君臨するは我にあり! ~菓子姫平定録~   作:ペンギンフレーム

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episode2-40 マカロンセンチピード×気紛れな依怙贔屓(VS舞締会長②)

「来い! マカロンセンチピード×気紛れな依怙贔屓!」

「っ!?」

 

 俺の呼び声に応えるように地面がボコッと盛り上がる。そして次の瞬間、マカロンの身体を持つ巨大なムカデが地の底から這い出るように飛び出し、俺の身を守るように玉座を中心にとぐろを巻いて、威嚇めいた咆哮をあげる。

 

「ギシャア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!!」

 

 これが俺の第四の召喚獣、マカロンセンチピード。

 体を構成する一節一節が巨大なマカロンで構成されており、各節にはメレンゲで出来た軽く硬質な足が二対備わっている。色とりどりのマカロンを横にいくつも連結してムカデのような見た目をしていると言いうのが最もイメージに近いだろうか。

 頭部には強靭な顎に加えて毒性のある顎肢を併せ持ち、噛みつきや毒液注入、巨体を活かしたタックルや締め付け、鋭い足による突き刺しなど、一般的なムカデの範囲に収まらない多様な攻撃手段を有している。

 

 しかし何より特徴的なのはやはりその巨体だ。人の子供程度の大きさのゼリービーンソルジャーズや、中型犬程度のエクレアドッグを遥かに上回っている。

 体を構成するマカロン一節が直径60cmと、一般的なマンホールのふたと同じ程度の大きさであり、それが25個も連なることで体長は驚異の15M。これは一般的なビルであれば4~5階相当の高さと同等ということになる。

 

「いきなり規模感が変わりすぎじゃない……?」

「ククッ、派手で面白いだろ?」

 

 マカロンセンチピードが地中から飛び出してくるのを察知した会長は、素早く後方へ距離を取っていた。そしてその全体像をハッキリと認識し、少しばかり表情を引きつらせている。

 かつて魔法少女が戦っていたディストと呼ばれる怪物は、サイズが強さに直結している化け物だった。新世代である会長は直接ディストと戦ったことはないだろうが、それでも魔法少女であればそのことを知らないはずがない。だからこそ、マカロンセンチピードの巨体は脅威に映る。

 

 尤も、実際のところ本来のマカロンセンチピードはこれほどの巨体ではない。今までの召喚獣たちよりは大きいが、それでも精々2~3M程度。エクレアドッグの次の召喚獣と考えれば妥当なサイズ感といえるだろう。

 では今、実際に15Mという巨体で召喚されているマカロンセンチピードは幻なのか?

 

 

 

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【Name】

 マカロンセンチピード

【Level】

 13

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 部位別属性耐性(小)

 掘削百足 Lv2

 ジョイントパージ ☆

【Tips】

 体の節がカラフルなマカロンになっているムカデ。

 色ごとに異なる属性耐性を有し、猛毒の顎肢を持つ。

 お菓子のお姫様に仕えている。

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☆気紛れな依怙贔屓 Lv1

     スキル「気紛れな依怙贔屓」を強制起動する。

▽気紛れな依怙贔屓

一種の旗下の軍勢を『指揮官』個体に強化する。

『指揮官』

・全能力値が大幅に上昇

・形状変化

・指揮官個体固有スキル発現

・他の召喚獣への指揮権付与

・多重召喚の対象とならない

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 答えは否。

 こいつは俺の新しいDスキル、気紛れな依怙贔屓によって『指揮官』個体に強化されたマカロンセンチピードなのだ。

 このスキルはざっくりと言ってしまえば、旗下の軍勢の一種を一時的に大幅強化する代わりに、多重召喚は出来なくなるというもの。巨大化しているのもその恩恵というわけだ。

 

 つまり、デカイから強いというわけではないが、このマカロンセンチピードはデカイ上に強い。

 

「第二ラウンドを始めようか。行け!」

投影切替(チャンネルチェンジ)重種馬(パワー)! ぐっ! おおおおぉぉぉ!!」

 

 俺の号令に従い、マカロンセンチピードが這うように素早く地面を駆けていく。本来であればエクレアドッグには及ばない程度のスピードだが、気紛れな依怙贔屓のバフによって悠々とそれを上回る速度を出している。

 会長はそれを見てスピードチャンネルでも振り切れないと判断したのか、パワーチャンネルへ切り替え真正面からマカロンセンチピードを受け止めるようにがっぷり四つに組みついた。こちらからではよく見えないが、毒の影響を受けてないということは顎肢を両手で掴む形を取っているのだろう。

 しかし指揮官個体のマカロンセンチピードはパワーも他の召喚獣とは比べ物にならない。会長は力強く踏ん張ろうと雄叫びをあげているが、まったく止めることが出来ず靴底で地面を抉りながら押し込まれて行く。

 

「掘削百足」

「なっ!? うわわわ!? ガッ゛ァ゛!?」

 

 追い打ちをかけるように、マカロンセンチピードのアクティブスキルを発動させる。

 掘削百足は頭部を掘削機のように高速回転させるスキルであり、本来の用途は地中を掘り進んで移動するためのものだが攻撃に転用することも可能。

 本物のムカデの場合顎肢は体節から生えているが、マカロンセンチピードは頭部に一体化しているため、頭部が回転するということはその顎肢も同時に回転する。顎肢を掴んで組み付いていた会長はその高速回転に振り回され、勢いよく地面に叩きつけられた。

 

「こんのぉ! 馬脚一蹴(スマッシュホース)!」

「ギア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!」

 

