ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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お久しぶりです、スランプになったからこの際非公開にして気になるところ直しちゃえと思ったら
そもスランプが強敵過ぎて殆ど直してないのに気付いたら6ヶ月近く経っちゃってました
お待たせして申し訳ありません、待ってる人がいるかどうかは置いておきまして、ここに謝罪いたします
そして2026年、もう3月ですが新年一発目の投稿となります
よろしくお願いします!





ワレ、アンツィオ高校に潜入セリ

 

 

試合が翌週に迫ったある日の正午のこと、この日は午前中が訓練、午後からは次の試合相手であるアンツィオ校対策会議が予定されていたのだが…

 

「そう言えば杉野先輩って今日は来てないんですか?」

 

「うん、朝に休むって連絡が来たよ

…秋山さんと一緒に」

 

ウサギさんチームの6人にして見れば自身の姉貴分であり、頼れる先輩の一人である杉野を朝から見かけておらず

午前は結局3人しかチハ改を動かす搭乗員が乗っていなかったことから小首を傾げた澤が西住に訪ねるとどこか面白くなさそうな声色でそう返ってきた

実はあんこうチームにて装填手を勤めている秋山からも休みの連絡が来ており、午前中は4人のみでⅣ号を運用していた

それ自体は別に良いのだが、二人揃って休むとなると単に偶然では無いと西住は思っていた

 

「西住、午後は対策会議があるから休憩空けは直で会議室に来るように

他の全員にもそう伝えておけ」

 

「あ、はい…」

 

購買へと向かう道すがら昼休みの後に控えた次戦の対策会議は今までの車長のみを集めた物と異なり、チームメイト全員にて行うと河嶋から言われ西住はこれに了承する

ちらりと後ろへと視線を送れば自身とチームを組んでいる秋山を覗いた3名と澤率いるうさぎさんチームが6名軽く頷いた

 

 

 

 

昼の休憩も空け、会議室には杉野と秋山を抜いた24名の履修生が勢揃いしており

内カメさんチームの河嶋が全員の前へと立ち、その他生徒会の残り二名以外の21名は椅子へと腰を降ろして聞きの姿勢へと入っていた

 

「──次の相手はどこの学校?」  

 

「次の相手はアンツィオ、確か創設者がイタリア人だったはず」

 

「イタリアの文化を日本に伝えようとしたイタリア風の学校だ」

 

隊長車あんこうチームより通信手の武部が次の対戦相手について訪ねると干しいもを食べながら角谷が、より詳しくは河嶋が答えた

 

「向こうはどんな戦車を使ってくるんですか?」

 

「主力となるのはイタリア戦車で、先の試合ではCV33とセモヴェンテM41を使用してる」

 

「──CV33って私大好きです!」

 

向こうの主力となる戦車は一体どんなものなのか、ウサギさんチームから車長の澤が尋ねれば待っていたと言わんばかりに河嶋が資料と共にホワイトボードに書き込んでいく

以外にも反応を示したのはあんこうチーム砲手の五十鈴なのだが、その理由はCV33が小さくて花を生ける花器にぴったりだと言う中々にトンチキな理由であったのでそっこうで武部により突っ込まれていた

 

そんなこんなで会議は進行していき、開始からしばらく経った頃

 

「──時間的にはそろそろ帰ってくる頃かな」

 

「え?」

 

ちらりと壁掛け時計を見やって呟いた角谷に西住が思わずと言った様子で首を傾げた

その直後

 

──ゴォオオオオ

 

「あれ?雷??」

 

「え、でも外はすごく晴れてるけど」

 

突如として落雷のような音が響き渡り、その音に周囲は混乱したようにざわざわと音の正体について話し

内何人かが意を決したように窓へと近づいた、その瞬間

 

 

──ゴオオオオオォォォッバリバリバリッ

 

窓のすぐ目の前を緑色の飛行機がとてつもないスピードと轟音を撒き散らして横切っていく

 

 

「飛行機だッ!?」

 

