ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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シリアスさんがアップを始めました
後半は初めての掲示板形式に挑戦、とにかく一度に複数のキャラを動かすのが苦手なので上手く使えてるかはわからんです
あと最近は話数伸びてきてサブタイトル考えつかなくなってきた事が悩みです






虚像

 

夕暮れ特有のオレンジ色が空を埋め尽くす頃、大洗陣営の撤収作業が完了

あとは学園艦に戻るまでの段取りを決めようと話し込んでいた生徒会の3人の下へ、仏頂面を引っ提げた杉野がやって来た事で3人は会話を止める事となった

 

「…杉野ちゃ〜ん、何かあった?」

 

別に彼女の表情が不機嫌そうにムスッとしているのはいつも通りの事、しかしその様子が上手く言葉にこそ言い表せないがどこかいつもとは違うと感じ取った角谷は

やれやれ今度は一体どんな痛いところを突かれるのかと辟易しそうになりながら尋ねる、角谷からして彼女の相手はとても気を使い怖いものだ

自分達3人を除いた他の戦車道履修者、特に西住達あんこうチームと彼女の担当する1年生達ウサギさんチームには端から見ていてもかなり優しめで練習時などにおいても根気強く丁寧に向き合っている一方で

彼女本来の性質は暴、選択を一つミスればいつ爆発するかわからない爆弾のような存在である

少しはその優しさをこちらに向けて欲しいとも思わなくはないが、角谷には当たりがキツくなる原因を作っているのが自分である自覚があった為に敢えて今の関係のまま落ち着くことを受け入れていた

 

「………」

 

「…杉野、見て分かる通り我々は今忙しい

用が無いのなら───」

 

恐らく彼女は自分たちを嫌っているため、用もなければ自分から来ることはない

そう思っていた角谷だが彼女は特に口を開くことは無く無言のままジッと自分たちを見つめてくる、ある種何かを責め立てるようなそんな視線に居た堪れなくなったのか河嶋がそう言って切り上げさせようとした途端

彼女ははぁと小さく溜め息をついて口を開く

 

「──なぁ、お前ら俺に何か隠してねぇか?」

 

「どうしてそう思うのかな?」

 

思わず反射的に返してからしまったと角谷は心の中で声を上げる、杉野のように頭が回る子を相手取った場合食い気味に否定しては隠し事をしていると言う事を肯定しているように取られても仕方がない

…いや隠してる事は確かに幾つかあるためその中のどれだろうかとこの状況から上手く言い包められる言い訳を探して顔に出ないように必死になっていると目の前の彼女の視線が更に鋭くなった

 

「…思えば急に戦車道を復活させようってのもおかしな話だったよな、文科省から要請があったとは言え───

お前らはどちらかと言えば本来大洗の学園艦と無関係な筈の事には興味無さそうだしな」

 

杉野からの指摘に思わず言葉が詰まる、それは角谷だけでなく小山と河嶋の二人も同様だ

何故なら3人にとってそれは一番されたくない指摘に他ならなかった、いつまでも隠し通せる物では無いとは言え

まさかこの戦車道の全国大会で優勝できなければ廃校になりますなど口が裂けても言えるはずがない、それに彼女が知ってしまえば半ば無理矢理引き込んだ西住にまで知れ渡ってしまう事だろう

それはどうしても避けたかった

 

「…元々お前ら、職権乱用は目に余る所があったが学園に対して害になることはしたこと無かったものな

──なら学園関連か??」

 

「そ、そそ、そんなこと無いぞ!?い、いきなり何を言い出すんだ!!?」

 

学園関連、恐らく学園の進退に窮まること──つまりは存続の有無

口外に含まれた色んな可能性について問われればその空気に耐えられなくなったのか物凄く動揺した様子の河嶋が無理矢理にでも誤魔化そうと口を開き更に状況が悪くなった事に角谷は内心で深くため息を吐きたくなり小山は表情を変えないまでも小さく「桃ちゃん?」と呟いた

 

「…確かに私達は杉野ちゃんに

いや、杉野ちゃん達に隠してることはあるよ」

 

「……」

 

それで、と続きを促すような視線に逃げ出したくなる気持ちになりながらも角谷は自身のスカートの裾を握りしめて続けた

 

「──だけどごめん、その理由については今はまだ誰にも話すことは出来ないんだ

杉野ちゃんにも西住ちゃんにも…絶対にね」

 

そこまで拒絶の意を顕にしたからか、はたまた最初からすぐに理由を正直に話すことは無いだろうと踏んでいたからか

諦めたように杉野は溜め息を吐いてから自身の頭をガシガシと乱雑に掻いた

 

「…わかった、なら今はそれでいい

今は(・・)、な?」

 

「うん、ありがとね」

 

「別に、いつか話してくれんだろうな?」

 

何とか彼女に隠し通すことが出来た反面、やったことと言えばただ問題を先延ばしにしただけに過ぎない

もしも優勝出来て廃校を覆すことが出来たのなら、その時は大手を振って彼女に…いや彼女達にも話すことが出来るだろう

ただし、それも優勝出来た時の話だ

もし途中で負けて廃校が決定したのなら絶対に話すことはない、ここまで恨まれて然るべきことをして何を今更と思わなくもないが、その重圧に彼女達を始めとした戦車道チームの皆を巻き込みたくはないのだ

 

「はぁ、難儀だなお前ら」

 

ポツリと呟いて杉野は踵を返して去っていく、その背中を見つめて

角谷はいつかちゃんと話せるような結果になれば良いなと思った

 

 

 

 

 

 

 

杉野が去って少し経ち、重い沈黙が支配する中

その静寂を打ち破るように河嶋が角谷へと問いかける

 

「宜しかったのですか?会長

杉野には洗いざらい話しても良かったのでは」

 

「…かーしまはそう思う?」

 

普段であれば杉野としょっちゅういがみ合ってる河嶋にしては珍しい、そう思いながらも聞き返せば苦い顔をしながら「はい」と言って続けた

 

「放課後に毎日アイツの講習を受けて、更に今日の試合を鑑みれば流石に認めざるを得ません

──アイツは頼りになります」

 

