ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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やっぱり日常パートって難しいっすなぁ
何が遅延原因になるかわからんもんで、前回は10日勉強に費やした後で5日くらいで書けたんですがねぇ…




その後のあれこれ ★ 【挿絵有り】

 

「先に家戻ってても良かったんだぞ?」

 

「いやぁ、私が誘ったんですからそんなことできませんよ」

 

現在俺と秋山の二人は彼女の実家である秋山理髪店へ向けて歩いていた…と、言うのも秋山理髪店には駐車スペースがないから

流石に路駐もどうかと思い、近くのコンビニに車を停めそこから徒歩で向かうことにしたからだった

当初は秋山家の前を通ると言うこともあり先に降りて家に戻るか?と提案したものの言い出しっぺなためコンビニから一人で来させるのは忍びないと秋山に断られてしまった

 

「大洗のは小さいとは言え学園艦は広いからな、結構車ないと不便じゃねぇ?」

 

「まぁ私は小さい頃から学園艦に住んでましたからもう慣れてますが…」

 

学生の内ならまだしも、大人…しかも店を経営しているとなると寄港日の際は色々と入り用な物があるだろう

そういった物を買いに行く時は都心部から離れている大洗の街だと結構大変では無いのだろうか?

え?ネット通販で必要なものは業者が店まで運んでくれる?

…そう……

 

「じゃあ私は上から行きますんで、杉野殿は玄関からどうぞ」

 

「まてまて何してる?」

 

そんなこんなで話をしているうちに目的地である秋山理髪店へと到着し、秋山は店の前の電柱へ飛び移り意気揚々と2階へ向かおうとする

 

「サボった手前気まずいので私は直接部屋へ戻ろうかと」

 

「…色々と突っ込みたいが却下だ、危ないだろ」

 

呆れた言い分の秋山をグイグイと引っ張って無理矢理止めて大人しく正面玄関から入るよう促すと渋々ながら受け入れたようだ

…散々パラ人のこと無茶苦茶だなんだ言う割に結構この子もイかれてる気がするのは俺の気の所為だろうか?

 

「ただいま〜!」

 

「お邪魔します」

 

店内に入ると中には秋山の父と母だと思われる男女がこちらへパッと視線を寄越した

 

「あら、おかえりなさい優花里」「おかえり」

 

秋山に向けて放たれる言葉は同時だった、そして一尺開けてから二人の視線は俺に降り注ぐ

 

「アナタは──優花里のお友達?」

 

「──初めまして、秋山さんのお母さんとお父さん…で宜しいですか?」

 

その視線の最中、優しそうに目尻の下がった女性───恐らくは秋山の母親と思われる人物に言われて、一度頭を下げてからそう聞き返すとニッコリと微笑み返してくれる

 

「俺、クラスも乗ってる戦車も違いますが秋山さんと同じ戦車道履修生で…杉野直緒と言います

何かと迷惑を掛けてしまうことも多いですが、友人として秋山さんにはお世話になってます」

 

「いえいえ、こちらこそ優花里がいつもお世話になってます」

 

軽く自己紹介も交えて挨拶を済ませる…が、一応体裁上は余所行きの口調を踏襲してはいるものの

いささか格好がラフな為にあまり畏まり過ぎても釣り合いが取れないため、目上の人への失礼に当たらない範囲で崩した言い方にさせてもらった

 

「何!?優花里の友達!?」

 

一方でバタバタと慌てた様子の男性──秋山の父親は目の前までやってきて土下座でもしそうな勢いで地に膝をついて、こちらの頭上と秋山の頭上を交互に見てぽかんと口を開けた

 

「あ、あの…本当に優花里の友達…?」

 

「ちょ!?ちょっとお父さんッ!失礼でしょ!!?」

 

言った言葉の意味を感じ取ったからかあわあわと秋山が吠えるがまあまあと手で制す、流石の低身長ネタも初対面

しかも友達の親であれば耐えようじゃないの

 

「こんな成りですが、一応は2年で秋山さんとは同い年です」

 

小学生もビックリなスーパー低身長でも秋山と同い年の友達であることを告げれば秋山の父親は綺麗な洗礼された動作で土下座を敢行した

賑やかな父ちゃんだな、なんか違う気がするけど…

 

「もうお父さん!恥ずかしいって…」

 

羞恥に顔を赤くした秋山が止めに入るも秋山の父は全く体制を崩さない、少しして言っても無駄だと判断したのか今度は秋山がこちらへ「上がってください」と声を掛けてきたのでそのままお邪魔させてもらうことにする

 

「2階に私の部屋があるんですけど、ちょっと待っててください」

 

「あいよ」

 

言われるがまま靴を脱いでお邪魔させて貰って、階段を登ってから当の彼女を待つことにする

 

