仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE LOST CHILDREN 作:黒井福
突如街中で起こった仮面ライダーデイナと仮面ライダーアズールによるフォッシルメタローとの戦い。防御とパワーに優れるデイナが前に出てフォッシルメタローの攻撃を引き受け、彼に引き付けられている隙にアズールが素早い動きで肉薄しフォッシルメタローに斬りかかる。即席だが息の合ったコンビネーションを見せる2人の仮面ライダーではあったが、その2人の共闘をフォッシルメタローは圧倒的な力で押し返した。
『ぬぉぉっ!』
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
デイナがハルバードモードのハイブリッドアームズで切りかかり、その攻撃を受け止めている隙に背後から迫ったアズールが剣を振り下ろす。だがそれをフォッシルメタローは、腰から生やした棍棒の様な尻尾で叩き落し、その勢いを利用してデイナの事も尻尾で殴り飛ばしてしまった。
そして2人が体勢を崩すと、フォッシルメタローは体から2体の恐竜の化石を生み出し2人の仮面ライダーを襲わせた。生み出された恐竜はどちらもデイノニクスと呼ばれる恐竜の化石だ。
『『キシャァァッ!』』
2体のデイノニクスは足の親指に付いた鋭い鉤爪で2人に飛びつき切りかかる。骨だけの体だからか、それとも生前の身体能力なのか素早い動きで飛び掛かって来るそれを、デイナは咄嗟にライフルモードにした武器で撃ち抜くも効果はなく地面に押さえつけられた。
「ぐぅっ!?」
「仁さんッ!」
『ガルルッ!』
「くっ!」
武器ごと地面に押さえつけられ身動きが取れずにいるデイナ。手にしていた武器を間に挟んでいる為足の爪が彼を切り裂く事は無いが、それは同時に反撃する手段も塞がれている事を意味している。
今は何とか力が拮抗している為爪も牙も届いてはいないが、あの状態が何時までも続くと言う保証はない。故にアズールは彼を援護しようとするのだが、その前にもう1体のデイノニクスの化石が立ちはだかり彼の行く手を阻んだ。
「このッ!」
僅かに躊躇したアズールだったが、即座に気を取り直すとアズールセイバーを構え直し障害を排除しようと剣を振るう。同時に風を操り不可視の風の刃で切り裂こうとした。が、風の刃は化石の体を切り裂く事は出来ずデイノニクスがそのまま接近。大きく広げられた顎で食らい付こうとしてきたのをアズールが剣で受け止めると、直後に背後からフォッシルメタローの一撃が彼を殴り飛ばした。
『はぁッ!』
「ぐぁっ!?」
フォッシルメタローは自分から生まれたデイノニクスの化石ごとアズールの事を殴りつける。その衝撃で化石は粉々になりメタロー本体へと戻り、残されたアズールはそのまま殴り飛ばされてデイナを押さえつけているもう1体に激突した。その衝撃でもう1体も粉々になるが、アズールの勢いは止まらず地面に倒れたデイナに折り重なるような形でぶつかった。
「うぐぉっ!?」
「い、つつ……あ!? 仁さん、大丈夫ですか!?」
「ぐ……あぁ、大丈夫。それより、あいつ……」
「はい。僕が昨日亜矢さんと戦った時よりも強いです」
察するに、先日は若干手を抜いていたのだろう。まだこちら側の戦力の把握が出来ていなかった為、先日は様子見しながら戦っていたのだ。だが今日は違う。向こうはメタロー同士が合流し情報共有の結果この世界に居る仮面ライダーを把握し、そしてこの場で確実に始末する為本気で戦っているのだ。
戦いの中でデイナは相手の戦力を分析した。あのフォッシルメタローの厄介な所は何と言ってもその体から無数に恐竜の化石を生み出せるところにある。様々な能力を持つ恐竜の化石を戦力として従える事が出来る為、一見すると1体のメタローを相手にしているように見えてその実敵の戦力は未知数といっても過言ではない程に強大であった。
