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ドラートはリュグナーと似た考えで、農場を見て回っていた。
少し違うのは、好奇心も多分に含まれている事だろうか。
見た事のない作物もあり、興味深くそれらを眺めていた。
視線の先には緑色で細長い作物……青々としたキュウリが実っている。
ドラートはそれを一つ、手にとってみた。
表面は凸凹としており、緑色で流線形の形。
あまり見たことのない植物だ。
「それはキュウリって言います!」
なんという作物だろうか、言葉なく首を傾げていた所に、レーベの底抜けに明るい声がかけられた。
振り向けば声色通りの笑顔を浮かべたレーベがドラートを見つめており、呆けた声をあげる。
「きゅうり?」
「はい!」
ドラートはキュウリを掲げ、レーベはコクリと頷いた。
「美味いのか?」
「んー、美味しいんですけど、先程食べたトマトとかと比べると、そこまで味がある野菜ではないですね」
美味しいけど味がしない?
正直意味はわからないが……むしろより興味が沸いたドラートは、問い掛ける。
「ふうん……食べてみても?」
「勿論どうぞ!あ、先端はあまり美味しくないので、こう、割って、そこから食べると良いですよ!」
こう、と両手を使って何かを割るような仕草をするレーベ。
それに言われるがままに習い、ドラートは両端をおさえ、キュウリをへし折った。
緑色の断面と、白い種が顔をだす。
そして、それをそのまま口に運んだ。
ポリン
ポリ、ポリ
小気味良い音を立て、キュウリを噛み締めるドラートは、うんうん、と頷く。
「うん……成る程、食感は良くて瑞々しいが、確かに味はあまりないな。だが、悪くないぞ」
「ふふふ、そうですか?そう言って貰えると嬉しいですが……はい!これをつけて食べてみて下さい!」
ひょい、とレーベが取り出したのは小さな壺。
小さなへらのようなものをそれに突っ込み、中から出てきたのは、茶色いペーストのようなものだった。
「……なんだそれは」
お世辞にも美味しそうには見えない色のそれに顔をしかめる。
だが、ふわりと流れてきた匂いは、そう悪いものでもなかった。
「味噌、と言います。豆を加工した調味料でして、かなり塩辛いので、ちょっとだけ」
その小さなへらで、ドラートが口をつけていないほうのきゅうりの断面にそれを、味噌を少量つけた。
訝しげにそれを眺めるドラートは、じっとその茶色のペーストを見つめる。
ちら、とレーベの顔を伺うも、ニコニコと笑うばかり。
「……まぁ、食べてみよう」
「どうぞ!」
ポリ
「……んっ!」
口に入れた瞬間に頬がひきつるような味の濃さを感じ、だがそれをキュウリの瑞々しさと青臭さが洗い流すようだった。
それでもまだ残る味噌の塩辛さと風味に、ついついキュウリを次々と口に放り込んでしまう。
ポリ、ポリ、ポリッ!
「んむんむ……うん、この組み合わせは良いな。
それで、この味噌という調味料ももしかして?」
「ええ!ここで作った大豆を加工して作ってますよ!
