魔法"少女"から戻れないんですけど? 作:饅頭
『それはそうだ。遠距離攻撃が効かないのなら、近距離で攻撃するしか無い。だが』
『当たらなければ意味が無い』
魔法でスピードを上げて、殴りかかった拳は容易く避けられた。それだけで終わらず、奴は人参をバットの様にして勢い良く振った。
「いったぁ」
ジンジンと痛む傷、そっちに気を取られる。一撃で身体が思い通りに動かない。そりゃあそうだ、いくら魔法少女で霊長類最強って言ってもそれはオーラだけだ。器がデカくたって中身が無ければ意味が無い。
『コレで終わりか。じゃあ終わらせよう』
ため息をついて歩き出し。やがて距離は縮まり、人参バットが振り下ろされる。それを僕は動けず、そのまま見守っていた。まるで他人事の様に、そして僕は笑っていた。
「にゃんにゃんファンタジーパレード」
「いやぁ、知らなかったよ。いや、そりゃあそうかパレードだもんな」
まさか巨大な猫が四人も出て来るとは。そして彼らにボールにされたパーカー兎は地に戻る事無く、空に浮かび跳ねた。飽きた巨猫達が放置してリフティングを止め、空中の拷問が終わって地面へと戻って来た。
《ニャアオ》
「え?何?あんま危ない事すんなって?」
【ニャァア】
「クローンに任せとけば良いって……。まあ確かにその方が楽かも知れないけどさ。散々色々やらせて言える立場じゃないのは分かってるんだけどさ。僕は彼女達を家族だと思ってるんだ」
「僕の魔法から産んだから実質親子だよね、ってか自分自身って考えた方が良いか。だから彼女達が危ない目にあったら助けに行く。勿論僕は聖人君子じゃないから、誰でもじゃないよ。家族であり、仲間であり友達でもある。まぁ確かにまだ全然仲良くないし、独りよがりな愛みたいなもんだね。一人が長かったから、ちょっとそう言うのが溢れてるのかも」
〈……ニャア〉
「本当?」
〈ニャア!〉
「じゃあ肉球触りたい」
デッカい肉球を触りながら、肉球のベットで寝ると言う恐らく人類初の体験をしながら、僕はリラックスしていた。
「ってか喋れるんだね、名前は?──無いんだ。なら、ミケとシマとクロと……そうだなチョコなんてどう?」
《!》
【ニャァ】
〈ニャ〉
『ニャゥ』
「あははっ、猫を撫でるのは聞いた事があるけど、猫に撫でられるのは初めてだなぁ」
ペチペチと当てられた肉球の感触を楽しんでると、チョコが月を睨んでいた。
「あれチョコどうした?」
問いかけは無視され、そのまま月を睨み続ける。気になり、月を見ると何かが落ちて来た。また侵略者?僕はほっぽっていた杖を手探りで探し始めた。あーさっき使えば良かったな。忘れてた。
『あ、どうも。モチ論本舗の餅論乃介でございやす。来月からこの星にお邪魔させていただくので、先にご挨拶をと思いまして。どうぞコレからよろしくお願い致します。あっ。これはウチの母ちゃんが作ったお餅です。ご挨拶行くって言ったら、持ってけ持ってけって煩くて。コレから少々お騒がせするかも知れませんが、どうぞお手柔らかに。餅だけに!何つって』
「あ、はい」
良く喋る月見団子だ、僕はそう思った。
『あ、彼ら倒したんですね。おめでとうございます!まぁ、良いお灸を据えられたんじゃないんですかね。ちょっと調子に乗ってるところも彼らはありましたから。人参が似合う完璧跳人って雑誌に書かれて皆に見せてましたよ、僕なんて餅のおじさんですよ?同じ雑誌で同じ侵略部隊でこっちの方が上なのに』
いや、止まらないな。本当に。だが、餅のおじさんはそう言いながら手を動かして、パーカーの男を担ぎ上げた。凄い。
『んじゃ良かったら召し上がってください。味は保証します、毒なんて入ってないのでね。安心して食べてください』
クッションの旦那によろしくどうぞ!と言って。餅のおじさんは月へと戻っていた。
翌日、皆でお餅を頂いた。カットの切り餅に、小豆、きな粉、ずんだが入っているの等種類が豊富で飽きなくて味も一度食べると虜になってしまうほど美味しかった。まぁ、照れ臭くて言えなかったけど、皆でワイワイ食べたからかな。
こんな楽しいなら魔法"少女"から戻らなくても良いのかも知れない。
「うーん、やっぱり気のせいかな?どう見てもパンツが光り輝いて見えるんだけど」