ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜 作:ReA-che 名義
サンダース潜入編、実は当初の予定では1話を予定してたのですが書いてれば文章量増えるし中途半端の文字数じゃ投稿できないしで結構途中から難産でした
あと今まで会話の
今俺の目の前ではサンダース付属が誇るスナイパー砲手のナオミがハンバーガーを食ってる…
いったい何故こんな事になった?気不味いなんてものじゃないんだが…とりあえずあんま見続け怪しまれてもしょうがないし視線は切っとこうか
(今日の俺は変装もしてるからバレることはねぇだろうけど…)
俺がまだ剣部隊の
幸いにも彼女は元々一軍だった為に親善試合や応援で呼ばれた際に戦った程度でタンカスロンまで出向くことは無かったが、彼女がもしこちら側に来ていたとしたらそれで負けると言うことは無くても更に被害が大きくなっていたであろうことは想像に難くない
それほどに厄介な相手である、まぁ最も厄介だと感じた相手はまた別だし確かそいつは当時二軍の子だったから今回の試合で出てくるかわからんがな
(…とりあえずボロが出ない内に店から出るか)
彼女と戦ったのも実に2年は前の話し、それにそもそも一軍とはそこまで何度も戦っていたわけでも無い
とは言え身バレしない筈と高を括ることも出来ないのが事実だ、何と言っても戦車道で強いやつというのは往々にして勘が鋭い
根拠もなしに楽観視していれば思わぬところで痛い目を見ることになる
ここはさっさと残りのハンバーガーを平らげて退店するのが吉だろう
「…そう言えばあんた、見ない顔ね?観光客ってわけじゃ無さそうだけど」
「あー…───」
ほらやっぱりこうなった〜
余裕ぶっこいてハンバーガー食ってる暇なかったな、さっさとトンズラしときゃ良かった…
まぁ、今更遅いけどォ───
「まぁ──こっち通ってる姉に久々会いに───」
「へぇ…?それはおかしいな、昨日までの寄港してる間ならわかるけど…もう出港してるのに留まってるなんてね」
うーん…どんどん視線が鋭くなっていくのを感じるぞぉ
まぁ確かにサンダースの学園艦に在住じゃないって口ぶりのやつがド平日の朝っぱらから姉に会いに来たって時点で怪しいわな
「不登校なんだよ、言わせんな恥ずかしい…
何で高々姉に会いに来たくらいでここまで言われなきゃならんわけェ…?」
「…そうか、それはすまない」
あまりペラだけが回るようでも仕方がないが、かと言ってある程度は口も上手く無ければ人の上に立つことも出来ない
そう言った実体験の元、まぁ自分で言うのもどうかと思うが俺はそこそこ口が回る自信がある…
こういう嘘をつく時は本当の事を交えてやれば堂々と振る舞えるためバレにくくなるのだ、というのも罪悪感やバレるかもと言う不安は声色や一挙手一投足に違和感を与えてしまうからな
俺に姉がいること自体は本当のことだし
「それじゃ、もう良いかな?」
「あぁ…悪かったね、変な絡み方しちゃって」
ひとまず一難は去ったようで懐疑の視線も無くなり内心でホッと一息つく、恥も承知で不登校だと嘘をついた
きっと今は余計な詮索も出来ず気不味い心境だろう
少し申し訳無さそうに誤ってくるが視線を下に落としてそれっぽい態度だけ示しておく
(…やっぱ濃いわぁ)
再度食いかけのハンバーガーを手に取ってちまちまと齧りつくがやはりあくどい、一般的なチェーン店くらいのサイズならそれでも最後まで美味しく行けるのだろうがサンダースなだけありアメリカンサイズ
さっさと頬張って終わりにしたくても俺の小さい口では少しずつしか減っていかない、もう既に和食が恋しい…
「…苦手なのか?」
「あ?…あー、思ってたよりデカくて持て余してるんだよ」
余程顔に出ていたのか先程までのこちらを疑り深く見ていた視線もなりを潜めてこちらを少しばかり心配そうに見つめる彼女にそう言って数度頬張ってから再びハンバーガーを机に置く
あと2、3口と言ったところだろうか、ようやくゴールも見えてきたがちょっとだけ休憩
