仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE LOST CHILDREN 作:黒井福
何時まで続くかも分からない光のトンネルを抜けた先で、亜矢は唐突に無重力間に襲われた。光のトンネルの中を通っている間も上下左右がよく分からない事になっていたのだが、それを抜けた瞬間胃の中がひっくり返ったような空中に放り出された時特有の感覚に襲われた。
「うわっ!? あぁっ……!?」
突然の空中浮遊に困惑しながらも、新人類として覚醒した身体能力とブランクはあるが戦いの中で培った能力で何とか受け身を取る事には成功した。それでも先程の戦いで負ったダメージもあり、地面に降り立った際の衝撃に苦痛を感じずにはいられなかったが。
「あぐっ!? うぅ……こ、ここは……?」
視界がチカチカと明滅する中、何とか立ち上がり周囲を見渡す。あのスコーピオンメタローと言う怪人は別の世界がどうとか言っていた。その言葉を信じるのなら、ここは今まで彼女が仁や子供達と生きてきたのとは別の世界と言う事になる。最悪の場合人気のない山奥や荒野に放り出される事も警戒していたが、幸いな事に一見すると周囲は亜矢が元居た世界と大差ない文明の世界に見える。見渡せば明らかにコンクリート製のビルに太陽に照らされ舗装された道路や地面が目に入る。生憎と周囲に人気は無いが、この周囲に偶然いないだけでここから離れた街中には居るのだろう事を進化した彼女の聴覚は察知していた。
だが今の彼女にとって重要なのはここが人里であるかとか他に人間が居るか等ではない。連れ去られた我が子が居るかどうかの方が余程重要だ。自分と仁の愛の結晶でもある2人の子供の安否に比べれば、降り立った場所の環境は勿論自分の体の状態すら些細な問題であった。
「雄司……愛衣……! いっ!? ぐ……」
周囲に我が子の気配も、連れ去ったメタローの気配も感じられない。この場を移動しようと立ち上がるも、体の節々に走る痛みに再びその場に崩れ落ちる。自分の体を改めて見れば、落下の際にそうなったのかそれともここに来る前の戦いでそうなったのかは分からないが体のあちこちに傷がある。特に痛むのは子供達を守ろうとスコーピオンメタローの毒液を受けた背中だ。自分では確認するのが難しいが、焼け爛れているのだろう事は容易に想像できる。
だがその痛みも、今の彼女から立ち上がる気力を削ぐには至らない。
「はぁ、はぁ……くっ! こ、こんなの……!」
亜矢は満足に力が入らない足に代わり、両手で地面を掴み体を引き摺ってその場を移動しようとする。その時、彼女の聴覚が自分に向けて駆け寄ってくる人の気配を捉えた。足音の軽さから、駆け寄ってきているのはどうやら子供らしい。一瞬逸れた我が子がメタローから逃れてきたのかと期待したが、雄司や愛衣にしては足音が重く規則正しい。恐らくは小学生くらいの子供だ。
警戒する訳ではないが、無視する訳にもいかないので確認のためそちらを見れば駆け寄ってくる1人の少年の姿があった。少年は慌てた様子で亜矢に近付くと、倒れている彼女に視線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「お姉さんッ! 大丈夫ですかッ!」
少年は倒れた亜矢を助け起こそうとするが、女とは言え大人の女性と少年では体格差がある為苦労している様子だ。亜矢と体の主導権を変わった真矢が、苦労して助け起こそうとする少年に手を貸す様に体を起き上がらせた。
「大丈夫、えぇ大丈夫よ……ぐっ!?」
「あぁ、しっかりして! 待ってて、今救急車を呼ぶから……」
少年はスマホを取り出し、119番に連絡しようとする。だが内面からその様子を見ていた亜矢はそれを咄嗟に止めさせた。
「待ってくださいッ!」
「えっ!?」
亜矢が少年に救急車を呼ぶのを止めさせたのには二つの理由がある。一つはこの世界が異世界であると仮定して、その場合この世界には彼女の身分を証明する物が何もない。身分証が意味を為さない中で公的機関の世話になると、最悪の場合非常に面倒な事態に発展しかねない。
そして二つ目の理由は、そんな事よりも連れ去られた我が子の方が重要だからである。今この瞬間にも連れ去られた2人の子供達に危険が迫っているかもしれない。それなのに自分が暢気に休む事など出来なかった。
「私の事は大丈夫。それより、君……この近くでサソリの化け物みたいなのを見なかった?」
額に脂汗を浮かべながら亜矢は少年に問い掛ける。光のトンネルを抜ける途中でスコーピオンメタローからは振りほどかれてしまったが、ここが奴の目的の世界であれば場所は違ってもそう遠くに居るとは思えなかった。
一縷の望みに賭けて問い掛けてみたが、少年は難しい顔になって首を横に振った。
「サソリの、化け物……? ゴメンなさい、そんなのは見た事無いよ」
「そう、ですか……」
仕方のない事だが、それでも落胆を隠せない亜矢。しかしそんな彼女の耳に予想外の少年の呟きが入って来た。
「サソリの化け物……何だろう? 仮面ライダーには色々なサソリの怪人が出てくるけど……」
「……えっ!?」
今この少年は何と言った? 仮面ライダーと言ったのか? つまりこの世界には、自分の他に仮面ライダーが居る?