その飛行機…局地戦闘機紫電改は一度校舎から離れ学園艦の艦尾側へと回り込むとゆっくりと旋回を続けながらこちら側へ向けてやや尻下がりの状態となり着陸態勢へと入った

 

 

「あ、杉野先輩!?」

 

「ほんとだ!」

 

「おい後ろにいるのはグデーリアンじゃないか!?」

 

校庭のど真ん中に堂々と着陸した機体の風防が開き、その中からひょっこりと飛行服フル装備の杉野と秋山の姿が確認できたことから窓へと駆け寄って飛行機の搭乗員を見ようと集まっていた人だかりの中からそんな声が上がった

 

「…相変わらず派手だねぇ~、しかし」

 

声に振り返った西住が見たのはいつものように間延びした口調ではあるものの、どこか表情がひきつっている生徒会長の角谷である

この様子から校庭に降りる事は事前に一切聞かされていなかったのだろう

 

再度視線を校庭に降りた紫電改へと向けると皆に見られてることに気付いてか手を振って応える杉野の姿が目に移った

 

 

 

 

「秋山優花里、ただいま戻りました!」

 

「秋山のアッシーちゃんも戻ったぞ~」

 

「なんてこと言うんですか!?」

 

おそらく会議室へ向かってくるだろうからとその場の皆が待つこと数分、案の定扉が開くと共に現れたのはアンツィオ校の物と思われる制服に身を包んだ秋山優花里と緑の強いカーキ色を主体にした飛行服…ではなく剣部隊のPJに身を包んだ杉野の姿

早々に帰還の報告をした秋山の隣で杉野はそうふざけ倒して報告を済ませると本気で慌てた様子の秋山からツッコミが入りそのコミカルさに何名かが肩を震わせながら視線を下へと落とした

 

「──秋山さんのその格好、もしかしてアンツィオに行ってたの?」

 

「あ、はい!私でお力になれることは無いかと考えたらやっぱりこれくらいしか無いかな…と」

 

「ナオさんはその付き添い?」

 

「俺ァ秋山のアッシーちゃんだからな、例え平日だろうが休日だろうが秋山に「関係ない、飛べ」と言われたらアッシーの俺は「はい」と答えるしか───」

 

「あ、あの杉野殿?なんかその言い方凄く人聞き悪くありませんか?そろそろ泣いちゃいますよ??私…」

 

秋山の格好から前回のサンダース同様、潜入してきたのだろうと当たりをつけた西住が訪ねれば少し照れ臭そうに秋山が肯定し

それならば今回もそこまでの移動手段を持つ杉野が付き添ったのだろうとまで考えて、なにやら杉野がとんでもなく語弊のある言い方をしたために流石の秋山もひきつった表情をしていた

 

「それにしても本当に飛行機なんか持ってたんだ…」

 

「あれは確か旧軍の戦闘機だったよな、私は専門外だからあまり詳しくないが」

 

そんなこんなで一頻りふざけ倒した説明ばかりしていた杉野に武部とエルヴィン(本名:松本里子)からそんなことを訪ねられて杉野はすこしばかり唸るようにしてから続けた

 

「まぁ…元は戦闘機乗り志望だったから

そっちの道に行くことは出来なくても、自分で乗りたいときに乗れるように所有してるだけ」

 

そうして視線を武部からエルヴィンへと向き直り、少しばかり驚いたように

 

「松もt──エルヴィンは当たらからずも遠からず

流石得意分野と近しい年代なだけあるな」

 

「…今松本と言いかけなかったか?

エルヴィンだと言っただろう、忘れないように100回言おうか?」

 

「いや、結構」

 

杉野の目の前で拗ねたように口をへの字にするエルヴィンは得意分野はソウル名の元となったエルヴィン・ロンメルの活躍した第二次世界大戦(ナチスドイツ)

得意分野ではないと言えど、年代は一緒でしかも同盟国の兵器ともなれば多少なり覚えがあったようだ

 

「それより秋山」

 

「…あ、そうでしたね」

 

露骨に話をそらして杉野は秋山へ促すと、忘れていたと言わんばかりにUSBを西住へと手渡した

 

 

 


 

 

 

