ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜 作:ReA-che 名義
待 た せ た な
ショータイム☆だッ
「今日はここまでにしよう」
『お疲れ様でしたー!』
無事に本日の午後訓練、並びに放課後の自主練も終了し
挨拶もそこそこに履修生達はゾロゾロと帰路へついていく
「ナオさん、一緒に帰ろ」
「…おう、ちょっと待ってらっせ」
いつものように練習後に西住達あんこうの面子は杉野の元へ駆け寄り帰ろうと促し、当の杉野は同じ戦車チームの3人に軽く目配せしてから頷いて帰宅の準備に入る
とは言え、放課後でも杉野はそのまままっすぐ帰ることはなく
こうして西住達を送った後にまた学校へ戻り整備に勤しむ日々を送っていた
「あれ?宮崎さん達と予定とかあったの?」
「いや、別に?──今あいつらウチに住んでるから先に帰ってろっていう意味でやっただけ」
実際には杉野のチームの他3人は本職の近藤には敵わないまでも杉野くらいには戦車の整備が出来るのでこれからは3人も含めて戦車の整備をする予定なのだが午後の自主練が増えてからその後夜遅くまで整備をしてる事は杉野は黙っていた
自主練が始まる前ならまだしも終わってからだと日付変わるギリギリまで整備することがザラなのでそんな事を言おうものなら即刻止めが入りそうだからである
「…え?3人共ナオの部屋に住んでるの?」
「俺寮じゃ無くて借家暮らしだからな、んであいつらアホだから寮の契約スタート前にこっち来ちゃって家なき子になったんだと
仕方ないから今週一杯はウチで寝泊まりさせることにした」
杉野の一言に驚いたように目を見開いたのは武部で、というのも学園艦に実家がある一部生徒を覗いて大半の生徒は寮住まいである
特にシェアハウスでもなければ基本的にマンションかアパートの一室がスタンダードな為、4人で過ごすにはかなり手狭なのではと小首を傾げていた
しかし本人が即座に否定したように杉野は住む場所を寮ではなく借家契約で借りているため一軒家丸々なので手狭というわけではない
「…へぇナオさん借家なんだ」
「さすがに一室じゃ狭い、かと言ってシェアハウスはしたくないってなるとまぁ別口で借りるしかねぇやな
気楽でなかなか楽しいけどさ」
「あ〜、前に遊びに行った時も言ってましたね」
寮ではなく敢えて一軒家を借りて暮らしている事が余程意外なのか未だ驚いた様子の西住へ寮があるにも関わらずわざわざ借家を借りてる理由を伝える杉野
そう言えば以前そんな事を言っていたと納得した様子の秋山に他の4人はきょとんと小首を傾げた
「え?ゆかりんナオの家行ったことあるの?」
「はい、一度だけお邪魔させていただきました」
「…私、呼ばれたこと無い…」
意外と言いたげに聞く武部に秋山は少し興奮気味に言う、その後ろでは何やら複雑な表情をした西住が自分はまだ呼ばれていない事に気付き暗い表情で呟いた
「…まぁあの日に関しては杉野殿にかなり無理をさせてしまったので、休息に寄っただけで遊びに行ったわけではないんですが」
「朝から気を張り詰めてたから久々あんな疲れたわ」
その様子を見てか秋山と杉野はあの日に関してはまぁ…と多くは語らないまでも純粋にプライベートで遊ぶために呼んだのでも呼ばれたわけでも無いため微妙な表情を浮かべる
「──じゃあ今度はナオの家にみんなで遊びに行っていい?」
「別に構わんぞ?ただしさすがに人数過多になるから3人いなくなってからな??」
誰も純粋に杉野の家へ遊びに行ったことがないということで武部が皆で遊びに行く提案をすると杉野は二つ返事でこれを了承する
一応は借家と言えど居候3人がいる内に5人も来たのでは家主の杉野を合わせて9人となる