「…お母さん、なんかお茶請けとかあったりする?」

「あら、先に来てるお友達の方々に出してるわよ?」

「…あれ?誰か来てるの?」

 

下で何やら話しているのが聞こえるが急かすような真似はしない、ついでに言えば秋山が来てくれないことには当人の部屋もわからないため

向こうから来てくれない事には勝手に部屋も入れない

 

「すいません、おまたせしました」

 

5分ほど経った頃だろうか、お盆に中身の入ったコップを乗せて秋山が戻ってくる

 

「大変そうだな、部屋どこだ?」

 

「あ、そっちの奥側です」

 

現状秋山は手が塞がっているので部屋を聞き出し、先導して開けようとドアノブに手をかけ───

扉を開くと部屋の中には見知った四人の少女…西住、武部、五十鈴、冷泉がいてバッチリ全員と目が合ってしまう

 

「…ッスゥー──間違えました〜」

 

まさかいるとは思っていなかった為に見つめ合った僅かな沈黙が大変気まずく思わずそう言って扉を閉めた

 

「杉野殿?どうかしたんですか?」

 

「あ、いやうん…何か見えちゃいけないものが見えた気がして…」

 

「え!?わ、私の部屋でですか!!?」

 

真横にいた秋山にはちょうど壁で部屋の中が死角となって見えていなかったのか、何故閉めたのか疑問の声が上がったがいるはずの無い西住達がいたので俺もビックリして無意識にやってしまった

気を取り直して再度ドアノブを掴み扉を開けると───

 

「……」

 

「ヒエッ」

 

開けた扉の目の前に西住と武部が立っていた

怖い、怖すぎる…下手なホラー映画も裸足で逃げ出す恐怖演出だ

思わずゆっくりと閉め直そうとしたところで西住が扉と枠の間に腕と足を割り込ませて閉じれないようにされる

ちなみにこの間二人して無言な為より一層恐怖心が掻き立てられる

 

「あ、あはは…き、奇遇だね〜?西住さぁん?」

 

「……」

 

「いや、何か言って!?怖いから普通に!!」

 

扉が閉められないことで否が応でも西住と武部の二人からの視線からは逃れられず、耐えきれずにそんな事をのたまうと扉が完全に開け放たれて西住に首根っこをむんずと掴まれて部屋の中央…正確には残りの五十鈴や冷泉のいるテーブルの辺りに連れて行かれる

 

「ンッ」

 

「…おいお前ら今笑ったか??」

 

そんな状態のこちらを見てか五十鈴と冷泉の両名は一瞬肩を震わせたかと思うとお互いに顔を反らした、コイツら他人事だと思って笑いやがって…

しかし、一つ解せないのは何故俺がこんな裁きを待つ罪人のような扱いを受けているかである

確かに朝は西住たちに連絡入れなかったが極力早い段階で返信を打ったし連絡が取れなくなることを伝えた筈である

 

(んで俺の席は一番出入り口から奥まった場所になるわけね?…あららら、西住と武部に左右固められてるし)

 

俺が逃げ出すとでも思っているのだろうか、両脇に西住と武部が控えており一番出口から遠い場所だ

いや、良いんだけどさぁ…そう思われてるなら結構凹むぜ

 

「…ひとまず、こちら杉野殿の分です」

 

「おう、悪いな」

 

少し呆気に取られていた秋山は部屋へ入ってくるなり手に持つお盆に乗せた中身入りのコップをこちらに寄越してくれた

一言お礼を言って受け取って中身を一度グイと煽る、あぁリンゴジュースかコレ

 

「皆さんお揃いだとは…ビックリしました」

 

「急に押しかける形になってごめんね?でもゆかりん連絡つかなかったからちょっと心配で…」

 

「杉野さんと一緒だって言うのはわかってたがそれが逆に不安でな」

 

秋山が他の面々にそう言うと武部と冷泉からそんな言葉が返ってくる、おいちょっと待て冷泉?俺と一緒だと逆に不安ってどういうことか小一時間程問い詰めたいんだが??