USBをパソコンに繋ぎ、プロジェクターの電源を入れれば正面のスクリーンに【実録!突撃!!アンツィオ高校】と表示される

…今回も前回同様プロジェクトAの主題歌のBGM付きである

 

前回と違う点は、学園艦上空にいる時点でカメラを回す余裕があったからか映像は上空からスタートとなっており

大海原をポツンと航行するアンツィオ校の学園艦へゆっくりと着艦するところから始まる 

 

『私達は今、アンツィオ高校に来ています…』

 

画面に一瞬映る秋山は前回の失敗を学んで厚着を着込んでおり、前回と違い寒さはあまり感じないのか余裕の表情をしてる

ついで秋山がカメラを正面へ向ければフル装備の飛行服を身に纏った杉野が慣れた手付きで機体を操縦している様子が映し出され

思わず辺りから「おお…!」と声が上がる

 

「いや何でナオが操縦上手いのみんな突っ込まないわけ!?」

 

あまりにも操縦に手慣れているのにそこに一切疑問の声が上がらないことに思わず武部が突っ込みをいれるが

そこは「杉野だからこれを含めてまだ隠し球があるんだろう」と誰も不思議に思わないようで武部は次第に諦めた

 

《では、着替えて潜入します》

 

アンツィオ高校に入る前に、どこかの更衣室と思われる場所でカメラは一度途切れる

再度カメラが回るとお互い杉野は私服、秋山がアンツィオの制服姿で互いに別れを告げて別行動となる

 

「何で杉野先輩は潜入しないんですか?」

 

「俺のサイズの制服があるわけないだろ?あったにしても俺小柄すぎて目立つじゃん」

 

「あ、そういう…」

 

なぜ別行動を取る必要があるのか、疑問に思ったように一年生から阪口が声を上げて杉野が答える

ちなみに大洗における杉野の制服も実は特注品だったりする

全国の学園艦の生徒を全てかき集めても最下位──とは言わないまでも、下から数えた方がぶっちぎりに早い小学生もビックリの低身長な為

大洗においては学園始まって初のサイズであるために一着ダメにしたらかなり納期に空きが出るほぼ一点ものなのだ

 

「ナオさんは秋山さんと別れてから何してたの?」

 

「ん?まぁ街を散策」

 

二人が別れてからの杉野の同行が気になると西住が聞けばそこは特に隠すようなことも無いため杉野が正直に学園艦の市街地部を探索していたと言えば「え!」と武部が声を上げた

 

「良いなぁ…アンツィオって今若いカップル達の間で人気なんだって

私も行ってみたいなぁ…」

 

「待て、武部なんでゼ○シィなんて持ってんの?

どっから出した?それ」

 

そうして婚活雑誌の特定のページを開いて見せる武部に思わず杉野は苦笑いを浮かべた、杉野も武部も現在は高校2年生の16歳

いくらなんでも気が早すぎる

 

「アンツィオの子達とは喋ったりした~?」

 

「多少な」

 

続く質問は生徒会長の角谷から、実際杉野は一切関わることなく終わらせたかったのだが

やむにやまれぬ事情というやつである、そんなことを思いながら

杉野はアンツィオ高校潜入時の時の事を思い返していた

 

 

 

 

 

 

 

「──暇になってしまった」

 

時を遡ること本日の午前、時刻は秋山と別れてすぐの午前8時20分頃

潜入は秋山がメインなので待ってる間は自由時間となるのだが、特にアンツィオに用があるわけではなく早々手持ち無沙汰となってしまった

 

(秋山からいつ連絡くるかわからない分、アンツィオ校舎付近で時間を潰したいわけだが…)

 

あいにくアンツィオに個人の用はなかった為、当然のごとくアンツィオの見所がわからない

はぁとため息を一つ溢しながら観光巡りでもしようかとケータイを開きかけて中断する、見たいところが見つかって移動中に秋山から連絡が入れば目も当てられないからだ

 

(ってもそうなると本格的に行きたい場所が…)

 

