ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜   作:ReA-che 名義

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西住殿視点からのスタートです
9/16日追記
今になって描写一つ食い違ってることに気づきました、恥ずかしい…埋まってしまいたい…


デストロイヤー、始動セリ(上)

 

 

「コレはどういう事だ?」

 

「なんで選択しないかねぇ…」

 

 

「ハッ残念だったな、おめェら西住にフられたんだよ諦めな」

 

詰め寄ってくる生徒会長と広報の二人へ対して私、武部さん、五十鈴さんを背に隠すように先頭に立った杉野さんは相手をわざと逆なでにするような軽口を叩く

 

「終了です、わが校は終了です!」

 

「勝手なこと言わないでください!」

 

何故か悲痛な声を上げる副会長にさらに私を庇うように武部さんと五十鈴さんが前に出た

3人が私を守ってくれてる、そう実感すると怖いはずの今の状況が少し気が楽に思える

それくらい3人の背中はとても心強かった

 

「んなこと言ってるとアンタ達、この学校にいらんなくしちゃうよ?」

 

しかし会長の脅しとも取れる発言に武部さんと五十鈴さんが息を飲む音が聞こえた

 

「…んのいがれぽんち(キチガイ野郎)が」

 

ただ一人、杉野さんだけは二人と対称的に

心底面倒くさそうに呟いた

 

()ィつけろよ、そいつァ脅しの道具じゃねェぞ」

 

杉野さんの後ろ姿しか見えない私達にはその表情は伺い知れないが、生徒会3人の表情が強張ったことからその形相は怒りに満ちているのだろうと想像するのに難しくない

 

「俺ァ別にこいつら守れんなら、テメェ等全員ぶっ飛ばして学校辞めても良いんだぜ?」

 

「…え!?」「ちょ…ッ」「杉野さん…!?」

 

そしてまさかの発言に3人とも絶句する羽目になった

 

「ここで暴れて、アンタ一人辞めて済むと思う?」

 

「逆にそれで済まなきゃ更に面倒な事になるのわかってんべ?」

 

 

売り言葉に買い言葉、目に見えて会長の表情が焦燥していく事から杉野さんの本気さがひしひしと伝わってくる

…一体どうしてこうなってしまったんだろう

 

前の学校で戦車が嫌になって、戦車の無いこの学園に来て

どこまでも優しい彼女に出会った

私の痛みを共に悲しんでくれる武部さんと五十鈴さんにも出会えた

 

このまま目の前の二人が話し終わるまで待っていれば、もしかしたら私は戦車道をやらなくて済むかもしれない

けどそれを選んだら杉野さんはこの学園からいなくなってしまうかもしれない

 

それはここに来た当初私が一番望んでいた筈のことなのに…

 

(…そっか、もう私は誰にも離れていってほしくないんだ…)

 

あの決勝での一幕があってから私の周りからはほとんどの人が去っていった、友達だと思っていた人たちが他の人と一緒に私の陰口を言っているのを見た時は込み上げる物があった

それが辛くて、それが苦しくて、耐えきれなくなった私は地元から遠く離れたこの場所まで逃げてきた

 

杉野さんがいなくなっても、武部さんがいなくなっても、五十鈴さんがいなくなっても

もうそれは私にとっての日常では無くなってしまう

 

そんな日常を失ってしまうことが

 

今は一番怖い

 

「…あ、あの!」

 

 

気づいたら私は杉野さんの真横に並び立つように前へ出ていた

 

 

 

 

「戦車道、やります…ッ」

 

意を決したようにそういった西住はそう言って角谷を見据える

俺はその言葉にしばし呆然としてしまったがすぐに西住に意図を聞き返す

 

「…良いのか?西住?」

 

「うん…私は誰とも離れ離れになりたくない」

 

 

つぶやくように言った西住に思わず頬が緩むのを感じた

普段あれだけ気弱な西住がここまで言ってくれる

それはきっととても勇気のいることだろう

 

「けど西住、お前一つ勘違いしてるぞ」

 