 

「あぁ、すいません…意図せず鳴ったら不味かったので非常時以外電源を落としてました」

 

申しわけなさそうに言う秋山は目の前でケータイを再起動させて心配かけたようで、と頭を下げた

 

「で?結局なんで二人していなかったわけ?」

 

「ちょうど見ていただきたい物があったので、その辺も含めてお話致しましょうか」

 

疑問を浮かべた武部に応えるように秋山はUSBを取り出して、テンション高めにテレビへとセットアップを開始した

そしてしばらくしてからテレビの電源を入れて、画面に【実録!突撃!!サンダース大付属高校】と表示される

…何故かプロジェクトAの主題歌のBGM付きで

いつの間に編集したんだか…帰りの飛行機の中か俺の寝てる時ぐらいしかまともな時間なかったはずだけど

 

「こんな映像があったんですね…」

 

「どこで手にいれたの?」

 

いやこれ今日撮ってきたやつ、そう言おうとしたところで画面から秋山の声が聞こえてくる

 

『私達は今、サンダース大付属高校に来ています…では潜入します』

 

画面に一瞬映る秋山、しかし周りには既にサンダース大付属の校舎が見えているので必然的にこれは俺と別れた後に撮られたものだと言うことが分かる

 

《では、着替えて潜入します》

 

そんなテロップが表示されると同時に場面はサンダースの学園艦の上空警備隊控室の物に切り替わった

…なるほど、色々とありすぎて所々映像撮り忘れてたから多少前後して時空列がバラバラになってるわけね?

ちなみにさっき映った秋山は顔から下を映さないようにしているのかサンダースの制服に着替え済みかどうかは実際に一緒に行った俺くらいしか気が付かないと思う

 

《無事に潜入出来たのでサンダースの制服に着替えたいと思います》

 

再度表示されるのは音声ではなくテロップ、そして映像のギリギリ端っこに俺が映ってる

勿論格好は飛行服姿でそれに手をかけて脱いでいく姿が映像として収められてる

…まぁその下に服もズボンも着てるから良いけど、あまり人の着替えを映すなよと思っていると画面の秋山も止めていない事に気付いたのか慌ててビデオカメラに手をかけてそこで映像は切り替わった

 

 

『…杉野殿、どうですかね?違和感あります??』

 

『──どうって言ってもなぁ』

 

次に映ったのはサンダースの制服に着替えた秋山の姿、あぁここでコレに繋がるのね

画面には大きく《これで、どこからどう見てもサンダース高の生徒です》とテロップが表示されているが勿論メイクも髪型変更もない為見る人が見れば一発で秋山だと分かる仕上がりになっている

 

『こういうのは普段の自分と絶対に結びつかない見た目にするんだよ』

 

『…そう言えば杉野殿の場合サンダースの戦車道チームには多少顔が割れてしまってる可能性ありますもんね』 

 

そんなこんなで映像は早送りになりながら俺の変装コーデが映されてる、チラと辺りを見ると秋山以外の皆が口をぽかんと開けていた

 

『…ま、格好はいつもより地味だけどそもそも潜入するなら目立っちゃダメだしな』

 

『だ、誰ですか…!?』

 

「いや本当に誰ッ!?」

 

変装が終わると画面内の秋山の突っ込みと武部の突っ込みが被った、自分と全く同じ意見だからか目の前の秋山も苦笑いしている

再度場面が切り替わるがサンダースこ制服姿の秋山だけで話が進んでいく、もうハンバーガー屋で別れた後のようだった

 

『ハーィ』

 

『『ハァーィ』』

 

『みんなフレンドリーです、バレてませんッ

 

画面の中の秋山はサンダース生に普通に話しかけている、コレはバレるだろとも思ったのだが見た感じまだ午後には突入していないので切り抜けたようだった

尚も秋山の渾身の潜入偵察映像は続いて場面は全体ブリーフィングへ

 

『アリサが遅れてくるみたいだから、悪いけど午後1にズラしましょう』

 

しかしここで予想外…予想内?の出来事があってサンダースの隊長とナオミ、後はその他の戦車道履修生が揃ったであろう段階で当のサンダースの隊長から時間をズラす事が発表される

辺りからはどよめき、何なら秋山が小声で『えぇ…』と言ってるのが集音されていた

いったいアリサって人はなんで遅れたんだろうなー(棒)

 

一度画面にあんこうらしき何かの絵が出てきたと思えば場面がハンバーガー屋の店内に変わった

昼食を取るのも含めて移動したのだと思われるが、この場面は必要なのだろうか?

 

『ハンバーガー…』

 

カメラはテーブルの上に置かれているのか、ハンバーガーを手に持った秋山が一人ぽつんと映ってそう呟いてから一口二口含んで笑った

 

『美味いッ』

 

…いやこれ本当に必要なシーン?あれか?飯テロ的な何かか??等と思いながらふと周囲を見渡すと五十鈴が食い入るように画面を見つめてる事に気づく

五十鈴へのサービスシーンかぁ…あと五十鈴目ェバッキバキで怖いからもうちょい穏やかな顔頼んます

そんなこんなで画面は再びミーティングルームへ、ズラリと並ぶサンダース大付属の戦車道チームの前に先程いなかったアリサが加わり3名が揃った

 

中央に居るのは現サンダース大付属高校隊長のケイ…実は数度戦ったことはあるが直接対決は無いし喋ったことも無い

ナオミも同じく、アリサはまぁ言わずもがな

 

『では一回戦、出場車輌を発表する』

 

西住の予想だと初戦ではファイアフライは出てこないだろうと読んでいたがさてはて…

…後ろでリパブリック賛歌が掛かってるのはなんで?アメリカ意識してるから??