まぁ最も頼りになる事については隊長を務める西住も決める所はしっかり決めてる為にそこは同じだとそれはそれは悔しそうにしながら言う河嶋に少しばかり成長を感じて角谷と小山は思わず笑ってしまう

 

「アイツなら或いは、きちんと理由を話せば協力もしてくれるかも知れません」

 

「そうかもね」

 

だが同時にだからこそ話せないのだと角谷は続ける、確かに杉野ならばきちんと協力をして欲しい理由を話せば更に積極的に力になってくれるかも知れない

しかし今それを選択することは出来ないのだ

 

「戦車道を復活させようと決めた時、どんな事があってもアタシら以外の生徒はその重圧に巻き込まないって決めたでしょ?」

 

「それは──ですが」

 

珍しくいつになく河嶋は粘る、それを鬱陶しいとは思わない

学園の為を思った最善策の延長線であることを角谷は理解しているし、何なら河嶋の言うことも一理あるとすら思っている

だけど少なくともまだその選択は取れない

 

「…それにさ

あの子が一度戦車道から離れた正確な理由、まだわかってないでしょ?」

 

「…はい」

 

隊長である西住が戦車道から離れた理由については河嶋も調べがついていた、10連覇のかかった決勝で半ば事故のようなあの出来事

人命を優先した優しい彼女らしい出来事は、しかし連覇を逃した事で心のない者達の非難に合い彼女は逃げるように転校してきた

しかし逆に杉野が戦車道から離れた詳しい理由については河嶋でもまだ深く探りきれていなかった

 

「恐らくは、だけど

杉野ちゃんの場合は西住ちゃんより闇が深いと思う」

 

「え…?」

 

驚くような声を上げた河嶋に角谷は少し昔の記憶を探るように小さく唸りながら話し始めた

 

「少し察しはついてると思うけど一時期戦車道を齧ってた事があってね」

 

「まぁそれは──」

 

「やけに詳しいなとは思ってましたけど」

 

存外察しがついていたのかそれほど驚かない様子の二人にちょっとだけつまらないなと思いながら角谷は続ける

 

「その頃杉野ちゃんは宮城の戦車スクールにいたから、勿論会ったことも話したことも杉野ちゃんが大洗に来てからしか無いんだけど

噂だけは常々、多分近い年代の戦車乗りで知らない子がいないくらいの有名人だったんだよね」

 

「…調べのついてるだけでも、とんでもない戦果を上げてますからね」

 

直接関わったことはないまでも噂だけは遠く離れた茨城の角谷の元まで届いていた、まぁそれは実際に杉野が大洗にやってきて

河嶋に杉野の事をある程度調べさせて発覚するまでは一種の都市伝説の類だと思ってはいたが

 

「けど、有名だったのは別に杉野ちゃんだけじゃないんだよ」

 

「と、言いますと?」

 

続きを急かすように聞く河嶋に、何分古い記憶なためか出かかった記憶を無理にでも呼び覚ますかの如く一尺ほど置いてから角谷は再度口を開いた

 

「杉野ちゃんが前にいた剣部隊、3つの戦闘戦車隊と偵察隊で構成されたチームだって言うのはかーしまも調べてわかってるだろうけど

例えば杉野ちゃんが隊長をしていた戦301(新選組)の副隊長も【戦車戦の神様】って呼ばれたくらい有名で腕の立つ子だったんだよ」

 

「杉野の隊の副隊長…ですか」

 

そもそも剣部隊自体が腕は立つもののあまりにも無法者が多すぎて表の戦車道からドロップアウトした者達が数多くを占めていた、しかし剣部隊においては素行面よりも技量優秀な者を優先し

全国から集めていた為に素行は悪くとも腕はピカイチな者達が殆どで、素行問題さえ無ければ一人一人が各校隊長クラスと言われたほどである

 

「それと戦407(天誅組)の隊長は私と同い年だから当然耳に入るし、戦701(維新隊)の隊長も噂は聞いたことがある」

 

だけど、と付け加えてから角谷は続けた

 

「ある時期からめっきり聞かなくなったんだよね」

 

「え…?」

 

「で、噂の止まった時期から割と直ぐに

杉野ちゃんは戦車道辞めてるんだ」

 

これって偶然なのかな?そう話を切り上げた角谷に小山と河嶋は何も言えなかった、いや正確には

多少は調べていた河嶋は確かにある時期から3人の情報が抜け落ち、二代目もしくは三代目として赴任した者達の情報に切り替わっていた事に気がつく

まるで意図的に隠されたような存在、そしてそのすぐ後の杉野の引退はあまりにも偶然にしては出来すぎているのではないか

そう思った河嶋は少し気味が悪く感じた

 

「と言うわけだから杉野ちゃんの事が洗いざらいわかってない現状は、あの子に余計なものを背負わせたくないんだよね」

 

「…わかりました」

 

「だから何かわかったら報告、そこから一緒に考えよう」

 

なんだかとてつもなく闇を感じる内容に河嶋は気乗りしなかったが、それでも角谷が望むならば今日にでもまた調べ直してみようと思うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナオ〜!」

 

夕焼けを背に学園艦に帰るまでどう暇を潰そうかと考えていた所、名前を呼ばれて振り返ればそこには声をかけてきた武部を筆頭に西住・秋山・五十鈴・冷泉のイツメンことあんこうチームの5人がいた

 

「…おう、どーした?」

 

「一回戦せっかく勝てたわけだし、皆でお祝い行こうと思って」

 

どうやら打ち上げのお誘いに来たようだ

特に予定はない為断る理由はないし、生徒会の件で何やら面倒事の雰囲気を感じ取った為に甘いものでも食べて溜飲を下げるかと結論付けた

 

「…良いけど、俺今日車で来てねぇよ?」

 

「まだ出港まで時間あるでしょ?たまには歩きでも良いじゃん」

 

本日はなんと珍しく冷泉がちゃんと武部アラームで起きれたらしく前回の聖グロのような事は起きなかった、その為戦車の移動には普通に間に合ったのでいつも移動で使ってる愛車は学園の駐車場に置いてきたのだった

念押しでその事を伝えれば別に問題ないと武部が頷き他の面々も特に気にしないと首を縦に振ったのでそれなら良いと伝える

 

「で、行く場所は決まってるのか?」

 

「実はまだ…」

 

「武部殿がひとまず杉野殿を誘ってから考えようと言ってましたので」

 

誘いに来たのならば既に目的地は決まっているのだろうか、そう聞いてみれば実はまだ決まっていないと西住と秋山から教えてもらった

…武部って割と行き当たりばったりなタイプ?