なぁ?と笑いながら角谷の方へ視線を移せばバツの悪そうな顔をしている

きっと内心で性悪めとでも思っているのだろう、だがそれはお互い様だ

 

「…西住ちゃんがオッケーしてくれたのは嬉しいんだけど

私らは西住ちゃんと杉野ちゃん二人にオファーかけてんだよね〜」

 

そのため現状は西住が参加表明を表しただけでは変わらない

生徒会が求めてるのが俺と西住、まだ目的は半分しか達成していないからだ

 

 

「そんな…」

 

「うん、だから俺もやるよ戦車道」

 

え?と西住は一際驚いたような顔になったがすぐに顔を綻ばせる

 

 

「…宜しいんですか?」

 

後ろの五十鈴から声が掛かる、おそらく五十鈴は俺が昨日戦車道は二度とやらないと言ったのを覚えていたのだろう

確かに二度とやるつもりはなかった

ただ西住が勇気を持って決断したのを見て俺も気が変わってしまった

 

「いいんだよ、気の弱い西住があそこまで勇気見せたんだ

その気持ちくらい汲んでやりたいさ」

 

「みほに甘いね」

 

絆されてる気がしないでもないが、他ならぬ自分自身が今後の西住を間近で見ていきたいと思ってしまったのだから仕方がない

そんな事を言うと少し呆れたように呟くのは武部だが反論はしない

 

「で?コレでいいか?」

 

「…はぁ、いやまぁ良いんだけどさぁ?」

 

生徒会の三人組の方へ向き直り確認を取るも角谷からは批難混じりの言葉が帰ってくる

おそらくもっと穏便にとかそんな事だろうが割と真面目に手を出す一歩手前までは腹立っていたので素知らぬふりをすることにした

 

()ぇ〜ンべよ」

 

くるりと身を翻して三人に声をかけてから生徒会室から出ていく

後ろでまってまってと言いながら追いかけてくる3人の気配を感じながらさてこれから忙しくなるなと腹を括った

 

 

 

 

 

「ナオ〜!みほ〜!アイス行こ!!」

 

 

「へーへェ…」

 

放課後、ある程度人がいなくなった段階で武部さんは五十鈴さんと共にこちらへ近づいてくる

杉野さんは学生鞄を裏手で肩に担ぐように持ち、元気だねぇと呟きながら

車の鍵を指先で引っ掛けてくるくると回して遊んでいた

 

「んで?どこのアイス屋行くんだ??」

 

「ん〜…ここからだったら74アイスかな?」

 

「74か、あっこ駐車場あったっけ?」

 

「あ〜、表からだと分かりづらいけど裏手にあるよ

ナオあんまりいかなそうだもんね〜」

 

 

仕方ないか、と納得した様子で杉野さんと武部さんが話しながら出ていくのを五十鈴さんと一緒に追いかける

この人数で学校帰りに買食いしながら帰るのは人生初めてだから今から楽しみだった

 

「家の車以外に乗るの、初めてで緊張してしまいます

みほさんは毎日乗ってるんでしたっけ」

 

「うん、杉野さんがいつも声をかけてくれるから

行きも帰りも甘えさせて貰っちゃってるかな」

 

 

そんなこんなで五十鈴さんと話しながら杉野さんがいつも止めてる駐車場まで歩いていく

途中で武部さんがこちらの間に乱入してきて今から行くアイス屋の事とか、どういうメニューがおすすめだとかを教えてくれた

 

「うわっ…」

 

そして車のところまで来ると沙織さんの表情が少し強張った気がした

 

「こ、これがナオの車かぁ…初めて見たけど凄いねコレ……」

 

「低くて小さくて可愛らしいじゃありませんか」

 

「武部の反応はまぁ、わからなくも無いけど五十鈴の反応はちょっとよくわからん…」

 

毎日送ってってもらってる私としてはすっかり見なれた車になってしまったが杉野さんの車はかなり手の入った改造車で本人曰く通学車の規定は違反してないとのことだが全体的に車高が低く平べったい外観はお世辞にも可愛くはない