(あの化石を次々生み出す能力、あれを何とかしないとこっちがジリ貧だな)
一応、こちら側も全力でゴリ押すと言う手が無いわけでもない。だが彼が何より恐れているのは、連中が他の世界に増援を要請していた場合だった。まだ見ぬ未知の敵が現れる可能性がある以上、必要以上に手札を晒してしまうのは賢いやり方ではない。出来ればフォームチェンジも控えて戦いたいところだ。
さてどうするか……デイナがライフルの銃口を向けながら思案していると、隣に立つアズールが小さい声で耳打ちしてきた。
「仁さん、僕気になる事があるんですけど……」
「ん?」
「何でアイツ、出した化石を回収するんでしょう?」
思えば先日もそうだった。フォッシルメタローは翼竜の化石を生み出し戦ったが、最後にはその化石を回収している。先程もそうだし、今もデイノニクスの化石達を回収していた。無限に生み出せるのであれば、そんな事をする必要は無い。
(あいつ、もしかして……)
それらの事実から、デイナはある仮説を考え付きそれを実行に移すべくアズールに作戦を伝えた。
「翔君、何か制圧力の高い力はあるかな?」
「制圧力、ですか?」
「あぁ。出来れば広い攻撃範囲を持つ攻撃であれば最高だ」
「……ありますよ、そういうの」
デイナからの話にアズールは自信満々に1枚のマテリアプレートを取り出し指で弾いた。それにデイナは満足そうに頷くと、簡単に作戦を説明して行動に起こす。
「それじゃ、検証と行くか」
〈DOG + WHALE Evolution〉
「ゲノムチェンジ」
〈Congrats! Birth of a new life, CETUS. Open the door〉
新たに二つのベクターカートリッジ、犬とクジラの遺伝子のものを取り出しそれをベルトに装填するデイナ。アンダースーツは水色になり、鎧は黒。頭部は角が無くなった代わりに犬耳の様な突起が二つ出来、両足の装甲には鰭状のパーツが装着された。そうして姿が変わったケートスライフのデイナは、大剣モードのハイブリッドアームズを手に1人突撃した。
それを見てフォッシルメタローは彼を嘲笑う。先程2人掛りで圧倒されていたと言うのに、1人で何が出来ると言うのか。
『甘く見られたものだな……!』
デイナの作戦は分かっている。自分が前面に出て囮となり、その隙にアズールに攻撃をさせようと言う魂胆なのだろう。さっきもやって来たし、それを打ち破られていながら尚も同じ作戦で仕掛けてくる事にフォッシルメタローは侮蔑の感情さえ抱いた。フォームチェンジして少しは手を変えた様にも見えるが、所詮その程度。フォッシルメタローは両手に鋭い爪を生み出し、それで迫るデイナに斬りかかった。
『はぁッ!』
「くッ!」
振り下ろされた爪をデイナは大剣で受け止める。この瞬間彼は両手が塞がってしまい、しかも進む事も引く事も出来ない状態へと追いやられる。今が好機、アズールがまだ仕掛けてこない内に叩きのめしてしまおうと、フォッシルメタローが棍棒の付いた尻尾でデイナを叩き潰そうと尻尾を振り上げる。
その瞬間、彼は片手をフォッシルメタローの胴に当てた。
「そこ」
『むっ!?』
次の瞬間、強烈な衝撃がフォッシルメタローの中を突き抜けた。表面ではなく内側を直接ぶん殴られたような衝撃に、フォッシルメタローは全身を震わせて大きく後退した。
『うぐぉぉぉぉっ!? な、何だ……!?』
一体今何をされたのかが分からず困惑するフォッシルメタローだったが、本当に訳が分からない事態になるのはここからであった。
何とフォッシルメタローの体を構築している化石が次々と体から零れ落ち始めたのである。
『い、いかんッ!?』
全身の化石が零れ落ちる状況に焦るフォッシルメタローは慌てて零れ落ちた化石を回収しようとする。だがそれよりも早くに後ろで待機していたアズールが動く方が早かった。
「翔君」
「はい!」
《ワンダーマジック!》