 

「色々考えてたんだけど、ナオ何か食べたいのある?」

 

「んにゃ、武部に任せるよ」

 

こんななりでも一応は女子高生をやらせてもらっている手前、甘いものは基本好きだ

極論を言ってしまえば何でも良いとも言えるし、今日なんかは特に何も考えずに胸焼け覚悟でデカ盛りスイーツ等に挑戦してみたくもある

 

「じゃあ特大パフェでも食べに行く?」

 

「行くッ」

 

デカ盛りと言うことならと武部がパフェを提案した所で何故か即答したのは冷泉だった、いやこの子ほんと甘いの好きね

…その割には武部と違って腹周りに肉はつかないみたいだけど

 

「いッてェ!?な、なんじゃあッ!!?」

 

「…今何か失礼なこと考えなかった??」

 

一切口にも顔にも出していなかった筈なのに物凄い勢いで武部に頭を叩かれた、なんなの?エスパーなの??

 

「今のは杉野さんが悪いかな?」

 

「ちょっとデリカシーに欠けてましたね」

 

武部に非難の目を向ければ西住と秋山から援護射撃が飛んでくる、俺の味方はいないのか?

五十鈴の方を向けば笑って誤魔化された、冷泉の方を向けば───

 

「わかっていないな、杉野さん」

 

「ほう?」

 

やれやれと言った感じの冷泉が芝居がかった様子で口を開き、こう続けた

 

「沙織はこの体型だから良いんだろうが」

 

「マコッ!!」

 

盛大に大ボケをかましたことで即座に武部から怒号が上がる

ただ、冷泉相手には手を上げない辺り最近俺の扱いが武部含めて皆雑なんじゃないかなーっと思ったり思わなかったり…

んだけどまぁ、こいつ等といると中々面白いから良いんだけどねー

 

「…ん?」

 

等と思ってると突如周囲に猫の鳴き声が響いた、パッと見る限り周囲は開けていて猫などいないのだが…

 

「あ、私だ」

 

そう言いながら冷泉がケータイを取り出す

猫の鳴き声が着信音?…へぇ、ちょっといいなぁ

 

「?知らない番号…」

 

ポツリと呟いてから冷泉はそのまま電話に出る、え?出ていいんか?変な勧誘電話だったりしないかそれ

 

「…え、…はい」

 

そんな思いとは裏腹、というかそっちの方のがある意味良かったのかも知れない

一言二言何か会話を挟むと目に見えて冷泉の様子が普段よりもおかしなものになっていく

通話を終える頃にはケータイを持つ手は震えていて、すかさず建部が何かあったのかと聞くものの何でもないと答えながら持っていた携帯を落としてしまう辺り重症だ

 

「そんな様子で何でもないわけないじゃないッ!」

 

「…おばぁが倒れて、病院に───」

 

武部の最もな指摘に隠しきれないと判断したのか、その電話内容を教えてくれる

…なるほどそれは確かに一大事だ、出来ることならすぐさま病院へといきたいところではあるが───

しかし大会で本土に戻ってきてるとは言え大洗まではかなり距離があるし、他の問題もある 

 

「そ、そんな…は、早く、病院に!!」

 

「で、でも、大洗までどうやって?」

 

「学園艦に帰港してもらうしか…」

 

「完全に撤収できるまでは、まだ時間も掛かるでしょうし…」

 

どうにかして大洗まで冷泉を送り届けたいわけではあるのだが、学園艦在住な手前

皆が口々に案に詰まるように中々一筋縄では行く問題ではない

そうして皆が頭を悩ませている中、秋山がふと閃いたように「あッ!」と声を上げる

 

「杉野殿ッ!紫電改は!?」

 

秋山の指摘に思わずなるほど、とは思ったが保管しているのが学園艦の俺の工場(こうば)な為結局は帰れなければ意味がない

たらればの話をしても仕方ないのだが、前回冷泉を迎えに行ったように近くまで車で来てるならそそくさと一足先に帰って冷泉を送り届ける事も出来たのだが…

 

「しでんかい?何それ」

 

「杉野殿が所有してる戦闘機です」

 

「ナオそんなの持ってるのッ!!?」

 

事前に知ってる西住は驚かなかった物の、飛行機を持ってると言うことで五十鈴も冷泉も…特に武部が驚いた様子だった

冷泉からは藁にも縋るような期待のこもった目で見られるが…

あぁ…これ言うの罪悪感半端ないな

 

「…杉野さん」

 

「──勿論望みとあらば飛ばしてやるがね、結局一度は学園艦まで戻れなきゃ意味がねぇぞ

今はまだ帰る算段もついてねぇだろ…」

 

いまだ帰る算段がついていないのか生徒会の3人達から帰りの号令は掛かっていない、帰れさえすれば問題は解決できるのだが

そうは頭でわかっていてもジッとしていられないのだろう、冷泉はその場で制服に手をかけて脱ぎ始めた

 

「ち、ちょっと麻子!?何やってるのよ!」

 

「泳いでいくッ!」

 

「無茶な!?」

 

武部が慌てて止めようとするも冷泉は聞かない、まだつるみはそんなに長くは無くとも一度決めたら中々に頑固な性格だと言うのは薄々感づいてはいた

しかしそれがここで悪く作用するとは思わなかった、現に五十鈴も無茶だと止めに入るが服を脱ぐその手を一切止めない

…まぁ、俺も同じ立場ならきっとジッとしてはいられないだろうからあまり強く言えないが──

 

「冷泉、少し落ち着け

ここから大洗まで泳いで向かうことがどれほど無謀か、いつものお前ならすぐに分かる事だろう」

 

「…止めないでくれ杉野さん、私はどうしても大洗に向かわなくちゃいけないんだ」

 

冷泉の動きを止めるように両肩を掴んで無理矢理服を脱ぐのを中断させるが、今の動揺している冷泉には届かないのか何とか抜け出そうと身じろぎしている

 

「冷泉、とにかく一旦落ち着けよ

学園艦まで戻りゃひとまず何とかなるんだ…そしたら俺が必ず大洗まで送ってやる」

 

「…わかった」

 

再度視線を合わせてまっすぐ見据える事でようやく落ち着いたのか抵抗が無くなる、あとは少しでも早く学園に帰れれば…

てか号令まだ掛からねぇのか?ちょっと遅くはないか??