 

「ちょっと待ってろ、武部と五十鈴は後ろの席でいいだろ?」

 

杉野さんは車の運転席と助手席を開けてそれぞれシートを前へ出して二人が後ろに乗り込めるようにした

 

「え?もしかして毎回こうしないと私ら乗れないの?」

 

「ツードアクーペ何だからしかたねーべ」

 

「何で車内にジャングルジムが…乙女の車にあるまじき装備だよナオ…」

 

 

あまりの車に武部さんは少し引いてるようだった、失礼な奴だなと呟きながら杉野さんは特に怒ってる様子は無く

武部さんと五十鈴さん、二人が乗り込むのを確認したらシートの位置を元に戻して車のエンジンを始動させた

 

 

____チュィイイイ…キョカッゴォッゴォッゴゴォッゴォッ

 

『ピピッ…ピーーッ』

 

エンジンが掛かっていつものように中央のメーターが一人でに動き出すと後部座席の二人は少し興味深そうに見てた

やっぱり気になるよねソレ

 

『ポロ〜ン♪レーダーヲッ受信シマシタ』

 

『デレンッ♪OGS、ブーストコントロールメッセンジャー!』

 

「うわっ、なんかメッチャ喋ってるよ!」

 

「不思議な車ですね」

 

「あはは…」

 

目を丸くして車内を見渡す二人に少し前の自分を思い浮かべて苦笑いする、私もあんな感じだったなぁ…

 

「よし、行こうか」

 

水温が上がったのを確認した杉野さんが運転席に乗り込んだ為、私も助手席に乗り込む、車内には最近すっかり嗅ぎ慣れた杉野さんの愛用の甘い芳香剤の匂いが充満している

何だがすごく落ち着くんだよね

 

「道順怪しいから最悪案内頼むよ?」

 

「あ、うん」

 

カーオーディオを弄りながら呟く杉野さんに後ろから武部さんが返事をした

選曲が終わると杉野さんがいつもどおり丁寧な運転で車を走らせ始めた

…どこかで聞いたことある曲だけどコレ何だったっけ?

 

「私のお父様が聞いてた気がします」

 

相当古いロックバンドだった気がするけど、以外にも覚えがあるのは五十鈴さんの方だった

まぁ有名だからね〜なんて言いながら杉野さんは運転を続ける

 

「…いやみんな反応する所違くない!?なにこの乗り心地の悪さ!」

 

走り出して割とすぐに武部さんから悲鳴に似た声が上がる

私も最初の頃はビックリしたけど、それこそ戦車の乗り心地に比べれば大したこと無いため早々に慣れてしまった

 

「これじゃあ昔乗せてもらった漁協のおじいちゃんの軽トラ並だよぉ…」

 

「ダイレクトで面白いじゃありませんか」

 

批難する武部さんとは裏腹に五十鈴さんは終始楽しげだった

こういうのを好意的に捉えてしまう辺り彼女は結構肝が座ってると思う

 

「うぅ…おしり痛い、けど運転が無駄に上手いのが余計に腹ただしい…あと音楽の音質がいいのも」

 

散々文句を言っても、やはり感じることが同じなのだろう

これだけ乗り心地の悪い車で同乗者を車酔いさせない時点で察せられるがやはり杉野さんは相当に運転が上手い

小さい頃から戦車の運転でもしてたのだろうか…

 

「ていうか、よく前見えるね」

 

「あ、それは私も思った…」

 

「馴れだよ慣れ」

 

 

私は背は自分で割と小柄な方だとは思っている

しかし杉野さんは同年代の中でも飛び抜けて背が低く、私と比べても丁度頭ひとつ分ほどの差がある

シートを目一杯前まで出していても目線はメーターと平行になっておりこちらから見る範囲でもロクに前など見えていない筈だった

それを杉野さんは慣れの一言で済ませた

 

 