これではあまりにも狭くなるため3人がいなくなってからという条件付きではあったが
「何なら泊まりとかは…」
「好きにしな、ただし親御さんとかいるならちゃんと連絡しろよ?」
「ナオそう言うところはちゃんとしてるよね」
了承されたことでふと西住の脳裏に思い浮かんだのは、いつもであれば自身の借りている寮で集まる事となっているが夕食を食べたら解散となるということ
これは彼女が借りている寮の一室では6人ではかなり手狭になってしまうため、本来なら仲良くなった友達とお泊まり会等年相応な事をしてみたいが出来るスペースがない
しかし杉野の家がどれほどの広さか分からないものの少なくとも3人下宿して文句が出ないことからまだ余裕があると推測し
杉野の家でならばそういった事も出来そうだと踏んで聞いてみてはこれも二つ返事で許諾を得ることが出来た為西住は内心でガッツポーズを取る
「そういうとこってどういう事よ、俺って結構しっかりしてるっしょ??」
『………。』
「おい、なんでそこで皆して黙り込むんだよおかしいだろッ」
一方で来るなら家族と一緒に住んでいるものはきちんと許可を取ってからじゃないと、と続ける杉野に武部は思わずと言った様子でそう口走ると表情を引き攣らせながら心外だとばかりに杉野は反論する
しかし普段の行動が行動な為彼女の味方は誰もおらず逆に杉野自身が狼狽える事となった
「ナオ割と喧嘩っ早くて衝動的に行動することあるじゃん、しっかりしてるって言える?」
「ナオさんって頼りにはなるけど自分を顧みない所あるから見ててすごく不安になるの」
「目の届かない所に行かれると色んな意味で心配にはなるな」
「もう少しご自愛なさってはいかがですか?」
「…杉野殿、これに関しては私も皆さんと同意見です」
「スゲェ、俺の味方が誰一人としていねぇ」
正論によってフルボッコにされたことで杉野は思わず何とも言えない表情で苦笑いを浮かべる、とは言え彼女たちと行動を共にするようになって早2ヶ月余り
口では善処すると言っておきながら自身の価値観がやはりどこかズレたままで改善する気のなさそうな杉野には当然と言えば当然の意見とも言えた
◆
「運転ありがとうございました、また明日学校で」
「おう、また明日」
いつものように順番にみんなを送り、最後の西住を寮まで送り届けた所で一度センターコンソールに備え付けられた時計にて時刻を確認すると早くも20時手前を指していた
みんなやる気が十分な為任意の放課後自主練にも自然と熱が入り最近は西住達を送り届ける時間はこれくらいの時間になっている事がザラだ
(20時には戻れるな…)
一人になった車内でそう考えながら車を学園に向かって走らせる、元々さほど大きくない大洗の学園艦
それも外れに住んでる俺以外皆中心地である市街地に住んでいる為車での移動なら10分としない内に再度学園まで戻って来ることが出来る
「あ、暴走族が戻ってきました」
「こら人聞き悪ィこと言うんじゃあねぇよ」
いつも止めてる職員用の駐車場へ車を止めると待っていたようにミヤブン達3人が歩いてくるが小高のあんまりな物言いに思わず顔をしかめてしまう
「ええッスね〜、学園艦でも車で通学ならえらい楽そうッス
ウチも今度の休みに1台引き上げてこよかな」
「いいじゃん、持ってくれば?」
「確か学園艦内やったら書無しでもオッケーっしたよね?」
「…いやそれ以前にどうやって持ってくるつもりだよそれ」
続いて葛西が学園艦内を移動するために所持している車を持ってくるか悩んでいた為に持ってくれば良いと提案してみるもまさかの書無し
当然書類の無い車など一般国道に存在してはいけないので仮ナンバーすら借りられない、そんなものを兵庫から大洗まで葛西はいったいどうやって持ってくる気なのだろうか…
流石にナンバー無しで自走してこないよね??
