居酒屋で都市では珍しい友達と酒を飲んでいた。親に隠れ、10代になったばかりのガキがクソみたいな肉を食い、酒を片手に喉へ流し込んでいく。そんな中で、友達と楽しんでいた途中でその場所は地獄へと変わった。酒屋のピアノでさっきまで演奏していたピアニストが狂ったようにピアノに頭を打ち付け、自身の腕をねじ切り、鍵盤の上で潰し、ピアノを血肉で染めながら音を奏でる。そしてその男はねじれた。この世のものとは思えない旋律と共に辺り一帯が吹き飛び、更地に変化した。
俺は、全身を打ちながらもなんとか大きな瓦礫の隙間に入ったおかげで、ねじれて生まれた化け物には気づいていなかった。俺は、化け物が奏でる旋律によって気が狂いそうになりながら、その場から動かずに息を殺した。その間化け物はピアノを弾き続けながら、何人もの人間をバラバラに解体しては、何かを組み上げていった。数えるのも馬鹿らしくなるほどの人間を解体して組み上がったそれを見て戦慄した。化け物は演奏を続けながら巨大なピアノを人で作っていた。とても醜く、巨大なピアノを組み上げていた。もうすでに何人ものフィクサーがこいつを処理しようと派遣されてきたが、その度により一層強く音を奏で、是こそが芸術だと言わんばかりに殺していった。
ただ、時間だけが過ぎている中で突然、化け物が奏でていた音が止んだ。それだけではなく、あたりでしていた物音や俺の心音でさえ、全てが音を発するのを止め、沈黙する。瓦礫の中を音がしない沈黙の中で一人、スーツに身を包み、真っ黒な手袋をはめた白髪の女性が化け物に向けて歩みを進める。
都市に住むものならば、ほとんどの者が知っているであろう、色を冠するフィクサーのうちの一人「黒い沈黙」であると分かった。彼女が現れた途端に、辺りの音がなくなったのがその証明だ。
結局は、彼女でもその化け物には敵わなかった。黒い沈黙(彼女)に殺到する音の衝撃と無数の手のような何か。全てを人とは思えないような身体能力と身のこなしで躱し、捌いていたが、途中で動きを止める。肩で息をし、その顔には、大量の汗が浮かんでいることがわかる。化け物の攻撃を合図に戦闘が再開される。しかし、さっきのようなキレはない。話に聞くような黒の沈黙(彼女)とは、かけ離れている。それにさっきから何かをかばうようにしながら戦っているようにすら見える。少しずつ黒い沈黙(彼女)は削られていった。もうすでに、満身創痍に陥っている。黒い沈黙(彼女)の後ろ姿は今にも倒れそうなほど弱々しい。しかし、なぜか、不安はない。黒い沈黙(彼女)が俺を見て微笑む。また、黒い沈黙(彼女)は化け物に向けて走り出す。化け物を殺さんと駆ける。しかし、黒い沈黙(彼女)も無惨に殺され、手袋は捨てられた。その醜いピアノの弦と鍵盤へと変えられいる途中、一人の男がやってきた。黒の沈黙(彼女)のようにスーツを着込み、黒い仮面と腰に剣をかけた男だった。彼は、自身の足元に落ちている手袋と今この瞬間も醜いピアノの一部になろうとしている黒い沈黙(彼女)を何度も見る。彼は、足元に落ちている黒い沈黙(彼女)の手袋を拾いその手にはめる。彼は肩を震わせながら黙々と化け物に向かい歩みを進める。彼のその背中にはこの世界を憎悪するかのような大きさの怒りと憎しみを垣間見ることができた。彼は化け物から殺到する全ての攻撃を腰に下げていた剣を抜き放ち切り裂き、躱し、その化け物に近づいていく。化け物に近づき、最初に腕を飛ばし、何度も切り裂いていく。彼は黒い沈黙(彼女)の亡骸を抱き、叫ぶ。
俺はその彼の姿を見ながら意識を手放した。意識が薄まる中で頭の中で俺に語りかける声がした。男か女かはわからないこの世のものではない声。その声を否定する。その声が何を言っているのかわからない。けれど、この声を受け入れれば、黒い沈黙(彼女)が戦った意味を否定するような気がしたからだ。
「……長。課長。起きてください課長」
最終回の方向性について(エンディング)
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幸せでもいいじゃない(ハッピーエンド)
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最後まで都市らしく(バットエンド)