「な、慣れだけでよく乗れるね…こんな前の長い車」

 

「そういうのも含めて慣れだろ」

 

「あ、そこ右だよ」

 

「りょ」

 

交差点へ入ると横断歩道を携帯を見ながら歩いている学生が渡っていた

それをメーター周りしか見えていないであろう杉野さんはブレーキを踏んで停車し、しっかり回避してからまた車を走らせ始める

 

「ほ、本当に見えてるんだ…」

 

「んー…鳥瞰(ちょうかん)、かなぁ?」

 

武部さんはその様子を見て杉野さんがちゃんと前が見えてるのがわかったようで苦笑いしたどうやって見えているのかと疑問に思ったところでその答え合わせのように杉野さんが呟く

 

「鳥瞰…ですか?」

 

「そう、鳥瞰」

 

思わず聞き返したが言葉の意味はわからず変にモヤモヤしてしまう

 

「お、ついたぞ」

 

しかしその言葉の真意を問いただす前に

目的地に到着して話は切り上げられてしまった

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでアイスを食べ終わった後、杉野さんが全員を送っていく事になった

現在は武部さんと五十鈴さんを送っていった帰り道で車内は私と杉野さんの二人だけだった

 

「一箇所寄っていきたい所あるんだけど、いいか?」

 

「寄りたい場所、ですか」

 

見せたいものがあるんだ、と言いながら運転する杉野さんに頷いて返事をする

 

そこから更に車を走らせること15分程だろうか見えてきた大型倉庫のある敷地へ入っていく、ここが目的地なのだろうか

 

「ここは…」

 

「元々は企業の所有の大型倉庫だったのを俺が買い取って工場(こうば)にしてる」

 

「ええ!?これ杉野さんの!!?」

 

かなり巨大な倉庫の為、いくら学園艦の中とはいえ維持費も含めて相当な値段になるはずだけど…

中々スケールの大きな話に頭が痛くなって来た

 

「この車も普段はここに閉まってるんだよ

割と近くに家あるんだけど、ほら近所迷惑だから」

 

「な、なるほど…?」

 

言いながら倉庫のリモコンを操作してシャッター開け始める

その中は私の想像を遥かに超えていた

 

「すっ…ごい…!」

 

自然と倉庫内へと足は動いていく辺りには大型の工具やいくつものリフトやスタンド

特殊機器や作業台等が置いてあってその上には分解中の部品がきれいに並べられている

 

そして更にその奥に目を映す

 

「バイクはまだわかるとして…飛行機?相当古いやつですよね…?」

 

「うん、去年レストアし終わったやつ

新品同様にしたからちゃんと飛ばせるよ」

 

青みがかった緑色に赤い日の丸の飛行機、確か私の記憶が正しければ古い日本の戦闘機だった筈だ

何でこんなところに、等と思っていたが聞き間違えだろうか

飛ばせると聞こえてきたから恐ろしい

 

ある意味こちらも詳しく聞いてみたいけど私の目はその近くでブルーシートに包まれている物に釘付けになった

 

「あれは…戦車ですか?」

 

「そう、見せたかったのはあれだよ」

 

杉野さんはゆっくりとブルーシートを被ってる2つの物体に近づいていくと小柄な方に手をかけてスルリとブルーシートを引き剥がしていく

 

「…これは──」

 

九七式中戦車(チハ)、俺が前いた所で乗ってたやつだ」

 

私も近くに寄ってその戦車をまじまじと見る

新砲塔だったにしても、チハにしては長い主砲、違和感を感じるまで気づかなかったが車高も少し低くなっており

車体色は青みがかった緑色の単色迷彩という杉野さんの車と手前に置いてある古めかしいレシプロ戦闘機と同じ色合いだ

 

(…何だろう、初めて見るはずなのに…何処かで見た気が)

 

またしてもさいなまれる既視感と葛藤しながら車体側面へ回り込むと私は思わず声を上げた

砲塔側面から後部懸架バネ付近まで引かれた斜めの黄色い二本ラインのストライプ模様、極めつけは車両側面の車体より半分から車両後部まで貼られた無数の桜を象った撃破ステッカー

私はそんな呆れるほど目立つチハを知っていた

 

「あっ!…あ〜っ!!

