ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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菅野直戦没79回忌追悼作品
(※とはいえ他のヤベー軍人成分も多分に含まれています。)

久々に見たガルパンで火がついて思いつきで書いた為筆休め作品になります
よって初投稿です


TV版範囲 第63回戦車道全国大会 〜破壊神 杉野デストロイヤー 降臨編~
その女、取り扱い注意につき(上) ★ 【挿絵有り】


 

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「ね、ねぇ…ナオちゃん本当に行くの?」

 

「川がゴウゴウ言ってるよ…」

 

あまりにも無謀だと言いたげな二人の少女の前でナオと呼ばれた一人の勝ち気な少女は口元をニィッと釣り上げた

 

「あったりまえしょ!何てことないよこんなの」

 

ランドセルを背負った幼い三人の少女の眼の前には台風の影響で荒れに荒れた濁流に倒壊した河川の橋があった

その川、阿武隈川は川幅にして300mはある

 

時刻は現在午前7時半、この橋は通学路の道中にあり

対岸へ行かなければ学校へたどり着くことは不可能である

 

「あんた達やめなさい!流されるよ!!」

 

少女達の地域から街へ降りるにはこの橋を渡るしか無い

だからこそ少女以外の生徒も多数足止めを食らっているし

その数に劣らないくらい大勢の大人たちも取り残されていた

 

そしてそんな大人たちの中から一人の女性がこれから少女達の行おうとしている事に無謀だと反発する

 

「大丈夫!ほら行くよ、ユウカ!マツ!」

 

「わっ、待ってよナオちゃん!」

 

 

止めに入った女性を何のその、ナオと呼ばれた少女は我先にと荒れ狂った川に飛び込む

乗り気で無かった残る二人の少女もナオの押しに負けて荒れ狂う川に身を投げた

 

「流木に当たったら流される!

だから避けるルートを選んで泳ぐから()から離れるなよ!」

 

「う、うん」

 

「うわっ!?」

 

先頭を切るナオに離されないよう、二人の少女は離されないよう必死に泳いでついていく

 

 

「っ!ナオちゃん、末乃(マツノ)ちゃんが溺れた!」

 

「なっ──ユウカ!後ろ!!」

 

 

異変が起こったのは川も四分の三程を泳ぎ、もうすぐ陸へたどり着く手前のこと

やけに口数が少ないことを不思議に思ったユウカが後続の末乃へ目を向けると川の流れに負けて体力を使い果たし濁流に飲み込まれる寸前の末乃が目に入る

 

すかさずそのことを声を張ってナオに伝えるも末乃に気を取られてその場に留まってしまったユウカは自身に向かって流れてくる流木への反応が遅れてしまい

 

ナオの目の前で流木の直撃を喰らい錐揉みになって濁流に飲まれていく

 

「クソ…っ、ユウカ!マツ!手を伸ばせ!!」

 

Uターンして泳ぎながらユウカと末乃へ向かい手を伸ばすしかし沈んでいくその姿には寸でのところで手が届かない

 

「絶対に離すんじゃねぇぞ!!」

 

意を決してナオも流れに自ら飲まれていき二人の手をガッシリと掴む、しかし二人分の重さが増えた状態で引き上げられる筈もなく三人まとめて濁流の中へ消えていった

 

 

 

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「はっ──夢、か」

 

目を覚ますと見慣れた天井が目に入りその事に胸をなでおろすとむくりと上半身を起き上がらせると自身の額へ掌をあてがい項垂れた

 

「ンだよ、まだ朝まで時間あんのか」

 

ふと自身の眠るシングルベッド脇のナイトテーブルに備えられたスタンドライトの電源を入れて時刻を確認する

現在時刻は午前5時、朝の支度をするにも幾分気が早い

しかし先程の夢の手前もう一眠りするのもなんだか気が引けると自身の前髪をかき上げてどうしたものかと呟いた

 

 

「──ったく、しゃーねぇな」

 

のそりとベッドから抜け出すとグイと背伸びをし、一息つくと部屋の中にある本棚へ歩いていく

 

(…まだ続きのままのがいくつかあったはず)

 