 

『ファイアフライ1輌』

 

淡々と読み上げるアリサによって予想は大いに打ち砕かれた

クソ…金のある学校はこれだから、温存しなくていいって素晴らしいな全く

 

『シャーマンA1、76㎜砲1輌、75㎜砲8輌』

 

容赦無いようです

 

それな、思わず画面の中で小さく呟いた秋山に同意せざるを得ない…まぁ相手が誰であれ舐めプしないで戦うとこが強豪校たる所以なんだろうけどな

 

『じゃあ次はフラッグ車を決めるよ!オッケー?』

 

『イェーイッ!!』

 

画面中央のケイがそう言うとサンダースの戦車道チームも皆手を上げる、うーん…お姉さんちょっとこのノリにはついていけない

改めて潜入が秋山で良かったと心から思う

 

『何か質問は?』

 

『あ!はい!小隊編成はどうしますか?』

 

『Oh〜、いい質問ね!!』

 

フラッグ車も決まって質問の時間、画面内では秋山が積極的に質問をしているが…

 

『今回は完全な二個小隊は組めないから、三輌で一小隊の一個中隊でいくわ』

 

『フラッグ車のディフェンスは?』

 

『ナッシング!!』

 

『敵にはⅢ突がいると思うんですけど』

 

『大丈夫、1輌でも全滅させられるわ!』

 

…随分踏み込んでいくな

いや物凄くありがたくはあるけどな、かの源田司令も「必勝に通ずるは情報である、時間の過ぎた情報は報告と言う…報告はいらん、期待するのは情報である」と初陣の時に偵察隊へ言っていたと聞く

ここで知れた分対処の仕方を考える時間が取れるのは大きい、まさしく秋山が持ち帰ったのは情報と呼べるものだから

 

『…見なれない顔ね』

 

あ、バレたなコリャ

まぁこれだけ質問してりゃ嫌でも目を引くか───

 

『所属と階級は?』

 

『えと、あの…第6機甲師団

オットボール三等軍曹であります!!』

 

…誰?オッドボールis誰??

あ、でもサンダースの隊長爆笑してるから伝わる人には伝わるネタなのか

 

偽物だぁーッ!!

 

そしてバレると思わなかったのかやかましく叫びながら秋山が外へ逃げ出した

 

『有力な情報を入手しました!これでレポートを終わります!!』

 

___________

 

出演 撮影 編集

 

秋山優花里

杉野直緒

 

協力

サンダース大学付属高校

大洗女子学園生徒会

 

 

協賛

秋山理髪店

___________

 

画面が暗転して画面には何やら色々と表示される

…うん、まぁ間違っちゃいないな一応サンダースとウチの生徒会には許可取ってるわけだし

 

「…いいの?こんなことして」

 

「試合前の偵察行為は承認されています」

 

「一応生徒会にも許可取ってるぞ」

 

「…ふーん、あの3人は知ってたんだ」

 

思わずといった様子で聞き返す武部の疑問に秋山が応える、偵察行為が禁止されていたなら流石の俺も多分止めてる

生徒会にも話を通してあることを伝えるが武部はどこか納得できない様子で首を傾げていた

 

「西住殿、オフラインレベルの仮編集ですが参考になさって下さい」

 

「ありがとう…秋山さんのおかげでフラッグ車もわかったし、頑張って戦術立ててみる!」 

 

秋山は映像の記録されたUSBを抜いて西住に手渡した

ま、このあとの事は我らが大将にお任せするとして…俺のような平の隊員はせめてものストレス緩和に貢献するくらいはしなきゃな

 

「でも、ホント何もなくて良かったよ〜」

 

「それは…杉野殿が一緒でしたし」

 

無理はしたものの無事に帰ってこれた事に安堵する武部に秋山が嬉しい事を言ってはくれるが俺はあまりそう思っていない

確かにちゃんと正式な手順は踏んで安全面は考慮したはずだったが早々に警備隊からの襲撃を受けてる

今回は双方そこまでの被害が出ていなかった為あの程度で済んだがペイント弾とは言え、至近距離なら風防くらい突き抜ける可能性はありえる

信じてくれた秋山に怪我でもさせたら?…もし万が一、それで死んだとしたら?