 

杉野さんの顔に既視感があったのも当然だ、何で忘れていたんだろう

どうして覚えていなかったんだろう

こんな目立つ車体のチハの搭乗員なんて、一度見たら忘れるはずもないのに

 

「【杉野デストロイヤー】!?」

 

「こら、人に指さすな」

 

驚きのあまり指をさしてしまった、反省

 

「凄い!本物だ!!」

 

「…え〜、今までの反応と違くない??」

 

私は思わずがっしりと彼女の手を握りしめた

デストロイヤーと呼ばれた彼女の名前は元々彼女が東北の戦車道スクールにいた時から遠く離れた熊本の私の元まで届いていた

その頃はもう一つの名前の方が広く知れ渡っていたものの、戦車道スクールを辞めたあとも無鉄砲ともとれる作戦と共に敵戦車と自身の戦車を壊しまくった事からいつしか【デストロイヤー】の称号は彼女の固有名詞にもなった

 

そんな彼女はその後強襲戦車競技(タンカスロン)用に魔改造を施したチハを始めとした特殊チームに3年所属したのち引退

引退に陥った経緯までは知らないが当時は結構騒がれていた気がする

 

「引退試合、見てました」

 

「そういや西住は熊本が地元だっけか?」

 

杉野さんの引退試合は2年前の8/1に行われた九州熊本強襲戦車競技で、近所ということもありふと気になった私は現地で観戦していた

僅か20輌弱で10倍以上の敵戦車群を次々と撃破していくもその華やかな戦果とは裏腹にどこまでも寂しそうな顔をしていた当時の杉野さんが印象的だった

 

「本当に驚いたなぁ…杉野さんがあの杉野さんだったなんて、それにチハも当時のまま…」

 

「あっはは、別に大したことじゃねぇよ

俺が個人的に所有してた個体だからから持って帰ってきて、そのまま捨てるの忘れちゃってただけ──」

 

嘘だと思った、捨てるのを忘れただけにしては

ブルーシートを取り払ったその姿に埃一つついていない

きっととても大切で定期的にカバーを外してメンテナンスをしているのだろう

 

「見れば見るほど…普通のチハとは違うね」

 

「うん、もう触れない所がないレベルで弄くり倒してるよ

強襲戦車競技(タンカスロン)は車重10トン以下の規制さえクリアすればどんな過激な改造をしていてもOKだからな」

 

 

そう言ってチハの外装をコンコンと叩き杉野さんは不敵に笑った

その音が普通の戦車外装を叩いた時に比べて変に高い音であることに気づいた

材質が違う…?

 

「これは…カーボン?」

 

手で触ってみた感想としてはカーボンの質感に似てる、しかし断定はできず疑問符を浮かべる私に杉野さんは惜しいなと言って首を横に振った

 

「外装は元の第二種防弾鋼板の外装と同じ強度になるように計算した超々ジュラルミン製、んでその上から更に同等強度の特殊カーボンのコーティングをしてる」

 

「え、特殊カーボンを外板に使ってるの?」

 

異なる2つの素材をそれぞれ純正同等強度にして外板として扱っているため実質的な強度は2倍と杉野さんが笑いながら言う、超々ジュラルミンといえばかなり薄くても戦闘機の外装になれるくらい動的負荷に強い部材だ

それを戦車の外装として使うと言うことは当然部品だけで相応に高価ではあるが比例してかなりの軽量化が施されているという事だろう

そしてその上から本来であれば内部の補強に使う特殊カーボンでぐるりと車体を覆う

なるほど確かに、他にやっているところは見たこと無いがそれをやることで硬くて軽い戦車を作ることは可能だろう

 

「かなりダイエットしてるし、エンジンは航空機用のタービンつけて内部もきっちり触ってるんだ、速いぜ〜?コイツは…」

 