本棚の中からまだ読み終えてないものをいくつか確認し、その中で一冊だけ、『春と修羅』と題された小説を抜き取ると本に挟んだしおりを抜きながらもう一度ベッドに潜りスタンドライトの明かりを頼りに読み勧めていく

 

(やはり文学は至高だ、もっと才能があればこっちの道へ進んでも見たかったが…)

 

小さく溜息を吐きながら視線は文章から離さず、パラパラとページを捲っていく

読み終える頃にはすっかり日も出て辺りはスタンドライトの明かりが無くても充分見渡せる明るさになっていた

 

「…っと、もうこんな時間か」

 

時計を見て時間を確認、現在時刻は7時10分を指していた

もう10分程で普段かけてる朝のアラームがなる時間になる

 

「結局普段より巻いた時間で起きちまったなぁ」

 

やれやれと肩を竦めながらベッドから這い出ると読んでいた小説を本棚へ戻した

 

「…ふん」

 

同時にカーテーンレールに掛けられた自身の通う学園の制服が視界に入る、白と緑を基調にした制服は大洗女学園の物だ

 

「さぁて、やるか」

 

制服ではなく動きやすい格好へ着換え、冷蔵庫から瓶に入った牛乳を取り出すと一気に中身をあおり、中身を飲み干すとモバイルタイプのCDプレイヤーを片手に外へ出た

 

 

 

 

「ふぃ~…いい天気だなぁ」

 

 

CDプレイヤーから流れるラジオ体操の音源と共に身体を動かしながら、少女『杉野直緒』は気怠げな視線を空へ向けた

 

雲一つない晴れやかな快晴と共に春特有の心地よい風が頬を掠めていく

 

(そーいや…今日から新学期か)

 

春休みの合間は学園艦から下船して陸の実家や地元へ戻る生徒達が殆どだ

極一部学園艦に実家がある生徒はその限りではないが

杉野の場合は陸、それも県外に実家があるにも関わらず下船せずに学園艦に残り悠々と春休みを過ごした為

登校日が少しあやふやになっていた

 

「…あ、工場(こうば)寄ってかねぇとな」

 

日課のラジオ体操が終わると持参した未開封の牛乳瓶の蓋を開けて中身をあおる

そしてそのままCDプレーヤーを片手に借家から程近い大型の倉庫へ足を運んだ

 

 

 

「うん…OKだな」

 

シャッターを開けて中身を確認する、元は工場の倉庫として使われていたその大型倉庫は工場の倒産と同時に売りに出されていたものだった

しかし学園艦、それも大洗の物という立地から格安で販売されていたのを杉野が買い取ったものだ

 

倉庫の中身はブルーシートを被った二両の戦車らしき物と一機のレシプロ戦闘機

そして自動車とバイクが一台ずつ収容されている

入っている物が物な為、毎朝欠かさず窃盗等に入られていないかシャッターを開けて確認をしているのだった

 

「…通学許可書入ってたっけ」

 

杉野は自動車の方に足を運ぶと運転席のドアを開けて一年の修了式と同時に取得した通学許可証をグローブボックスから取り出してダッシュボードの上に挟んだ

 

(マフラーは…触ストからキャタライザーに替えてたっけか?

まぁいいや、念の為サイレンサー入れとくか)

 

何とか合法に収まるように突貫工事で戻し作業を施したこの車はやっつけ作業全開でリアシートと車内に張り巡らされた鉄パイプの保護パットが取り付けられている

エンジンは排ガスがクリア出来る範囲で触れる所が残っていないほど手の入れられた物を制御・調整し直していた

 

「まぁた長期休みにでも戻し戻しするか…」

 

 

一度許可さえ取ってしまえばバレるまでこちらのものだと悪党さながらの笑みを浮かべ、鍵を差し込み捻る、OFFからACCへ切り替えれば追加で埋め込まれたメーターが動き始めピーと長い電子音が車内に響く

 

 

__チュィイイイ…フュィッヒヒヒンッゴォッ

 

そして燃料ポンプが作動後、ONを越えて尚鍵を捻りセルの音と共に6気筒の直列エンジンに火が灯る

 

