百姓スペちゃん~このニンジンあげません!! 作:牛乳大好き
「理事長ちゃん。しんどかったら休んでて良いよ?」
チームシリウスの朝は相変わらず忙しい。ちびっこ理事長ちゃんの思いつきで始まってしまったトレセン学園牧場であるが、ちびっこ理事長の知識不足をチームシリウスの知識と経験で補い……必要な申請を全て済ませて行政の許可をもらって何とか出発できた。
「大丈夫なのだ……私が始めたことだから」
しかし、マジものお嬢様である理事長ちゃんにとって、酪農のお仕事は大変であった。元から酪農家であるスペちゃん、ディープくん、アキねーちゃんは問題なく働いており、農民に染まったオルフェにくーちゃんも問題なく働いている。まだ染まりきっていないキタちゃんにシュヴァっちも見様見真似で朝早くからお仕事を行う。
酪農の朝は早く、5時からお仕事を始めなくてはならない。理事長ちゃんにとって早朝5時からのお仕事は過酷であり、なれない作業着に袖を通して出来る事を行っていた。
「「「てか、理事長ちゃん……ウマ娘だったんだ」」」
「今さらなのか!?」
あと、理事長ことやよいちゃん(10歳)はウマ娘であり、帽子を被ってウマ耳を隠していたのだ。だが、今は酪農の作業で帽子が汚れてしまう事もあり、帽子を脱いで作業を行っており、ウマ娘がピョコピョコと動いている。
「そういや、理事長ちゃん。牛さんの予防接種とか行ったの?」
「む!?してないぞ!?てか、購入元の酪農の人がしてたのか分からん!!」
「指定の伝染病になったら、全頭殺処分だよ」
「そっそんなぁぁ!?」
スペちゃんからの爆弾発言(農家では当たり前)を受けて、理事長ちゃんは驚いてしまう。そう、伝染病に成ってしまったら殺処分は当たり前であり、物凄い損額が出てしまうのだ。
「もしもし、相川くん。今どこ?えっ、東京に来てる?良かった、ちょっとトレセン学園に来てくれない?実はかくかく然々で……」
そんな理事長ちゃんの様子を見て、アキねーちゃんはとある人物に電話をかけた。それはエゾノー、そして大蝦夷畜産大の同級生であり、今は新人獣医として頑張る相川くんである。
翌日……
受験で忙しいチゲゾーとブライアンは居ないが、チームシリウスの現メンバー+理事長ちゃんはとある獣医さんと出会った。
「御影さん、スペちゃんとディープくんは久しぶりだね。
僕は相川進之介。家畜の獣医さんをしていて、今は経験を積むために色んな所を転々としてるんだ。
オグリさんから聞いたよ?トレセン学園で牧場を開いたんだってね」
糸目で背の高い獣医さんは相川進之介。エゾノー→大蝦夷畜産大学の獣医学課出身の獣医さんであり、獣医学課は6年生でありオグリキャップと在籍期間が被っていた事もあり、オグリの先輩でもある。
「お久しぶりです!」
「お久しぶりプイ!」
「うん、元気そうで良かったよ。君が秋川やよいさんですね?牛の血統書とかはないですか?」
「こっこれじゃ!多分……」
理事長ちゃんは牛を購入したときに貰った書類を一式、相川に手渡す。相川はそれを受けとると、必要な分だけを速やかに選んで確認する。
「うん。買った牛は予防接種は受けてるね。受けてないのは……産まれた子牛だけだね。よし、その子牛の予防接種と角を切ろうか」
「「「角切!?」」」
ふと、そこで農業初心者のキタちゃんは思う。サンデー牧場で酪農を経験(強制奉仕)されたが、サンデー牧場の牛はどれもが角がなかった。だが、トレセン学園で産まれた子牛には角が生えていた。そして、テレビで見る牛にも殆ど角は生えていない。
「あれ……そういや、牛さんの角って……」
「うん、良く見るのは危ないから切ってるよ。危ないのは牛じゃなくて、人間がね」
