君臨するは我にあり! ~菓子姫平定録~   作:ペンギンフレーム

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episode2-39 魔法少女ホース(VS舞締会長①)

 魔法少女

 それは大変革が起きるずっと前からこの世界に存在し、人類の安寧を守っていた守護者であり

 ディストと呼ばれる異形の怪物たちと命を懸けて戦い、最後にはその親玉を討ち滅ぼした英雄であり

 そしてどこにでもいる、なんの変哲もない少女たち

 

 かつて、魔法少女という存在はそのほとんどが謎に包まれていた。

 

 例えばその正体。

 魔法の世界からやって来た異世界人だとか、人工的に作り出された特別な生命体だとか、普通の女の子が変身しているだとか、様々な説が実しやかに囁かれて本当のところは知られていなかった。

 

 例えば戦っている敵。

 人類にあだなす怪物なのだということは何となく認識していても、どういった性質を持ち、なぜ人間を狙い、どんな名前なのか、詳しいことは誰も知らなかった。

 

 例えばその存在。

 大変革以前の世界において、魔法なんて非科学的なものは御伽噺やアニメ、漫画の中にしか存在しないものであり、魔法少女なんて存在は様々な好奇心や悪意の対象になるに決まっている。にも拘わらず、少女たちは当たり前のように社会に根付き、誰もその秘密を暴こうとはしなかった。

 

 なぜならそれらは、認識阻害と呼ばれる強力な魔術によって隠蔽されていたから。

 魔法少女の変身現場を直接目撃したとしても、その事実を認識できない。

 魔法少女やディストの存在に疑問を抱いても、すぐにどうでもいいと思って有耶無耶になってしまう。

 魔法少女に対して悪意や疑惑を抱くことができない。

 だから人々は魔法少女という存在が化け物と戦っているという事実を認識しながら、それに疑問を覚えず、不思議にも感じず、悪感情を抱くこともなく、そういうものだと納得していた。

 

 しかし大変革によって超常的な力が特別でなくなったことで、その認識阻害は大部分が緩和され、これまで秘匿されてきた真実も公表されることとなった。個々人の正体については今でも認識阻害で守られてるけどな。

 そうして、魔法少女という存在は昔ほど謎に満ちたホルダーではなくなったわけだ。

 

10000馬力(パワーオブホース・テンサウザンド)

 

 尤も、ここまでは旧世代の話。

 馬の魔法少女ホースは新世代だ。

 新世代魔法少女はほとんどが認識阻害で守られていない。

 だから会長が魔法少女であることを俺は知っている。

 

 新世代第二フェーズ生命系統、馬の魔法少女ホース。

 元々背中に届くほど長かった髪は膝下あたりまで伸び、髪色は美しい銀色に変化した。魔法によるものなのか、インナーカラーはまるで銀河を投影したかのように鮮やかで煌めいている。

 芦毛の馬耳と尻尾が特徴的で、瞳は深い琥珀色。衣装は白と青の鎧のようなデザインが施され、肩から腰にかけて流れるようなラインとなっている。白いレギンスの先には蹄鉄をモチーフにしたような金属製の厳ついブーツ。

 

 俺の知っている通りなら、あのブーツは固有武器だ。魔法少女はフェーズ2に至ることで、各魔法少女の戦闘スタイルを補佐するような武器を手に入れ、魔法の出力が底上げされる。魔法少女ホースはキックを主体に戦う魔法少女だから一般的な剣や槍ではなくブーツが武器というわけだ。

 

 全力の身体強化魔法に固有武器まで使うとは、宣言通り本気で相手をしてくれるつもりらしい。

 

「来いよ会長!」

 

 そうでなければ意味がない。

 度重なる生徒会連との喧嘩や身内との模擬戦を経て、こいつらも随分レベルアップした。

 

 

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【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ

【Level】

 72~86

【Class】

 召喚獣

【Member】

 レッド、ブルー、グリーン、イエロー、パープル、ホワイト、ブラック

【Skill】

 各種属性耐性(小)

 各種パッシブスキル

 各種アクティブスキル

【Tips】

 ゼリービーンズの兵隊たち。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

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【Name】

 シロップスライム

【Level】

 51

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 物理耐性 Lv2

 粘力強化 Lv2

 筋力強化 Lv2

 硬質化 Lv1

【Tips】

 全身が蜜でできているスライム。

 流動的な体はあらゆる物理攻撃を軽減する。

 お菓子のお姫様に仕えている。

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【Name】

 エクレアドッグ

【Level】

 29

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 エレクトリック・バーク Lv2

 ブリッツ・ステップ Lv1

 ライトニング・バイト Lv1

【Tips】

 エクレアの身体を持つ番犬。

 素早い身のこなしと雷の力が持ち味。

 お菓子のお姫様に仕えている。

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 そう、こいつらはレベルアップした(・・・・・・・・)

 ダンジョンアサルトの指揮官を倒して以来、俺は一度も一般開放されているダンジョンには潜ってない。当然、異世界の軍隊(ダンジョンモンスター)とも戦っていない。

 

 ではなぜこいつらはレベルアップしているのか?

