ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

26 / 48

前回に引き続き裏事情を知ってる秋山殿をメイン描写として描いた方が書きやすかった為今回もほぼ秋山殿描写で進みます




ワレ、サンダース大付属ニ潜入セリ 上 ★ 【挿絵有り】

 

コルセア隊の隊長からひとしきり謝罪されたあと、紫電改を彼女たちに預けた杉野殿は滑走路脇の建物の方に向かって歩き始めた為私は慌ててその後を追いました

 

「杉野殿…あちらに何かあるんですか?」

 

「ん?…あぁ、着いたら来るよう言われててさ」

 

思わずなにかあるのだろうかと聞く私にケータイを取り出して何かの操作をしながら彼女は歩き続けます

少しして目の前の建物の詳細がハッキリと見え始めて来た頃、その建物の出入り口付近に一人の小柄な女性が立っていることに気づきました

 

「──あの、誰か居るみたいですけど」

 

「あー…」

 

同じく気づいた様子の杉野殿にそれとなく聞いてみると彼女は曖昧な返事とともにその女性へ向けて軽く手を振ります

すると何故か目の前の女性は準備運動のようなものをしだしました

 

「…なにかしてますよ?」

 

「嫌な予感しかせんな」

 

ため息交じりに杉野殿はそのまま近づいて行き、女性との距離が50mほどまで詰まった時───

突如タイミングを見計らったようにその女性はこちらに向かって猛ダッシュをして急接近してくると杉野殿へ向かって文字通り飛びかかりました

 

「うぉっ──!?」

 

Ouch()ッ!」

 

しかし女性が杉野殿へ激突する寸前に驚いた様子の彼女は半身のみ横へズレて退避し、女性はそのままビタンッと大きな音を立てて杉野殿の真横に落下します

 

「──もぅ!久々に会った友人になんて仕打ちなの!?」

 

「…オメェこそ久々会った友達になんつーことしようとしてやがんだ」

 

そしてお互いに文句を言い合いながらもその表情には笑みを浮かべている、この方が杉野殿の言っていた知り合いの方でしょうか?

羨ましいくらい癖のないロングヘアに地毛だと思われる明るい金髪、おそらくはハーフか両親が海外の人だと見受けれる真っ青な瞳のその女性は不思議と初対面な筈なのにどこかで見た覚えがあります

 

「──改めて久しぶりだな?」

 

「えぇ、直接会うのは3年ぶりくらいかしら?…そっちの子が昨日言ってた子?」

 

立ち上がりそう言いながらこちらを見つめる女性は、間近で見ると私より目測で10cm程低いくらい小柄な背丈をしています

 

「は、初めまして…秋山優花里と申します!」

 

「うん、元気と礼儀のある良い子ね───

私はジュリアン・パグ・サザーランド、よろしくね」

 

ついいつもの癖で敬礼と共に名前を名乗ると彼女は思わず惚れ惚れするような見事な所作で敬礼を返してそう名乗り──私の思考回路が一瞬でショート寸前になりました

 

「──えぇ!?あのジュリアン・サザーランド殿ですかッ!!?」

 

「…Wow?私のこと知ってるの?」

 

「勿論ですッ」

 

それは嬉しいわねとニッコリ微笑む彼女、サザーランド殿に感じた既視感は私の間違いではありませんでした

サザーランド殿と言えば、佐世保ベースに勤務するアメリカ人の両親を持ち───

小柄でありながら非常に好戦的な戦闘スタイルでパグ(小型犬)の愛称でチームメイトに慕われていたという豪放磊落な人物で有名な方です

 

「佐世保戦車スクール67期の撃破王で個人撃破5輌、共同撃破19輌の豪傑だと…」

 

「うーん、横にもっと凄いのがいるからイマイチ喜べないなぁ」

 

私の知っていた限りの情報は間違いのないものだったようでそう言って苦笑いする彼女にとんでもないと慌てて首を横に振って否定をする

そもそも練習を含めて動く戦車に砲弾というのは本来中々当てられるものではなく、撃破するのはさらに難易度の高いもので

こちらもレアケースではあるものの小・中・高の約12年間戦車道に勤しんでも1輌の撃破も経験せずに引退する選手だって中にはいます

だからこそそんな撃破の難しい戦車を試合という場で5輌も撃破出来た《撃破王》という称号に価値が生まれるのです

 

「杉野殿は…あの、人間じゃなく魔王ですから」

 

「確かに、試合でのあの子は人外と言った方が簡単に説明がついたわね」

 

「──おい聞こえてんぞテメェら」

 

杉野殿の様に個人・共同の両方で400輌を軽く超えてくる数を撃破しているような撃破王は本来であれば異例も異例

だからと言ってその分自身も相当数撃破されている、俗に言う被撃破王なのかと言われればそれも違い───

何とスクールから始まりタンカスロン引退までの7年近くに及ぶ長い戦車戦の中で試合中に撃破されたことが一度もない世界的に見ても非常に稀な経験の持ち主です

それこそサザーランド殿の言う《人外》や彼女を恐れた敵チームがつけた《魔王》という呼び名がこれ以上ないほどぴったりと当てはまります

…まぁあまり言うと拗ねてしまうのでこれ以上は止めておきますが

 

「ただ、私達サンダースの人間からしたら【イエローファイター】の方が馴染み深いかな」

 

「あ、そう言えばそれを呼び始めたのってサンダースの生徒からでしたね」

 