一度は落ち着いたとは言え時間経過と共に冷泉にも焦りが生じるはずだ、ともすればまた同じようにやはり泳いで向かうと言い始めるかも知れない

 

「私達のヘリを使って」

 

何か他にも打つ手はないのか…そう思った時、思わぬ方向から助け舟が飛んできた

この声は───

 

「急いで」

 

「ッ隊長、こんな子達にヘリを貸すなんて───」

 

声のした方へ振り向くとそこにいたのは黒森峰の制服に身を包んだ西住の姉、姉住さんとその忠実なる下僕の───誰だったけ?

…そう言えば前回口論で終わったから名乗ることもしなかったわけだし、名前知らねぇんだよな

 

「西住、西住」

「?どうしたの…?」

「…あいつ、誰だっけ」

 

というわけで、元は西住の知り合いと言うこともあり西住にこっそりと耳打ちして名前を聞き出す

流石に手助けしてくれるかも知れない奴の目の前で誰?って言えるほど神経は図太くないのであくまでこっそりだ

 

「あ…そう言えば前回名乗る暇も無かったもんね、彼女は逸見エリカさんって言うの」

「なるほど、荒野に咲く小さな花(その名はエリカ)か…覚えた」

「…多分そっちじゃないと思う」

 

これ西住に通じるんだ…

そういや忘れかけてたけど元黒森峰だものな、だけどドイツベースの黒森峰でエリカって名前絶対弄られるだろ

俺なら時間と場所をわきまえて弄り倒すね

 

「──操縦頼んだわね」

 

そうこうしている内に当初渋っていた逸見も姉住さんが言い包めてくれたのか、逸見は少し離れたところに置いてあるヘリのエンジンを起動させる

しかし借りが出来たな…

 

「……なによ」

 

何しろ緊急時な為、使えるものなら猫の手だろうが借りたいほどなのだ

一言くらい礼は言うべきだと感じてヘリに近づくと操縦席から逸見に物凄い勢いで睨まれる、こないだの件もあるしそりゃそうか…

 

「手を貸してくれて感謝する、冷泉をよろしく頼む」

 

「…チッ、はぁ〜…調子狂うわねあんた」

 

搭乗口が開いてるのでお互いの会話はギリギリ聞き取れるのだが、どの面下げてって話でもあるし舌打ちくらい甘んじて受けるべきだろう

そのまま深々と頭を下げ続ければ居た堪れないのか「顔上げなさい」と聞こえてきた為に視線を戻すと逸見は苦虫を口いっぱいに頬張ってそれを一気に噛み潰したような苦々しげなんて物では無いレベルの顔をしていた

 

「…あんた達隊長に感謝しなさいよ?」

 

「あぁ」

 

とりあえず伝えるべきことは伝えた為ヘリから離れれば入れ替わるように冷泉が機内に乗り込む、が先程の動揺した様子がよっぽど心配だったのか武部も追加で乗り込み機体は地上を離れていった

 

「…ありがとう」

 

「……」

 

ポツリと呟くようにお礼を言う西住だったが姉住さんは何も言わずに踵を返して立ち去ろうとしており、無視されたことで西住は少し悲しそうな顔を──いや、あれ多分ブレード音で本当に聞こえてないだけだ

 

「姉住さ〜んッ!」

 

「…私の事か?」

 

と言うわけで西住の悲しむ顔は見たくないので声を張って呼び止めてみる、振り返った姉住さんは少し困惑気味な顔をしており

…なんだか西住と秋山からも「コイツまじか」みたいな視線を感じた

 

「西住が、何か言いたいことあるみたいですよ?」

 

「…?みほ、どうかしたの?」

 

「あ、あの…えっと」

 

が、いざこういう状況になると気弱な性格が災いして尻込みしてしまうのが我らが隊長様である

…ここは一つ背を押してやるとしよう

 

「ほら、西住…お礼言いたいんだろ?」

「あぅ…で、でも呼び止めちゃって迷惑じゃないかな」

 

西住は何故か血の繋がってる姉に対してビクビクとしているがそこまで思い悩むことはない筈だ

何せ───

 

「大丈夫、妹の事を迷惑だなんて思う姉なんかいねぇよ」

「…うん、ありがとう」

 

そりゃ言葉の綾や口論の末に心もとない事を言ったり邪険にしてしまう事はあるかも知れない、しかし恐らく本心から妹を嫌いな姉なんて居ないはずだ

──少なくとも俺はそうだねッ!!

 

「…あの!ありがとう、お姉ちゃん…」

 

「うん」

 

勇気を出してお礼を言う西住に姉住さんは表情こそ変わらないがどことなく照れくさそうに小さく頷いた

…あれ?俺の間違いじゃなければ、姉住さんってもしかして顔に出ないだけで西住のこと大好きじゃね??

 

「──で、帰りどうするんですか?」

 

「…?」

 

「おかげさまで俺等は助かりましたけど、ヘリに乗って来たんですよね?

どうやって黒森峰に帰るんですか?」

 

「あ」

 

ふとこのまま解散したらこの人どうなるんだろうと思って聞いてみたら特に何も考えていなかった様子だ、もしかして西住が困ってるの見て後先考えずに行動しちゃったのかな

…こういう時なりふり構わないところ西住に似てると言うか、西住が姉住さんに似たのだろうか?