もしその仮面ライダーの力を借りる事が出来れば、連れ去られた子供達を助け出す事が出来るかもしれない。新たな希望を抱いた真矢は、表に出てくると体の痛みを無視して少年の両肩を掴んだ。
「ねぇお願い教えてッ! この世界、仮面ライダーが居るの? その人、助けに呼べたりするのッ!」
「えッ!?」
突然の真矢の勢いに困惑する少年……章太郎だったが、彼は真矢の纏う雰囲気に既視感を感じた。そう、以前この世界に来訪した他の仮面ライダー達と似た雰囲気。その雰囲気を察した章太郎は、真矢に思わず訊ねてしまった。
「お姉さん、もしかして別の世界から来た仮面ライダー?」
章太郎からの問い掛けに、真矢は真剣な表情で頷いた。
これで子供達を助け出す事に対して希望が持てた。真矢がこの世界の仮面ライダーに関して詳しい話を聞こうと口を開いたその時、突如空中に光の門が開いた。それを間近で見ていた真矢は、素早く反応してそちらを見た。
「あれは……!?」
「さっきのと同じッ!?」
突然開いた光の門に、真矢だけでなく章太郎も目を見開いて注目する。どうやら彼が真矢の元へ駆け付けたのは、空中に開いた門を見ての事だったらしい。この地に降り立った時周囲に人気が無かったのにいきなりやってきた事を不思議に思っていたが、その理由が今分かった。
2人が注目している前で、光の門から二つの影が飛び出した。一つは恐竜の化石が人型になったような異形であるフォッシルメタロー。そしてもう一つは、仮面を被った空色の戦士……仮面ライダーアズールだ。
空中に放り出された両者は取っ組み合いながら地面に落下し、地面に衝突する勢いを利用して転がりながら離れて距離を取った状態で立ち上がる。
「くっ!? ん? ここは……」
『チッ、結局ここまで連れてきてしまったか』
アズールは周囲の光景が元居た世界と違う事に驚愕を隠せないのか、アズールセイバーを構えながらも周囲に視線を巡らせた。一方フォッシルメタローは、最初アシュリィ……仮面ライダーピクシーだけをこの世界に連れ込み、誰の助けも来ない状況で確実に始末するつもりだったのに結局アズールまで連れてきてしまった事に苦虫を噛みつぶしたような顔になった。
が、元々あの世界には他にも仮面ライダーが居た。見方を変えれば他のライダーの横槍を気にせずアズールとピクシーを始末できると考えれば、多少面倒なだけでそう悪い状況でもないと気を取り直した。
『まぁいい、お前と手負いの仮面ライダーだけなら大した事はない。順番が前後したが、先ずはお前から始末してやるッ!』
「やらせるかッ!」
そのままアズールとフォッシルメタローが戦い始めた。フォッシルメタローの両手の鋭い爪がアズールに襲い掛かり、アズールが鋭い剣技でそれを迎え撃つ。
「ハッ! ヤッ!」
『フンッ! オォォッ!』
激しく火花を散らせながら攻撃をぶつけ合うアズールとフォッシルメタロー。一見すると互角の戦いを繰り広げる両者だったが、形勢が徐々にフォッシルメタローの方に傾きつつあった。アズールは元居た世界でフォッシルメタローと遭遇する前にカメレオンファッジと交戦しており、圧倒はしたがその戦いで多少なりとも消耗していた。そこに無理矢理世界を移動しようとした際の疲労が加わり、更には最愛の少女をこの世界に1人で飛ばされてしまった事への焦りもあってか何時ものコンディションが発揮できない状態になっていたのだ。
「はぁ、はぁ……くッ!」
『おっと! ふふっ、どうした? 段々と狙いが雑になってきているぞ?』
「くッ!?」