「お疲れ〜っす」
「あ、来た」
「今日
駐車場から格納庫へ4人で移動し、挨拶と共に中へ入ると既に整備へ勤しんでいた自動車部の4人と近藤さんがこちらへ振り返る
毎晩顔を合わせてる自動車部からは呆れたような視線が突き刺さった
「スギノ働き過ぎだよ、たまには休息取らないと身体壊すよ?」
「頑丈なのが俺の取り柄だから心配するな、それに今はまだ少しでも人手が多い方が良いだろ?」
4人のうち同い年と言うことで特に気軽な仲であるツチヤから苦言を呈される
今回新たに3名が加わったことで大洗戦車道チームの整備班は9名となり、最初とは比べ物にならないほど作業効率が上がったがそれでもまだ少ない
戦車みたいな重機となると最低でも2人で1輌、欲を言えば各部位に一人配置したい為結局搭乗員と同じくらい整備の人手が欲しいところなのだ
…その点で言ってしまえば初期の一人で1輌回していたのはてんでお話にならない環境と言える
「もっと人手が増えてくれれば俺等も自分たちの戦車にだけ専念できるんだが」
「それを言われちゃうと耳が痛いなぁ」
思わず口を出た言葉に近くにいたナカジマさんが苦笑いを浮かべた
出来るからやってることではあるし機械弄りは確かに楽しいのだが、一つ一つの部品が大きく重い戦車は正直好き好んではやりたくない
人手がちゃんとあるなら自分たちで使う分だけの戦車をちゃちゃっとメンテナンスして帰りたいのが本音ではあるが
人がいないため言ってもしょうがないのだ
「それじゃあちゃっちゃと始めて今日は早めに帰ろう」
「消耗部品の検査や調整くらいだからそこまで時間も掛からないだろうしね」
試合で酷使するならまだしも訓練では戦車というものはそうそう壊れるものでも無い、…まぁ設計の古さから時折壊れることもあるが稀である
そのため基本的に放課後にやることと言えば突発で入った修理以外は各部位の消耗具合の検査や消耗品や油種類の交換などのそれほど難しく無い点検が主である
早速取り掛かろうと工具を持って口を開いたホシノさんとスズキさんに頷き返し、本日の整備がスタートを切った
飛んで翌日も試合が近いことから1日中戦車に乗って履修生一同は訓練に励む、おそらくここから夏の全国大会が終わるあたりまでは通常授業のある日よりも一日中訓練をする日が多くなるだろう
「いや〜、さすがに昨日の今日で一日訓練は
「言うな、口に出すともっと辛くなるぞ」
初夏の日中ともなれば近頃は気温も高くなりますます戦車の車内は暑く感じる、玉のような汗を額に流し常時笑っているような糸目を苦しげに歪めて呟くミヤブンに弱音をやめるように言っては全身の節々に感じるダルさに俺もついはぁと小さな溜息を溢した
「だったら整備の後に筋トレなんてやめれば良いじゃないですか」
「いや筋トレは必要だろ、実戦から離れて久しいから身体だいぶ鈍ってるし」
その様子を見た小高が呆れたように呟く腐っても元は精鋭部隊の戦車乗り
驕って負けては名折れである為昨晩から整備後に少し運動をしてから帰るようにした
まぁ久々だからかなり軽めに、5kmランニングと腕立て伏せ腹筋スクワット等の器具を使わない各種トレーニングと全身を鍛えられるロープクライミング等
結局早く上がった意味はあまり無くなってしまったし違う意味で全身バキバキである、だいぶ身体が鈍ってしまってるようだ
「徐々に内容増やして月末には元のトレーニング量に戻すぞ」
「先輩の鬼ぃ…」
戦車道とは通常時でも割と過酷な環境であるが、チハ改に乗るというのはさらに上をいく過酷さである
なにせ3桁を超す速度で右に左にと機敏に動く車内で作業をしなければならないので基礎体力からなにから従来の戦車とは比べ物にならないレベルが求められる
そう言ったのが結局ランニングコストが高いってことでベテラン搭乗員の退いた所でチハ改が敬遠された理由でもある
訓練なんて一つの項目に精々かかって1時間程度なのでまだボロが出てないが、試合となれば数時間〜半日