校舎一体をぐるりと回るように歩きだし、通行人のアンツィオ校の生徒や観光客の間を縫いながら歩き続け

途中でピタリと歩みを止める

 

「──出店?」

 

たどり着いた場所はアンツィオ校の裏手側に位置する出店街で、店主は全員アンツィオ校の生徒なのか制服に身を包んでいる

それぞれイタ飯やデザート等多種多様なメニューの出店な為少しばかり興味は引かれる

 

(…ん?この匂い)

 

【鉄板ナポリタン】と書かれた出店の前に来ると微かに鼻につく匂いを感じる、ちょうど店主の少女がコンロに火を入れようとしていたので駆け寄ってその手首を掴む

 

「お姉さんちょっと待った」

 

「ちょ!?なんッスかアンタ!」

 

見知らぬ人にいきなり手首を掴まれて目の前の黒髪くせっ毛ショートで左もみあげを三つ編みにした特徴的な髪型の、どこか部下の葛西を思い出す喋り方をする少女は抗議の声を上がる

 

「仄かにガスの匂いがする、ホース変えた方がいいよ」

 

「はぁ?いやそんなまさか、この距離で気付かないわけ──」

 

しかし念の為と手を離せば近くの棚からガスの漏れ検知器を取り出して電源を入れ、少女がコンロ付近に翳すと【ピピピピピッ】と電子音が鳴り響いて疑いの眼差しだった少女は一気に目を見開いた

 

「は…?まさか本当に??」

 

ついでホースの端から端までまじまじと手にとって眺めながら「あ!」と声を上げた

 

「小さな亀裂が入ってる!危なっ!!」

 

少女は慌てたように元栓を締めてから別の棚から替えのホースを取り出すと交換作業に移る

 

「助かったッスよ!あの距離で気付くなんてアンタ凄いッスね!」

 

「いや、ほんのり匂いがしたから

黙っていくのも後味悪いし」

 

「どうしても匂いの強いもの扱ってるとこう言うときに鼻が効かない時あるんッスよ~!危うく店を吹き飛ばしちまうとこだったッス!」

 

ほっと目の前の少女は胸を撫で下ろすようにしてからニッと笑みを向けた

 

「ここに来たって事は飯はまだッスよね?

ウチの名物食ってってくださいッス、お礼に奢るッスよ」

 

 

 


 

 

 

目の前の少女、ペパロニがご馳走してくれた名物だという【鉄板ナポリタン】は美味しかったが、少々面倒なことになったと思った

 

「へ~!菅野は観光でウチ(アンツィオ)に来たんッスね~」

 

「あぁ…」

 

と言うのもご馳走になって食べてる間、ついでに完食した後もペパロニは目の前の席に座って一歩も動かないからだ

その間ひっきりなしに彼女から何故ここに来たのかと質問をされるが疑われてると言うよりは純粋に興味を持たれて聞かれているというのは声のトーンからわかるのだが

それはそれとしていつ秋山からの連絡が来るかわからない状況でずっと話しかけられてると言うのも堪える

 

「で、どうッスか?飯が旨い以外、私からすれば何も無いようなとこッスけど

居心地は良いと思うッスよ」

 

「あぁ…うん、そうだな」

 

あと流石にバカ正直に自分の名前を名乗れないので前回のサンダース同様偽名を使い、観光に来た中学生三年生という体にしたのだがその辺りからペパロニの距離感が近くなった

大分気に入られてしまったようだ

 

「──ペパロニ姐さーんッ!」

 

「…お?」

 

そんな雑談を続けていると目の前の道を3台のCV33が走ってきて出店の目の前に止まる、ペパロニを呼んでいたのは先頭車輌の操縦手をしていた子で

この車輌以外はきちんと二人乗っていることからペパロニを迎えに来たであろう事が伺えた

と言うよりも──

 

(ペパロニってアンツィオの戦車道履修生だったのかよッ!)

