ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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好き勝手書いてたら全然まとまらずに二万文字くらい行きそうだったのである程度で抑えて切り上げました
人によっては後半の終わりが急だと感じるかも知れませんがわざとです




生徒会の隠し事

 

朝のホームルームが始まる時間までまだ少し時間があるという事もあり、立ち話もなんだと一行は近くのベンチへ移動

それぞれ好きに腰を掛けてから4人の中から葛西智美が口火を切る

 

「知らん内に戦車道に戻ってきてはるんッスもん、いけずやわ〜

すっかり引退したまんまやって信じてウチらは毎晩枕濡らしよる言うんに」

 

「お、おう…悪かったよ」

 

くすんくすんと大げさなジェスチャーでわざとらしく嘘泣きの素振りをしながら悪意を感じる言い方をする葛西に杉野は苦笑いしながら謝る、両脇からそれを眺める宮崎と小高は笑いこらえながら見守っていた

 

「ってかなんで小高がいんだよ、お前戦407じゃんか」

 

「あ、折角手伝いに来た私にそんな事言っちゃいます??」

 

ふと思い出したかのように杉野がそんな事を言った小高と呼ばれた少女は不敵な笑みを浮かべながら「良いのかな〜拗ねちゃおっかな〜」と続けて呟き流石の杉野もコイツめんどくせぇと思った

そもそも杉野は343戦車隊(剣部隊)の中に3つ存在する戦闘戦車隊の一つ、戦301(新選組)の元隊長であり、宮崎や葛西が大洗に来たのは予想外ではあったもののある意味では納得がいった

しかし違う隊の小高が何故この場に来てるのか杉野にはわからなかった

 

「そりゃ小高なら技量は申し分ねぇけどさ、他二人が戦301からなんだから最後の一人も戦301からであれよ」

 

「それについてはウチから説明しますけぇ、ちょっくら聞いてつかぁさい」

 

小高はちょっと、いやかなり人格には問題があるものの技量やこれまでの戦果を鑑みれば戦407(天誅組)の中でも前から数えたほうが早いくらいの実力者ではある

しかしこう言う時にお約束なのはかつて率いた隊の仲間が来ることであり何故小高一人のみ違う隊から来たのか疑問であった

そしてそんな杉野の疑問に応えるべく宮崎が手を上げて続けた

 

「元々はタムタム(田村)が隊長が復帰したんじゃって教えてくれんさったんです、だけぇ何か力になれるこたぁないか連絡のつく限り皆で話し合いしよって」

 

タム(田村)?…あぁ、そう言えばアイツ地元栃木だったっけな」

 

宮崎の話によれば部下の一人だった田村が大洗と聖グロの交流戦の映像を知り合い伝に入手した事が発端であり、無期活動休止とは言え剣部隊にまだ在籍している者達でこちらに引っ越して来れる人材を選抜し

戦301(新選組)からは宮崎、葛西を含めて5名

戦407(天誅組)からは小高、戦701(維新隊)から1名の合計7人が選ばれたと言う話だった

 

「──なるほど、理由はわかった

けどなんで別部隊からも立候補が?」

 

「そりゃ、林隊長や赤淵隊長がまだ生きてたら

杉野隊長の手助けをしない筈ないだろうなって思ったからです」

 

「…そっか」

 

小高以外にも戦701(維新隊)からも助っ人が来るという話に思わずなんでなのかと問い返すが、小高からの予想外の返しに言葉に詰まり杉野はそれしか言えず

誤魔化すように何か別の話題をと考えた時に、もう一つ素朴な疑問が浮かんだ

 

「あのさ、俺の記憶が確かなら葛西ってまだ14歳だったよな?」

 

「覚えててくれはったんですか、ごっつ嬉しいわ〜」

 

この四人の中では葛西が一番背が高く、一見して大人びているものの

実年齢は杉野の2個下と本来であるならまだ中学3年生である、中学生が何故高校の制服を来てこんな場所にいるのかと杉野は頭を抱えたくなった

 

「待て、お前こそなんでここにいるんだよ」

 

「…ま、少し掘り下げてお話しまひょか」

 

杉野は思わず葛西を非難するようにジッと見つめ、当の本人は態とらしく肩を竦めてそう言って説明を始めた

 

「まず、本来今日ここに小高さんが来る予定やなかったんッスよ

ちゃんと戦301から3人出てくる予定やったんスけど…」

 

「因みに誰が来る予定だったんだ?」

 

タム(田村)ッスね」

 

葛西の説明により本来なら宮崎・葛西・田村が来るはずだったと聞けば杉野の頭には余計疑問符が浮かび上がった

…というのも田村と葛西は同い年でどちらにせよ中学生で本来ここには来れない筈なのだから

 

「まぁウチが言うんは説得力が無いのわかっとりますけど、ちゃんと飛び級試験受けて学年繰り上がりで転校して来とんで安心して欲しいッス」

 

「そ、そこまでしたのか」

 

元々杉野が葛西に疑惑の目を向けたのは、戦車スクール時代に葛西が入門時選んだコースは年齢制限が掛かっていたにも関わらず年齢詐称をして入ったと言う前科があるためだった

しかし今回はちゃんと正規の手順を踏んで入ってきたとの事なので安心して良いのだろう

 

「んでタムなんやけど、あいつ飛び級試験落ちたんスわ」

 

「…あ?」

 

「せやから本来もっと後に来る予定やった小高さんが急遽代理で来はったんッス」

 

因みに葛西達も最初の一発目は戦301(新選組)の搭乗員だけで来てバシッと決めたかったらしいのだが、引っ越しや引き継ぎなどもあり

前発組後発組で予定を組んだ手前崩す訳にも行かず、代わってくれる人を探した結果が後発組として本来後で来る予定だった戦407の小高が暇をしていたらしく入れ替えで来たという訳らしかった

 

「…マジ?落ちたの?アイツ」

 

「落ちたッスね、泣いとったッスよ」

 

「あっはっはっはっ!!」

 

杉野から見て真面目な田村の事である、葛西の泣いていたと言う発言により頭の中で「すいませぇん…」と言いながら泣きべそをかく田村の姿が容易に想像が出来て思わず笑ってしまう

 