3年目の途中から杉野殿のいた剣部隊は大村に本拠地を移す事となりますがそれ以前より何度かサンダース大付属や関連するスクールと試合を行うことはあったようで

杉野殿の搭乗する戦闘301の隊長車は桜のマークの撃破ステッカーのみならず車体側面を分断するような大きさで指揮官識別記号として斜めの黄色い2本ラインが入っておりとんでもなく目立つ車輌でもありました

その為いつしか畏怖の念を抱いたサンダースやその周りの戦車乗りの間でしばしば【イエローファイター】という呼び名が浸透して行ったのです

 

「──しかし、引退したとは聞いておりましたが何故戦闘機乗りに?」

 

「大学までは続けてもいいかなぁとは思ってたんだけど、やっぱり他の才能ある子に比べると私って才能なかったのよ」

 

「そんな…」

 

話を戻しまして、サザーランド殿は戦車道を始めたのこそ佐世保67期と江田島70期の杉野殿の3つ上の代ですが、年齢自体は5つ上で既に成人を迎えておられる方です

サンダース大学に通う傍らでこうして上空警備を任されているのでしょう

確かに杉野殿を初め、トップエースに部類される撃破王のスコアから見れば彼女は多少見劣りしてしまうかも知れません

ですが総撃破数24輌というスコアは大学でも続ける選択をするには充分であった筈です

 

「──私は昔から戦車が好きでしたから、色んな選手の情報に目を通してました…そこには勿論サザーランド殿のものもありましたし…車長として一流とどの媒体にも書いてありました」

 

「…Thank you、嬉しいことを言ってくれるわね

でも残念なことに超一流じゃなかったのよ」

 

そこの魔王様のようにね、と冗談めかして杉野殿へ一度視線を送ってから自嘲気味に笑って彼女は続けます

 

「私は負けず嫌いだから、敵にも味方にも負けたくないのよ…自分でも嫌になるくらい絶対にね───

だけどあの頃私の下の代の子たちがどんどん台頭してきて、例え大学で続けたとしてもすぐに二軍落ちすることが目に見えてたの」

 

彼女の話はどこまでも残酷で非情な現実の話です

 

「超一流なら諦めることも考えずに、たとえベンチ入りしようが奮起出来るし…何より周りも納得してくれる

だけどね?一流じゃ無理、上澄みも上澄み相手には奮起する気も起きないくらい差があるし──本気で続けることに誰も納得してくれないのよ」

 

「それで戦闘機乗りに、ですか」

 

「好き嫌いと合う合わないは全く違うからね

今でも戦車は好きだけど、私には戦車よりも戦闘機乗りの方が合ってたみたい」

 

大学でも続けるのならば特に一流なんて人間は国内を探せば沢山いる

一握りの超一流でなければ続ける事は叶わず、だからこそ好きなものではなく自分にあった道へ…

そう語る彼女の表情は撃破王と呼ばれた勇ましいものではなく夢破れた只の一人の女性のものでした

 

 

 

 

 

 

「うちの戦車道チームにバレたらマズいんでしょ?

警備隊の控室使っていいから、そこで着替えちゃいなさい」

 

「ありがとうございます…!」

 

話もそこそこにサザーランド殿が先導してくれて、私たちは警備隊の屯所である建物へ入っていきます

スパイとしてここに来る事を杉野殿は予め伝えていたのか、場所を貸してくれると言う彼女へお礼を述べるとニコッと微笑み返してくれた

 

「──あなたもよ、直緒?サンダースでその格好は目立つわ」

 

「へーへー」

 

サザーランド殿に格好を指摘されて少しだけ気だるげに杉野殿は反応しました

…確かに、私は大洗の制服(リュックの中に使う予定だったコンビニの制服とサンダースの制服入り)で杉野殿は旧軍風の飛行服姿───

アメリカンに仕立て上げられたサンダース大付属の学園艦からすれば大変浮いた格好でした

 

「それにしても、久々に見たわねその格好───」

 

「俺も久々に着たもん」

 

「なんで飛行服代わりに剣部隊のPJ着てるわけ?」

 

前を歩く二人の会話を聞いていた時にふと聞き捨てならない言葉が聞こえました

…え?剣部隊のPJが飛行服代わり?…確かにやけに似合ってるなと思いましたけど

 

「杉野殿PJを飛行服にしてるんですか?」

 

「おう、機能を追求した結果…剣部隊のPJはモチーフが元々旧軍の飛行服になっててな───

飛行服としても違和感なく使えて楽なんだよ」

 

よくよく見ると確かに見覚えのある格好と言いますか…

しかし落下傘やハーネスでそれっぽく見えてたとは言え剣部隊のPJ姿の杉野殿という大変貴重な光景に全く気づかなかったとは…

私の目もまだまだだなと実感させられます

 

「…写真撮って良いですか?」

 

「やめろ恥ずかしいから」

 

思わずリュックの着替えと一緒に入れてきたスパイ活動用のビデオカメラとは違う趣味用のもう一つのカメラ

──ローレライフレックスを彼女に向けると瞬時に顔を手で覆い隠してしまう

 

「あ…すいません」

 

流石に軽薄で馴れ馴れしかっただろうかと思い杉野殿に謝ってから私はカメラをリュックに仕舞おうとすると、彼女は小さく溜息を吐いてから「ん」と短く言って両手を腰に当ててその場で軽くポーズを取りました

 