 

「…お姉ちゃん?」

 

「……」

 

姉住さんの反応を見て察したのか西住が少し引きつった表情を向けると無言で顔を逸らす

…まぁ、お互いに想い合ってて良い姉妹なんじゃないかね

 

「多分そろそろこっちも解散の号令掛かるんで、そしたら俺送りますよ」

 

逸見が折り返して戻ってくるのにもかなりの時間を有するだろう、流石にそれまで一人で置いてけぼりは可哀想だ

悪い人じゃないってのは今回わかったわけだし

 

 

 

 

 

 

 

 

結局解散の号令が掛かるまでアレから30分ほど時間を要した、というのも学園艦が停泊している最寄りの漁港までの一般道は既に帰宅ラッシュのため使えず

裏道多様でそこまで混み合わないルートを交通規制を掛けてもらったようだ、戦車で交通の流れ乗ろうと思ったらアスファルトが逝くため仕方がない

大きい学園みたいに運搬車両があればまた違うのだろうがそんなお金も運転する人員もいないためこうなった

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

そして俺は今、近藤さんの操縦する戦車(トヨタ・ハイエース)の助手席に座っており

その後ろ、2列目のシートには何故か姉住さんが居心地悪そうにちょこんと座っていた

 

(ど、どうしてこうなった…?)

 

確かに俺は姉住さんを送ると言った、だけど学園艦に戻るまでは戦車の移動があるので

てっきりしばらく会えないであろう西住達の乗ってるIV号戦車で一度学園まで来てくれるものだと思っていた、のだが何故かいざ移動となったら俺の後ろから離れず

流石に気不味いだろうから会ったこともない姉住さんと1年生達を会わせるわけにも行かず近藤さんの戦車(トヨタ・ハイエース)に乗り込めばそのまま一緒に乗ってきたと言うわけである

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

そして訪れる静寂の時間、無ッ!圧倒的、無…ッ!

ここに至るまでの会話…!ゼロッ…!!

運転席の近藤さんから「この空気を何とかしろ」と視線で訴えかけられるが生憎こちらもそこまで親しくない人間との会話デッキなんて天気のこと聞くぐらいしかねぇぞ

…昔だったら結構ズケズケ行けたんだけどなぁ、なーんか知らない間に話しかける際に余計なこと考えるようになっちまっていつの間にかやらなくなったんだよな

 

「あー…良かったんです?」

 

「ん?」

 

「あぁ、いや…せっかく会ったんだから西住のいるIV号の方に乗るかなって思ってたので」

 

等と思ってたら俺がまるでチキって他人に踏み込めない小心者な気がして来てその事実に腹が立ったため敢えて踏み入ることにした

そもそも媚びず諂わず囚われず、ギリギリアウトのラインを突っ走るのが俺、当然西住の姉が相手だろうが母親が相手だろうがその適応内だ

さぁ踏み入った事で姉住さんはどう返してくるかな?

 

「…出来ればみほには言わないで欲しいが」

 

「はぁ」

 

「気不味いんだ、凄く」

 

表情こそ変わらないものの、一段と落ち込んだ様子で語る思っていたよりもしょうもない理由に俺は思わずシートベルトをしているにも関わらずズッコケそうになった

このコミュ障姉妹め…

 

 

 

 

 

 

学園から工場(こうば)へ向かうまでの道中、ヘッドライトと改造車特有の低い排気音が暗闇を切り裂いて進む中

車を近藤さんの戦車(トヨタ・ハイエース)から俺の車に変わっても尚、助手席の姉住さんとの会話はまだ続いていた

 

「だからな、あの試合があって──私は」

 

「まぁ判断の難しい場面でしたからね」

 

「だけれど、それでみほは───」

 

「はぁ…」

 

「──わかるか…ッ!?」

 

あれから姉住さんの気不味さの要因等をそれとなく聞き出して適度に相槌を打ちながら会話を広げていき、お互い姉と言う立場な事も相まって更に会話が加速していった

…ほぼほぼ一方的であり、会話と言って良いかは不明であるが

なんか無口で無表情の第一印象とは事なり、会話自体は好きなのか話を振ればちゃんと返っては来るし

特に西住の話題ともなれば所々ポーカーフェイスも崩れている

今話している去年の決勝での出来事に関して等はこれで既に5周目に突入した

 

「わかりますよ、俺も二人妹がいる身ですから」

 

「そうか」

 

一応会話内容はちゃんと聞いてはいるのだが、何度もループしてる話については相槌だけを打つに留めるし

特に姉住さんの言うあの一幕については結局の所どっちも正しくてどっちも間違っているようなとても繊細な内容なのでどこまで言っても肯定まではしない

 

「…と、つきましたよ」

 

「?ここは───」

 

そうこうしている内に自宅近くのいつもの工場(こうば)へと到着、邪魔にならないように敷地の外れへと車を止めて降りると

姉住さんは忙しなく辺りを見渡していた

 

「まぁ、俺の秘密基地みたいなもんですわ」

 

車からおろしたシャッターのリモコンを起動させ、中のものが顕になるにつれて少しだけ驚いたように姉住さんは目を見開き興味深そうにしている

この辺は姉妹揃って反応が似ているな

 

「…ちゃんと大事にしているんだな」

 

「あ、わかります?」

 

内部に備え付けた作業台や端に置いた工具箱などへ視線を移して姉住さんがポツリと呟く、その日出た汚れやゴミは翌日に持ち越さないようきっちり処理するし工具も毎回使った後に手入れは欠かさない

やはり見る人が見ればわかるようだ

 

「…飛行機」

 

そしてその次に視線を移したのがこないだ動かしてまた使う機会が来るかも知れないと建物中央に鎮座している紫電改

いつもはもうちょっと奥の端に斜めに止めているが今は出しやすさ重視だ

 

「私はお節介だっただろうか?」

 

「いえ、いつ帰れるかわからない状態でしたから助かりましたよ」

 

何故だかわからないがこの姉住さんは会話をする際に言葉をかなり短く端折る癖がある、今回は俺が空を移動できる足を持っていたのにヘリを使わせた結果自分が帰れなくなってこちらに負担を強いている事を言っている、のだろうか?

