君臨するは我にあり! ~菓子姫平定録~ 作:ペンギンフレーム
予定通り生徒会連の勧誘に横やりを入れるのに成功し、ひとまずこれで生徒会に俺が喧嘩を売っていることは伝わっただろう。校内の秩序を守るなんてお題目を掲げている以上、この宣戦布告を無視することはしないはずだ。
「下準備も済んだところで、自己紹介だ」
古條を仲間に迎えた後、現状の整理と今後の方針を話し合うため如月に召集をかけ、現在は俺の踏破したダンジョンに集合している。
一応机と椅子は用意してあるが、お世辞にも居心地が良いとは言えない。しかしこのダンジョン内ほど内緒話に向いている場所もない。無関係の生徒や生徒会の関係者に聞かれる心配は0だからな。
「俺については今更言うまでもないだろうけど、氷室凪だ。異能強度は推定で5中位。目指すは平定者。これから先、俺の軍勢はもっと大きくなるだろうが、お前らはその栄えある初期メンバーだという自覚を忘れずに行動するように」
□□□□□□□□□□□□□□□□
【Name】
氷室 凪
【Level】
113
【Class】
菓子姫
【Core Skill】
☆君臨する支配
【Derive Skill】
◇菓子兵召喚 Lv7
◇特権的我儘 Lv1
◇気紛れな依怙贔屓 Lv1
◇フライデイ Lv1
◇星外魔術 Lv1
◇星杖起動 Lv2
◇オーラ Lv1
□□□□□□□□□□□□□□□□
Dスキルは一旦置いておくとして、古條を仲間に引き入れるまで俺のレベルは83だったのだが、上がってるな。休校期間中の検証である程度予想は出来ていたが、やはり見立ては間違っていなかったらしい。
「はいはい! 次は樹霧ですね! 氷室軍団副団長の樹霧緑です! 平定者を目指すなんて面白そうだから協力することにしました! 異能強度は日によって変わります! そしてこの子が私の神的チェーンソー、フライデイです!」
『フライデイだ。うちの緑が迷惑をかけると思うがよろしく頼む』
「樹霧の方が氷室くんより強いので困ったら頼ってくれて良いですよ!」
「あ? 誰が俺より強いって?」
「樹霧です!」
「そういうのは後にしてよ」
バチバチと火花を散らす俺たちを如月が軽くあしらう。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
◇フライデイ Lv1 +
樹霧緑の異能「電鋸九十九?『
▽電鋸九十九?『
身体能力を強化する。
金曜日、13日、13日の金曜日の場合、更に能力が大幅に向上する。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
★
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
◇星外魔術 Lv1 +
樹霧緑の異能「星外魔術」を強制起動する。
▽魔術
・障壁の魔術
縦横高さの合計が4m以内となる不可視の壁を展開する。
同時展開可能数:3
・?の魔術
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
樹霧の「
特定条件を満たした場合に身体能力が強化される異能は、分類不可とされているその他の異能の中では比較的ポピュラーなものであり、当初はその手の異能だと思っていたのだが表示上は九十九?となっている。
一先ず九十九憑きなのかどうかはおいておくとして、樹霧の場合強化の幅は金曜日<13日<13日の金曜日という順番らしい。要は頻度が低い条件ほど強くなるというわけだ。
特定条件を満たした時に強くなるタイプのホルダーだという予想はついていた。生徒会との戦いぶりが日によって目に見えて違うからな。
樹霧を勧誘した日、今日のコンディションであれば樹霧の異能強度は恐らく5の中位程度、と評したのはそういう理由で、あの日は金曜日でも13日でもなかった。絶好調の樹霧、即ち13日の金曜日であれば、異能強度は恐らく6に届く。
続けて魔術。これは元々俺が目指していた魔術師というホルダーが使う異能だと思われる。こればっかりは流石に完全な予想外だったのだが、しかし話を聞くに樹霧は正式な魔術師というわけでもないらしい。
それというのも魔術とは本来学問であり、地道な積み重ねの末に術式を理解し習得していくものなのだが、樹霧はそんなことはしていないという。ではどうやって魔術を覚えたのかと聞いてみると、本人曰く夢の中で不思議な少女が教えてくれたのだとか。誤魔化しているのか本気なのかはわからないが、これ以上は問い詰めても意味がないため一先ず樹霧は魔術も使えるという事実だけ受け入れておくことにした。
ブラックの奇襲を完全に防ぎきったのは障壁の魔術で、それとは別にもう一つあるようだが、それについては秘密ですと笑って答える気はないようだった。ステータスの表示上も?になっているところを見ると、旗下に入ったとしてもある程度情報の開示は本人で取捨選択出来るらしい。
その辺りはまあ良いとして、一番の謎はやはりあのチェーンソーの正体だろう。結局フライデイは付喪神なのか違うのか本人に聞いても、フライデイは神です! などというカルト宗教のような答えが返ってくるばかりで話にならない。
俺が思っていた以上に謎に満ちた女だ、樹霧緑。