「内地のとはだいぶ違うからな───ここが特別ってわけでもないんだろ?」
「あぁ、うちの学園艦じゃ一般的なサイズだな」
休憩がてら呟くようにそう言って目の前の彼女から返ってきた言葉に内心で辟易とさせられる
あるかどうかわからんがこれから先もしもサンダースでハンバーガーを頼む場合はそれなりの覚悟を決めてからでしか注文できそうにない
(さて、そろそろ行くか…問題はどこで時間を潰すかだが)
テーブルの上に置いた残りも少なくなったハンバーガーをもう一度手に持って無理くり口の中へ詰め込みながら、パッと見でわかる部外者な格好の為に潜入までは出来ないのでどう時間を使うべきかで頭を悩ませていた
(ま、それも含めて少しばかり観光でもしてみるか)
思い立って席を立つ、しかしもしものことがあることを考えるとあまり学園の敷地から離れることも出来ないためどの辺りまでで留めるかも考えものだ
本来であればその辺もケータイを使って少しばかり調べてから店を出たかったが目の前の彼女の存在を考えると気不味いなんてものでは無いので即刻退散させてもらうこととした
◆
「あっ…スゥー────」
店を出て少し裏道に入り、マナーモードにしていたケータイを開いてモードを解除すると途端に夥しい数の通知が届く
しまった…すっかり忘れていたがここに来る際誰にも話していなかった為に電話もメールも鬼のように入っている、完璧にやらかした
内訳として西住と武部が99件+、五十鈴と冷泉からは2件ずつ入っていた…あと愛里寿からメールが一件来ていたがこっちは完全プライベートなものなので後で時間作って返信すれば良いはずだ
「…授業は始まってるだろうしな」
現在は10時を少し過ぎた頃、本来であれば2時限目の始まっている時間だ…こんな時間に電話をかけ直すのは論外である
…ひとまず西住か武部のどっちかにメールでも打っておけばなんとかなるだろう
と…その前に一つやることがあった
「…繋がっかねぇ」
電話帳を検索してか行から「角谷」の名前を探してコールボタンを押す、生徒会長で更に3年と言うこともあり生徒会の引き継ぎやまとめの方が重要視されていた筈なのでもしかしたら繋がるかもと思ったのだが数度のコールの内にガチャという音と共に回線の繋がった音がした
『───もしもし?』
「おう、忙しそうなとこ悪いな…杉野だけど」
『…こんな時間にどうしたの、杉野ちゃん達2年は授業の時間でしょ?』
「あ〜…実は今秋山と一緒にサンダースに乗り込んでてな」
『…ごめん、ちょっとよく聞き取れなかったかも』
ごもっともなご指摘に実はなと一つ前置きをしてから俺は続けると、一瞬の間とともにもう一度言ってくれるかなと電話越しでさえも表情が引きつったことのわかる声色で聞き返された
「だから、俺と秋山で今サンダースの学園艦にいんの」
「なんで??」
あ、多分今宇宙猫みたいな顔してるな
どことなく心此処にあらずな声色だから何となく分かる
「昨日お前が散々西住にプレッシャー与えてくれたろ?
端で見てた秋山が気にしてコンビニの定期船に忍び込もうとしてたからそれを止めたんだよ」
『…それについてはごめん、あと秋山ちゃんを止めてくれてありがとう』
「んで、まぁ法令に触れない伝と方法があったから俺が秋山を連れてサンダースまで来てるってわけ」
『うん、だからなんで??』
流石に定期船に忍び込むという犯罪一歩手前というか、片足を突っ込んだ行為を止めた判断は正しかったようだ
しかし続けて別の方法でサンダースまで来たことを伝えると途端に話がまた戻ってしまう
「西住がサンダースの編成を知りたがってて、それを叶えたい秋山の意見には正直同意だったからな
向こうの手の内が分かるなら幾分やりようもある、スパイ行為が認められてるのも知ってるだろ??」
『それはそうだけどさぁ』
まさか昨日の今日でこんなアクションを起こすとは思わなかったと角谷も苦笑いだ
まぁなんだかんだ忙しくて事後報告にはなってしまったが結果的にチームの為になることで怒るに怒れないのが本音なのだろう
『まぁサンダースにいる理由はわかったけど、一体何の用事で掛けてきたの?