「…撮ってくれんだろ?カッコよく頼むわ」

 

「…ッはい!」

 

何だかんだ嫌がってても最後はノッてくれるので優しい方だと思います…と言うよりもしかして杉野殿って──

 

「…ツンデレと言うやつでしょうか?」

 

「本人目の前で言うことじゃねぇぞ秋山、やめるか??」

 

思った事がつい口から出てしまい、ムッとなっていつもの3割増くらい眼光が鋭くなる杉野殿へ向けてシャッターを切る

見た目こそ思わずドキリとしてしまうほどの威圧感に包まれておりますが本気で怒ってるわけではなく冗談半分で言っている事もこの短い付き合いの間に徐々にわかってきました

 

「飛行帽持ってくりゃ良かったなぁ、ないと中途半端で格好がつかん」

 

「…いえ、杉野殿はカッコいいですよ」

 

「…そうかい」

 

ふと紫電改のコックピットに帽子を置いてきた事を失敗したと呟く杉野殿に本心からの言葉を告げると一見して素っ気なく返されてしまいますが少し視線がカメラから逸れたのに気づきます

 

(もしかして、照れてるんですかね)

 

おそらく言葉に出すとまた怒られてしまうとは思いますが、杉野殿は普段の言動や態度、趣味嗜好の裏腹にかなり乙女チックな所があったり───

根は文学に傾倒していたロマンチストな面や豪快に見える影で実は繊細な一面を併せ持つ方でもあります

もしかしたら人柄だけでなくそういった所が彼女の周囲に人の集まる理由なのかも知れません

 

「…あなたも入ったら?撮ってあげるわよ?」

 

「わぁ、良いんですか!」

 

カメラのクランクを回してフィルムを巻きながら、2回3回と杉野殿を撮影しているとサザーランド殿が私も入れて撮ってくれると提案してくださいました

しかし肝心の杉野殿が一緒に撮ってくれるかな、と少し不安が残り彼女の方へ視線を移すとそれに気づいてかちょいちょいと小さく手招きをしてくれた為

カメラをサザーランド殿に預けて私は彼女の横へと移動します

 

「撮るよ〜?Are You Ready?」

 

シャッターが切られる直前、示し合わせる事もなく私達二人は自然と敬礼でポーズを取っていました

考えすぎかもしれませんが、私の普段の言動や行動からこういうポーズしか取れない事を予めわかっててやってくれたんでしょうか?

 

「…あなた達もっと女の子らしく可愛いポーズ取れないの?」

 

しかし思ってたポーズとかけ離れていた為かフィルムを巻きつつサザーランド殿からは苦言をいただきます…

か、可愛いポーズですか…それは私は勿論杉野殿も難しいのでは無いでしょうか

 

「──肩でも組んでみるか?」

 

「えぇっ!?それはちょっと恐れ多いと言いますか…」

 

杉野殿はサザーランド殿に言われたことで少し考えるような素振りを見せた後、彼女からまさかの提案があり流石に尻込みしてしまいます

いや、嫌なわけでは決して無いですし本音を言えばめちゃめちゃ撮りたいです

──ですが、推しの一人と肩を組んで写真だなんてまだハードルが高いと言いますか…

そんなこんなでしどろもどろになってる私を見かねてか彼女は私の肩にポンと手を置きました

 

「友達同士で今更何遠慮してんだ?…ほら屈め、秋山が屈まねぇと肩組めねぇぞ」

 

「は、はひぃ…」

 

乗せられた手に少しだけ力を込めて背丈を合わせるように言われ、思わず声が裏返えってしまいました

というのも今までは他の友人が近くにいたり、それこそ西住殿に頼まれて大浴場に杉野殿を運んだときみたいに私が主導ではない状態だと彼女と至近距離でも過度な緊張はせずに済みました

しかし今はサザーランド殿がいるとはいえほぼ初対面なので実質私と杉野殿の一対一で至近距離となるため緊張しないはずがないです

 

(──あ)

 

色んな意味で恐る恐る杉野殿の肩に手を回し、屈んで目線を合わせれば視界に広がるのは普段彼女が見ている景色だ

身長差にして約25cm、おおよそ頭一つ分低い彼女の視点では周囲のものが異様に高く、やけに大きく見えました

 

(これが杉野殿の見えている世界…)

 

肩へ回した腕が彼女の身体の輪郭を浮き彫りにし、嫌でも服越しに感じる体躯の小ささと線の細さを実感して一瞬過去の杉野殿のその勇姿と目の前のただの小さい少女が同一人物であると結びつかなくなってしまいます

本来であれば戦闘機乗りはおろか戦車乗りにも向かないであろう身体で、しかし天性のセンスと頭脳の高さ…

そしてどんな絶望的な状況に追い込まれようがその恐怖に打ち勝つ強靭な精神力で魔王と恐れられるまでに到った彼女───

…あまりにも遠い存在だった筈の彼女はこうして肩を組んで並び立つと少しの力の込め具合を間違えれば壊れてしまいそうだと錯覚してしまうほどでした

 

「…どうかしたか?」

 

「い、いえ別に…」

 

思考に意識を裂きすぎた為か固まってしまっていたこちらへ小首を傾げて尋ねてくる杉野殿へ私は取り繕うのが精一杯です

…あ、コレまずいです、この状況を意識したらまた緊張がぶり返しました

 

「ちょっと見切れてるかも…」

 

「秋山、もっと寄せろ…笑顔で頼むぜ?」

 

シャッター越しに難しい顔をするサザーランド殿に入りきれてないかもと言われ、それならと杉野殿がさらにこちらへ顔を近づけて来て───

サラッと靡いた彼女の髪から漂う仄かに甘い香りに一瞬意識が真っ白になりかけます

 

(ち、近い近い!推しの顔が近いですッ!!)

