ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜 作:ReA-che 名義
今回は空戦回、もっと掘り下げた秋山殿視点に挑戦しました
それと描写をなるべく細かく、と頑張っているととてつもなく長い文章量になってしまうのである程度で切ってます
そのため最後の方とかずいぶん急な終わり方だなと感じるかもしれませんがそういう仕様です
バラバラと音を立ててプロペラの回るレシプロ戦闘機、今私の眼の前にあるそれはかつて旧日本軍最強と言われた紫電改───
国内現存は0機で世界を探せば数機ほど現存しているものの、飛べる機体が存在するというのは聞いたことはありませんでした
(それを…まさか杉野殿が所有していたとは───!?)
一際発動機の回る音が大きくなったかと思うとゆっくり機体が前進しシャッターの外へ出てきます
「おー、おはよう!迷わず来れたみたいだなッ」
「は、はい!おはようございますッ!」
外の敷地に機体が完全に出ると開きっぱなしになっていた風防からひょっこりと飛行服に身を包んだ杉野殿が顔を覗かせ、発動機の爆音にかき消されないように大声で一言挨拶を交わすと彼女は慣れた身のこなしでスルスルとコックピットから降りて来て主翼から生える二つの車輪に輪止めを噛ませる
「──杉野殿…これ
思わず聞いた私に杉野殿は嬉しそうに笑った
「勿論、元は屋久島沖に沈んでたヤツを引き上げて来て
とにかく塩抜きに時間かかって結局完全にレストアし終わったのは去年なんだけどな」
「えぇっ!?」
彼女が元々飛行機乗り志望であったことは割と有名な話なので存じ上げてましたし、なんなら一機───
これもまた貴重な機体を所有していたことも知っていました、しかし紫電改まで所有していたというのは初耳です
「杉野殿がパイロットを目指していたのは存じ上げておりましたが…とは言え紫電改の実物をこんな形で見ることになるとは」
「レシプロ機ってロマンあって俺は好きなのよ」
「そう言えば以前は零戦の52型を所有していたんでしたっけ」
私の一言に杉野殿は驚いたように目を見開く
これも割と有名な話でして、まぁオチも含めて彼女をデストロイヤーたらしめる要素の一つとして特に人気のあるエピソードでもあります
「よく知ってるな、そっちはヤップ島から引っ張って来たやつだ
海に沈んでた紫電改とは違って野ざらしってだけだったから割とすぐ修理も済んで使ってたんだが───」
「──あの、多分杉野殿のファンをしてれば割と皆知ってるくらい有名な話です」
「…もしかして
「勿論存じ上げております!」
杉野殿の言うあの事と言うのはおそらくそのエピソードであることに間違いないと判断し、そう伝えると彼女は顔を両手で隠してその場に膝から崩れ落ちました
「待って…嘘、俺今超恥ずかしいんだけど…」
ちなみにその杉野殿が恥ずかしさのあまり身悶える程の有名なエピソードと言うのは───
「確か直して一年足らずで着陸禁止区域に強行着陸に及んで失敗、機体を大破させたんですよね?」
「あああああッ言うなってもぉーーーッ」
当時の杉野殿は剣部隊2年目の頃で、同じ部隊の目撃者証言によると未舗装の場所に何故か強行着陸しようとして窪みに脚を取られたらしく、着陸と同時に脚が折れて機体が転覆
そのまま風防を下にした状態で30m程火花を散らせながら滑走したとのことでした、聞けば聞くほど何故生きていられたのか不思議な話ではありますが
高笑いしながら自力で脱出できたぐらい杉野殿本人はピンピンしていたらしく、彼女の豪快さと悪運の強さを物語るようなエピソードとしてファンの間でも根強い人気を誇ります
「しかしそんな事故を起こして良く生きてましたね」
「え?あぁ…機体がひっくり返ったと同時にとにかく頭を守ろうと思って操縦席を限界まで下げて全力で屈み込んだんだよ、そしたら元々
こうして改めて話を伺うとやっぱり杉野殿はやることなすこと無茶苦茶ですね…
これが画面の向こうの人で済んでいたのなら憧れの選手の面白エピソードの一つで終わっていた話なのですが、しかし現に彼女は目の前にいて共に戦う仲間であり───
私の数少ない友人です、確かに昔画面越しに見ていた彼女と比べればこれでもだいぶ丸くなっている方だと言うのは理解していますが…
本人から詳細を聞いても今では憧れよりも心配が勝ってしまいます
「…それ、怪我とかは大丈夫だったんです?」
「流石に避けきれない部分もあってか頭にめちゃくちゃデケェタンコブが出来た
周りに皆いたってのに死んだと思って誰も助けに来ねぇしよ、酷ェ話だと思わねぇ!?」
そう言ってガハハと豪快に笑い飛ばす彼女に内心で頭を抱えたくなりました
杉野殿も杉野殿なら剣部隊の皆も皆ですよ、なんでこうもこの人たちは自分の命が軽いのでしょうか…
「そういや秋山って飯食ったか?」
「あ、いえ…いつもより早い時間なので昨日のうちから朝は要らないと母に───」
杉野殿曰く動かすのは久々とのことらしく、少しばかり暖気の時間を設けようと軽く雑談をしていましたが
そもそも紫電改に搭載されている中島「誉」エンジンは冷却装置の無い空冷エンジン、その為ある程度で話も切り上げそろそろ行こうかとなった時にそんなことを言われました
「そうかなぁと思って機上携行食に海苔巻き作ってきたから、空上がったらサンダースにつくまで一緒に食わねぇ?」
「え?良いんですかぁ!」
なんと見越して私の分の朝食も作ってきてくれたと言うのだから感激です!
