呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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百鬼夜行より、約半年が流れ・・・


壱章『呪胎戴天』
暴君再誕


天井の白がよく澄んで見える病室で1人の茶髪の少年が目を覚ます。目を覚ました少年はここはどこなのだろうと思い、目を泳がせている。

 

「・・・ここは・・・」

 

「や。おはよう」

 

少年に声をかけたのは、黒い服を着込んだ銀髪の目隠し青年であった。青年の視界に入った少年は起き上がる。

 

「結構長いこと寝てたねぇ」

 

「・・・あんたは?」

 

「五条悟。呪術高専で1年を担任してる」

 

「呪術高専・・・?」

 

青年、五条悟が言う呪術高専。聞いたこともないワードに疑問符を浮かべる少年はとある出来事を思い出し、彼に質問を投げかける。

 

「!!そうだ!!沙良(さよ)は!!?家康(いえやす)は!!?・・・親父は!!??」

 

「君のお友達やお父さんがどうなったかは、君自身が知ってると思うんだけどね?」

 

「俺・・・?」

 

少年の問いかけに対し、悟は淡々と口を開く。

 

「よく思い出してごらん?・・・和倉(たつみ)君?」

 

悟に言われ、少年、和倉(たつみ)は何があったのか・・・当時の記憶を思い出そうとする。人生において、最も忌々しい記憶を。

 

 

 

 

呪術廻戦ー呪いを斬るー

 

壱章

呪胎戴天

 

 

 

 

記録 2018年5月北海道岩見沢市にて・・・未登録の特級呪霊出現

 

 

2018年5月下旬

 

北海道岩見沢市内にある白金高校。市内ではどこにでもある普通科の進学校。普通の高校らしく、放課後には自主勉強に励む生徒がいれば、部活動に精を出す生徒が何人もいる。そんな白金高校の体育館。今日は剣道部が使う日となっているため、体育部員が集まり、1年と2年による練習試合が行われている。初戦と中堅戦は終了し、残すは大将戦のみとなっている。大将戦に出る1年生と2年生は前に出て、お互いに深くお辞儀をする。

 

「キャーー!!長門ーーー!!」

 

「頑張れーー!!」

 

「1年なんて倒しちゃえー!!」

 

2年の長門は非常に人気(特に女生徒)なのか彼に応援する者がかなり多い。しかし、1年側にも応援してくれている生徒はいる。

 

(たつみ)ー!負けんじゃねぇぞー!!」

 

「やっちまえ和倉ー!!」

 

「和倉君ー!!」

 

(たつみ)ー!!」

 

それは同学年の同級生たちだ。同級生の中には、幼馴染の2人もいる。

 

(ハンッ!バカが。俺は1年の時から試合では無敗の戦績なんだぞ?全国大会だって優勝をもぎ取ってきたんだ。その俺が入部してたった一月しか経ってねぇ新入部員なんかに負けるわけねぇだろが。実力差って奴を見せつけてやるぜ!)

 

長門と呼ばれる2年生はかなり慢心しているのか、(たつみ)と呼ばれる1年生を下に見ており、完全に舐めきっている。両者、互いに竹刀を構える。

 

「始めっ!」

 

審判の試合開始の合図と共に長門は竹刀を振るって攻め、(たつみ)は長門の竹刀を自分の竹刀で受け止める。長門はまだまだ竹刀を振るい、(たつみ)に攻撃の姿勢を与えさせないようにする。(たつみ)は長門の振るう竹刀を受け止め、鍔迫り合いに持ち込ませた。どうやら長門は本当に口だけではないようだ。

 

(今だ!!)

 

長門はすぐさま(たつみ)の竹刀を押し退け、とどめの面打ちを繰り出そうとする。誰もがこれで決まったと思われた時・・・

 

パァン!

 

「・・・は?」

 

長門が面を決める前に(たつみ)は長門に胴打ちを的確に打ち込み、1本を取った。この練習試合は1本取れれば試合終了。それ即ち・・・

 

「胴1本!それまで!2勝1敗により、1年の勝利!!」

 

『おおおお!!?』

 

2年が勝つと思われていた試合で1年が勝利したことにより、観戦していた生徒は驚きの声をあげている。

 

「そんな・・・バカな・・・」

 

プライドが高かった長門は負けたことが信じられず、地に膝をつかせた。長門に勝利した(たつみ)は面を外し、手ぬぐいを外して素顔を晒す。茶髪で黄緑の瞳を持った少年だ。

 

「すげぇな1年!長門に勝つなんて!」

 

3年の生徒たちは長門に勝利した(たつみ)に称賛の声をあげている。それに対し(たつみ)ふっと笑い・・・

 

「あったりまえだろぉ?あれくらい俺なら余裕だよ、余裕!」

 

とっても気持ちのいい笑顔で自分自身を自己称賛している。

 

白金高校1年、和倉(たつみ)。剣道の実力は高いが、お調子者のようだ。ちょっと調子に乗っている(たつみ)に上級生は少し引いている。

 

「なんて言うか・・・お調子者?」

 

「・・・でも、あの笑顔・・・結構かわいいかも・・・」

 

「「「わかるー」」」

 

『え?』

 