杉野ちゃんだったら用が無ければ私なんかに掛けないでしょ?』
「まぁ…それについては俺も秋山も学校側に連絡寄越さないで無断欠席だから、一応伝えとこうと思って」
連絡無しなら教員の方々に無駄な心配をかけっぱなしになるかも知れないため、角谷の方からそれとなく伝えといてほしいと言ってから
もう一つの電話を掛けた理由について話す
「俺に関してはとやかくいうつもりはないから良いんだけど、一応はチームの為に動いてるわけだから
秋山の無断欠席だけは取り消せたりしないかな?」
『うーん…』
戦車道を選択する際の特典に遅刻の見逃しとかが含まれていたため、生徒会の権限からしてもそこまでは難しいものでも無いだろうとは思ったのだが
意外にも電話の向こうの彼女は唸るようにして難色を示した、というのも…
『事前に連絡くれてたら良かったんだけど、事後だとね…』
「そこをなんとか出来ないか?秋山の分だけで良いんだ
あそこまで真面目で仲間思いのアイツがこんな事で割を食うなんてそんなバカな話もねぇだろ?」
『まぁ…』
ぶっちゃけ俺なんかだと1年の時の悪さや普段の授業に対する姿勢などを加味して1日程度無断欠席したところで内申に響かないだろう
だが秋山はまた別だ、普段の彼女の様子を見ていれば自分とは違い真面目な生徒であろうことは想像に固くない
そういう生徒にとって例え少しであっても内申に響くというのは痛手の筈である
「事後報告はこれっきりにするから、秋山だけでも何とかしてくれないか?」
「…断りたいところだけど、ちゃんとチームの利益になることだもんねー…
───わかった、なんとかしてみるよ」
なんとか最終的には頷いてくれたためこれでよしとしよう
まぁ念を押すように事後報告はこれっきりにしてほしいとも言われてしまったが誤差の範囲で次から気をつければいいだけだ
『──それと、帰ってきたら生徒会に申請しなよ?交通費くらいは出してあげるからさ』
「お、マジ?太っ腹だね」
なんと申請さえすれば生徒会公認になるため交通費も出るとのことだ、まぁ航空機の中では燃費の良い方の紫電改といえど翼内タンクの容量は約700Lあるので毎回スパイ活動するなら学園艦〜学園艦とはいえかなりの距離になる
そうするとガソリン代も馬鹿にならない、幸いにも戦時下と違い高オクタンのガソリンがガソスタで手に入り簡単にカタログ通りのスペックが出せるが
それでも巡航で頑張っても1Lにつき2.5km飛べるとかそんな世界の話で金食い虫なのでありがたい話しにはかわりない
『それじゃ、捕まらないようにと
くれぐれも事故とかには気を付けて帰ってきてね』
「おう」
通話を切って一息つく、一番重要な連絡はこれで終わり
そして再度ケータイの画面を開いてメールフォルダへ、受信ボックスを開くとその余りの量に思わず尻込みさせられる
何と言っても合わせて200件を超える未読メールのその殆どが西住と武部からだった為だ、いや怖ぇよ普通に
とりあえず下から順番にメールを開けてみることにする
(うわっ…)
二人共最初のうちは、何で電話が繋がらないのとか事故にあったりしていないかとかこちらを心配するような内容だったのが徐々にどうして返信がないのかに変わり
後半は30秒おきぐらいに「なんで」とだけ書かれたメールがズラリと並んでいた
…ちょっとこれは流石にからかいようも無しに怖すぎる
(ありゃりゃ…しかもこれ休み時間も始まりから終わりまで目一杯使って打ってきてやがる)
後半約50件にも及ぶ二人からのメールは時間的に10分程度の休み時間で一人頭20数件打ち込んでる計算になる
ここまで来ると二人の執念深さというか心の闇のようなものを感じるし、下手なホラー映画も裸足で逃げ足すような演出である
まさかとは思うがこの二人は将来的に一緒になる人相手でも同じようなことするんじゃないかというような一種の確信めいたものがあってお姉さんは大変心配だ
「…ひとまず西住にでも返信しとけば武部にも伝わるかな」
今が休み時間の時間帯でなくて良かった、止まない通知と格闘しながら返信を打つのも
打った端から返信が来るという状況も避けられそうなのでそれはそれで一安心
