暴君再誕
天井の白がよく澄んで見える病室で1人の茶髪の少年が目を覚ます。目を覚ました少年はここはどこなのだろうと思い、目を泳がせている。
「・・・ここは・・・」
「や。おはよう」
少年に声をかけたのは、黒い服を着込んだ銀髪の目隠し青年であった。青年の視界に入った少年は起き上がる。
「結構長いこと寝てたねぇ」
「・・・あんたは?」
「五条悟。呪術高専で1年を担任してる」
「呪術高専・・・?」
青年、五条悟が言う呪術高専。聞いたこともないワードに疑問符を浮かべる少年はとある出来事を思い出し、彼に質問を投げかける。
「!!そうだ!!
「君のお友達やお父さんがどうなったかは、君自身が知ってると思うんだけどね?」
「俺・・・?」
少年の問いかけに対し、悟は淡々と口を開く。
「よく思い出してごらん?・・・和倉
悟に言われ、少年、和倉
呪術廻戦ー呪いを斬るー
壱章
呪胎戴天
記録 2018年5月北海道岩見沢市にて・・・未登録の特級呪霊出現
●
2018年5月下旬
北海道岩見沢市内にある白金高校。市内ではどこにでもある普通科の進学校。普通の高校らしく、放課後には自主勉強に励む生徒がいれば、部活動に精を出す生徒が何人もいる。そんな白金高校の体育館。今日は剣道部が使う日となっているため、体育部員が集まり、1年と2年による練習試合が行われている。初戦と中堅戦は終了し、残すは大将戦のみとなっている。大将戦に出る1年生と2年生は前に出て、お互いに深くお辞儀をする。
「キャーー!!長門ーーー!!」
「頑張れーー!!」
「1年なんて倒しちゃえー!!」
2年の長門は非常に人気(特に女生徒)なのか彼に応援する者がかなり多い。しかし、1年側にも応援してくれている生徒はいる。
「
「やっちまえ和倉ー!!」
「和倉君ー!!」
「
それは同学年の同級生たちだ。同級生の中には、幼馴染の2人もいる。
(ハンッ!バカが。俺は1年の時から試合では無敗の戦績なんだぞ?全国大会だって優勝をもぎ取ってきたんだ。その俺が入部してたった一月しか経ってねぇ新入部員なんかに負けるわけねぇだろが。実力差って奴を見せつけてやるぜ!)
長門と呼ばれる2年生はかなり慢心しているのか、
「始めっ!」
審判の試合開始の合図と共に長門は竹刀を振るって攻め、
(今だ!!)
長門はすぐさま
パァン!
「・・・は?」
長門が面を決める前に
「胴1本!それまで!2勝1敗により、1年の勝利!!」
『おおおお!!?』
2年が勝つと思われていた試合で1年が勝利したことにより、観戦していた生徒は驚きの声をあげている。
「そんな・・・バカな・・・」
プライドが高かった長門は負けたことが信じられず、地に膝をつかせた。長門に勝利した
「すげぇな1年!長門に勝つなんて!」
3年の生徒たちは長門に勝利した
「あったりまえだろぉ?あれくらい俺なら余裕だよ、余裕!」
とっても気持ちのいい笑顔で自分自身を自己称賛している。
白金高校1年、和倉
「なんて言うか・・・お調子者?」
「・・・でも、あの笑顔・・・結構かわいいかも・・・」
「「「わかるー」」」
『え?』
とはいえ、一部上級生は
「ま、まぁ・・・長門に勝ったことは事実だしな。長門といい君といい・・・こりゃ白金高校剣道部の名が広がるな!本番でも期待してるぜ、和倉!」
「おお!任せてくれ先輩!俺たちで白金高校の名を轟かせるぞ!」
「はっはっは!言うなぁ!」
●
剣道部の部活動が終わり、
「いやぁ、今日の試合見ててスカッとしたぜ!あの嫌味な長門の悔しそうな顔・・・ざまぁみろ!」
