仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE LOST CHILDREN   作:黒井福

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※本作は全編私、黒井福が執筆しております。


第1話:それは、未知との出会い

 科学技術が大きく発展した大都市、その名は帝久乃(テクノ)市。人口約45万人、施設のほぼ全てが駅を中心として建造されたその街は、以前アクイラと呼ばれる情報生命体により危機に陥っていた。しかしそれも、数名の仮面の戦士……仮面ライダー達により解決へと導かれた。

 

 数多の危機を乗り越え、人々が手にした平和。

 

 その平和が訪れた街で、平穏を謳歌する青年と少女が居た。

 

「あっ! ショウ、そっち行った!」

「任せてッ!」

 

 青年の名は『天坂(あまさか) (しょう)』。端正な顔立ちの中で右目を覆う眼帯が異彩を放っている彼は帝久乃市に住む高校3年生であり、帝久乃市……否、世界の命運を賭けたアクイラとの戦いを駆け抜けた『ホメオスタシス』と言う組織の戦士『仮面ライダーアズール』に変身する青年である。

 一方の少女は名をアシュリィ。流れるような銀髪に身長に対して豊満な胸を持つ美少女であり、アクイラとの戦いでは翔の変身するアズールと共に『仮面ライダーピクシー』に変身して戦った。

 

 2人は久峰 遼という男の野望により、その身にアクイラの遺伝子を埋め込まれた人類を超えた存在としての人生を歩まされ、戦いの中でその事に苦悩し時には涙も流した。だがその苦難を乗り越え、2人は今では共に愛を育み、同じ未来を歩むパートナーとしての日々を送っていた。翔の右目を覆う眼帯は、彼と彼女の愛の証でもあった。

 

 この日2人は、日曜日と言う事で街の中でも特に大きなゲームセンターを訪れていた。今2人がやっているのは最新のVRゲーム。HMDを装着し、迫るゾンビを銃で倒すガンシューティングゲームである。難易度はかなり高い方で2人の前にこのゲームに挑戦した者達はあっという間にゲームオーバーになっていた。

 しかしこの2人は違う。仮面ライダーとして戦った経験があると言うのもそうだが、翔に限って言えばそれ以前から卓越したゲームセンスを持っていた。加えてこの2人には互いを愛する事によって生まれるコンビネーションがある。

 

 結果、2人が挑戦したゲームは実装以来最高の得点を叩き出す事となった。

 

 ゲームの結果に満足した2人は、心地よい疲れと達成感を胸にゲームセンターを後にした。

 

「ふぅ……新作だって聞いたけど、なかなか面白かったね。アシュリィちゃん?」

「うん。でもショウに得点で負けたのはちょっと悔しい」

「あ、あはは……」

 

 総合得点は実装以来ぶっちぎりだったが、その内訳は翔の方が上だった。アシュリィも決して悪い点数では無かったのだが、翔に比べると大分見劣りする。負けず嫌いな彼女はそれが気に入らなくて、ゲームセンターを出てからちょっぴりご機嫌斜めとなっていた。

 恋人のそんな姿を可愛く思いつつ、愛しい彼女には笑っていて欲しいという思いも確かにある。

 

 故に翔は、彼女の前髪を軽くかき上げると露わになった可愛らしい額にそっとキスをした。

 

「ん!……そう言うの、ズルい」

 

 キス一つで自分が機嫌を直すほど単純な女と思われるのは心外だが、悔しい事に愛する翔からのキスで実際にそれまでの不機嫌さが嘘の様に心が落ち着いてしまった。だから口では文句を言うが、頬を赤らめ満更でもない様子では説得力が全くない。

 翔もそれが分かるからか、クスリと笑みを浮かべつつアシュリィの触り心地の良い銀髪を優しく撫でた。

 

「ん……ゴメンね。これで機嫌直してくれる?」

「……パフェ買ってくれたら」

「分かったよ。それじゃ、何処か近くの――」

 

 パフェを所望するアシュリィの為にと、何処か近くの喫茶店にでも入ろうかと彼女の手を取り歩き出そうとする翔。

 

 その時、少し離れた所で爆発が起こった。轟音と共に炎と煙が上がり、数秒遅れで人々の悲鳴が風に乗って2人にも聞こえてきた。

 

 それを見た瞬間2人は一瞬驚きに目を見開くが直ぐに戦士の目となり、一度顔を見合わせ頷き合うと言葉を交わさず同時に走り出した。

 

