フリ魔転生!~穏やかに暮らしたい~   作:如月SQ

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魔族農場

 ふふん、皆さん美味しく食べて下さったみたいです!

 空になった皿や籠を見ると、つい頬が吊り上がってしまいますね!

 さて……では後はここを引き払う準備をしていくだけでしたね。

 何せこれから私はアーちゃんの拠点で農場を改めて作らなければいけませんから!

 とはいえ……作物だけですかねぇ、持っていけるのは。

 私の自慢の作物ちゃん達は種さえ持っていけばいいですが、牛さん達は持っていけませんからねぇ……。

 

「ふぅ……ところでレーベ、準備が必要って言ってたけど、どのくらいで行けるのかしら?」

 

 満足そうにお腹を撫でるアーちゃん、その口元にパンクズがついていたので、然り気無くほろってあげます。

 それに他の皆は気付いていたようですが、見て見ぬふりをしてあげるようです。

 

「んー、そうですねぇ、今いる牛さんを始めとした家畜さん達をある程度加工した後は、まだ若い子達を近所の農家にでも運んで……もう少しで収穫期の作物がありますので、それらを収穫して種を取って……果樹園は勿体無いですが、柵なんかだけ取り払って自然に返しますかね……それら諸々の作業で……」

 

 うーん、種の乾燥させる期間なんかもありますから……でもアーちゃんも急いでるみたいですし、短めに見積もって……。

 

「三、四ヶ月……くらいでしょうかね……あ、その間のご飯は贅沢に行きますよー。

 なんせ食べ頃の家畜さん達がいっぱいですし、四人で食べてもなくならないくらいの収穫は見込めますから!

 近くの村に卸してお金も貰えますし、何か不足があっても買い揃えられると思います!」

 

 安心して貰えるように言うと、アーちゃん達は成る程、と頷き、それぞれ顔を見合わせてました。

 

「わかったわ、リュグナー、リーニエ、ドラート。貴方達も手伝ってあげなさい」

 

「わかりました」

 

「わかった」

 

「わかりました」

 

 おお、これは心強いですね!

 元々私一人で切り盛りしていますし、特に不自由はありませんでしたが……人手があるに越したことはありませんからね!

 まぁ元々人手はいくらでもあるようなものですが。

 

「ありがたいです!ですが数日はただ見てて貰って大丈夫ですよ!

 私がする仕事を見て、どんな事をするのか把握して貰って……それからで大丈夫ですから!

 さて、それじゃ私は作業に入りますので、好きに農場を見て回ってください!

 作物を取りつくしたり、根元なんかを折ったりしなければ、実ってる作物も自由に食べてもいいですからね!」

 

 リュー様達はその言葉に、しっかりと頷いて下さいました!

 

「それでは!」

 

 さあ、作業に取り掛かりましょう!

 まずは、家畜さん達に餌やりです!

 

 ……はて、そういえば何か忘れているような。

 アーちゃん達がくる前、何かに悩んでいたような……。

 うーん、うーん……なんでしたっけ……?

 思い出せませんね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュグナーはまず周囲の地形、地理を把握する為にゆっくりと農場を見て回る事にした。

 大まかに分けて畑、果樹園、牧場の三つに別れたこの農場は、レーベ一人で管理しているとは思えない程に広く、しっかりと整えられていた。

 たわわに実った数々の作物……そこまで詳しい訳ではないが、質の良さだけはなんとなくわかる。

 

「……大したものだな」

 

 素直に感嘆の言葉が出た。

 魔法使いとしては毛程の価値もなく、魔族としては失格もいい所ではあるが、これだけの事が出来るのであれば……。

 

「アウラ様が奴を欲した気持ちもわかる」

 

 奴の魔力は少ないが、恐らくは作物の実りを良くする魔法でも使うのだろう。

 もしくは、これだけの規模の農場だ、多少の手隙があっても作物が育つような魔法かもしれない。

 後でその辺りの話も聞いてみるか、そう思いながら目の前の作物を手に取る。

 先程も口にしたトマトだ。

 それを静かにもぎ取り、まじまじと見つめた。

 

