ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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皆様のおかげでやる気が出て筆が乗った為短期で書き上がりました
アリガテェ…アリガテェ…ッ!






一回戦、決着

 

遠くに立ち上った白い煙、恐らくそれは煙幕を張ったことで出たものだろう

双眼鏡越しでも白く包まれたその一帯はかなり注意を払って見ても状況把握が難しい

 

(杉野さんは──いたッ)

 

隊列の遥か後方、こちらに狙いを定めるファイアフライの真横に車輌後部から夥しい白煙を上げながらM3リーが姿を表す

 

(──ッ!)

 

彼女を見つけたその直後、ファイアフライ特有の落雷のような砲撃音が響き渡り

丁度38tを守るべくその後方についたⅢ突があたかも身代わりになるように落伍していく、これで敵フラッグ車に対してこちらが動けるのは僅かに2輌のみ

それでも不安は無かった───

 

(杉野さんが任せろって言ってくれた、なら私が余計な心配をしちゃダメだ…ッ)

 

そうすることが、既に戦線を離脱した八九式とⅢ突の手向けにもなるだろう

ファイアフライが脅威なため停車する時間もなかったが、敵フラッグ車との距離は大雑把な目測ではあるものの1000を切っている

彼女の宣言通りファイアフライを気にしなくて良いのなら、止まって照準を合わせさえすれば撃ち抜ける距離だ

 

「──お見事」

 

そして2つの砲撃音が同時に鳴り響き双眼鏡を片手に後方を見やれば白い煙に呑まれながら、それでも白旗を上げるファイアフライの姿がしっかり確認できた

彼女は言葉通りこちらに道を作ってくれたのだ

ならば、それに応えなければ隊長失格だ

 

「脅威は去りました、ここで勝負に出ます!」

 

車内へ引っ込んで車長席に座り直し、攻勢に出ることを伝えると運転を担当しなければならない麻子さん以外が力強く頷いてくれた

 

「やっちゃえ華!撃って撃って撃ちまくろう!」

 

事態が拮抗していた先程までは少しばかり弱気になっていた武部さんもこちらが優勢となったことで一転、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」だの「恋愛も同じ」だの言い始める

…そうかな?武部さんが言うならそうかも…

 

「いえ、一発で充分です」

 

しかしそれをやんわりと否定した五十鈴さんは深呼吸を一つした後、いつにも増して真剣な表情で照準器を覗き込む

私も席を立ち上がりもう一度キューポラから顔を出して敵フラッグ車の位置を確認、もう後ろを気にする必要がない為敵フラッグとの距離はこちらとの速度差で更にジリジリと詰まっていた

 

「どうする?」

 

「冷泉さん、数秒で良いので停車していただけますか?」

 

このまま距離を詰めるのか、それとも止まるのか

冷泉さんが振り返らずに聞き、五十鈴さんは照準を合わせる時間が欲しいと答えた

杉野さんの言葉を借りるなら躍進射撃はタイミングが早いと荷重移動によって生まれた重心が減速により前へ移動、その反動で停車してから再度後ろに戻る動きが起こるため砲身の先端が意図せず上がった状態で砲撃してしまう可能性がある

だけど、五十鈴さんなら決めてくれる…不確かではあるがそう思った私はそのまま停車の指示を出した

 

 

 

 

 

 

「誰にも繋がらない…!」

 

全速力で逃走を図るM4シャーマンの車内でヘッドホンに手を添えながら、アリサは震える声を絞り出すようにポツリと呟く

 

(マム達がやられたなんて信じたく無い、交戦中ってこと…?)

 

通信は繋がらないが交戦して無線を使う余裕すらないと言うのもありえなくもない話であるため、もしかしたらそうかも知れないと思っては首を横に振る

 

(…いや、あの悪魔*1が向こうにいる以上常に最悪を想定しておかないと)

 

甘い算段をして彼女相手に目論見通りになったことなどありゃしない、そう思っては思わずアリサはげんなりとした

 

(…思えば、通信傍受機を使ったのも裏目に出たわね)

 

恐らくは、であるが

元々杉野が無線逆探で遠近を測るのを得意としているのをアリサは知っている、通常であれば逆探された所でよっぽどのことがない限りはその内容がわかるわけはないが

彼女が乗っているのはM4とほぼ同時期に出ていたM3リー、積んでる無線規格は同じであることは容易に想像が着くため周波数やチャンネルなどを総当りすれば彼女程の人間ならこちらの無線内容をすっぱ抜く事も可能だろう

そしてその考えが当たっているのならばここに至るまで散々良いようにしてやられた理由も説明がつく

とは言えまさか公式戦でも同じことをやってくるとは──

 

(まぁ十中八九私が通信傍受機打ち上げたのがバレたからでしょうけどね!?