「肝心なとこでポカするの変わってねぇなタムは」

 

「お陰であいつ試験受け直しッスもん、結果出る頃には来月末…再来月くらいやないッスか?」

 

「今年の全国大会間に合うかそれ!?」

 

なにせ人も戦車も足りないのが大洗戦車道チームの現状であり、確かに急に人が増えても乗る戦車が無いため前発後発で別れてくれたのは有り難いが

そもそも杉野以外で新たに増えた3名は乗る戦車が現状ない

…まぁそれは追々考えるにしても、田村の場合は来た所で既に全国大会が終わってしまってる可能性もある

 

「…はぁ、最悪タムの初陣は来年か」

 

「流石にタム一人で来させるんわ可哀想なんで、後発組はタムが受かったん確認して一緒に来る手はずんなってます」

 

「──えっ待って

てことはだ、つまり…」

 

「──タムが受からない限り後発組は来れまへん」

 

いきなり前途多難で再度杉野は頭を抱えそうになる、確かに折角頑張って来ようとしてる田村を一人置いてきぼり食らわすのは可哀想ではある

…あるのだが、もし次の試験に田村が落ちれば必然他の3名も来れなくなるという事だ

 

「おいちょっと他3人に連絡入れてまた落ちたらこっち来れる手筈にしてさ、なんとか3人だけ大会間に合わせられんのか!?」

 

「まぁタム受かんの待ってても間に合うんやないッスか?知らんけど…」

 

「うっははは!雑過ぎるッ!!

いらないそんなギャンブル要素」

 

段取りがあんまりにも大雑把で楽観的な葛西に杉野は呆れを通り越して腹を抱えて笑い、一頻り笑ったあとふうと何度か息を整えて葛西、宮崎、小高の順に視線を送ってから溜め息を吐く

 

「…わかってると思うけど、ウチ(大洗)は至って普通の学校で戦車道チームも普通の子達ばっかりだからな?」

 

「はぁ、それは構へんッスけど」

 

「正直お前らが来てくれたのは有り難いけど

こっちに合流ってなるなら酒は飲めんしタバコも吸えんぞ、それでも良いか?」

 

「「「え」」」

 

大洗女子学園、ひいては大洗戦車道チームは当たり前だが普通の学園で普通の子達ばかりだ

…一部学園艦の地下に潜ればその限りではないものの、真っ当な青春を送ってる生徒が九割九分だろう

そもそもスクールの時は多少なりの反骨精神があったとは言え、343戦車隊時代に至ってはとにかく戦果を上げれば細かいことは一切言われなかったので杉野を含めて目の前で呆けてる3人は散々好き放題をしていた

杉野・宮崎・葛西は未成年の飲酒喫煙、深夜の無断外出に無断外泊の常習犯

小高はそれに付け加えて行く先々の風紀委員と口論になり暴力沙汰を起こしては問題になった程である

なんならこの4人は通常の学科では無く大洗のヨハネスブルグこと学園艦最深部にぶち込まれた方が性に合ってるまであるだろう

 

「俺は除隊してから一本も吸ってないし一滴たりとも飲んでない、普通の学園に来るってことはそう言う事だって覚悟しろ

それでも共に戦ってくれるか?」

 

杉野からして手助けは確かに有り難い、しかし郷に入っては郷に従うべきであり

大洗の生徒として戦車道チームに加入した時点でここから先何か問題が起これば個人の責任では無くなってしまう、普通の学園で戦車道をするなら必然的に普通の女子高生にならなければならない

 

「…いえ、ここまで来たんスよ

ウチは隊長から離れる気はありまへんやさかい」

 

「それじゃ、ここいらで一発普通の女の子に戻るって事で───」

 

「決まりじゃのぉ、ウチら3人気持ちは同じじゃけぇ」

 

少しの沈黙の後、決心がついたようで3人は口々に言って

それを聞いていた杉野は少しだけ嬉しそうに笑って続けた

 

「ま、戦車ねぇから当面お前らは暇する事になるんだけどな?」

 

「「「は?」」」

 

「だって全部で戦車5輌しかねぇんだもん、俺ですら1年生チームの指導役なんだぞ?」

 

さて意気込みを新たにしたまでは良いが、課題が一つ残っている

それは新たに人が増えたと言えど杉野を含めるなら丸々戦車1輌分の人材が暇してしまうという事だ

どれだけやる気があろうが技量優秀であろうが乗る戦車が無いのでは始まらないのである

 

「えぇ…じゃあタムに見せてもらった1回戦が文字通り全勢力だったって事ですか」

 

「Exactly」

 

引き攣った表情で問いかける小高にまさにその通りであると杉野が言えばその表情は呆れたものに変わった、高々5輌で全国大会に出場するのだからそうもなるだろう

しかし反対に葛西と宮崎は車輌の少なさに驚きこそしたものの、乗れる戦車がないと言ったことに対して杉野へ懐疑の目を向けた

 

「いや、杉野隊長──あるやないッスか?ひとまずウチ等の乗れる戦車」

 

「ないない、5輌とも搭乗員決まってるから」

 

「嘘はいけんですよ隊長、あるでしょう1輌───

杉野隊長、あなたが除隊した時に持って帰ったのが」

 

葛西の言葉をのらりくらりと交わしたまでは良いものの、その後宮崎から言い逃れの出来ない指摘が入った事で杉野は観念したようにかぶりを振った

 

「…俺のチハか?」

 

「どうせ隊長ンことやもん──処分出来んで取っといとるんッスよね?」

 

続く葛西からの指摘になんでバレてるんだよと思わず杉野は舌打ちをしてから深々と溜め息を吐く、別に苛立ってるわけでは無いのだが自身の行動が読まれてる事が気に食わなかっただけである

そんなにわかりやすかと杉野は後ろ手で頭を掻きながら続けた

 

「…確かにある、あるが──あんなもん持ってきてどうする?