まぁ本人では無い為に全部が全部はわからないが、あの時は出来ることなら1秒でも早く冷泉を送ってやりたかったので助かったのは本当だ

だから軽く頭を下げてそうお礼を言うと少しだけ意外そうな顔でポカンとしている

 

「ずいぶん、戦車から降りると雰囲気が変わるんだな」

 

「え?」

 

「今日の試合を見させて貰ったが、もっと荒っぽい性格だと思っていた」

 

「…それ、どうにか忘れてもらうことできません?」

 

一気に恥ずかしくなった俺がそう言うと姉住さんはこないだの件もあるし、と呟きながら少し楽しそうに笑った

 

「ま、まぁほら、売り言葉に買い言葉ってあるじゃないっすか?」

 

「あの件に関してはエリカも言い過ぎていたからな、お互い様だろう」

 

意外な事に喫茶店での一件は両成敗と言うことで特に姉住さんからは問題ないとの事だった、いやこっちの事情を知らなければ逸見が当たり強い理由も確かにわからなくもないけどさ

…まぁあそこのあれは悪手だったし何なら他にも飛び火したことも相まってついカチンとなってしまっただけで

 

「…一つ、聞きたいことがある」

 

「はい?」

 

聞こうか聞くまいか、少し迷ったのであろう

姉住さんは直前まで考え込む様子を見せながら、不意に真剣な表情でこちらを見つつそう切り出してきた

 

「その、…みほは、私の妹はこっちで上手くやれているだろうか?」

 

上手く…、きっとその言葉に詰めた思いはそれこそ色んな意味での事だろう

こちらを見つめて返答を待つ姉住さんのその表情はどことなく不安そうだ

…やっぱこのお姉ちゃん西住のこと大好きじゃん

 

「勿論、自慢の隊長です」

 

「そうか…」

 

その不安を払拭してやるべく、心配はいらない旨を伝えると姉住さんは安心したように小さく笑みを浮かべる

気づけば当初の予定とは裏腹にシスコン()達の妹談義はまだもう少しだけ続くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はほぼ同時刻、場所を大洗校舎のPCルーム移すと一人の女子生徒が一つのパソコンと向き合って何やら調べ物をしていた

 

「出来れば今日こそ…真相にたどり着きたい、が」

 

モノクルにチョーカーという特徴的な装飾品を身に着けた彼女は大洗女子学園が3年、生徒会広報の河嶋桃だ

現在は数時間前に生徒会長の角谷から言われていた『杉野の過去を洗いざらい調べる』という任務の真っ只中だった

もう日も完全に落ちており、周囲の教室で電気がついているのはこのPCルームのみ

別に生徒会名義のパソコンはあるし、何なら家に帰ってからでも出来ることではあるもの

本当に今日も調べ上げられるのか、そもそも杉野の周りに何があったのか

いろんなことで得も言えぬ不安を感じた彼女はそれらをかき消して集中できるように一人黙々とパソコンを操作している

 

(やはり、載っていないか…)

 

しかし今までがそうだったように、そうそうまとめサイト等が更新されている訳でもない

それは公には杉野は既に2年前に引退しているため仕方のないことでもあった

 

(にしても、見れば見るほど───)

 

以前見たものと代わり映えのしない記事を見つめ、その中で彼女が最初にいた宮城の戦車スクール

そこからごく僅かに短期間在籍したストリートの個人戦車チームを挟み、現状彼女の最後の在籍となった松山第343戦車隊(剣部隊)での戦歴をざっと見て

いつも思う疑問点がある

 

「…なんでアイツ、大洗(ウチ)に来たんだ?」

 

河嶋自身操縦以外の全てを担当しているために動く敵戦車を撃破すると言うのがどれほど難しいことか嫌でもわかる、何せ未だに1輌撃破は愚か弾を当てたことすらないのだ

それを思えば殆どタンカスロンという非公式戦で打ち立てたものとは言えその撃破数が並外れているというのは理解できる

同時に、だからこそ画面に描かれたその驚異的な戦果を生み出した彼女が何故大洗に来たのか余計にわからなくなってしまうのだ

 

 

─────────

【戦績】

 

 

20☓☓年3月19日〜20☓☓年8月1日

 

 

個人撃破 202輌

 

共同撃破 429輌

 

 

─────────

 

「…コイツ本当に人間か?」

 

一緒に表示されている日付的に、彼女が剣部隊にいた小学六年の終わりから引退した中学3年の夏までの僅か2年5ヶ月で総数600輌以上の戦車を撃破している

最初は彼女がスクールにいた頃からの約7年間のでの撃破数かと思っていたがスクールの時も個人チームの時もそれぞれ異なる戦果を上げているのでこれは剣部隊所属時だけでの戦果だと推測が出来る

そして数値がおかしいのは何も撃破数だけじゃない

 

(総出撃回数2500回以上に最終搭乗時間7000時間以上…?

イカれてるだろ───)

 

約7年間を総合して算出された数値ではあるものの、出撃回数や戦車への搭乗時間もまるで桁が違う

見れば見る度に戦車道が生活の全てと言わんばかりに時間が費やされているにも関わらず、彼女は全てを捨てるように大洗に来た

脳裏に角谷の話が過ぎり、確かにこれは思っている以上に闇が深そうだと河嶋の頬に汗が伝い落ちる

 

(…今日はやめて閉じてしまおうか)

 

途端に逃げ出したくなるものの即座にかぶりを振る、今日こそはと意気込んだのだ

まだ触りの部分なのに逃げ出せない、そう思って別サイトへ飛んで見ればそこには杉野を始めとした他の戦車隊員達の写真が掲載されているサイトに出た

ご丁寧に一つ一つ解説がついていて、マウスをスクロールして画像の詳細を見ればそれぞれの写真には何隊の誰が写っているか等が事細かに記載されている

 

「あッ」

 

そしてその中で一つの写真を見つけた河嶋は思わず声を上げる、それは今よりももっと幼い杉野と顔に大きな火傷痕が残る少女とのツーショット写真

その写真の詳細には以下のように記されていた

 

《▲ 20☓☓年6月、江田島戦車スクール宮城分所にて撮影

左、杉野直緒(のち戦301【新選組】隊長)

右、菅田翔希(のち戦301【新選組】副隊長)》

 

(そうかッ杉野がダメなら───!)

