ガールズ&パンツァー〜大洗女子学園のデストロイヤー〜 作:ReA-che 名義
「こんなボロボロで何とかなんの?」
「多分…」
「考え方の違いだよ、下手に綺麗でいられるよりここまでボロボロで治すとこが多いなら作業後は当分安心だろ」
武部の疑問に西住が歯切れの悪い回答をした為にすかさず助け舟を出す
謙虚なのは良い所だがもう少し彼女は自信を持って良いと思う、せっかく家元の家柄なら多少なりとも知識はあるだろうし
レストア趣味の人間としては外板パネルが一枚でも残ってれば資金面は置いとくとして直せない戦車など存在しないとだけ言っておこう
「男と戦車は新しい方が良いと思うよ?」
「それを言うなら女房と畳では…」
「何でも新しけりゃ良いってモンじゃねぇだろ、女も車も」
不貞腐れたように言う武部にツッコむのは五十鈴、割と天然の入ってる五十鈴だがこういうのがさっと出てくる辺りやはり地頭はかなり良いのがわかる
そんな二人の会話内容に対して呟くと武部がピタリと動きを止めてこちらを信じられないものを見る目で見てくる
いったい何だと言うのだろうか
「な、ナオもそういう事言うんだ…」
「これでも華のJKだぞ
俺の事何だと思ってるの?ねぇ??」
「大洗の番長ではないのですか?」
「はっ倒すぞマジで」
揃いも揃って甚だ失礼な奴らである
もう少し西住の奥ゆかしさと俺の慎ましさを見習ってほしいものだ
見ろ西住を、あまりのくだらない会話に苦笑いしてるぞ
…気持ちその視線がこっちにも向いてるのは気のせいかな?ユダはいないよな??
さてそんなこんなでⅣ号を囲みながらの談笑を一時切り上げ
武部が他の戦車は?と口走った所でそういえば1輌しか見当たらない事に気づく
やり方次第で重戦車にも対応できて機動力も申し分ないⅣ号はかなりの万能車輌な為、残る戦車も同じくⅣ号か同等程度の戦車があれば公式戦も優勝は難しいにしてもいいとこ行ける気がする
俺個人の意見としてはⅣ号が総合性能的に一番ベーシックな戦車だし癖もない分乗り手を育てる戦車だと思う
全部Ⅳ号でも良い気がするが…果たして
「じゃあ皆で戦車探そうかぁ!」
「は?」
そんな事を思っていた所に角谷から中々に舐め腐った回答が返ってきた
「この人数なら、全部で5輌必要です」
「5輌あれば公式戦にも参加できるな、あと4輌か」
「…は?」
おかしい
まるで現状は戦車はこのⅣ号しかないような言いっぷりだ
呆れを通り越して笑えてくる、いや何も面白くないけどな?
しかもなに、参加ギリギリの5輌で公式戦に飛び込む気か?
何十年単位で戦車道やってなかった学園が?
ずっと戦車道続けてた他の学園を相手に?
いやちょっとそれは舐め腐ってるどころの話じゃないぞ
「探すって…」
「どういうことですかぁ〜…」
あんまりにもあんまりな現状に一年達からも不満の声が上がる
それもその筈だホント勢いで殴りかからないだけ皆出来た子たちだと思う、本当に
「わが校においては、何年も前に戦車道は廃止になってる
だが、当時使用していた戦車がどこかにある筈だ
いや、必ずある!明後日戦車道の教官がお見えになる
それまでに残り4輌見つけ出すこと」
「いや馬鹿だろお前らマジで」
生徒会の、特に広報の河嶋から鋭い視線が飛んでくる
しかし反論がない所に本人たちもある程度は自覚してるのかも知れない
返ってたちが悪い
「して、いったい何処に?」
「いや〜、それがわかんないから探すの」
「馬鹿じゃないの?」
改造制服の一人が角谷に聞くも返答はわかりませんと来た
人員募集する前に稼働できる戦車確保しとくだろ?普通…
もうあまりにも酷すぎて俺も本音を隠す気は一切ない
「何にも手掛かりないんですか?」
「ない!」
「馬鹿じゃないの?…ホントお前ら馬鹿じゃないの?