(とりあえずは電波状況の悪い所にいるから以降の返信は出来ないことも付け加えて───)
端末を操作して三行程度の短い文章を打ち込みながらその中で簡潔に伝わりやすく纏めるように務めて思考を巡らせる
(えぇっと、忠犬ユカ公は保護した…夕方には帰りますっと)
打ちながら流石におふざけが過ぎるかな?とも思ったがこの空気はおふざけで誤魔化すしかない
まともにやってたらこんな恐怖でしかない空気は耐えられねぇもん
(よし、ひとまず返信もしたし…どこかで時間潰すべ)
メールを送信した俺は即座にマナーモード(バイブ機能はON)に切り替えてケータイをポケットへしまう
ひとまず大洗の学園艦に戻るまでは秋山からの連絡以外一切ケータイを開かないことに決めた、なんて返信が来るか怖いし
そんなこんなで気持ちを切り替えようと学園の敷地にほど近い店舗を観光がてら見て回るために歩き出したのだった
しかしいざ観光をしようと歩みを進め僅かに数分、意気揚々とした足取りはすぐに躓く事となった
「あ
「あっ、ご、ごめんなさい!」
というのも後ろから不意打ちの衝撃を受けてその場に手をついて転んでしまい気分が一気に最悪なモノとなってしまったからだった
「本当にごめんなさい、前をよく見てなくて…」
「……」
思わず衝動的に怒りが湧いて出てくるものの、すぐに他校で問題を起こすわけにもいかないと考えを改め
一度小さく深呼吸をしてから立ち上がり、今しがた体当たりをしてくれた不届き者の顔を拝もうと振り返るとそこにいたのは一人の男子生徒
所謂これと言った特徴のないしょうゆ顔の少年がいた、背丈はもちろん俺よりはあるが多分平均以下だしおどおどしたような喋り方はどことなく気弱な印象を感じる
…まぁ、こんな子に怒ったところでしょうがねぇやな反省してるみたいだし
「あー…良い、特に怪我はねぇから気にすんな
まぁちゃんと前見て歩けよ?」
「は、はい…本当にすいませんでしたッ」
見た目のせいか青くなった顔でひたすら平謝りを繰り返す相手にさっさと行けと言わんばかりに手で追い払う動作をすると頭を下げながらも駆け足で離れていった
なんか今日は色んな意味で疲れる日だな…
出鼻を挫かれて一気に観光するモチベーションも無くなったがまぁ時間は多少余ってるわけだし無理にでも再開しようかと歩き出したところで───
「Hey、Stop…止まりなさい
────止まれッ」
何やら大変賑やかで物凄く聞き覚えのある声が背後から突き刺さった、その声を聞いた瞬間に背筋の毛穴から冷や汗が一気に流れていくのを感じる
もうこれ以上の面倒事は勘弁だし何より少ないとはいえ俺以外の通行人もいるため俺ではないだろうと無視を決め込んでそのまま歩き続けようとするもののいきなり肩を思いっきり掴まれて強制的に止められた
「止まれッて言ってんでしょう!?」
ゆっくりと振り返り肩を掴んだ相手を確認して、やっぱり今日はツイて無いなと内心で深々と溜息を吐く
そこにいたのは、俺の中でのサンダース大付属戦車道チームで最も厄介な相手───アリサがそこにいたからだった
◆
「──で?あんたあの子と何話してたわけ?」
「あの子?」
「とぼけないで!タカシのことよ!」
「タカシ??」
場所を先程のところからほど近いカフェへ移して、今現在俺はサンダースで個人的には最も会いたくない相手第一位のアリサとテーブルを挟んで対峙していた
一瞬身バレでもしたかと思ったがよくわからないことで先程から詰め寄られているので大変迷惑な話である
「あんたがさっき話してた男よッ!あんなに怯えてあんた何かしたんじゃない!?」
「あー───」
続くアリサの一言で完全に理解した、いや何かしたもなにもされた方なんだけどな俺…
まぁでもそのことなら俺何も悪くないし早とちりしてるだけならまだいいか
「いや、歩ってる時に後ろからぶつかられたから俺が被害者なんだけど?
まぁすぐ謝ったからそのまま帰したし、彼初っ端からあんな感じだったけどな」
「嘘言わないでッいくらタカシでも何も無くてあんなに怯えるわけないわ!それにあんたその目付きの悪さで何もしてないわけないじゃないッ」
「は?」
…は?