 

普段の不機嫌そうな顔もなりを潜めて眉間に皺を寄せながらニッといたずらっぽく笑う杉野殿とその距離の近さに思わず心臓が跳ね上がりそうになります

彼女は目つきが悪いだけで顔の造形は良いですし、なんなら見慣れてしまえばそれ込みで美人なので私の精神衛生上とてもよろしくありません

…というか彼女はチーム関係者以外と写真取らないので出回ってる写真は全部過去に所属した部隊の関係者との物しか存在しないのですが、あれ?もしかして今私すごく貴重な経験してるのでは??

 

「…多分OKだと思うけど、こっちで現像してく?」

 

「そ、そこまでしてもらうわけには…自宅に用具が一式あるので自分でやりますよ」

 

シャッターを切ったあとこっちで写真にしていくかとサザーランド殿に聞かれましたが流石に申しわけなさすぎて辞退させていただくと「そう」と一言だけ呟いてカメラをこちらへ手渡してくださり

──そして彼女は杉野殿へ視線を移すそう言えばと切り出した

 

「直緒にすっかり伝え忘れていたことがあったのだけれど

あなたの戦車道の復帰…友人として、元一人の戦車乗りとして嬉しく思ってるわ」

 

「…ありがとよ」

 

続く言葉に照れくさくなったのか杉野殿は視線を下に落としながらそう言いました

 

「──正直、またこんな瞬間が…戦車乗りとしてのあなたに会うことが叶うとは思わなかった」

 

「あんな幕引きだったしな──散々やったもの

俺自身、もう懲り懲りって気持ちもあったよ」

 

お二方の会話内容に口こそ挟みませんが、その言葉に含まれていない部分

所謂行間が読めないほど私は杉野殿に対する情報知識が欠落しているわけではありません

口外に含まれたその言葉の意味はきっと───

 

「…あなたにとってのあの頃って、楽しかった?」

 

「──楽しかったね…同じ志の仲間と同じ温度、同じ空気感で脇目もふらずに全力でいられたしな

反省することも多々あったし取り返しのつかない後悔をした事もあったけど…振り返ったらやっぱり楽しくてさ」

 

サザーランド殿の問に杉野殿は懐かしむように言って続けます

 

「時折ふと長い夢を見ていただけのような気分になることもあるけど、一人になった今でも俺はまだ夢から醒めてないような気もして───」

 

そしてそこで一度区切ってから杉野殿は少し考えるような素振りで「いや、違うな…」と一つ訂正をしてからこちらへ振り返り

いつものように目尻を下げて優しく微笑みました

 

「──一人じゃなかったな…今でも変わらず仲間はいるよ

一人じゃないよ───俺…」

 

どこか寂しげに私やサザーランド殿にではなく…自らに言い聞かせるようにそう言った杉野殿の姿は何だかとてももの悲しくて何も言うことが出来ませんでした

 

 

 

 

 

 

 

それから控室に着きサザーランド殿は部屋の前で待っているとの事でしたので私達は室内で着替えに入ります

…ちょっと気が早いかも知れませんがこの辺から撮影開始しておきましょうか、音声は後々編集で付け足せば良いですし

 

「…杉野殿、どうですかね?違和感あります??」

 

「──どうって言ってもなぁ」

 

飛行服の中にこちらで行動する為の私服を着込んできていた杉野殿に持ってきたサンダース付属の制服に着替えながらバレないだろうかという不安からそんな風に聞いてみるものの

判断に困ると言わんばかりの微妙な返答が返ってきます、…やはり私にはこういったのは似合いませんかね?

 

「似合ってるよ勿論、…けど服だけ変えて変装って言えるか?」

 

「うっ…確かに」

 

顔に出してしまっていたのか誤解のないように言うけれどと前置きを一つ置いて杉野殿はそう続けます、…痛いところをついてきますね

しかし見た目を変えようにも私にはまず一番手っ取り早い方法の髪型が変えられない(癖が強すぎてセットしてもすぐに戻る)為仕方のない部分もあるのです

 

「こういうのは普段の自分と絶対に結びつかない見た目にするんだよ」

 

「…そう言えば杉野殿の場合サンダースの戦車道チームには多少顔が割れてしまってる可能性ありますもんね」

 

それこそ公式戦では戦ったことはなくても親善試合やタンカスロンなどで一軍〜三軍までの全チームと戦ったこと自体はある杉野殿は大洗で一番顔が割れてる可能性のある人物です

あとは次点で実際に会場で抽選を引いた西住殿も昨日の出来事だと言うこともあり既に顔割れしてるでしょうね…

 

「と、言うわけで少し作戦を考えた」

 

「作戦…ですか?」

 

聞き返す私に杉野殿はおうと頷き、爆弾を投下します

 

「秋山は制服だから普通にサンダース生と振る舞うとして、俺はその弟って事にしよう」

 

「ええ!?」

 

驚愕のあまりその場にひっくり返りそうになってしまいます

なんでよりにもよって逆の性別なのでしょうか?というか確かに彼女の今日の格好は飛行服の中でも着れるように黒無地のTシャツに踝程まである長めのジーパン、しかもおそらく両方メンズという中性的なカジュアルコーデではありますが…

 

「…それで男は無理があるとおもいますけど」

 

「いつもだったらオーバーサイズで隠してるんだけど流石にな、まぁちゃんとさらし持ってきてるから大丈夫」

 

彼女は背の割にスタイルは良いほうです、本人はそのせいで胴が短いのに胸のせいで服が張ってしまうと嘆いており

事実パッと見は胸の辺りから服が膨れてそのまま下に落ちてるので一見してずんぐりな見た目にも見えてしまいますが、間違っても男性には見えません

…というか今普段はオーバーサイズ着てるって言いましたね、普段もこんな感じのファッションなんでしょうか?