「何だろう? Cytuberの残党かな、ショウ?」

「分からないけど、何かが騒ぎを起こしているのは間違いない。急ごう!」

「うん!」

 

 幸いなことに現場はそう遠くはなかった為、2人は程なくして騒ぎの起こった場所へと辿り着いた。

 

 そこで2人を待っていたのは、逃げ惑う人々の中で暴れる2体の異形。一方はカメレオンの様な鼻先の角と飛び出た目が特徴的な怪物で、もう片方は背負った甲殻と両手の鋏が特徴的な蟹の様な怪物だった。それを見た2人は一瞬これまでに彼らが戦ってきた怪人・デジブレインかと警戒した。が、よくよく見るとそれはデジブレインとは何かが違っていた。

 

「あれ、デジブレイン?」

「ん~?」

 

 彼らの知るデジブレインに比べて、あの2体の怪人はかなり有機的な見た目をしていた。もっと端的に言ってしまえば、生々しいとも言える。そしてそれでいて見た目に纏まりが無い様に見られる。まるで人間と他の生物を適当に混ぜ合わせて作り出した生物の様だ。

 

 2人が知らないのも無理はない。その2体の怪人の名はカメレオンファッジにキャンサーファッジ。こことは全く別の世界で、2人とは縁も所縁も無い()()()()()()()()が戦った怪人なのだ。

 そんな事を知る由も無い翔とアシュリィは、怪人の観察もそこそこに逃げ惑う人々を守るべく仮面ライダーに変身する。

 

 翔は『アプリドライバー』を腰に装着し、プレート型アイテム『マテリアプレート』のスイッチを起動した。

 

《ブルースカイ・アドベンチャー!》

 

 プレートを起動すると電子音声が鳴り、それを確認した翔はベルトのバックルへとプレートを挿し込んだ。

 

《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》

 

 アプリドライバーから流れる音声を聞き、翔は呼吸を整え心を落ち着ける。

 

 一方アシュリィは、翔と同じくマテリアプレートを起動すると逆手に持ったレイピア型アイテム『ピクシーレイピア』に装填する。

 

《オトギガールズ・レヴュー!》

《ヒア・マイ・ソング! ヒア・マイ・ソング!》

 

 翔のドライバーとは異なる女性的な電子音声を聞きながら、プレートを保護するカバーで光る五つの点を人差し指でなぞって繋げて五芒星を描いた。

 

 共に準備を整えると、2人はただの人間から無辜の民を守る戦士へとその身を変える言霊を口にした。

 

「「変身ッ!」」

 

 叫ぶと同時に翔はスマートフォン型アイテム『マテリアフォン』をドライバーに翳し、アシュリィはレイピアのグリップに付いた引き金を小指で引く。

 

 すると電子音と共に2人の体が光で包まれ、その姿を仮面の戦士へと変じさせた。

 

《Alright! マテリアライド!》

《Action! フォニック・マテリアライド!》

 

 翔の姿は空色の様な澄み切ったスーツの上に白い装甲を纏い、首と両肩の背部から膝裏まで伸びるマフラーを二枚たなびかせる戦士『仮面ライダーアズール』に……

 

 アシュリィの姿はアザレアカラーで薄く透き通った妖精の羽を背に生やした女戦士『仮面ライダーピクシー』にそれぞれ変身した。

 

《ブルースカイ・アプリ! 蒼穹の冒険者、インストール!》

《オトギガールズ・アプリ! 歌激(カゲキ)なる御伽女(オトメ)、カーテンレイズ!》

 

 2人が変身すると共に高らかに響き渡る電子音声に、暴れていた2体のファッジが2人の存在に気付きそちらを振り向く。

 

「グルルルル……!」

「キシャァァァッ!」

 

 明らかな威嚇の声を上げてくる2体のファッジに、アズールは専用武器のアズールセイバーで、ピクシーは変身の際にも使用したピクシーレイピアで攻撃を仕掛けた。

 

「ハッ! セヤッ!」

 

 アズールは鋭い剣技でカメレオンファッジを圧倒する。次々と振るわれる斬撃に、カメレオンファッジは両手の爪で対抗しようとするが数々の難敵を打ち破って来たアズールの剣技を前には遠く及ばずあっという間に傷だらけになっていく。

 

「グゥゥ……!?」

 

 獣の様な声を上げる様子から殆ど本能的に動いているのだろう。動物の本能で、アズールには勝てないと察したのかカメレオンファッジはその特有の能力で姿を消した。

 

「! 消えた……それなら!」

 