だって仕方無くない!?そもそも引退して2年音沙汰なかったアイツがなんでいきなり公式戦出てるわけ!!?)

 

先程対峙した際は思わず叫んでしまったが発狂しなかった自分を褒めてほしいくらいだと心の中で呟く

それほどまでに杉野直緒と言う少女はアリサにとってはトラウマのような相手であり

 

(…ほんと、何なのよ今更)

 

それと同時に強い羨望の的でもあった

20輌程度の戦車を引き連れてはこちらの用意した10倍以上の敵を実力で叩き潰して帰っていく、そんな色んな意味でぶっ飛んだ戦車隊の中でも一番の撃破数を上げて一際輝いていた彼女の存在は同期の戦車道履修生として互いに敵同士ではあったが憧れないわけが無かった

 

(あんな事が立て続けに起こって、アンタが引退したのも残念だけど納得がいった──だけどアンタは戻ってきた)

 

恐怖はあったが憧れもした存在、そのあまりにも急な復帰はアリサの情緒をグチャグチャにするには充分だった

きっと今よりも酷く直情径行のあった頃のアリサであったのなら感情の赴くままに引き返し、自車がフラッグ車であることも忘れて一対一の対決に持ち込んだかも知れない

ある意味で言えば杉野達を始めとした思い出すのも身の毛のよだつような地獄の日々がアリサを精神的に成長させていた

 

(言いたいことはあるけど、今は勝負の真っ最中だから置いておくとして

──絶対逃げ切ってやる)

 

しかし新たに意気込んだアリサをあざ笑うかのように、ファイアフライの砲撃音がしなくなった

 

「旋回───!」

 

途端に言いしれぬ不安を感じて操縦席へと指示を飛ばすが、時すでに遅く

一発の砲撃音と共にアリサの乗ったフラッグ車は激しい衝撃に襲われて車輌の動きが止まってしまう、見なくても撃破されて白旗が上がってしまったのだと予想が出来た

 

大洗対サンダース大付属の試合は当初の攻守が何度も入れ替わった激戦が繰り広げられた一方、その結末は存外あっけのないものだった

 

 

 

 

 

 

 

『大洗女子学園の…勝利!!』

 

そのアナウンスが流れた瞬間、戦闘態勢だった車内は一瞬の沈黙が訪れ

次第に割れるような歓声に包まれた

 

「勝てたの!?」

 

「やったーッ!」

 

「勝った勝った!!」

 

戦いも終わり停車した車内で無口な紗希以外が飛び上がりそうなほどに喜んでいる、いやあの紗希でさえどことなく嬉しそうな表情をしていた

 

(…勝ったんだ、私達ッ)

 

かく言う私も、先輩や皆の手前恥ずかしさが勝って出来ないがそれこそ舞い踊りたいくらい嬉しかった

最初は大ポカをやらかしてしまったが勝利の余韻がそれすら洗い流してしまうのではないかと感じるほど

…だからこそ

 

「…杉野先輩ッ!?」

 

一緒に喜びを分かち合いたい、出来ればいつものように優しく褒めてほしい先輩が

力なくその場にへたり込んだのを見て一気に冷水を浴びせられたような気分になった

 

「先輩ッ!大丈夫ですか!?」

 

「え!?」

 

「杉野センパイ!?」

 

先程までとは言わないまでも、荒く乱れ苦しそうな呼吸を繰り返す先輩の姿に思わず駆け寄ると異変を感じた他の子達も同じように駆け寄ってくる

 

「はぁ──ッ!はぁ──ッ!」

 

「先輩ッ」

 

ただならぬ様子の杉野先輩の両肩を掴み、数度揺すると正気に戻ったようにビクリと身体が反応してから周囲を確かめるように左右をゆっくりと見つめた

 

「さ、澤…?」

 