アズールが起動させたのはワンダーマジック。アプリゲームとしては、プレイヤーは魔法使いとなって様々な呪文や召喚モンスターを駆使してダンジョンに挑むと言う、オーソドックスなリスペース式のパズルゲームだ。ピースとなるパズルドロップをスライドさせて組み合わせる事で消去し、連鎖的に破壊する事でより多くのダメージを生み出し敵を倒すこのゲームを力と変える、その名もマジックリンカーの力を今アズールが振るおうとしていた。
《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》
「リンクチェンジ!」
《Alright! マテリアライド! マジック・アプリ! 奇跡の大魔法、インストール!》
アズールがマテリアフォンを翳すと彼の姿が変わる。青いパワードスーツの上から赤色のローブが装備され、左手には一本の短い杖が握られる。その杖の先端には四角い宝石のようなものが埋め込まれ、4つの面それぞれに岩・水・炎・風のマークが付いていた。
「これでッ!」
《マジックワンド! ファイア・マジック!》
マジックリンカーになったアズールは四角い宝珠を回転させ炎を示す赤色の面を正面に合わせ杖の引き金を引く。すると地面に赤い魔法陣のパズルが出現し、アズールがトリガーを引きながら杖を動かすとそれに合わせてパズルドロップが動き連鎖的に消えていく。
《ワン・チェイン! ツー・チェイン! スリー・チェイン! フォー・チェイン!》
『ま、マズイッ!?』
何が起きるのかは分からないが、このままではマズイと察したフォッシルメタローがその場を離れようとする。だがデイナがそれを許さなかった。彼はメタローの行く手を阻むと手を前方に翳した。するとその瞬間またしても不可視の衝撃がフォッシルメタローの全身を強く揺さぶり、更に全身の化石がポロポロと零れ落ちた。
『うぐぉっ!? あ、がっ!? や、やめ……!?』
ケートスライフのデイナの能力は、高い嗅覚・聴覚と超音波だ。クジラ由来の超音波によるエコーロケーションと、犬由来の嗅覚と聴覚により敵の位置を素早く発見する事に長けた姿である。が、この姿の本当に恐ろしい所は超音波を一点集中させての超振動攻撃にある。防御不可能な相手の内側を直接攻撃する振動攻撃は、防御力の硬いフォッシルメタローの”内部”を直接攻撃し、その体を”維持できない”ようにした。
そうこうしている内にアズールは更にパズルドロップを消し続けていた。そして…………
《ナイン・チェイン! フル・チェイン!》
全てのパズルを消し、その瞬間アズールがトリガーから指を放した。その瞬間10の巨大な炎の塊がフォッシルメタローを零れ落ちた骨ごと焼き払う。
《イッツ・ア・マジック! フル・チェイン・ファイア!》
『ギャァァァァァァァッ!?』
地獄の業火もかくやと言う炎で焼き尽くされ、フォッシルメタローの悲鳴が周囲に響き渡る。因みにデイナはアズールの攻撃が始まる直前に大きく距離を離していた為、爆発の余波に巻き込まれる事は無かった。
「さて、どうなったかな…………お?」
炎と煙でフォッシルメタローの姿が見えなくなる。それでもデイナが持ち前のエコーロケーションで少し爆心地を走査していると、予想通りの光景を捉える事に成功した。
「やっぱり……か」
直後に風が吹き、炎と煙が吹き飛ばされるとそこには周囲に消し炭となった骨が散らばり、その中心に炭化しかけた体で佇むひ弱そうな見た目の人骨の様な怪人が佇んでいた。アズールはその怪人を凝視する。
「あれが……」
「そう、あれがアイツの本当の姿だ。今までの姿は奴が能力で操っていた化石を纏ったものだった訳だね」
無尽蔵に体から化石を生み出せるのであれば、態々回収する必要は無い。回収すると言う事は、替えが利かないと言う事であり、それが意味するところはフォッシルメタローには動かせないコアのような物があると言う事だった。
ひ弱な姿へとなってしまったフォッシルメタローは、今の自分の姿にワナワナと体を震わせた。
『こ、こんな……!? こんな、事が……!?』