しかしそんなこんなでいざ乗り込もうとした時、私はふとある事を思い出すこととなります
「…あの、杉野殿?そう言えば紫電改って単座戦闘機ですよね」
単座戦闘機、つまり座席が一つしか存在しない一般的な戦闘機のことです
私たちは二人なので移動するには座席が足りず…いや、最悪身をかがめて座席後ろのスペースに入ることは出来るでしょうけど
何かあったら怖いなぁ…と流石の私も尻込みする思いでした
「秋山、お前はまだ俺という人間を理解できてないみたいだな」
続いてちゃんと対策してあると言われれば、気になって主翼から機体へ登り
風防ごしにコックピットを覗くと単座の筈の紫電改にちゃんとした後部座席が用意されていました
「え…!複座になってますがこれは…」
「某黄色いオークションサイトでストック用にもう一脚とっておいてたんだよ、それを昨日の内に取り付けした───
まぁいわば──N1K2-K仕様*1ってわけ」
得てしてこういった部品というのは高価なもの、しかも現存する機体が多ければ未だに陸上自衛隊の広報機やら
戦車同連盟が試合を上空から監視することを目的に使われていたりするので補修部品としてまだまだパーツが出ます
しかし絶対数も少なく国内に現存する機体の存在しない紫電改の部品はそうも行かず、特に高価で貴重な当時物部品しか出てこないのです
私なんかの為にそんな貴重な部品を使ってまで対策を取ってくれる事につい目頭が熱くなりかけました
「さぁ、そろそろ行こうぜ?」
「はいッ」
彼女の号令で私は向こうでの着替えを入れたリュックを先に後部座席の足元へ置いてから狭さと格闘しつつもなんとか後部座席に滑り込む、ただ身長の問題か杉野殿の座るコックピット側の席は一番手前まで出されていたので意外と足元にはゆとりがあり
一度座ってしまえば荷物があっても割と快適なほどスペースが充分に確保されていました
少しして杉野殿が輪止めを片手に機内に乗り込んで来ます
「シート脇に落下傘とそのハーネスがあるから着けとけ?万が一のことがないとは言い切れねぇしな
それが終わったらシートベルト着ければOKだから」
言われた通り首を左右に振ってシート脇を確認すると落下傘──所謂パラシュートとそれを身体に固定するための緑色のハーネスベルトを見つけ、身体に着用し始めます
「着け方はわかるか?」
「バッチリ勉強済みです!」
「お、流石」
特に戦車が大好きな私ですが決してその他の物が嫌いなわけではなく、むしろ好きな部類なので時折そういった解説動画などに目を通して頭に入れていました
まさかもまさかで思わぬ形ではありましたが今回ちゃんと役に立ったので過去の私の頑張りは無駄にならずに済んだようです
「──じゃあ離陸するから、揺れたり舌噛まないように気をつけろよ?」
振り向きざま、どこからか取り出したリモコンのボタンを押してシャッターを締めた後
杉野殿は飛行用のゴーグルを着けてそう言った、戦車畑出身であるはずの彼女のそんな姿は何故か異様なほどに似合っていて思わず見惚れてしまうほどでした
(それにしても、空を飛ぶなんて初めての経験です…!)
発動機が一際大きく唸るとゆっくり機体が動き出し建物の敷地から目の前の道幅が広く直線の続く道路へ、軍事マニアとして様々なグッズを漁ったり現地イベントなどに参加してきた私ですが流石に飛行機やヘリにはまだ乗ったことはありません
__ゴォーーーッ
杉野殿がスロットルレバーを徐々に開き、機体は爆音と共に道路を滑走していきます
そして、ある程度まで速度が上がると一瞬浮遊感を感じました
(す、すごい…今私、本当に飛んでるんですねッ!)
次いで視界に映るのはゆっくりと操縦桿を手前に倒す杉野殿と、徐々に視界の下方に消えていく周囲の景色───
──私、秋山優花里…この世に生を受けて16年
初めての空は憧れの人の操縦で、搭乗機体は幻の戦闘機紫電改
その事実は嫌でも私を興奮させます
「ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!!」
「ッ!?」
思わず叫んだ私に杉野殿はビクッと肩を震わせる
や、やってしまいました…
「あ〜き〜や〜ま〜?」
「す、すいません…」
即座に謝るも振り返る彼女の顔は怒っていると言うよりは困惑の色が強く、見てわかるレベルで苦笑いをしています
あぁ、恥ずかしい!恥ずかしいです!!