──ヤベぇ、耐えなきゃいけないのはわかってるけどそれは抜きにしても暴れてぇ…
そもそもなんで確認も取らないで決めつけてくるんだコイツは
「…さっきのアレがオメェのなんだか知らねぇけどよ
そんな気になるんだったら本人に直接裏取れば良いだろーが、連絡先くらい持ってんだろ?」
務めて冷静に振る舞っているつもりではあるが頬がヒクヒクと震えている感覚があり、やっぱり内心で結構イラついてるからか思わず語気が強まった事を自覚する
…いかんいかん、一旦落ち着こう
(にしても本当、面倒なやつに捕まったな…)
懐疑の目を向けながら言われたとおりにケータイを操作して、先程の男子生徒に電話しているアリサに内心で何度目かわからなくなった溜息を吐く
当時二軍だった彼女とは割と当たることが多かったと言うのと、…まぁかなり感情的な所が目立つためによく覚えている
優秀な子ではあるんだけどな、それこそまともにやるならサンダース1厄介だと思うくらいに
なにせ勝ちに拘る余り手段を選ばないきらいがあるからな
悪く言えばずる賢いとか悪知恵が働くと言えるが───
言い換えればどこまでも勝負事に真摯であると言えるし、サンダースの装備と物量でも驕らない姿勢は物凄くやりづらい相手なのだ
「あぁ──そう、うん…わかった」
そんなこんなで色々と考え事をしてる内にもう通話も終わるのか目の前の彼女は徐々に縮こまるように口調も弱々しくなっていった
「───で?なんだって??」
「す、すいませんでしたぁあ!」
もう優劣は決まったなと確信しながらも目の前の彼女に聞いてみれば真っ青になった顔で机に頭を叩きつけそうな勢いで謝られた
まぁ誤解が解けたなら良いけど、そのまま許すのもちょっとな
「んじゃ、そういうわけならここはお前の奢りってことで…」
「えぇ…こ、今月お金ないんだけど」
「あ?なんか言った??」
「い、いえ…」
何やら金欠だのナメたことを口にしやがるが逆にあそこまで散々高圧的な態度とってその結果の勘違いなのだからカフェ代で済ませた俺に感謝してほしいくらいである
「おまたせしました〜」
そうこうしている内に注文した物を持って店員が現れて俺の前にコーヒーとクッキー、そしてアリサの前にはコーヒーのみが置かれた
「うーん…美味いッ
タダだと思うとより最高な味わいだな!」
「あんたもっと言い方考えなさいよ!?……はぁっ」
コーヒーを一口含んで思わず頬が綻んだのを自覚する、普段はあまり飲まないが別に嫌いなわけではない為口をついて出た言葉に呆れた表情でツッコミを入れながらアリサは深々と溜息を吐いた
「タダで飲み食い出来るものより美味いものなんてねぇだろ」
「いい性格してるわねぇあんた…」
いつの時代も人の金で飲み食い出来るというのは大変魅力的な話しだ、引きつった表情で苦笑いするアリサを尻目にクッキーに手を伸ばして一つ口元に放り込む
(お──んめぇなコレ───)
濃いめ味付けに定評のあるサンダースな為にあまり期待はしていなかったもののこれは良い意味で裏切られた、甘さはしっかりあるが海外のお菓子とかでよくあるひたすらな甘さじゃ無くすぐに後味も引いて思っていた以上にあっさりとしたものだ
これは結構好きな味、このクッキーが店の自家製だったらレシピを作った人とは仲良くできそうだ
「…あんた笑うと結構雰囲気変わるのね」
「ええ?」
アリサに言われて、今度は自覚が無しにクッキーで笑顔になっていた事に気づく
まぁ見た目こんなのでも中身はJKだからね、甘いもの自体は好きだからね仕方ないね
「…まって、そう言えばさっきは疑問に思わなかったけど──あんた男?女?」
「…見りゃ分かんだろ?他に何があんだ??」
雲行きが怪しくなって再び懐疑の目を向けられるがはぐらかしながら答えていく、どっちの性別かはあえて言わないそこまで深く聞かれてないし
まぁ聞かれても逆で答えるけどなもちろん、けどこれではぐらかせるなら無理に言う必要もない
言葉数が多ければボロが出る可能性も高くなる
「男にしては、華奢だし骨格が丸い気がするのよね…あんた名前は?」
「ナオシ」
「そこはフルネームで言いなさいよ」