お前ら戦車を畑で取れるさつまいもか何かと勘違いしてるだろ絶対」
何年も放置されててそう簡単に見つかるはずがない
それこそこいつらは戦車は畑で取れると本気で思ってそうな投げやり具合である
「杉野貴様…」
さてあまりにも批難しまくったせいか河嶋から呪詛のように低い声で威圧される、結構キレてるな等考えながら
思考はどこまでも冷静に務める、他の子たちは不安そうに成り行きを見ていた
「いや、そりゃね?ここに集まってる子の大多数は純粋に戦車道したくて来てるんだろうし
俺だってまだ授業も始まって十分足らずでこんな事ぁ言いたか無いさ、そうだろ?
…でも出ッちゃうんだもん───」
ここまで本音で話した所でここまで沈黙を守っていた角谷が「はい、終わり」と言いながら手のひらをパンッと合わせて強引に切り上げさせた
「いや〜ゴメンゴメン、言い方が悪かったね
勿論あたしらも探してたんだけど、授業開始には間に合わなくってねー
…だからそこから手伝ってくんない?」
「あぁ…そう…」
予想よりもすんなりと非を認めて詫び、その上で手伝うように皆へお願いという形で頭を下げた角谷へ怒りも引っ込んだ
周囲の空気を瞬時に把握して、否があればすんなりと認めその上で自分の利になるよう運ぶのが相変わらず上手い
これでもこんななりで長年生徒会長として多数の生徒を引っ張って来たのだからカリスマ的に人心掌握に長けてるのだ
だからこそ色んな意味でたちが悪いのである
「聞いてたのと話が違う…戦車道やってるとモテるんじゃ…」
「明後日カッコいい教官が来るから」
「ホントですか!?」
唯一、おそらくこの中で一番邪な考えで戦車道を始めた武部だけは乗り気じゃなかった
しかし口先の魔術師である角谷に速攻で言いくるめられてるのだから目が当てられない
「杉野さん…沙織さんが」
「おぅ、五十鈴は気づいたか」
さてカッコいいと言う単語は非常に便利なもので、異性にも同性にも使える単語である
そして戦車道=乙女の嗜みなのだからここで来るカッコいい教官というのは男であるわけがないのだ
しかし常時恋愛脳な武部からすればカッコいい=男性になるのだろう
角谷からしたら同性から見てもカッコいい女性が来るってだけで、嘘は言ってないから訂正する気がないのだろう
それに武部も性別に関しては聞いてないし
うん、ちょっと考えればわかることだから武部にも非があるな
「多分五十鈴の考えてる通りだけど、面白いからほっとくべよ」
「…そうですね」
「悪い人たちだなぁ…」
だからこそその事に気づいてそうな五十鈴には訂正をさせずに放って置こうと耳打ちする、絶対そっちの方が面白いし
そんな話をしてる俺達が余程酷く映ったのか西住が苦笑いしながらそう呟いた
「しゃーねぇ、探しに行くか…」
「あ、待って杉野さん!」
そろそろ行動に移そうと、仕方無しに探索でも始めようかと外へ出る
後ろからは西住と武部と五十鈴が着いてくるのがわかった…あと離れた所から一定の距離を開けてC組の天パもだ
んで…
「何処にあるって言うのよーー!」
探し始めること約一時間、割と回って探して見たものの見当たらず
武部から駐車場を探してみようと提案を受けて見に来たがこれも空振りに終わった
それもその筈、まぁ広い学校な為に駐車場も何区間かに分けられてるが今見てるのは俺が毎朝車を止めてる所である
ことさらここは見落とすはずがない
「ちぃと疲れたな、ちょっと休憩にすんべや?」
せっかく車の近くまで来たので一息入れようと西住達に声をかけてから自分の車へ
「冷えてないけど無いよかマシだろ?」
「ありがとうナオ」「ありがとう杉野さん」「ありがとうございます」
そしてトランクから家にしまい忘れた缶コーヒーを人数分取り出して渡すとそれぞれ各々の反応が帰ってくる、さてと…