まぁ高速域で速度を安定して出すために実は車重の半分以上は駆動系や足回りで割かれてしまったが、と続けて杉野さんは苦笑いをしてる

 

「え?軽ければ軽いほどいいんじゃないの?」

 

「運動性能を良くしたいってだけならね、けど足回りや駆動系は車速が乗った状態で悪路を走ればかなり局所的に車両重量の何倍もの負荷が掛かる、それを戦闘って特殊な環境下で長時間支えるわけだから──

上はどれだけ軽くしてもいいんだけどバネ下、足回り・駆動系はきちんと肉厚の部品を使わないとすぐダメになる

だからといって鉄製だと重い割に強度が車速についてこないから履帯はカスタム店から取り寄せたチタン品だよ」

 

それでもただのチタン同士だと部材同士のかじりつき等が起こってしまうため表面に加工を施す必要があって苦労したのだと語る杉野さんのは遠い昔話しを懐かしむように目を細めた

 

「他の部隊が使ってた九七式軽装甲車(テケ車)なんかは元の車重が軽いから、もっと簡単な加工で解決できるんだけど

軽いとはいえチハは中戦車だからな」

 

「あ、そういえばいたね…テケ車」

 

杉野さんが当時所属していた強襲戦車競技(タンカスロン)チーム『松山第343戦車隊 (ツルギ)』は3つの戦闘用戦車隊と1つの偵察専門戦車隊、そして予備の戦闘戦車隊が1つ待機している4つのチームからなるかなり本格的な戦車隊だった

 

その中の1つである偵察戦車隊は改造を施したテケ車で統一していた

 

「あれは確かに速かったけど…って言うよりみんなありえない速度出てたような??

他の人たちの軽戦車がどんなに肉薄しようとしても止まってるような勢いで突き放してなかったかなぁ」

 

「そりゃ金かけて弄ってるもん、軽さとパワーだよ

確かこのチハ1輌作るのに車両代含めた改造費で普通のチハが4輌買えたと思うよ」

 

あまりのスケールが違う話に一気に頭が痛くなって来た

しかし車体性能1つとっても圧巻であることは確かで、本来であれば機動性に優れる軽戦車を中戦車で逆に翻弄し

普通の戦車道ではありえないほどの長砲身なチハで一発当たれば相当距離が離れていない限りは撃破できる

 

そしてそれに乗るのが杉野さんを始めとした熟練の搭乗員達だった為もう目茶苦茶なまでに強かった

 

「とはいえ製造時点でコストが凄い掛かるのに付け加えて

年数が経つと想定外のパワーまで出力を上げたエンジンが悲鳴を上げ始めてな、かなり手は入れてたけど稼働率は悪かったね」

 

「あ、だから引退試合の時は20輌ちょっとだったんだ」

 

「あの時は予備隊含めて動かせるチハとテケ車全部持ってきてあの数がようやくだ」

 

通常の戦車道では改造に関して大戦中に使用・試作・計画のあった部品のみしか認められていない

そのため想定された負荷内での運用が主な為にあんまり壊れることは無いけど、それがどんな改造でも可能になってしまえば

追い求める理想的で強力な戦車ができる反面、確かに故障リスクが常につきまとうのだろう

 

「特に杉野さんが指示する戦車は凄い機動してたよね」

 

「足回りの部品は何回ダメにして変えたかわかんねぇな」

 

実際にこの目で杉野さんの戦闘を見たのは一度だけど

試合中にいつ壊れるか見るほうがヒヤヒヤするほど無茶苦茶な機動で敵戦車に突っ込んでいくものだから思わず僚機を同情してしまう程だった

 

 

ふと会話が途切れて彼女の方を見る

いつになく真剣な表情に変わった杉野さんは目があったと同時にその表情が和らいだ

 

「明日には戦車道の授業も始まるし、なんて言ったって不安な気持ちは拭えないだろうしな

それに、俺だけ一方的に西住を知ってるのも不公平だろ?