羞恥心のあまり顔を覆い隠す私に杉野殿は何も言わずに前を向き直る、そしてレバーを引いて左・右の順で引き込み脚を格納してから
更にスロットルを開けて速力を上げ、操縦桿を左手前へ徐々に引き緩い左斜め旋回の状態で高度を上げていきます
道路を滑走していた時こそ緩衝材の使われていない降着装置の為に機体にもの凄い振動が伝わっていましたがそれ意外は気になるような所もなく、初めて飛行機に乗った私にも杉野殿の離陸は見事な物だと感心してしまうほどです
「…ふぅ」
いつだか離陸時というのが一番危険で気を使うと何かで読んだ事があります、久々の操縦と言うこともあって相当に気を張っていた様子の杉野殿は小さく息を吐き出して風防を締めゴーグルを外して飛行帽の上に乗せました
風防を閉じる事で風切り音がシャットアウトされた為か機内まで届く音は意外と会話は出来そうなレベルで済んでいます
「今巡航速度なんだけど多分30分くらいでつくと思うわ」
「え、そんなに早くですか!?」
コンパスを片手に杉野殿はそう呟き、思わず私は聞き返しました
凄い…当初のコンビニ船に忍び込む計画ではもしかしたら今日中に帰れないかもしれないという不安が常に残っていましたが、やっぱり飛行機というものは速いと改めて実感させられます
「今日の朝イチで問い合わせた感じだと大洗の学園艦の進路とサンダースの学園艦の場所は200kmも離れてないみたいだったからな」
「そ、そこまでしてくださってたんですか」
元は私の勝手な行動と言う事もあり、思わず私のためにと頭の下がる思いがしましたが───
しかし意外なことにも杉野殿は首を左右に振って否定します
「まぁ秋山の為だけじゃないよ、サンダース大付属みたいな金のある大きな学園艦はもしもの時のために上空警備隊が控えてる
だから他所から飛行機で侵入するならどっちみち話し通しとかなきゃいけねぇのよ」
「あ、なるほど確かに…」
学園艦というのはいわば陸から離れた孤島で閉塞された空間でもあります
勿論街がある以上大人も多数暮らしていますが多くは学生なので良くない輩が忍び込まないよう、警備隊が存在しており空を含めて不審なものに特に警戒心が高いです
ちなみに相手がジェット機のような個人での所有することは不可能な機体を相手にする場合は空自の管轄なので民間機を補足し追いかけ回すのには充分という観点からレシプロの戦闘機を配備している学園が多く、防犯カラーボールと同じ成分が内容されている特殊なペイント弾を装填しているのだとか
「ウチの学園には無いのですっかり存在を忘れてました…」
「飛行機も飛行機で維持するには金が掛かるからな、ウチみたいな金のない所はツラいところだろうよ」
大洗の学園艦には生徒の風紀と陸路を守る風紀委員、そして船舶科の生徒たちが海路を守っていますが
流石に空路を守る上空警備隊は存在せず、すっかりそんな物が存在していたことも頭から抜け落ちてしまっていました
「せっかく綺麗な状態で維持してるのにペイントだらけにされたら敵わんからな」
「…そう言えばこの紫電改のカラーリングって」
杉野殿の一言で私はこの紫電改に乗り込む前に抱いた感想を思い出しました
尾翼には黄色字でA 343-15と書かれている
「…杉野殿が剣部隊にいた時に乗っていたチハと同じカラーリングですよね?」
「──正解、元々部隊の用事で遠くへ行くのに飛行機を使ってたのもあってな
一目見て誰が乗ってるかわかるようにしたかったんだけど…まぁ結局引退までにレストアは間に合わなかったんだが塗っちゃったしそのままにしてる」
しかし彼女のチハと違う点と言えば夥しい数の桜のステッカーがこの紫電改には貼られてません
その事を聞いてみると杉野殿はあー…と小さく唸った後続けた
「あれ、チハに貼る分には撃破マークだから良いんだけど
紫電改だとダサいんだよ、実際には一機も落としてねぇんだしさ」
なんとも単純明快な話でした───
「…でも大丈夫ですかね?戦車道チームに私たちの情報を流されたりしないですか?」
「サンダースの上空警備隊に俺の知り合いがいるから、そいつには昨日の内に話しを通してある
義理堅いやつだからそのへんは安心してくれていいぞ」
話を戻してふと急にそんな事が心配になった為、杉野殿に聞いてみるとなんとも心強い言葉が帰ってきます
いやしかし杉野殿ほど各地を点々としていた人となるとやはり顔が広いですね
◆
一方その頃、サンダース大付属の学園艦では明け方から早朝を担当する上空警備隊の一組
グラマンF6Fヘルキャット6機が艦上の街の一角に作られた滑走路に着陸していた
「隊長お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
その6機編隊の先頭に位置する機体から、癖のない金髪をロングヘアにした小柄な女性が降りてくる
近くで待機していた別の隊員が彼女に声をかけた事で飛行帽を脱ぎながら小さく返事をした
「次に飛ぶのはあの子達だっけ?」
「はい、昼前までの哨戒はあちらのクラーク隊長達です」