 

「…ほら、これで完璧───」

 

「なんか慣れてません??」

 

杉野殿は先程まで着ていた飛行服のポケットからさらしを取り出して慣れているのか服の下から一人で巻いていきます

巻き終わると確かに胸部は完全に引っ込んで真っ平らになっていました

 

「後は髪を括って──目の周りにアイシャドウ引いて───」

 

胸が済めば今度は髪を一度解いて後ろでまたいつものように束ね直してから上へ向かって折りたたんで*1縛るとどこからともなく取り出した無地のパネルキャップを被ることで結び目を隠すことで短髪風に、そして再度飛行服のポケットからアイシャドウと大量のピアスを取り出します

 

「──え!杉野殿普段はピアスつけてるんですか!?」

 

「ん?いいや、これはただのイヤーカフとイヤリングで実際にはピアスホール一個も空いてねぇよ?

結局公私で姿が結びつくようにしたくないだけだからさ」

 

思わず聞き返した私に杉野殿はそんな訂正を入れながら真っ黒でドギツいアイシャドウを目の周りにグリグリと練り込んでいます

あぁ…そんなことしたらただでさえ目つきの悪い杉野殿が大変なことに…!

 

「…ま、格好はいつもより地味だけどそもそも潜入するなら目立っちゃダメだしな」

 

「だ、誰ですか…!?」

 

「目の前で変装してるの見てた秋山すらわからなくなるなら成功って取っていいべ?」

 

アイシャドウが終われば左の耳に取り出したイヤーカフ・イヤリングを取り付け、またこちらもどこからか取り出した厚底の靴を履いて彼女の変装(私服)の完成です

…確かに思わず誰か聞いてしまうくらい普段学校で見る姿の原型は無くなってますし、似合ってはいますけど…けどぉ

 

「杉野殿、本当に私服そんな感じなんですか…?」

 

「嘘ついたって仕方あるめーよ」

 

似合ってはいます、勿論それは…

というのも美人とは言え杉野殿結構強面ですし、しかしこれはいくらなんでも柄が悪いような…

 

「もっと普通の格好と言うか、甘い感じのコーデとかも似合うと思いますよ?」

 

「それこそ俺の柄じゃねぇのよな、まずそもそも主軸にあるのが他人から避けられる格好って事だし」

 

「…?どういうことですか?」

 

再度気になる部分ができて聞き返すと杉野殿はここに至るファンション道を聞いてくれよとやたら悲壮感の漂うテンションで語り始めました

 

「まぁ柄じゃないってのも勿論あるんだけど、そういう格好をすると変なオッサンに話しかけられたり警察に迷子を疑われてとてつもなく面倒な事になるんだよ」

 

「あっ…」

 

そして逆転の発想でまともな人は声をかけようと思わない格好に切り替えたのだと言われれば流石に何も言えなくなります

…そうですね、目付き云々があってもそもそも顔が良いのでそういったのを気にしない杉野殿程の背丈の女の子に声をかける特殊な方もそれはそれはいるかも知れません

そういった危険な輩から身を守るためとあらばこういった格好、または男装に近いファンションになるのも頷けます

…けどまぁ、何だかんだそういう事態に陥ったら陥ったで嬉々として相手を殴り倒しそうな気もしますが───

 

「うっわ…直緒あなた相変わらずね」

 

「ほっとけ、身元がバレなきゃ良いんだべが

それに姉弟って設定でいくからこういう格好を逆手に取ったほうが都合いいんだよ」

 

着替え終わって控室から出ると少し引き気味でサザーランド殿は杉野殿を見て呟き、それに反論しながら杉野殿はこちらへ同意を求めるように「なぁ秋山?」と振ってきますが回答に困ります

 

「…あなた達姉弟設定なのに名字呼びとかバカなの?速攻バレるわよそんなの」

 

それを見ていたサザーランド殿からは即座に痛いところを突かれてしまい、ちょっとナメすぎじゃない?と苦笑いをされてしまいました

というか本当に姉弟設定じゃないとダメなんでしょうか?