「…いい加減出てきたらどうだ?」
「はいっ!?」
いい加減いつまでも出てこない天パに痺れを切らせて、気配のする方へ声をかけると素っ頓狂な声が返ってきた
「別にとって食いやしねーよ、一緒に休憩すっぺ」
「わっ…あ、いいんですか?」
バツが悪そうに出てきた彼女へ皆に配ったのと同じ缶コーヒーを投げ渡すと慌ててキャッチしてようやくこちらへ近づいてきた
ようやく気づいた武部と五十鈴、西住も誰かにつけられてる気配は感じていたようで、出てきた彼女に声をかけた
「貴女は…?」
「あの、普通2課、2年C組の秋山優花里といいます
えっと、不束者ですが!よろしくお願いします」
「おいそれちょっと違うぜ!?」
まさかの自己紹介一発目でとんでもなくおかしい単語が出てきてひっくり返りそうになるのを抑えると件の秋山は気恥ずかしそうにエヘヘと笑っていた
「よろしくお願いします、五十鈴華です」
「武部沙織!」
「俺は──」
「存じ上げてます!」
ついで五十鈴、武部と名乗ってから俺が口を開いた瞬間に秋山に遮られた
「杉野直緒殿、そちらのお方が西住みほ殿ですよね!」
「おぅ…」
「え…?あ、はい…」
何故かこちらの名前を把握してる彼女にしかし一つピンとくるものはあった
俺と西住、どちらも戦車道を以前からやっているという点で共通点がある
それこそどちらも多少界隈に詳しければ耳に入っていてもおかしくはない
俺のそんな予想を肯定するかのように
惚れ惚れするような見事な敬礼をしてこういった
「では、よろしくおねがいします」
「…陸さん推しか」
◆
「んで…こんなとこまで来てみたけど
逆にここからは見つけたくねぇな」
探索メンバーに秋山さんが加わって場所を移動、現在私達は地図を片手に森の中を探索していた
そんなおりに杉野さんがそんな事を呟く
「なんか違いあんの?」
「あるある、超ある───
ちょっと考えてみ?戦車って鉄製だぞ?
ずっと格納庫にしまってあったⅣ号ならいざ知らず、こんな所で雨晒しになってたら普通はまともに使えないレベルで朽ち果ててるよ」
杉野さんの呟いた言葉に反応した武部さんが聴き返すと
わかってるやつもいると思うが、と前口上を挟んだ上でそういった
うん、確かに…仮にこの森で見つかったら普通は朽ち果ててる
もしかしたら返って直したほうが高くつくかもしれない
「ん?」
「…あの辺りから匂いが」
ふと杉野さんと五十鈴さんが同時に足を止めた
匂いでわかるんですか?と聞く秋山さんに杉野さんが軽く頷くと華さんへ向き直った
「五十鈴、何を感じ取ったかお互い答え合わせしようか
俺は鉄とオイルの匂い」
「同じですね」
「なら確定か…」
はぁ…と杉野さんがさっきの話の手前深々とため息を吐いて五十鈴さんと一緒に草むらをかき分けて入っていく
「やったー!あったー!!」
草むらに入って少し歩くとちょっとした開けた場所に出る
武部さんは喜色にまみれた声色で見つけた戦車に駆け寄っていった
「38t…」
「あー…思ったよりか状態はいいけど、こりゃ火力不足は否めねぇな」
「なんかさっきよりちっちゃい…」
しかし近づいてから次第にあらわになったその戦車に、杉野さんと武部さんは不満げだった
そしてそんな二人と裏腹に秋山さんは笑顔で38tに頬ずりしながら「38tの良さ」について語っていた
しかし次第にハッとなり赤面したままゆっくりと顔を上げる
「今…イキイキしてたよ??」
「好ッきやね〜」
「す、すいません…」
先程の饒舌な秋山さんに対してちょっと引き気味に言う武部さんとちょっとからかうように言う杉野さん、流石に不味いと思ったのか謝る秋山さんと各々
少し離れたところでは五十鈴さんが生徒会の人たちに連絡をとっていた