 簡単な話だ。こいつらは、ホルダーとの戦闘でも経験を得る。

 

 ダンジョンアサルトを攻略している時はそんなことをしている余裕がなかったため気づかなかったが、その後沖嶋や加賀美と検証を重ねることで判明し、樹霧との戦いを経て確信に至った。

 俺の召喚獣は例えホルダーが相手であっても、その命を奪わずとも、そしてダンジョンの中でも外でも関係なく、戦うことで経験を獲得しレベルアップする。

 さらに言えば、こいつらの得た経験の半分は俺へ分配される。俺も、こいつらと同じようにレベルアップしていく。

 

 そしてレベルの上がり幅は、模擬戦と実戦では比べ物にならないほど後者が大きく、相手が強いほどさらに大きさを増す。

 

 つまり俺は、全力の強者とぶつかり合うほど強くなる。

 加えてもう一つダンジョン外でのレベルアップ手段があるのだが、それは一先ず置いておく。

 

 桜ノ宮に対して職業冒険者になる気はないと言ったのも、検証でこのことを知ったからだ。

 たしかに桜ノ宮の言う通り、冒険者はレベルアップと共に強くなるのだから、ダンジョン外での活動と並行してダンジョン攻略も行うというのは理にかなっている。しかしそれはあくまで、ダンジョンでしかレベルアップ出来ないのであればの話。

 普通の冒険者はダンジョン外でのトレーニングや喧嘩でレベルアップすることなどないが、どういうわけか俺にはそれが可能らしい。だとすれば、わざわざ制約の多い職業冒険者になってダンジョンに潜る理由などない。強者はダンジョン外にも数えきれないほど存在する。

 

馬脚一蹴(スマッシュホース)!」

 

 今まさに、俺の視線の先でゼリービーンソルジャー・イエローを一撃粉砕している会長のように。

 

「最初はさっさと召喚主を叩くつもりだったけど、坂島さんの異能が効かないんじゃ意味ないよね」

 

 樹霧勧誘戦の時と同じように、様子見としてイエローを壁代わりに接近させたのだが、魔法の籠った大ぶりの中段回し蹴りによって盾ごと粉々に砕かれて一掃された。当然、鉄壁スキルは起動していたにもかかわらずだ。

 尤も、樹霧戦の時よりレベルアップしているとはいえ、相手の異能強度も上がっている以上これは想定の範囲内だ。本命はイエローではない。

 

「吠えろ!」

「バウッ!!」

 

 イエローが引き付けている隙に、会長を取り囲むように四方に散らばったエクレアドッグが順番に電撃を伴った吠え声をあげる。

 

「かといって病院送りにするわけにもいかない、よね!」

 

 しかし、あの樹霧ですら一瞬行動を阻害されるエレクトリック・バークを受けて無傷。

 何事もなかったかのように独り言を呟きながら一体のエクレアドッグを狙って力強く駆け出した。

 

「ブリッツ・ステップ! 引き離せ!」

 

 攻撃能力はないが、通常の走力を遥かに超えたスピードで走ることのできるスキルを発動し、会長から距離を取るよう指示を出す。エレクトリック・バークは一見効いていないようにも見えるが、やせ我慢してこちらの勘違いを誘っている可能性もある。

 今場に出ている召喚獣の中ではエクレアドッグのライトニング・バイトが一番威力が高いが、これは接近して直接噛みつくスキルであるため、可能であればもう少し会長を削って動きを鈍らせてから使いたい。

 

投影切替(チャンネルチェンジ)軽種馬(スピード)!」

 

 俺の思惑を理解してか、会長はパワーと引き換えに軽快なスピードを得る魔法を発動して逃げ出したエクレアドッグを追いかけ、あっと言う間に追い付き、どころか追い越し、エクレアドッグがそれに対応するよりも早く後ろ蹴りを繰り出して力強く蹴り飛ばした。

 その一撃を受けて、エクレアドッグは活動を停止し霞のように消えていく。

 

 魔法少女ホースは状況に合わせて三つの形態を切り替える魔法を有している。

 一つは、スピードとパワーをバランスよく兼ね備え、持久力に秀でた中間馬投影(スタミナチャンネル)

 二つは、パワーと引き換えにスピードを強化する、走力特化の軽種馬投影(スピードチャンネル)

 三つは、スピードと引き換えにパワーを強化する、馬力特化の重種馬投影(パワーチャンネル)

 