とはいえ、一部上級生は(たつみ)の評判は上がっている様子。年上受けがいいのだろう。

 

「ま、まぁ・・・長門に勝ったことは事実だしな。長門といい君といい・・・こりゃ白金高校剣道部の名が広がるな!本番でも期待してるぜ、和倉!」

 

「おお!任せてくれ先輩!俺たちで白金高校の名を轟かせるぞ!」

 

「はっはっは!言うなぁ!」

 

(たつみ)の一声で剣道部のモチベーションが一気に上がった。それとは対照的に、長門は悔しさ、憎しみが籠った目線を(たつみ)に向けるのであった。

 

 

剣道部の部活動が終わり、(たつみ)は幼馴染の2人と一緒に下校し、帰路を歩きながら今回の練習試合について話している。

 

「いやぁ、今日の試合見ててスカッとしたぜ!あの嫌味な長門の悔しそうな顔・・・ざまぁみろ!」

 

長門の敗北に対してスッキリした気分になっているのはバンダナを着けた少年だ。彼の名は徳山家康(いえやす)。白金高校の1年生で(たつみ)の幼馴染の1人である。

 

「こら!そういう悪口は言わないの!長門先輩に聞かれてたらどうするの?」

 

家康(いえやす)の発言を咎めているのは、長い黒髪を持った花飾りを着けた少女だ。彼女の名は緒川沙良(さよ)。同じく白金高校の1年生で(たつみ)の幼馴染の1人である。

 

「なんだよ、沙良(さよ)だって長門に嫌味言われただろ?」

 

「まぁ、そりゃそうだけど・・・」

 

どうやら長門は1年にたいして嫌味を言ってきたようで、家康(いえやす)沙良(さよ)が感じた印象は最悪らしい。

 

「それにしても本当によく勝てたよね?一応は全国行った人でしょ?」

 

「口先だけじゃなかったのは確かだよ。長門は本当に強かった。ただ、あいつ技を繰り出す時、隙が生まれてたんだ。俺はそこを突いただけだよ」

 

「えっ⁉マジで⁉その隙ってなんだ?教えてくれ!今度この家康(いえやす)様が一太刀・・・」

 

「食い気味すぎ」

 

家康(いえやす)は長門にいいようにやられてるからなぁ・・・」

 

3人は練習試合の話で大いに盛り上がっている。

 

「な、いいだろ?長門に勝つ秘訣教えてくれよ。一杯奢るからさぁ」

 

「ちょっと、またラーメン?」

 

「あ・・・ごめん。俺この後親父の手伝いを頼まれてさ・・・」

 

「えぇ・・・」

 

「あぁ・・・武虎さん・・・ね・・・」

 

ラーメン屋に行く誘いを(たつみ)は申し訳なさそうに断った。2人は(たつみ)の父親をよく知っているため、渋い顔になっている。

 

「じゃあしょうがねぇよなぁ・・・」

 

「早く行かないと・・・また殴られちゃうものね」

 

「市内きっての変人だからな、あの人」

 

「市長すら殴っちゃう変人だしね」

 

「事実だからなんも言えねぇ・・・」

 

幼馴染2人の父親の酷評に対し、当たっているのか(たつみ)はものすごく渋い顔をしている。

 

「ちぇー。だったらしょうがねぇかぁ」

 

「本当ごめん。今度絶対埋め合わせするから」

 

「約束だからな!」

 

「じゃあ、またね、(たつみ)

 

「おう。また」

 

(たつみ)は2人と分かれて、我が家へと急ぐのであった。

 

 

和倉家の一軒家。この家は普通の家だが、(たつみ)の父親の仕事関係もあり、地下工房が存在している。その地下工房にて、バンダナを巻いた筋肉質な肉体を持つ上半身裸の男は熱した鉄をハンマーで叩き、刃を造っている。

 

この筋肉質な男の名は和倉武虎。(たつみ)の実の父親で、鍛冶職人である。一心不乱に鉄を打っている武虎に、仕事の手伝いをしている(たつみ)が材料と道具を持って声をかけてきた。

 

「親父ー、頼まれてた材料と道具どこに置けばいいんだ?」

 

「ん。そこに置いておけ」

 

一旦手を止めた武虎は指定した場所に指をさした後、ハンマーを持ち直してまた鉄を打つ。(たつみ)は材料と道具を指定された場所に置く。

 

「なぁー、今夜の晩飯って何?」

 

「冷凍チャーハンだ」

 

「は!!?それ俺が親父に昼に食えって言ってた奴じゃねぇか!!また昼飯抜きやがったな!!?」

 

「ふんっ、今日もどこかでワシが造った刃が折れとるやもしれん。そう考えだしたら昼飯なんぞ食っとる場合か」

 

「昨日も一昨日も晩飯冷凍食品だっただろーが!ああ、いつになったらまともな晩飯が食えるんだ・・・」

 

和倉家の晩御飯事情に嘆いている(たつみ)に対し、武虎は気にした様子はない。噂に違わぬ変人ぶりである。

 

「つべこべ言っとらんで手を動かせ。やってもらうことはまだまだあるぞ」

 

「はいはい、商品と廃棄を分けるんだろ?いつものことじゃねーか」

 

ぶつくさ文句を言いつつも、(たつみ)は父の仕事を手伝う。

 