何から何まで手ェ加えて、公式戦の規格に合う部品を探す方が難しいくらいなんだぞ」

 

「戻せばええやないッスか」

 

「また簡単に言いやがるなぁ…」

 

ここで言う杉野のチハとは343戦車隊時代に杉野が愛機として登場していた車両番号343-A-15号車、またの名を改良型九七式中戦車二型(チハ改)と言う

この車輌は343戦車隊のチハ改の中でも異例で杉野個人の所有する車輌となっているのだが、元々は終戦時に静岡のとある湖へ投棄された物を60年余り経ってから当時家族旅行で訪れていた杉野が発見し伝で引き上げたもの

しかし何の加工も施されず60年海水の混ざった汽水湖に沈んでいたチハは引き上げ当初原型こそ留めていた物のかなり朽ち果てており、また当時塩抜きの概念が曖昧だった杉野が直した事で今で言えば相当なやっつけ作業で復元した車輌

当然そんな車輌が他の車輌と程度が同じになるはずもなく直した当初はエンジンを掛ければけたたましいノイズが走り、走行中はどこかしらから軋み音が鳴り響いていた

他の車輌は性能重視で排気管(マフラー)が煩いチタンの物に変わっていたが杉野の場合はそれらの音をかき消す為に入れていたほど

しばらく出撃を重ね交換部品が増える事に徐々に聞かなくはなったが、既に2年余り老体にムチを打って戦っているので心配事も尽きない

 

「んなもん純正に変えてチョイチョイや無いんッスか?」

 

「元の部品は朽ち果ててたからな、とっくの昔に廃品業者が持ってったぞ」

 

そして当然、そのままでは公式戦に出られる筈もなく

タンカスロン用に交換した車輌のほぼ全てを占めるカスタム部品を純正の物に戻さなくてはいけないが

当時交換したものは使い物になるはずもなくスクラップ行きな為部品をほぼ1から集め直す必要があるが、いくら戦車が足りないと言えどそこまでしてチハを起こす必要があるのかと杉野は疑問に思う

──それに

 

「…あの車輌は思い出のまま終わらせてぇんだよ」

 

「はぁ」

 

343戦車隊を結成してから杉野の引退する日まで実に2年8ヶ月、彼女の最全盛期を共に過ごした車輌は今の枯れたような彼女からすれば青春の苦楽を共にした存在であり

出来ればこのまま、もう戦場に出すことは無くゆっくり羽根を休ませてやりたい

そこまで言えば葛西も宮崎も渋々ではあるものの戦車が無いと言うことには納得した様子だった

 

「しかしマジでどうするかな…

最悪後発組は来年にしてもひとまず1輌───」

 

「あ、来年と言えばウチここ来る時変な事聞ぃたんッスけど」

 

「…あん?」

 

とは言え、空白期間はあるものの即戦力の3人なのだ

出来ることなら遊ばせて置かずに次のアンツィオ戦までには戦車をどうにかして参戦したい、後発組は最悪来年等と思っていれば葛西が急に話を振ってきた為に杉野は考えを中断することとなった

 

「ほらウチ、飛び級して来た言うたやないッスか

でもだからと言ってそのまま大洗に進学出来たわけや無いんッスよ」

 

「…話しが見えねぇんだが」

 

現に葛西は飛び級してこの場に大洗の生徒として居る、しかし彼女が語るのは飛び級したから来れたわけでは無いと言う矛盾した言葉である

どう言う事なのかわからず杉野の脳内は一瞬で疑問符で埋め尽くされた

 

「例えば宮崎さんや小高さんらは既に高等学校に行ってたので転校処理出来たらしんッスけど、ウチは進学って形で

──その時に言われたんッスわ、大洗女子学園は今年度一杯で廃校になるから進学手続きは出来んって」

 

「──は?」

 

何やら聞き捨てならない事が聞こえて思わず杉野は固まった、いやしかし思い返してみれば怪しい部分は確かにあったわけで

20年以上前に無くなった戦車道チームを何故今になって復活させたのか、話の大筋まではわからないがきっとコレが関係しているのだろうと踏んだ

 

(…アリサの言ってた生徒会に気をつけろってのはこの事か?

──試合後の話では3人とも、特に河嶋は怪しかったし廃校のことを隠したかったのなら辻褄は合う)

 

元々隠し事は学園艦に関する可能性はあり得ると杉野は踏んでいた、なにせ先日のサンダース戦後に少し詰め寄ったら河嶋は凄い動揺していたし他二人も多少怪しい部分があった

それでも珍しく真剣な表情の角谷により詮索を打ち切らざるを得なくなってしまったわけだが…

 

「──で?進学が無理って言われたならどうやって来たんだよ?」

 

「一つ抜け道があったんッスよ」

 

「抜け道?」

 

「一度違う学校へ進学して、そこから転学願いを出す

新たに進学は出来んッスけど既に別の高校の生徒になってからなら転校ですからね」

 

一先ず葛西に話の続きを促せば元の学校から大洗に至るまでの説明がされ、杉野はそんな杜撰な抜け道があるのかよと思わず内心で苦笑いを浮かべながら

しかし結果として葛西が来れた為にその杜撰さに助けられたかと思って複雑な心境である、まぁなんにせよ───

 

(…知っちまったからには、問い質さないわけにはいかねぇよな

まぁまだ授業始まるまでにゃ時間あんだろ)

 

隠し事がないか問い詰めた際に角谷は今は話すことが出来ないと言っていた事を思い出せば思わず内心で溜め息が出るが、しかし知ってしまった以上見なかった事に出来ないのが杉野自身の性なのだ

 

「お前ら転校初日なら職員室とか行くところあるわな?