 続けて上体を大きく持ち上げ、こん棒を振り下ろすかのように回転する頭部を会長へ叩きつけようとするマカロンセンチピードだが、それよりも跳ねるように起き上がった会長がマカロンセンチピードの懐へ潜り込み、魔法の一撃を叩き込む方が早かった。

 追撃のために足を止めていたのが仇となり、全長のちょうど中間にあたるマカロンが粉々に蹴り砕かれる。パワーに特化したチャンネルに加えて、キック力を高める魔法を使われては流石の指揮官個体でも耐えきれないか。

 

「よしっ!」

「ジョイントパージ」

 

 吹き飛ばされたマカロンの隙間を埋めるように、残された下半分が前進して、倒れつつある上半分と結合する。

 

「ギシャア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!!」

「はあ!?」

「そんなので終わるようじゃ切り札(ジョーカー)とは言えねえよなぁ!?」

 

 ジョイントパージは指揮官化することによって発現するマカロンセンチピードの固有スキル。体を何節破壊されようが、残った部分がくっついて再び活動を再開する。つまりこいつを倒すには、全てのマカロンを破壊しなければならない。

 

「巻き付け!」

「厄介だなぁもう! 馬脚一蹴(スマッシュホース)!」

 

 懐に潜り込んだ会長を締め付けようとマカロンセンチピードがとぐろを巻き始めるが、会長は完全に身動きが取れなくなる寸前に魔法の蹴りでマカロンを一つ破壊し、一瞬動きが止まった隙をついて大きく跳躍しマカロンセンチピードの包囲から脱出した。

 

連続蹴り(ギャロップ)はパワーチャンネルじゃ使えないらしいな」

「……さあ? それはどうだろうね?」

 

 使えるのならさっきも今も使わない理由がない。全てのマカロンを破壊しなければ勝てないということは会長も察したはずであり、だとすればさきほど包囲されていた状況は複数のマカロンに蹴りを叩き込む絶好のチャンスでもあった。

 目にも止まらぬ連続蹴りであることを考えれば、スピードを犠牲にしているパワーチャンネルで使えないというのは自然。

 

「ふー、……しょうがないかな」

「降参ってことで良いか? なんてな」

 

 マカロンセンチピードから少し距離を置いた場所で、大きく息を吐いた会長に軽口を叩く。まさかこれで終わりということはないだろう。当然向こうも持っているはずだ。

 

「出せよ、お前の切り札(ジョーカー)を!」

投影切替(チャンネルチェンジ)軽種馬(スピード)

 

 パワーチャンネルですら力負けしているというのに、ここでスピードチャンネルに切り替えだと?

 ギャロップのように、特定のチャンネルでしか使えない切り札なのか?

 何をしてくる? どんな魔法だ? どういうインチキ効果を持っている? 早く見せろ。焦らすなよ!

 

馬脚一蹴・連(スマッシュホース・ギャロップ)

 

 それはある意味、予想外と言えば予想外だった。

 

「……ガッカリさせるなよ」

 

 期待外れという意味でな。

 

「うそ……」

 

 目にも止まらぬ速さで俺の目の前まで距離を詰め、躊躇いも迷いもなく振り抜かれた会長の拳を、琥珀色の粘液、シロップスライムが受け止めていた。そして会長が次のアクションに移るよりも早く、シロップスライムが一度大きく蠢いたかと思えば、思い切り会長を空へと投げ飛ばした。

 

「わあああああっーーー!?」

「ここで召喚主()狙いとか、つまんねえ奴」

 

 単純なスピードではマカロンセンチピードに勝てないため、会長はギャロップの魔法を攻撃ではなく移動に使ったのだ。高速で地面に蹴りを放つ、つまり踏み込みに利用した。贅沢な使い方ではあるが、たしかにそれならたった一度虚をつくだけであればマカロンセンチピードの反応速度を上回り俺へ奇襲を仕掛けることもできる。

 そして虚弱な本体への攻撃は必殺の魔法など使わずとも、身体強化だけで十分だと考えたのだろう。シロップスライムはこれまでの生徒会連との戦いでは使いはしたものの、ハッキリと目撃されてはいないため警戒が薄かったわけだ。

 

「とどめだ、マカロンセンチピード」

 

 どれほどパワーやスピードがあっても、空中では何の意味もない。

 重力に従って落下する会長へ向かって、掘削百足を発動したマカロンセンチピードが迫る。

 

 今の場面で使わなかったということは、切り札など初めから持っていなかったのだろう。

 そもそも俺が勝手にあると思い込んでいただけで、会長は一言もそんなことは言っていないしな。

 ここまでだ。相手を無駄にいたぶる趣味はないし、終わりにしよう。最後こそ拍子抜けだったが、楽しい喧嘩だった。

 

 俺は終わりを惜しむように、無意識の内に、ほんの少しだけ目を伏せていた

 

 会長から、視線を外してしまった

 

投影切替(チャンネルチェンジ)翼種馬(ペガサス)

「――なに?」

聖蹄一蹴(スマッシュペガサス)!!」

「ギィィィ! ァァ……」

 

 何が、起こった?

 なぜ会長は堕ちてこない?

 あの不安定な揺らめく翼はなんだ?

 どうしてマカロンセンチピードが、崩れ落ちていく?

 

「おい、おいおいおい! なんだよそりゃあ!!」

「これが私の、新しい魔法……?」

 

 声までは聞こえないが、会長自身も困惑している様子が伝わってくる。

 だとすればなんだ、この土壇場で覚醒したとでも言うのか?

 

「ククッ、クハハッ! ハーハッハッハッハッハッハッハッ!! 良いじゃねえか会長よぉ!! それでこそ魔法少女だ!!」

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