挑発するようなフォッシルメタローの言葉に、アズールは言葉を返す事が出来なかった。自分が何時もの戦いを出来ていない事は彼自身が分かっている。その理由にも見当がついているのだが、頭が理解しても心の焦りを拭い去る事は出来なかった。
このままだと遠からず追い詰められる。そう危惧しながらも剣を振るう事を止めない彼を、真矢と章太郎が見守っていた。
「あれは……仮面ライダー?」
「見た事のない仮面ライダーだ! スゴイッ!」
「君も、あの仮面ライダーを見た事無いの?」
「うん! テレビでも見た事無いから別の世界の仮面ライダーかも」
「あの怪人も?」
真矢がフォッシルメタローを指差す。章太郎はアズールと激しい戦いを繰り広げるフォッシルメタローを凝視し、記憶にある限り同型の怪人が存在しない事に首を横に振った。
「うん……あの怪人は見た事ない。でも……」
「でも、何?」
「前にムゲン兄ちゃん達が来た時、戦ってたメタローって怪人にどこか似てる気がする」
「メタローッ!」
メタローと言えば、雄司と愛衣を攫った怪人も同じような名を名乗っていた。あれがスコーピオンメタローの仲間であると言うのなら、奴を追い詰めれば子供達へと辿り着く手掛かりになる筈。
そう考えると真矢と亜矢は居ても立っても居られなかった。
「(亜矢ッ! ゴメン、無茶するけど良いよねッ!)」
【気にしないでッ! 私の体はどうなっても良いから、あの子達だけはッ!】
実際問題、2人が負った傷は先程に比べれば大分癒えていた。新人類の体は丈夫で回復力も早い。万全とは言い難いが、それでも自力で立ち上がれるくらいには回復していた。
「君、悪いけど少し離れてて」
「えっ?」
このまま彼をここに居させては戦いに巻き込んでしまうと、真矢は痛む体に鞭打って立ち上がりながらデイナドライバーとベクターカートリッジを取り出した。彼女が手に持つドライバーを見た瞬間、章太郎が目を輝かせた。
「それっ! もしかしてお姉さんもッ!」
「そう言う事。だから離れてて」
今一度章太郎を押し出す様に離れさせた真矢は、ドライバーを腰に装着すると変形させたユナイトキャットにベクターカートリッジを装填してドライバーに装着した。
〈CAT Unite〉
「変身ッ!」
〈Open the door〉
傷だらけの体を包む様に仮面ライダールーナに変身した真矢は、ホルスターから抜いた二丁拳銃の銃剣でアズールと戦っているフォッシルメタローに攻撃を仕掛けた。
「ハァァァァッ!」
『何ッ!?』
「えっ!?」
突如出現し攻撃してきたルーナに、フォッシルメタローとアズールは言葉を失った。アズールは自分が見た事も無い仮面ライダーの出現に、メタローは仮面ライダーが存在しない筈のこの世界に自分が送り込んだ覚えのない仮面ライダーが居る事に。
「ウチの子達を何処にやったッ!」
『何の事だッ!』
「惚けるなッ!? お前の仲間のスコーピオンメタローって奴が、この世界にあの子達を連れ去った事は分かってるんだからねッ!」
叫びながらルーナは銃剣による斬撃と蹴りを駆使してフォッシルメタローを果敢に攻め立てる。怒涛の勢いで攻撃を仕掛けるルーナではあったが、傍から見ても分かる程その動きには精細さが無かった。フォッシルメタローは最初の内こそ突然彼女が姿を現した事に面食らっていたが、冷静になってみれば何てことはないと軽く小突くレベルで彼女をあしらった。
『フンッ!』
「あぐっ!? ぐぅ……返せ……あの子達を、返せ……!?」
【真矢、代わってッ!】