別の日にはこの味噌で作った料理もご馳走しますね!」
「そうか……楽しみだな」
ドラートは思わず笑みを浮かべて片手に残るキュウリも口に放り込んだ。
未だに口に残る濃い味噌の味を、味の薄いキュウリが洗い流す。
こうまで相性の良い組み合わせがあるのだな、とドラートは感心していた。
生きる為にただ食う、それだけだったドラートにとって、ここでの食事は価値観が一変する体験であった。
「さぁさ、キュウリと似たような種の作物も沢山ありますから、どうせだからそれらも見て行きましょうか!色んな物がありますよ!」
そう言って、笑顔で作物を指差し説明を始めるレーベの後をついていき、ドラートは説明をしっかりと噛み砕いて聞き続けた。
植物の植生、それらも中々に興味深く、魔法の探求とはまた違った面白さを感じていた。
瓜科、と一言に言っても様々なものがあって、どれを見ても面白い。
それが他にも更に色々あるのだがら、まったく退屈しない。
「面白くなってきたな」
ドラートは、自然と笑みを浮かべていた。
「おいしい」
リーニエの姿は果樹園にあった。
既にいくつかの果物を食べたようで、口元には果汁がついていた。
そしてその手には新たに手に取った葡萄があり、美味しい事を疑いもせず、一粒口に放り込んだ。
「しゅっぱっ!?」
だが、噛み締めた瞬間、猛烈な酸っぱさが口いっぱいに拡がり、顔をしかめる羽目になった。
甘くない訳ではない、仄かな甘味と、葡萄特有の香りもする。
けれどそれ以上にとてつもなく酸っぱかった。
あまりの不意打ちに、リーニエの瞳に涙が浮かぶ。
「あっ!リーちゃん!その葡萄はそのまま食べる用ではないですよー!」
そんなリーニエに、レーベが慌てて駆け付けた。
「お口直しに……絞りたてのミルクでもどうですか?」
その手にはコップに注がれた白い液体。
リーニエは口をキュッとすぼめながら、レーベにすがり付き、そのコップを手にとった。
くぴ、くぴ
ゆっくりとそのミルクを口に入れ、口のなかの酸っぱさを打ち消していく。
やがて半分程を飲んだ所で落ち着いたのか、リーニエはコップから口を離して、息を吐き出した。
「ぷはぁ……ビックリした……すっごい酸っぱかった……。なにあれ、失敗作?あんなにおいしいをいっぱい作れるのに、そういう事もあるんだ」
リーニエはこてん、と首を傾げる。
レーベの作るものは美味しいと、そう刻まれてしまっているのだろう。
純粋に不思議そうに、その酸っぱい葡萄を掲げて見つめていた。
「いえいえ、これはワインにする用の葡萄なんですよ!
というか、作物、特に果物はそのまま食べる用と加工用でちょっと違うんですよね。
えと……例えばこのふたつのリンゴ、片方はそのまま食べるあまーいリンゴですが、こっちは加工用の甘さ控え目のリンゴなんです」
レーベはリンゴを両手に持ち、それらをリーニエへと差し出す。
見た目はほとんど同じ……加工用と言ったほうが多少黄色いだろうか?
「違う……?なんで……?全部おいしいほうが良くない?」
リーニエは逆方向にこてんと首を傾げる。
食べるのだから、おいしいに越した事はない。
実際食べさせて貰ったのはどれもおいしかった。
それでリーニエは満足だった。
だからこそ、おいしくないのを作る理由がわからなかった。
だがレーベは微笑み、首を小さく振った。
「ふふふ、それが違うんですよ。
……そうですね、折角ですから、今晩試してみましょう!
とりあえずこの二つのリンゴを使ってみますので、まずはそのまま食べてみてください!ではではー!また後程!」
ポン、と手渡された二つのリンゴ。
リーニエはリンゴ二つを左腕で抱え込む。
それを受け取ったのを見るなり、レーベはそのまま踵を返して去って行ってしまった。
「んー……?さっぱりわからない……」
レーベはおいしいものを作るから、言ってる事は本当なのかもしれない。
けれど理由が理解出来ず、リーニエは首を傾げる事しか出来なかった。
やがて口の中の酸っぱさが消え、リーニエの口が新しい甘さを、おいしいを欲してくる。
その衝動のままに、レーベから受け取った二つのリンゴのうち、一つを手に取る。
シャリッ
そしてそれを齧った。
「ひゅっ!しゅっぱいっ!」
途端に口内に、先程の葡萄程ではないものの、溢れる酸味。
リーニエは顔をしかめながら、慌ててミルクを飲み干す。
息を大きく吐き出して、リーニエは一度齧ったリンゴを恨めしそうに見やった。
「やっぱり……わからない」
口直し、とばかりにもう一つのリンゴを齧る。
シャリ
途端に先程とはまったく違う、強い甘味が口いっぱいに広がる。
酸味も程好く、皮すら甘い。
思わず口元が綻ぶおいしさに、リーニエは目を細めた。
「おいしい!」