◆
というわけで戦車を探した日から一日が経ち、格納庫の前に5輌の戦車が並べられていたのだが…
「…こりゃ厳しいね」
「あ、あはは…」
並んだ戦車に対して思わずこぼれた呟きに西住が苦笑いする
いやそれもその筈だ、並んでる戦車は左から八九式中戦車、38t、M3リー、Ⅲ号突撃砲、Ⅳ号中戦車と来た
まともなのはⅢ突とⅣ号位で他は総合性能がかなり劣っている
特に八九式なんて装甲は紙ッペラだし主砲なんか豆鉄砲も良いところだ
おまけに製造国がバラバラだから部品の使いまわしも効かない
一番やりようの無いパターンだ、整備する奴らは地獄だぞコレ
「まぁ、しゃーなしか
流石に新規で戦車買う金もねぇだろうしな」
とは言え戦車はどんなものでも高額だ
20年放置のパクタレを必死こいて引っ張ってくるレベルで財政難なのだから他にとれる手は無いのだろう
「どう振り分けますか?」
「見つけたモンが見つけた戦車に乗れば良いんじゃない?」
「そんな事でいいんですか!?」
さていつの間にか戦車の乗員を決めるようだが、あんまりにも大雑把な班決めに副会長の小山が呆れたような声を上げる
…生徒会はいけ好かないのは変わりないがあいつに関しては認識を改めても良いかもしれない
あの声色からして常識人っぽいし
「では、38tは我々が
…お前たちはⅣ号だ」
「ほぉ…」
広報の河嶋が西住達と生徒会メンツで搭乗戦車を変えたのは少しだけ感心した
現状一番戦力になるのは西住だろう、それが発見した戦車に乗るとなると一番戦力になるやつが非力な戦車に乗ることになる
38tは軽戦車としては優れているが中戦車や重戦車の蔓延る高校全国大会では些か火力不足だ
だがⅣ号ならもしかしたら、ワンチャンあるかもしれない
なるほど多少頭はキレるようだ
「では、Ⅳ号をAチーム
八九式をBチーム、Ⅲ突をCチーム
M3をDチーム、38tをEチームとする」
それぞれのチーム分けが決まったところで俺は意見をするべくスッと手を挙げる、それに対して河嶋が何だと言って来たので一つ提案することにした
「乗員割り振りだが、1年生達Dチームに移籍願うよ」
「え」
俺の発言に対して驚いたような声を上げたのは西住達と1年達
河嶋の方は特に驚く様子はなかったが念の為と言った様子で理由を聞こうときいてきた
「まず第一に、人数も経験者も少ない中で経験者同士固まるのは良くない───
第二に1チームだけ全員1年生だと色々やりにくいだろ
一番人数の多いチームだが、それぞれ教えてやれることが沢山あると思う」
「そうか、うむ…そうだな」
割とまともな意見だからかすんなりと受け入れた河嶋は俺の移籍を認めてくれた
「と、言うわけだ技術指南も兼ねて行って来る」
「…そう言う事でしたら」
何やら言いたげな表情をしているが、意図はしっかり伝わっているのだろう
不満げながら西住も頷いてくれたので1年生達の元へ歩いていく
「おぅ1年共、君らの指南をすることになった2年の杉野だ
一応一通りのことは対応できるからわからないことがあったら何でも聞け、時間がもったいないから何でも教えてやる」
「ひっ!?…は、はい…」
一年達の顔をぐるりと見渡して、軽く自己紹介も交えてそう言うと1年生の中でも真面目そうな子が慌てて返事をした
小さく悲鳴を上げたのは気のせいだろうか、いや目つき悪いのは自覚あるけど、流石に泣きそう
…あと一年の子たちにまで身長で勝てないのは割と凹むな
急ぎ足で訓練も勧めていくだろうから厳しいものがあるかもしれないが、やはり後輩たちには多少威厳のあるカッコいい先輩と言うものを見せてやりたい
多少ピリつく事もあるかもしれないが、余裕をもって彼女たちを導いていければそれに勝るものもないだろう