その女性の視線の先にあったのはいつでも離陸できるようエンジンの掛けられた状態でチャンス・ヴォートF4Uコルセアが6機とその前には6人のパイロットが待機しており
彼女はその6人の集団に歩いていくとその中で一際背の高い女性──クラークと言う名のコルセア隊の隊長へ話しかけた
「──クラーク隊長」
「──これはサザーランド隊長!どうされましたか?」
クラークから何か問題でも起きたのかと言わんばかりに聞き返されたため、小柄な女性──サザーランドは特にそうではないのだがと一尺間を置いてから続ける
「いや、なに…実はそろそろ私の友人が来る頃でね
本来なら私が出迎えたいところなのだが交代の時間だろう?」
「はぁ」
空を指差し、外部の友達がこれから来ると言うサザーランドの言葉に一瞬クラークは呆気に取られる
それだけなら…とは思ったが確かに空路から来るのであれば引き継いでおかないと誤って追っ払ってしまい兼ねない事に気づいて内心で納得した
「ウデの立つ子だから、多分君達が勘違いしたところで滅多な事はないと思うが───
攻撃しないよう注意して丁重にもてなしておいてほしい」
「えぇ、ちなみに機種は?」
──
そう続けたサザーランドの言葉にクラークは自身の表情が困惑のあまり情けなく歪んだのを感じた
そしてそんな二人を面白くなさそうに見つめている二つの視線がある
「チッ…忌々しいサザーランドめ、ウチの隊長になんて偉そうに」
「全くですね、オリビア副隊長」
二人の内でサザーランドへの毒を吐いていたのはコルセア隊の副隊長であるオリビア、そして彼女に賛同していたもう一人はオリビア区隊2番機のソフィ
彼女たち二人は特に自身の隊長を神格化しており、その隊長を相手に不遜な態度のサザーランドの存在が気に入らないのだ
「…これからサザーランドの友人が来るみたいねソフィ?」
「はい、しかも生意気にも
他の者に会話を聞かれないよう身を寄せ合って話し、互いに黒い笑みを浮かべた
「──それはこの学園艦には相応しくないな、サンダースに来るからにはそれ相応の
「なるほど確かに、私たちのやり方で
◆
初めての空の旅は思った以上に快適でした
…ある一点を除いて
「──くちゅんっ」
「おいおい大丈夫か…?」
前の操縦席からは海苔巻きを片手に心配そうな顔をしてこちらを振り返る杉野殿の姿が視界に入り思わず申し訳無さに苛まれます
機上携行食は機体の操作をしなければならない事もあってか彼女自身は中々食が進んでない様子ですが、私は両手を使える事もあって一足先に完食していました
杉野殿が作ってきてくれたのは15cm程の細長い海苔巻きが二本で具材は半分ずつ違うものが使われており一本で二つの味が楽しめる作りで具材は一本が梅肉とおかか、もう一本は鶏そぼろと紅生姜が入っていてとても美味しかったです
海苔巻きと言えば中身は海鮮のイメージが強いものですが機内にお手洗いの完備されている旅客機とは違いこういった小型機で食べるものは足の早い具材や生の食べ物は厳禁です
特にこの年代の飛行機はクーラーもありません、空の上は涼しいとはいえ万が一を考えると火の通っているものや腐りにくい食べ物を持ち込むのがベストといえます
…まぁ、その涼しさに私は現在進行形で苦しめられているんですがね
「春だからもうちょいあったかいと思ってたんだがミスったな」
「お、お気遣いなく…」
今現在杉野殿の操縦で私たちを乗せた紫電改は高度3000mを時速換算で400km手前の速度で移動していました
風は機内まで入ってこないとはいえもうちょっとで富士山の山頂の見える高さ、地上に比べると気温はかなり低いため思わず身震いしてしまいます*2
「ん」
「え…?」
思わず寒さに震えているとそれを見かねてか杉野殿は自身の首元を手繰ってマフラーを解くとなんとこちらに差し出してくれました
「あと少しで着くとはいえ、ないよりはマシだろ?」
「良いんですかぁ…?」
使っていたもので悪いけどな、と申し訳無さそうにする彼女に思わず私は即座に首を振った
嫌だなんてとんでもない、杉野殿程の人が貸してくれるものは使いさしでも嬉しいと言いますか…
…なんなら使いさしのが嬉しいと言いますか───
「…これ、大事な物なんですよね?」
「おう、だからちゃんと使い終わったら返してくれよ?」
彼女から受け取ったマフラーは明るい紫色の物、それこそ彼女の過去を知っている身としてはそれがどれほど大切なものなのかを理解しています
「ありがとうございます…杉野殿」
「おー…」
早速首にマフラーを巻いてお礼を言うと短い返答が返ってくる、一見にして素っ気ないその返事も今の私には色んな優しさの込められた物だということが理解できて───
自然と心から温まるようなそんな気がした
「…見えてきたな」
それから少ししてそう呟いた杉野殿の言葉に私が身を捩って下方を見渡すと眼下大洗のものとは比べ物にならない大きさの学園艦が航行中であるのが見えてきました
やはりサンダース大付属はお金持ち校なだけあり学園艦も巨大、前にあれほど大きいと感じた聖グロリアーナの学園艦と比べてもこちらのが大きいというのが一目でわかるほどでした