 

「あの…杉野殿はなんで姉弟設定にしようと思ったんですか?」

 

「そりゃ俺の分のサンダースの制服もねぇし、授業始まってから秋山が潜入するなら空き時間ってのが必然的にあるわけだろ?」

 

「はぁ…それはそうですが」

 

「その空き時間で他の場所見て回る場合周囲の目というのがあるだろうが、姉妹や友達って設定なら俺が制服姿じゃない時点で怪しいだろ」

 

「た、確かに…」

 

ちなみにそれとなくサザーランド殿にサンダースの制服を杉野殿用として借りられないか聞いてみましたが流石に彼女に合うサイズは無いとのことでした…

なんでも生徒数の多いサンダースでも彼女ほど小柄な生徒は存在しないのだとか───

 

「でも流石に杉野殿を名前呼びはハードルが高いと言いますか…」

 

「…まぁ俺は気にしねぇけど、結局こういうのは慣れだしなぁ」

 

うーんと腕を組んで考えるように首を捻る彼女は少ししてから何かを思いついたように手をポンと叩きます

 

「…偽名使おっか、そうすれば秋山も多少は気が楽だべ」

 

「偽名、ですか?」

 

確かに偽名なら杉野殿を普通に名前呼びするよりは緊張せずに済むとは思いますが…

いやしかしあまり原型を留めないような偽名だと逆に必要なときに名前が出てこなかったりする可能性もありますし、なるべく覚えやすい名前が助かりますが──果たして

 

「おう、しっくり来るやつも思い浮かんだしな

と言うわけで、今から帰りまで俺のことは(ナオシ)って呼んでくれ」

 

「…何かすごいしっくり来ますね、その名前」

 

何故でしょう?偽名であるはずが彼女にその名前は全く違和感を感じません、ともすればこちらのが本名じゃないかと錯覚に陥ってしまう程です

 

「んで俺は秋山の呼び方変えないとか…

お姉ちゃん…姉貴……姉上…?優花里姉さん……ユカ姉ェ」

 

「…ちょっと待ってもらえます?」

 

続いてうんうんと唸りながら私の呼び方を考える杉野殿に対して思わずストップをかけます

彼女に姉呼びされるのはそれはそれでとてつもなく心臓に悪い事に今気づきました

 

「せめて私が妹と言うことでどうにかならないでしょうか?」

 

「…どこをどう見れば俺が秋山より年上に見えんだよ、めちゃめちゃ怪しいだろうが」

 

そこそこの分厚さを誇る厚底の靴を履いて尚私より低い背丈の彼女は自分で言ってて少し思う所があったのかムスッと拗ねたように視線を切ります

…たしかにそれはそうなんですけど、推しに姉呼びされるのは私の精神が持ちそうに無いんですが

 

「というか杉野殿の方は私に対して姉呼びすることに抵抗はないんですか?」

 

「俺は元々妹属性と姉属性の二つの性質を併せ持つからな

その応用編なんてわけねぇよ」

 

…そう言えば杉野殿は四人姉妹の次女なので姉も妹も経験しているんでしたっけ、ともすれば応用で弟を演じることも確かに難しくはないのでしょうが本当にこのまま勧めていくしかないのでしょうか?

 

「秋山からの希望はあるか?完璧に演じてやるぜ?」

 

「…じゃあちょっとお姉ちゃんって呼んでみて貰って良いですか?」

 

呼ばれるのが心臓に悪い反面…本心ではちょっぴり呼ばれてみたい気持ちもあります

ついどんな感じなのか気になってお願いしてみると彼女はわかったと言って気合を入れるように小さく咳払いしながら喉の調整に入ります

 

「…おねぇちゃんっ

 

「どこから出したんですかそんな声ッ!?」「ブフッ…」

 

弟として呼ぶ為に喉の調整をおこなった筈の彼女の口から放たれたのはいつもの低音で通るような声ではなく何故か激甘ロリっ子ボイスでした…

不意打ち過ぎて危うく盛大にコケるところでしたよ、サザーランド殿なんかお腹抱えてケタケタ笑ってますし───

 

「…あれ?おっかしーな…おねぇちゃんっおねぇちゃんっ…は??」

 

当の杉野殿は完璧に調整が出来た筈なのにと困惑してる様子で何度もお姉ちゃんと発音しますがその部分のみが本来の彼女の見た目相応な特殊な癖を持つ方々の脳を溶かしてしまいそうな程の甘ったるいロリっ子ボイスに変わってしまいます

 

「──どうなってんだコレ!?」

 

「ひぃ〜っ!ひぃ〜っ!直緒あなた最高よ!!」

 

「笑うなメリケンッ!!」

 

どうにもならず混乱する杉野殿にサザーランド殿は過呼吸を起こしそうな勢いで大爆笑でした

いや確かに一見するとギャグですけど…結構大げさと言いますか、まぁ日本生まれ日本育ちでも根がアメリカ人なためかなりオーバーアクションですね

…杉野殿のロリっ子ボイスにちょっと萌えてしまったのは墓まで持っていこうと思います

 

 

 

 

 

「それじゃ、気を付けて行ってきなさい」

 

あの後ある程度の作戦も決まった為、サザーランド殿に見送られながら建物を後にします

この敷地を抜けたらいよいよ作戦の開始だと思うと緊張からか少し脈が早まっていくような感じがしました

 

「…ひとまずどこ行く?」

 

「時間的にはまだ授業も始まっていなさそうですし、情報収集も兼ねて色んなお店を回ってみたいですね」

 

まだ時間的には1限すら始まっていない時間です、そのため出来ればどこかお店に入り

もしそのお店にサンダース生がいれば聞き耳を立てて情報を集めたいところです

 

「ユカ姉ェ、敬語出てんぞ」

 

「うっ…わかったよナオシ」

 

しかしつい癖で敬語混じりに話してしまった事で杉野殿から指摘されてしまいます

とりあえず姉弟設定なのでお互いにタメ口と言うことになりましたが、このたった一言喋っただけでも物凄く違和感があります

 

「しっかし、サンダース生の集まってるような店に心当たりでもあんのか?」

 

