君臨するは我にあり! ~菓子姫平定録~   作:ペンギンフレーム

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episode2-35 世界を支配する(VS坂島会計①)

 坂島が説明を終えて招待宣言をするのと同時に、周囲の景色がカジノのような内装の屋内へと変化する。

 これこそが世界系の異能が持つ理不尽さの一つ。条件を満たすことで強制的に相手を自分に有利なフィールドへと引きずり込む力。

 明のは少し特殊だから純粋な世界系の異能を食らうのはこれが初めてだが、こうもあっと言う間に変化するとなると引きずりこむ強制力に対抗するのは不可能だな。

 

「残念だったね氷室~! 条件を満たす前に速攻かけるってのは悪くないけど、生徒会役員を舐めすぎでしょ!」

 

 坂島は先ほどまで古條にぶん殴られそうになってビビッていたくせに、ホームに来た途端活き活きとした様子でこちらを煽り始めた。

 この世界に来てしまった時点で暴力行為による解決は出来なくなった。その安心感が気を大きくさせているのだろう。

 

 樹霧と古條が戦闘の手を止めてこちらへ戻って来る。

 

 暴力にうったえかけることが出来ないのは相手も同じ。

 会長たちは後は坂島に任せておけば大丈夫と考えているのか、一歩下がって特に何か言うこともない。

 

「さ~て、それじゃあゲームを始めようか! やるのはポーカー! ルールはテキサスホールデム! 異論は認めない!」

「よう、何か勘違いしてねえか?」

 

 俺は一言も、坂島の異能を発動前に潰すなんて言ってねえ。

 樹霧と古條に速攻をかけさせたのは怪しまれないようにするためだ。

 無抵抗で坂島の説明を聞いてたら、流石に何かあると感づかれるだろうからな。

 

 俺の目的は、最初からこの坂島賭博場に乗り込むことだった。

 

「禁止されてるのは暴力行為であって、異能の行使じゃあねえよなぁ?」

「はん! 何を言うかと思えば、異能でイカサマでもしようって? 好きにしなよ。あんたと同じこと考えた奴は今まで何人もいたけど、このあたしの目を誤魔化せた奴は一人もいないもんね!」

 

 そんなチャチな話じゃあない。

 明を相手に異能の検証をしている中で、俺の君臨する支配について一つわかったことがある。

 『自分を中心とした一定範囲を支配する』という文言。

 通常、支配や洗脳、服従というようなタイプの異能の対象は『人』だ。少し範囲を広げても精々『生物』や『物』。だから俺も、一定範囲内にいる生き物を支配下におくスキルなのだと思っていた。

 

 だが、そうじゃない。

 

 このスキルのいう一定範囲の支配とは『場』であり『空間』、そして『世界』

 

「君臨する支配!!」

 

 即ち、世界系能力者によって作り出された世界すら支配する!

 

「は!? なにこれ!? なにがどうなって――」

 

 俺が異能を発動するのと同時に坂島賭博場の壁や天井、床、そしてズラリと並べられている遊技台などに亀裂が走り、メキメキと不吉な音を立てていく。

 仮想の世界であるがゆえに実際に建材が崩落してきたりすることはないようだが、この世界そのものが現在進行形で崩壊していることがわかる。

 

「この世界の主導権を握り、破壊を命じた。それが俺の異能」

 

 世界系のホルダーが強力なのは、あくまで自分に有利なフィールドでの戦いを強要出来るから。

 そのフィールドそのものを支配し破壊できる俺は、明や坂島にとって天敵というわけだ。

 

「折角観客が集まってくれたんだ! 閉じこもってちゃつまんねえだろぉが!!」

 

 亀裂が隅々まで拡がりきるのと同時に、ガラスを叩き壊すような激しい音ともに周囲の景色が元に戻っていく。

 明と同じであれば、破壊された世界は修復に時間がかかる。これで一先ず坂島は無力化出来たと思っていいはずだ。

 そうなればお互いに数は同じで、特殊なホルダーもいない暴力と暴力のぶつかり合い。

 

 ここからが祭りの本番だ。

 

「来い! ゼリービーンソルジャーズ×(フォー)!」

 

 ゼリービーンソルジャーズの召喚に伴う派手なエフェクトに生徒会の連中は一瞬目を奪われた。そしてその一瞬の隙をつくように古條は動き出していた。

 

「しまっーー」

 

 オーラを用いた身体強化による爆発的な加速で駆け出した古條が、ギリギリで防御態勢を取った彦根副会長に上段蹴りをお見舞いする。

 悪魔の力で身体強化がされている副会長に大きなダメージは通らないが、蹴りが命中した瞬間、発言途中の言葉を残して彦根副会長の姿がその場から消え去る。

 古條うつりの異能、短距離転移は自分、もしくは触れているものを視界の範囲内に転移させることが可能な力だ。古條はこれを利用して副会長をあらかじめ決めていた候補の一か所へと転移させた。

 

「樹霧先輩! 予定通りに!」

「りょーかいです! こっちは任せてください!」

 

 転移先は古條の視線の先であり、具体的なポイントを示す必要は無い。端的なやりとりを交わした後、転移で飛ばされた副会長を追うように樹霧が走り出した。

 

「エクレアドッグ×(フォー)!」

「分断する気か! どうします会長!?」

「慌てないで朱鷺戸くん」

 

 迂闊に近づけば転移させられると警戒してか、朱鷺戸は古條の動きを注意深く追いながらも次の行動に移ることが出来ないようだ。

 一方で会長はとくに焦った様子もなく、いつも通りの自然体で朱鷺戸に落ち着くよう声をかけている。

 