俺ちっと行くとこ出来たから席外すわ」

 

「あ、うっす…了解ッス」

 

「廃校の話は一般の生徒には知らされてない、混乱を避けるために口外にはするなよ」

 

ポケットにしまったケータイを取り出して時間を確認、今から行けばまだ生徒会室に居るはずだと推測を立てて重い腰を上げ

ついでにこの件に関しては一切他の人間には話すなと釘を差してから、杉野は生徒会室へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻生徒会室の内部では角谷が頬杖をつき、小山が書類作業に勤しみ河嶋がパソコンとにらめっこしていた

一見して普段の業務とは何ら変わりのない風景ではあるものの、どこかいつもとは違った重い空気が漂っている事に誰もが気づいていながらそれを口に出すことはなかった

 

「なぁ──かーしま───」

 

「はっ、何でしょうか?」

 

「…何かあった?」

 

少し訝しむような視線を河嶋へ向けて、不意にそう言った角谷に対してビクッと河嶋の身体が一瞬硬直した

 

「あ、あぁ…いえ……何も

すいません、早く書類上げないと…ですね」

 

「ふぅん…そっか、まぁ別にゆっくりでいいぞ」

 

しかし次の瞬間には顔は俯かせたまま絶対大丈夫な状況で無いにも関わらずそう答えた河嶋に角谷は思わず頭を抱えたくなる、なにせ河嶋は嘘や隠し事が下手だ

絶対なにかあるのに深く詮索できないのがとてもつらく、視線を移せば小山も心配そうな表情で河嶋の方をチラチラと様子を伺っているが声まではかけるに至らない

角谷は小山へ向けていた視線を再度河嶋へ向ける、現在河嶋は本日より新しく大洗へと転入して来た3人の素性を調べ上げそれを纏めた書類を制作している

これでもし戦車道チームに引き入れられそうな人材なら声を掛けに行きたいわけだがどうにも河嶋がいつにも増して集中の続かない様子だった

 

(…やっぱり杉野ちゃんの事でなにかあったのかな)

 

先日のサンダース戦の終わったあと、河嶋は一人学園のPCルームで杉野の過去について調べ直していたようだが

思い返せばその翌日以降から心此処にあらずと言うべきか、何かを葛藤するように一人の世界に入ることが多くなった気がする

しかしそれとなく何かわかったことがあったかと聞いてみても物凄く動揺したまま何も無いの一点張りをする河嶋にそれ以上何か言うこともまた出来なかった

河嶋の事は勿論信頼しているためにどれだけ怪しくても何も無いと言われれば信じるしか無いのが角谷の現状で、小山も同じく信頼があるからこそ敢えて聞かない選択を取っていた

 

(…ん?)

 

しかし今回に至ってその判断は間違いだったのか、現に今この場は大変に気不味いものとなっている

さてどうしたものかと角谷が考えていた時生徒会室の扉がノックされて思考を中断、入室許可を出そうとした瞬間ノックの主は無許可のまま扉を開く

 

「…杉野ちゃん、こんな時間にどうしたのさ?」

 

「──ちょっとお前らに聞きたいことあってな」

 

そうして入ってきたのが先程までの悩みの原因を担っているであろう杉野であったので角谷は内心で冷や汗を掻きながらも努めて普段通りの声色で接するものの、当の杉野はいつものように不機嫌そうに鋭い視線を角谷達へ向けて続けた

 

「大洗が廃校になるってのは本当か?」

 

「っ!?」

 

唐突に投げられた爆弾発言に角谷を始めとした他二人も凍りつき息を呑むような声が聞こえた事で杉野は目に見えて表情を歪ませる

 

「…その反応、マジなんだな?」

 

「──どこでそれを」

 

流石にもう隠し切れないと踏んで角谷は苦悩に満ちた顔のまま認めた事で杉野は溜め息を吐いてから目を閉じて考え込むようにした後再度口を開く

 

「…昔の仲間がな、態々俺を追いかけてこっちの学園来たんだけど、その手続きの時に知ったと教えてくれてさ」

 

「…そっか」

 

杉野から情報源を引き出し、角谷が目線のみ動かして河嶋の方へ視線を向ければなにか言いにくそうに口元を歪めた河嶋と目が合って全てを察した

おそらくは角谷が素性を調べるように指示を出した、この珍しい時期に大洗へやって来た3人の内の誰か

もしくは3人全員が杉野の言う情報を持ち込んだ昔の仲間と言うことになるのだろう、元よりこの部屋に杉野が来た時点で隠し通すことは無理だった事を悟り角谷は変な疲労感に苛まれた

 

「それで?それを知った上で私達に聞きたいことって??」

 

「戦車道を復活させたのは、廃校の有無に何かしらの関係はあるのか?」

 

「…あぁ、それのことか」

 

終始痛いところを突いてくる杉野に角谷は俯き少し考えるような素振りを見せてからぽつりぽつりと隠していた事情を話し始めた

文科省から今年度をもって廃校になると言われたこと、戦車道の全国大会で優勝をすれば廃校を回避できるということ

だから無謀であっても絶対に負けることが出来ないと言うことを根掘り葉掘り全て話した

 

「だけど、昔は戦車道の強い学校だったらしいから少し楽観的に見てたんだけど───」

 

「蓋を開けてみれば残ってる戦車があれだけってか?」

 

「うん、良い戦車は軒並み資金難で売っちゃったみたいで

途中から名簿から抜け落ちて行方不明扱いの戦車が仮に全部見つかった所で全然数が足りない」

 

目を伏せながら弱々しく呟く角谷のらしくない姿に杉野は右手で額を抑えてはぁと小さく溜め息を吐いた

 

「…あいつ等にこの事は?」

 

「話してないし話す気もないよ

──廃校が取り消されれば話しても良いけどね」

 

杉野にはバレた手前、戦車道履修生の他の皆へ話すのかと聞けば角谷は首を横に振る

ただでさえ杉野と新しく来た転入生にはバレているのに何故隠し通すのかと杉野の視線が鋭くなったことを感じてか、理由を話すべく角谷は続けた

 

「隊長は西住ちゃんでしょ?──これ話してあの子が今まで通り戦えると思う?」

 

「それは…そうだけどよ」

 

無論ここで話に出した西住の事を二人して信頼していないわけでは無い、だがそれとこれとは少し事情が異なる

 

「ねぇ杉野ちゃん、最近の西住ちゃん笑顔が増えたね」

 

「あぁ…」

 

「気が弱そうなのは性分だとしてもさ、最近すごく楽しそうで───

だから、余計な事を考えずにのびのびやって貰いたいってのも一つかな」

 

茶化しを入れること無く真面目な声色で言った角谷に何かを感じたのか、表情こそ顰めたままであるが杉野はそうかと言って続ける

 

「しかしわかんねぇな、いつものお前らなら人の事情なんて気にせず踏み込んで来るだろ」

 

「確かに、現に西住ちゃんと杉野ちゃんを引き入れた時はそうだったね

あの時は何か縋れるものが無いと気が触れちゃいそうでさ、手段を選んでられなかった

でも結局、二人して戦車道取ってくれたんだからもうそこまでする必要ないんじゃないかなってさ」

 