決定打を打てずに長期化すれば日を跨ぐことも稀にある
そんな時に一番経験者が固まったチームが他の初心者軍団を置いて撃破されてみろ、俺恥ずかしくて他の履修生のツラ見れねぇよ
だから訓練と整備終わりに正直辛いけど筋トレします、はいこれ決定事項ね?車長は俺なんだから
小高に鬼と言われようがゆくゆくは全盛期と同じメニューでトレーニングします
「のりちゃん諦めぇ、ウチの隊長はやる言うたらホンマにやるけぇの」
「うげーっ救いは無いんですか?宮さん」
「ないッ、まぁ精々言い出しっぺの杉野さんが率先してやるから付き合う気が起きやすいくらいじゃのう」
「…一番たちが悪い」
小高にはたちが悪いと言われてしまったが、実際部下のやる気を出すために一番必要なのは何かと言えばそれらを仕切る一番上が率先してやっている所を見せなきゃいけない
つまり例え3人がサボろうが何しようが一度決めた以上言い出しっぺの俺だけはやらなきゃならない、一応車長なわけだしそういうのが所謂リーダーシップである
「まぁ休みたい時は休めばいいじゃん、お前らは」
「いやー、先輩一人やってる中帰るのも中々じゃないですか?」
「年上のウチはまだしも後輩2人には厳しいじゃろうな
杉野さんは気にせん人って分かっとっても、上の人間置いてそそくさと帰るなんてよーやらんでしょう」
まぁ俺は休めないんだけどなと冗談めかして言えば二人に何とも言えない表情をされる、まぁ俺はあんま気にしないタイプだけど元いた部隊だとかそれ以前のスクールだとか
基本的にこういうのは全体でしかも強制的に行われるのが普通だったから気が引けるのかもな
「昨日も言ったけどさ、経験者である以上は相応に戦果上げたいし簡単に撃破されるような無様なざま見せたくないだけよ?」
「まぁ足手まといにはなりたくないんでやりますけど」
結局愚痴は言うが付き合ってくれるとの事なので上々だ、なんだかんだ言って付き合ってくれる君たちが大好きだぜ俺は
◆
「本日はここまで!」
『お疲れ様でした〜!』
飛んでひとまず午前・午後の訓練が終了した翌日、格納庫に戦車をしまい全体号令が済んだ後は皆それぞれ解散ムードが漂っていた
というのも、本日は次の試合に向けた作戦会議にみほが
交換推奨部品のリストを作るのに日夜整備に勤しむ俺が呼ばれていた
一応、みほたちには言っていないが生徒会の三人には俺が自主練の後に整備にも参加していることはバレている
なにせ数少ない整備も出来る人材である為程々にとは言われたが整備まで担当しているのはありがたいから止められないとのことだった
「先輩、照準をもっと早く合わせるにはどうしたら良いですか?」
「ん?」
小山先導で向かおうとする道すがらそんな声が聞こえて振り返ればこちらは河嶋と共に移動しようとしていたみほがバレー部ことアヒルさんチームの佐々木と河西に話しかけられているのが目に入った
「ほぇ〜、みほはモテモテだな
ありゃ大変そうだ」
まぁ隊長だし部下から良く質問されたりしているのは慕われている証拠とも考え、しかしやることが増えればそれはそれで大変だよなぁと呑気な事を考えていた時期が俺にもありました
「──杉野、躍進射撃の射撃時間短縮について教授願いたい」
「…俺?」
声をかけられ振り返ればそこにはカバさんチームの松本がいた
…まぁ現在進行系でみほが二人からの質問にあっている為俺なのだろうが、さてどうするか
俺も射撃は得意だけどうちのチームの他3人と比べたらそこまで技量が高いわけではないんだよな
「なぁ杉野、ずっと戦車に乗ってると臀部が擦れて痛いんだがどうすれば…」
「杉野先輩戦車にエアコンとかつけられませんか?」
「ちょっと待て!?多い多いッ」
ふと気がつけばカバさんチームの他にも一番弟子ことうさぎさんチームの面々にも取り囲まれていた、その総数10人に纏めて喋られても何が何だか分からない