「とりあえず名前教えてくれるか?」
さて、当然ながら俺は彼女たちのこと知らない
その為先ずは彼女たちのことを覚える事から始める、俺の言葉に彼女たちは元気よく「ハイ」と手を上げて一人ひとり名乗り始めた
さっきの真面目そうな子は名を『澤梓』と答えた
軽く彼女たちを眺めていても彼女は周りを纏めることに長けていることがわかる
実戦を迎えてないため何とも言えないが彼女には車長が向いてる気がする
そして自己紹介が全員終わった所で河嶋が皆に号令をかけて本日は戦車を洗車することになった
思わず引き気味に「それはつまらねぇよ」と言ってやったら「そういう意味で言ったのではない!」と烈火の如くブチギレられた
短気なの?ねぇ…
しかし座布団一枚と言った生徒会長には穏やかなあたり俺の扱いが酷いだけなのだろうか
「これが本当の
「うわ…センパイそれはちょっと…」
「言うかそんな事ッ、杉野貴様!勝手なことを言うな!!」
1年共にそんな事を吹き込んでみるとドン引きした宇津木が可哀想なものを見る目で河嶋を見る
即座に反応してツッコミを入れる彼女には素直に感心する
コレならこっちもボケ倒しても良いかもしれない
「桃ちゃんあんまり怒ると頭に血が上って倒れちゃうぜ?」
「誰のせいだ!誰の!あと桃ちゃんと呼ぶな!!」
「恐ろしく速いツッコミ…俺でなきゃ見逃しちゃうね
ただ、今は戦車道の授業中だぞ?漫才がやりたきゃ他所に行きな」
「がぁああああッ!!」
一方的に会話を打ち切って戦車の方を向き直る
後ろでは河嶋が呪詛のように「コロス、コロス」と口にしているが小山が必死に宥めてるのでそのまま無視を決め込む、
「ハイ、というわけで洗車やって行きまっさー」
他の1年達も今のやり取りで固まっているので水道ホースから水を出してM3リーにかけて一人でに洗車を始めると1年達も我に返って道具を手にする
「そんなに酷く汚れてるわけでも無いから、外見はざっとで良さそうだな」
ある程度車体に水をかけてから止めると泡を着けたスポンジやブラシを手に持った1年達が一斉にM3リーに群がった
「阪口〜、ホースはあと頼んで良い?」
「あいーッ」
こちらもブラシを取って車体の下部を掃除し始める
その為、持ってたホースを阪口に差し出すと元気よくひったくっていった
「恵みの雨だーーッ」
そしてそんな事を宣いながら蛇口を全開にして他の子達へ水を浴びせかける
何とも微笑ましい絵図だ…、元気ですね君たち
それにしても…
(八九式は崖の上、Ⅲ突は池の中にあった割には随分と綺麗なんだな…)
ふと手を止めると崖の途中のスペースに置いてあったと聞いた八九式と池の中から引き上げたと聞いたⅢ突を見る
どれも放置された年月相応に汚れや泥、苔などはついているがこの洗車時間でみるみると綺麗になっていく
最初はそんな所に放置されてた戦車がまともに動くかよと頭を抱えたくなったがちょっと怪しいくらいに程度がいい
いったいどういうことなのだろうか、と考えるもまぁ後々わかるかとまた作業を続行した
◆
「良し、いいだろう
あとの整備は自動車部の部員に今晩中にやらせる」
「悪魔かな?」
洗車が終わった段階で周りの奴らはかなりヘトヘトになっていた
しかし明日には教官がくるというのに機械的なものは一切修理しておらず、間に合うのかコレと思えばまさかの自動車部に丸投げするという
しかも今晩中と言うことからきっと徹夜整備だろう、鬼かオノレは
「それでは、本日は解散」
『は〜い』
ほんとに丸投げだよ、どうしよ
いくら人数がいたとしてもどこがダメになってるかもわからない戦車を5輌も一晩で直せるはずがない
(…腹くくるか)
全く致し方ないと大きくため息を吐いて、各々喋ってる西住達の方へ近寄っていく