「・・・(たつみ)。お前今日長門とかいう奴に勝ったらしいな」

 

仕分けをしている最中、武虎が今日の剣道部の練習試合のことについて尋ねてきた。

 

「相変わらず情報が早ぇな。まぁな!親父も鼻高々だろ?なんせ相手は全国で・・・」

 

「浮かれるなバカタレ」

 

鼻を伸ばして勝ち誇った顔をしている(たつみ)に武虎は一言で一蹴した。

 

「なっ!!?」

 

「あんな中途半端、勝って当然だ。剣を持つ心構えがなっておらん」

 

「また大袈裟なことを言って・・・。ただの部活動だぞ?わかる?競技だぞ競技。そんな難しく捉える必要もないだろ」

 

だいぶ大袈裟なことを言っているように感じている(たつみ)だが、武虎はどうも遊びとは思ってはいないらしい。武虎は鉄を打つ作業を止め、(たつみ)に顔を向ける。

 

「・・・(たつみ)。こっちを見ろ」

 

「うっ・・・」

 

いつも聞いた話だが、その際にはいつも真剣なため、(たつみ)は思わず武虎から目を逸らす。

 

「ワシの目を見ろ」

 

「・・・っ」

 

目を逸らしていたことがバレ、(たつみ)は武虎の目線をしっかり目で受け止める。

 

「ワシはお前にいつも言っているだろう。刃とは心を映す鏡であると。鍛冶師の心次第で刃は名刀にもなり、妖刀にもなりえる。使い手もまた然り。使い手の心によって、他者を守る刃にもなり、殺戮の刃にもなりうる。人の心こそが、刃の輝きを磨く研石なのだ」

 

武虎は打った刃の輝きを(たつみ)に見せながら、懸命に語っている。

 

(たつみ)、お前は強い。強いからこそ、心を磨け。どんな些細なことでもいい。人に誇れるような、立派な刃になれ。決して、ワシみたいにはなるなよ」

 

「親父・・・」

 

真剣に語る武虎に対し、(たつみ)は彼に一言。

 

「いや、マジで何言ってるかわからん」

 

「何回も言っとるのになぜに理解せんのだてめぇは!!!」

 

ゴチーン!!!!

 

「理不尽!!」

 

(たつみ)の言葉に憤慨した武虎は理不尽に彼にげんこつをおみまいした。。やはり変人である。

 

 

手伝いを終えた(たつみ)は自室でテレビゲームをやりながら、武虎の所業を愚痴っている。

 

「くそ・・・親父め・・・これ絶対DVだろ・・・訴えたら勝てるぞこれ・・・」

 

ゲーム画面にゲームオーバーが表示され、ぐちぐちと文句を垂れる(たつみ)はベッドに寝転がる。そこで、武虎が言ったことを思い返す。

 

(たつみ)、お前は強い。強いからこそ、心を磨け。どんな些細なことでもいい。人に誇れるような、立派な刃になれ』

 

「・・・立派な刃・・・か・・・」

 

(たつみ)は武虎の出された課題について真剣に考えている。

 

(たつみ)には母親がいない。小さい頃に事故で亡くなり、それ以来武虎が男手1人で彼を育てている。中学生なのに仕事を手伝わせたり、よくげんこつをおみまいしたりと理不尽な点は多いものの、子育てを放棄したことは今まで1度もない。自分の進路を真剣に聞いてくれたり、進学校の学費を払ってくれたり、数は少ないが、おいしいご飯も作ってくれる。変人ではあるが、(たつみ)にとっては大事な父親なのだ。だからできる限りならば、父の期待には応えたいと思っている。ゆえに課題真剣に考えているが、未だに答えが出せていない。

 

「母さん・・・俺、答えだせるかな・・・?」

 

(たつみ)は今は亡き母に問いかけるも、当然その答えは返ってこない。彼に睡魔が襲い、彼はそのまま就寝に着くのであった。

 

 

北海道岩見沢市にあるどこかの駅。駅から出てきた1人の女性は寒さで身震いしている。夜は冷え込んでいるから特にだ。

 

「うぅ~、さむさむ・・・。早く任務を終わらせて、温かいおでんでも食いたいねぇ」

 

この女性は今、あるものの回収任務でこの北海道に来ている。女性はスマホを取り出し、回収物の写真を確認する。

 

「さてと・・・どこにあるのかねぇ・・・特級呪物」

 

写真に写ってあるのは、小さな箱に入った札が巻かれた何かであった。

 

 

翌日、今日は部活動は休み。白金高校の授業が終わり、(たつみ)家康(いえやす)は放課後、沙良(さよ)の服選びに付き合わされている。とはいえ、お目当ての服がなかったがため、他の服を買ってすぐに終わったが。現在3人は市内にあるカフェでゆっくりしている。

 

「そうだ、(たつみ)。お前今日の夜って空いてるか?」

 

(たつみ)がコーラを飲んでいると、家康(いえやす)がそんな質問をしてきた。

 

「今日は手伝いないし、多分行けると思うけど」

 

沙良(さよ)は?」

 

「私も大丈夫だけど・・・」

 

「そっかそっか。ふっふっふ・・・」

 