 

「おぉぅ…まだ結構うっせぇな」

 

ゴオゴオと全く安定しないアイドルと共に鳴り響くエキゾーストはキャタライザーを入れて尚爆音と呼んで相応しいほどだ

杉野はため息を一つ着くと何重にも消音材(グラスウール)の巻かれたサイレンサーをキャディ(工具箱)から取り出してマフラーへ突っ込むとボルトとナットで固定する

 

すると今度は純正マフラーよりも少しうるさい程度まで音が静かに変わる

 

「っし、こんなもんかな〜」

 

その様子に満足気に呟くと追加メーターで水温を確認する

春先でありそれほど暖かくはない時分では暖気が完了するのにもある程度の時間を要す

 

(65……67…………69………………70)

 

水温メーターが70度を指した辺りでエンジン音が一際低く小さくなる、時間にして凡そ10分強、暖気が完了しいつでも全開で駆ける準備が出来ていた

 

「行くか」

 

暖機終了後、ゆっくりとした動作で車内に乗り込むとそのまま三点式のシートベルトをつけて低速で倉庫から車を出すと車内に置いていた倉庫のシャッターリモコンのボタンを押してシャッターを閉める

 

(油温、水温、油圧、アイドル…OK)

 

 

【挿絵表示】

 

 

シャッターが閉じたのを確認するとちらりとメーターを目で追ってからクラッチペダルを踏み込みシフトレバーを一速に入れ、半クラの状態で断続的にリズムを刻むようにアクセルを踏んで車を走らせ始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____ボォオオオと低く気の抜けたような音と共に

杉野の走らせる車は交通の流れに沿ってゆっくりと走っていた

あの後一度通学カバンと制服に着替えるのに一度自宅へ戻り、用を済ませると学校を目指して車を走らせ始めたのだった

 

 

(…これでもちょっとは早いと思ったんだけどな)

 

いつもよりかは早い時間に出たが為にまだ誰も通学路を歩いているものはいないのではと考えていたが同じ制服を着用する者達が歩いている姿を複数回見かけてはそうでもなかったかと独り言ちた

 

「ん…?…あいつ」

 

 

杉野は人混みの中に見つけた一人の同じ制服を身に纏う少女を見つけた

周囲をせわしなく見渡し、何か気になるものを見つけては注意散漫にもその一点のみ見つめたまま歩き電柱にぶつかっている

中々におっちょこちょいなところが目立つ明るい茶髪の少女だ

 

そしてその少女の姿に何処か見覚えがある

 

(…いや、けど会ったことはねぇよな)

 

とは言え、自身の記憶を掘り下げても合致する人物は存在しない

…しないのだが、なぜだかその少女から目が離せなかった

 

「──おい」

 

声を掛けて、一瞬で言葉に詰まる

見覚えがあると言っても初対面の相手だ

だがいつまでも声をかけた自分がフリーズしているわけにもいかないだろう

杉野の言葉に動きを止め、振り返った少女の困惑したような顔見てそんなことを思った

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女を初めて見たとき、常に不機嫌そうな怖い娘だと思った

自身の歩道との境である柵を挟んで向こう側、異様に低い車の窓を開けてこちらに声をかけてきたその娘は戸惑う私にぶっきらぼうに顔を逸しながら送っていくから乗れと行った

 

続いて相手の格好を見やれば自身の身に付ける転校先の高校と同じ制服を着ているのを見て少し安心する

どうしてだろうとも思ったが何となく、直感で大丈夫だと悟った私は彼女の車の助手席に乗り込んだ

 

「ベルトはしっかりしろな?」

 

「あ、はい」

 

乗り込む際はクロス状の鉄パイプを跨いで車内に備え付けてあるやたらと薄くて彫り深いシートに腰を下ろすと彼女の言われるがままにシートベルトを着用した

 

それを満足気に見た彼女はふんと鼻を鳴らすように小さく呟くと車を走らせる

 

「……」

 

「…ンだよ」

 