あ、でも大野が「戦車の話してると男の友達に引かれる」だの宇津木が「彼氏に逃げられた」だの言ってるのは分かった
…そういうのは武部に聞きなさい、自称恋愛マスターだから張り切って教えてくれる筈だ
──まぁ1年の頃からクラスは一緒で元からたま~に話す程度ではあったがあいつの浮いた話一切聞いたこと無いから結果はお察しなんだけどな
「…ナオなんか失礼な事考えてない?」
「そ、そそそそんな事ないぞ?バカナコトイウナヨナモー」
「雑ッ!いつにもまして嘘つくのが下手だ!?」
履修生の半数近くの10人に取り囲まれてあれがどうだこれがどうだとわちゃわちゃしていたのも束の間、騒ぎを聞きつけて席を外す予定だった河嶋・角谷の残る生徒会メンツを筆頭にあんこうのみんなとアヒルさんのみんな
結局履修生全員が集まってきてその中でも武部になぜか詰め寄られたので適当に誤魔化しておく、最近あんこうの5人にはめちゃくちゃ思考が読まれている気がする
そんなにわかりやすいかな俺って
「…なんだかんだ毎日一緒にいますし、雰囲気ですかね?」
「表情には出てないかもしれないが良く墓穴を掘るから、わかりやすいと言えばわかりやすいな」
「ウッソだろおい、なんでそれもわかるんだよ」
何故か思考が読まれてる事に関して考えていたこともバレていて秋山と冷泉から指摘が入る、エスパー集団かコイツら
「しっかしどうすっか、さすがにこの人数はなぁ…」
「ナオさん人気者だね」
「…頼られるのは嬉しいけどここまで多いと複雑よな」
話を戻し辺りを見渡せば戦車道履修生全員の姿が見て取れる、これから小山の手伝いをするのに一人二人くらいの受け答えならまだ良かったが10人はさすがに捌けない
さてどうしようかと考えていた所でなんでかは分からないが面白く無さそうに口をへの字にしたみほから茶化されるがこちらとしては複雑な心情である
「どうする?杉野さん…私手伝ってはほしいけどあまり急ぎではないのよね」
「いやー…だとしても流石に厳しいぜこれ、しかも役割をある程度出来るってだけで俺の本業は車長だし」
一旦こちらで用事が済んでから向かうでも良いと小山からは言われはしたがだからと言ってこの人数を一人一人相手していたのでは時間が掛かるし、何より車長以外のことは純粋な技量で言えばそこまで高くないのだから教えるのが俺で良いものなのか…
「私たちも手伝いますよ」
「お、悪いね…お願いしちゃってもいいかな」
「はい、戦車のことでしたらお任せください」
「恋愛に関しては私に任せて!」
これはもう匙を投げるしかないだろうかとまで考えた所で秋山や武部を筆頭に続々と出来ることはサポートすると申し出があり、ようやく何とかなりそうな気がしてホッと一息ついたタイミングで何処かソワソワした様子のみほが口火を切った
「わ、私も手伝う」
「みほはアヒルさんの指南があるだろ」
「ううう…でも正直操縦や照準に関してはあまり得意じゃないんだよね」
「…なら操縦に関しては私が見る」
「照準は私に任せてくださいな」
彼女の優しい性格上、困ってるこちらを見て居ても立っても居られないのだろうが
そもそも彼女もアヒルさんチームから指導をお願いされている為丁重に断ろうとすれば彼女もこちら同様、出来はするが特段得意な項目ではないからと尻すぼみに言った
それを見かねてか操縦について聞いた佐々木に対して冷泉が、照準について聞いた河西に対しては小高がそれぞれついて列から離れていく
…まぁ確かに、射撃についてはウチの4人の中でも小高が一番上手いから適任ではあると思う
確かスクールにいた時は同期で一番だったんだっけな、その上で車長としての適性の高さから車長しかやったことないらしいけど
場所を移して現在は生徒会室、ここで小山に渡された資料を見ながら部品リストの製作に俺は勤しんでいた
ちなみに何か手伝えることがあるだろうからと五十鈴がついてきたのだが、肝心な部品に関してはほとんど知識が無いため別口で書記関連の手伝いをしている