もしそうなったら俺はきっとどうしていただろうか、無事に終わったからこそ反省点は尽きない

もう二度と誰かを失うなんてゴメンだしな

 

「杉野さん?」

 

「ん?」

 

一人心の中で反省会をしていると横の西住から声をかけられて視線をそちらに移す、先程の無言で詰め寄ってきた彼女とうって変わり心配そうにこちらを見つめる彼女に敵わないなと思いながらも大丈夫だとだけ伝えた

…何か気づいたら武部が秋山のアルバム勝手に持ち出してるんだが?一言も文句を言わない秋山は性格ができてると言うか…もう少し怒るなり何なりしても良いと思うぞ??

…ええ?パンチパーマ??秋山貴女パンチパーマにしてたの??

 

「友達が出来なかったのって、戦車じゃなくてこの髪型のせいじゃ…」

 

「武部、それ以上はいかんぞ」

 

髪型というのは拘ってない人間からすれば大した物では無いが、拘っている人間に対してはどんな言葉が怒髪天になるかわかったものではない

特に秋山の場合は拘ってこの髪型にしていたようなので尚更だ、そう言う意見は思っても口に出してはいけないものである

…等と思いながらちょっと気になって席を移動し、アルバムを覗き込んだところで思わず固まってしまう

 

「…あぁ?」

 

「?ナオ、どうかした?」

 

「いや…この顔、どこかで…」

 

写真の中の秋山は小学校高学年程の頃だろうか…

どこか覚えた違和感の正体を探ろうと少し考えて納得した

 

「多分、この頃の秋山を会場で見かけた事が…ある?」

 

疑問形なのはいかんせん結構昔の話で、見覚えがあることには変わりないが本当にこのアルバムに映る幼き日の秋山かは判断が難しかったから

…しかしそんな思いを肯定するべく秋山は表情をパァアッと明るくさせた

 

「覚えててくださったんですか!?」

 

「まぁ髪が特徴的だったからな…とは言え──」

 

当然ではあるが当時の彼女とは話したことは皆無、というのも基本的に戦車道選手と言うのは関係者や敵チームくらいしか話しかけられないものだから…

極稀に試合とは関係ない他所のチームでも知り合いがいたりとかで話しかけに来たりするがそんなにはない

加えて写真の彼女から当時を逆算すると多分俺がスクールに所属していた頃〜ストリートの個人チームに在籍していた頃の話だろう

どっちもかなりガチなチームだったので無用なトラブルを回避するべく一般人に対してのファンサはやらない所だったからなぁ

 

「どこで見かけたかまでは覚えてないんだけどな」

 

「まだ関東圏で活動されていた時は結構追っかけしてましたよ!」

 

少し懐かしいなと思いつつも当時の事を振り返りつつ話していると事情をある程度把握している西住以外の3人は少し驚いたような顔をしていた

そう言えばコイツらには昔戦車道をやっていたことは言ってたけど詳細は言ってなかったっけ

 

「ナオって宮城出身だよね?それをゆかりんがわざわざ追っかけるってことは相当すごい選手だったの?」

 

3人の内で疑問を口にしたのは武部で、大洗から宮城までかなりの距離があるにも関わらずに追っかけをするということは相当すごいからなのか?と秋山に問いかけて

それに応えるように彼女は首を縦に振った

 

「私が追いかけていた時も勿論すごかったですが、やはり杉野殿の全盛期と言えば松山の343戦車隊剣部隊にいた頃ですね

2年8ヶ月に渡る長い期間、日本最強であり続けた戦闘戦車隊の隊長だったんですから」

 

「…松山って愛媛の?ナオ大洗に来る前は西にいたって言ってたけどそっちの方まで行ってたの?」

 

本人ここにいるのに褒めそやされるのって羞恥プレイか何かか?

いや嬉しいけどな?…少なくとも当時は本気でやってたわけだし、だけど…うん、これくらいなら大丈夫だ

少し前ならこんな話題、あまり乗り気はしなかったけど…やっと折り合いがついたってことかな

 

「…一つ訂正すると名称だけ松山って入ってるんだけど、後々部隊は九州に移転することになる

実際には松山→鹿屋→国分→大村で結構各地を転々としてたよ」

 

「あぁ、だから抽選会の時にサンダースと何度かやり合ったことがあると言ってたのか」

 

お、凄いな冷泉…流石学年首席

武部や五十鈴は小首を傾げていたがもうわかったのか

 

「…佐世保が本拠地のサンダースは因縁深い相手なんだなこれが」

 

なにせ距離的には60kmしか離れてないものだから当然である…等とそんな事を言ってみれば今度は西住を入れた4人が「えっ」と言うような顔でこちらを見た

…あれ?西住は普通にわかってるもんだと思ってた

彼女が俺の試合を見に来た時は既に大村にいたし、アレだけサンダースのことを語っていれば察しのつくものだと思ったのだが…

西住ってちょっと抜けてる所あるよな、まぁそこが可愛らしいところでもあるんだけど

 

