とある筋肉の魔法少女(おじさん) 作:喜木樹希
-プリティ☆ベル時空-
魔界と天界、そして現世をも混沌と狂気の渦に巻き込んだナイアラトホテプを追い詰めた厚志たち。
世界を破滅に導くヨグ=ソトース6基の上空に誰も見たことがない天使が現れる……はずだった。
「……なぜ何も起こらないんだ?」
この状況において一番混乱しているのはナイアであり、それを見ている厚志たちもまた不気味な空気に包まれていた。
神の目的である魔族の根絶が不可能になった段階だと言うのにもかかわらず、隠されていた天の使徒たちは影一つ見えない。
幼稚な精神性をもった自称神を数千年にわたって会話から衆生の救済などという幻想から目を覚ませばいいなと、手を変え品を変え伝えていたが改善の余地など一切なく、馬の耳に念仏を唱えた方が万倍マシなレベルだと断言できるほどだ。
微粒子レベルですら改心の余地はあり得ないと判断したナイアの結論が、まさかここに来て覆るはずもなく。
無情にもその時は訪れる。
「おじさんっ!」
現在リィンロッドで変身しているのがエリちゃんである以上、高田厚志は魔力を纏えるとはいえ生身である。そんな彼の姿が蜃気楼かのごとく歪み始めたのだ。
「来るんじゃない!」
厚志はそれから逃れようとするも身体が微動だにしないことから、エリちゃんや綾香ちゃんが巻き込まれないように声を上げる。
だが、その機転を嘲笑うかのようにそこら一帯がまるで水に溶かした絵具のように溶けてゆく。
「なんだこれは……こんなものは知らないっ?!」
ナイアがB級映画の科学者のような言葉を口走ると共に彼らの姿は初めからなかったかのように消え去った。
-学園都市-
夏真っ盛りのこの時期。学生が8割を占める学園都市では帰省などで普段より人通りが少なくなっている学園都市に一人の学生が炎天下だというのに歩いていた。金髪にアロハシャツ、さらにはサングラスというどこからどう見てもお近づきになりたくない見た目をしている彼は、外見とは反して妹のために暗躍していた。
魔術と科学が交差するこの世界において、抜きんでた科学技術を擁する学園都市。
そのトップであるアレイスターにいいように使われながらもスパイ活動を行っている土御門元春は、裏路地でひと息ついているところであり得ない程のマナの高まりに反射的に魔術を行使し自身を守る。当然妹には自動発動の護符を御守りとして渡し、それ以外にも気づかれないように複数忍ばせてある。
だが、突如として内出血と吐血により膝をつく。魔術を防ぎきれなかったのではない。開発を受けた能力者でもある彼にとって魔術の行使は諸刃の剣。才覚を有した者にとってそれは毒にしかならない。血管などが傷つくため、運が悪ければ大動脈を断ち切られそのままお陀仏だ。
一応ささやかではあるが、彼には
「一体全体、何が……」
そんな満身創痍の彼の目の前が蜃気楼のように歪みだす。能力使用による脳への悪影響かとヒヤリとするも目線を他にやってもそれは移動しない。
ということは目の前の現象は能力か魔術によるものだと結論付けた彼は痛む体に鞭打ち、魔術の発動媒体である折り紙を手に取る。
「くそっ、こんな時に……いや、関係があるのか?」
大規模魔術の中でもあり得ないほどの規模のそれとほぼ同時に現れた目の前の異常を結びつけることは不自然ではない。それに囚われさえしなければだが。
そして警戒する彼の目の前に現れたのは……。
「ここは……おっと、大丈夫かい?」
ムキムキの偉丈夫だった。
-霧の町-
厚志が姿を消したのを確認したミルクとココアだったが、彼女たちもこれまでに観測した事のない方向からの魔力の渦に吸い寄せられ、気がつくと濃霧立ち込めるレンガ調の建物が立ち並ぶ古風な街並みへと転移していた。
「ううー、何よさっきの魔力は」
「確かに感じたことのない方向からだったわね」
ココアより回復の早いミルクだったが、
「回復次第、探索全開で探すわよ」
「もうちょっとだけまって……」
ミルクが一人で観測した範囲、それに街並みと気候からするに恐らくここは日本国内ではない。
「もう大丈夫!」
「よし、じゃあいくわよ」
「「アクティブレーダー全開!!」」
二人の精密探索範囲は半径20kmほどだが、噂では最大索敵範囲は広すぎるため本人たちにも判らないほどだと言われている。