「…やっぱり皆に話して、今からでも意識を変えた方が良いんじゃないか?」

 

聖グロとの親善試合、サンダース戦を終えて多少は大洗戦車道チームも戦車乗りの実感が湧いたものも多いのか最初に比べれば随分と各々の顔つきもマシになってきたものの

やはりまだ何処となく空気が緩い、それこそ優勝を目指すのならもう少し一人一人の意識を変えていったほうが良いのではないかと杉野が言うものの、角谷は首を横に振った

 

「何が正解かなんてわかんないしさ、余計なものを背負わせて下手に動きを悪くしたくない

──それにさ、怖いんだよ」

 

「怖い?」

 

「全力でやって、それでも無理だった時…

何も悪くない皆が自分自身を責め始めるかも知れない、それが凄く怖い」

 

怖い、そう言った角谷に杉野は何かを悟って少しじっとりとした責めるような視線を向けて

それに対して角谷はいつもよりは少し弱々しく見える作り笑いのような笑みを向け、すぐに顔を伏せてしまう

 

「…まさかお前、もしもの時は隠してた自分が悪者になって消えれば良いって思ってんのか?」

 

「恨んでくれるのが私らだけで済んだら儲けもんかな

まぁでも、勿論廃校にする気はないから本当に最後の手段だけどね」

 

呆れた言い分で自己犠牲を厭わないその姿勢に杉野は思わずその場で深々と、いっそ態とらしく思えるように溜め息を吐きながら角谷、小山、河嶋の3人へと視線を移して口を開く

 

「お前らどうしようもねぇ大馬鹿だな」

 

「…杉野」

 

「いやマジで、下手な気ィ回してんじゃねぇよ

らしくねぇんだよバカヤロウ」

 

毒突く杉野に反応する河嶋もいつもより口調が弱々しく、更に杉野は顔を顰め

自嘲するかのように、鼻を鳴らすように小さく笑った

 

「…けど、もっとどうしようもねぇのは───

俺がそう言うバカヤロウが嫌いじゃねぇって事だ」

 

「…え?」

 

角谷は思わず伏せていた顔を上げる、何せ自分のやったことや隠していた事を考えれば口汚く罵られても仕方のないものだと思っていたのだから

思いも寄らないことを言われては少し気の抜けた声が出て、杉野を見れば照れ隠しをするように後ろ手で頭を乱雑に掻きながら眉をハの字にして困ったように笑っていた

 

「転校生3人、必修選択科目は戦車道で登録しといてくれ

──戦車はこっちでなんとかするからさ」

 

そしてどこかすっきりとしたような表情でそう言って踵を返した杉野の表情は、角谷達3人が初めて見るような目尻を下げた優しい表情をしていた

 

 

 

 

 

 

 

昼の時間となり授業で使った教科書類をしまいながら西住は遠く離れた席の杉野の方を見やった

 

「──おう──わかった

───ハイハイ、じゃあ食堂でな───」

 

しかし誰かと電話をしており、珍しく予定がある様子で電話相手と話しながら席を立って教室を出ていった彼女の後ろ姿を見つめ

西住は声をかけることを躊躇った自分に少しの自己嫌悪を感じて足元へ視線を落とす

 

(声、掛ければよかったな

でもナオさんにだって予定くらいあるよね…)

 

いつもは昼の時間になっても暇そうに少しの間は頬杖をついたまま遠くの空を眺めている杉野を西住や武部達が声をかけて、ようやく席から立って昼食の為に移動するような杉野が自分から

しかも自分たち以外の誰かと予定を組んでいる事が今まで無かった為に何故か感じたチクリとした胸の痛みは気づかないフリをしてどこかで時間を潰そうと移動を開始する

 

「……。」

 

結局食堂や購買に行く気にも慣れず何となくガレージに入って視線を上げれば自身の愛機であるⅣ号戦車が目に入る、一回戦はなんとかなったとは言え

短砲身75㎜のⅣ号戦車ではいつか火力に限界が来るという不安がある

 

(二回戦…この戦車で勝てるのかな)

 

特に無意識の内にここまで来てしまった為にお昼を買いそびれてしまったが、何故か食欲がわかないためもう少しここにいようかとⅣ号へ近づいた西住の背後から声が掛かる

 

「──西住殿?」

 

「…あ」

 

振り返ればそこには戦車とお昼を食べると持参した弁当箱を片手に持った秋山がいてそれに続くようにガレージには武部と五十鈴が入って来る、どうやら後の二人は教室と食堂に西住がいなかった事からここにいると予想して来たようだ

 

「パン買ってきたよ!」

 

「ありがとう」

 

元々西住とお昼を食べるつもりの武部は手持ちの袋を持ち上げて西住の分も買ってきたと告げる、因みに暴食癖のある五十鈴は別途で持参したパンがみっちりと詰まった袋を持っていた

 

「秋山さんもここでお弁当ですか?」

 

「はい!」

 

「じゃあ皆で一緒に食べようよ」

 

「──私にもわけてくれ」

 

特に示し合わせたわけでは無いのだが、折角4人揃ったのだからここは一緒に昼食を食べようと武部が提案をしたところ

全くの意識外から声が聞こえてきた為に4人はその場で固まった

 

「あ!授業サボったの!?」

 

「自主的に休養した」

 

声の主を探す武部がⅣ号のキューポラから顔を覗かせる冷泉を発見し、おそらくは誰よりも早くここにいた事から授業をサボって中で居眠りをしていたのだろうと結論付けて聞いてみれば何故か冷泉は得意げな顔をして返した為にお婆ちゃんに言いつけると言えば冷泉はすっかり意気消沈してⅣ号から降りてくる

 

「そう言えば、ここまで皆さん揃ってて杉野殿がいない日は珍しいですね」

 

「あ、私さっき食堂で見かけたけど知らない子達と一緒にいたよ」

 

冷泉が降りてきた事で5人に固まり直し、お弁当の包みを解きながらそう切り出した秋山に武部が食堂で見かけたと言った所で西住が小首を傾げる

 

「知らない子達?」

 