「じゃあ勝たないと、だね」

 

「あぁ…そうだな」

 

タンカスロンでの活動期間を多少なりとも話せることは増えてきた反面、いまだに折り合いがつかずに話に出したくないものも多い

…だけど、そうだな…サンダースに勝てば、もう少し気が晴れるだろうか?…けれど一つ惜しむらくは、戦車も人も全く足りていないから仕方のない部分もあるけれど、車長として俺が直接戦えない事だな

 

「頑張りましょう!」

 

「…ま、一番頑張らなきゃいけないのはマコなんだけどね?」

 

意気込むように言った五十鈴の隣で武部は少し顔をしかめて冷泉の方を覗き込んだ

 

「…?なんで?」

 

「明日から、朝練始まるよ?」

 

「ぇっ───」

 

これは俺も知らない話ではあったがなんと本日の練習時に明日から朝練があるとアナウンスされていたらしい

そしてそれを聞かされた冷泉は…多分寝てたか会話中に船漕いでロクに聞いてなかったんだろうなぁ

真っ白に燃え尽きそうになっていた

 

「んくっ──!!」

 

その様が妙にツボに嵌ってしまい思わず腹を抱えて笑いそうになるが既のところで堪えた

何だろうな冷泉って普段はこう物静かな分、こういうところで変な爆発力があるというか…

どうリアクションするか想像がつきにくいから面白いんだよな

 

 

 

 

 

 

 

話は飛んで翌日…別に今更朝練程度増えたところで痛くも痒くもない為特に問題はなし

強いて言えば朝イチで武部からヘルプコールがあったので車で冷泉の家に向かった事くらいだろうか…うん、なんか別にいつも通りな気がしてきた

 

「それでは本日の練習を終了するッ解散!!」

 

『お疲れ様でした〜』

 

ま、高々一日抜けたくらいで訓練についていけなくなるようなヤワな鍛え方はしてないため今日も今日とて1年たちの指導に奔走し無事終了だ

 

(傷も癒えたし…整備復帰しようかな)

 

つい先日怪我した左の人差し指の傷も完全に塞がって後は小さなかさぶたが剥がれるのを待つだけである

生まれつき怪我の治りやすい体質な為こういうところでは丈夫な身体で良かったとつくづく思う

 

「疲れた〜…甘いもの食べたい」

 

「何か食べて帰る?」

 

「うん…あッ、私達用事あるからみぽりん先帰っていいよ」

 

そんなこんなで格納庫に戻ろうとした時に西住達Aチームの会話が聞こえてきた

へー、珍しいこともあるもんだな…?あいつ等が西住と帰らない日初めてじゃねぇの

 

「ナオ〜!ごめん、ちょっといい?」

 

少し時間を置いて格納庫で工具を片手にさて何から始めようか、と頭を悩ませていた時武部がそう言いながら入ってきた

 

「おう、どうした?」

 

「…一つお願いがあるんだけど」

 

一体何なのだろうか?と小首を傾げていると出入り口の方からゾロゾロと人が入ってくる

あれは───

 

(澤、松本、磯辺…あと小山か)

 

なんと各車両の車長各(Eチームだけ操縦手であるが)が揃い踏みである、ことさらわけがわからん

 

「…あれ?皆どうしたの?」

 

武部も同じことを思ったのか今入ってきた面々にそう言うと皆一様に気恥ずかしさからか少し視線を逸らし、その中で特に俺といる時間が長いからか澤が代表して口を開いた

 

「…その、自主練したいんですけど…杉野先輩に指導して貰えないかなーと」

 

「あぁ、そういう事?」

 

ちなみに西住には頼まなかったのかとそれとなく聞いてみたら基本1日中一人で大洗のチームを世話してるのに放課後まで頼むのは気が引けるとの事で、各チーム代表を立ててこうして頼みに来たのだと言う

うーん…そう言われると断れんな

 

「…わかった、ちょっと待ってろ」

 

少なくとも大会が始まるまではこう言ったことも増えるだろうし、何より自主練中は整備は後回しにせざるを得ないためにケータイでまだ来ていない自動車部と近藤さんに整備開始時刻が延期になることだけ打って送ってから

作業台に置いていた通学鞄の中からファイルに入れた複数枚の用紙を取り出す

 

「ん」

 

「え?なにこれ」

 

そしてそれを各々に配っていく、武部からは一体これはなんなのかと聞かれるが紙に書かれているのはそれぞれの搭乗している戦車の詳細やらスペックを大まかに書いた物だ

いやいつどこからヘルプ来ても良いように一応用意していた物がこんな所で役に立つとは思わなかったな

 

「これは──」

 

「私達の戦車の性能諸元…」

 