そんな彼女らが全力での探査を行えば変身したエリちゃんなど見つける事は容易いのだが……
「どういうことなの……」
「なんで魔族の反応が一つもないのよ!」
「それに変身してるエリちゃんの反応が感じられない……」
自身の現在地よりも魔族の存在が確認できない事とプリティ☆ベルら各位の反応すら確認できない事に衝撃を受けるミルココたち。
索敵能力では無敵を誇る彼女らではあるが、戦闘能力という面ではそこまで強くはない。
デフォルトで現代兵器が使用できない天使ではあるため、銃撃戦などでは問題がないのだが彼女らが飛ばされた先はというと……
「バカみたいな範囲の魔力放出の起点に来てみれば少女が二人だと?」
混乱している最中、彼女らの前に現れたのは外見年齢はそう変わらない金髪碧眼の美少女だった。ミルココが日本語で騒いでいたからか同言語で話しかけてきたようだ。
「え、ここってイギリスじゃあないの?」
探知により国外だと理解しているものの日本語で話しかけられると戸惑ってしまうだろう。
「ああ、その通り。ここはイギリスの
「……すこし道に迷っちゃってね」
「ほう、魔族とやらが確認できないとも聞こえたが?」
「ど、どうしようか。子供相手だしごまかしきれると思う?」
「ココアのいうとおりごまかせると思ったんだければ魔力を感じてっていってたし難しそうだし……それに」
「誰がガキだ!!」
「「そこまでは言ってない?!」」
子ども扱いされることに軽いコンプレックスを頂いている彼女の目の前で内緒話の体で、無知な子ども扱いすればこうなるだろう。
「それより、囲んでるのは貴方の知り合いかしら?」
姿を見せた時は近くに一人隠れているだけだったが、今は濃霧に紛れて両の手では数えきれないほどの人数がまわりを取り囲んでいる。
「はぁ……マーク、そんなに数はいらんだろう」
「念には念を入れよっていう素敵な言葉が日本にはあるらしいんでね。そうでなくても貴方一人で飛び出したんですから知りませんよ」
物陰から現れたのではなくヴェールを剥ぐかのようにするりと現れた男に警戒をあらわにする二人。
「とりあえず場所変えませんか?」
「その提案には乗らせて貰うけれど、出来ればカフェとかがいいかしら」
「お腹空いたもんね」
当然発言通りの意味ではなく、相手のホームに行くには互いに信用がない。そんな状況ゆえそれについては相手も同様の意見のようで。
「軽食程度なら奢ってやろう」
「あんためっちゃ偉そうね」
「偉そうじゃない。偉いんだ」
「そ、でも年上の女性には敬語を使った方がいいわよ」
「……そんな年の差もないだろう」
「どうかしらね」
余談だが、見た目小学生高学年ぐらいミルココの年齢は33歳である。バードウェイと比較しておおよそ20年ほどの差があるだろう。
「まぁいい。マーク車はあるんだろうな」
「歩いて行ける範囲に店ぐらいありますよ」
「いや、先月行った店に行きたい」
「わがままですねぇ……少々お待ちいただけますか、お二人さん」
「もちろん」
「あ、そうだ。一応確認なんだけどムキムキおじさんか魔法少女の女の子って知らない?」
「……心当たりはないが、詳しくはカフェで聞かせてもらおうか」
「ええ、その代わりこっちも色々聞かせてもらうわよ」
マークによって用意された黒塗りの高級車に乗り込み、カフェへとむかう一行。
バードウェイが彼女らが人間でない事に気付くのと、ミルココが別な世界へと転移したことに思い至るのまであと少し。
-窓のないビル-
液体が満たされたポッドで逆さまに浮いている男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える学園都市統括理事長であるアレイスター=クロウリー。その目の前に、一人の少女らしき外見でソレはいた。
「いやぁ、ここまで来るのにかなり苦労したよ」
ソレは入り口のないビルに如何にして配置を把握し潜り込むんだかをペラペラと語り、まるで10年来の親友のような態度を示している。
そんなソレの語り口を遮るようにしてアレイスターが尋ねる。
「そんな労力を払ってなんの目的が?」
その質問を待っていたとばかりにソレはニヤリと笑みを浮かべた。