今の傷付いた体で真矢の接近戦主体の動きは難しい。亜矢は体の主導権を代わり、得意の銃撃戦で遠くからフォッシルメタローをその場に釘付けにした。
「私が相手ですッ!」
『ぐむっ!? く、ならば……!』
最初次々と放たれる銃弾にその場で動けなくなるフォッシルメタローだったが、奴は一瞬の隙を突いて彼女の銃撃をやり過ごすと背中から幾つかの化石を分離させプテラノドンの形を作るとそれを彼女に襲い掛からせた。
『ギャオォォォッ!』
「なっ!?」
鋭い嘴で食らい付こうとしてくるプテラノドンの化石に、咄嗟に銃口を向け迎え撃つルーナ。しかし素早く飛んでくるプテラノドンの化石は拳銃弾程度は軽く弾いてしまう。ライフルモードにすればまた違うだろうが、二挺の拳銃を連結させている間にプテラノドンが襲って来てしまう。
内面に居た真矢は自分が代わりに前に出て足技で迎え撃とうと身構えたが、彼女が何かするよりも早くにアズールが斬撃と共に放った暴風がプテラノドンを切り裂く方が早かった。
「させるかッ!」
『ギャオォォォッ!?』
「ッ! 君は……」
「詳しい事は後です。今はアイツを……!」
アズールにはルーナが抱えている事情が何なのか分からない。分からないが、しかし彼女の発する言葉の内容から譲れない何かの為に戦っている事を察する事は出来た。その真っ直ぐな気持ち、必死さは決して悪いものではなく、何より横目で見る限りだが章太郎の事を気遣う様子から彼女が悪人ではない事を確信した彼はルーナと共闘する事を選んだ。その彼の気持ちが伝わり、ルーナも力強く頷き返す。
「ありがとう。私は仮面ライダールーナ。君は?」
「仮面ライダーアズールです」
「よろしく、アズール」
「こちらこそ、ルーナ」
互いに軽く自己紹介を済ませた2人は、鋭い視線をフォッシルメタローに向ける。剣を構えるアズールと銃口を向けてくるルーナを前に、フォッシルメタローはアズールに切り裂かれたプテラノドンを回収して自身の背中に翼を生やした。
『フム……手負いの仮面ライダーが加わった程度で勝てるとでも?』
「手負いだろうと何だろうと……!」
「窮鼠猫を嚙む、と言う諺をご存じありませんか? 尤も、今は私が猫ですが……ね!」
フォッシルメタローからの挑発に、ルーナはライフルモードにしたリプレッサーショットⅡの銃弾をお見舞いした。拳銃モードの時とは比べ物にならない威力の一撃。食らえばフォッシルメタローの体も削り取られるだろう一撃を、奴は化石の翼で軽快に空中を飛び回る事で回避した。骨だけの翼であるにもかかわらず素早く空中を動き回るメタローに、ルーナは狙いがなかなか付けられず銃口を左右に振っていた。
「くッ!? 素早い……」
「任せてくださいッ!」
攻めあぐねるルーナにそう言うと、アズールは特有の能力である飛行能力で空中に居るフォッシルメタローに斬りかかる。風を味方に付け、風を操りながら攻撃してくるアズールは、ただ空中を飛べるだけのフォッシルメタローからすればこの上なく厄介な相手であった。
『くぬっ!? だが、そんな軽い攻撃でこの体を傷付けられるかなッ!』
「なら、こうするまでッ!」
空中で切り結びながら、アズールは一瞬の隙を見てフォッシルメタローの攻撃を回避すると奴より高所へと飛び上がる。そしてそこから風の斬撃を放ち、フォッシルメタローを切り裂きながら上空からのダウンバーストで地面に叩き落した。
『うぉぉっ!?』
「今です、ルーナッ!」
「はいッ!」
〈Genome set ATP Burst〉