「…なんかこっちに上がってくるな、1…2…3…6機いる」
「上空警備隊の方達でしょうか?」
学園艦の少し上を飛んでいた6つの飛行隊がこちらを捉えてか向かってくる姿を尻目にそう聞く私に彼女は「おそらく」と答えて操縦桿をゆっくりと押し込んで降下状態へ
「ありゃ、コルセアか」
「さすがサンダース、警備隊でも良い機体を使ってますね」
高度2000mを切って飛行物体の詳細が明らかになる、紺色のペイントと両翼にはサンダースの校章が貼られたそれは特徴的な逆ガル翼のチャンス・ヴォート社製のF4Uコルセアの物でした
高度約1500mを切った頃、杉野殿は主翼を数回振る──いわばバンクを振ってあらかじめ敵意のないことを表明してさらにお互いの距離が詰まっていきます
「…ん!?──うわっ!」
「い…ッ」
その時、6機編成のコルセアから2機がこちらへ向かって飛び出して来て───
距離にして数百m程の位置から片翼3門の計6門、2機を合わせて12門の銃口から突如として赤い閃光が走りました
瞬時に気づいた杉野殿が尾翼のフットレバーを蹴り飛ばしながら操縦桿を左斜め手前へ勢いよく引き絞る事で左へ急旋回したおかげで当たることはありませんでしたが急激に掛かった横Gに身体の中身が激しく揺さぶられるような不快感が走りました
「わ、わりぃ秋山…無事か!?」
「うっ…だ、大丈夫です…」
操縦席から響く私を心配する声に慌てて無事であることを伝えますが、しかしいきなり撃ってくるとは…
そのまま左に旋回しながら降下して逃げる杉野殿はジッと風防ごしに上空の様子を伺っていた為、釣られて私も上を見上げると先程の2機が急降下をしながらこちらを追って来てることに気づきます
「──チッ、追いつかれるか…秋山!」
「はいッ!?」
「少し無茶するぞ、掴まってろ!」
言うが早いか杉野殿はスロットルを全開まで開けて背面からの急降下で機体を加速させ、私はシートにベルトで固定されていて尚感じる浮遊感と格闘しながらも近くの窪みに両の手を引っ掛けて身体が変に動かないよう固定します
実のところ、紫電改とコルセアはかなり相性が悪いのです
紫電改は最高速度が水平時610km/hなのに対してコルセアは640km/h程、急降下制限速度に至っては紫電改が796km/hに対してコルセアは制限こそ800km/hですが頑丈な機体なので実際には850km/h程度まで耐えきれてしまい分が悪く
最初から急降下の選択をしていれば一度振り切ることも可能とは思いますが、向こうの様子を見るために途中まで緩く降下していたのもあって距離がそこまで空いていない今、このまま降下して逃げ切ることは不可能と言えました
──そう、通常であれば
(す…すごい、完全に捕捉された状態から逃げ続けてます…!)
自動空戦フラップ*3のスイッチを入れて右へ左へヒラヒラと舞うように機敏に進行方向を変える杉野殿は2機との距離が目測で200〜300mと言う距離に関わらず一発の被弾も無しに逃げ続けていました
確かに旋回性能はコルセアよりも紫電改の方が優れていますし重量も1.5t程軽いため加速性能は紫電改が上と言えます
それでも近距離、高度不利の状況下で2機のコルセアから逃げる杉野殿は控えめに頭がおかしい*4と言いますか…
え?本当に久々の操縦なんですよね??
(…いや、おそらく杉野殿は───)
ふと私はこの戦闘下で杉野殿の一つの特徴…彼女の強さの秘訣のようなものが思い当たりました
それは並外れた空間把握能力の高さ、いや過去の彼女の試合を見ていれば思い当たる節はありましたがこの緊迫した状況であれば嫌でもわかることです
どこに何があるか、今自分はどこを飛んでいて後ろの敵はどこに陣取っているのかを空戦の中で完璧に把握している
だからこそ不利な状況で複数を相手にしていても中々弾に当たることがないのでしょう
何と言っても彼女は剣部隊の初代三隊長最期の生き残り、敵チームの戦車75輌の編隊に単騎で挑んで完全包囲された状態から無事でいたどころか逆に1輌撃破して帰って来るという架空戦記中の出来事のようなことをやってのける人なのですから
「…あぁ!面倒ッちぃなァ!!」
しかしだからと言って今回サンダースに用のある私たちは逃げ切って終わりにすることは出来ないため分が悪いのも事実です
杉野殿は隙を見て滑走路への着陸を試みますが着陸体勢を取るとその進行方向にペイント弾が打ち込まれて妨害されるため再度上昇せざるを得ない状況でした
「こっちもペイント弾積んでないんですか?」
「…いやー、それなんだがなぁ…」
疑問に思って聞いてみると彼女からはとても歯切れの悪い曖昧な言葉だけが返ってくる
逆に向こうの機体にペイント弾を打ち込んでしまえば嫌でも優劣がわかり流石に攻撃をやめてくれるだろうと思ったのですが…
「…弾は積んでるには積んでるんだけどな、20㎜を900発ほど」
「それなら──」
900発なら紫電改の携行弾数の満載状態、それならなんで撃たないのですかと聞き返そうとしたところで───
彼女の言葉にとてつもない違和感を覚えます、20mm弾を積んでることには積んでいる?