お世辞にも車内は快適とは言えなかった、車のエキゾースト音は車内に飛び込んでくるし小さな段差や轍を乗り越えるたびに車は今で乗ったことのないレベルで激しく揺れる

だけれども、それでなお彼女の運転はとても丁寧でスムーズだと思った

ふと彼女の方に目線を配ればまたしても不機嫌そうな声が帰ってくる

こちらが見てる分にも前なんておおよそ見えていなそうな彼女だが不思議と怖くは感じなかった

 

「何で声をかけてくれたんですか?」

 

 

「…そォだなァ」

 

凛とした透き通るような、それでいて中性的にどこから低音掛かった綺麗な声色で

どこまでも粗暴な口振りで一瞬言葉に詰まった様子の彼女はさて何と言った物かねと肩を竦めた

 

「同じ制服着た見たこと無いやつが不審者みたいにウロキョロしてて、物珍しさなのか困ってるのかも判断付けにくかったし…まぁ気まぐれ??」

 

先程までの動きをまるで不審者と形容された事に少しグサリと来るものがあったが、気まぐれだと返されてしまいきょとんとしてしまう

しかし気まぐれであろうと私は嬉しかった

前の学校では考えられないことだったから

 

別に前の学校で友達と呼べる存在がいなかったわけではない、と思う多分

私だけがそう思っていたのならば恥ずかしさと寂しさのあまり泣いてしまうが

そう呼べる仲は数人だけどいた

 

けど皆、仲は良くても馴れ合いのようなものをひどく嫌っていたようだったから

一緒に通学なんて本当に友達みたいな事が出来るのが嬉しかった

 

「げ、なんか言ってやがんなアイツ」

 

学校の校舎が遠目に見えてくると二度アクセルを吹かすような動作と共に車が減速を始める

その音を聞いてか校門に陣取っていた一人のおかっぱ頭の女の子が顔を真っ赤にして飛び出してくるとガラス越しで何を言ってるのか聞き取れはしないがものすごい剣幕で迫ってきた

 

「おっす、どしたん園ちゃん」

 

「校舎付近での意味のない空吹かしはやめなさいよ!

あとこの車、車高が低すぎよ!明らか風紀違反じゃない!!」

 

「意味ないことはしない主義だし最低地上高ぐらい確保してるよ

固ぇこと言うなよそど子」

 

「その名前で呼ばないでくれる!?」

 

風紀委員の子が車両の窓をノックした為運転手の彼女は律儀に窓を開けて対応する

二言三言話をしていたが彼女は早々に窓を閉めて対応を放棄した

「開けなさいよ!」と至極当然の怒りをぶつける風紀委員の子に煽るようなにこやかな笑みを浮かべると完全無視を決め込んでそのまま学園の教職員用の駐車場に堂々と車を停めた

 

 

「あ、あのぉ…良かったんですか?」

 

「──は?」

 

「あ、いや、ですから…風紀委員の方が…」

 

「──え??」

 

「いや…なんでも無いです……」

 

全く悪びれる様子もなくのらりくらりな彼女に何を言っても無駄なのだろうと判断して早々に話を切り上げた私は彼女がエンジンを切ったのを確認してからドアを開ける

 

「すいません、ありがとうございました…えっと」

 

「おぅ、気にすんなよ」

 

 

車から降りてすぐにお礼を告げるも気にしないで良いと片手で制す彼女を見つめる

車に乗ってる時は不思議と気にならなかったが立って並んでみると彼女は高校生とは思えないほど小柄な体格で

それでいて纏っている雰囲気は普通の子のそれとは一線を画していて、なんだかそれが凄くカッコよく見えてしまう

本当は名前くらい知っておきたかったけど言葉に詰まってしまった

 

「…二年の杉野だ」

 

その状況を察してか、くすっと小さく笑いながら名前を教えてくれた彼女に

思わず顔が綻んでしまうのが抑えられない

…それにしても、同い年かぁ

 

「に…西住みほ、です…!同じ二年です」

 

「!」

 

出来たら同じクラスだったら嬉しいな、なんて思いながら私も名前と学年を彼女に告げた

…なんだろう、名前を伝えた瞬間に片眉を顰めて怪訝そうに

考え込むように顎に手を当て…すぐに踵を返した

 