 引き換えにとは言ってもそれは相対的な話であり、軽種馬投影ですらエクレアドッグを一撃で殺せる程度のパワーはあるらしい。エクレアドッグ自身もスピードに特化したタイプであり防御力はそれほど高くないため、得意の速度で上回られては話にならない。

 

「だからまずは、召喚獣を全部倒すよ。最後に氷室くんをぶちのめす。そうしたら、次は勝てるかもなんて思わないよね?」

 

 今まで生徒会は、不屈の精神を持った相手だろうが何だろうが、反抗的な生徒は一先ずぶちのめして坂島の異能から逃げられなくするという方法で傘下におさめてきた。だから坂島の異能が効かない俺を無力化するためには、反抗心を折るしかないと考えたのだろう。大人しそうな見た目の割に荒っぽい性格をしていやがる。

 だが、そういうことならこっちにとっても都合が良い。俺の護衛は最小限にして攻撃を優先させてもらおうか。

 

「やれるもんならやってみろ。一斉にかかれ!」

 

 どれだけ動きが速かろうと、周囲を包囲されて同時に攻撃されれば全てを避け切ることは出来ない。

 レッド、グリーン、パープルがそれぞれ四体と、残りのエクレアドッグ三体で包囲網を形成し、じわじわと輪を縮めるように距離を詰めさせ、あと一息という距離で一斉にスキルを発動させる。

 

 レッドの剣から高熱を発して相手を焼き切るブレイズスラッシュ。

 グリーンの追い風を受けてスピードを上昇させるティルウィンド。

 パープルの電撃を纏った高速の突きを繰り出すライトニングチャージ。

 ブルーの連続で矢を早撃ちするラピッドショット。

 エクレアドッグの強力な噛みつきに加えて傷口から高圧電流をお見舞いするライトニング・バイト。

 そして包囲網には加わっていないが、襲い掛かるタイミングで闇渡りを解除し背後から会長を急襲するブラック。

 

 樹霧戦以上の密度と殺傷力。だが、

 

踏み鳴らす蹄(クエイクスタンプ)!」

 

 会長が勢いよく地面を踏みしめると、会長を中心に周辺の地面がめくれ上がり宙を舞う。そしてそれは俺の召喚獣たちも例外ではなく、跳ね上がった地面に巻き込まれる形でほんの短時間ではあるが浮き上がる。

 

馬脚一蹴・連(スマッシュホース・ギャロップ)!」

 

 そして次の瞬間、会長を包囲していた俺の召喚獣は一体の例外もなく四方八方に吹っ飛んでいき、地面に叩きつけられ消滅していった。

 

「おいおい! 見たことねえぞその魔法!!」

「人前で使うのは初めてだからね。殺意高すぎて人相手には使えないし」

 

 俺の知る限り、馬の魔法少女ホースは範囲攻撃魔法も連続攻撃魔法も習得していなかったはずだった。第三フェーズ、魔女と呼ばれる領域に至った魔法少女ならばともかく、フェーズ2の生命系統であれば対単体に特化しているのはそれほど珍しくもないため、ハッキリ言って警戒していなかった。

 

 クエイクスタンプは恐らく地面を強く蹴りつけることで衝撃波を発生させる魔法。その一撃で終わらなかったということは、範囲への威力自体はそれほどでもないはず。

 対してスマッシュホース・ギャロップ。恐らくこれは魔法少女ホースの決め技である馬脚一蹴(スマッシュホース)を目にも止まらないほどの速さで複数回繰り出す魔法。一つ一つがスマッシュホースと同等の威力を持つとするなら、複数の相手だけではなく単体相手にも強力な打点になることは間違いない。少なくとも、防御力はそれなりに優秀なゼリービーンソルジャーズを一撃で粉砕する威力はある。

 

 まったく……、面白くなってきやがった。

 

「残りはそっちの白いのと青いのだけかな?」

「いや……、こいつらはもう良い」

 

 俺の作戦ミスがあったことは確かだが、前衛がああもあっさりと全滅させられるようでは、ブルーとホワイトだけで勝てるはずもない。ブルーとホワイトを全て送還し、一度場をリセットする。

 

「えっと、降参ってことで良いのかな?」

 

 こちらを警戒するようにゆっくりと近づいて来た会長が、俺の目の前で足を止め、小首をかしげながらそう問いかけた。

 この距離なら奇襲することも出来るだろうが、いくら筋力に特化したシロップスライムでも恐らく会長には勝てない。異能強度6という壁の高さを改めて理解させられた。

 

「まだだ」

 

 樹霧との戦いや生徒会連との喧嘩がなければ、ここで詰んでいたかもな。

 

 出すぜ、切り札(ジョーカー)をよぉ!

 

「来い! マカロンセンチピード×気紛れな依怙贔屓!」

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