何故彼女はそんな曖昧な言い方をしたのでしょう?考えて考えて──一つの真実に行き着いた私は一気に血の気が引いていくのを感じました
「…あの、杉野殿?──もしかしてそれ実弾なんじゃ…」
「──正解」
杉野殿から返ってきた答えは私の想像通り聞きたくなかったものでした
本来暴動やテロ等を防止する観点から一般ユースにはペイント弾のみ販売されており、実弾は銃刀法に抵触する為自衛隊等の然るべき所のみ購入の許可がされています
イベント等でドッグファイトを披露する空自の特殊飛行隊は勿論学園艦の空路を守る上空警備隊ですら実弾の装填は許されていないのです
(も、もう止めてください!これ以上は追ってこないでください!!)
私は心の中で今尚後続で追いかけてくる2機に叫びました
追いかけられるのが怖いからじゃ断じてありません、杉野殿の言葉で実は追いかけてきているコルセア側の方が命の危機に晒されている事に気づいたからです
杉野殿は喋りや立ち振舞は一見ぶっきらぼうですが実際にはかなり温厚であることはわかっています、しかしだからこそ一度プッツンしたら何をしでかすのかわからない事は昨日の一件で再認識させられました
…多分キレたらこの人本当に撃っちゃいます、どうか杉野殿を人殺しにしないでください
__ベチャ
「あっ」
しかしそんな私の叫びは2機には届くことは無く、絶えずペイント弾を撃ってきて不幸にもそのうちの一発が右主翼の端に当たって弾けた
鮮やかな暗緑色の機体の一部を場違いな朱色で染め上げ、私の口から思わず声が漏れ出てしまいます
──杉野殿は沈黙していました、その沈黙が今はとてつもなく怖く感じます
「──なぁ秋山ぁ?」
「は、はいッ!?」
普段のようになんとも無しの口調で彼女に名を呼ばれ、思わず声が裏返りながらも返事をする
口調こそ普段通りなものの若干いつもよりも間延びのした言い方がどうにも私の恐怖心を駆り立てます
「一発だけなら誤射だと思わねぇ?」
…あ、ダメです完全にキレてしまってますねコレ───
「す、杉野殿…マズいですってそれは…ここは穏便に」
「──全くこっちが下手に出てりゃァ図に乗りやがってクソ野郎が…」
「杉野殿ッ!?杉野殿ぉおおおッ!!?」
何とか杉野殿の怒りを抑えようと試みますがどうにもダメでした
しかし流石の彼女も殺しはしない筈です…しませんよね?
もはや遠慮をする必要が無くなったからか先程とは比べ物にならない動きで急激に横180°の旋回をすると一瞬反応に遅れたコルセア2機とすれ違い、そのすれ違った2機に杉野殿は一瞬視線を送って何かを確認している様子でした
「前にいるやつには識別記号がついてる…叩くならあいつだな」
すれ違いざまの一瞬で2機の内先頭を飛んでいた方のコルセアが位が高い…おそらく隊長機か副隊長機であることを見抜いた杉野殿は仕掛ける相手を先頭の機に絞ります
…あの、すれ違いざまって相対速度が1000km/h近くになる筈なのですが───
その状況で識別記号の有無を確認できる杉野殿って一体どんな動体視力をしているのでしょうか?
「見ぃ〜け♪」
そしてそのまま今度は180°縦方向に旋回してからロールを打って水平飛行に戻ると視界にはこちらを追うように旋回中のコルセア2機が映り、杉野殿はおもちゃを見つけた子供のような嫌にテンションの高い不気味な声色で言い放つと自動空戦フラップを活用した旋回で2機の後ろへ陣取ります
ここまでまさに一瞬の出来事でしたので相手はまだこちらの存在に気づいていないようでした
スロットルを全開にし、2機の内先頭を飛ぶ機体に杉野殿の操るこの紫電改はどんどん近づいていきます
このような低空での中速域は加速性能の高い紫電改が上で徐々に照準の必要のないほど視界いっぱいにコルセアが映り込んで、その直後杉野殿は機銃のレバーを一瞬引き絞り…
__ドッ と言う短く想像よりも低音の効いた音と共に紫電改の片翼2門、合わせて4門の銃口から真っ赤な閃光が一つずつ走ると3つは機体脇を通り過ぎて
残る一発がコルセアの機体上部に取り付けられたアンテナを吹き飛ばした
◆
「
少し時を遡り杉野の操る紫電改に対して最初の攻撃を交わされた頃、まさか不意打ちを避けられるとは思わなかったオリビアは思わず悪態をついた
『思っていたよりはやるようですね、どうしますか?』
「勿論!追撃するわよッ」
2番機ソフィからの無線で我に返ったオリビアは迷わず後を追うことを決意する
ちなみに隊長機であるクラークから攻撃中止命令が入ってこないのは今彼女たちが使用している無線が部隊で使っているものではなくお互いが個人的に持ち寄った物であるからだ
「
『悔しいですが腕はあるようです…ですが、コチラは2機仕留められない相手ではありません』
「
しかしどれだけ攻撃を加えても一発たりともペイント弾が当たることはない
次第にオリビアの中ではイライラが募っていく、そもそも2機のこちらに対して高々一機を仕留められないとはどういうことだ?
何故総合性能で劣る
心の中ではどこまでも冷静に状況を分析をし、オリビアは小さく舌打ちをした
コルセア隊の副隊長を任されるだけあって頭自体は回るのだ…短所はそれを上回るほど感情的なところだが…
(反撃はしてこない…ペイント弾を積んでいない?)