 

杉野に関して調べてわからないのならば、その入れ替わっている副隊長本人の方を調べれば良いのではないか

そう思った所で河嶋は検索欄に当該副隊長の名前を貼り付けて検索する

 

しかし

 

「…ん?個人ではヒットしない…」

 

角谷の話では副隊長である菅田という少女もかなりの有名人だったと聞く、それならば個人で纏められてもおかしくはない

そう思ったものの結果は空振りで先程のようにいくつかの写真や本当に簡易的な選手プロフィールが記載されているだけだった

 

(結局今日もダメだったか…)

 

検索結果を下へスクロールしていくが結果は同じ、また本日も空振りだったかとページを削除するためにマウスを動かして

一つのサイトが目に止まった、そこに書かれていたのは───

 

《『結局何だった?』松山第343戦車隊【剣】について語るスレ》

 

ただの掲示板サイトの一つのスレッド、最終更新は今年の頭には途絶えているし

そこまで伸びている物でもない

だが何故か吸い寄せられるように河嶋はそのページをクリックしてサイトへ入り込んだ

 

 

 

──────────────

 

 

 

1:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:9MJ8Ch5v1

アンチって訳では無いけど結局何だったのあの戦車隊

 

 

 

 

2:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:3XKBPFK39

久々に剣部隊スレ立ってるの見たは

 

 

 

 

3:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:k9K3PqER+

活動休止してもう1年以上経つものな、いやあの頃は戦車系統のスレッドの荒れたこと荒れたことw

 

 

 

 

4:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:LPkpoGS3/

もうそんな経つっけ…

 

 

 

 

5:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:9MJ8Ch5v1

イッチなんだけど、今思うと剣部隊ってなんだったんだろうと思ってスレ立てた

 

 

 

 

6:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:k9K3PqER+

>>5 なんだったんだろう、とは?

 

 

 

 

7:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:9MJ8Ch5v1

当初タンカスロンのチームとして作られた筈なのにタンカスロン以外の試合にも割と駆り出されてたりしてたじゃん

 

 

 

──────────────

 

 

「…ん?」

 

読んでて疑問に思うところではあるが今は一旦置いておく、それよりも副隊長の名前で引っかかったなら

どこかに関連する事が書かれているはずだと河嶋はマウスをドンドンスクロールしていく

 

 

 

 

──────────────

 

 

123:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:QWO0Bn9tw

ウチの親戚が国分で農家やってるんだけど夜中に戦701の子が畑に忍び込んで野菜盗ってるところ捕まえたことあるって言ってたな

 

 

 

 

124:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:8m007Ls7v

>>123ウケる

 

 

 

 

127:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:P1K5GvtpB

>>123野菜ならまだいいじゃん、ウチの知り合いの所は養豚場やってるけど豚持ってかれたって言ってたぞ

 

 

 

 

──────────────

 

 

「この辺でもないな…」

 

スクロールしていく内に書かれてる内容が剣部隊の存在意義を問うものだったのから変わってどんなやらかしをしていたか等に変わっていたが未だ関連する項目を見つける事はできず

更に下へとスクロールしていく

 

 

──────────────

 

 

258:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:ro2Je5qwA

おじいちゃんが松山空港の近くに住んでるんだけど、仕事中に滑走路の一角に着陸した零戦がひっくり返って大破したの見たって言ってた

 

 

 

 

260:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:OwjBzmzZM

>>258草

 

 

 

 

264:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:cHp8kLkFx

>>258出たw杉野デストロイヤー

無茶苦茶なんだよなあの子

 

 

 

 

270:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:Fip5DIZpc

>>258その話スゲー好き、狂おしいほど好き

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

「…何やってるんだアイツ」

 

思わぬ所で出てきた杉野の名前に無意識に手が止まるもその内容に自分の頬が盛大に引きつったのを感じた

本当に何をやってるんだろうかと思いながらも下へ下へとスクロールして────

 

 

──────────────

 

415:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

そう言えば杉野選手ってなんで引退したの?

まだ続けてたら今頃世界に羽ばたく撃破王だったかもしれないのに

 

 

 

 

────────────── 

 

 

「ッ!?」

 

思ってもない切り口で正解にたどり着きそうな予感がして、河嶋は雑にガリガリとスクロールしていたマウスをゆっくりと動かして1レスずつ丁寧に目を通していく

 

 

──────────────

 

 

416:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>415あ、そっか

そのへんは今でも情報統制厳しくて直接会場で見てた人くらいしか知らないのか…

 

 

 

 

417:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>416実はスクールで活動してた頃から杉野選手のファンやってて、それで何の説明もなしに急に引退だったから

もしなにか知ってるんだったら教えて欲しい

 

 

 

 

418:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:7Z2+pp2k2

>>416 >>417

それここで話して大丈夫?BANされない?

 

 

 

 

419:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>418

…そもそもあんな事あって隠し通そうってのが間違いだと思う

正直あの一件で日帝学園が戦車道チームの無期活休で済んだの生ぬるいだろ

廃校になっちまえば良かったのに

 

>>417

…えっとね、すご~く言葉を選んだら精神を病んで辞めたんだよ

 

 

 

 

420:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>419

精神を病んだ…?あの杉野選手が??

 

 

 

 

421:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>420

うん、自力で戦車から降りれなくなるくらい追い詰められてたみたいだよ

 

 

 

 

──────────────

 

「…は」

 

肺から空気が強制的に抜けていくような感覚と鼓動が否応なしに早まっていくのを感じる

その先に長く求めていた答えがあり、早く知りたいと思う反面見たくない

 

(だ、だってアイツそんな素振り一度も…)

 

同じ戦車に乗っている訳では無い為に河嶋の知る所では無いのだが、実際にはいまだに特定条件下ではストレス反応を発症するくらいには深刻な話ではあるのだが

 

 

──────────────

 

422:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>421

そんな事が…でもなんでそんな追い詰められるような状況になったの?

 

 

 

423:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>422

それなんだけどね

初代戦301副隊長の菅田翔希選手、戦407隊長の林重子選手、戦701隊長の赤淵桜選手が関係してるんだ

 

 

 

 

424:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>423どれも名選手よね、最近めっきり聞かなくなった3人だけど

先に揃って辞めちゃったとか?

 

 

 

425:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>424

そうだったらどれほど良かったか…

 

 

 

426:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>425なんか凄い勿体ぶるわね

 

 

 

 

427:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>426いや、まぁ教えても良いんだけど

まず留意しておいてほしいのがコレを見てる他の人にも言えるんだけど、既にある程度は当事者やその身内同士で諸々の済んでることだから

今から言うことで仮にどう思ってもSNSとかで広めたりして騒がないでね

 

 

 

 

428:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:kachu0131

>>427おかのした

 

 

 

 

────────────── 

 

(い、嫌だ…見たくないッ!