「……良い色良い艶、ハリがある。これが良いトマト、というものか……」

 

「そうですよリュー様!」

 

「っ!」

 

 独り言を呟いていたリュグナーへ、言葉が返される。

 咄嗟に身を翻し、魔力を滾らせ……その先にいたのはレーベであった。

 

「……失礼気付きませんでした。

 気を抜いていた訳ではないんですが、いついらっしゃったのですか?」

 

 僅かに警戒の色を滲ませながら、リュグナーは丁寧に問い掛けた。

 確かに自分はリーニエに比べれば魔力探知は不得手と言って良い。

 だが、出来ない訳ではない。

 先程も一応していたにも関わらず、気付けなかった。

 その事実は、リュグナーの警戒心を跳ね上げるのに充分であった。

 

「今きた所です!あ、敬語使わなくて良いですよ!

 私はただ長く生きただけのざこざこ魔族ですので……」

 

「そう、か。ではその言葉に甘えよう」

 

 しかしながら、やはり改めて見ても脅威は感じない。

 魔力は自分どころか、リーニエやドラートと比べても遥かに少ない。

 少な過ぎて探知し損ねたのだろう、リュグナーはそう自分を納得させる事とした。

 

「魔法も『実らせる魔法(フォールネス)』という作物を実らせる魔法しか使えなくて、戦えもしませんから」

 

 たはは、と苦笑を浮かべるレーベに、リュグナーはやはりそういう魔法か、と納得する。

 流石に魔族とはいえ、その身一つでこの規模の農場を管理する事は出来ないだろう。

 

「……いや、確かに魔族としてはどうかと思うが……食糧を支給してくれるのはありがたい」

 

 実際、食は生きる上で必須だ。

 とはいえ魔族故になんでも食べられるし、人間や他の獣に比べれば食わないで生きていける期間も長い。

 だが、まったく食べないで生きていける訳ではなく、どうしても手間と時間がかかってしまう。

 それが全て解消され、更には味も良いとなれば、リュグナーに否はない。

 その時間を魔法の研鑽に充てられるのだから、なんと素晴らしい事だろうか。

 

「改めてよろしく頼む、レーベ」

 

 リュグナーはレーベを真っ直ぐ見つめ、微笑みを浮かべた。

 そしてレーベは、そのリュグナーを見返し……。

 

「は、はひ……!がんばりまひゅ!」

 

 その褐色の顔を真っ赤に染めた。

 熱くなってしまった頬に両手を添えて、レーベはくるりと踵を返した。

 

「はわわわ!な、なんて破壊力でしょうか……!

 クール系イケメンの微笑み、強すぎます……!」

 

 リュグナーは、そんなレーベの様子に不思議そうに首を傾げていた。

 

 長い事一人で過ごしていたレーベにとって、好みドストライクな異性の微笑みは、刺激が強すぎた。

 それは最早劇薬であった。

 ドキドキと高鳴る胸をおさえ、レーベは意を決して再度リュグナーと向き直る。

 

「え、えと、リュー様!良ければこの後、この農場をご案内しましょうか?」

 

 レーベはその頬を染め、上目遣いでリュグナーを見上げた。

 所々声が裏返り、剥き出しの肩が震える。

 何かを期待しているような、そんな視線がリュグナーを捉えていた。

 そんな見るからに緊張しているレーベに対して、リュグナーは特に気負う事なく頷く。

 

「助かる。やるからには完璧にしたい。色々と教えてくれるとありがたい」

 

「おっ、お任せくだしゃいっ!」

 

 そうして再度微笑みを浮かべたリュグナー。

 耐性のまったくないレーベは、耳まで真っ赤に染め、舌足らずな言葉を返した。

 

 リュグナーの隣に身を寄せ、農場の案内を始めたレーベはその間、ずっと嬉しそうに笑みを浮かべていた。




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