…だから教えておきたかったんだよ俺のこと」

 

「…うん」

 

焦る気持ちも怖い気持ちも当然まだあるけど

彼女がそう言うと多少楽になるのだから不思議だった

それはきっと彼女が私と似たような境遇でずっと葛藤していたからなのかな…なんて思ってみたり

 

「あ、そうだレストア完了はまだ先なんだけど

西住には俺のお宝見せてやるよ!」

 

言うが早いか杉野さんはとなりの一回り程大きなブルーシートに手を掛ける

 

「…お宝?」

 

何だろう、といったいどんな車種が出てくるのかと少しワクワクする

こういうところは家柄的に血は争えないのかな、なんて思ったりしながらブルーシートが外されるのを待った

 

「これは多分西住も本物は見たこと無いだろ」

 

「えぇーーー!!!?」

 

 

そこで見たまさかの車体に思わず驚愕した私の声が倉庫の中に響いた

そうして夜は段々と更けていく

 

 

 

 

 

「思ったより集まりませんでしたね」

 

「全部で19人です、私達を入れて22人」

 

「まー…なんとかなるでしょ、結果オーライ」

 

 

翌日、戦車道最初の授業は元は戦車の格納庫であったであろう建物前に集合が掛かったことから始まった

 

 

(うぉ…いったい何なんだここは…)

 

 

集まったメンツをぐるりと見渡した杉野は思わず頭を抱えてしゃがみ込みたくなった

そりゃあれほど怪しいプロパガンダ放送に釣られて来た人員がまともじゃないのは仕方無いとは思う

 

しかし一部は制服すらまともに着ておらず、更にその半分は制服が原型を留めないほど改造が施されているとは一体どういうことなのだろうか

 

風紀はどうなったのだ風紀は

 

 

「これより戦車道の授業を開始する」

 

「──あ、あの、戦車はっ…ティーガーですか?それとも…」

 

「えーとなんだったっけな?」

 

授業開始に待ったをかけたのは一人だけ集団から離れた位置にいた物凄く髪がモフモフしてる子だった

 

(あれはC組の子だっけ??)

 

クラスは違うが確か同じ学年で見たことのある杉野はそれが二課のC組の生徒だった筈だとうろ覚えの記憶を呼び覚ます

そしてその子の質問に答えるように見ればわかるでしょと生徒会長の角谷が格納庫の扉を開けた

そこに置いてあったのは…

 

「ナニコレぇ…」

 

「ボロボロぉ…」

 

「ありえな〜ぃ…」

 

「ほぉ──」

 

杉野の記憶が正しければ一年生である6人衆の中から3人が否定的な意見と共に顔を顰めるほどのくたびれ加減を見せるオンボロの戦車であった

 

しかしその車種に関しては上出来だと思わず声を漏らす

 

「Ⅳ号か…幸先いいな」

 

そう呟く杉野に同意するように小さく頷いた西住はボロボロのⅣ号へ近づき外装のチェックに入る

ある程度目視で確認してから車体側面の装甲に触れて一言

 

「装甲も転輪も大丈夫そう…コレで行けるかも」

 

「外見はね、エンジン見て見ないとなぁ…

後々降ろして完全にバラすにてもクランキングするかは見ておきたいから一度オイルだけ変えて始動確認するか」

 

西住の言葉におぉっ!と声が上がるもその後に続く杉野の言葉で一気に面倒な気配を察知したのか特に一年生達からえぇ〜…と声が上がる

 

全く何とも現金な奴らだなと思いながらも

さてはてこれから忙しくなるなと呟く杉野の表情はとても楽しげなものだった

 

 




アホほどスマホの調子悪くて誤字脱字あると思うので見かけたら報告ください、時間を見つけて直します
超要らん情報ですが杉野手持ちの戦車も飛行機も車も同じ色で統一されているのは何かあった時に塗り直しが楽だから同じ色にしてるだけ、カラーは川西系の暗緑色になります

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