フリ魔転生!~穏やかに暮らしたい~   作:如月SQ

6 / 50
なんか突然閲覧跳ね上がって、お気に入りも増えて、どうした事だと思ってたら新作日間に入っていたんですね……!
評価もいっぱいして貰えて、☆10まで貰って……!
高評価、一言つき評価もありがとうございます!
励みになります、頑張ります!


魔族農場②

 ドラートはリュグナーと似た考えで、農場を見て回っていた。

 少し違うのは、好奇心も多分に含まれている事だろうか。

 見た事のない作物もあり、興味深くそれらを眺めていた。

 視線の先には緑色で細長い作物……青々としたキュウリが実っている。

 ドラートはそれを一つ、手にとってみた。

 表面は凸凹としており、緑色で流線形の形。

 あまり見たことのない植物だ。

 

「それはキュウリって言います!」

 

 なんという作物だろうか、言葉なく首を傾げていた所に、レーベの底抜けに明るい声がかけられた。

 振り向けば声色通りの笑顔を浮かべたレーベがドラートを見つめており、呆けた声をあげる。

 

「きゅうり?」

 

「はい!」

 

 ドラートはキュウリを掲げ、レーベはコクリと頷いた。

 

「美味いのか?」

 

「んー、美味しいんですけど、先程食べたトマトとかと比べると、そこまで味がある野菜ではないですね」

 

 美味しいけど味がしない?

 正直意味はわからないが……むしろより興味が沸いたドラートは、問い掛ける。

 

「ふうん……食べてみても?」

 

「勿論どうぞ!あ、先端はあまり美味しくないので、こう、割って、そこから食べると良いですよ!」

 

 こう、と両手を使って何かを割るような仕草をするレーベ。

 それに言われるがままに習い、ドラートは両端をおさえ、キュウリをへし折った。

 緑色の断面と、白い種が顔をだす。

 そして、それをそのまま口に運んだ。

 

ポリン

 

ポリ、ポリ

 

 小気味良い音を立て、キュウリを噛み締めるドラートは、うんうん、と頷く。

 

「うん……成る程、食感は良くて瑞々しいが、確かに味はあまりないな。だが、悪くないぞ」

 

「ふふふ、そうですか?そう言って貰えると嬉しいですが……はい!これをつけて食べてみて下さい!」

 

 ひょい、とレーベが取り出したのは小さな壺。

 小さなへらのようなものをそれに突っ込み、中から出てきたのは、茶色いペーストのようなものだった。

 

「……なんだそれは」

 

 お世辞にも美味しそうには見えない色のそれに顔をしかめる。

 だが、ふわりと流れてきた匂いは、そう悪いものでもなかった。

 

「味噌、と言います。豆を加工した調味料でして、かなり塩辛いので、ちょっとだけ」

 

 その小さなへらで、ドラートが口をつけていないほうのきゅうりの断面にそれを、味噌を少量つけた。

 訝しげにそれを眺めるドラートは、じっとその茶色のペーストを見つめる。

 ちら、とレーベの顔を伺うも、ニコニコと笑うばかり。

 

「……まぁ、食べてみよう」

 

「どうぞ!」

 

ポリ

 

「……んっ!」

 

 口に入れた瞬間に頬がひきつるような味の濃さを感じ、だがそれをキュウリの瑞々しさと青臭さが洗い流すようだった。

 それでもまだ残る味噌の塩辛さと風味に、ついついキュウリを次々と口に放り込んでしまう。

 

ポリ、ポリ、ポリッ!

 

「んむんむ……うん、この組み合わせは良いな。

 それで、この味噌という調味料ももしかして?」

 

「ええ!ここで作った大豆を加工して作ってますよ!

 別の日にはこの味噌で作った料理もご馳走しますね!」

 

「そうか……楽しみだな」

 

 ドラートは思わず笑みを浮かべて片手に残るキュウリも口に放り込んだ。

 未だに口に残る濃い味噌の味を、味の薄いキュウリが洗い流す。

 こうまで相性の良い組み合わせがあるのだな、とドラートは感心していた。

 生きる為にただ食う、それだけだったドラートにとって、ここでの食事は価値観が一変する体験であった。

 

「さぁさ、キュウリと似たような種の作物も沢山ありますから、どうせだからそれらも見て行きましょうか!色んな物がありますよ!」

 