 

疑われていない今はまだ良いが、ボロが出ることを考えるとあまり親密になるのはますます不味い

そんなことを考えながらそそくさといなくなろうとしたその時、停車しているCV33のアイドリング音に違和感を覚えてふと立ち止まってしまった

 

「も~、なにしてんすか?ドゥーチェが集会あるっていうのにペパロニ姐さんが来てねぇから始められないって怒ってたっすよ?」

 

「あ!いっけね、昨日アンチョビ姐さんに言われてたのすっかり忘れてた!

菅野、申し訳ないっすけど──菅野?」

 

気付けば二人の間に割って入って、CV33の操縦席の子に話しかけていた

 

「随分と調子悪そうだな、一発死んでるんじゃないか?」

 

「…ペパロニ姐さん、この人は?」

 

「私の恩人の菅野、さっき知り合ったばかりだけど悪い人じゃねぇよ

…確かにグズついてるッスけど、菅野は何かわかるんッスか?」

 

ペパロニの問いにゆっくり頷いてから、再び操縦席席の子に症状について聞こうと話しかけた

 

「不調はいつから?」

 

「え?いや…朝にダート走ってからだけど…」

 

「…そうか、車載工具はあるよな?」

 

工具を寄越せと言えば困惑したような表情をしていたが渡してくれたので、エンジン側に回り込んで外板を固定してるボルトを外していく

 

「菅野って整備できたんッスか?」

 

「多少はな」

 

外板を外して中を確認するとエンジンルームは所々泥水で濡れている、恐らくは吸気口から入った物だと思われるがその読みが正しければ──

 

「…水浸しじゃん」

 

外とエンジンルームを繋ぐ吸気ダクトを外して確認してみれば中が湿っている、と言うことは吸気に水が混じったと言うことでまず間違いない

 

「エンジン一回止めてくれ」

 

「…ペパロニ姐さんの恩人なら止めないけど、なにする気?」

 

「キャブレターをバラす」

 

「ここで!?」

 

操縦席の子はますます困惑した様子だったが、きちんと直してやるからと言えば渋々といった様子でエンジンを停止

エンジンさえ止まれば、この年式の戦車のガソリンエンジンなんてシンプルな構造をしているから

特にこれと行って何か大変な物を外す事なくキャブレターへとアクセスができる

 

その為燃料コックをオフにして燃料ホースをクランプで止めてやれば後はキャブを外すだけの状態へはすぐに持っていけた

 

 

「あーあ、やっぱりか」

 

キャブを外して、バラしてみれば燃料とは明らかに違う透明な液体がフロートチャンバーにて分離した状態で貯まっていた

それをペパロニに声をかけていらないタオルに染み込ませて除去していく

 

「…え?それだけ?」

 

「キャブに水が貯まってたんだよ、大方そのせいで水の入ったシリンダーが点火不良起こして一発死んでたんだろ」

 

Oリングにシリコングリースを塗布してキャブを戻していけばたったこれだけなのかと操縦席の子から再度疑問の声が上がった

しかし燃料に水が混じれば当然、点火不良等の不具合を起こすのは明白だ

外した要領の逆手順でキャブレターを組み付けて「かけてみな」と声を掛ければどこか腑に落ちないような表情でエンジンを始動させる

 

「──え!?」

 

ポンポンポンッと軽快なクラッキングの後、先ほどの息継ぎするようなグズついたアイドリングとは違い

軽快な音でエンジンがアイドリングを続ける様子に操縦席の子と横のペパロニ

ひいては一部始終を見ていた他の2輌の四人も目を見開いた

…のだが

 

「…うーん?まだちょっと音がおかしいな」

 

「え?十分今朝の状態には戻ってるけど」

 

CV33は触るのは初めてだが、どことなくこの車輌…

と言うより3輌全てどこか違和感がある

 

 

「これキャブの同調しっかり取ってるのか?