長門の敗北に対してスッキリした気分になっているのはバンダナを着けた少年だ。彼の名は徳山
「こら!そういう悪口は言わないの!長門先輩に聞かれてたらどうするの?」
「なんだよ、
「まぁ、そりゃそうだけど・・・」
どうやら長門は1年にたいして嫌味を言ってきたようで、
「それにしても本当によく勝てたよね?一応は全国行った人でしょ?」
「口先だけじゃなかったのは確かだよ。長門は本当に強かった。ただ、あいつ技を繰り出す時、隙が生まれてたんだ。俺はそこを突いただけだよ」
「えっ⁉マジで⁉その隙ってなんだ?教えてくれ!今度この
「食い気味すぎ」
「
3人は練習試合の話で大いに盛り上がっている。
「な、いいだろ?長門に勝つ秘訣教えてくれよ。一杯奢るからさぁ」
「ちょっと、またラーメン?」
「あ・・・ごめん。俺この後親父の手伝いを頼まれてさ・・・」
「えぇ・・・」
「あぁ・・・武虎さん・・・ね・・・」
ラーメン屋に行く誘いを
「じゃあしょうがねぇよなぁ・・・」
「早く行かないと・・・また殴られちゃうものね」
「市内きっての変人だからな、あの人」
「市長すら殴っちゃう変人だしね」
「事実だからなんも言えねぇ・・・」
幼馴染2人の父親の酷評に対し、当たっているのか
「ちぇー。だったらしょうがねぇかぁ」
「本当ごめん。今度絶対埋め合わせするから」
「約束だからな!」
「じゃあ、またね、
「おう。また」
●
和倉家の一軒家。この家は普通の家だが、
この筋肉質な男の名は和倉武虎。
「親父ー、頼まれてた材料と道具どこに置けばいいんだ?」
「ん。そこに置いておけ」
一旦手を止めた武虎は指定した場所に指をさした後、ハンマーを持ち直してまた鉄を打つ。
「なぁー、今夜の晩飯って何?」
「冷凍チャーハンだ」
「は!!?それ俺が親父に昼に食えって言ってた奴じゃねぇか!!また昼飯抜きやがったな!!?」
「ふんっ、今日もどこかでワシが造った刃が折れとるやもしれん。そう考えだしたら昼飯なんぞ食っとる場合か」
「昨日も一昨日も晩飯冷凍食品だっただろーが!ああ、いつになったらまともな晩飯が食えるんだ・・・」
和倉家の晩御飯事情に嘆いている
「つべこべ言っとらんで手を動かせ。やってもらうことはまだまだあるぞ」
「はいはい、商品と廃棄を分けるんだろ?いつものことじゃねーか」
ぶつくさ文句を言いつつも、
「・・・
仕分けをしている最中、武虎が今日の剣道部の練習試合のことについて尋ねてきた。
「相変わらず情報が早ぇな。まぁな!親父も鼻高々だろ?なんせ相手は全国で・・・」
「浮かれるなバカタレ」
鼻を伸ばして勝ち誇った顔をしている
「なっ!!?」
「あんな中途半端、勝って当然だ。剣を持つ心構えがなっておらん」
「また大袈裟なことを言って・・・。ただの部活動だぞ?わかる?競技だぞ競技。そんな難しく捉える必要もないだろ」
だいぶ大袈裟なことを言っているように感じている
「・・・
「うっ・・・」
いつも聞いた話だが、その際にはいつも真剣なため、
「ワシの目を見ろ」
「・・・っ」
目を逸らしていたことがバレ、
「ワシはお前にいつも言っているだろう。刃とは心を映す鏡であると。鍛冶師の心次第で刃は名刀にもなり、妖刀にもなりえる。使い手もまた然り。使い手の心によって、他者を守る刃にもなり、殺戮の刃にもなりうる。人の心こそが、刃の輝きを磨く研石なのだ」
武虎は打った刃の輝きを
「
「親父・・・」
真剣に語る武虎に対し、
「いや、マジで何言ってるかわからん」
「何回も言っとるのになぜに理解せんのだてめぇは!!!」
ゴチーン!!!!