「アレイスター=クロウリー、君のことについては僕は人より詳しくてね。僕の世界では君は結構有名人だったんだぜ」
「まるで自分が別な世界から来たかのような物言いだな」
「そういっているのさ」
世迷い事を真実であるように嘯くソレ。アレイスターがならばと口を開く前に彼女は語りだす。
「僕の知っている範囲では君は1898年に魔術結社「黄金の夜明け団」に入団し、アラン・ベネットとマグレガー・メイザースに師事し2年後にメイザース共々追放されてからは、世界を一周したりK2に上ったりして、1904年にはローズと結婚しハネムーン先でエイワスから『法の書』の原型を聞き、同年に長女のリリスの誕生に喜んだものの……」
娘の話題について言及しようとしたところ無表情だったアレイスターの表情がピクリと反応する。
「そのアレイスターと私は別人だと言えば?」
「ああ、だろうね。……あー、いや君が言いたいのは魔術のアレイスター=クロウリーと学園都市統括理事長が別人だっていいたいんだろうが、それは流石にないよ」
「公的機関の情報では別人と判断されるはずだが?」
「そういうのはいいから……じゃあ続きは簡単に話すけどコロンゾンの召喚にとかイタリアから国外退去を命じられた君は僕の知る限り1947年に72歳で息を引き取ってるんだ」
「それが偽装工作だと?それに今の情報だけならば調べればわかる話だと思うが」
「そう言われると困るんだが。とはいえわざわざこの世の法則を魔術と科学に分断したのは君だろう?」
「……どうしてそう思う?」
その言葉に対して行動で示そうとするソレは、ナイフを取り出し自身の手の甲に突き刺す。
通常血が噴き出すであろう傷口はナイフを抜けば消失し、水面に映った月の如く肉体は正常な状態へともどる。
「僕らの世界では人間以外は物理法則では傷が付かない。学者畑の人間としては色々研究していると確実に知ってる科学にプラスした法則がブレに確認できた。つまり本来の法則から魔術とされているそれを隠している何某かがいるって事で」
「それに気が付くとは君は優秀な科学者なんだろう」
「うーん、まぁこことは違う自然科学を知っているからってのもあるけどね」
「であれば、最初の問いに戻ろう。なぜ私の元に現れた?」
「君の目的が娘の蘇生かと思ったからさ」
その言葉を発すると同時に銃弾がソレに放たれる。
「おいおい、効かないとはいえ驚きはするんだぜ?」
「……それは私の目的ではない」
「言われなくたってわかるさ。悪かったね」
一切悪びれる様子もなくソレは言葉を紡ぐ。
「じゃあこんなことまでして何がしたいんだよ。僕としては元の世界に戻る方法を探しているからそれを手伝ってもらう代わりに、君のことを手助けしようかと思ったんだが」
「なるほど……それで私のメリットは?」
「優秀な助手が手に入るってのはメリットにならないかい?」
「学園都市には君の代わりになる学者はたくさんいるのだが」
「魔術と科学の関係性を理解して、君の元まで来た人間はいるのかい?」
「……ふむ。まぁいいだろう」
「一時的でも協力関係を結んでくれるのならこっちとしては文句なしさ」
「では、早速だが先ほど語っていた亜空間の魔族を用いて作成した転移装置について聞きたいのだが」
「おっと、君もなかなか学者気質だね」
「そうだろうか……そういえば名前は?」
キョトンとした表情でソレは惚けたあと、腹を抱えて笑い出す。
「失敬失敬、忘れていたよ」
ごほんと咳払いしくるりと回ると小学生高学年ほどの女の子の姿から、スーツを着た男の姿へと変わる。
その男の顔を見ても表情は読み取れるのにも関わらず、個人として認識できない。
「人は私をこう呼ぶ。無貌の神・闇に棲むもの・燃える三眼・嘲笑する神性・這い寄る混沌」
そして両手を広げながら語るようにその名を告げる。
「ナイアルラトホテップさ。どうぞよろしく」
「これはこれは……創作の神話の神がまさか実在する世界があるとは」
「いやまぁそのものっていうよりは、それっぽい魔族なんだけどね」
再度くるりとと回り少女の姿へと戻るナイアルラトホテップ。
「その姿は?」
「ああ、これは以前に僕に勝った魔法少女プリティ☆ベルのエリちゃんの姿が気に入ってね」
「先ほどの姿では逆に印象に残ってしまうからとかではないのか」