「うん、ナオ以外で3人

一人やたら背の高い子がいたんだけど、目立つ見た目の割には今まで見たこと無いんだよね」

 

あんな子達いたかな?と西住に続いて小首を傾げた武部はそれでも知らなかっただけで友達の2〜3人くらいいるよねと合点のいくように呟くがそれに何か引っかかった様子の秋山が口を開いた

 

「…でもちょっと前に杉野殿、大洗じゃ私達以外の友達いないって言ってましたよ?」

 

「…またそうやってナオは反応に困るようなことを───」

 

「でも確かに、杉野さんが私達以外といるところ見たこと無いかもな」

 

「あ、あはは…」

 

肯定したら肯定したでそれはまた体裁の悪いことを平気で言ったであろう杉野を想像をして各々の反応はまちまちではあるものの、確かに皆の脳裏に過ぎるのは自分達といる時以外は訓練時に同じチームの1年生達

もしくは整備の時間に一緒に戦車を直す自動車部の面子という僅かに3つのコミュニティにしか属しておらず、プライベートの時間

またはそれに準ずる場合は自分達といるかはたまた1人で行動してることが多く、その事実がより反応に困ってしまう

その中で「あっ」と秋山が声を上げ、関係があるかはわからないけどと前置きをして続けた

 

「確か今日、転校生が来たらしいですよ

3年生が1人と1年生が2人」

 

「え?ゆかりんホント!?」

 

「まぁ私も教室でクラスメイトが話してた事の又聞きですけど」

 

転校生と言うワードに武部が初耳だと少し驚いたような表情を見せる、本来であればそう言った事柄は武部の方がアンテナが高いわけではあるのだが

まぁ又聞きだから不確定ではあると秋山は補足する

 

「…もしその転校生達がナオの知り合いなら辻褄は合うんだけど、私ナオの事全然知らない事に最近気付いたんだよね」

 

「沙織さんもそうなんだ…」

 

「杉野さん、中々ご自身のことを話すことありませんし」

 

「あの人の場合、時折少し壁を感じることがあるからな」

 

そして武部を筆頭にそう言えば杉野のことが一番事情を知らないのでは無いかとあれやこれやと話した折に、4人の目は一斉に秋山の方へと向いた

 

「…ゆかりんってさ、昔追っかけやってたって言ってたし

ナオの事詳しかったりする?」

 

「はぁ、詳しいと言うか…まあ多少は

──と言っても杉野殿が戦車道をやってた期間中の事ぐらいですけど、それこそ西住殿は場所こそ離れてたとはいえ年代も近いですし同じ戦車乗りとして知ってる事とかは…」

 

「私の場合は噂は流れてきてたけど、実際に試合を見たのは引退する直前だったなぁ」

 

視線が一気に集まった事で一瞬たじろぐ秋山ではあるが、続く武部の言葉に自分よりは同じ時期に活動していた西住の方が詳しいのではないかとは言うものの

話を振られた西住は期待に添えずに申し訳ないと言わんばかりに首を振った

 

「へぇ、熊本のみぽりんのところまで届いてたんだ?」

 

「うん、その頃はまだナオさんがスクールで活動してた頃だから──宮城にはとにかく腕の立つ戦車乗りがいるって噂があって」

 

東北と九州では日本列島で見てもほぼ端から端、そんな中で噂が届くくらい同年代では有名ではあったらしい

そう聞かされれば当人の西住と事情を知っている秋山以外の3人は少々面を食らったような顔をしていた

 

「でもその後にゆかりんが前に言ってた全盛期が待ってるんでしょ?

私この間聞いてもはぐらかされちゃったし、なんで一回辞めちゃったのかとかゆかりんは知ってる?」

 

「…あ」

 

それから更に続く武部の疑問に秋山がピタリと固まってしまった、心做しか表情もどこか言いにくそうに歪めており

何かあるのかと他の面々が心配そうに秋山を見つめる中、遂に意を決したように秋山が口火を切った

 

「──実は、知ってます…知ってるんです」

 

「え?」

 

どこか暗い表情で、それでもハッキリと知っていると語った秋山に驚いたような声を上げたのは西住だった

というのも彼女の場合は杉野の事に関して以前調べた以降、期間は空いているが何度調べてみてもついぞその答えに辿り着くことは無かったのだから

 

「──ですがすいません、その事に関して私が言える事はないんです

凄くデリケートなお話しでして、杉野殿本人が話していないのに私が勝手に話すことは出来ないと言いますか…」

 

しかし秋山はその事情を話す事を拒んだ、辛そうに葛藤するような表情でそう言った秋山に誰も文句を言うことは無かった

 

「…そっか、ごめんやめようこの話し!」

 

「期待に添えなくてすいません」

 

「ううん、いいよ

…いつかナオ自身から本当の事話してもらえるのを待てば良いんだもん」

 

少し無理やりではあるものの話題を変えようとした武部に思わず秋山が頭を下げるも、武部は秋山の言う通り当人が言ってくれるのを待つからと気にしない素振りであった

 

 

 

 

 

 

 

 

幾度となく話題を変えて時間が過ぎていく、先程の重い空気は元から無かったかのように秋山の戦車弁当や校内掲示板に張り出された生徒会新聞の話へと話は変わる

 

「聖グロリアーナ戦もサンダース戦もなんとか勝てたけど…」

 

「勝利は勝利です!」

 

随所に危うい部分は多々あったと言えど、今年結成されたチームであるにも関わらず大洗戦車道チームは全戦全勝と破格の快進撃を続けている

しかし蓋を開けてみれば両チームとも最終的にはこちらと同じ数の戦車しか使っていないため単純比較出来るものではないと西住は考えるが、だとしても勝ちは勝ちだと秋山が声を上げ

やはり勝ちに拘らなければ意味がないのだろうかと西住は一度俯くが、それを否定するように秋山が続ける

 

「でもそれ以上に楽しかったじゃないですか」

 

「あ…」

 

顔を上げれば正面の秋山の他、左右の武部と五十鈴も肯定するように頷き

これまでの戦車道の日々が、それを取り巻く環境含めて全てが楽しいと秋山は言う

 

「…そう言えば、私も楽しいって思った」

 