最後はいつやった?」

 

「…いつでしたっけ?ペパロニ姐さん」

 

「…ドゥーチェに言われて春先にやったような気はするッスけど」

 

「…じゃあ多分狂ってるわな」

 

二人ともなんとも煮え切らない返事をくれたため、ぶっちゃけ勘ではあるが今よりはマシだろうと3輌全てジェット変えてスクリュー調整して同調をある程度合わせた

1輌目が仕上がる頃には誰も文句を言わずに受けてくれたので思ったよりは時間もかからずに済んだのが幸いだ

 

「助かったッスよ菅野!ウチは整備できる専門の人材が少ないっすから中々手が回らなくて」

 

「好きでやった事だから気にするなよ」

 

3輌とも同調合わせと言えどほぼ感覚で合わせてるため完調ではない、しかし最初と比べて明らかに微細なノイズなどが無くなって調子は良くなってるのが見て取れる

 

「そうだ!菅野も集会来ないッスか?みんなに紹介させて欲しいッス!」

 

「うちらも!是非チーム一丸でお礼させてくれよ!」

 

「あー…」

 

6人全員からかなり気に入られてしまったようで、一緒に来てほしいと懇願されたが丁重にお断りした

確かに履修生全員が揃ってる場であれば情報収集が目的で来てるのだからまたと無いチャンスな訳だが、当然そこには秋山がいることが想定できる

適当に散策してると別れたのにアンツィオの戦車道履修生達と一緒になって集会に現れれば混乱を招いてボロが出るかもしれない

 

それに…

 

(…なんか、ついていったら本格的に逃げるタイミング失いそうなんだよな)

 

潜入として溶け込むのは良いのだが少々短期間で好感度を稼ぎすぎてしまった、早い話が溶け込みすぎてしまったのだ

もう完全に仲間として迎え入れられそうな雰囲気である、いや嬉しいのだが

このままでは帰るに帰れない状況になりそうだった

 

「そうッスか?…残念ッスね」

 

「また近い内に来るだろうから、その時はペパロニのいる戦車道チームのこと紹介してくれよ」

 

「じゃあ約束ッスよ!絶対に来るって」

 

別れ際、そんな約束を交わして

ペパロニがCV33へ乗り込んだのを確認してから踵を返して立ち去ろうとする

 

「──菅野ッ」

 

ところを再び、背後から声を掛けられて振り返る

ニッと笑顔を浮かべたペパロニがキューポラのハッチから上半身を乗り出して続けた

 

「進学先が決まってないなら、是非アンツィオに来てほしいッス!」

 

「…考えとくよ」

 

「菅野がいたら百人力ッスよ!」

 

 

 


 

 

(…な~んて言われちゃったけどさ、次に合うときは敵同士な訳だし

ちょっと気が重いよな~)

 

こちらに飛んで来る質問はのらりくらりと交わしながら、画面のアンツィオ潜入の映像が見終わる

秋山の撮った映像によりアンツィオが対大洗戦の秘密兵器として新たに入手した戦力がイタリアの重戦車【P40】だと言うことがわかった

 

「ちょっと強そうですね」

 

「ちょっとじゃないだろ!」

 

「私、P40初めて見ました」

 

「こりゃもう少しガッツリ考えないとダメだね~」

 

映像を見て、五十鈴・河嶋・みほ・角谷がそれぞれ口々に思ったことを口にしているが

こっちとしては気になったことはそこではない、と言うのもP40は重戦車と言っても他国の重戦車に比べればまだやりようがある分脅威ではあるが警戒度はそこまで高くはない

それよりも…

 

「…え?あれ愛知の安斎さんじゃね?」

 

「知ってるの?」

 

「いや、直接会ったことはないけど…」

 

アンツィオは栃木の学校であるが、その隊長はどこか見覚えのある顔立ちをしており

よくよく見てみれば過去、それこそ戦車道のスクールにて活動してた頃に「愛知にいる凄腕の戦車乗り」と東海地方の先輩方から聞かされていた安斎千代美その人であることに気付く

その時見せられた写真はツインテールで勝ち気な笑みを浮かべる映像の姿とは違い、三つ編みにして1本にまとめたルーズサイドテールに牛乳瓶の底のような眼鏡を掛けて冷たい表情をしていたが…

 

「東海で緑髪の戦車乗りは要注意って言われてたらしいからな」

 

「へぇ~、チョビ子も中々有名なんだね~」

 