「理不尽!!」
●
手伝いを終えた
「くそ・・・親父め・・・これ絶対DVだろ・・・訴えたら勝てるぞこれ・・・」
ゲーム画面にゲームオーバーが表示され、ぐちぐちと文句を垂れる
『
「・・・立派な刃・・・か・・・」
「母さん・・・俺、答えだせるかな・・・?」
●
北海道岩見沢市にあるどこかの駅。駅から出てきた1人の女性は寒さで身震いしている。夜は冷え込んでいるから特にだ。
「うぅ~、さむさむ・・・。早く任務を終わらせて、温かいおでんでも食いたいねぇ」
この女性は今、あるものの回収任務でこの北海道に来ている。女性はスマホを取り出し、回収物の写真を確認する。
「さてと・・・どこにあるのかねぇ・・・特級呪物」
写真に写ってあるのは、小さな箱に入った札が巻かれた何かであった。
●
翌日、今日は部活動は休み。白金高校の授業が終わり、
「そうだ、
「今日は手伝いないし、多分行けると思うけど」
「
「私も大丈夫だけど・・・」
「そっかそっか。ふっふっふ・・・」
2人とも予定がないと聞き、
「え、何その笑い」
「私なんか嫌な予感がする」
「まぁそう言うなって!まずはこれを見てくれ」
嫌な予感が感じている2人をよそに、
「箱?」
「これが何?」
「げ!お前これ、札が貼られてるじゃねぇか!」
「おう!学校のゴミ出しの時に拾ったんだ!」
「拾ったんだ、じゃないでしょ!ちょっとまさか・・・」
「今日の夜の学校でこの札を剥がしてみるぞ!」
「マジかよ」
嫌な予感的中。こんないかにもな代物の札を夜の学校で剥がそうなど・・・何も起こらないにしても気が引ける。
「ちょっとやめときなって・・・それになんでわざわざ夜の学校?」
「その方がスリルがあるだろ?」
「そんなもの求めるな」
「いいだろ別に。どうせ何も起きねぇんだからよ」
「だとしてもだろ・・・」
かなり消極的な2人。すると
「
「うっ・・・こいつここぞとばかりに・・・」
「あーあ、平気で嘘をつくなんてなー。俺たちの友情がその程度だったなんてなー」
「この野郎・・・」
ぐちぐちと嫌なところを突かれ、
「はぁ・・・わかったよ。親父を説得してみる」
「そうこなくちゃな!」
「えぇ・・・本気?呆れた」
「しょうがないだろ・・・」
「はぁ・・・これじゃあ私も行かないわけにはいかないじゃない・・・」
「よっしゃ決まりだな!」
夜に学校に行くことが決まり、
「つーわけで、
「俺かよ!!?」
「しょうがねぇだろ!俺が持つとすぐなくすんだよ!今朝もなくしかけたし・・・」
「今朝バタバタしてたのはそういうことだったのね・・・」
どうやら
「わかったよ。とりあえず預かっとく」
「よーし!んじゃ夜に学校集合な!」
「あんた方向音痴でしょ?1人でいける?」
「が、学校ぐらい行けるわ!」
何はともあれ、箱は
●
家に帰宅した
「親父―、いるかー?」
「おい
「親父?珍しいな、工房から出てるなんて」
「んなこたぁどうでもいい。お前なんか拾っただろ。それは何だ?」
いつにもまして険しい顔をしている武虎に
「な、なんだよ・・・。俺が拾ったわけじゃねぇんだって。これは
バキィ!!!
突然
「お前!!なんてものを家に持ち込んでやがる!!!」
「な、なんだよ・・・そんなにやべぇ代物なのかよ?」
「たくっ・・・あのクソガキめ・・・!」
何で殴られたのかもわからない
「親父?」
「何でもないわ」
「何でもなくねぇだろ⁉取り乱す親父なんて初めて見たし・・・」
武虎は
「とにかく、これはワシが預かる。
「親父・・・」
「少し家を空ける。
「親父!!」
武虎は息子の静止の声を聞かずに、家を出ていった。何が何だかわからず、
●
一方的に留守番を言い渡された
「・・・あんな親父、初めて見たな・・・いったい何なんだ、あれ・・・?」
自分でも見たことがなかった武虎の険しい表情を思い浮かべた
ピンポーンッ
考え事をしていると、家のインターホンが鳴り響いた。また新聞かなと思いつつ、
「はーい、うちは新聞はいりませんよ・・・」
「和倉
玄関にいたのは、新聞配達員ではなかった。
「お前さんはどんな女がタイプかな?」
(うおっ・・・!デカ・・・!)