「大丈夫ですか…?」

 

そしてこちらにも、確認するように弱々しい視線を向けて

普段とは打って変わった不安そうな声で私の名前を呼ぶ、明らかに異常なその状況に

しかし何を出来るでもない私は自分の無力さに歯噛みする思いをしながらそう問いかけた

 

「あ、あー…勝ったと思ったら気が抜けちゃってさ

身体に力入んなくなっちまった…」

 

いや、全く情けないと誤魔化すように杉野先輩は自嘲気味に笑う

嘘だ絶対それだけじゃない、だけど先輩が隠そうとする以上は私が深く聞けることは出来ない

…だって踏み入って嫌われるのが怖いから、先輩がそんな人じゃないのは頭でわかっていてもその一歩を踏み出す勇気が無かった

 

「…ごめん、誰か肩貸してくれねぇか?」

 

「あ、私やりますぅ〜

背が近いほうが良さそうですしぃ〜?」

 

「じゃあ私も!」

 

そうこうしている内に暫く状況が変わらないと感じてか杉野先輩が申し訳無さそうに言うと優季と桂利奈が名乗りを上げる

…本当は私も手助けしたかったけど、優季のように少しでも背丈が近い子じゃないと先輩も負担だろうし諦めた

代わりに何か別で手助けできることがあれば良いんだけど…

 

「阪口は元の会場まで操縦あるだろ?」

 

「うっ」

 

「…会場戻ってから、お願いするよ」

 

と言うわけで桂利奈は渋々操縦席まで戻っていき、少しおいて車輌がゆっくりと動き出す

優季は優季で一度杉野先輩に肩を貸して立ち上がらせ少しは楽だろうからと車長席へ座らせた

 

「…こないだの測定でわかってましたけど軽いですねぇ〜

センパイ、ちゃんと食べてますぅ〜?」

 

「これでも食う量は人並だよ、タッパ(背丈)のせいだタッパ(背丈)の」

 

いつものように何気なく、それでいて少し心配そうに優季がそう言っては自身のことながら恨めしそうに杉野先輩が呟く

そう言えば身長に関して杉野先輩はこないだの測定結果納得いってなかったみたいだったしそういう反応にもなるのかな

 

「あ、あの…会場戻ったら私が背を貸しましょうか?

…そしたら多分私一人で済みますけど」

 

「うん、頼んどいであれだけど流石におんぶは恥ずかしいな」

 

次いで一番背丈のあるあゆみがそう言って名乗り出るも敢え無く撃沈し、思わず私を含めて周りに残っていた優季とあやが小さく笑う

先程までの杉野先輩の様子を思い返すと今でも不安な気持ちにはなるけど、現状軽口交じりに平然としている姿を見るとなんだか安心する

相反する気持ちが共在するから不思議だ

 

 

 

 

 

 

 

「苦労をかけるな…」

 

「いえ、センパイにはお世話になってますから〜」

 

「それにあの状況じゃ放っておけないですよ!」

 

会場まで戻る頃には下半身に力が入らないという異常も治ると思ったが、予想に反して一向に治る気配が無かった為に当初の予定通り宇津木と阪口の肩を借りて戦車から降りた

…こういうのももう無いと思っていたが少し見込みが甘かったようだ、思わず申し訳無さでぼやいてしまったが二人とも嫌な顔一つしない

ほんと…ほんッッッと良い子たちだなこの子達

 

「あ…」

 

「?」

 

「どうしたんですか?」

 

大洗の陣営に戻ってきたことで先に戻ってきていた西住達あんこうチーム、生徒会達フラッグ車のカメさんチーム

…そして撃破されたバレー部達アヒルさんチームと歴史オタク達カバさんチームの搭乗員達が外に出て列を作っているのが目に入る

誰一人として欠けてはいない、そうだ…もうあの頃とは違うんだ

そう思って安心すると今度は自身の身体に力が戻っていく感覚があった

 

「…いや、皆の顔見たらなんだか安心してな

ありがとう、ここからは自力でなんとかなりそうだ」

 

「わかりました」

 

「また何かあったら言ってください」

 

我ながら単純だなとも思うが、自力で動けるようになったのならまだこちらに気づいていない他チームの搭乗員達に無用な心配をかけないようにもう大丈夫だと言って宇津木と阪口に離してもらう

…うん、特に身体に違和感もなくいつも通りだ

ひとまずは試合後の終礼もあるため1年生たちと一緒に列に加わった

 

「一同、礼!!」

 

『ありがとうございました!!』

 

そして公式戦の審判を間に挟み、サンダースの戦車隊と我ら大洗の戦車隊全員が向かい合って互いに礼をする

…なんかアリサとケイさんから凄く視線を感じたが気づかないふりをした、面倒なことになりそうな気がするし…

これこのまま知らない振りして帰れねぇかな?