2人とも予定がないと聞き、家康(いえやす)は不敵に笑っている。

 

「え、何その笑い」

 

「私なんか嫌な予感がする」

 

「まぁそう言うなって!まずはこれを見てくれ」

 

嫌な予感が感じている2人をよそに、家康(いえやす)はポケットからあるものを取り出した。それは小さな箱だった。

 

「箱?」

 

「これが何?」

 

(たつみ)は出された箱の中身を確認して、すぐにぎょっと驚いた。中に入っていたのは、いかにもな札が巻かれてある何かであった。

 

「げ!お前これ、札が貼られてるじゃねぇか!」

 

「おう!学校のゴミ出しの時に拾ったんだ!」

 

「拾ったんだ、じゃないでしょ!ちょっとまさか・・・」

 

「今日の夜の学校でこの札を剥がしてみるぞ!」

 

「マジかよ」

 

嫌な予感的中。こんないかにもな代物の札を夜の学校で剥がそうなど・・・何も起こらないにしても気が引ける。

 

「ちょっとやめときなって・・・それになんでわざわざ夜の学校?」

 

「その方がスリルがあるだろ?」

 

「そんなもの求めるな」

 

「いいだろ別に。どうせ何も起きねぇんだからよ」

 

「だとしてもだろ・・・」

 

かなり消極的な2人。すると家康(いえやす)はジト目で(たつみ)を見つめる。

 

(たつみ)・・・昨日埋め合わせするって言ったよな?あれは嘘なのかよ?」

 

「うっ・・・こいつここぞとばかりに・・・」

 

「あーあ、平気で嘘をつくなんてなー。俺たちの友情がその程度だったなんてなー」

 

「この野郎・・・」

 

ぐちぐちと嫌なところを突かれ、(たつみ)は仕方ないと言わんばかりにため息をつく。

 

「はぁ・・・わかったよ。親父を説得してみる」

 

「そうこなくちゃな!」

 

「えぇ・・・本気?呆れた」

 

「しょうがないだろ・・・」

 

「はぁ・・・これじゃあ私も行かないわけにはいかないじゃない・・・」

 

「よっしゃ決まりだな!」

 

夜に学校に行くことが決まり、家康(いえやす)は張り切っている。

 

「つーわけで、(たつみ)、これ預かっといてくれ」

 

「俺かよ!!?」

 

「しょうがねぇだろ!俺が持つとすぐなくすんだよ!今朝もなくしかけたし・・・」

 

「今朝バタバタしてたのはそういうことだったのね・・・」

 

どうやら家康(いえやす)は拾ったものをなくしかけたようで、もうなくさないように(たつみ)に預けるらしい。彼が朝バタバタしていた理由がなんとなく理解した沙良(さよ)

 

「わかったよ。とりあえず預かっとく」

 

「よーし!んじゃ夜に学校集合な!」

 

「あんた方向音痴でしょ?1人でいける?」

 

「が、学校ぐらい行けるわ!」

 

何はともあれ、箱は(たつみ)が預かり、3人は会計を済ませて一旦別れるのであった。・・・3人の会話を聞いていた者がいたとも知らずに。

 

 

家に帰宅した(たつみ)はひとまず武虎の許可を取りに地下工房に続くリビングに入る。

 

「親父―、いるかー?」

 

(たつみ)はどうせ地下工房にいるだろうと思い、工房の入り口に向かおうとすると、部屋にいた武虎に呼び止められる。

 

「おい(たつみ)、お前何を拾ってきた?」

 

「親父?珍しいな、工房から出てるなんて」

 

「んなこたぁどうでもいい。お前なんか拾っただろ。それは何だ?」

 

いつにもまして険しい顔をしている武虎に(たつみ)は彼からただならなさそうな雰囲気を感じ取った。

 

「な、なんだよ・・・。俺が拾ったわけじゃねぇんだって。これは家康(いえやす)が・・・」

 

(たつみ)は説明のために家康(いえやす)から預かったものを取り出した。武虎がそれを見た瞬間・・・

 

バキィ!!!

 

突然(たつみ)を殴り飛ばした。

 

「お前!!なんてものを家に持ち込んでやがる!!!」

 

「な、なんだよ・・・そんなにやべぇ代物なのかよ?」

 

「たくっ・・・あのクソガキめ・・・!」

 

何で殴られたのかもわからない(たつみ)の問いかけに答えず、武虎は頭を抱えている。

 

「親父?」

 

「何でもないわ」

 

「何でもなくねぇだろ⁉取り乱す親父なんて初めて見たし・・・」

 

武虎は(たつみ)に近づき、箱を取り上げた。

 

「とにかく、これはワシが預かる。(たつみ)、お前は何も聞くな。この件も忘れろ。いいな?」

 

「親父・・・」

 

「少し家を空ける。(たつみ)、今日は家から一歩も出るな。わかったな?」

 

「親父!!」

 

武虎は息子の静止の声を聞かずに、家を出ていった。何が何だかわからず、(たつみ)は困惑するばかりであった。

 

 

一方的に留守番を言い渡された(たつみ)は父の言いつけを守り、スマホで今日は行けなくなったというメッセージを家康(いえやす)沙良(さよ)に送る。

 