誰もが目を引かせるほどのグラマー体型である。思春期である
「えーっと・・・どちら様?なんで俺の名前を・・・」
「おっとこんな質問してる場合じゃなかった。時間がねぇから本題ね」
女性は質問してる場合じゃないとして、すぐに本題に入った。
「私の名はレオーネ。呪術師をやってる」
「呪術師・・・?海外の人?」
「お前さん、今日お友達から呪物を受け取っただろ?それを渡せ」
「呪物・・・?」
女性、レオーネの口から聞いたことない単語ばかり述べられて、疑問を浮かべる
「あれは危険な代物なんだよ。早く渡してくれ」
レオーネは自分のスマホから呪物という物の写真を見せた。写っていたのは
「あ!これ!確かに
本当に何もわかっていない様子の
「・・・日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。そのほとんどが人間から流れ出た負の感情、『呪い』による被害だ」
「呪い?」
「信じる信じないは重要じゃないよ。続けるよ」
「お、おう」
「特に学校や病院とか思い出に残る場所に呪いが出やすい。辛酸、後悔、恥辱。人間が反芻する度にその感情が受け皿になるからね。だから学校には大抵魔除けの呪物が置いてあったんだよ。お前のお友達が拾ったのがそれね」
「魔除け?ならいいじゃん」
「表向きはね」
箱の中身の物がどれほど危険なものかをレオーネは説明する。
「あれはね、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けないものさ。毒で毒を制す悪習みたいなものさ。現に長い年月が経って封印が緩んで呪いが転じてる。あれは今や呪いを呼び寄せ、肥えさせる餌さ。その中でもお前の学校に置いてあったのは特級に分類される危険度が高いものだ」
レオーネの説明によって、
「そうか・・・だから親父はあんなに・・・」
「放っておくと遅かれ早かれ人死が出る。そうなる前に渡せって言ってんの」
呪物の引き渡しを催促するレオーネに
「あのー・・・それ・・・今親父が外に持って行っちゃった・・・」
その言葉を聞いたレオーネは目を見開き、焦ったような表情を見せる。
「その親父はどこ!!?」
「し、知らないよ!!何も言わず出て行っちゃったから・・・」
「くそ!あれを知ってるってことは・・・学校か?」
「・・・学校?」
学校というワードに引っ掛かった
「なぁ・・・学校に呪いが出るって言ったよな?もし呪いに出会っちまったら・・・どうなる?」
「・・・どうすることもできず・・・死ぬね」
●
一方夜の白金高校。生徒がいないこの学校の廊下に・・・アリクイのような異形が蔓延んでいる。
【寒い・・・寒いよ・・・温めて・・・】
この異形こそが負の感情の集合体である呪い、呪霊である。廊下を彷徨う呪霊の様子を隠れて伺っているのは、先に学校に来ていた
「何・・・?あれ何・・・?」
「だ、大丈夫だ・・・。絶対に・・・俺が守ってやるからな・・・!」
●
呪いという存在を知った
「次の曲がり角を曲がった先!そのまま真っ直ぐ行けば俺たちの高校だ!」
「急ぐぞ!」
(なんだ・・・このプレッシャーは・・・?)
学校から漂うプレッシャーに、
「あそこだな?私がお友達と親父を連れて帰るから、
「待てよ!俺も行く!あいつらは、俺にとって・・・」
「何度も言わせんな。帰れ」
自分も行くと
(何を迷ってんだ俺は・・・⁉いったい何にビビってんだ⁉確かに学校から嫌な気配がする。戻ってこれる保証なんてどこにもない。死は怖い・・・それは俺も同じだ。死にたくなんかねぇ・・・。けど、だからって友達を見捨てられるのか⁉)
葛藤を続ける
『刃とは心を映す鏡である』
『立派な刃になれ』
立派な刃になれ。その言葉が頭によぎった時、
●
学校に進入したレオーネは人の気配を探りながら走っている。だが、辺りには呪いの気が充満していて、探知しにくい。
「ちっ!相変わらず気配がごちゃごちゃだな!」
レオーネが愚痴っていると、廊下の曲がり角にて、現れた。この学校に蔓延る負の集合体・・・呪霊が。
【マッチ・・・は・・・いらん・・・かね?】
頭がカボチャのかかし型の呪霊はレオーネを見つけるやいなや、近づいてきた。
「何?私と
呪霊の殺気に対し、レオーネは殺気で返し、自分の中に流れる呪力を練る。