ちなみにわかりやすいように簡易的なイラストで車格等はその絵に沿って書き込んだり停止時と走っている際の重心の位置まで書き込んである

 

「お前ら筋は良いとは言え、まだまだ素人も素人だからな

やるなら基礎のおさらいからだが…どうする?」

 

まず基礎が疎かになっていては、どれほど特殊な技量があっても上手くいかない

そこで俺が提示するのは一定以上の技量になったと判断できるまで徹底的に基礎を叩き込む事だ

とは言えそれは授業でやったことの反復練習なので人によっては物凄く退屈に思うかも知れない

だからやるかやらないかは個人に委ねようと思ったのだが───

 

「…私はやるよ、みぽりんに迷惑かけたくないもん」

 

「私も、先輩方におんぶにだっこでは気が引けます」

 

「根性ー!!」

 

「なるほど、確かに基礎が疎かでは良い思案も浮かばなそうだ」

 

「そう言うことだから、よろしく頼むね?杉野さん」

 

武部を筆頭に各々やる気を燃え上がらせている

まぁ良いことだ…

 

 

 

 

 

 

 

「…全員揃ったか?」

 

現在、一度は閉まった戦車をもう一度全車輌運び出し終えた所だ

集まっているのは西住を除き俺を含めた22人である

俺は全員の前に立って、この自主練を始めるにあたり各々留意しておいてほしい事を伝えるべく口火を切る

 

「まず始める前に一つ──これはこの中にいる誰かには既に思い当たるフシがかも知れないが───」

 

少し貯めるように一尺間を開けてから再度続ける

 

「何かをやる時に人は悪いことから身について行く、どうでも良いことから覚えて行く

物事には必ず守らなきゃいけない掟みたいな物がある、それをお前達に教えたい───」

 

だけどそれは簡単には伝わない、いくら言葉を並べ立てた所で

それぞれの経験の中でしかわかっていけないものだから

 

「守らなきゃいけない事、引かなきゃいけない事──そして絶対に引いちゃいけない事───」

 

特にBチームの磯辺達は思い当たるのか真剣な表情で頷きながら聞いていた

 

「大事なコトは教えられない、経験でしかわかっていけない

自分で理解して、自分で経験を積む、仮にも自分の命をのせているんだから───

自分でわかろうとしない限りは一生わからないぞ」

 

周囲を見渡してそれぞれの表情を確認する、ビックリすることに全員瞳の奥に強い情熱の炎のような物を感じる

良いね、こっちもやる気になるってもんだ

 

「先程各々の搭乗車輌についての資料を配ったな?

見てないものはきちんと目を通して、とにかく自分の車輌について知ること…何が得意で何がダメか

普段からそれを意識するだけでも全然違う」

 

何なら全長やら高さ、幅…そして大まかな重量など

車長や操縦手は車格を意識しながら走らせるだけでも身につき方に差が出るのだ

 

「それじゃ…始めようか?」

 

さぁこの後の整備の事とかも考えると練習時間は精々2〜3時間が精々だろう、話を切り上げるべく俺はその場でパンッと手を叩いてスタートを切った

 

 

…あ、ちなみに30分後くらいに忘れ物を取りに来た西住に見つかってコソ練の意味が全く無くなったり隊長なんだから一言くらい声かけてほしかったと拗ねられたりと色々あったが割愛

 

 

 

 

 

 

遠く離れたとある中等学園の一室、特に理由もなく放課後にも関わらずに居残りを続けていたやけに背の高い少女の耳にドタバタと近づいてくる喧しい足音が届く

 

「か、葛西さんッ葛西さんッ大変です!大変なんですッ!!」

 

「…タム?こんな時間にどうしたんよ?」

 

やがてゼェゼェと息を切らした状態で入ってきた年相応の背丈をした少女──田村(たむら)恒音(こうね)が入室してきたことで長身の少女──葛西(かさい)智美(ともみ)は呆れたような視線を向けた

 

「葛西さん大洗ってとこの高校戦車道チームを知ってますか?」

 

「…大洗?いや聞いたことないやんな、どこなんそこ」

 

それがいったいどうしたのかと小首を傾げる葛西に田村は説明を交えて話をするために再度口を開く

 

「茨城の高校で、何でも20年以上前から廃止されていた戦車道を今年になって復活させたみたいです」

 

「茨城?…まぁ復活させたんはめでたい事やけど、それの何が大変なん?」

 

説明を聞いても葛西からすればだから何なのだろうかと言う案件である

葛西からすれば茨城など全く縁もゆかりも無い地であるのだから

 

「これを見てくださいよ」

 

「ん?…プッ…こ、こんなんあかんやろ───」

 