どことなくニヤつきながらそう言う角谷に杉野は少し違和感を感じた、なんとなく呼び方からして距離が近いような

…まるで昔からの知り合いのような

 

「試合はP40の警戒は怠らず、でもナオさんの言ってることを考えたらアンツィオ高校の隊長さん自身も警戒してた方が良いのかも…」

 

「まぁ実際は戦ってるの見たこと無いからなんとも言えないけどな、警戒して損はないんじゃないか?」

 

みほは横で小さな声にてぶつぶつと呟きながら自分の世界に入ってしまった、しかし僅に聞き取れた情報から向こうの隊長も警戒すると言うことだったので恐らく帰ってからでも自分で東海地方の過去の試合でも見て敵の大将、安斎千代美の戦い方を確認するのでは無いだろうか

 

 

 

 

 

時刻はほぼ同じ頃、アンツィオ高校のとある一室にて8人の少女が話をしていた

…話、というが厳密には前に教室の教卓側に立った2名の少女が席に座らせた6人の少女達に事情聴取をしているというのが正しいが

 

 

「それで?バタバタしていて聞きそびれてしまったが

なんでまたペパロニは遅刻したんだ?」

 

「いやぁ~、それがアンチョビ姐さんに言われてたことすっかり忘れちゃって店出してたんッスよ!」

 

「堂々と言うな!?少しは申し訳なさそうにしろ!」

 

アハハと悪びれもなく言うペパロニに対して流石に堪忍袋の緒が切れそうな勢いのアンツィオ高校戦車道チームの隊長、アンチョビが突っ込みをいれると他の6人はいつものが始まったかと苦笑いする

 

「──まぁ、それは良いんだ

いや良くないけどな!?ひとまず置いとくとしよう

…ペパロニ、なんでお前、今日はそんな上機嫌なんだ?」

 

「え~?そんなこと無いんじゃないッスか~?」

 

アンチョビの言葉を否定するように、しかしニヨニヨといつもに比べてだらしのない笑顔を浮かべるペパロニに一体何があればこんなことになるのだろうかとアンチョビば冷や汗をかいた

 

「あ、ペパロニ姐さんもしかして菅野くんの事が気になってるんじゃないっすか?」

 

「菅野?誰だそいつ」

 

「実はなんすけど」

 

5人の中からアマレットと呼ばれる少女が今朝あったこと、及び移動中にペパロニに聞かされていたことをアンチョビに話すと次第にアンチョビは怪訝な表情を浮かべた

 

「すごく目付きの悪い、でも顔は良い中学生の男子生徒に助けられた?

しかも整備の腕も良くてCV33の不調を3輌とも見抜いてその場にある工具だけで直してくれた…?

え?少女漫画の話じゃなくて現実で??」

 

全くもってアンチョビには理解が出来なかった、恐らくペパロニだけの証言であれば幻でも見たんだろうと一蹴するか悩んで

でもペパロニは恋愛とか興味も願望も無さそうだし、馬鹿だけど嘘は言わない子だしなと信じてあげるくらいには信憑性の無い話である

 

しかし他の5人も菅野なる人物と会っていると言うのだから素直に認めざるを得ないのだろう

 

「カッコ良かったな~、菅野くん」

 

「今度またアンツィオに来てくれるって言ってたしな~」

 

「今度はチーム総出で宴会で迎えたいな~」

 

「そんなに?」

 

アマレットに続いてジェラート、パネトーネ、リコッタの三人もその菅野なる人物におおむね好意的な印象を抱いているようで

そこがさらにアンチョビが混乱を招く要因となっていた

 

「いや、カッコいいと言うか頼りになるというか

中三って話だったんすけど背丈は小学校低学年くらいのチビだったっすけどね」

 

「え?どれくらい」

 

「詳しくはわからないっすけど、私らの誰よりも低かったんで多分130cm前後ってところじゃないっすかね?」

 

「子供じゃないか!?」

 

一気に話の流れが危険な匂いを帯びてきたとアンチョビは内心で頭を抱えた

その身長で本当に中三なら年齢は近いが、もし本人がサバを読んでいるだけで本当に見た目どおりの年齢ならショタコンじゃん!とか次に来たとき手を出したりしないよな!?等様々な心配事が頭に浮かんでは消えていく