こちらが少しでも離れればその隙に着陸体勢を取るため、進行方向に機銃を撃ち込みながら一つ疑問に思う
何故向こうはこれだけ攻撃されて反撃一つしないのか…
──それはペイント弾を積んでいないからではないのか?
(私も飛べる
本当にそうか?頭の中で何度も自問し、途中で切り上げては自然と口角が上がる
なんにせよ反撃がないのなら好都合だ、サンダースに用があるなら向こうは逃げ続けるしかない
逃げるだけの相手であればどれだけ操縦技術が卓越していようが2機でなら弾を当てることも出来るはずだ
「相手はおそらく反撃手段を持たない、やるわよソフィ!」
『イエスマムッ』
目論見通り反撃をしてこない紫電改に二手に分かれて距離を詰め、交差するように機銃を撃ち込む
するとようやくそのうちの一発が紫電改の右主翼の端に命中し蛍光色の朱色に染め上げた
「よしッ」
しかし喜んだのもつかの間、眼の前の紫電改は大きく左に旋回したかと思うと一瞬でフ…ッと視界から掻き消えて思わずオリビアは目を見開いた
(消えた…?一体どこにッ!?)
その瞬間彼女は背後に強烈な殺気を感じ取り全身から嫌な汗が吹き出ていくのを感じた、日本軍機はプロペラが左回転の発動機が多く左の旋回が得意だ───
特に紫電改のような自動空戦フラップ付きの機体ともなれば高出力で速度が載る反面機動が鈍重なこちらに対してまるでカミソリのような切れ味で旋回出来る
(まさか後ろ──インメルマンターンかッ!?)
おそらく向こうはその旋回性の鋭さを活かして横方向の旋回でこちらの機体とすれ違うと縦方向へ機種を引き起こし背面になってからロールを打って一回転、全てのタイミングを完璧に見計らって一瞬で背後についたのだろう
(うっ──うおおおおッ!?)
バックミラーで背後を確認するとそこにはミラーいっぱいに紫電改のエンジンカウルが浮かび上がっている
完全に張り付かれたとオリビアが思ったのもつかの間、紫電改の主翼が一瞬赤く光るとチューンッと甲高い音で何かが機体上部を掠める音がした
「は…ッ?え!?なぁ…ッ」
物凄く嫌な予感を感じて震える指先でミラーを調整すると機体上部に存在するアンテナの半分より上が無くなっていた
それが意味することは───
(まさかアイツ…実弾を積んでるッてこと!?)
一気に血の気が引いていくのを感じた、向こうは反撃を出来なかったのではなくしなかっただけ
そこに彼女たちがしたことは例えるのなら大人しいからと猛獣を相手にひたすら石を投げつけていたようなものだ
向こうの気分一つで簡単に彼女たちは簡単に狩り取られる側に回るというのに───
「ひぃいいッ!?」
事実に気づいたオリビアはコックピットの中で情けなくも悲鳴を上げることとなった
◆
「あ〜、ちょっとはスカッとしたぜ」
「スカッとじゃないですよ!?」
悪びれる様子もなくそんなことを言う杉野殿に私は盛大にツッコミを入れることとなりました
昨日私に警察沙汰になるからとコンビニの定期船に忍び込むことを止めていた彼女は思えません、完璧に銃刀法違反でしかも撃っちゃってます
アンテナまで吹き飛ばしてる為言い逃れも不可能です
「…ん?」
何かに気づいたように右側へ視線を向ける彼女に釣られて私も視線を同じ方向へ向け──そこにいたのは…
(識別記号がついたコルセアがもう一機…?)
指揮官識別記号が眼の前のアンテナが半分無くなったコルセアの物よりも大きく派手な見た目をしています
それが意味することは───
(こっちが隊長機!?)
おそらく先に撃ってきたのは副隊長機、今右隣に位置取り風防越しでも分かる巨体の持ち主なのが隊長機と言うことだろう
実弾で相手を撃ってしまってるのでこの状況は結構マズいのでは…
そう思っていると向こうの隊長と思われる人が手信号で何かを伝えようとしていました
(…あれ?)
『すみませんでした、許してください(※簡略意訳)』
私の思いとは裏腹に隊長と思われる人からはひたすら謝罪を表す手信号が送られてきます
は、話の通じそうな人です!この人なら───
『くたばれ、ボケ(※簡略意訳)』
そう思ったのもつかの間、杉野殿は右手の親指で首を掻き切る動作をしてから中指を立てます
いや何してるんですか杉野殿ぉおおッ!?
『何卒(※簡略意訳)』
しかしそれでも尚、向こうからは謝罪の手信号が送られてきた為杉野殿も流石に納得出来たのか右手でOKサインを作った
風防越しでも分かる長身の相手は安心したのか胸を撫で下ろすジェスチャーをしてから眼下のサンダース大付属の学園艦滑走路を二度指差ししてから自身を指した
(これは…『案内するからついてこい』と言うことでしょうか?)