「それについてはまぁ、ある程度下調べはしてるけど───」

 

と言ってもサンダース生が集まりそうなところと言っても、私にはハンバーガー屋くらいしか思い当たらないんですがね

…なにせ最近ようやく戦車道でお友達ができましたがそれまではボッチだったわけですし、普通の女の子の行く場所なんてわかりませんよ

 

「ハンバーガー屋か…まぁ下手な場所入って外すよりは確実なんじゃね?」

 

「えぇ…いいのそれで、ナオシはなにか思い浮かんだりとか…ほら私こういうの壊滅的だし」

 

ちょっと不安に思いながらもハンバーガー屋を提案してみると思いの外すんなり受け入れられた為にさらに不安がより一層強くなります

思わず他の案はないかと聞いてみますが杉野殿は横に首を振って否定しました

 

「そもそも俺の感性が同い年からして終わってるっての忘れたのか?」

 

「いや…それでも私より友達多そうだし───」

 

「そうでもねぇぞ、ウチ(大洗)じゃユカ姉ェ含めたAチームくらいしか友達いねぇしな」

 

彼女の発言でふと我に帰ると、なるほど確かに学校では同じクラスの西住殿や武部殿、五十鈴殿に冷泉殿と一緒にいるのは見かけますが他の方と一緒なのは見たことないかも知れません

そもそも杉野殿自身1年の頃に全く違うクラスの私の元まで悪名が届くくらい色んな意味で暴れまわってたみたいですし、私も戦車道を始めるまで暴力的で気難しい人だとばかり思っていましたのでそういう影響もあるのかも知れませんが

いやはやしかし人の噂は宛になりませんね

 

「──でもその以前とかは…」

 

「仲間ってのは大前提として、まずどこ行っても先輩後輩・部下上司って感じのが強くてさ

純粋な友達と呼べる友達はほぼ皆無なんだよな」

 

私達やサザーランド殿のような他校生入れても多分両手の指で収まる等と半笑いで言う杉野殿に彼女程の人でも意外と交友自体はそれほど広くは無いのかとビックリしてしまいます

 

「……」

 

「…あまり顔動かしてまで周囲を見るな、サンダースの制服着てるのにキョロキョロと忙しなくしてたら不審に思われるぞ?見るにしても目だけ動かすくらいに留めとけ」

 

そんなこんなで学園近くまで来て、店を探すついでに周囲の物珍しい店へ視線を送っていると隣の杉野殿からありがたい忠告をもらいます

…流石にサンダースへ来たのは初めてでしたのでついテンションが上って恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね

 

「…おいちょっと待てユカ姉ェなにしてる??」

 

「え?いや…何って」

 

徐々に人通りも増え始めて、なんとなく居心地が悪くて限界まで道端に寄りながら歩きますがどうやらこれもダメな様子でした

 

「どこの世界に自分の学校でコソコソと端っこ歩く奴がいるよ?

しかもここは陽気な奴の多いサンダースだぞ、やる以上はきちんと成り切れ」

 

「でも…」

 

「大丈夫、胸を張ってアゴを引け───

堂々としてりゃ疑惑の目を向けられたってそうそうバレやしねぇよ」

 

手本のように堂々とした素振りで杉野殿はズンズンと突き進んで行きます…何か随分と手慣れていませんか?

 

「確かに一理あるけど…そんなのどこで覚えたの」

 

「そりゃ食いしん坊な部下達の為に昔はよく銀蝿*2してたからな、忍び込むのは得意中の得意だ」

 

やけに言葉に実感が籠もってるとは思いましたが、うーん…

つまり悪事で培ってきたスキルというわけですね、まぁ彼女の周りに比べればまだまだ軽い方ではありますが正直聞きたくなかったです

 

 

 

 

「…こりゃスゲェな、五十鈴が喜びそうなサイズ感だ」

 

適当に学園近くのハンバーガー屋に入って、適当に注文して店内の席へ座る私達の前にはアメリカナイズされた巨大なハンバーガーが鎮座していました

これには流石の杉野殿も苦笑いです、何と言っても彼女の顔よりも大きいですからねこのハンバーガー

 

「…濃いなぁこれ」

 

いただきますとお互いに手を合わせて最初の一口に齧りつき、そう呟いた杉野殿は「いやまぁ美味いけどさ」と続けながらもその顔は盛大に引きつっていました

…確かに一般的なチェーン店のものに比べると濃いめですがそれほどでしょうか、私は結構美味しく感じますけど…

 

『でさ〜』『あはは…ッ』

 

それにしてももうそろそろ1限の始まる時間ですが店内ではいまだゆったりと寛いでるサンダース生がちらほら見受けられます

選択科目の種類によっては集合時間まで休憩時間扱いだったりするんでしょうか?