 

「手隙の者は撤収準備だッ!」

 

終礼も済めばやることも帰り支度程度しかなく、アレほど弱音を吐いていた河嶋が拡声器片手にコレでもかとイキイキしている

 

「Hey」

 

「しっかし撤収も俺等がやらにゃいかんのか、金のねぇ学校のツラいとこだな…」

 

「コラ、聞こえてんでしょ?無視すんじゃないわよ」

 

「まぁ、まずはテントやらその辺から片すか」

 

「無視すんなってのッ!」

 

何やら背後から声をかけられているがこんな弱小校の平隊員に用があるやつなどいないと思うので撤収の段取りを組もうとしていたのだが、肩を掴まれ思いっきり後ろへと引き寄せられた事で中断せざるを得なかった

 

「…で、何の用なんだ?アリサ」

 

「話しかけられてんのわかってるなら返事くらいしなさいよ!?アンタほんといい加減殴るわよ!!?」

 

例の如くキレながら詰め寄ってくるアリサに相変わらずやかましい奴だなとは思いながらも、そのやり取りがどこか懐かしくて思わず小さな笑い声が口から漏れ出て

当のアリサも毒気を抜かれたのか溜め息を吐いた

 

「改めて、久しぶりだなアリサ」

 

「えぇ、久しぶり」

 

右手を差し出せば渋々ではあるが握り返してくれる、口は悪いが別に揉めに来たわけではないと言うことだろう

どんな因縁を吹っ掛けられるかと考えていた手前少し意外ではあった

 

「少し話したいんだけど、時間あるかしら?」

 

「…まぁ、大丈夫だろ」

 

話したいことがあると言われればやることは一応あるにはあるのだが、いつになく真剣な表情のアリサに思わずそう答えていた

撤収作業は…まぁ話し終えてからでもする時間はあるだろう

 

 

 

 

 

 

 

それから互いに空いた2年間を話せる範囲で話していた

元々アリサとは友達というほど親しい間柄でも無かったが、戦うことが多ければ自ずと試合後に多少は話す関係になる

言わば知人以上友達未満という何とも言えない関係だ

 

「──アンタがいなくなって暇できるって思ってたけど、案外そうでも無かったわね」

 

「あーそう、そら俺の事が大したことねぇって言いてぇんだな?

よし次があるなら初っ端からお前を徹底的にマークしてやるから覚悟しろよ?」

 

「ごめん、言い過ぎたわ

アンタに狙われると命の危機を感じるから切実にやめてくれる?」

 

自分のことを挑発を交えながら語るアリサにそうかそうか、つまり君はそういう奴なんだなと敢えてそれに乗っかってやると冗談だからやめてくれと言われる

互いに軽口混じりのではあるものの、空いてた期間が長かった為か思いの外話すことはそれなりにあった

 

「…にしても良く戻ってくる気になったわよね、あの頃のアンタって言い方は悪いけど──」

 

「死相が出てたって?」

 

「人が気ィ使って言い淀んだんだからそうハッキリ言うんじゃないわよ」

 

まぁ、互いに良く知ってはいるがために昔のことを話せる数少ない相手でもあったな

とは言え確かに本当は戻る気なかったものな、西住がいなければ

 

「…あー、それなんだけどな

俺も戻る気無かったんだよ本当は」

 

「はぁ?どういうこと??」

 

というわけでアリサになら良いかと西住の事とか中々センシティブな内容は抜粋して事のあらまし、つまり生徒会に脅されたりなんやかんやあって再開することになったと超ざっくり説明した

 

「どうしても戦車道を復活させて勝たなきゃならないんだと──あぁ、生徒会ってのはウチのフラッグ車だった38t乗ってた奴らな?」

 

「いや…それって」

 

何故かその事を話すとアリサは目を見開き、少し考え込むように何かをブツブツ呟いてから

再度こちらをみて続けた

 

「…アンタ、もしかして何も聞かされてないわけ?」

 

「…?何を?」

 

「…まさか」

 

そうしてまたもや何か難しい事を考えるようにアリサは自分の世界に入ってしまう、完璧に話題をミスったか?