「女の子の姿のほうが可愛いだろ?」
何を当然のことを問うのかという表情に言葉に詰まるアレイスター。
「それで何と呼べば?」
「ルラって呼んでくれればいいさ。アレイスター」
「ではルラ亜空間移動装置についてだが……」
「どんだけ気になってるんだよ……」
世を混沌の渦に巻き込むのが理想の邪神のような魔族と、
この二人が手を組むことはこの世にとって良い結果を齎すのか、それとも……。
-????-
「なんじゃえらいことになってるようじゃが」
「まさか世界が崩壊することなく一時的な穴が開くなんてね」
「穴っていうかもはやトンネルじゃなーい?」
「これ以上世界に負担がかからなかったのはよかったけど」
方向という概念がなく、距離という意味もない世界の狭間において彼、彼女らは観測していた。
力を持ちすぎた彼らにとって世界は檻にすらならず、破壊しない為の対策としてこの別なレイヤーに避難しているのである。
そんなどこでもなく、どこにもない場所ともいえないようなところに一筋の光が差した。
ゴーンゴーンと教会の鐘の音らしきものが響き渡り、純白の羽根が舞い落ちる。
彼らがそれを聞くと同時、真っ暗な地面の上に自分たちが円になるように配置されたことにも気が付いた。
「どういうことかしら」
「ワクワクするねぇ!!」
彼らの正体は魔人、それは魔族の神でも魔界の神でもなく「魔術を極めて神となった魔術師」のことであり一般的な常識などは備えておらず、自身の退屈を紛れることを何より追い求めている存在である。
『見ろ!見ろ!!見ろ!!見ろ……っ!!!!』
『神威の呼び鈴リィン・ロッド』『其を鳴らすは
『揺らがぬ黒を内に秘め』『纏うは触れえぬ拒絶の純白』
『天翔ける翼に』『付き従うは神話の軍勢』
『不条理をねじ伏せる不条理』
『理不尽を踏みにじる理不尽』
『神威の召喚者』『魔を帯びし聖戦士』
『その名はっ』
『魔法少女プリティ☆ベル!!!!』
その言葉と純白の羽と共に彼らの中央に舞い降りたのは、変身した歴代最強の魔法少女である美咲エリちゃんだ。
「なに今の言葉」
『なんか電波受信した』
「えぇ……アルミホイル巻けばいいんだっけ」
現れたかと思えば漫才のようなやり取りを自身の杖と行う彼女に目が離せない一同。
「……ここどこ?」
「お嬢ちゃん、どうやってここにきたんだね?」
「わ、ミイラがしゃべった」
魔人の中では一番の新入りながらも即身仏という発生の仕方から見た目はミイラの僧正が話しかけるも一発で撃沈。
「えっと、プリティベルという名前なの?」
「ううん、私の名前はエリっていってプリティベルは魔法少女の名前だよ」
「そうなのね。教えてありがとう、エリちゃん」
泣き女という背景をもつエジプトの魔人であるネフテュスがそれとなく会話をして名前を聞き出す。
「それでどうやってここに来たのかしら」
「えーっとねぇ……」
東の魔王軍の総務大臣にあてられて経済や政治を学んだ彼女にとってこれまでの説明を簡略して行うことは難しい事ではなかったが、魔人たちにとって観測できない世界の情報など垂涎もの。
最初こそ他の皆を探すために急がなければという意志があったエリちゃんだが、この空間の時間の流れを通常の世界と切り離したと聞くと満足するまで開放してくれそうになり面々をみて最初から事細かに語るのだった。*1
「それでナイアを追い詰めて勝ったと思ったらおじさんが消えて、私もここに来たみたい」
「なるほどのぉ」
僧正もこんな面白い話を聞き逃すわけにはいかないと最序盤で復活して聞き逃すことなく楽しんでいたようだ。
「それで、ここはどこなの?」
「さっきも簡単には伝えたと思うけれど、世界の狭間ね。いっぱいあるフィルターのうちのメインで使われていないところを避難所として使っているのよ」
「じゃあ元の世界に戻れるの?」
「それが……」
そうして魔人たちの説明によりエリちゃんの世界がメインとはされておらず、それどころか観測範囲にもないということを知る。
「うーん、じゃあ本当の意味で全く別な世界に来ちゃったってこと?」
「状況的にはそう判断するしかないわね」
「ここからメインの世界?にはいけるの?」
「それは可能よ。けれど、行ってなにかあてがあるの?」