振り返ればまだそこまで日が経っている訳でもない、しかし皆と過ごした濃密な時間の数々が西住の頭に想起される

明るく頼りになる優しい仲間たち、それは前の学校ではありえないような出来ごとの数々だった

 

「前はずっと勝たなきゃって思ってて───

…だから負けた時に戦車から逃げたくなって」

 

「…私、あの試合テレビで見てましたよ?」

 

西住の前の学校、即ち黒森峰女学園は戦車道の名門である為試合に取り組む意識からしてまるで違う

それこそ西住の感じたように勝利至上主義、特に10連覇の節目であった為にそのプレッシャーは相当なもので

徐々に語気の下がる西住に小さく微笑んで秋山は当時の試合をテレビで観戦していたと告げた

 

「──西住殿が川に滑落した戦車の乗員を助けに行ったときは、不覚にも泣いちゃいました」

 

「でも私の戦車はフラッグ車だったから、そのせいで撃たれて負けて──10連覇出来なかった…」

 

西住が大洗へと転校となるきっかけとなったあの試合、豪雨により増水した川に友軍の後続車両が滑落してしまい

乗員救助の為にフラッグ車の車長だった西住が助けに向かい、その間に車長のいなくなったフラッグ車が撃破されるという類まれな偶然が積み重なって起きたものだ

 

「前にも言ったかも知れませんが、私は西住殿の判断は間違ってなかったと思います

命あっての戦車道ですから…人命に勝るものがあって良い筈がありません」

 

「秋山さん…」

 

本来であれば、それこそ戦争でもないのならば人命を優先するべき場面であるのだが

実際には黒森峰の現状と10連覇という節目であった事で命を救った西住が避難される側に立たされてしまった

…しかし秋山はそれを力強く肯定する

 

「…きっと、助けられた選手の方達は西住殿に感謝してると思います」

 

「ありがとう、そうだと良いなぁ」

 

自身の行いは決して間違いではなかった、そう肯定されたことで少し肩の荷が下りたのか

笑顏の西住の表情はそれは穏やかなものだった

 

 

 

 

 

 

 

時刻は午後になり、選択科目の授業時間間近となった為に格納庫の外にはゾロゾロと人が集まり始めていた

 

「ナオさ〜んッ」

 

「…みほ?それにあんこうチームの皆はもう揃ってるのか」

 

外に目を向けてこちらへ向かってくる疎らな戦車道履修生達の中に色んな意味で目立つ一際小さい少女を見つけ、西住は少し声を張り上げるとその声に気付いた杉野が反応して小走りで駆け寄ってきた

 

「今日はここで皆とご飯食べてたんだ」

 

「あぁ、そういう?」

 

また随分と早くに集まったものだと驚いた様子の杉野に実はここでお昼を取ったと武部が種明かしをする

いつものように訓練が始まるまでの短い時間ではあるものの、杉野が加わった6人は他愛のない会話で授業が始まるまでの暇を潰していた

大体はチーム同士で固まっているもののこの辺は特に大洗のチームはゆるく、実際に授業が始まって戦車に乗り込む辺りになるまでチームとはまた別の仲の良い友達同士で固まっていることも多々ある

 

「…っと、そろそろ時間かね」

 

「あ…っ」 

 

とは言え元々授業開始間近な為、いつもの如く号令係の生徒会達の姿が目に入れば一時話を切り上げて体裁上ではあるもののきちんと整列して並べばいつも通り生徒会の3人が列の先頭に陣取りこちらへと振り返る

 

「──それではこれより、戦車道の授業を開始する」

 

そしてその中からいつも音頭を取っている河嶋が時計で授業時間へとなったことを確認してから号令をかけ始めた

 

「が、始める前に一言ッ

一回戦に勝ったからと言って気を抜いてはいかんッ

次も絶対に勝ち抜くのだ、いいな!?腰抜け共ッ!!」

 

「はいッ」

 

「頑張りまーす」

 

「勝って兜の緒を締めよ、だーッ!」

 

「おおーッ」

 

「えいえいおーっ!!」

 

一言も二言も多い河嶋の号令、もとい始める前のお小言にそれぞれ見せる反応はまちまちであるものの

概ねいつも通りやる気だけは感じられる返答ではある

 

「え、何ここ?おまいうオブ・ザ・イヤーの受賞会場??」

 

「あ、あはは…」

 

そんな中で唯一、杉野だけは冷めきった目で河嶋を見ており他の皆と比べて温度差に天と地ほどの差があるなと西住は思わず苦笑いしてしまった

 

「──そうそう、始める前にもう一つ

今日から新しい子達がウチの戦車道チームの新たな仲間として来てくれたから一応紹介するね」

 

不意に言った角谷の言葉で完全に授業開始の流れだった手前、準備に入ろうとしていた皆の動きがピタリと止まり

また新たに加わったメンバーと言うこともあり何人かは何処となく浮き立って落ち着かない様子でもあった

 

「お〜いッ来て良いよ〜〜ッ!」

 

角谷が格納庫脇の出入口側の方へ珍しく声を張り上げて誰かを呼びかけると、角の向こう側から待ってましたとばかりに3人の少女が現れる

その3人組の中の1人は飛び抜けて背が高く非常に目立つ集団だ

 

「あッ!あの子達食堂でナオと一緒にいた…」

 

「…なんだ見てたなら声くらい掛けてくれても良かったのに」

 

「いや、流石に知らない子達だったからやめといたよ」

 

3人の少女達が生徒会の横に並び立ち、各チームのメンバーと向き合うように整列すると武部が杉野といたのを見た相手だと声を上げる

杉野側は武部に見られていたのは気づいていなかったのか声くらいかけてくれと言ったものの、武部は武部で知らない子達と一緒にいる中で話しかけに行くほど非常識ではないと反論し杉野は気にしなくても良いんだがと言いたげな様子で引き下がっていく

 

「御挨拶させていただきますッ!」

 

横一列に向き合うように並んだ少女達は中央のショートカットに癖っ毛で糸目の子が声を張り上げてそう言うと、3人は同時に一瞬の流れるような動作で足を揃えて手元を隠した海軍式の敬礼を披露し───

 

「本日付で大洗戦車道チームへ着任致しました、三年の宮崎(みやざき)(いさみ)ですッ!」

 

「一年、小高(こだか)登華(のりか)ッ」

 

「同じく一年の葛西(かさい)智美(ともみ)ッス!」

 

中央の宮崎を筆頭に他の履修生達から見て右隣のアンダーツインテールにツリ目が特徴的な小高と左隣のおそらく戦車道履修生の中で一番の背丈を誇りウルフカットと大きなタレ目が特徴的な葛西が続いて自己紹介していく

 

「す、凄い…ッ」

 

「…知ってるの?ゆかりん」

 

声を上げたのは呆気に取られる他の履修生達の中でも、目の前の3人がどう言う人物なのか全て把握できている秋山で

武部はそんなに有名人なのかと確認するように秋山へ話を振ったことで秋山のマニア魂がヒートしていく

 

「知ってるなんてものじゃありませんよ!