しかしプラウダの戦車道チームにて隊長をしているとある少女は自分と同い年だが120cm台後半しかなかったことを思い出してアンチョビは少しばかり冷静さを取り戻す

女の子とはいえ前例があるのだから男の子でも例に当てはまるのがいるのかも知れない

 

「みんなさっきから何言ってんッスか!」

 

好き放題言ってる周りに少しばかり面白くなさそうな表情をしたペパロニが声を荒げた

 

「いくらボーイッシュな見た目でも菅野は女の子ッスよ!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「…え?」

 

アマレットを含めた5人と成り行きを見守っていたアンチョビは一斉に固まった、そうなってくると全く話が変わると言うか

女の子であれば背が低いというのも確かに納得が行く部分もあると恐らくは誰もが思った

 

「菅野くんは菅野ちゃんだった…?」

 

「いやそれはそれでありかも」

 

「待って、誰かコイツ止めろ」

 

「気がつかなかったな~、粗暴な口調だったし一人称俺だったし」

 

「独特な雰囲気っていうか、オーラのあるイケメン枠だと思ってたのに~」

 

好き勝手言ってショックを受けてみたり逆に燃えてるアマレット達を見てひきつった表情のままアンチョビはペパロニへ視線を送る

 

「確かに見た目は分かりづらかったッスけど、骨格は丸いし喉仏も無かったんで多分女の子で間違いないッスよ」

 

「あぁ、だからペパロニ姐さんは菅野ちゃんをアンツィオに勧誘してたんすか」

 

「ペパロニお前そんなことしてたのか!?」

 

普段あまり勧誘だとかそう言うこと、ご飯のこと以外となれば全然興味を示してくれないペパロニが自分から勧誘に動いたと知ってアンチョビは思わず雷に撃たれたような衝撃を受けた

後輩の成長が嬉しい反面、もう少し戦車道のことに興味を示してくれたらなと思うが野暮なので口にはしなかった

 

「…ペパちゃんはどうしてその子を誘ったの?」

 

不意にこれまで一度も口を開かず、教卓側で静観していたアンチョビの副官の一人

カルパッチョがペパロニへそう問いかける、ペパロニは一瞬考えるように顎に手を当てて唸ったあとに続けた

 

「出店で助けられた時にビビっときて、cv33の不調を音聞いただけで見抜いてすぐに直してくれて

それで思ったんすよ、「あ、コイツがアンツィオにいたら絶対面白いな」って」

 

「そう、ペパちゃんはいい子に会えたんだね」

 

カルパッチョの言葉に「はいッス!」と満面の笑みで言うペパロニに、アンチョビは今朝遅刻した文句をもう言う気にもならなかった

しかし代わりに、ペパロニにそうまで言わせる相手と言うのがどんな人間なのかきになってしまったが

 

「まぁまた来てくれるって話だったんで、アンチョビ姐さんも実際に会ったら菅野のこと気に入ると思うッスよ!」

 

「…そうか

──あれ?連絡先とか交換してないのか?」

 

「──あ」

 

そうして「しまったぁああ!!」と膝から崩れ落ちるペパロニに、やっぱりコイツはどこか抜けてるなと思いながらもなんだかんだいつものペパロニだと安心するアンチョビであった

 

 

 

 






というわけで、前回の後書きの段階では閑話にしてすぐにアンツィオ戦に入る予定でしたが
「あれ?アンツィオ潜入しとらんやんけ!」っとなって急遽アンツィオ回となりました
アマレット達から概ね好意的で俗っぽい感情を向けられてるのはイタリアン基準+らぶらぶ作戦に引っ張られました


はい、話変えましてお気に入り登録、感想、評価等励みになりますので是非ともよろしくお願いします
誤字脱字は見つけ次第直す予定ですが、作者節穴なので中々気付けなかったりします

ページの一番下から手伝っていただけると喜びます
次回閑話か日常回のどっちかはまだ決まってません

以上です
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