その震えは怒りによるものか、はたまた恐怖によるものか。それはハッキリとしないが、確実に言える事は今の奴にはもう操れる化石が無いと言う事。鎧も何もかもを奪われた文字通り丸裸にされた状態であれば、倒す事は容易だった。
デイナとアズールは基本形態のミノタウロスライフとブルースカイリンカーに戻ると、フォッシルメタローにトドメを刺すべく必殺技を放った。
「それじゃ、さっさと終わらせようか」
「はい!」
〈ATP Burst〉
《フィニッシュコード! Alright! ブルースカイ・マテリアルバースト!》
『ま、待て……!?』
最早抵抗する気力も無いフォッシルメタローに、デイナとアズールの必殺技が放たれる。錐揉み回転しながら放たれたデイナのノックアウトクラッシュと、光を纏いながら放たれるアズールのマテリアルバーストがフォッシルメタローに直撃し大きく吹き飛ばした。
「「ハァァァァァァッ!!」」
『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
2人の飛び蹴りを喰らい、フォッシルメタローは断末魔の叫びを上げながら大きく吹き飛ばされ地面に落下。その直後大きな爆発を起こし、この世界から完全に消え去った。
「ふぅ……」
「よし……! あれ、街が……?」
「ん?」
メタローを倒し、一息つく2人。その周囲でフォッシルメタローにより破壊された筈の街が元の姿を取り戻していた。
それはメタローと言う怪人が倒された事で、それによる被害が無かった事とされるいわばメタローを倒した証の様な物なのだが、当然その事を知る由の無い2人には何が起きているのか理解できない。
だがそれでも、破壊された街が元の姿を取り戻している事だけは理解できた。
「何だか分からないけど、街が元に戻ってるみたいだ。これなら被害の事は心配す居る必要もないかな」
「そうか……良かった。あッ! そうだ、アシュリィちゃん!」
フォッシルメタローの言葉を信じるなら、今頃アシュリィや亜矢達の元へは別のメタローが向かっている筈。アズールは急いで元来た道を戻り、デイナも妻と子供達の安否を心配してそれに続くのだった。
***
一方喫茶店Hameln前での戦い。街中での戦いに比べれば、こちらはどちらかと言うと仮面ライダー側が優勢と言えた。それと言うのも、仮面ライダー側の役割がはっきりと分かれているからだ。
「ハッ!」
『チッ!? このアマッ!』
アシュリィが変身したピクシーが、スコーピオンメタローに斬りかかる。スコーピオンメタローは外殻が固く通常の斬撃では攻撃が通らない。その為彼女には関節部分など小さな攻撃目標を狙う事を余儀なくされた。普通なら難儀するその攻撃を、彼女は的確に命中させ徐々にだがスコーピオンメタローを弱らせた。
勿論スコーピオンメタローとて一方的に攻撃を受けてばかりではない。鋏になっている片手か再生した尻尾の毒針で反撃しようとしてくる。だがそれをルーナが許さなかった。彼女はピクシーに攻撃が及びそうになると、その都度ライフルモードのリプレッサーショットⅡで狙い打った。こちらの攻撃は甲殻でも完全に防ぐことは難しいらしく、甲殻を貫かれこそしなかったが撃たれる度に大きく体を仰け反らせていた。
「させませんッ!」
『ぐぅっ!? くそ、コイツ等ぁ……!?』
地味に的確な連携を見せるピクシーとルーナ。それぞれが得意とする距離がハッキリと分かれているが為に出来た芸当だった。
厳密にはルーナは遠距離でも近距離でもどちらでも自在に戦えるオールラウンダーだ。だが今回は相方に接近戦を得意とするピクシーが共に戦ってくれている為、接近戦を得意とする人格の真矢はなりを潜め亜矢が前面に出て戦っていた。
的確な狙撃がスコーピオンメタローの甲殻を穿つ。その度にたたらを踏んで体勢を崩す相手に、ピクシーが肉薄し鋭い刺突で関節部やルーナが穿った部分を突いていた。
「ハッ! ヤァッ!」
『ぐぁっ!? この、舐めるなぁッ!』
「うぐっ!?」