…なら一度この話題を強制的に終わらせようかってな訳で

 

 

「因みに、実はアリサとはそんなに久しぶりってわけじゃねぇんだよな」

 

「はぁ?それってどういう───」

 

試合も終わったことだし今なら明かしても良いか、と急に話題を変えた事で訳が分からないとばかりに首を傾げているアリサに俺は続ける

 

菅野(かんの)(なおし)

 

「…」

 

俺の放った一言でアリサは一瞬フリーズしたように動かなくなると次第に顔を赤くしてわかりやすく怒った表情のままこちらを指差しプルプルと震え始めた

──攻撃寸前のスライムか?

 

お前かァーーーッ!!

 

「うわ、しぇずね(うるさ)っ」

 

急に怒鳴りだした為に思わず耳を塞ぐ、話をするのに人のいない離れた場所だったにも関わらずすごい勢いで視界の隅レベルで点在する周囲の人からの視線を受けた

 

「あーもう最悪!ただでさえ人に知られたくないやらかしが色々あったのにッ!なんでよりによってアンタなのよ!?」

 

「…タカシの事?それともその事に夢中になり過ぎて危うくブリーフィングすっぽかしかけた事?」

 

「うっさいのよ!?わざわざぼかして言ったのが台無しじゃないこのバカッ!バーカッ!!」

 

思わず小学生並みの語彙力だなと思いながら、しかし中々どうしてツッコミの才能がある

打てば響くというやつだ、河嶋と似た空気を感じるな

 

「…んでさっき生徒会云々で言いかけてた事は一体何だったんだ?」

 

「アンタ今それ言う!?絶対今それじゃないわよね!!

こんな状況で言えるかァアッ!!」

 

全くそんな雰囲気ではなかったものの、ここはちょっとボケてみようと話題を戻してみると素晴らしいツッコミが返ってくる

河嶋なんかとは切れが違ェやな、どっちもキレ芸だけどな、わはは

 

「…で、結局何だったの?」

 

「強引に戻そうたって教えるわけないでしょこのバカッ!」

 

しかしまぁちょっと弄りすぎてしまったのか軌道を修正することは叶わず、アリサは怒って走って行ってしまう

…が少しして何か思い留まったようにピタリと止まるとこちらへ振り返った

 

「…生徒会に気をつけなさいよ、アンタに隠してることあるから」

 

「え?」

 

「それだけよ、バカッ」

 

何やら気になること、生徒会の隠し事という聞いただけでわかる厄ネタの存在に反射的に聞き返すが伝えるべきは伝えたとそれ以上は何も言うことなくアリサは帰っていった

…いや、バカ言い過ぎだろ

 

 

 

 

 

やかましいの(アリサ)がいなくなった事で一応は平穏が訪れ、さて撤収作業に手を出すかと言った所で

Aチームの皆とその中の西住と抱き合ってる(意味深)ケイさんを見つける

…俺は何も見てねぇ

 

「あ、サムラ〜イッ!」

 

「げっ」

 

早々に彼女らの視界から消えようと思っていたが未だ西住と抱き合う(意味深)ケイさんに呼び止められてしまう

行かなきゃダメか?…ダメか〜凄い良い笑顔で手招きしてるし

 

「ちょ、危な…!?」

 

「あら、何で避けるのよ〜」

 

そしてやはりと言うべきか、こちらにも抱きつこうとして来たので半歩ズレて回避する

 

「身長差考えてくださいね、轢き殺されますって俺」

 

「あ〜…残念ね」

 

ケイさんの身長は目測で西住とほぼ変わらないので自分で言ってて悲しくはなるが俺との身長差は歴然だ、そんな中抱きつかれてみろ

まず互いの動いた時のエネルギー量が桁違いなので乗用車とトラックの衝突みたいに俺が弾き飛ばされることは想像に固くない

 

「みほにも言ったけど最ッ高にExcitingで楽しい試合だったわ」

 