「2-Cの如月りりだよ。氷室に協力するのは沖嶋くんのため」
「……? どういうことですか? 沖嶋くんも仲間なんですか?」
「緑は細かいこと気にしなーい。うつりちゃん、よろしくね」
「は、はい! よろしくお願いします!」
さもフレンドリーで頼れる先輩のような雰囲気で如月が笑いかけると、古條は畏まった様子でペコペコと頭を下げた。
樹霧とは同じクラスだし元々交流があったのか普通に話している。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
◇星杖起動 Lv2
如月りりの異能「星の杖」を強制起動する。
▽星の杖
星の記憶を読み取り魔法を再現する装置。
使用には星の記憶を書き込んだメモリーカードと、
魔力を蓄えた魔石が必要となる。
・連続詠唱+1
・同時詠唱+1
【魔力残量】
150/150(m)
【カードスロット】
・Fly(1m/1m)
・StrongSecond(1m/3m)
・Lightning(1/5m)
・AnchorChain(1/1m)
・SpiralLand(1/2m)
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
如月のステータスは今更見るまでもない、と思っていたのだが予想に反してかなりの変化が起きていた。
俺のスキルポイントで強化したのは連続詠唱+1だけなのだが、いつの間にか同時詠唱+1の強化がされており、魔力残量の最大値が増えていて、さらにカードスロットも増えている。Lvが相変わらず2であることを考えると、これは俺のスキルの影響ではなく、そもそもの星の杖という異能が改良されたということなのだろう。
星の杖の優れたところが正に出ているな。何かしらの切っ掛け次第で急激に強くなる可能性があるのが科学系の異能だ。やはり如月の爺さんは中々に腕の良い科学者らしい。
「1-Dの古條うつりです! 凪様のお役に立てるよう頑張ります!! 異能強度はわかりません!!」
緊張した様子ながら、古條はハキハキと元気よく言いきって勢いよく頭を下げた。今更だが凪様ってのはなんなんだ。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
◇オーラ Lv1 +
古條うつりの異能「オーラ」を強制起動する。
▽オーラ
・基本能力『強化』
練り上げたオーラを体内で循環させ身体能力を向上させる。
・基本能力『硬化』
練り上げたオーラを体外で硬質化し武具として纏う。
・固有能力『短距離転移』
練り上げたオーラを固有の能力に変換する。
視界の範囲内に限り触れた物体を転移させることができ、
連続発動には5秒のインターバルを必要とする。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
古條の使うオーラは、魔術や魔法少女、九十九憑き、超能力者などと並んでかなりポピュラーな異能だ。主に武術や武道を嗜む者やスポーツに力を入れている者に発現しやすい傾向にあり、その使い手はオーラユーザーとも言われる。
オーラとは、生物の体内で生成される未知のエネルギーであり、一度オーラに目覚めた者は特別な鍛錬をしなくても身体能力や生命力が向上するなど、肉体に関する様々な恩恵を受けられる。
また、オーラは修練によって多様な能力に派生する。その種類は様々だが大別すると三つ。
一つは、肉体の性能を高める『強化』や、身体に纏ったオーラを物質化する『硬化』、自身のオーラを弾丸として発射する『射撃』の、向き不向きこそあれどオーラユーザーであれば誰でも使用できる基本能力。
二つは、射撃によって撃ちだした弾丸が着弾と共に大爆発を起こす『爆裂』や、他者にオーラを分け与え傷を癒す『治癒』、認識を歪めるオーラを纏って身を隠す『潜伏』などの、適性のあるオーラユーザーのみが使用できる適性能力。
三つは、分類不可の千差万別な特別な力、固有能力。まさに古條が持っている『短距離転移』が該当し、固有という名称からもわかる通り同種の力を持つオーラユーザーは存在しない、唯一無二の能力というわけだ。
古條は能力の構成を見るに典型的な近接格闘型というやつだな。とくにオーラユーザーなら誰でも使えるはずの『射撃』が一覧に表示されていないあたり、そちらは手つかずなのか捨てているのかという状況なのだろう。
しかし、俺もオーラについて詳しいというわけでもないが、一般的には固有能力というのはある程度修練を積んだオーラユーザーに発現する能力だったはず。大抵の場合その段階のオーラユーザーであれば適正能力の一つや二つ修めていてもおかしくないのだが、古條にはそれがない。
二点特化で基礎能力の二つをひたすら鍛え続けたのか、あるいは固有能力の発現が早熟だったのか。なんにせよまだまだ伸びしろがあるな。どう鍛えていくかは古條の自由だが、短距離転移と組み合わせるなら『潜伏』も悪くないだろうし、あるいは単純に格闘能力と相性の良い『加速』も悪くない。それとも一撃の威力重視で『衝撃』というのもありかもな。先が楽しみだ。
まったくどいつこいつも面白い異能を持っていやがる。やはり俺の目に狂いはなかったな。