「わり、今日は送れねぇわやることでけた」
「あ、…その、なんだかすいません」
もはや毎日西住を送り迎えするのが日課になってしまった為、今日は自分で帰ってくれと伝えると気を使わせてしまってと謝罪が入る
よく出来た子である、本当に
さて工具取りに行くか…と車の鍵を片手に体操着のまま車の元へ
どうせこのあと汚れるのだからこのままの格好のほうが返って都合がいい
それから数時間後、日が落ちた頃に俺はまた学園に戻ってきていた
あんまり大型の工具は狭い車内には積めないし、何より夜遅くまで整備をしてもらってるのだから差し入れが必要だ
とりあえず弁当と飲み物とスイーツを何人いるか知らないが十個ずつ用意した為ぬかりはない
足りなければ買いに行けばいいし多ければ持って返ってもらえば良いのだ
「おつかれーッス」
「おぉ、なんだなんだ」
「手伝いに来たんでよろしくッス」
「あっ!32Rの子じゃん!手を貸してくれるなら助かるよ!!」
照明の光が漏れる格納庫の戸を開けて挨拶をするとオレンジ色のつなぎを来た色白の人が出てくる
すかさず手伝いに来た事を告げると近くの戦車からもうひとり、オレンジっぽい茶髪の人が助かると近寄ってきた
うん、やっぱり名前知らないやつって乗ってる車で覚えるよね
コレ差し入れっすと持ってきた物を手渡せば抱きつかれん勢いで喜ばれるが一歩引いて退避
「ちっと工具持って来ますわ」
「ついでに車持ってきてよ、間近で見てみたい」
差し入れに両手を塞がれ、肝心の工具を車に積みっぱなしにしていると色白の人にそう言われた為車ごと乗り入れることにした
「へぇ〜…スッゲぇ」
車を取りに行きそのまま格納庫へ乗りつけると四人のつなぎ集団に囲まれる、先程の二人がそうであったように残りの二人も自動車部なのだろうが人数が少なすぎやしないだろうか
車から降りて早々、軽く自動車部の面々と自己紹介をした
その間アイドリングさせっぱなしだったが車の周りをぐるりと回りながらそう呟いた三年生のホシノさんは思わずと言った様子で口笛を吹いた
「げぇッ…パッと見ダックテール以外純正かと思ったけど外装は全部カーボンか、ひぇ〜…高そぉ〜…
ホイールは19インチの
「…フェンダーもナローかと思ったらしっかりワイド化してあるし、うっわAP6POTキャリパーにオーリンズサス…!?」
ついでナカジマさんとスズキさんが外装を見たり腹下を覗き込んだりしながら呟く
「んん?」
そんな中、同じ2年のツチヤだけは怪訝な顔をしてエンジン周りを見ながら首を傾げる
「どうした?」
「いや…随分と調子悪そうじゃないかなって思って…
ほら、アイドリング凄いバラついてるし」
神妙な面持ちでツチヤがそう言うと思わずと言った様子でホシノさんがブフッと吹き出す、スズキさんも同じく目元に涙を溜めながら笑いこらえてるしナカジマさんに至っては「あちゃ~」っと言った表情で宙を見上げた
「え?何?何かおかしなこと言った!?」
「い、いや?…そうだなぁ〜
うちの部車はこういう弄り方してないし、ツチヤがわからないのも無理ないか」
他のメンツのあんまりな反応に当のツチヤが焦ったように言うとホシノさんが笑いこらえながらいや、仕方ないかもといった様子でこちらに目線を送ってくる
どうやら答え合わせは俺がしろと言うことなのだろう
「…社外のハイカムが入ってるってだけ」
「嘘ッ!?、ゴメン!初めて見たから全くわからなかった!!」
即座に謝罪を入れるツチヤを見て他の3人はもう大声で腹を抱えて笑い出す、羞恥からかひたすら謝り倒してくるツチヤの顔はみるみる真っ赤に染まった
「で、でも仕方ないよねッ
性能が極端に変わるからうちの部じゃ触れる機会無いしッ」