「──直ぐに交換をしないといけない部品がこっちのリスト、あくまで推奨なのがこっち、最後のこれはまだ変えたばかりの部品だ
一応交換した日時も入れたからある程度参考になると思うが…」
「早い!ありがとう杉野さん、助かっちゃうな」
そこで言うと戦車の構造さえ理解していれば細かい違いはあるとは言え大まかな部分はどんな車両も変わらない、作業を終えた俺はリストを小山に渡してからケータイを開いて各々進捗はどうかとメールで聞いてみる
ちなみに作戦会議に行ったみほはもっと前に終わっているらしく、色々皆の様子を見て回ると少し前に連絡が入っていた
(…あー)
メールを打って少し待ち、割りとすぐに返ってきた返信を覗いて思わず内心で苦笑いする
戦車について詳しい受け答えの出来る秋山や恋愛マスター(仮)な武部は概ね順調、それは端から見ていたみほも同じように書いていた
しかしどうにも冷泉の方は感覚派の天才気質な為上手く行かなかったようで
うちのチームから操縦を担当している葛西が補佐に入ったようでひとまずなんとかなったとの事だった
(まだまだ細かいところは前途多難…まぁ仕方ねぇよな)
そんなことを考えながらケータイを閉じて書類とにらめっこする五十鈴の方を見るが彼女はいくつかの書類に目を通しながら小首を傾げ何かに悩んでいるようだった
「──どうかしたのか?」
「…いえ、この書類なのですが──」
声をかけた俺に反応して持っていた書類を渡してくる五十鈴は何か難しそうな表情をしていた
「…あぁ、そう言えばまだ見つかっていないのあるって言ってたっけ」
「なかなか探す時間がなくて後回しになっちゃってたのよね~…」
書類を確認してみればそれは過去の戦車の保有数リストと売却リスト、そして今現在の現存数のリストとなっているのだが数字が合っていない
4輌ほど保有数のリストからいつの間にか抜け落ちており、売却リストにも乗っていない
もしかしたら打ち込みミスかも知れないが、過去にまだ見つかっていない戦車があるとここにいる小山を含めた生徒会三人と話した事を思い出した
「じゃあ探す?」
「探すったってな…どこにあるか全くわからない状況でどう───ってなんでいんだよ」
不意にリストから抜け落ちてる戦車を探すかと声が掛かり振り向けばいつの間にやら生徒会長の角谷がいつものように不適な笑みを携えて突っ立っていた
「だってここ生徒会室だもん、そりゃいるよ」
「ついさっきまでいなかっただろうが、さては暇だから戻ってきたな?」
角谷は確か作戦会議をする河島とみほの方に言ったがずいぶん前に終わったらしいので暇だからこちらへ来たのだろう、俺の問いには答えなかったが肯定するようににひひと笑っていた
「まぁまだアンツィオへの偵察にも行ってないから、作戦会議と言っても前の試合の映像からどういうやり方をしてくるか辺りをつけるくらいだからすぐ終わっちゃってさ」
「大まかな概要はみほから聞いた、こりゃまた秋山が張り切るぞ」
「…申し訳ないけど秋山ちゃんのことお願いできる?」
「おう、任せろ」
前回のサンダースを含めて、今後他校の学園艦へ潜入する際は生徒会公認となっている
そのためこちらは大手を降って乗り込めるわけだが、移動手段を持つ俺が首を縦に振らなければ秋山は平気で法の道を踏み外したやり方で潜入しようとするのでその事を含めて角谷にはよろしく頼むと改まったお願いをされるが
チームのためになることならば元々断るつもりも無いため二つ返事で了承した
「で、まだ見つかってない戦車のことなんだけど」
「場所の目星がついてないなら訓練優先した方が良いと俺は思うぞ?見つかったところで乗る人員もいないことだし」
大洗が優勝しなくてはならないと決まった今、新しい戦車は欲しいが訓練時間を削ってまで探すのは個人的には乗り気じゃない