破れかぶれになってスコーピオンメタローが尻尾を振るうとそれがピクシーの腹に直撃し彼女を近くの壁に叩き付ける。腹に受けた衝撃と直後に背中に受けた衝撃に彼女は大きく咳き込み、暫くその場から動けなくなる。
「ぐはっ!? うぐ、ゲホゲホッ!?」
『クソが、まずはテメェからだッ!』
「ぐっ!?」
腹と背中を強かに打ち付け倒れたピクシーに、追撃を放とうと迫るスコーピオンメタロー。尻尾を持ち上げ毒針から毒液を滴らせながら迫るスコーピオンメタローに、ピクシーは苦しみながらも何とか立ち上がろうとしている。だが腹と背中を強かに打ち付けたせいで肺から空気が強制的に吐き出させられたからか、呼吸を整えるのに精いっぱいでまともに態勢を整える事すら出来ていない。スコーピオンメタローはそんな彼女を嘲笑う様に近付き、尻尾の毒針を彼女に突き立てようとした。
しかしそれをルーナが妨害する。彼女は人格を真矢に切り替えると、リプレッサーショットⅡを二丁拳銃モードに変え接近戦を仕掛けた。
「その子に近付くなぁッ!」
『あ?』
ルーナがスコーピオンメタローに斬りかかる。銃身下部に付いた銃剣で斬撃を放つが、この攻撃ではスコーピオンメタローの甲殻を切り裂く事は出来ない。あっさり弾かれ逆に隙を晒してしまう。それを見てスコーピオンメタローは彼女を先に始末しようと狙いを変え毒針を彼女に突き刺そうとした。
『ならテメェからだッ!』
毒液を滴らせながら放たれる尻尾の一撃。念仏を唱える時間すらない程のその一撃を、しかし彼女はギリギリのところで回避してしまった。
『んなっ!?』
この電光石火の反応速度は、彼女が二重人格である事が大きく関係していた。人格が二つあるという事は、単純に計算して2人で思考しているという事になる。この一つの体で2人分の思考をしている事で彼女は驚異的な情報処理を可能とし、それが電光石火の如き反応速度に繋がっているのである。
逆に隙を晒す事になったスコーピオンメタローに、ルーナは次々と蹴りを放ちその場から大きく押し出した。
「タァァァァッ!」
『うぐっ!? ぐぉぉぉおおっ!?』
接近戦を得意とする真矢のルーナによる攻撃でその場から引き離されるスコーピオンメタロー。その間にピクシーは体勢を立て直し、ルーナと共に攻撃に加わった。
「マヤ、ゴメン!」
「大丈夫?」
「うん!」
ルーナと並び立ち戦う態勢を整えたピクシーだったが、対するスコーピオンメタローは彼女達が暢気に攻撃してくる時間を与えてはくれなかった。スコーピオンメタローは2人が並び立ったのを見ると、尻尾を大きく振るい毒液を飛ばしてきた。
『クソが、舐めんなッ!』
「ッ! アシュリィちゃん、危ないッ!」
一度この攻撃を見ているルーナは、このままでは2人共毒液を受けてしまうと危険を感じ咄嗟に彼女を突き飛ばし毒液の範囲から彼女を逃した。お陰で彼女は毒液を受けることはなかったが、代わりにルーナは足に毒液を受けてしまった。ルーナの装甲は生体装甲なので当然ながら神経が通っている。そこを強力な毒液で溶かされたので、凄まじい激痛に彼女は苛まれ悲痛な悲鳴を上げてしまった。
「うあぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「マヤッ!?」
毒液を受け煙を上げる足を押さえてのたうち回るルーナをピクシーが支える。仮面でお互いの顔は見えないが、それでも真矢が苦痛に顔を歪めているのが分かってピクシーも仮面の奥で焦りの表情を浮かべていた。
そんな2人にスコーピオンメタローは迫り、ピクシーを尻尾で殴り飛ばした。
『ははぁッ!』
「うぁっ!?」
『クククッ! さて、先ずは1人」
「う、くぅ……!?」
まだ余裕を持つピクシーをルーナから引き離し、手負いで動けないルーナを確実に仕留めようと毒針を構える。まだ足を激痛に苛まれているルーナには反撃も回避も出来る余裕は無く、今の彼女に出来る事はメタローを睨み返す事しかなかった。