アズールの一撃でバランスを崩し飛行能力を奪われたフォッシルメタロー。ただ落下するだけの相手なら狙うのは余裕だと、ルーナはリプレッサーショットⅡにベクターカートリッジを装填し『バーストショット』を発動。強化弾を落下しつつあるフォッシルメタローにお見舞いした。
「そこッ!」
『ぐぅっ!?』
放たれた銃弾をフォッシルメタローは体を捻る事で直撃だけは回避した。だが無理な体勢で回避しようとした為、片方の翼を吹き飛ばされてしまった。
『ぐあぁぁぁっ!? く、貴様ぁぁッ!』
化石の翼を砕かれた事で激昂したフォッシルメタローは、落下しながら所かまわずエネルギー弾を放ち爆撃した。その爆撃の範囲内には、2人の仮面ライダーの戦いを目を輝かせて見ていた章太郎も居る。上空からその様子を見ていたアズールは、彼が居る所に素早く降下しエネルギー弾の爆撃から彼を守った。
「危ないッ!」
「うわぁっ!?」
「くぅっ!?」
無数のエネルギー弾が降り注ぎ、周囲が爆炎に包まれる。アズールはそれを剣と風で防ぎ、ルーナは銃撃で相殺する事でダメージを受ける事無くやり過ごす。
程無くして爆撃が止み、周囲に静寂が訪れる。煙が充満して視界を奪われるが、アズールが風を起こす事で煙は吹き飛ばされ視界が一気にクリアになった。
「危なかった……大丈夫かい、坊や?」
「うん! ありがとう、仮面ライダー!」
「うぅ……はっ! アイツは……!?」
アズールが章太郎の無事を確認している横で、ルーナはフォッシルメタローの姿を探した。だが見渡す限りにおいて、周囲に奴の姿は見当たらない。どうやら爆撃に乗じて逃げてしまったようだ。
今逃げたばかりなら、今から追えばまだ間に合う。そう思い奴の匂いを追って追跡しようとしたルーナだったが、ここで体力に限界が来たのか変身が解けながらその場に崩れ落ちた。
「う……ぁ……」
「あっ! 大丈夫ですか!?」
倒れた亜矢を同じく変身解除した翔が抱き起す。背中に手を回して抱き起された事に、亜矢は痛みに顔を顰める。
「ぐぅっ!? え、えぇ……ご心配なく。見た目ほど大事は無いので。それより、早くアイツを追わないと……!」
「無茶ですよ、そんな体でッ! 何があったかは知りませんが、今は落ち着いて……!」
「でも……!」
多少は回復できたが、今の戦いで残っていた体力の殆どを使い切り意識を保つだけで精一杯の亜矢。それを察した翔はこれ以上彼女に無茶はさせられないと必死に宥めるが、子供達の事が心配な彼女はそれを押し退けてでもフォッシルメタローを追おうとした。
押し問答する2人を見ていた章太郎は、一先ず落ち着いて話せる場所に2人を連れていこうと亜矢と翔の手を取り引っ張った。
「とりあえずさ、一度うちの店に来てよッ!」
「君の店?」
「うん! 前にも仮面ライダーを連れてきた事あるから、そこでなら話も出来るよ」
章太郎からの提案に翔は頷いた。今は兎に角落ち着いて情報交換をする必要がある。亜矢にも今は休息が必要だ。落ち着いて話せる場所があるのはありがたい。
「じゃあ、案内頼めるかな?」
「分かった! こっちだよ!」
「さ、行きましょう。何をするにしても、先ずは落ち着かないと」
「……はい」
まだ子供達の事が心配で後ろ髪を引かれる思いだったが、自分より年下の2人の少年の姿に亜矢も冷静さを取り戻し、今は落ち着いて今後の事を話し合うべきだと自分に言い聞かせた。
亜矢は翔に肩を借り、章太郎の後についていく。3人が離れた後には、無数の爆撃により穴だらけになった地面だけが残されるのだった。