ただでさえ時間も金も人も戦車も足りない、なら全体練度を高めることに重点を置いて1輌1輌が精鋭にしなければ今後は勝負にならないとさえ思えてくる
…ほんとは少数精鋭なんて1輌撃破されただけで大損害を被るからやりたく無いんだけどな
しかし現状はそうも言ってられない、例えるならそうだな
【歩兵】じゃ飛車角金銀は取れないが【と金】ならなんとかなるかもしれない、そう言う考えである
「でも人が増えてから探すんじゃ遅くないかな?」
「それはそう
だが角谷の考えは違うらしい、まぁ言いたいことはわかるけども
こちらは後発組を含めて乗る戦車はもう決まってる、新しい戦車が見つかっても人員に目星はついているのだろうか
「──安心してよ、必ず人員は見つける
絶対に無駄にはしないから」
「…はぁ、わかった
そこまで言うなら好きにすると良い、指示くらいは従ってやるさ」
いつにもまして真剣な表情で、新しく戦車が見つかれば絶対に無駄にしないで搭乗員を見つけて見せると語る角谷にそこまでやる気なら仕方がないかとそう返した
…全く、変な火ィ着けちゃったかな
◆
「華さん!ナオさん!こっちです」
「…テンション高くない?」
生徒会ことカメさんチームの皆さんから戦車を探すと集合が掛かり、再度格納庫へ戻ってくると遅れて華さんとナオさんが入ってくるのが見えたため二人を呼ぶために声をかける
特にナオさんはここ数日でチームを組んだために一緒にいる時間がさらに少なくなってしまったのでこうして先に声をかけておかないとすぐ先約が出来てしまう
ナオさんは人気者だから…ちょっぴり寂しい
「戦車を探すって言ってたけど、何か手がかりあるのかなぁ」
「ないんだな、それが」
ウサギさんチームの皆を引き連れてやってきた沙織さんが少し不安そうな表情で呟くとナオさんはなんとも言えない表情で手がかりはないと言って
なんとなくわかってたのか沙織さんは苦笑いで返していた、ナオさんたちは先程まで生徒会室で戦車に関するリストを作っていた為実はナオさんたちが今回で二度目となる戦車探索の発端になったらしい
「私たちはこのまま船内探してみようかな」
「先輩行ってきまーす!」
「見つけられるよう頑張ってきます」
「おう、言ってらっしゃい
…気を付けてな?」
沙織さんはこのままウサギさんチームの1年生6人と共に船舶科の管轄である船内に戦車がないか探しに行くらしく、1年生の子達とナオさんが一言二言話してから艦内の方へ向かっていった
「…心配?」
「少しな、あんまり奥まで行かなきゃ良いけど…」
どことなく不安そうに沙織さんを含めた7人の背中を見守っていたナオさんに聞いてみればやはり心配なようだ、少し過保護のような気もしなくはないけど
そこも含めた彼女の優しい面に思わず笑みを浮かべた
「…ほんと、何もないと良いんだけどな」
呟くように言ったナオさんの心配が的中してしまうのは、このすぐ後の事だった
「私たちも行ってくる」
「私も探索に行ってきますね」
続いて麻子さんがアヒルさんチームのみんなを、秋山さんがカバさんチームのみんなを引き連れてそれぞれ別の場所を探しに行ってくると離れていき
格納庫に揃っていた人達の数もどんどんと減っていった
「そろそろ俺も探しに行くかな、お前らどうする?」
「ウチらはちょっとめぼしいそうなとこ回ってみるつもりッスけど、正味5人も要らんので3人で行くつもりなんッスよね~」
「…大洗来たばっかで道知らねぇやつらで固まって大丈夫か?」
「いや、杉野さん考えてもみてくださいや
よぅ知らん人間が3人もおったら隊長さん気まずいでしょう?」
「あ、そっか…悪ィ3人で回ってくれるか?」
そうして探索に行こうと動き始めたナオさんは宮崎さんたちに話しかけて一言二言会話をしていたが途中小声で話している部分があって後半は聞き取れなかったが3人はそのままどこかへと行ってしまったので互いに別行動を取るみたいだった
「みほ、戦車探し行こうぜ」
「──あ、はいッ」