「こっちは終始ヒヤヒヤしてましたがねぇ」

 

話を戻してケイさんはそう言ってから後ろを振り返り西住達を見やる、俺としては今回も結構綱渡りだった為に素直に喜べない

切実に相手と同じ数の戦車がほしい…

 

「…結構楽しんでたように見えるけど」

 

「しーっ、黙っといて」

 

疑うようにじっとりとした視線を西住から向けられる

…最後の方結構昂ぶりすぎて無線切り忘れてたり色々あったからな、後生だから言わないでくれと西住に釘を刺す

あんなハイになった状態は俺のキャラじゃない

クールで知的なお姉さんが性に合ってる…

え?そもそもチビの時点でそう見えないしどちらかと言えば知的より野蛮?はっ倒すぞ

 

「あ、そうだこれ…」

 

「…なにこれ、地図?」

 

ふと思い出して懐を漁り、戦車からおろしてもらう際に忍ばせておいたサンダースから借り(奪っ)た地図を取り出す

目の前のケイさんはわけが分からないと言うように首を傾げたがそのまま無理やり手渡した

 

「そっちのチームの子が試合中貸してくれたんですが、名前聞きそびれちまったんで返しといてもらえません?」

 

「──AHAHAッ、OKOK返しとくわ」

 

流石に奪い取ったとは言えないため借りたとぼかしたのだが、何か勘付いたのかとても楽しそうに笑いながら返却を請け負ってくれる

心なしか西住達から鋭い視線が飛んでくる気もするが借りたと言ったら借りたのだ

その様子も相まってかケイさんは一頻り笑った後こちらを見ながら口を開く

 

「貴女あんまりサムライって感じじゃないわね」

 

「そりゃそうでしょ、てか俺がそんな呼ばれ方されてる事自体驚きっすわ」

 

「どちらかと言うと野武士──いや、山賊??」

 

「コラコラ」

 

そもそもな話何故俺なんかがサムライ呼びされているのか、これがわからない…サザーランドめ適当なこと吹き込みやがって

いや居たけど、剣部隊の時にサムライ呼びされてた人…

あと戦車道のルーツやら何やらを鑑みて武士道を引っ張り戦車乗りを現代におけるサムライに当てはめる事も出来るだろうがそれもまた中々無理やりな話だ

…まぁ一応やんわりと否定はさせて貰ったけど、地図強奪してるし野武士やら山賊呼ばわりされても仕方ない…のか?

 

「日本…東洋……なら、うん」

 

「ちょっと急に自分の世界入らないでもらえます??」

 

拳の上に顎を乗せてうんうんと唸り、自分の世界に入って何かをブツブツと呟きチラチラとこちらを見るケイさんに何やら凄く嫌な予感を感じ取るも

うん、と一人納得した様子で彼女は続ける

 

「貴女の事、今度から【ゴジラ】って呼ぶわね」

 

「なして??掠りもしねぇじゃん」

 

「だって東洋の怪物と言えばゴジラ*2でしょう??」

 

何を当然の事を…みたいな顔して言わないで貰えますかね?

怪物扱いは魔王呼ばわりより少しマイルドにはなってる気がしないでもないけど、俺一応JKだからね?

JKにゴジラ呼びとかイジメか何かか??

 

「てかこれ以上変なあだ名つけんでくださいよ」

 

「そう?東洋人にはこれ以上無い褒め言葉だと思うけど…」

 

「いや、アンタも東洋人だろ」

 

さも私は違いますみたいな言い草だが目の前のメリケンかぶれも長崎県民な為立派な東洋人である、そんな事を言うと目を泳がせながら「細かいことは良いのよ」とはぐらかし始めた

 

「──まぁそれはそれとして、本当に楽しい試合だったわ」

 

あ、強引に軌道修正したなこの人

良いけどね別に、サンダースだけに始まった話じゃないし

 

「私3年だからさ、この大会で引退なのよ

今年は優勝って意気込んでたけど、負けたのが貴女たちなら納得できる」

 

「ケイさん…」

 

隊長ということである程度は予測できていたことだが、ケイさんは3年生

この大会終了と同時に引退だろう…なんてったって全国大会は1年に一度しか無いのだから

そのことに対してやけにすっきりとしているケイさんに後ろで控えていた西住が思わずと言った様子で口を開いた

 

「あ、あのっ!」

 

「何?」

 

「最後、4輌しか来なかったのはどうしてですか?