窮地に陥るルーナを助けるべく、ピクシーが即座に体勢を立て直し体当たりで引き離す。
「離れろ、このぉッ!」
『うぉっ! ならお前からだッ!』
「ぐっ!?」
敢えて自分から向かってきたピクシーを弄ぶようにスコーピオンメタローが標的を彼女に帰る。右手の鋏と尻尾の攻撃で追い詰めていく。その攻撃にピクシーは反撃する間もなく、防御に徹する事を余儀なくされる。
とは言えピクシーも何も考えず攻撃を防いでいる訳ではなく、防御の最中にグリップのトリガーを引いてハンドガードを向けた。スコーピオンメタローの攻撃をそのまま相手にダメージとして返す為だ。
だがこの攻撃は先日一度見せている。同じ愚を犯すほどスコーピオンメタローも馬鹿ではなく、彼女がトリガーを引いて構えを取ったのを見ると、攻撃を止めてハンドガードが攻撃を吸収する事を許さなかった。
『ととっ! へっ、そう何度も同じ手を喰らうかよ』
一度はこれで甲殻を砕かれかけているのだ。そんな攻撃を許す訳がない。狡猾なスコーピオンメタローにピクシーが仮面の奥で歯噛みする。
と、その時、まだトリガーが引かれているピクシーのハンドガードに何かが直撃した。スコーピオンメタローの攻撃ではない。
「えっ!?」
『何ッ!?』
一体何が当たったのかとピクシーとスコーピオンメタローが周囲を見渡す。果たして何がハンドガードに命中したのかは直ぐに分かった。ルーナだ。倒れたルーナが、人格を亜矢に切り替えてライフルモードのリプレッサーショットⅡで正確にピクシーレイピアのハンドガードを狙い撃ったのだ。
「はぁ、はぁ……アシュリィさんッ!」
「! 喰らえッ!」
『し、しま――』
攻撃さえ喰らえば、ピクシーはそれを衝撃として狙った相手に喰らわせる事が出来る。ルーナの機転により放たれたその一撃を、近距離に居たスコーピオンメタローは回避も出来ずまともに喰らってしまった。
結果、近距離で強烈な衝撃を喰らったスコーピオンメタローは全身を守る甲殻を大きく罅割れさせた。
『ぐあぁぁぁぁぁっ!?』
甲殻を砕かれながら大きく下がるスコーピオンメタローに、ルーナはベクターカートリッジをライフルのスロットに装填しピクシーはマテリアプレートを押し込んだ。
〈Genome set ATP Burst〉
《フィニッシュコード・ソロ!》
2人の仮面ライダーが必殺技を放つ準備に入ったのを見て、スコーピオンメタローは慌てて命乞いをして止めさせようとする。
『ま、待てッ!? 待ってくれッ!? 分かった、もうお前らに手は出さないッ!? だから、だから……』
「……って、言ってるけどどうする? アヤ?」
ここでピクシーは敢えてルーナに意見を仰いだ。自分はともかく、彼女は我が子をスコーピオンメタローにより攫われ怖い思いをさせられた。そんな相手を果たして彼女は許す事が出来るだろうか?
「申し訳ありませんが……大切な我が子を怖い目に遭わせた。……そんな奴を、許せる訳ないでしょ?」
「だって。残念だったね」
『ちょ、ちょ、ま……!?』
「それに、私、サソリ大っ嫌いなの。アヤとマヤが許しても、私は絶対に許さない」
無慈悲な死刑宣告に、もう逃げられないと悟ったスコーピオンメタローは自棄になりピクシーに突撃した。
『クソがぁぁぁぁぁぁッ!?』
「これで……!」
「終わりッ!」
《Action! オトギガールズ・マテリアルシング!》
ルーナの狙撃とピクシーの刺突が突き刺さる。2人の必殺技に、遂にスコーピオンメタローの甲殻が完全に敗北を認め砕け散りその下にあった本体もダメージに耐えきれなくなる。
『ギャァァァァァァァッ!?』
断末魔の叫びと共にスコーピオンメタローの体が砕け散る。爆散する寸前にピクシーはその場を離れ、足をやられて立てないルーナを支えた。
「アヤ、大丈夫?」
「はい。やりましたね、アシュリィさん」
「アヤとマヤが居てくれたから」
2人の仮面ライダーはお互いの健闘をたたえ合いながら、スコーピオンメタローの吹き飛んだ後の炎を眺めるのだった。