ふたりはプリキュア!! LEPUS☆GALAXY's 作:きゅー。
まず、先陣を切ったのはキュアプーカだった。
「プカぁぁぁぁーッ!」
裂帛の叫びとともに、全身から桃色のオーラが噴き出すと、瞬間、目にも止まらぬ超高速移動が始まった。
ボラドスはこれを反射的に迎撃しようと、ありったけの触手を繰り出し、口から光弾を、やたらめったらに乱射していく。
しかしそれら全てはプーカに命中する事はなかった。
ボラドスの反応速度を、遥かに上回るスピードで移動していたからだ。
同時に、プーカに対して攻撃がかかりきりだったために、ボラドスには大きな隙が生まれた。
それを、キュアシュプリームは見逃すはずもなかった。
宙空を降下していく中、ボラドスに向け2本の指を立てると、指と指の間にエネルギーが集中し、渦を巻いていく。
「プリキュア…シュプリームブラスター」
シュプリームが呟くと、蓄積していたエネルギーは稲妻の如き光線となり、一気に放たれた。
まるでボラドスそのものを射抜くように着弾した光線は、身体の内部で爆発を引き起こしていく。
ボラドスの胴体は、蔦が幾重にも絡まったような構造をしている。
外からの打撃などの物理攻撃には耐性はあるものの、植物状であるゆえに燃やしたり爆破するなどの、火や強い衝撃を伴う攻撃にはめっぽう弱かった。
そしてその構造上、身体の何処かには隙間ができている。それを掻い潜り、内部を攻撃される事こそ、ボラドスの弱点だったのだ。
シュプリームの攻撃は、ボラドスの戦意を削ぐには充分であった。
その調子はまたたく間に崩れ、触手の勢いは半減し、光弾の射速も数もみるみるうちに減っていく。
「今プカっ!」
これが好機と見たプーカは、単身ボラドスの頭部をめがけて飛び込むと同時に、拳を握って、力の如く振りかぶる。
「プリキュア!ミラクルプーカパーンチっ!!」
高速移動の速度が乗った、かなりの威力を誇る渾身のパンチが命中し、ボラドスはその体勢のバランスを大きく崩して、転倒していく。
それだけではない。この技にはプーカの持つ"破壊の力"が込められている。その力は頭部から伝達し、ボラドス内部の動力器官を機能不全に追い込んでいく。
本来、触れた箇所だけを破壊するというのが、プーカの持つ"破壊の力"の発動条件であった。
しかしプリキュアに変身していく中で、プーカ自身も力をコントロールする術を、自然と身につける事ができていた。
今は力の使い方を応用して、狙った箇所だけを破壊し、相手を無力化できるようになったのである。
木の幹が次第に活力を無くし、萎れていくように、転倒したボラドスの全身から力が抜けていくのが分かった。
それを見るや、ビルの谷間のアスファルトに、シュプリームとプーカはかつん、と音を響かせながら着地した。
「このまま浄化、いくよ」
「プカっ!」
シュプリームの声にプーカが応じると、2人はお互いに手と手をとり、繋ぎあった。
すると、胸のブローチに収められた青と桃の宝石から光が満ち満ち、2人を包んでいった。
宝石から伸びる虹色のラインが激しくリレーするかの如く発光し、高出力のエネルギーが広がり、周囲には猛烈な風が吹き荒んでいく。
すかさず2人は、空いた片手を天にかかげ、人差し指と中指でピースサインを作った。
すると、苛烈なほどのエネルギーの波は一気に収束し、中空に集まっていく。
さながらそれは、地上に太陽がもう1つ生まれたかのような、煌めきと大いなる力に満ちた輝きであった。
プリキュアたちの前には、彼女たちが力を発揮する時に現れる、星が輪を描くような紋様が、エネルギーを具現化したかように浮かび上がっていく。
そしてシュプリームとプーカはすかさずタイミングを揃え、ボラドスに向けて2本の指を向けた。
『プリキュア!スペリオ=ルミエール!』
声を揃えて技の名を叫ぶと同時に、輝きを増し、蓄積したエネルギーは紋様を介し、邪なるものを吹き飛ばす、青や桃色、白と黒とが混じり合う極太の光線へと、その姿を変えた。そして、一直線にボラドスへ向かい……命中。
その瞬間…強烈な爆風が辺りに吹き荒れた。
***
同じ頃、薙町市民総合体育館。
災害時の指定避難場所として設定されたそこに、亜希たちをはじめとした、市民の姿があった。
もともとは市民に向けて開かれているそこに、今は人々が詰めかけ、ごった返していた。
亜希はいま、他のクラスメイトたちと共に、纏まって座っていた。
安全は確保できている。しかし突然の事で、みな混乱していた。
思考が定まらない。一体、自分たちは何を見ていたんだ。
あの転校生たちは?怪物は?プリキュアたちは?
周りのクラスメイトのパニックも収まりそうもない。
口々に、感情的になっている声たちが聞こえる。
「ねえ、先生…転校生は?まだ来てないの!?」
「そうだよ、やっぱり…逃げ遅れて…」
「お前ら変なこと言うなよこんな時に!」
「落ち着け、こっちでも安否は今確認してる!大丈夫だからな!」
裏腹に大人たちは、次々に動いていた。緊急ラジオや、情報収集、更なる避難者の受け入れ、物資や環境整備に、だ。
時々、地面が揺れる事があった。
あの怪物が地面を、足音を立てながら揺らしているのだろうか。
その音を聴くたび、不安に駆られる。
「夢だよねこれ…覚めてよ、はやく…」
亜希はもう項垂れるしかなかった。こんな光景、現実にあってたまるか。心は、現実を受け入れることを拒んでいる。
「プリキュア、がんばれ…!がんばれ…!」
ふと小さな声が耳に聞こえた。
見ると、年端もいかない女の子が、一生懸命に何かを握りしめて祈っていた。それは小さなマスコット人形。
少ししか見えないが、プリキュアのものだろう。
「プリキュア…か…」
どこへともなく、その呟きが漏れていった。
すると、突然。
どぉん、という、爆発音が、何処からか響いた。恐らく外からだろう。
『えー、速報です。たったいま、速報が入りました…東京都薙町市に今日、10時36分ごろ現出した巨大な生物が、たった今、強い光のようなものに包まれて消滅した…との情報が入りました。繰り返します…』
周りの大人たちが支援物資の一貫として持ってきたラジオが、程なくして新たな情報を与えていた。