私の読みが当たっていたのか、杉野殿はそのコルセアについてくように紫電改を操縦すると滑走路に着陸体勢に入った───
「──ほら、降りれるか?」
「は、はい…」
先程の一機のコルセアに付いていき、機体をバウンドさせることもなく見事な着陸を決めた杉野殿は飛行帽を外すと一足先に主翼の方へ降りるとこちらへ手を差し伸べてくれます
やはり乗り込むときも思いましたが後ろから前への移動がキツく多少手間取りますが、そこを抜ければ彼女の手を取って荷物の入ったリュックサックを片手にコックピットから主翼側へ出ることに成功しました
「結構急な操作多かったからな、大丈夫か?気分悪くなったりはしてないか?」
「いえ…大丈夫です」
確かに先程の空中戦はスタント紛いな機動も多かったので多少頭がクラクラしますが、それよりも凄いものが見れたと言う興奮ととんでもないことをしてしまったのではないかと言う気持ちのが強く───
今も心配そうにこちらを覗き込む杉野殿に私は顔が引きつりそうになるのを必死に堪えます
ここだけ見るとただの優しい見た目相応の少女なんですがねぇ…
「──よっ」
一足先に杉野殿は主翼から飛び降りて着地し、私もそれに習って続く───
私たちが降りてくるとサンダースの校章がついた飛行服を着た3人の女性が近づいて来ました、そのうちの一人は先程私たちを誘導していた長身の人物であることに気づきます
「うちの部下が本当にすまなかった───!」
そしてその背の高い女性は引き連れてきた別の二人の頭を掴んで無理やり下げさせながら自身も深々と頭を下げます
やはりこの人が隊長で間違いないようでした
「ツラぁ上げてくんねぇかな、アンタに謝られても困るっつーか」
杉野殿は困惑半分、面倒臭さ半分といった様子で、一瞬彼女なら怒りが先に来そうだと思いましたが…そう言えば杉野殿は元々問題児たちを束ねていた事もあり彼女自身も部下のために頭を下げる経験があったからか多少怒りが収まったのだと推測できます
しかし杉野殿が顔を上げるように言ってもコルセア隊の隊長は頭を上げることはありませんでした
次第にこの状況が面倒になったのか杉野殿は「あー…」と低く唸りながら頭をガリガリと掻き、深く溜息を一つ吐いた
「それじゃ俺の紫電改にぶち当てたあのふざけたペイント落としといてくれよ、それを謝罪代わりに受け取るわ」
「──わかった、任せてくれ」
「ちゃんとやった本人にやらせろよ?」
謝罪代わりの代案として杉野殿は機体につけられた特殊ペイントを落とすよう要求し、それに対して相手の隊長は一度は了承したものの続く言葉に顔を曇らせます
心なしか後ろ二人もビクッと肩を震わせた気がしました
「…彼女たちは普段乗る専門でね、そう言ったのはからっきしなのだが」
「だろうな…機体の手入れや整備、その大変さがわかってる奴はあんなこと出来ねぇだろ───
自分のも含めて機体を大事にするいい機会じゃねぇか?」
厳しい意見の杉野殿に相手の隊長もそれでいいのならと少し顔を渋らせたまま了承し、それから…とさらに続けました
「…うちの秋山は今日が初めての空だったんだ、それがあんな事になって空が怖いところだとは思われたくねぇ」
そして「謝るのならば俺ではなくむしろ秋山に…」と杉野殿はこちらへ視線を向け、目の前の3人も釣られるように私を見ます
───えぇ…?ここで私に振りますか??
胴体は延長されていないが重量増により速力が若干低下したらしい
元々は一部の熟練パイロットが速度を落としながら効率的に旋回するために離着陸等に用いられるフラップを空戦で用いていた為それ自動化したもの
速度エネルギーが充分ある状態では補助翼に加えてフラップを下げることで極めて短い旋回半径での急激な方向転換を可能としている
装置は任意でON/OFFが切り替えられる為、使わない人は使わなかったらしい
※ただ、速度エネルギーが不充分なままフラップを下げれば失速する危険性があるという問題点もある
現実世界には海から引き上げられた本物の紫電改とレプリカの紫電改が存在しますが本作は戦車隊として剣部隊部隊が存在してますので元ネタとなっている軍人たちは過去に存在しない世界線となっております
そのため当作品において本物の紫電改は国内に一機もないと言う設定です、飛べる機体が存在しないのは現実世界も同じですけどね
上空警備隊も多分オリジナル設定にはなるのかな…?
戦車が街中走ってたり孤島のような船が海上って閉塞的な空間を航行してる設定だからこういう警備隊は必要でしょうってことで作りました
アニメでエリカがヘリ運転してましたし、学生がヘリや飛行機の操縦免許取れるほど身近な世界観なら警備隊なきゃ侵入し放題になっちゃいますしそれを逆手に取られたらテロとか事件起きそうですよね〜
そんな感じで追加した警備隊なので以後この人たちはほぼ出ません
はい、話を変えまして皆さん
昨日1日でかなりの総合評価とお気に入り登録を戴きまして
なんと評価バーに色がつきました!
小説情報欄はよく覗いてるんですがあれはテンション上がりますね
乗るしかない、このビッグウェーブに…ってことで急いで書き上げました、まぁ急いでようと急いでなかろうといつも通り誤字脱字多いとは思いますが…
活力になりますのでお気に入り登録・感想等是非ともよろしくお願いします
以上です