思わず少しテーブルに乗り出すようにしながら少しだけ苛立つようにアリサに言われた、途端に俺の頭の中の宇津木が「おこなんですかぁ〜?」と煽り立てて来るがここでそんなことを言った日には第2ラウンドのゴングが鳴り響くことになるだろう
なるべくならそれは避けたい、が…名字までは考えていなかったな
一応秋山の弟という設定なのだからここでは秋山姓を名乗るべきなのだろうが…なんか今ひとつピンとこない
というわけでぶっつけ本番で適当に考えた名字を付け加える事とした
「
「ふーん…菅野ね」
俺の名字をもじってるので全く違和感が無く発音できる…
流石にコレならばバレまい
「ん〜…でもあんた、よく見るとどっかで見たことある顔してんのよね」
「へ、へぇ?俺は会った覚えないけどな」
何か考え込むようにこちらをジーッと覗き込んでくるアリサにそう返すので精一杯だった
しかし意地でも視線だけは逸らさない、こういうときに視線を逸らせばそれだけで余計に怪しまれるものだから
「うん、でもまぁ人違いか…流石のあの子もあんたほど柄悪く無かったと思うし──何よりここまで目付き悪くなかったしね」
「そ、そうか…ちなみにそいつはなんて奴だったんだ?」
聞くのは藪蛇になりそうだと本能で感じてはいたものの、どうにも好奇心が勝ってよせばいいのに聞いてしまった
「杉野直緒って子…まぁ女の子なんだけど、私戦車道やってて数年前まではその子とよく戦ってたのよ
───もう引退しちゃった子なんだけどね」
まぁだからこそこんな所にいるわけがないか、と呟く彼女はどことなく寂しげに遠い目をして語る───
いや、いますよ!?結構近くにパチモンとして!!
「す、杉野かぁ…親戚にもそんな名前のやついないなー…」
「そう…」
裏返りそうになる声を必死に堪えてとぼけるようにそう言うと残念そうな表情でアリサはコーヒーカップを手に取り一口含むように飲み込む
その瞬間、何処からともなくケータイの着信が鳴り響いた
「───ん?マムから?」
マナーモードにしていた俺ではないのは確定的に明らかだった為に特に慌てずコーヒーとクッキーを摘んでいるとアリサがポケットからケータイを取り出して固まった
「はい?もしもし…」
『──ねぇアリサ、もうとっくにブリーフィング始まってる時間なんだけど何かあった?寝坊?』
「は?…えっ!?」
微かに聞こえてくる会話相手の言葉にアリサは素っ頓狂な声を上げてから一気に青ざめていった
もう一つクッキーを口に放り込みがてら店内の時計に目をやれば時刻は11時きっかりになっている、そう言えばハンバーガー屋で聞き耳立ててた時はブリーフィングの時間は10時半って言ってたな
「す、すいませぇん…ついうっかり話し込んじゃってましたぁ〜…」
『バッカモーン!さっさと準備して来なさいッ…て、言いたいところだけど───
どっちみち今来たところで午前中じゃ終わらないでしょうし、ブリーフィング自体午後一にずらしたから慌てずにゆっくり来なさい』
「は、はい…」
先程のようにどんどん縮こまりながら電話を切った彼女は青い顔のまま急いで残りのコーヒーを飲み干して伝票を抜き取る
「急用を思い出したから私もうこれで行くわ!さっきは本当に悪かったわね!!」
「お〜…まぁ声色的にそんなに怒ってそうじゃなかったけど気ぃつけてな〜」
言うが早いかレジまで駆け足で向かっていく彼女の背に向かってそう言いながらこちらも残りのコーヒーを飲み干してからまたクッキーに手を伸ばす
嵐がさってこれで一息、ようやく落ち着いて過ごせそうだ
時刻は変わり13時半頃、一回も通知が来ていないっぽいので意外にもあれから西住達からの電話やメールはここに至るまで無し
現在は学園の敷地にほど近い本屋で暇を潰していた
(い行…い行…)
ちなみにコーヒーとクッキーで中和したとはいえ未だに胃袋の中でハンバーガーが存在感をやたらと放っておりどうにも昼ご飯を口にする気にならなかったので昼食抜きだ
(お、あったあった)
本屋の小説コーナー、そこでお目当てのものを作者の頭文字から探していき
一冊、石川啄木の詩集を抜き取ってペラペラとページを捲っていく
啄木は俺の一番好きな作家、元々文学志望だったのは彼の影響を受けてだった
(やはり良い、と言うより感性や考え方がどことなく似てるというか…強い共感があるんだよな)
