ふたりはプリキュア!! LEPUS☆GALAXY's 作:きゅー。
幸い大人しい気性の方だったので、あまり警戒される事もなかったです。良かった。
いざ触ってみると、毛を隔てて、確かに温もりがあるんですよね。
これこそ、生きてるって感じ…かもしれません。
犬飼さんちのこむぎさんも、こんな手触りなのかなあ…と、そんな事も考えていました。
体…もとい手は犬を撫でながら、心はアニマルランド行きです。
歩道橋から歩いて、10分というところだろうか。
ビル街から少し離れた住宅地の中に、レンガ模様のタイルに彩られた、2階建ての家があった。
それが羽奈日家…亜希の実家である。
プーカの体調不良の原因は、疲労と空腹だったようだ。
プリムともども、ボラドスとの戦いもあって、昼食にありつけなかったせいだった。
亜希の剥いたリンゴを食べた後、プーカは亜希の部屋のベッドに横になって、今はぐっすりと眠っている。
初めこそ人間の姿だったが、すっかり安心しきったのか、就寝から15分ほど経つと、妖精の姿に戻ってしまっていた。
幸運にも、姿を変える前に、亜希はプリムと1階に降りたので、変身する所を見られる事はなかったが。
傾いた夕暮れの日差しが差し込む、1階のリビング。
テーブルの上には、亜希が出した緑茶と、ウサギの型に飾り切りしたリンゴが出されていた。
朔はいただきます、と呟くように言うと、リンゴを1つ含み、咀嚼していく。
「…うん、おいしいね。これと、コレ」
リンゴと、お茶の入った来客用のコップを指差す。
もともとは長く海外に住んでいた、という自己紹介をしていたのを、亜希は思い出していた。
もしかして、朔はこちらの文化には案外疎い所があるのかもしれない…そんな事を考えた。
「ああ、それはリンゴっていうの、これは、お茶」
「名前、よく知らなくてさ。食べた事なかったから」
「そうなの!?…ああ、外国にいたんだっけ」
「うん…あまり見たこともないかな」
カチカチと、部屋にこだまする時計の秒針音。
静かに朔がリンゴを齧る音が、ただ、響いていく。
何だかすっごい、気まずいな…と、亜希は思った。
目の前には表情の薄い印象のミステリアスな転校生がいて、味わっているのだろうか、ただ黙ってリンゴを食べている。
何か話しかけようか、とも思ったが、すぐに話のネタが思いつかないのだ。
もともと、朔と朝の2人を家にあげたのは、亜希だった。
朝が体調不良、疲れのためらしい…という事を聞き、見て見ぬ振りができず、「よかったら、私の家で休んでいく?」と提案したのが、事の発端だった。
ベッドをプーカ…朝に貸したのも、亜希から言い出した事だ。
もじもじとするばかりの亜希。
沈黙を破ったのは…朔だった。
「……こうやって」
「へ?なに?」
「朝以外の誰かとモノを食べるの、久しぶりなんだ」
「あっ、……そうなんだ…ちゃんと残してるんだね、朝ちゃんの分」
よく見ると、皿にはまだ4つ程、リンゴが並んでいた。
「起きたら、食べるかもしれない、と思って」
「そうなんだ、優しいなぁ、朔ちゃん」
その言葉を聞くと同時に、朔の目が少し見開いたように、亜希には見えた。
「優しい…?僕が、そう見える?」
「うん」
朔は少し目を伏せた。まるで、何かを深く考えているような仕草だ。
なんだか、哲学者っぽいな…という印象を、亜希は受けた。
「いや、本当に優しいのは、君の方だ」
「え、そう?」
すると、朔は真っ直ぐに亜希を見据える。
不思議な色合いをした紅い瞳が、夕暮れの光とともに揺れて映った。
「────提案がある。君と、"友達"になりたい」
***
同時刻。某県。
湾岸部に位置する大規模な火力発電所内で、ある異常な事態が起こっていた。
その制御室には所員たちが詰めかけ、事態の把握や情報収集を行なっていた。
「動力系統に異常は見られません!全て正常です!」
「タービンにも不審な点はありません!」
「燃料も過不足ありません!」
そう、全てが正常な筈なのだ。ただ、1点を除いては。
「おかしい、発電量…いまだにゼロです、変わりません!」
「所長!!…ボイラーが点火しません!」
「点検を急げ!」
火力発電は、一般的には燃料を燃やした際に生じる膨大な蒸気でタービンを回して発電を行う仕組みだ。
が、しかし、燃料の燃焼を担うボイラーが止まった場合…その発電自体が不可能になってしまうのだ。
人間たちが現状の打開策を見つけようと足掻くなか、発電所から炎を纏ったオーラが地面を通じて、静かに流れていく。
それに気づくものは誰もいない。
次なる異変は、すでに始まっている。
*****
火力発電所から、距離にして数千キロほど離れた、とある町。
どうやら工場での爆発事故があったらしく、すでに消防による、懸命な消火作業が行われている最中だった。
しかし、現場は一進一退。放水を行うも、なかなか延焼は止まらない。
と、工場そのものを、吹き飛ばすような大爆破が起こった。
あまりの爆風に、思わずたじろぐ消防士たち。
「おい、大丈夫か!?」
「まさか…バックドラフト!?」
「おい、アレ見ろ!!」
1人の消防士が目撃したもの。
それは紅蓮の炎を纏いながら、ゆらゆらと陽炎のように立ち上がる、巨大な鳥のような生物であった。
工場の焼け跡を突き破るように現れたソレは、今なお燃え上がる炎を、その身に取り込んでいく。
直感的に身の危険を感じた消防隊長が指示を飛ばした。
「退避だ!退避しろおっ!!」
言うがまもなく、炎を纏った巨大な鳥は、甲高い鳴き声を発すると同時に、両翼をばさりと、目一杯に広げた。
それが合図だった。
まるで地を全て舐め尽くすような大爆発が、辺り一面を吹き飛ばした。