牛は基本的に除角と呼ばれる作業を行い、角を切断する。これは人間の身を守るためであり、この角があると牛が甘えてきた時や頭を動かしたときに人間が怪我をしてしまう事を防ぐためだ。
欧州や動物愛護団体からは、除角を辞めるようにと声が出ているが……牛ではなく人間が危ないので辞めることは出来ない。もし、辞めたら楔帷子などの防具を着て作業を行わないといけないのだから。
「牛の角は鹿とかと違って、神経や血管が有るんだ。だから切断したらめちゃくちゃ痛いし暴れる子も居るんだ」
鹿は年に一回、角が自然と生え変わる。だが牛の角は鹿と違って血管や神経が通っており、切断したら滅茶苦茶痛い。
なので牛が大きくなると角もより大きくなり、切断しにくくなるし……牛が暴れて命の危険(人が)が出る。だから、牛が小さい内に切断するのだ。
「やるなら気温が低い冬の方が望ましいかな?温かくなると、うじ虫とか沸く危険もあるからね」
角の切断は出きれば冬の方が望ましい。北海道は5月でも雪が降る時が有るので、冬が長いが……東京では今の内にやるのがベストだろう。
「あの……なんですか?その巨大なニッパーは……」
シュヴァっちが恐る恐る、相川の後ろに有るニッパー……いや番線切りやワイヤーカッターをワープ進化させたような得物を指差す。
「これで角を切るんだ。切ったあと、焼鏝で止血だよ」
「「「焼鏝で止血!?」」」
「モー」
先日、トレセン学園で産まれた子牛。その子牛は♀であり、血統書にも名前が残される。だが、その子牛に今日は仕方ないとは言え、悲劇が訪れる。
「モー?」
走る音が聞こえ、子牛は音の方を見る。そこではロープを持ったディープインパクトとスペシャルウィークが全力で走ってきており、子牛を慣れた手付きで捕獲して……柱にくくりつけた。
「モー!?」
そこに、凶器(角切器)を構えた相川獣医が現れ、力任せに……
「えい」
「もぉぉぉお!?」
角を切断し、素早く焼鏝で焼いて止血した。
「さてと、もう片方も」
「もぉぉお!?」
素早くもう片方も済ませ、作業は終了した。
だが、この角切であるが……牛も痛いのは痛いので、放心したり気絶したりと様々だ。
「相川くん。ついでに雄で産まれた子牛の去勢も出来る?」
「うん、良いよ」
そして、雄の子牛は問答無用で去勢である。しかも初妊牛が出産する子牛は大抵、初産の負担を和らげるために和牛との混血なのでどのみちお肉になる運命なのだ。
「キタちゃん……僕、絶対に牛さん……家畜に生まれ変わりたくない」
「だよね、私も同じこと思ったよ」
牛さんの哀れな通過儀礼を見て、キタちゃんとシュヴァっちは来世は家畜に生まれ変わりたくないと思ったのだった。
「流石に中等部の子はあれだけど、高等部の子は体験しようか。農業高校のカリキュラムにもあるしね」
「えっ私っすか!?」
そして、オルフェとくーちゃんも角切を体験させられるのだった。
牛→男なら基本的にお肉√、女でも混血ならお肉√、乳牛でも成績が悪かったり病気怪我をしたらお肉or廃棄。
豚→繁殖用に成らなかったらお肉。男は去勢されて肉√
鶏→卵を産む成績が悪かったらお肉√、肉用は最初からお肉√
馬→サラブレッドでも最初からお肉√の子がいる。競走馬でも一勝出来るのは3割以下、重賞勝てるのは一部だけ。重賞勝っても種牡馬になれない可能性もあり、なんなら馬主の意思で左右されるときもある。
羊→毎年毛を狩られ、お肉√も普通にある。
ディープ「命に感謝していただきます」
キタちゃん「お肉はもう残しません!!」
シュヴァっち「僕も!!」
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