「獣王降臨」
呪力がレオーネの身体に満ちると、彼女の身体に変化が起きた。短髪が長く伸び、両腕が獣の腕に変化し、歯も牙に変化し、獣の尻尾や耳が生えてきた。
【マッチ・・・買っておくれえええええ】
かかし呪霊は自らの腕を伸ばし、手に炎を纏わせてレオーネを襲う。レオーネは伸びてきた両腕の間に入って炎の手を躱した。そして、そのままかかし呪霊の腕を掴み、かかし呪霊を持ち上げる。
「ウラァ!!!」
レオーネはかかし呪霊を地面に叩きつけさせ、態勢が崩れた隙を狙ってかかし呪霊に接近し、拳を振るって胴体に打撃を与えた。拳を喰らったかかし呪霊は風穴があき、塵となって消滅した。
これこそが、呪いに対抗できる呪いの力、術式。レオーネはその術式の1つ、自らを呪いの獣へと変化させることができる術式、『獣王降臨』の使い手だ。
「ぎゃああああああああああ!!!!!」
かかし型呪霊を片付けたと同時に、遠くから人の叫び声が聞こえてきた。
「!あっちか!」
レオーネは悲鳴が聞こえてきた方角へ急いで向かう。
【チュー、チュー】
【チューしようよおおおおお】
先を急いでいると、かかし型とは別の呪霊が複数現れ、彼女の道を遮る。唇の形をした小型の呪霊だ。
「邪魔すんな!!!」
レオーネは襲ってくる唇呪霊を拳と蹴りを振るって払い除ける。小型呪霊を蹴散らしながら進み、悲鳴が聞こえてきた教室に辿り着いた。教室には、1人の生徒を襲っているアリクイ型の呪霊がいた。
【温めて・・・温めてよぉ・・・】
「ひ、ひぃいいいいいいい!!!」
(野郎!そのまま食っちまうって腹か!)
レオーネは急いで助けに入ろうとするが、小型呪霊が邪魔をしてきて、先に進めない。
「くそ!邪魔だぁ!!」
レオーネが小型呪霊を次々祓っていく間にも、アリクイ型呪霊は鼻を伸ばし、生徒の頭を吸い上げ、そのまま食べようとする。
【寒いぃ】
「んんんんんん!!!」
(間に合わねぇ!!)
いくら急いでも間に合わない。手遅れかと思われたその時・・・
ガッシャーーーン!!!
外で待っていたはずの
「!
【・・・寒いよぉ・・・】
(こいつが・・・呪い・・・!)
イメージとはだいぶ異なるが、初めて目にした呪いに対し、
【温め・・・】
ズシャア!!
アリクイ呪霊が
「なんで来た・・・て言いたいところだけど、助かったよ」
「長門・・・あんたも来てたのか」
「知り合いか?」
「一応先輩。気に食わねぇけど、助けられてよかったよ」
長門のことはいつも気に食わないと思っていた。でもそれとこれとは全く別問題。ゆえに長門の命が助かって安堵する
「・・・
「え?」
「呪いってのは普通見えないんだよ。死に際とか特殊な場面とかは別だけどな」
「そうだったのか」
「・・・お前、怖くないのか?異形の化け物だぞ?」
レオーネの疑問に対し、
「怖いよ。そんなの当たり前だろ。けどさ・・・だからって・・・助けられる命があるのに逃げちまったら、きっと俺は俺でなくなっちまう。そんなのは嫌だね」
「・・・・・・」
「それに・・・こっちはこっちでめんどくさい呪いにかかっちまってるんだよ」
「・・・とにかく、一刻も早く・・・」
ドゴオオオオン!!!
「「!」」
レオーネの言葉を遮るように、教室の壁が突然破壊された。2人が破壊された壁に視線を向けて見ると、壁の奥には、雪男のようなガタイのいい肉体を持った醜い顔の呪霊がいた。おそらくこの呪霊が壁を壊したのだろう。
【ウホォ・・・】
「で、でけぇ・・・!」
「等級からして準一級以上か・・・上等だ」
今までの呪霊より高い等級であると予想したレオーネは雪男呪霊に対し、好戦的な笑みを浮かべている。
「
「あっ!」
レオーネは
「それが術式ってわけね!」
レオーネは蹴とばした氷柱の破片を手に持ち、それを雪男呪霊に投げ飛ばした。氷柱は雪男呪霊の胴体に見事に突き刺さった。
【ウ・・・ゴ・・・ホォオオオオオ!!!】
氷柱で態勢が仰け反った雪男呪霊は憤慨し、足枷に巨大な氷の鉄球を創り上げ、足を振るって氷球を放ち、空中にいるレオーネを壁に叩きつけた。
「姉さん!」
しかし、氷球はレオーネが内側から破壊した。破壊した瞬間、レオーネは飛び出し、雪男呪霊に強烈な拳を叩きつけた。拳を叩き込まれた雪男呪霊は倒れた。
「おおおおおおおおお!!!」
ドォォォン!!