「坂島さん、異能の再発動は出来そう?」

「……無理っぽいです。少しずつ修復されてるのは感じますけど、一日二日じゃ利かなそうです」

「わかった、坂島さんは下がってて」

 

 やはり明と同じように自分の世界が今どういう状況かというのは把握できるらしい。

 完全に戦力外となってしまったことを自覚してか、坂島は特に逆らうこともなく会長の言う通り後ろへ下がり、会長はそんな坂島をかばうように一歩前へ出てこちら視線を向けて来た。

 

「樹霧さんが彦根くんを追ったってことは、一対一がお望みなのかな?」

「できたてほやほやのチームなんでな。流石に連携で勝てるとは思ってねえさ」

 

 シロップスライムはあらかじめ全体召喚済のため、一先ずは召喚獣が出そろった。

 切り札は会長の力を多少見てからでも遅くない。

 

「だったらーー」

「それに、あんまり卑怯なやり口だと民意を得られねえだろ?」

 

 舞締生徒会長の言わんとすることはわかっている。

 距離や回数に制限のない転移なのであれば、容易に合流出来ないほど遠い場所に飛ばして一人ずつ袋叩きにする方が確実に勝利を収められる。なのになぜそうしないのか、という疑問だ。

 古條の異能が短距離転移であることや、発動にインターバルを要することを生徒会は知らないはずであり、そうした違和感を覚えるのは当然だろう。

 

 実際のところ、俺の最大の目的は生徒会と合法的に喧嘩することであるため仮に古條の異能にそうした制限がなくても同じ事をしただろうが、合理的でないのも事実。

 ではその不合理な行動にどのようなもっともらしい理屈をつけるか。古條の異能の詳細を看破させない言い訳に適した理由は何か。

 

「なあ、会長さんよ?」

 

 それは生徒会の失敗を突きつけること。

 生徒の感情を無視した暴挙によって今の事態が引き起こされ、そこから学びを得たのだと主張すること。

 

「……乗ってあげるよ。私の相手はどっちがしてくれるの?」

「大将同士で白黒つけなきゃ興醒めだろ? 古條、朱鷺戸の相手を頼むぞ」

「はい! 凪様!」

「勘違いするなよ。これは会長のーー」

 

 俺が会長の疑問に答えていたのは時間稼ぎのためだ。

 5秒というインターバルは、戦いの中にあっては長く、日常では短い。会話していればあっと言う間に過ぎてしまう。

 

 インターバルを終えた古條が俺の言葉を合図に朱鷺戸へと接触を図り、会長の意図を理解してか朱鷺戸もそれを回避しようとしない。

 そして次の瞬間二人は姿を消し、俺と生徒会長、そして召喚獣たちと観客がその場に残された。

 

「始める前に一つ聞ききたいんだけど、そのままで良いの?」

「これが俺のスタイルなんでな」

「そっか、支援に特化してるタイプなのかな」

 

 会長が言っているのは俺が動きにくいドレスを身に纏い、玉座の上にふんぞり返って動くそぶりを見せないことだろう。

 これから喧嘩をしようというのに、機能性があるわけでもない重装でどっしり腰を据えているというのは普通であればおかしな話だからな。

 だが異能という常識外れの力がある現代においては、それもあり得ないというほどではない。会長も自問自答して疑問は解消されたのか、特段それ以上の追究はしてこない。

 

「それと最後にもう一個。わざわざ首を突っ込んで来て氷室くんは何がしたいのかな? 新聞の話は本気じゃないよね?」

「んなことどうでも良いだろ。それともなんだ。ここまで来て、理由次第じゃ矛を収めるってのか?」

「あはは、それは流石に無理かな。でもやむを得ない事情があるなら、あんまり痛くないようにはしてあげるよ」

 

 困ったような笑顔を浮かべて会長は言った。

 恐らく他意は無く、純粋に相手を心配しているがゆえの発言なのだろう。

 しかしそれは、一切の悪意も悪気もなく心の底から俺を舐めているということでもある。

 手加減してもなお勝つ余裕があると当然のように考えているのだ。

 

 それに対する怒りはない。

 なにせ相手はあの魔法少女だ。

 世界の破滅を阻止した特別なホルダーたち。

 そして平定者へと至った、たった二種のホルダーの片割れ。

 

 大変革以降に魔法少女になった新世代は旧世代に比較して多少弱いとはいえ、第二フェーズともなれば油断は出来ない。

 

「正直に言えば、試したくて仕方ねえのさ。俺のこの力がどれほどのもんなのか。本気で喧嘩しようぜ、会長」

「……その気持ちはわからないけど、お望み通り本気で行くね」

 

 会長はなんとも言えない複雑そうな表情を浮かべながら共感出来ないと述べた後、腰を少し落として片足を引き、走り出す直前のような姿勢を取った。

 

「行け、ゼリービーンソルジャーズ! フォーメーションA!」

 

 会長が動き出すのを待たずに号令をかける。

 まずはダンジョンアサルトの時よりも大幅に強くなったゼリービーンソルジャーズで様子見と行こうか。

 

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【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ

【Level】

 72~86

【Class】

 召喚獣

【Member】

 レッド、ブルー、グリーン、イエロー、パープル、ホワイト、ブラック

【Skill】

 各種属性耐性(小)

 各種パッシブスキル

 各種アクティブスキル

【Tips】

 ゼリービーンズの兵隊たち。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

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