「・・・あんな親父、初めて見たな・・・いったい何なんだ、あれ・・・?」

 

自分でも見たことがなかった武虎の険しい表情を思い浮かべた(たつみ)はあれが何なのかと考えだす。父が取り乱すほどの代物・・・考えれば考えるほど、(たつみ)の中で嫌な予感が浮かび上がってくる。

 

ピンポーンッ

 

考え事をしていると、家のインターホンが鳴り響いた。また新聞かなと思いつつ、(たつみ)は玄関に向かい、扉を開ける。

 

「はーい、うちは新聞はいりませんよ・・・」

 

「和倉(たつみ)だね?」

 

玄関にいたのは、新聞配達員ではなかった。

 

「お前さんはどんな女がタイプかな?」

 

(たつみ)を出迎えたのは肌をかなり露出させた大胆な服装をした短い金髪の女性であった。この女性の特筆すべきものは・・・

 

(うおっ・・・!デカ・・・!)

 

誰もが目を引かせるほどのグラマー体型である。思春期である(たつみ)は彼女の胸に目が行ってしまっている。が、すぐに平常心になり、女性に問いかける。

 

「えーっと・・・どちら様?なんで俺の名前を・・・」

 

「おっとこんな質問してる場合じゃなかった。時間がねぇから本題ね」

 

女性は質問してる場合じゃないとして、すぐに本題に入った。

 

「私の名はレオーネ。呪術師をやってる」

 

「呪術師・・・?海外の人?」

 

「お前さん、今日お友達から呪物を受け取っただろ?それを渡せ」

 

「呪物・・・?」

 

女性、レオーネの口から聞いたことない単語ばかり述べられて、疑問を浮かべる(たつみ)

 

「あれは危険な代物なんだよ。早く渡してくれ」

 

レオーネは自分のスマホから呪物という物の写真を見せた。写っていたのは家康(いえやす)から預かったものと同じ物だ。

 

「あ!これ!確かに家康(いえやす)から預かったけど・・・いったい何なんだよそれ!何が何だかさっぱりだ!」

 

本当に何もわかっていない様子の(たつみ)にレオーネは口を開く。

 

「・・・日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。そのほとんどが人間から流れ出た負の感情、『呪い』による被害だ」

 

「呪い?」

 

「信じる信じないは重要じゃないよ。続けるよ」

 

「お、おう」

 

「特に学校や病院とか思い出に残る場所に呪いが出やすい。辛酸、後悔、恥辱。人間が反芻する度にその感情が受け皿になるからね。だから学校には大抵魔除けの呪物が置いてあったんだよ。お前のお友達が拾ったのがそれね」

 

「魔除け?ならいいじゃん」

 

「表向きはね」

 

箱の中身の物がどれほど危険なものかをレオーネは説明する。

 

「あれはね、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けないものさ。毒で毒を制す悪習みたいなものさ。現に長い年月が経って封印が緩んで呪いが転じてる。あれは今や呪いを呼び寄せ、肥えさせる餌さ。その中でもお前の学校に置いてあったのは特級に分類される危険度が高いものだ」

 

レオーネの説明によって、(たつみ)は武虎が取り乱していた理由がようやく理解できた。

 

「そうか・・・だから親父はあんなに・・・」

 

「放っておくと遅かれ早かれ人死が出る。そうなる前に渡せって言ってんの」

 

呪物の引き渡しを催促するレオーネに(たつみ)は申し訳なさそうに一言。

 

「あのー・・・それ・・・今親父が外に持って行っちゃった・・・」

 

その言葉を聞いたレオーネは目を見開き、焦ったような表情を見せる。

 

「その親父はどこ!!?」

 

「し、知らないよ!!何も言わず出て行っちゃったから・・・」

 

「くそ!あれを知ってるってことは・・・学校か?」

 

「・・・学校?」

 

学校というワードに引っ掛かった(たつみ)はレオーネに問いかける。

 

「なぁ・・・学校に呪いが出るって言ったよな?もし呪いに出会っちまったら・・・どうなる?」

 

(たつみ)の問いかけにレオーナは冷や汗をかいて、答える。

 

「・・・どうすることもできず・・・死ぬね」

 

 

一方夜の白金高校。生徒がいないこの学校の廊下に・・・アリクイのような異形が蔓延んでいる。

 

【寒い・・・寒いよ・・・温めて・・・】

 

この異形こそが負の感情の集合体である呪い、呪霊である。廊下を彷徨う呪霊の様子を隠れて伺っているのは、先に学校に来ていた家康(いえやす)であった。彼のすぐそばには、恐怖で震えている沙良(さよ)がいる。

 

「何・・・?あれ何・・・?」

 

「だ、大丈夫だ・・・。絶対に・・・俺が守ってやるからな・・・!」

 

家康(いえやす)沙良(さよ)を安心させようと、声をかける。そんな彼らの背後に、ぎらつく影が・・・

 

 

呪いという存在を知った(たつみ)家康(いえやす)沙良(さよ)を連れ戻すためにレオーネと共に急いで白金高校に向かう。

 

「次の曲がり角を曲がった先!そのまま真っ直ぐ行けば俺たちの高校だ!」

 

「急ぐぞ!」

 

(たつみ)は呪いに会ったことなど一度もない。だから話を聞いてもいまいちピンとこない。ピンとこないが・・・辿り着いた学校から、禍々しい気は感じ取れる。もちろんこんなことは、初めてのことだ。

 

(なんだ・・・このプレッシャーは・・・?)