ここで別々に分かれたということはナオさんは一人で探しに行くのだろうか、そんなことを思って今では貴重となってしまった二人きりのチャンスに一緒に探しに行こうと声を掛けようか悩んでいたところをナオさんに一緒に行こうと誘われる
少し予想外だったけど私も彼女を誘おうと思ってたから行動を開始した彼女の小さな背中を追うように着いていく
「しっかしまぁ───」
「…見つからないね」
ナオさんと共に探索を始めて数時間経つが前回のように上手く行かず、戦車又はそれに関連する
「──あ」
「どうかしたか?」
ふとケータイがなった為確認をしてみれば先に探しに言った麻子さん&アヒルさんチームの皆と秋山さん&カバさんチームの皆の二グループが方や部品を、もう片方が車輌発見に至ったとメールで連絡が来ていた
「Ⅳ号用の長砲身とルノーB1bisが見つかったみたい」
「…みたいだな」
メール内容をナオさんに伝えている間に少し遅れて彼女のケータイにもメールが届き、私の報告と違いがないことを確認してかふうと一息をついて続けた
「…どうする?一度戻るか?」
「…うん」
名残惜しくはあるけど、日が落ち始め薄暗くなりはじめた辺りを見渡してこれ以上の探索は無謀と判断して彼女の指示に従う
「長砲身の方は後で調整に出さねぇとな」
「物干し竿として使われてたみたい」
「扱いが雑だよなぁ、球数の多いⅣ号とはいえ長砲身は高ッけぇのによ」
少しだけめんどくさそうに呟くナオさんに思わずあははと笑って返す、確かにIV号戦車は生産台数の多さから戦車道用のレプリカを含め戦場帰りの
しかし長砲身ともなれば重戦車も相手にすることが出来るようになるため部品単体だけでかなりの費用となる
それがいくら戦車道が廃れて久しいとはいえ物干し竿として使われていたと言うのだから彼女の気持ちも理解出来る
「──あれ?武部達はまだ帰ってきてないのか」
「まだ見てないですよ?」
「艦内を探しに行ったとはいえ一番最初に出ていったんだがな…」
そうこうしている内に再び格納庫まで戻ってくると戦車道履修生のほぼ全てが既に集合していたのに沙織さんとウサギさんチームのみんなの姿だけが見当たらず、思わず出入口付近にいた秋山さんと麻子さんに話しかけたナオさんは二人の言葉を聞いて表情を歪めた
「少し遅すぎやしないか?」
「確かに、今日は終わりだと正式にアナウンスされてから大分経ちます」
実は格納庫まで戻る道すがら、今日の探索を終了するように生徒会の3人を含めて一緒に残っている五十鈴さんからメールにて伝達がされている
にも関わらず沙織さん達の行方だけが未だ不明のままだった
「…あ!沙織さんから連絡が来ました」
「本当か!?」
徐々に異常を感じ取って周囲がざわつき始める中、私のケータイに沙織さんからのメールの着信が入る
その内容は───
────────
送信者:武部 沙織 さん
件名:どうしよう…
本文:迷子になっちゃった…
電波が不安定で電話出来ないし、どうしよう…
────────
沙織さんを含めた7人は学園艦の艦内のどこかで迷子になって来られなくなってしまったらしい
ナオさんの不安が的中してしまった瞬間だった
ついに月間ですらなくなってしまったけど8/1までにやらなきゃいけないこと多くて中々執筆時間とれませんでした
8/1過ぎたら週刊は盛り過ぎかも知れませんが月間くらいには戻せるんじゃないかなーと…
あとAI生成でオリキャラ達の立ち絵を作る話しはAI君が全然言うことを聞いてくれないため早々に頓挫しました、私は人の絵を書く才能が無いため惜しいですが早くも諦めモード入ってます
文才のある人も尊敬してますが絵を描ける人ほんと尊敬しますよ、私自身全く描けない人なので
はい、話変えましてお気に入り登録、感想、評価等励みになりますので是非ともよろしくお願いします
いつでもお待ちしておりますので
例の如く誤字脱字は発見次第直して行きます
以上です