「ナカジマぁ〜!上擦った声で言われても慰めにならないよ〜!!」
目元に溜まった涙を指で拭い、肩を震わせながらフォローするナカジマさんにツチヤはそう言ってポカポカと背中を叩く
その様子を見て他の二人の笑い声が一層強くなるがふとホシノがこちらへ向き直った
「しかしハイカム入れるって事は中も相当触ってるんだね、排気量は?ざっくり改造点教えてよ」
「超ざっくりッスけど、腰下をRB30のビレッドブロック製にしてそれをボアアップして3.4L化
あとは鍛造ピストンとコンロッド、バルブ類とかも一通り強化品にして、給排気一式、インジェクターも大容量にしてタービンはペケロクのツインかな」
本当に超大雑把に入れてる部品の一部を紹介すると四人から「おぉ…!」という声が上がる
改造は自己満とは言え好きでやってることなのでこういう反応を見るとやはり嬉しくなるものだ
「杉野、今度走りに行こうよ」
「ん?…あぁ、いいよ」
「速そうだもんな杉野、フロント飛び石だらけだしキャリパー変色してるし…」
「何言っンスか、普通ッスよ普通、そんな速くないから」
ツチヤからドライブの誘いがかかり、それに頷くとホシノさんから笑顔で肩をバシバシと叩かれながら言われた言葉にクラゲもいいとこだぞと冗談めかして言うとこれまたそんな筈無いだろうと大爆笑だった
「さぁて話もそこそこ、始めよっか〜♪」
一段落がつき、作業を再開しようとナカジマさんが仕切る
「杉野、戦車触ったことは?」
「勿論、多分一番得意かも?」
「こりゃ心強い」
それぞれ重い腰を上げて作業グローブを身に着け始め、そんな中でナカジマさんから戦車を触ったことがあるかと聞かれたため当然あると答える
これでも中々特殊な環境下で育ってきた自覚があるため、実は戦車に関しては人生で一番触ってる機械だ
重機であるため部品の一つ一つが重く作業自体は好きじゃないが得意である
俺のそんな言葉に差し入れの缶コーヒーを一気に飲み干してスズキさんがそう言った
「で、俺途中から来たんで進捗わからんすけど
どこまで終わってんスか?」
「比較的程度のいいⅣ号とM3リーはもうほぼ終わったかな〜
あとは八九式と38tと…問題のⅢ突だね」
「あぁ、池の中から引き上げたって問題の…」
「幸いにも電装系等はそこまでイカれてないし、エンジンも中までは水に浸かってなさそうだったけどね」
俺が来る前に既に各車軽い点検をして、その上でⅣ号とM3は重整備も含めてほぼ終わってると言うのだから驚きだ
…いやそれにしても
「何か怪しいッスねそのⅢ突」
「うーん、電装やエンジンは防水加工されてたからね
流石に放置歴が長すぎて加工が甘くなった所から僅かに侵食はされてたけど…こんな加工されて池にってのはちょっと出来すぎてるよね」
捨てたにしては随分と手間がかかっている、俺のそんな考えは他の自動車部のメンバー全員も感じ取っていたらしく
まぁ明らかに不自然な点はいくつかあるとナカジマさんが教えてくれる
「ダメになってる外装もある程度の修繕でいいだろ、幸い大会にはまだ時間があるから
点検をしつつ順次交換していけばいい」
「あ〜、やっぱそうだよね
私らとしては全部やり直して置きたかったんだけど」
「大会が始まったら嫌でも毎晩触る
整備も含めて皆戦ってるんだ、休める時に休んで備えないと戦えない」
そしてみんなの中で唯一戦車を触ってた経験のある俺が主導となる事になった為、一晩で全部が全部を仕上げるのではなく
完璧に仕上がるのは大会に間に合うところで組むよう伝えるとわかっていたけど全部やっておきたいとツチヤから反論が出る
気持ちはわかるが今のうちから毎度毎度完璧にやっていては時間も金も人でも足りない、そんな事をやんわりと伝えるとみんな嬉しそうに笑う
