魔法"少女"から戻れないんですけど? 作:饅頭
身体を前へ傾けるとスピードが速くなる事に気づいて夢中で遊んでいた所、危うく目的地を通り過ぎる所だった。人気の少ない山道を通っている車を見つけた。現在地を確認するとここらへんで間違いは無い。ヨシッ……!
『ちょっと待った。どうする気だ』
どうする気って何が?
「いや、普通に魔法使って車を止まらせて人質回収して帰る」
『偉い脳筋だな、野生の動物でももう少し慎重だぞ。あのなぁ、まずアイツらは恐らく人間だ。と言うかほぼほぼな。そんな奴らに魔法を撃ったらどっちが侵略者だって話になるだろ?』
「いや、前提として僕達の姿は見えないから何が起きてもポルターガイストか、神の天罰で納得してくれるよ」
『そっか、俺ら。一般人には見えないのか。何だ、隠密行動も何も無いのか』
そんな事を言っているエトを無視して考える。
「何の魔法が良いのかな」
まあ、魔力が少しでもあるから普通の人間よりは強いだろうし。こんな感じかな。
「マジカル・ポップコーンボム☆《S》」
鞄からカラフルで子供が好みそうなポップな杖を出して、車に向けて振った。え?杖なんか無かっただろって?魔法で作りました。杖と言うか魔法のステッキね。要は棒よ、棒。魔法少女や魔法使いはやっぱり杖でしょ。まあ、確かにニチアサの魔法少女は杖なんか持ってなかったけど。
因みにこの杖のメリットはエフェクトをつけられる事。後、BGM。威力が高くなるとか、攻撃範囲が広くなるとかは無い。
光の粒が車に纏わりつき、そのまま弾ける様に爆発した。
『車が止まったか』
中から若いパーカーの男と小太りで帽子を被った男が出て来た。そして、後ろの席からは拘束された女が出て来た。
『何なんだ、これ』
『奴らだろうな。きっと……じゃなきゃ俺らを狙い撃ちしないだろ。サッチ行け、"運試し"だ』
「ほぉい」
何か喋っている様だったので、僕は降参して欲しいなと思ってそれを進めようとした。
「なぁ、アンタ達怪我しない内に……」
が、それを遮り男が何かを言い始めた。
『お前が得意な事な〜んだ』
『そーれは!』
小太りの男がそう言って空を飛ぶ。いつの間にか暗くなり、月明かりに照らされるその姿はとても大きく見えた。
『餅つき!』
落ちる様にこちらに向かって来る男に構えて、咄嗟に思いついた事を魔法にして再現した。
「BIGバウンドトランポリンケーキ!」
『えっケーキ⁉︎それ甘い奴〜』
僕から大きなケーキの方に方向を変え、飛び込む男を横目にその場から離れた。
少し離れると、凄い音と共にケーキに落ちた男がいた。そしてケーキは僕が思った通り可能な限り、縮んで……。
『お?』
元に戻る。その反動をモロに受けた男は動かなくなった。
「あれ?待って。もう一人の男は?って言うか染井由乃もいなくなってるし。あーもしかして。やられた?」
さっきいたパーカーの男の姿は、どこにも見つからない。小太りの男の帽子がヒラヒラと地面へと落ちる。男の頭には兎の様に長い耳が付いていた。
「バニーガール?いや、ボーイか。バニーボーイ」
最近のテクノロジーは凄いなぁって思いながら俺は男の頭に生えている耳を眺めた。