「遅れるぞ、西住」

 

「あっ」

 

彼女の言葉にハッとなって職員室へ急ぐ、視界の端にはそのまま校舎へ入っていく彼女の姿が見えた

転校してきた私はまず職員室へ行かなければならないのでここでお別れだ

 

(…また会えるよね)

 

職員室へ向かいながらそんな事を思う、我ながら仲良く出来るかも知れないと感じた相手には単純かなと思わなくもないけど…

けれど、そんな私の思いとは裏腹に

彼女との再開は思ったよりも早く訪れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

「…ぉお?」

 

職員室で割り振られた教室、普通一科の二年A組の教室に担任の先生に促されて入ると

一番奥の窓際の席に今朝の彼女の姿を見つけて少し嬉しくなった

 

まぁ…通路側二列目の私からしたら遠いけれど…

 

それからの数日は本当に順調だった

お昼に誘えば彼女、杉野さんが一緒にいてくれるし

最初は不機嫌そうで怖いと思った彼女だけど、実際に接して見ると凄く優しい娘なんだって事がわかった

朝時間が合う時はいつも送っていってくれるし

 

「ヘイ彼女〜♪一緒にお昼どう?」

 

「年頃の乙女がその誘い方はどうかと思うぜ俺は」

 

「えー?そうかなー?」

 

「ほら沙織さん、西住さん驚いていらっしゃるじゃ無いですか

杉野さんも宜しければご一緒しませんか?」

 

何日かたった頃、武部さんと五十鈴さん

二人の新しい友達も出来て本当に充実していた

 

…だから

 

「西住ちゃん、それと杉野ちゃん

必修選択科目なんだけどさぁ〜

戦車道取ってね、よろしく」

 

突如教室に乗り込んできた生徒会の三人組、片眼鏡の人と後ろで髪を結ってる人と小柄な人

その内の生徒会長だと沙織さんに教えてもらった杉野さん程ではないが小柄な女の子から言われた言葉に思わずギョッとしてしまった

視界の端の杉野さんも口は開かないものの明らかに不機嫌そうで眉を顰めて三人を見据えるその様は殺気立ってると表現するのに充分だった

こんな杉野さんを見たのは初めてだったから返って冷静になれた

 

「あ、あの、私この学校には戦車道が無いって聞いてわざわざ転校してきたんですけど…」

 

「いや〜運命だねぇ〜」

 

何とかまぬがれようにも反論する私をよそにとにかくよろしくと話を締めて立ち去ろうとした三人の背に今まで口を一切開いて無かった杉野さんの言葉が刺さった

 

いげすがねぇ(気に入らねぇ)のぅコラ」

 

「…え?」

 

一歩、二歩と生徒会長の元へ歩みを進める杉野さんのただならぬ空気を感じ取ってか振り返った三人の目に映るのは人殺しのように座った目で3人の元へ

いや生徒会長の方へ迷いもなく進んでいく杉野さんの姿だった

 

「止まれ!」

 

「──しゃれ(どけ)

 

 

生徒会長を守るように杉野さんの前に片眼鏡の人が立ちはだかり体格差で抑え込もうとするがつまらないものを見るような冷ややかな目線を向け、どこにそんな力があるのか片眼鏡の人を片手で押しのけて一気に詰め寄る

 

「おゥ、こンのでごすけェ

おだづって(調子乗って)っとしまいにふたつけっ(ぶん殴)つォ…ッ」

 

「っ…」

 

互いの額が当たるのでは無いかと思うほどの距離で睨みつける杉野さんの気迫に圧されて生徒会長の顔が強張り思わず後退りするのを見るとくるりとこちらへ振り返りお互いに目が合った

 

()ぇ〜んぞ、西住」

 

「は、はい!」

 

その瞬間さっきまでの張り詰めたような空気は嘘のように消え去って穏やかに笑みを浮かべた杉野さんはそう言って一足先に教室に戻っていく

私は少しだけ気になって生徒会長の方を一度見てみたけど俯いていてその表情は読み取れず

杉野さんを追いかけるように急ぎ足で教室へ戻った

 

 

 

 

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