 

「…」

 

目の前の杉野殿もおそらくは周囲に聞き耳を立てながらハンバーガーを小さな口で少しずつ齧っていたものの、半分を超えた辺りでテーブルに置きました…よく見ると厳しい顔をして口は一文字に結んでいます

 

「どうしたの?」

 

「…今動物性の油に苦しめられてるから話しかけないでくれ、返事するのもツラい」

 

ちょっと心配になり聞いてみると苦しそうな声色でそんな返答が返ってきます、杉野殿結構胃が弱いんですかね…

昨日甘いのも好きだけど得意じゃないと言ってましたし

 

『そう言えば、うちの一軍一回戦どこと当たるんだっけ〜?』『さぁ?大洗とかいう無名校だったと思うけど〜』

 

しかし近くのテーブルからそんな声が聞こえた瞬間、杉野殿は苦しそうだった顔から一転真剣な表情で一瞬声のした方向のテーブル席へ視線を送ってから聞き耳を立て始めました

…相変わらず変わり身が早いと言いますか、まぁこういった時でも当初の目的が最優先で動ける彼女は心強い存在でもあります

 

『今日大会に向けたブリーフィングやるんでしょ?』『10時半からって言ってたっけ隊長』

 

なるほど10時半から…あと1時間は無いくらいの時間ですね

そしたら戦車倉庫の見学もしたいですし、少し早めに出ますか…

 

「…戦車道チームの事で他にも見ておきたい所があるから、少し早いけどこれ食べたら行ってくるね」

 

「…おう、予定が済むか想定外の事が起こったら俺のケータイにメールなり電話なりしてくれ───

すぐに駆けつけられる場所には居とくから」

 

彼女に一言断ってからハンバーガーを食べ勧め、元々そこまで残っていなかったのもあってか数分もせずに食べ終わって席を立ちます

さぁ…いったいどんな車輌に会えるのか、今から大変楽しみです!

 

 

 

 

 

 

 

秋山もいなくなり一人ぼっちになってしまった俺は、いまだに目の前でそびえ立つ巨大なハンバーガーとの格闘を繰り広げていた

 

(…やっぱりこう言うのって美味く感じるの最初の2〜3口までだよな)

 

時間経過と共に徐々に混雑を始めた店内に思わず慌ててさっさと食い切った方が良いかとも思うが、そんなことをした日にはおそらく安田さんリバースをすることになってしまう為

常識的に考えてそんなことをしてしまうくらいならゆっくりとでもちゃんと完食したほうが良いだろう、何食いきれない量では無い筈だ…時間さえかければ───

 

(つくづくサンダースだけは入らなくて正解だった…)

 

元々こっちの方で活動してた俺は本来高校受験はどこでも良かった…まぁタンカスロン現役の頃は卒業したら陸自行ける日帝学園狙ってたけど

それが色んな事で立ちいかなくなって戦車道全てから手を引いていたときに地元から一番近く戦車道の無い学園艦のある学校という事で白羽の矢が立ったのが大洗だっただけであり───

多分行こうと思えば大体の所は行ける自信があった…まぁ戦車道あるとこは行かなかったとは思うからその点で言えばそもそもスタートラインに立つ気がなかったとも言えるが

学力自信ネキな為サンダースも入学することは出来ただろう、しかしここまで食の好みが合わないのではきっと1年目にして発狂していたに違いない

──こういうのは本当にたまに食うから良いのだ

 

「Hey、相席良いかな?混雑しててどこの席も空いてなくてね…」

 

「ドーゾ…」

 

そんなくだらない事を考えながらハンバーガーを齧っているとふとどこからともなく話しかけられ、特に不意打ちで警戒心の抜けていた俺は反射的にそう言って一瞬で固まった

というのもその言葉の主がどこかで聞いたことのある声をしていたからだ

 

(──は!?嘘だろ!なんでコイツと相席するハメになってんだよ!!?)

 

視線を前の席へ移して思わず心の中で盛大にツッコミをいれる、そこにいたのは俺が大村にいた頃に九州地区1…いやもしかしたら西日本1かもしれないと言われていたサンダース大付属のスナイパー

…ナオミが目の前でハンバーガーを食ってたからだ

おい何で中ボスとエンカウントしてんだ俺ぇえええ!!

 

 

*1
※艦これ電ちゃんやかぐや様みたいな正式名称のないあの結び方、リボンは無しの紐だけ

*2
食料庫等に食べ物を盗みに入る事を指す隠語、語源は食料に集る種類のハエから来てる




おまけ

サンダース潜入時の直緒(AI生成だから足の向きがおかしいのは堪忍して…)


【挿絵表示】



秋山殿は二眼のカメラとか持ってるとかが実はすごい似合うと思う、多分持ってるんじゃないかなって思って持ってる設定で書きました

多分当時の空気感で写真を撮りたいとか言ってカラーフィルムじゃなくて白黒フィルムしか使わないタイプですよあの子

サザーランドに関しては多分過去編やるときに出てくると思いますわ
纏めるの本当に苦手なんでいつになるかわかりませんが
最初の頃はねある程度原作なぞれば話し作れて良かったってか多少は楽やったんすけど
この辺からは徐々にオリジナル度が高くなってくるわけでしょう
日常パートの描写私苦手でしょう、纏まらないでしょうって話なのです
ま、何とか頑張って…ひとまずTV版完走しないことには話も広げられないですから
頑張りまーす

はい、話を変えまして皆さん
私は承認欲求モンスターなので1日に何度も小説情報欄を覗く癖があるんですがやっぱりいつだって評価やらお気に入り登録が増えたの見るとテンション上がりますね
活力になりますのでお気に入り登録、感想、評価是非ともよろしくお願いします

いつも通り誤字脱字多いとは思いますが、発見次第直して行こうと思います
…一応ね?ちゃんと毎回何度も見返してるんすけど投稿してもしばらく気づかなかったところとか結構あるんですよね、多分自分の中でこういう風に文章作ったって記憶してるせいで勝手に補正が入っちゃうんだと思いますけど

以上です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。