反撃の隙を与えないようにレオーネは雪男呪霊の頭に向けて、呪力が帯びた足で、強烈なかかと落としを放った。かかと落としを喰らった雪男呪霊は土煙と共に、塵となって消滅していく。
「ま、こんなもんかな」
雪男呪霊を祓ったレオーネはケロッとしており、Ⅴサインを送っている。
(す・・・すげぇ・・・。あんなとんでもねぇ怪物を・・・たった1人で倒しやがった・・・。これが・・・呪術師・・・!)
雪男呪霊の強さを肌で感じ取っていた
「!また出た!」
「次から次へ・・・⁉」
呪霊を対処しようとした時、レオーネはアリクイ型呪霊に対し、異常を感じ取った。それは、呪いを知らない
(なんだ・・・この感じ・・・?長門を食おうとした奴とは、まるで・・・)
(い、異様だ・・・不自然だ・・・!この呪力・・・3級のものとはまるで違う・・・。いや!この呪力・・・こいつからじゃない!!)
2人と異常さを感じ取っていると、アリクイ型呪霊は気を失うかのように、目がギョロンと白目を向き、飛び出してきた。だが出てきたのは・・・顔だけ。身体がない。2人がよく目を凝らしていると・・・奥よりそれは現れた。
その姿は、外装は黒く、まるでサイボーグのような機械の身体、白い機械の顔を持ち、ところどころに赤いライン線が光っている。2人が感じ取った異常の正体は、このサイボーグであった。そしておそらく、このサイボーグも呪いなのだろう。
(おいおいおい・・・嘘だろ⁉こんな事ってあるか⁉)
(俺は呪いなんて何1つわからねぇ・・・でもこれだけはわかる・・・。こいつは・・・やばい!!)
呪術師であるレオーネならまだしも、
ドォォン!!
「がっ・・・⁉」
「!!?」
いつの間にかサイボーグはレオーネの首を掴み、壁に叩きつけている。いったい何が起こったのか、2人にはまだ理解が追い付いていない。
(な・・・何が起きたんだ・・・?)
(は、速すぎる・・・!それだけじゃねぇ・・・この呪い・・・今まで見たことがねぇ・・・!呪力も雑魚とは桁外れだ・・・!)
レオーネが首を絞められながらも、このサイボーグの呪霊の観察をする。すると・・・
「なぁんでぇ。ちょっとは骨がある奴かと思えば・・・ハッタリもいいところだぜ」
「「!!??」」
何と、このサイボーグの呪霊、人の言葉をハッキリとしゃべった。今まで呪霊はうわ言やよくわからない言語を呟くことが多かったが、こんなにハッキリと人語を理解し、なおかつしゃべれる呪霊は今まで現れたことはなかった。
「しゃ、しゃべった!!?」
「お前・・・しゃべれるのかよ・・・!」
「しゃあべれるぜぇ。まぁ驚くのも無理ないわな。俺は雑魚とは違うんだから・・・なぁ!!!」
サイボーグはレオーネを壁に引きずらせながら、反対側の壁に投げ飛ばした。
「ごはっ・・・!」
「はああああああああ!!!」
サイボーグはレオーネに動かす隙を与えず、足の車輪を展開し、猛スピードで接近し、腕を振るって打撃を与える。レオーネは避けることができず、攻撃をまともにくらってしまう。
「ここで邪魔されても面倒だからなぁ。サックリ逝かせてやるぜぇ」
サイボーグは左手でレオーネの首を絞めながら壁に押さえつけ、右手に電気の爪を展開する。電気の爪はとても長く、少し振るっただけでもなんでも斬れそうだ。
(やべぇ・・・身体が動かねぇ・・・頭も回んねぇ・・・。このままじゃ・・・死ぬ・・・!)
