトマトを同時に口に放り込む。

 もぐもぐと咀嚼し……そしてその眠たげな瞳をカッと見開いた。

 

「んーっ!」

 

「美味しいですか?」

 

「んっ!んっ!」

 

 魔族らしからぬキラキラと輝く瞳で、コクコクと頷くリーニエに、レーベは心底嬉しそうに笑みを浮かべた。

 その様子を見たドラートは意を決して、トマトとチーズをフォークに突き刺し、自らの口へと運ぶ。

 怪訝な表情を浮かべたままではあるが……微かに期待の混じった表情であった。

 

もぐ

 

 そしてそれを噛み締めた時、その表情は驚愕に彩られた。

 まずドラートが感じたのは油の香りだ。

 だが、鼻にへばりつくような粘っこい香りではなく、爽やかな香りだ。

 次いで感じるのが濃厚なのに癖のないチーズの旨味と、トマトの酸味だった。

 先程の、そこらの果物以上に甘かったトマトとはまた違い、酸味が強いトマトを、まろやかなチーズが包み込む。

 ほのかな塩気と、鼻を抜ける豊かで爽やかな香りが堪らない。

 チーズもトマトも油も、それぞれ単体ではそこまで美味しいものではない。

 だが、それを同時に口の中で咀嚼する事で、その美味しさほ何倍にも跳ね上がっていた。

 

「……美味い」

 

 気付けば口からはそんな言葉が飛び出していて……。

 レーベは心底嬉しそうに、そんなドラートを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お次はコーンスープですよー!

 あれ、アーちゃん、遅かったですね、何してたんですか?」

 

「……はぁ……」

 

 スープ皿を抱えて家から出てきたレーベは、首を傾げる。

 外に用意された席について先んじて食事をしていた二人、リーニエとドラートは、頭にたんこぶをつけてテーブルに突っ伏していた。

 そんな中で放たれたあまりにも呑気なレーベの言葉に、アウラは最早何も言わずタメ息を吐いた。

 その反応に逆方向に首を傾げるレーベ。

 けれど、スープが冷めてしまっては勿体無い。

 疑問はあれど、レーベはそれぞれの前に湯気の立ち上る黄色い液体の入ったスープ皿を置いていく。

 

「暖かくて美味しいですよー。あと今パンが焼けるので、お手製のハムも用意しますねー」

 

 レーベはそう言い残し、再度家の中へと入っていく。

 それを見送ったアウラは、ちら、とつい先程折檻を与えた配下の二人の様子を伺った。

 主である自分を放っておくなんて……と頭に拳骨を落としたのだけれど……。

 

ずずずず

 

 リーニエは既に復活し、スープ皿を両手で抱え、スープを啜っていた。

 

「(この子、こんなにも図太かったかしら……?)」

 

 アウラは内心そう嘆きつつも、大事な可愛い配下である事も変わりはない。

 お腹を空かせ過ぎてしまったのだろう、そう思えば自分の責任もあるのかもしれない。

 

「(なら、これ以上は水に流しておくべきね……)」

 

 広い心で許してあげよう、そう自分に言い聞かせてアウラはリーニエから視線を外した。

 そして自然と視線が吸い寄せられるのは、芳しい香りを放つ黄色いスープ。

 とろみのあるスープの入った皿に、アウラはそっと手を添えた。

 程好い暖かさが手に伝わってきて、その香りが鼻腔をうつ。

 トマトを食べたとはいえ、まだまだ空腹。

 テーブルにある空の皿が気になるものの、まずはこれを、と備え付けられていたスプーンを手に取った。

 

「ふん……トマトは美味しかったけど、これはどうかしらね」

 

 鼻を鳴らしてそう呟き、スプーンにそっと掬う。

 そして、口へと運び……。

 

「……ほぅっ……」

 

 その芳醇な味わいに、アウラは呆けた声を漏らした。

 飲み込んだ後、アウラは思わず唇に舌を這わせた。

 丁寧に丁寧に濾されたのであろう、とうもろこしの旨味はそのままに、滑らかな舌触りだった。

 魔王軍にいた頃に食べていた食事も美味しかったが……段違いである。

 アウラはそのまま無心で一口、また一口とそのコーンスープを口に運び続けていった。

 

「あらっ、皆さんスープ気に入ってくださったみたいですね!おかわりいりますか?」

 

「はっ」

 

 アウラが正気に戻った時、目の前の皿は空であった。

 我を忘れて夢中になっていた事に気付き、アウラは羞恥で顔を赤くする。

 周りの配下の様子をちら、と確認すれば、リュグナーは上品に口元を布で拭き、ドラートはじっとレーベを見つめて。

 そしてリーニエは。

 

「……いい匂い」

 

 すんすんと鼻を鳴らしていた。

 見ればレーベの右手には籠に入った湯気の立ち上るいくつものパン、左手の皿には巨大な塊のハムが鎮座していた。

 その香ばしい香りに、アウラの咥内に無意識に唾が分泌されていく。

 

「うふふ、いっぱい食べてくださいね。それで、スープおかわりおりますか?」

 

「いる!」

 

「……もう一杯飲みたいかな」

 

「頂きます」

 

 各々が返事する中、目の前に置かれるパンとハム……。

 これもきっと美味しい……でも、今飲んだスープも、もう少し飲みたい。

 そう考えるも、プライドが少し邪魔をする。

 

「(けれど、私は500年を生きた大魔族よ……こんな所でがっつくようなみっともない真似は……ここは我慢して……)」

 

 ごくりと生唾を飲み込みつつ、ぐっと我慢する、そのつもりであった。

 

「アーちゃんはコーンスープ、もういりませんか?」

 

「頂くわ!」

 

 改めて聞かれた時、アウラは咄嗟に元気よく返事をしてしまった。

 気付いた時には配下三人の視線が向けられていて……。

 その視線に耐えられす、赤面して俯くのだった。

 

「うふふふ♪今スープを注いできますので、もう少しお待ちくださいね♪」

 

 優しい笑みを浮かべたレーベは機嫌良さそうに、スープ皿を抱えてその場を後にする。

 

 再び四人だけとなった気まずい空気の流れる空間では、赤面したまま俯くアウラと、顔を見合わせるリュグナーとドラート。

 そして我関せず、パンをもしゃもしゃと食べるリーニエという、なんとも混沌とした空間となっていた。

 

「美味しい……」

 

 嬉しそうなリーニエの声だけが響いていた。

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