 普通の者であれば戦っている相手が姿を消した場合、居場所が分からない為警戒して動きを止める。だがブルースカイリンカーのアズールは特殊能力で風を操る事が出来る。不可視の風の刃によって、彼は隠れ潜み逃れるか不意打ちをしようとしていたカメレオンファッジを切り裂いた。

 

「ギキィィィッ!?」

 

 不可視の刃に全身を切り裂かれ、堪らず姿を晒したカメレオンファッジ。アズールの攻撃により消耗し動きの鈍ったファッジに、アズールはトドメの一撃を放とうとドライバーのマテリアプレートを押し込みマテリアフォンを翳した。

 

「これでッ!」

《フィニッシュコード!》

 

 アズールがカメレオンファッジを追い詰めている頃、ピクシーは1人キャンサーファッジを相手に奮闘していた。

 

「キィィィッ!」

「わっ! おっと!」

 

 キャンサーファッジの甲殻は非常に硬く、ピクシーレイピアの刃も容易には通らない。彼女の攻撃が殆どダメージにならないのをいい事に、キャンサーファッジは両手の鋏で彼女を切り裂こうとしてくる。ピクシーはそれを舞う様な軽快な動きで回避した。

 

「むぅ、硬い……でも、これなら!」

 

 通常の攻撃が効かないと分かっても、ピクシーに焦りはない。徐にグリップのトリガーを引きながら、振り下ろされたキャンサーファッジの攻撃をナックルガードで受け止めた。するとどうした事か、振り下ろされたキャンサーファッジの攻撃は威力を失い、レイピアのグリップエンドに付いているマイクから軽快なリズムの音が流れ始めた。

 

 相手の攻撃が勢いを失ったのを見て、ピクシーは剣を振るい引き剥がすと同時にトリガーから指を放した。

 

「ヤッ!」

 

 ピクシーがトリガーから指を放すと、マイクから音符の記号を模したエネルギー体が出現し、キャンサーファッジの体に当たって弾けた。その瞬間キャンサーファッジは大きな衝撃を受け吹き飛ばされる。

 

「ギィィィッ!?」

「自分の攻撃の威力を自分で受けた気分はどう?」

 

 例え甲殻は頑丈でも、衝撃までは完全に防げないらしい。自分の攻撃のダメージを衝撃として受けて、キャンサーファッジは動きを止めている。

 

 この隙にとピクシーはレイピアのマテリアプレートを押し込んだ。

 

《フィニッシュコード・ソロ!》

 

 キャンサーファッジにトドメを刺すべく、構えを取るピクシー。それは奇しくもアズールがカメレオンファッジにトドメを刺そうとしたタイミングと一致していた。

 

 共に背中合わせになるように敵のファッジに向け構えを取った2人は、これ以上の暴虐を許さないと2体の怪人にトドメを刺す。

 

《Alright! ブルースカイ・マテリアルバースト!》

《Action! オトギガールズ・マテリアルシング!》

 

「そぉりゃああああっ!!」

「ヤァァァーッ!」

 

 エネルギーを右足に集中させたアズールの飛び蹴りがカメレオンファッジの体を打ち砕き、ピクシーの光を纏った鋭い突きがキャンサーファッジの甲殻を穿つ。

 

「「ギャァァァァァァッ!?」」

 

 アズールとピクシーの必殺技を受け爆散した2体のファッジ。それを2人が見届けていると、爆炎の中から2人の人間が放り出されるように倒れた。

 

「ッ! ショウ、人がッ!」

「大丈夫ですかッ!?」

 

 2人は慌てて倒れた人に駆け寄り、その安否を確認した。気を失ってはいるが、幸いな事に息はある。この事態に2人はますます持って訳が分からなくなった。彼らがこれまでに敵対してきたデジブレインにも人間が変異したものは存在した。だがそれらは得てして人間としての理性を保っており、基本的に獣の様な戦い方はしない。

 

 一体何がどうなっているのか?