 そう言って、笑顔で作物を指差し説明を始めるレーベの後をついていき、ドラートは説明をしっかりと噛み砕いて聞き続けた。

 植物の植生、それらも中々に興味深く、魔法の探求とはまた違った面白さを感じていた。

 瓜科、と一言に言っても様々なものがあって、どれを見ても面白い。

 それが他にも更に色々あるのだがら、まったく退屈しない。

 

「面白くなってきたな」

 

 ドラートは、自然と笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいしい」

 

 リーニエの姿は果樹園にあった。

 既にいくつかの果物を食べたようで、口元には果汁がついていた。

 そしてその手には新たに手に取った葡萄があり、美味しい事を疑いもせず、一粒口に放り込んだ。

 

「しゅっぱっ!?」

 

 だが、噛み締めた瞬間、猛烈な酸っぱさが口いっぱいに拡がり、顔をしかめる羽目になった。

 甘くない訳ではない、仄かな甘味と、葡萄特有の香りもする。

 けれどそれ以上にとてつもなく酸っぱかった。

 あまりの不意打ちに、リーニエの瞳に涙が浮かぶ。

 

「あっ!リーちゃん!その葡萄はそのまま食べる用ではないですよー!」

 

 そんなリーニエに、レーベが慌てて駆け付けた。

 

「お口直しに……絞りたてのミルクでもどうですか?」

 

 その手にはコップに注がれた白い液体。

 リーニエは口をキュッとすぼめながら、レーベにすがり付き、そのコップを手にとった。

 

くぴ、くぴ

 

 ゆっくりとそのミルクを口に入れ、口のなかの酸っぱさを打ち消していく。

 やがて半分程を飲んだ所で落ち着いたのか、リーニエはコップから口を離して、息を吐き出した。

 

「ぷはぁ……ビックリした……すっごい酸っぱかった……。なにあれ、失敗作?あんなにおいしいをいっぱい作れるのに、そういう事もあるんだ」

 

 リーニエはこてん、と首を傾げる。

 レーベの作るものは美味しいと、そう刻まれてしまっているのだろう。

 純粋に不思議そうに、その酸っぱい葡萄を掲げて見つめていた。

 

「いえいえ、これはワインにする用の葡萄なんですよ!

 というか、作物、特に果物はそのまま食べる用と加工用でちょっと違うんですよね。

 えと……例えばこのふたつのリンゴ、片方はそのまま食べるあまーいリンゴですが、こっちは加工用の甘さ控え目のリンゴなんです」

 

 レーベはリンゴを両手に持ち、それらをリーニエへと差し出す。

 見た目はほとんど同じ……加工用と言ったほうが多少黄色いだろうか?

 

「違う……?なんで……?全部おいしいほうが良くない?」

 

 リーニエは逆方向にこてんと首を傾げる。

 食べるのだから、おいしいに越した事はない。

 実際食べさせて貰ったのはどれもおいしかった。

 それでリーニエは満足だった。

 だからこそ、おいしくないのを作る理由がわからなかった。

 

 だがレーベは微笑み、首を小さく振った。

 

「ふふふ、それが違うんですよ。

 ……そうですね、折角ですから、今晩試してみましょう!

 とりあえずこの二つのリンゴを使ってみますので、まずはそのまま食べてみてください!ではではー!また後程!」

 

 ポン、と手渡された二つのリンゴ。

 リーニエはリンゴ二つを左腕で抱え込む。

 それを受け取ったのを見るなり、レーベはそのまま踵を返して去って行ってしまった。

 

「んー……?さっぱりわからない……」

 

 レーベはおいしいものを作るから、言ってる事は本当なのかもしれない。

 けれど理由が理解出来ず、リーニエは首を傾げる事しか出来なかった。

 

 やがて口の中の酸っぱさが消え、リーニエの口が新しい甘さを、おいしいを欲してくる。

 その衝動のままに、レーベから受け取った二つのリンゴのうち、一つを手に取る。

 

シャリッ

 

 そしてそれを齧った。

 

「ひゅっ!しゅっぱいっ!」

 

 途端に口内に、先程の葡萄程ではないものの、溢れる酸味。

 リーニエは顔をしかめながら、慌ててミルクを飲み干す。

 息を大きく吐き出して、リーニエは一度齧ったリンゴを恨めしそうに見やった。

 

「やっぱり……わからない」

 

 口直し、とばかりにもう一つのリンゴを齧る。

 

シャリ

 

 途端に先程とはまったく違う、強い甘味が口いっぱいに広がる。

 酸味も程好く、皮すら甘い。

 思わず口元が綻ぶおいしさに、リーニエは目を細めた。

 

「おいしい!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。