中央の宮崎殿は杉野殿の率いた戦301(新選組)戦車隊の分隊長で、100輌以上の撃破数を誇るベテランです!」

 

「…余り褒められるとむず痒いけぇ堪忍してつかぁさい」

 

「右側の小高殿はそのお隣、戦407(天誅組)所属で【トッカン兵曹】の異名を持ち

部隊きってのお転婆娘で知られており、宮崎殿同様で個人撃破数は100輌を超えてます!」

 

「え、私の事知ってるんですか?」

 

「一番左の葛西殿は杉野殿、宮崎殿同様戦301(新選組)所属

部隊最年少でありながら個人・共同でそれぞれ10輌撃破し【戦301最後の撃破王】として知られる方です!」

 

「ウチの事も知っとってくれてはるんッスか、おおきに〜」

 

普段では抑えていて中々見られない饒舌な状態の秋山が武部含めて知らない周囲へ解説するかのように3人がどういった選手なのかを語り、まさかこんな所で自分を知ってる人間が杉野以外にいるとは思っていなかった3人は赤い顔で照れ隠しのように視線を逸らした

 

「…ま、概ねは秋山ちゃんの言った通りかな

一応戦車道の合流は今日からだけど、専属で乗れる戦車も無いことだし

今日の所は杉野ちゃんみたいに技術指南メインでやってもらうつもりだから」

 

「「「はいッ」」」

 

周囲の様子を不敵な笑みを浮かべながら干芋を齧る角谷は一先ず今日やれるであろうことを3人に指示し、それに元気よく答えた3人は再度角谷へ向き直って同時に敬礼

敬礼の状態から戻れば駆け足で他の履修生達と同じように列へ戻っていく、まるで一角だけ軍隊のように統率の取れた動きな為に角谷は自身の頬が思わず引きつったのを自覚しそれを誤魔化すように頬を上から指で揉み込んだ

 

「…それじゃ、無事に新メンバーの紹介も出来たことだし

あとはかーしまと西住ちゃんに任せるにぇ〜」

 

「はッ」

 

「あ、はいわかりました」

 

そうしていつも通り角谷は自分の役目は終えたとばかりに河嶋と西住へ丸投げしセンターから離脱、タイミングを見計らって河嶋と履修生の列から西住が前に立ち今日の訓練範囲や要点などを伝え

本日の訓練がスタートした

 

 

 

 

 


 

 

公式風キャラ説明③

 

名前 宮崎(みやざき)(いさみ)

所属校 香川県立丸亀高等学校→県立大洗女子学園

学年 3年生

所属チーム 現在は無し

担当 戦闘301戦車隊【新選組】分隊長(タンカスロン時代)→無し

身長 160cm

容姿 癖っ毛ショートカット・糸目

出身 広島県呉市

現住所 無し

家族構成 父・母

誕生日 10月5日

年齢 17歳

趣味 温泉巡り

好きな戦車 九五式軽戦車

宮崎のヒミツ① 実は343戦車隊(剣部隊)時代は教官としての側面が強く出撃回数はそれほど多くない、ほとんどの撃破数はそれ以前に稼いだもの

 

 

公式風キャラ説明④

 

名前 小高(こだか)登華(のりか)

所属校 長野県松本筑摩高等学校→県立大洗女子学園

学年 1年生

所属チーム 現在は無し

担当 戦闘407戦車隊【天誅組】本田区隊二番機車長(タンカスロン時代)→無し

身長 148㎝

容姿 長めのアンダーツインテール・ツリ目

出身 長野県松本市

現住所 無し

家族構成 父・母

誕生日 2月26日

年齢 15歳

好きな戦車 五式中戦車 チリ

座右の銘 きみ死に急ぐなかれ

小高のヒミツ① 実は実戦経験は車長でしかしてないが砲手としての成績はスクール時代の同期で一番だった

 

 

公式風キャラ説明⑤

 

名前 葛西(かさい)智美(ともみ)

所属校 日本帝國学園中等部→知波単学園(高等部)→県立大洗女子学園

学年 1年生

所属チーム 現在は無し

担当 戦闘301戦車隊【新選組】第二区隊二番機車長(タンカスロン時代)→無し

身長 174cm

容姿 ウルフカット・下まつ毛の長いタレ目

出身 兵庫県丹波篠山市

現住所 無し

家族構成 父・母・長兄・姉・次兄・三兄

誕生日 3月8日

年齢 14歳

好きな食べ物 粉物・缶詰のパイナップル

好きな教科 体育

趣味 体を動かすこと・機械弄り

好きな戦車 チハ改

葛西のヒミツ① 実はナンバーを切ったシビックを2台所有してる

 

 






前回投稿して、2日で7000文字書いたんすけどそこから伸び悩みましたね
なんでそんなに増えたんだよぉって話です、あまりに長くなりすぎたので途中で切り上げましたし本編基準だとここまで書いても全然進まないと言う…
あと最近は文字数的に見直しが本当に大変です、おかしなところ見つけたら教えてください

はい、話変えまして皆さん
いつもながらお気に入り登録、感想、評価等励みになりますので是非よろしくお願いします
仕事自体はまだですが職は決まったので相変わらず次回更新不明となっております
合間に書けそうだったら書き上げて完成次第投稿しますけどね…

あと誤字脱字結構あると思います、発見次第直して行きますので見つけたら温かい目で見逃してやってください

以上です
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