あそこで全車来ていたら負けていたのは私達でした」

 

西住がケイさんに聞いたのはアリサとの追いかけっこを繰り広げていた時のことだった

まぁ西住はぽやぽやしてるように見えて頭は凄く回るから、きっと意図的に数を合わせていた事にどことなく気づいていたのだろう

 

「貴女たちと同じ数だけ使ったの、盗み聞きみたいなつまらない真似もしちゃったみたいだし

逆にその上であそこまで追い詰められた敬意を示してね」

 

「どうして、だってそんな義理は無いじゃないですか

私達は敵チームですし…それに最後なら尚更勝ちたかったんじゃ───」

 

西住の言うことはある意味で当然の話だ、ケイさんがそう言うこだわりの持ち主とは言え

彼女が元いた学校を考えれば敵に容赦をかけるような今回の事態は異例も異例の話だろう、だがそう聞かれて尚のことケイさんは一層笑みを深めて言った

 

「だからこそよ」

 

「え?」

 

「勝ちたい気持ちは当然一緒、でもただ勝てばいいって訳では無いわ

私の思う理想、私の決めた道理に基づいて得た勝利じゃないと意味なんて無いの」

 

同時にケイさんの考え方も最もだ

ただその道程は今の勝利至上主義の蔓延る戦車道においては茨と言えよう

だけれども、恐らくケイさん自身それがわかっていて

それでも人差し指を立てて堂々とこう続けた

 

「That's戦車道、これは戦争じゃない

道を外れたら戦車が泣くわ───」

 

戦争であるなら、どこまでも勝ちにこだわる勝利至上主義でいれば良い

だけれどもこれは戦車道、道に則った試合をするのがその本懐

ではその道とは一体何か?そこにこれという定義こそないが、であるからこそフェアプレーにこだわるのがケイさんにとっての道だ

それらを聞いて思うことがあったのだろう、西住の表情が少しだけ憑き物が落ちたような顔つきになっていた

 

「だから3年間、勿論一筋縄じゃ行かなかったけど

私の道を貫き通せたことは──これから先も自慢かな?」

 

ケイさんはそう言って踵を返し、「また会いましょう」と言い残して片手を振って帰っていく

…正直、ケイさんの語るそれらは甘い理想だと思う…だけどその一方で

 

「…カッコいい人だったな」

 

「うん、そうだね…」

 

ケイさんはケイさんで戦車道の理念を考えれば一つの完成形とも言える、それに本人も言っていたが今日に至るまでは辛く険しい道程だった事だろう

そう思うとケイさんに対する尊敬の念を抱かずにはいられなかった

 

 

 

 

 

 

 

所変わってサンダースの陣営、ケイの帰りを待ち

並んでいた隊列の先頭…ナオミの横にいるアリサへケイは近づいていく

 

「…隊長、申し訳ありませんでした」

 

ケイが目の前に来たタイミングを見計らったようにアリサは両手を後ろ手で組んだ状態で深々と頭を下げる

内容は言わなくてもアリサが勝手に行った無線傍受の事だろうとケイはあたりをつけて、その縮こまった小さな肩にポンッと右手を優しく乗せた

 

「──謝らなくて良いわ、アリサ」

 

「しかし…ッ」

 

何故アリサがあんな行動に出たのか、少なくともある程度はケイも理解しているつもりだ

 

「私のためにやったんでしょう?お世辞にも強いとは言えないものね、私のやり方は───」

 

「…い、いえ、そのようなことは」

 

実際にはそのようなことはあるのだが、流石に本人を前にして言う勇気はアリサにあるはずが無くなんだか怪しげな回答になってしまう

これは不味いと思ったアリサはどう言うべきかと逡巡した後、ここは潔く本心でぶつかるべきだと覚悟を決めた

 

「…どうしても優勝したかったんです」

 

「気持ちはわかるわよ、だけどそれは──」

 

「…だってッ…だって、隊長は…来年にはいないじゃないですかぁ…」

 

震える声を抑えながら、顔を上げて正面からケイを見据えるアリサの目から雫が伝い落ちていく

 

「二軍だった私を見出して、拾い上げてくれた隊長に…ッ

せめて最後くらいは…ッ」

 