 

学校から漂うプレッシャーに、(たつみ)は固唾を飲んでいる。

 

「あそこだな?私がお友達と親父を連れて帰るから、(たつみ)、お前は家に帰れ」

 

「待てよ!俺も行く!あいつらは、俺にとって・・・」

 

「何度も言わせんな。帰れ」

 

自分も行くと(たつみ)は名乗りを上げるが、レオーネはそれを許さず、彼を睨んだ。その睨みに(たつみ)は押し黙り、レオーネは1人で学校の中に入っていった。(たつみ)は彼女が見えなくなるまで、その場を立ち尽くした。

 

(何を迷ってんだ俺は・・・⁉いったい何にビビってんだ⁉確かに学校から嫌な気配がする。戻ってこれる保証なんてどこにもない。死は怖い・・・それは俺も同じだ。死にたくなんかねぇ・・・。けど、だからって友達を見捨てられるのか⁉)

 

葛藤を続ける(たつみ)に、武虎の言葉が思い出す。

 

『刃とは心を映す鏡である』

 

『立派な刃になれ』

 

立派な刃になれ。その言葉が頭によぎった時、(たつみ)はキッと学校を見つめる。

 

 

学校に進入したレオーネは人の気配を探りながら走っている。だが、辺りには呪いの気が充満していて、探知しにくい。

 

「ちっ!相変わらず気配がごちゃごちゃだな!」

 

レオーネが愚痴っていると、廊下の曲がり角にて、現れた。この学校に蔓延る負の集合体・・・呪霊が。

 

【マッチ・・・は・・・いらん・・・かね?】

 

頭がカボチャのかかし型の呪霊はレオーネを見つけるやいなや、近づいてきた。

 

「何?私と()りあおうっての?」

 

呪霊の殺気に対し、レオーネは殺気で返し、自分の中に流れる呪力を練る。

 

「獣王降臨」

 

呪力がレオーネの身体に満ちると、彼女の身体に変化が起きた。短髪が長く伸び、両腕が獣の腕に変化し、歯も牙に変化し、獣の尻尾や耳が生えてきた。

 

【マッチ・・・買っておくれえええええ】

 

かかし呪霊は自らの腕を伸ばし、手に炎を纏わせてレオーネを襲う。レオーネは伸びてきた両腕の間に入って炎の手を躱した。そして、そのままかかし呪霊の腕を掴み、かかし呪霊を持ち上げる。

 

「ウラァ!!!」

 

レオーネはかかし呪霊を地面に叩きつけさせ、態勢が崩れた隙を狙ってかかし呪霊に接近し、拳を振るって胴体に打撃を与えた。拳を喰らったかかし呪霊は風穴があき、塵となって消滅した。

 

これこそが、呪いに対抗できる呪いの力、術式。レオーネはその術式の1つ、自らを呪いの獣へと変化させることができる術式、『獣王降臨』の使い手だ。

 

「ぎゃああああああああああ!!!!!」

 

かかし型呪霊を片付けたと同時に、遠くから人の叫び声が聞こえてきた。

 

「!あっちか!」

 

レオーネは悲鳴が聞こえてきた方角へ急いで向かう。

 

【チュー、チュー】

 

【チューしようよおおおおお】

 

先を急いでいると、かかし型とは別の呪霊が複数現れ、彼女の道を遮る。唇の形をした小型の呪霊だ。

 

「邪魔すんな!!!」

 

レオーネは襲ってくる唇呪霊を拳と蹴りを振るって払い除ける。小型呪霊を蹴散らしながら進み、悲鳴が聞こえてきた教室に辿り着いた。教室には、1人の生徒を襲っているアリクイ型の呪霊がいた。

 

【温めて・・・温めてよぉ・・・】

 

「ひ、ひぃいいいいいいい!!!」

 

(野郎!そのまま食っちまうって腹か!)

 

レオーネは急いで助けに入ろうとするが、小型呪霊が邪魔をしてきて、先に進めない。

 

「くそ!邪魔だぁ!!」

 

レオーネが小型呪霊を次々祓っていく間にも、アリクイ型呪霊は鼻を伸ばし、生徒の頭を吸い上げ、そのまま食べようとする。

 

【寒いぃ】

 

「んんんんんん!!!」

 

(間に合わねぇ!!)

 

いくら急いでも間に合わない。手遅れかと思われたその時・・・

 

ガッシャーーーン!!!

 

外で待っていたはずの(たつみ)が窓を割って現れ、アリクイ型呪霊に蹴りを放った。蹴りの衝撃でアリクイ呪霊は仰け反り、吸っていた生徒を手放した。

 

「!(たつみ)!!」

 

【・・・寒いよぉ・・・】

 

(こいつが・・・呪い・・・!)

 

イメージとはだいぶ異なるが、初めて目にした呪いに対し、(たつみ)は身構える。

 

【温め・・・】

 

ズシャア!!