「多分、先に消えたおじさんがいると思うんだけど」
「高田厚志だったけ? うーん、軽く探してみるね」
そして魔人たちによるボディビルダー探しが始まった。
手を変え品を変え日本国内チームと海外チーム、それに学園都市チームに分かれ捜索すること2時間ほどで発見にいたる。
だが、ここで問題が一つ。
「学園都市内で見つかるとはな……」
「なにかダメなの?」
「まだアレイスターには儂らにつながる情報を与えたくないんじゃよ。ただ、あそこに外から入るのも正規の手段を取ろうとすると簡単ではないんでなぁ」
「ふーん。でも壁があるだけなら飛んで入れるんじゃないの?」
「え、エリちゃん飛べるの?!」
「うん、ほら」
そのまま浮遊するエリちゃんに対してかなりざわつく魔人たち。
「これって撃墜術式で落ちるのか?」「というか飛んでるだけだと攻撃されるんじゃないのか?」「エリちゃんには自動障壁があるんだろ?」「それの威力が大きすぎるから隠密には向かないのでは?」
「ねぇ、エリちゃん。そのプリティベルっていうのは誰でも変身できるの?」
「一応選ばれないと駄目なんじゃないの?」
『うーん、正直あんたら魔人連中はきついと思うぜ』
「その、魔術において飛行には強烈なカウンターがあるからそれが効くかどうかだけ確認したいのだけれど」
『その言い方だと落とすだけじゃなくてダメージがあるみたいだな』
「そうなの。だから代わりに私たちが変身して実験しようかと思ったの」
『そうだな……なら、一時的でも神性とか抑えられないのか?』
「それが出来ればここにはいないわね」
「とはいえアレイスターも魔術を使ってまで落としてくるのか?」
「いや、アレイスター以外の魔術師と敵対することも考えられるだろう」
「てか、エリちゃんの自動障壁で弾けないの?」
「「「それだ!!」」」
ということで、先ずはエリちゃんの障壁を展開した状態で障壁を貫通してもエリちゃんには当たらないように弱い魔術を使うところから始まった。
そうして三十分もしないうちに結論が出る。
「うん、心配することはないわね!」
「正直私たちの攻撃も結構本気で行かないと割れないのバグでしょ」
「まぁ魔王級とかいうレベルらしいし、そんなもんじゃない?」
「異世界の強者のレベルも儂らと変わらんってことこかの」
「その分世界が安定してるのが羨ましいね☆」
魔人たちにとっては束の間の退屈凌ぎだが、エリちゃんにとってはどうだろうか。
「みんな、ありがとう。ここまで心配してくれて助かった」
「子供が遠慮するんじゃないよ。それに私たちも楽しかったから」
「うん! じゃあまたあそびに来るね!」
虚をつかれた彼らだったが、じんわりと胸に広がるあたたかさに笑みを抑えきれないでいるようだ。
「今度はなにかエリちゃんが喜ぶものでも用意しておこうかの」
「あー、僧正ったら露骨に好感度稼ごうとしてんじゃーん☆」
「本当のお爺さんみたいね」
「ふふっ」
「さ、さて、一番近くてバレないところはどこじゃろか」
「はなしそらすなよー」
「エリちゃんのことは見守ってるから好きにやりなよ」
「はーい!」
適当な場所を見繕って降りれるところが見つかったところで、光の扉が生まれる。
「それじゃあ、今度はいっぱい遊ぼうね!」
大きく手を振りながら扉を通過する彼女を見送った後、魔人たちはどうやらさみしさを憶えているようだ。
「行っちゃったわね」
「まぁまた来るって言ってたし」
「どうやって来るのかしらね?」
「学園都市に行く前にこっちからコンタクトとればええじゃろうて」
「てか僧正の見た目で泣かない子供とかいるんだね」
「結構修羅場乗り越えてるみたいだし、ただの子どもじゃないでしょ」
「そうだったそうだった。なんたって魔法少女だしな」
一次的なものかもしれないが、普段とは打って変わって平和な会話が行われていた。
「さて、どうにかしてものを用意せんとな」
「それどーすんの? ここ何もないけど」
「どうにかするわい」
「下界に降りるのはダメだかんね?」
「それは皆が納得するかどうかじゃろうて」
「ずーるーいー」
……少なくともエリちゃんが定期的に通うのであれば平和かもしれないが、逆にエリちゃんへの好感度稼ぎという火種を抱えているのかもしれない。