さっきまで赤色の濁流に覆われていた地面を走る。木々の間を抜け、濁流が流込んだ大樹の前に立つ。白い大樹の枝に実る人程度の大きさの深紅の果実。なにかが折れる音がし、果実が落下を始める。木の真ん中で落下が停止し、果実の皮を破りなかから深紅を滴らせる純白の骨格。果実の形を作っていた深紅は形を崩し、ドリーだったモノは深紅のパーカーを羽織る。何もなかった眼窩には赤黒く耀き揺らめく瞳が俺を見つめる。手を掲げ俺へ向ける。向けられた手から射出された一本目の棘を身体を半身にして避ける。半身にした身体の動きに合わせ刀を抜刀し、残りの棘を弾きながらねじれに向かって走る。背後で地面が爆発したのを背中に感じながら思案する。
さっきの棘は、カリンを殺した攻撃と同質のモノか。そして、このフィールドここら一帯にねじれが形成した樹木を模した何か。ということは……やはり。右から20、左から18、上から8、正面から23。まだ増えるか……背後は無視だ。いちいち相手してたら切りがない。
幹が盛り上がり、枝が動き、俺を殺そうと形状を変化させる。更に加速し、刀を振るう。全て対処しようとするな!減速したら呑み込まれて死ぬ。致命傷以外はかまうな!今の俺だとどっちみち
右肩回避、左腿切り払い、左腕切り払い、右脇腹回避、抜けた。地面に違和感?!
大きく横に飛び回避する。地面から辺りをある木が生えてくる。足を止められた。一か八かになるがやるしかないな。
腰に下げていた鞘を手に取る。鞘は俺の意思を汲み取りその形状を短刀へと変える。それを覚悟を決め胸に刺す。刺さった痛みはない。あるのは、自分の一部として振る舞う何かだけだ。だが、知っているこの後自分の身体に何が起きるのか。全身が痛みを訴える。目の前がチカチカと視界が明滅している。時間が引き伸ばされ、心臓が、肺が、内臓が無意識下の機能を停止したのを自覚する。循環している血液が滞り始めたのを感じ取る。俺という生命活動が止まっていく。それを拒むように全身の機能を意識的に活動させる。
肉体の完全マニュアル操作。本来、人間が意識的に行うには過多となる。それ故に外的刺激、内的刺激に対し反射近い形で行われる身体機能を代償とする事によって、この力は形を成した。それは、力の移動、完全なエネルギーの変換。あらゆる抵抗を逆に力へと変えられる。これで何が変わるのか。あの机上の空論が使える。そしてその後も使える。
全身の筋肉へ命令を飛ばす。何の音も変化もなく、それまで以上の速度へと加速する。俺を殺さんと向かってくる白い棘の中へ突っ込む。何人たりとも俺を止める事はできない。棘を砕き、更に速度を上げて突き進む。刃を左手で掴み鞘の代わりにする。条件は整った。全身が悲鳴をあげるほどの加速を行う。全身へかかる負荷も加速を阻む力の全てを力として取り込み加速する。間近のねじれを視認する。
音を置き去りにし、それさえ越えて抜き放たれて剣は振るわれる。
「今は届かぬ死の絶世!!」
しかし、憧れるが故に、切望するが故に届かない。彼が『今は届かぬ絶世』と思うが故に、神聖視するが故に刃は、命までに手が届かなかった。
クソッ!殺し切れなかった!!身体は……後、1回分の時間はもつか。さて、そろそろいい加減、あの人を越えるぞ。俺の絶世を示せ。体を動かす以外のすべて停止。どっちみち時……間がたりない。思考がまとまらない。脳が処理し……きれなくなってきている。処理する事象を少しでも減らす。心臓を、肺を停止させる。動かすのは、己を動かす物のみ。
全身の筋肉を、重力を、俺にかかっているあらゆる力を速度へ上乗せする。攻撃さえ受け止め、砕き、速度へと替えて前進する。さっきよりも速く、速く、もっと速く!
今出せる限りの最速でねじれの前に立つ。100の速度から0へ。体を動かしていた力は刀を動かす腕へ集約する。圧縮された力は、何者も目の前に立つ事を許さない。
「
振るわれる刀は、あらゆる物を追い越し、抵抗を許さず切断する。空間さえ、たとえそれがねじれであっても、例外には含まれない。ねじれの頭蓋は切断され、その体躯も、棘も稼働を止め、崩れていく。
「グッ」
胸から鞘を抜く同時、全身の神経と心臓や肺といった器官が稼働を再開し、強烈な痛みに声が漏れる。顔を上げ、全身の体の動きを確認する。大丈夫、問題なく動く。
「ふぅ~。よし、問題ない」
ユジャンを回収しに走る。とりあえず、戻ったら何人残ったか確認しないとな。そしたら、残った奴らで飲むとするか。
最終回の方向性について(エンディング)
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幸せでもいいじゃない(ハッピーエンド)
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最後まで都市らしく(バットエンド)