止まれ、止まれ──!!)

 

徐々に書かれていくレスの内容が不穏なものに変わっていくにつれて、そこから先は見てはいけないと本能が警鐘をならす

しかし頭では理解していても好奇心が勝り指が勝手に次のレスを求めてマウスをスクロールさせ、その事を強く後悔することとなった

 

 

────────────── 

 

 

 

429:名無しに変わりまして戦車乙女がお送りします。 ID:oYKwDlEzz

>>428最初から包み隠さず言うとね、既に亡くなってるんだよ

3人とも試合中の事故で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杉野の過去に隠されていた出来事、その一端に触れた河嶋は居ても経ってもいられずPCルームから飛び出して近くの女子トイレへと駆け込んだ

 

「はぁ…はぁ…」

 

荒く乱れる息と共に感じる吐き気は走ったからか、もしくは彼女がその時いったいどんな気持ちであったのだろうかと考えてしまったからか───

はたまたようやく手に入れた安息を、自分たちが半ば無理矢理取り上げてしまったからか…

 

(つ、ツラい…こんな事会長に話せる訳が無い

あぁ…いったいどうすれば)

 

脳裏に過ったのは先程経緯を語ったスレ民が立て続けに載せたレス、そこに書かれていた内容によれば杉野が引退する約4ヶ月前の4月10日に本拠地が松山から鹿屋へと移動

その僅か5日後の4月15日にスクール時代から杉野の部下として右腕のような存在だった副隊長の菅田が試合中に敵戦車からの砲撃を生身に受けて死亡

立地などの面により鹿屋から国分へ転居した後の同月21日の試合では戦407隊長の林が搭乗戦車ごと崖から転落

他の搭乗員は無事だったものの、この日は操縦手と操縦を交代していた為に林は落ちた衝撃で計器盤に頭を強く打ち付けて死亡

更に3ヶ月後の7月24日にはスクール時代の先輩だった戦701隊長の赤淵が至近弾として炸裂した破片に全身を切り裂かれて出血多量で死亡しているという事

また死亡には至らずとも同年5月末に戦407の林隊長の後任としてスクール時代の同期で杉野と友人としても交流のあった林美啓という選手が隊長として着任するも僅か1ヶ月後の6月22日、試合中に左腕切断と遷延性意識障害に陥る事故が起こり脱退

また戦701の隊長が亡くなった同日の試合には菅田副隊長の後任として着任した武藤という選手が初陣にも関わらず事故で脊髄損傷となり脱退してる

あまりにも救いの無い話だった

 

 

「げほっ…う、うぇえ…」

 

隊長3人の仲は非常に良好だった事や副隊長ともお互いに年齢や上司部下の垣根を超えて強い信頼を寄せていた仲だったと事前に調べた情報により既に河嶋は知っていたが、その事を知っていたが為に一層のこと自分自身への嫌悪感を募らせる

…もしも自分が同じような立場だったら、彼女の境遇に値するのは自分で言うところ角谷や小山が該当するのだろうか

そんなたらればの話が頭を過るたびに強い吐き気を催して思わずえずく

想像しただけでこれなのだから当事者である杉野は一体どれだけ追い詰められていた事だろう、そうとも知らずに自分は…

 

(…とにかく、この事は誰にも言わないでおこう……)

 

しかしそうするしか他に道は無かった事もまた事実、とは言え自分ですらここまで精神が蝕まれたのだから今日知った事は角谷を含めて誰にも話さず黙っておこうと河嶋は固く心に誓い

同時に深々と溜め息を吐く

 

(──これから先、一体どんな顔してアイツに会えばいいんだ…)

 

元々河嶋が杉野に対して当たりを強く出れたのは彼女の普段のナメた態度と1年時の非行や乱闘騒ぎなどで散々駆り出された為にある種苦労させられた自分たちは強く出ても良いはずだと言う思いも少なからずあったが───

何故か今はそう言う行動を取っていたのかもある程度推測がついてしまう

 

(アイツ自身の性格も勿論あるが、絶対自暴自棄になってただけだよな…)

 

流石にここまである程度の付き合いがあれば彼女が自分の認めた相手以外には一切の迎合をしない性格であることは理解している

自棄になった状態とは致命的なまでに相性が悪いその性格は、恐らく時期的に問題を起こしていた頃と被っているのだろうと当たりをつけ

本日何度目かわからない溜め息が溢れると同時に、数時間前に会った彼女の様子を思い出して苦笑いが溢れた

 

「お前の方がよっぽど難儀じゃないか…」

 

一人閉じこもったトイレの個室で呟いた言葉に当然のごとく返事は無かった

 

 

 

 








私は大洗女子学園生徒会の横暴から生徒を守る党代表の作者です
私が掲げます公約はただ一つ、それはもちろん「桃ちゃんの胃をぶち殺す!」でございます

さぁ今コレを見ているであろう河嶋桃さんもご一緒に、「桃ちゃんの胃をぶち殺す!」…まぁ言えるわけないですね

冗談はさておき、ようやく今まで小出しにしていた部分の過去等やPTSDの発症条件のヒントを早めに…早めに?書き起こしておくことが出来ました
これにより杉野が頑張れば頑張るだけお労しく見えるようバフが掛かります

そして姉住さん…貴女のロールプレイ凄い難しい
作者別に頭そんなに良くないのに格言考えなきゃいけないダージリンもさることながら、多分ガルパンキャラで描写難しいキャラ筆頭だと思う
でも私は二次創作特有の子犬みたいにキャンキャン吠えてるアリサやエリカが好きだし、余裕ぶっこいてるように見せかけて心の中で愉快なことになってるダージリン様が好きだし
姉として西住殿を大事に思いながら苦悩葛藤してる姉住さんが好きです

はい、話を変えまして皆さん
大事なことなので何度も言わせていただきます
…えぇ、いつものことです
励みになりますのでお気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします

そして誤字脱字はいつも通り発見次第直して行きます

以上です
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