それこそ性別こそ違えど、啄木とは自分のような人間では無いのだろうか───そう思っては少しばかり気恥ずかしくなって読みかけのページに思考を集中させる
さてそんなこんなで元々そんなに厚みのない本を半分ほど読んだ頃だろうか、1通の通知──恐らくメールが入ってケータイを取り出す
「…?秋山?」
ケータイを開き、そこに表示された送り人の名前を見て少しだけ嫌な予感を感じて受信ボックスからメールを開く
そこに書かれていたのは───
────────
送信者:秋山
件名:(無題)
本文:ばれました、たすけてください
────────
…やはりそうなるか、と思わず俺は天を見上げる
いや、彼女と分かれた時間を考えると4時間強バレなかっただけよくやったほうか
(今どこにいる?いまから向かう…っと)
本を棚に戻してから返信を打って店を後にする
さぁ何とか秋山を引き上げて無事に大洗へ帰らねば、こりゃ大仕事だな…
◆
「いや〜…流石に疲れたなぁ」
「…それで済んじゃう杉野殿ってやっぱりおかしいですって」
現在俺達二人は合流した後に戦車倉庫からM4シャーマンを1輌ガメて上空警備隊の敷地まで逃げてきた
道中それに気付いたサンダース戦車道チームにめちゃめちゃ追いかけ回されたりしたが大立ち回りを決めて何とかなったのだった
ちなみにもうバレてしまったのでお互い呼び名や喋り方は元に戻してある
「まぁやっぱり経験よなそこは」
「私と杉野殿二人しかいないのに数十輌から逃げ延びたあげくついでに1輌撃破してしまったんですが?絶対おかしいですって」
そうそう、あれは本当に冷や汗掻いたな
動かせる戦車は片っ端から引っ張り出したんじゃねぇのかってレベルの台数で追いかけ回されるのは久々に肝が冷えた
台数が多すぎて巻き上げた土煙で後ろが全く見えないとか久しぶりに見たわあんな状況
「逆だ逆、一斉に向かってきてくれたからやりようがあったんだよ」
「えぇ?」
囲まれた際、無理に距離をおいていたら逃げ切れないと感じていた俺はあえて追ってくる集団に向かって飛び込んでいった
理由は簡単───コチラはたったの1輌なのに対して向こうは何十輌と台数が多いからだ
確かに普通に見れば圧倒的に不利な状況だが、別に全車撃破して逃げろってわけでもないのならばやりようはある
というのも、距離を縮めて乱戦に持ち込めばコチラは単騎だから照準合わせにそこまで気を使わなくていいが向こうは周りほぼ全周囲が味方だ
つまり向こうがコチラを攻撃する際は常に同士討ちする危険性を考慮しなければならない
あとは周りを囲む敵戦車の照準範囲を頭の中で計算して、その照準に自分と別の味方車輌が映り込むように逃げ回るだけ
そうすれば向こうは多すぎる味方が足を引っ張って下手に撃つことが出来なくなるというわけだ
「──種を明かせば簡単だろ?」
「いや普通の人はそんなことできませんって…」
ちなみに突破口を作るという名目もあったが対応出来ずしどろもどろになってる車輌に向けて、喝を入れる為に秋山に装填させて撃たせた
そしたらなんと1輌撃破出来てしまっただけである
「っと、ついたな」
「…でもまぁ、とても充実した時間が過ごせました!」
なんだかんだ大立ち回りを敢行してる時に一番テンションが上がっていたのは秋山で、車内に取り付けられる固定カメラを持ってくれば良かったとずっと嘆いていた
とまぁ話もここまでにして、着替えのある警備隊の建物の前につくと俺と秋山の二人はM4から降りて中へ入るとそろそろ来る頃と踏んでいたのかサザーランドが待ち構えていた
「ずいぶん学園の方が騒がしくなってるみたいだけど…」
「結局バレちまってな、M4を1輌パクって逃げてきたから
後でそれとなく戻しといてくれねぇか?」
「あっはは!相変わらず無茶やってるわね
OK、わかったわ私が責任持って返しとくから」
さてそんなこんなで控室で着替えも済ませて、俺達三人は建物から滑走路を歩いて整備された機体の収容されている巨大な倉庫まで来ていた
「それにしても聞いたわよ?クラーク隊の2機に囲まれて勝ったって」
「コルセアのことか?まぁ勝負した気はないから勝ったとは思ってねえよ
負けたとも思ってねぇけどな」