 

アリクイ呪霊が(たつみ)に襲おうとした時、雑魚呪霊を片付けたレオーネが拳を振るい、頭を吹っ飛ばされ、呪霊は祓われた。

 

「なんで来た・・・て言いたいところだけど、助かったよ」

 

(たつみ)は自分が助けた生徒に顔を向けた。その生徒とは、いつも自分たちを見下していた長門だった。

 

「長門・・・あんたも来てたのか」

 

「知り合いか?」

 

「一応先輩。気に食わねぇけど、助けられてよかったよ」

 

長門のことはいつも気に食わないと思っていた。でもそれとこれとは全く別問題。ゆえに長門の命が助かって安堵する(たつみ)

 

「・・・(たつみ)、お前呪いが見えるんだな」

 

「え?」

 

「呪いってのは普通見えないんだよ。死に際とか特殊な場面とかは別だけどな」

 

「そうだったのか」

 

「・・・お前、怖くないのか?異形の化け物だぞ?」

 

レオーネの疑問に対し、(たつみ)は答える。

 

「怖いよ。そんなの当たり前だろ。けどさ・・・だからって・・・助けられる命があるのに逃げちまったら、きっと俺は俺でなくなっちまう。そんなのは嫌だね」

 

「・・・・・・」

 

「それに・・・こっちはこっちでめんどくさい呪いにかかっちまってるんだよ」

 

(たつみ)の言う呪いというのは、おそらく『立派な刃になれ』という言葉だろう。その事情を知らないレオーネはいろいろと疑問符を浮かべている。

 

「・・・とにかく、一刻も早く・・・」

 

ドゴオオオオン!!!

 

「「!」」

 

レオーネの言葉を遮るように、教室の壁が突然破壊された。2人が破壊された壁に視線を向けて見ると、壁の奥には、雪男のようなガタイのいい肉体を持った醜い顔の呪霊がいた。おそらくこの呪霊が壁を壊したのだろう。

 

【ウホォ・・・】

 

「で、でけぇ・・・!」

 

「等級からして準一級以上か・・・上等だ」

 

今までの呪霊より高い等級であると予想したレオーネは雪男呪霊に対し、好戦的な笑みを浮かべている。

 

(たつみ)、危ねぇからじっとしてろよ」

 

「あっ!」

 

レオーネは(たつみ)に動かないように指示を出した後、雪男呪霊に向かって走っていく。こちらに向かってくるレオーネに対し、雪男呪霊は拳を地面に叩きつけた。その瞬間、複数の氷柱が床から現れ、レオーネを襲う。レオーネは向かってきた氷柱を見事なフットワークで躱し、出現した氷柱を蹴とばして跳躍する。

 

「それが術式ってわけね!」

 

レオーネは蹴とばした氷柱の破片を手に持ち、それを雪男呪霊に投げ飛ばした。氷柱は雪男呪霊の胴体に見事に突き刺さった。

 

【ウ・・・ゴ・・・ホォオオオオオ!!!】

 

氷柱で態勢が仰け反った雪男呪霊は憤慨し、足枷に巨大な氷の鉄球を創り上げ、足を振るって氷球を放ち、空中にいるレオーネを壁に叩きつけた。

 

「姉さん!」

 

しかし、氷球はレオーネが内側から破壊した。破壊した瞬間、レオーネは飛び出し、雪男呪霊に強烈な拳を叩きつけた。拳を叩き込まれた雪男呪霊は倒れた。

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

ドォォォン!!

 

反撃の隙を与えないようにレオーネは雪男呪霊の頭に向けて、呪力が帯びた足で、強烈なかかと落としを放った。かかと落としを喰らった雪男呪霊は土煙と共に、塵となって消滅していく。

 

「ま、こんなもんかな」

 

雪男呪霊を祓ったレオーネはケロッとしており、Ⅴサインを送っている。

 

(す・・・すげぇ・・・。あんなとんでもねぇ怪物を・・・たった1人で倒しやがった・・・。これが・・・呪術師・・・!)

 

雪男呪霊の強さを肌で感じ取っていた(たつみ)は、それを軽くあしらったレオーネの強さに、目を見開いて驚愕する。その間にも、また新たな呪霊が現れた。顔を覗かせているのは、長門を喰らおうとしたアリクイ型の呪霊だ。

 

「!また出た!」

 

「次から次へ・・・⁉」

 

呪霊を対処しようとした時、レオーネはアリクイ型呪霊に対し、異常を感じ取った。それは、呪いを知らない(たつみ)でさえ感じ取れた。

 

(なんだ・・・この感じ・・・?長門を食おうとした奴とは、まるで・・・)

 

(い、異様だ・・・不自然だ・・・!この呪力・・・3級のものとはまるで違う・・・。いや!この呪力・・・こいつからじゃない!!)

 

2人と異常さを感じ取っていると、アリクイ型呪霊は気を失うかのように、目がギョロンと白目を向き、飛び出してきた。だが出てきたのは・・・顔だけ。身体がない。2人がよく目を凝らしていると・・・奥よりそれは現れた。

 

その姿は、外装は黒く、まるでサイボーグのような機械の身体、白い機械の顔を持ち、ところどころに赤いライン線が光っている。2人が感じ取った異常の正体は、このサイボーグであった。そしておそらく、このサイボーグも呪いなのだろう。

 

(おいおいおい・・・嘘だろ⁉こんな事ってあるか⁉)

 

(俺は呪いなんて何1つわからねぇ・・・でもこれだけはわかる・・・。こいつは・・・やばい!!)