田村が携帯を取り出して見せたのは先日の大洗vs聖グロリアーナの親善試合の動画である

そこまで言うなら何か凄いものでも見れるのかと画面を覗き込んだ葛西は一瞬で吹き出す

チグハグで協調性のないド派手なカラーリングを施した戦車達、唯一隊長車と見られるⅣ号のみ常識的なカラーリングのままであることを含めてツッコミどころが満載だった

 

「で、で?タムはこの芸人集団を見せたくてわざわざウチの教室まで来たんか?」

 

「あ、いえ…見てほしいのはもっと後でして」

 

思わずどんな感想が欲しくてこんな物を見せたのかと聞きたくなったが、田村は見てほしい場面はまた別と動画を飛ばし飛ばしに回し続けた

 

「…にしてもただの親善試合の動画がよぅ手に入ったのぉ」

 

「友達から送ってもらいました、ほら私って関東出身ですしそっちの方にツレ多いんですよ」

 

それもそうか…等と呟いて動画を見続けていると、思わず目を見開くような映像がほんの一瞬映った気がしてすかさず葛西は声を上げた

 

「タム!今のところ10秒巻き戻せんか?」

 

「…流石、気づきましたか」

 

葛西の指示通り動画を巻き戻した田村は、あるポイントでその動画を一時停止した

そこに写っていたのはピンク色のド派手なM3から周囲の状況を把握するためか身を乗り出した一人の少女の姿だった

遠距離からのモニター越しに撮影されたと思われるその動画は画質が粗く、少女の顔立ちまでは詳しくわからなかったが葛西と田村の目はその少女の首元に吸い寄せられていた

 

「紫色のマフラー…」

 

ぽつりと呟いた葛西に田村は肯定するように頷く、別に戦車道の試合でマフラーを巻くのは珍しいことではない為に紫色のマフラー自体巻いている人間は全国を探せばいるかも知れない

…ただし、画面の中の少女の身につけているマフラーの明るい色合いは恐らく一つしか知らない

 

(髪は伸びてはるし、画面が粗くて顔も詳しくわからへん…けどこんな小柄で紫色のマフラーを巻いた戦車乗りなんて───)

 

葛西の脳裏に浮かんだのはもう2年近く前に引退をしてしまった、自身の敬愛した隊長のことだ

 

「…杉野隊長」

 

葛西も田村も元々は第343戦車隊(剣部隊)の戦車乗りであり、その前に遡ればスクール時代から杉野の部下として激動の日々を送ったものだった

…それこそ二人は杉野の戦車道歴の序盤から引退に至るまでずっと一緒にいたのだから何も思わないわけがない

 

「…これ、宮さんや堀さんらには送ったんか?」

 

「いえ、まだです」

 

「…まぁ、かまへん…ウチから送っとくわ」

 

さて、そうと決まればやることが出来たと荷物を纏めて立ち上がった葛西は田村へと向き直ってニッコリと悪戯な笑みを浮かべた

 

「ウチ、ちょっち大洗女子学園について調べてみるわ

他の皆への連絡はタムに任せてええか?」

 

「わかりました」

 

頼むわ、一言そう告げて葛西は教室を後にする

先程まで何をするでもなくどこか気だるかったものもどこかへと消え失せて異様に足取りが軽かった

 

(…今度は置いてかんといてくださいよ、杉野隊長──)

 

まずはなにをするにも情報収集が必要だ、全くこれから忙しくなると思いながらも

どこか葛西の顔は喜びに満ち溢れていた

 

 




おまけ

家で着替えた後の私服直緖(2)


【挿絵表示】


間違えてサンダース制服のまま生成してしまった秋山殿と並んで歩く直緖


【挿絵表示】



ようやく次話くらいにはサンダース戦入れるかな…と
…いや、なんかスゲェここまで長かった気がしますわ
待ってる間に西住殿とか愛里寿の生誕祭あったじゃないですか、Xにて調べたら結構誕生日ファンアート書いてる人結構いて
やっぱガルパンって愛されてる作品なんだなーと再認識しました

あとすごい個人的な話をさせてもらうんですが、こないだ中学生の頃ぶりくらいに小説買ってきて勉強の時間を設けてたじゃないですか、あれね?20歳超えてから初の紙媒体小説でもあったわけですよ
それ以前に買いだめしてたのは高校の頃とか読んでましたし、そしたら10代の頃に比べて全然内容が頭に入ってこなくてビックリしました
衰えましたよ私も

はい、話を変えまして
前からあとがきに載せてたんですけど、やっぱり載せておくと優しい方がしてくれるものですね
書く時のモチベや心の支えとなってますので本当にお気に入り登録、感想、評価お待ちしております

誤字脱字多いかも知れませんが、発見次第直して行こうと思います

以上です
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