サイボーグは右手をレオーネの心臓目掛けて刺し貫こうとしている。彼女は死が迫ろうとして、目を閉じた。
「待ちやがれぇ!!」
ドゴォ!
すると、
「その人を放しやがれ!!」
「バカ・・・早く・・・逃げ・・・」
レオーネは
「小僧。なかなか粋な攻撃するじゃねぇか。でもなぁ・・・効かねぇんだよなぁ・・・これが!!!」
バシィ!!!
「うわああああ!!!」
サイボーグは腕を振るい、
「呪いは呪いでしか祓えねぇって知らねぇのかよぉ」
「たつ・・・み・・・」
「ぐぅ・・・ちくしょう・・・!」
「・・・
「なぁんだぁ、小僧の知り合いかよぉ。こいつぁいい!」
「
「・・・
信じがたい光景に唖然としている
「
「俺たち・・・化け物から隠れてたら、いきなりそいつに襲われて・・・そいつが・・・!
「・・・・・・お前が・・・」
「・・・苦痛に満ちた絶望の顔ってたまらなくいいんだよなぁ。特に小娘の顔ときたら・・・気持ちよかったなぁ、小娘の感触ぅ」
サイボーグは否定することなく、
「ザクゥーーッってなぁ!くっくっく」
自分を煽り、さらに大事な友達を傷つけ、殺したサイボーグに対し、
「うああああああああてめええええええええええ!!!!!」
「効かねぇっつってんだろうがよぉ!!!」
サイボーグは腕で
「にげ・・・ろ・・・」
「殺す・・・!殺してやる・・・!」
「安心しろ。俺は優しいからなぁ。すぐにお友達のとこまで送ってやるぜぇ!!」
サイボーグは電気の爪を
「!!お・・・親父ぃ!!」
「バカ・・・野郎・・・!だから・・・外に出るなと、言っとろうが・・・!」
サイボーグが電気の爪を消すと、武虎は力なく、その場に倒れる。
「親父ぃ!!」
「親父!しっかりしろ親父!」
「
「最期って・・・縁起でもねぇこと言うなよ・・・!」
武虎は涙を流す
「刃とは心を映す鏡・・・。人の心の在り方次第で、一騎当千の輝きを大きく放つ・・・。ワシは・・・その輝きを見るのが・・・何よりも好きだった・・・」
武虎は
「何度でも言う。
「俺自身の・・・ために・・・」
「そのために必要なものを・・・お前に返そう」
言いたいことを言い終えた武虎の視界がぼやけてきた。
「お前と過ごした16年・・・まぁ・・・悪くなかった・・・」
「・・・親父・・・?」
武虎の手が
「・・・親父いいいいいいいいいいいい!!!!」
目の前で武虎が死に、
「美しい親子愛だなぁ。魅入っちまうなぁ。だがなぁ・・・死んだら意味ねぇぇだろぉぉがよぉぉぉぉ!!ぐぁっはっはっはっはっは!!」
サイボーグの笑い声に対し、
(よし・・・!何とか動ける・・・今のうちに
「!!行くな
「てめぇはぁ!!てめぇだけはぁ!!!」
「わかんねぇ奴だなぁ・・・。無駄なんだよぉぉ!!」
サイボーグは
「何ぃぃ!!?」
(あれは・・・呪具!!?それに・・・
レオーネとサイボーグが驚いている間にも、
「なっ!」
「お前は・・・」
ザンッ!!!
「俺が斬る!!!!」
「ぬぅああああああ!!」
サイボーグはこの斬撃によって、多大なダメージを負った。
レオーネはかつて、師匠である九十九由貴から聞いたことがあった。天与の暴君について。その男は、呪力が0にも関わらず、呪いを認知でき、呪力を完全に消し去ることで肉体は一線を画し、逆に呪いの耐性を得ることができた。
この少年、和倉
「そうか・・・
世界にたった1人しかいないとされていた呪力0の天与呪縛。その出現はまさに・・・暴君の再誕ともいえる。
本編開始のあらすじは次話の投稿の際に編集します。
ちなみにオリキャラであるサイボーグのイメージボイスは黒のフェイスです。
もっとわかりやすくいうなら、『ぶらあああああ』や『アイテムなど使ってんじゃ』の人です。