軽い会話を挟みながら、建物の出入口が見えてくると
そこには見慣れたシルエットの飛行機───
俺の愛機紫電改が暖気運転でプロペラをゆっくり回しながら佇んでいた
「動く
「俺の以外多分どこ探してもないと思うぞ」
話しながらもどんどんと機体に近づいていき、右主翼側の胴体からステップを引き出して主翼によじ登ると朝被弾した箇所はペイントがきれいに落とされて恐らく頑張って調色したのか該当範囲は塗り直されている
ムラもなく中々しっかり修繕してあるとは思う
「──一応、私が見張っていたからそこまでひどい仕上がりにはなっていないとは思うが…」
「いや、充分だ」
声の方向へ目を向けるとそこにいたのは今朝話したコルセア隊の隊長、サザーランド曰くクラークという長身の女性がいたため
仕上がりは合格とだけ伝えておく
「ま、修繕を謝罪として受け取るって言っちまったからな
俺はもう何も言わん、…だからあんまり彼女たちを怒りすぎるなよ?」
「…君がそう言うなら」
さて、この話しはもう終わりである
俺は秋山に声をかけて後ろの席に乗り込むように指示を出す
「───直緒ッ」
秋山が後ろの席に乗り込み、俺も操縦席へ乗り込もうとしたところでサザーランドから声が掛かった
「…たまには顔だしに来なさいよ、待ってるから!」
「──あぁ、またな」
「ええ、Goodbyeッ」
彼女と別れの挨拶を済ませて操縦席に乗り込むと、律儀に輪止めを外してから離れていく後ろ姿が見えた
…まぁサザーランドとの約束もあるし、時間がある時は来てもいいかもな
「秋山、準備は良いか?」
「はい!バッチリですッ」
落下傘のハーネスの取り付けとシートベルトの有無を確認すると一応口頭で大丈夫と返ってくるが念の為振り返って確認する
彼女の言う通り大丈夫そうなことを確認してから、少しだけスロットルを開けて倉庫前から機体を滑走路まで移動させていく
「朝同様、振動があるから舌とか噛まないようにな?」
「はいッ」
滑走路に出てからスロットルを更に開けて速度を上げ、フラップを展開する
急激に空気抵抗となるものが主翼の下部に発生したからか一気に増えた揚力により機体がいとも簡単にふわりと空中に持ち上がった
(脚を閉まって…フラップは解除───)
ついで左〜右と引込み脚のレバーを引いて降着装置をしまい込んでからフラップを解除しスロットルはほぼ全開まで開ける
高度と速力は更に上がっていく、こういう時は大きい学園艦って急激に高度を上げなくてもいいから幾分気は楽だ
(控室で確認した際の大洗の学園艦の航路は───こっちだな)
風防を閉めてコンパスを片手に記憶している学園艦の位置を照らし合わせ、確認する…この位置に行くには───
高度にして約500m程だろうか、一度右側にエルロンロールで一回転して
背面飛行から水平飛行に戻る直前に斜め左上側へ、更に高度を上げながら旋回していく
さぁ、ひとまず予定が終わったからとは言えまだ気は抜けない
高々30分程度の短いフライトとは言え飛行機の操縦というのは一瞬の気の緩みが即座に命取りとなる
家に無事に帰るまでがスパイ活動、俺は気を引き締めて操縦桿を握り直した
長引いていたサンダース潜入編はこれにて終了
このテンポで今年中にTV版のラストまで持っていけるかなぁって思ってます
それと杉野の元ネタとなってる方々の新しい書籍が届いたので勉強時間を設けるべく次回は更新遅れると思います
まずは小説2冊、ライトノベル以外のちゃんとした小説は中学の朝読以来買ったので8〜9年ぶり位になりますね
語彙力鍛えんとな…
はい、話を変えまして
実は当初目標にUA10000のお気に入り登録100件を掲げてましたが、半分達成しました!
まだ初投稿から2ヶ月くらいなので結構頑張れてるんじゃないかなって思います
やっぱり後書きとかで書いとくと優しい人達がしてくれるものですね、本当にお気に入り登録、感想、評価お待ちしてますので是非ともよろしくお願いします
いつも通り誤字脱字多いとは思いますが発見次第直して行こうと思います
毎回何度も見返してるんすけど投稿するまで気づかなかったものとか、投稿してもしばらく気づかなかったところとか結構あるんですよね
以上です