 

「もしかして、新型のデジブレイン?」

「いや……何かが、おかしい。あれは、一体……」

 

 違和感を胸にアズールが何気なく視線を爆発が起きた場所に向けると、そこにある物を見つけた。手の平に収まるサイズの小さなカプセルの様な何かだ。

 

「あれは……?」

 

 戦士としての勘が告げた。あれが関係している。アズールはあれを持ち帰り解析してもらおうと拾おうとして、気を失った人を地面に横たえ立ち上がろうとした。

 

 その時、彼よりも早くにそのカプセル……『ベクターカートリッジ』を回収した異形が居た。

 

『フム……なるほど、これがファッジと言うものか』

「お前は……!?」

 

 そこに居たのは、まるで恐竜の化石が人型になったような怪人であった。こちらは先程のファッジと違い、流暢な言葉を発したのでアズールとピクシーは一瞬その怪人を新手のデジブレインの一種かと疑った。

 

 が、化石の様な怪人はそれに先手を打つような形で己がデジブレインとは違う存在である事を2人に告げた。

 

『あぁ、先に言っておくが私は君らが知るデジブレインとは異なる存在だ』

「デジブレインじゃない?」

 

 化石の様な怪人の言葉に、ピクシーが首を傾げる。彼女の言葉に怪人も頷くと、己がどういった存在なのかを話した。

 

『私の名前はフォッシルメタロー。君らがこれまでに相手にしてきた、デジブレインと言う怪人とは別の存在だ』

「デジブレインとは別の存在?」

「それ、どう言う意味?」

『そのままの意味さ。端的に言ってしまえば、私は別の世界からこの世界にやって来た。目的は、新しく手に入れたこのベクターカートリッジのテストと、この世界の仮面ライダーがどういった存在なのかの偵察だ』

 

 怪人……フォッシルメタローの言葉に2人は思わず顔を見合わせた。異なる世界などと言われても2人にはピンとこない。一応電子世界に入る事は何度かあったが、どうやらそう言うのとはまた異なる存在らしい。

 

 理解が及んでいない様子の2人に、フォッシルメタローは学校の先生の様に言葉の意味を詳しく説明した。

 

『君らが感知できないだけで、こことは異なる世界が無数に存在しているのだよ。君らとは違う仮面ライダーが存在していたり、或いはそもそも仮面ライダーが存在していなかったりね』

「仮面ライダーが、存在しない?」

『さっき君らが相手にしたファッジも、こことは異なる世界で異なる仮面ライダーと戦った怪人だ』

 

 相変わらず異なる世界と言われても理解が完全に追いつかないが、少なくとも確実に言える事がある。それはこのフォッシルメタローもまた、世の平和を脅かす彼らの敵であると言う事。

 

「お前達の目的はなんだ?」

『当然、世界征服だ。それも一つの世界ではない、数多の世界を征服するのが我々”魔人教団”の目的さ』

「数多の世界の征服……!?」

「そんな事、させないッ!」

「あっ! 待ってアシュリィちゃんッ!?」

 

 フォッシルメタローの目的が世界征服と聞き、黙っていられず飛び出すピクシー。アズールの制止も聞かずピクシーが振り下ろしたレイピアを、フォッシルメタローは片腕の爪で受け止めた。

 

『フン、勇ましいな。それだけに危険だ。まずはお前から始末してやろう』

「ッ!? アシュリィちゃん、離れてッ!」

 

 フォッシルメタローが何かをするつもりだと察したアズールが警告するが一歩遅く、ピクシーの剣を振り払ったメタローは一瞬の隙を突いて彼女を蹴り飛ばした。その際に足にティラノサウルスの様な形をしたエネルギーが出現し、蹴りと同時に彼女の体を噛み砕く様に食らい付いた。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

「アシュリィちゃんッ!?」

 

 強烈な一撃に蹴り飛ばされながら変身を解除されたアシュリィ。その飛ばされた先に、空間が歪んだような穴が出現し彼女はそのままその穴の中に吸い込まれていった。アズールは思わず手を伸ばすが、その手が届く筈もなく彼女は空間に空いた穴に消えて行き彼女が消えると同時に穴も閉じてしまった。

 

「アシュリィちゃんッ!? お前、アシュリィちゃんを何処へやったッ!」

『言っただろう? こことは別の世界があると。仮面ライダーの存在しない世界。そこでなら、邪魔される事も無くゆっくり始末できる。お前はここで、仲間の仮面ライダーが人知れず死ぬのを指を咥えて待っているがいい』

 

 フォッシルメタローはそう言うとアズールに背を向け、アシュリィが消えたのと同じ光の門を開きその中へと入っていこうとする。

 このままではアシュリィが自分の手の届かぬところで殺されると思ったアズールは、後先考えずフォッシルメタローに突撃し共にその光の中へと入っていった。

 

「逃がすか、待てッ!」

『ッ!?』

 

 風を利用して一気にダッシュし、フォッシルメタローにタックルする様にして共に光の中へと消えていくアズール。

 

 この瞬間、この世界から2人の仮面ライダーが姿を消したのだった。

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