ふたりはプリキュア!! LEPUS☆GALAXY's 作:きゅー。
あと、ザケンナーが出ると周りの人達は気絶しちゃう、とか…
「はっ……!!」
意識が夢の中から急速に浮上する感覚とともに、亜希は目を覚ました。
同時にオレンジ色の光が目に入り、眩しさを覚える。
覚醒したての状態で周りを見渡すと、そこは見慣れたクラスの教室だった。
だがまさしく伽藍堂、という言葉が似合うほど、誰もいない。
そして耳に入ってくるのは、グラウンドから聞こえる複数人の声と、住処へと飛び去っていくカラスの甲高い鳴き声。
グラウンドでは恐らく運動部の活動の真っ最中なのだろう、ボールを高く蹴り上げる音や、ランニングの掛け声も聞こえてきた。
「私、いつの間に寝てたんだろ…?さっきまで午前中だったのに」
どうやら自分でもよく分からないタイミングで寝入っていたらしい。
机から身体を起こし、すっかり縮こまっている背中を伸ばすと、すっかり身体の下敷きになっていた、理科の教科書を仕舞い込んだ。
そう、今日の6校時目は理科。
確か植物の仕組みについて学ぶ、という内容だったのは覚えている。
しかし、帰りのホームルームが終わった直後からの記憶がない。
恐らく睡魔との対決の中、限界を迎えて、そのまま眠りに落ちたのだろう。
「ん…私、また寝たの…?」
そう、亜希は1度、睡魔に襲われ、眠りに落ちた。午前中の出来事だ。
数学教師にみんなの前で諌められ、恥をかいたのを思い出した。
しかしまたこうして眠りに入り、一気に夕方まで寝過ごした…ようだ。
その時、亜希は言いようのない違和感を覚えた。
確かに、『6校時目まで授業を受けた』という記憶は自分の中にはあるのに、どうにも『授業を受けた』、という体感をした覚えがなかった。
給食も同様だ。メニューの記憶はどこか漠然としていて、僅か数時間前の話なのに、献立そのものが思い出せない。
まるで、時間が一気に飛んだかのような、奇妙な感覚だ。
頭を捻りながらふと時計を見ると、17時43分を差していた。
もうそろそろ、部活動も終了となる時間帯だ。
「あ、こりゃ今日は行けないわ、部活…」
亜希は、中学校では美術部に所属していた。
現在夏休み期間に行われる全国コンクールに向けての、いわゆる準備期間の最中であった。
テーマは、『繋がり』。
しかし亜希はその題材が、どこか曖昧模糊で、漠然としているように思えた。
もともと亜希が得意としていたのは模写。
目の前に存在するものを写実的に切り取り、物体の陰影やシルエット、色彩を、画架上のキャンバスへと写し出す。
そういった行程が得意な亜希だからこそ、「物体ではないもの」を表現するのは大の苦手だったのだ。
その課題を乗り越えなければならない。そのためのアイデアを、亜希は求めていたところだった。
しかし寝落ちて、日も落ちかけている今となっては、最早アイデア探しどころではない。
仕方がない。今日のところは出直して、ゆっくり眠って、明日こそ。
そう思い、亜希は一路、家に帰る支度を始めた。
***
薙町中学校から120メートルほど離れたところにある陸橋。
中学校指定の通学路に指定されているそこから見る街の夕景は、兎にも角にも美しかった。
オレンジに染まっていく街。
気温が下がり、少し冷たくなった風が、プリムと、プーカの間を吹き抜けていく。
「元通り…なのかな、これで」
橋の欄干越しに見つめる街。
そこが瓦礫の山になっていたという事実は、今や2人の記憶の中にしかない。
"創造の力"をフルに使った「クレシェンテ=ヒーリング」による街の修復を行ったプリムとプーカ。
それは、同時に街に住まう人々の記憶や認識をも書き換えるほどに強力なものであったのである。
木のエレメントの奪取、ボラドスの出現。そして街の破壊…その全てが"なかった事"として改変されているのだ。
今、人々は何ごともなかったかのように、いつも通りの日常を終えようとしていた。
プリムは、暮れゆく日に照らされる街を眺めていく。
すると、
どさり。 何かが倒れたような音が、すぐ隣から聞こえた。
「……はぁ、っ、ぷ、か、ぅっ…!」
「プーカっ!」
その音に嫌な予感を覚えたプリムの目に映ったのは、欄干にもたれかかるかのように倒れているプーカだった。
すかさずプーカを、プリムが抱き抱える。
「だ、大丈夫…心配、いらない、ぷ、か…ちょっと、疲れちゃっただけプカ…!」
「そんなわけないだろ!なんで、なんで……!?」
なぜこんな事に?何が原因はあるのか…?
人間の姿の維持、プリキュアとしての戦闘、技の使用、街の修復…かかった負担が、このタイミング一気に襲ってきたのだろうか。
あれこれ考えている暇もない。
「……待ってて、今、どこか、休める所を…」
目の前で、突然の体調不良に苦しむプーカの姿を見て、プリムは平静さを失いつつある。
そんな時の事だった。
「…大丈夫?朝ちゃん、もしかして具合悪い…?」
プリムは、突然響いたその声にふと顔を上げる。
そこには、同じクラスにいたポニーテールの少女…亜希がいた。