「…そっか私らも頭数に入れてくれるんだな」
「自動車部がいなきゃ、うちのチームはまともに動けないさ」
当然だろうと笑い返し、さて最初に触る戦車を決める
「よし、俺は八九式から触り始めるわ
終わり掛けてるⅣ号とM3終了次第38tいくメンツとこっちの手伝いで半分に分かれてくれ
こっちも終わり次第38t手伝うから、最後にⅢ突を皆でやろう」
『は〜い!』
元気よく返ってくる返事をBGMさてと工具を片手に持ち
八九式の砲塔周りのボルトを外していく、一度クレーンを使って砲塔を外して、きっちり細部まで触ってやらなければならない
野ざらしだったわけだし
さてそんなこんなで触っていき八九式の作業が終わったのが日付の変わる少し手前、途中からツチヤが来てくれた為予想よりかは早く終わった
「スゲェ〜…神業見ちった〜!」
「しっかしまぁ、この人数だと結構辛ぇな」
深夜に差し掛かり皆テンションがおかしな方に振り切れ始め、俺が逐次見張って口を挟まないとあらぬところまで手を出そうとし始めるから自動車部には困ったものだ
いや心強いけどね
一緒に作業してるツチヤは思ってたより俺の手際がいいからかずっと上機嫌だ
モチベーションが高いのは良いがどうにも俺の方が続かない
「…ちょっと待ってて」
俺はツチヤにそう言って一度八九式から降りて物陰へむかう
思えば俺も深夜テンションであらぬ方向へ思考がぶっ飛んでいたかもしれない
「…あ、もしもし?お久しぶりです…」
『…チョク、てめぇ今何時だと思ってやがる?』
携帯を取り出して目当ての人物でタップ
何度目かのコールの後、電話越しに聞こえる低く唸るような威圧感のある声に思わず苦笑いしてしまう
「相変わらず元気そうで何より、実は折り入って頼みたい事があるんですが…」
『てめぇは昔から問題ごとを持ち込むのが好きだな…
はぁ…わかった、こっちもどっかのだっかさんが辞めてくれたおかげで暇を持て余してたところだ』
電話相手のため息混じりの了承にぐっと拳を握ってガッツポーズ、これで戦えるぞと意気込んで相手へお礼と共に電話を切った
まぁ勿論、このことには翌日目を覚ましてからうんと後悔することになるが
「コレで次回以降の修理と改修も目処がたったな」
再び作業グローブをつけ直して修理に戻る
結局Ⅲ突も含めてすべての修理が終わったのは明け方近くまで掛かってしまった。
公式風キャラ説明①
名前
所属校 角田市立角田中学校→県立大洗女子学園
学年 2年生(普通一科A組)
所属チーム 四号車Dチーム(ウサギさんチーム)
担当 戦闘301戦車隊【新選組】隊長兼戦車長(タンカスロン時代)→ウサギさんチーム通信手兼総合指南役(校内模擬戦〜)
身長 133cm
体重 31kg(身長体重の割に身体の起伏がしっかりしてるが低身長が災いして服を着てるとずんぐりに見える)
出身 宮城県角田市枝野
現住所 大洗学園艦内一軒家
家族構成 父(浪治)・母(すみえ)・姉(カヲル)・兄(イワオ)・妹(志げ子)・末妹(カズ子)
誕生日 10月13日(てんびん座)
年齢 16歳
血液型 O型
好きな食べ物 ちり鍋
嫌いな食べ物 なし
好きな教科 国語
嫌いな教科 なし
趣味 体操・読書・詩を読む・機械弄り
日課 朝起きて牛乳飲んで体操して牛乳を飲み着替えて牛乳を飲む
好きな花 サザンカ(困難に打ち勝つ)
好きな戦車 四式中戦車チト
座右の銘 媚びず諂わず囚われず
↑ドアップだから全然低身長に見えないけど
チャッピーに描いて貰った直緒
※元ネタ成分表 菅野直5割、岩本徹三2割、ハンス・U・ルーデル2割、その他のイカレ軍人1割
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