スルタンとの接触。
中央暦1636年―――ロデニウス大陸の東端。
森林を進む、ある一団が居た。
「…奇妙です、この地域に、この様な森が。」
知る由も無い事だが、彼等は既に異世界の地を踏んでいる。
既に陽は傾き始めていた。
しかし野宿する場所を探す、その様な素振りは一切無い。
カスピ海沿岸の街、マーザンダラーンを発ってから数日。
コンコンコン。
部屋に響いたノックに、執務机へ向かっていたリンスイは手を止める。
「リンスイ様。マゴーダ男爵より、手記が届いております。」
「マゴーダ男爵…マイハークの領主か。」
中央暦1636年1月―――クワ・トイネ公国。
同国外務卿たるリンスイは、同国の経済都市マイハーク領主からの魔信*1により、ある報告を受けた。
「…―――王族の亡命だと?」
手記によれば、マイハークに現れた一団が、クワ・トイネへの亡命を求めて来たとの事であった。
彼が真っ先に考えたのは、パーパルディア皇国の属州となった、亡国の王族である可能性だ。
その場合、パーパルディアとの外交問題になりかねない。
"之は宮中会議ものか…。"
「如何致しますか?」
「…私が直接
ただでさえ、西のロウリア王国との対立を抱えるクワ・トイネは、更なる外交問題の対立を避けたがっていた。その為、リンスイ自ら、亡命を求めた王族との会合を行おうとしたのだ。
…しかしクワ・トイネは、自国の外交問題はおろか…
この異世界全体を揺るがす、大厄災の到来に直面する事になる。
クワ・トイネに亡命を求めた王族とは、ホラズム・シャー国の七代目スルタン、
アラーウッディーン・ムハンマドであった
「…余も堕ちたものだ…。
かつて大国のスルタンであった余が…この様な辺境にまで落ち延びるなど…。」
リンスイの眼前に横たわるスルタンは、病と疲れで憔悴しきっていた。
「…今度の、亡命の経緯を…お教え願いたいのですが。」
亡命を申し入れたのは、肺病に罹った王と、3人の王子、数人の臣下であった。
スルタンに代わって、王子達がリンスイに答える。
「
「父上は以前より再三警告なされていた。カラ・キタイの東に住む、強大な民族の事を。…遂に現実のものとなってしまったのだ。」
その時、スルタンはリンスイの手を掴んだ。
…手は震えている。
「…リンスイ殿…余は…警告する。
東から…東から大帝国がやって来る…。
カーンの厚意を無下にするな…蛮族と侮るな…」
中央暦1636年初頭、ロデニウス大陸東岸に転移、接続した、広大な大地とは…
13世紀初頭の中央アジア。
…即ち、チンギス・カーンの西征真っ只中のユーラシア大陸であったのだ…!
『
タタールの世紀とも言われた13世紀、そのユーラシア大陸が、
ロデニウス大陸東岸と接続されてしまった世界。
グレゴリオ暦1220年=中央暦1636年…と言う設定です。
余談ですが、カスピ海が大東洋と接続しています。
…あと、時間の進みが異様に早いです。