「アリサ…」

 

普段は見せないようなアリサの涙ながらの独白に、隣のナオミが彼女の名前をポツリと呟く

周囲を見渡せば彼女を始めとした他の搭乗員達も目に涙を浮かべて悔しそうに下唇を噛んでいた、きっとアリサの気持ちが痛いほどにわかっているのだろう

 

「隊長がいて、ナオミがいて、私がいてこの子達がいる…

この面子で今年こそ隊長に勝利をッ、皆で戦える最後の大会くらい…優勝、したかったんです…ッ」

 

「…もう、何も言わないで」

 

かく言うケイも、皆と戦える最後のチャンスだった事から勝ちたい気持ちはわかっている

来年には大学に進学する彼女だがそこでも戦車道を取るつもりではいる、だけど高校のこのメンバーで戦えるのは紛れもなく最後であるのだから

 

「ありがとうね、アリサがそこまで思ってくれてた事…正直とても嬉しいわ

だけれど、だからこそ…私は決めた道を絶対に外れたくないの」

 

ケイはアリサの両肩に腕を回して子供をあやすように優しく抱きしめた

人が違えば道程も違う、それで言えばアリサとケイはそれぞれ相反している

勝負に対する考え方からまるで違うのだから仕方ない、その一方でそれでこそ自分が惚れ込んで着いていこうと決めた隊長であるとどこかアリサは安心していた

 

「──でも反省会はするからね、来年の貴女達の為にやれることはあるでしょうし」

 

「は、はいぃ…」

 

他校との親善試合やそれに準ずるよっぽどのことが無い限りはここで高校でのケイの戦車道は終了だ

とは言えまだ下の者達に教えられる事がある以上はやることはあるかと涙目のままのアリサに伝え、周囲をグルリと見渡してケイは暗い顔で俯いてた隊員たちに発破をかける

 

「全く、そんな顔してるんじゃまだまだ先が思いやられるわね」

 

少しだけ困ったように眉をハの字にして小さな笑みを浮かべれば各々取り繕うように涙を拭ってケイへと向き直り、それでこそ私の愛したサンダースだとケイは微笑んだ

 

「あの子達、きっと来年はもっと強くなってるわよ」

 

そして再度、正面のアリサへ視線を移してその両肩を激励の意を込めて軽く叩く

 

「頑張れ、次期隊長───」

 

「──はいッ!」

 

決意を新たに力強く返したアリサに満足気に頷き、踵を返したケイはこの3年間に思いを馳せていた

 

(何度も悔しい思いをしたけど──納得の行く3年間だったわ)

 

数多の思い出が脳裏を過ぎり、その度に少しずつ歩く速度が早くなっていく

後ろからは残した皆からの視線を感じるが気にせずに、だけどそんな思いとは裏腹、次第に視界がボヤけて行く事で自然とケイは足を止め───

 

それと同時にどうしようもない現実を突きつけられてしまう

 

 

(あぁ、終わっちゃったんだなぁ…)

 

 

ケイの瞳から一筋の涙が伝って落ちた

 

 

 

 

 

 

*1
杉野のこと

*2
厳密には違います








この間ふとガルパンカテゴリーで週刊と日間ランキング見たら当作がそれぞれ2位と1位にいました
…あれ?もしかして私が思っているよりこの作品って愛されてる?って思いましたが調子に乗ってしっぺ返しくらいたくないので謙虚に行きます
あくまで見てくれる皆様方あっての評価なわけですし

さて当作においてアリサは過去の経験から原作よりは性格が改善されており、ヒステリック気味(・・)であってヒステリックではないです
あと長かったサンダース戦もこれで終わりを迎えました、あとは閑話だとか杉野の過去を調べ直して桃ちゃんの胃をぶち殺したりしてアンツィオ編に入る感じです

はい、話を変えまして
もう毎回書いてるのでそろそろ見飽きていると思いますが、大事なことなので何度も言わせていただきます
励みになりますのでお気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします
一応話が進むに連れてシリアスタグが息をし始めるので、そしたら世界観を守るためにあまり前書きや後書きは長々書かないようにするつもりなので
邪魔と思ってる人はもう少しだけ辛抱いただければ…と

そして毎度の如く誤字脱字は発見次第直して行きます

以上です
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