 

呪術師であるレオーネならまだしも、(たつみ)でさえ、このサイボーグが今までの呪いとはわけが違うと、ハッキリとわかる。シュコーッとサイボーグが息を吐く。その直後・・・

 

ドォォン!!

 

「がっ・・・⁉」

 

「!!?」

 

いつの間にかサイボーグはレオーネの首を掴み、壁に叩きつけている。いったい何が起こったのか、2人にはまだ理解が追い付いていない。

 

(な・・・何が起きたんだ・・・?)

 

(は、速すぎる・・・!それだけじゃねぇ・・・この呪い・・・今まで見たことがねぇ・・・!呪力も雑魚とは桁外れだ・・・!)

 

レオーネが首を絞められながらも、このサイボーグの呪霊の観察をする。すると・・・

 

「なぁんでぇ。ちょっとは骨がある奴かと思えば・・・ハッタリもいいところだぜ」

 

「「!!??」」

 

何と、このサイボーグの呪霊、人の言葉をハッキリとしゃべった。今まで呪霊はうわ言やよくわからない言語を呟くことが多かったが、こんなにハッキリと人語を理解し、なおかつしゃべれる呪霊は今まで現れたことはなかった。

 

「しゃ、しゃべった!!?」

 

「お前・・・しゃべれるのかよ・・・!」

 

「しゃあべれるぜぇ。まぁ驚くのも無理ないわな。俺は雑魚とは違うんだから・・・なぁ!!!」

 

サイボーグはレオーネを壁に引きずらせながら、反対側の壁に投げ飛ばした。

 

「ごはっ・・・!」

 

「はああああああああ!!!」

 

サイボーグはレオーネに動かす隙を与えず、足の車輪を展開し、猛スピードで接近し、腕を振るって打撃を与える。レオーネは避けることができず、攻撃をまともにくらってしまう。

 

「ここで邪魔されても面倒だからなぁ。サックリ逝かせてやるぜぇ」

 

サイボーグは左手でレオーネの首を絞めながら壁に押さえつけ、右手に電気の爪を展開する。電気の爪はとても長く、少し振るっただけでもなんでも斬れそうだ。

 

(やべぇ・・・身体が動かねぇ・・・頭も回んねぇ・・・。このままじゃ・・・死ぬ・・・!)

 

サイボーグは右手をレオーネの心臓目掛けて刺し貫こうとしている。彼女は死が迫ろうとして、目を閉じた。

 

「待ちやがれぇ!!」

 

ドゴォ!

 

すると、(たつみ)は椅子を持ち上げ、サイボーグ目掛けて投げ放った。椅子は見事にサイボーグに直撃したが、全然効いていない。これに癪が障ったのかサイボーグは手を止め、(たつみ)に顔を向ける。

 

「その人を放しやがれ!!」

 

「バカ・・・早く・・・逃げ・・・」

 

レオーネは(たつみ)に逃げるよう言ったが、もう遅い。(たつみ)はもう1つ椅子を投げ放ったが、今度はサイボーグは電気の爪を振るい、一瞬で椅子が切り刻まれる。そしてサイボーグはレオーネから手を離し、一瞬で(たつみ)のそばにやってきた。

 

「小僧。なかなか粋な攻撃するじゃねぇか。でもなぁ・・・効かねぇんだよなぁ・・・これが!!!」

 

バシィ!!!

 

「うわああああ!!!」

 

サイボーグは腕を振るい、(たつみ)を教室の壁に叩き込んだ。壁は強い衝撃によって崩れていった。

 

「呪いは呪いでしか祓えねぇって知らねぇのかよぉ」

 

「たつ・・・み・・・」

 

「ぐぅ・・・ちくしょう・・・!」

 

(たつみ)は痛む身体に鞭を打ちながら起きようとすると、天井に信じがたい光景を目の当たりにした。その光景とは・・・身体の至る所を切り刻まれ、電気の杭のようなもので磔にされた沙良(さよ)であった。

 

「・・・沙良(さよ)?・・・おい、沙良(さよ)・・・」

 

(たつみ)沙良(さよ)に呼び掛けるも、返事がない。それどころか、生気が全く感じられない。

 

「なぁんだぁ、小僧の知り合いかよぉ。こいつぁいい!」

 

(たつみ)の反応を見てサイボーグはゲラゲラと嘲笑っている。

 

沙良(さよ)・・・」

 

「・・・(たつみ)・・・か?」

 

信じがたい光景に唖然としている(たつみ)に後ろから声をかけたものがいる。彼が後ろを振り返ってみると、そこには沙良(さよ)ほどではないにしろ、同じく切り刻まれ、電気の杭で磔にされた家康(いえやす)であった。ひどい重傷だ。

 

家康(いえやす)!」

 

「俺たち・・・化け物から隠れてたら、いきなりそいつに襲われて・・・そいつが・・・!沙良(さよ)をイジメ殺しやがった・・・!!」

 

沙良(さよ)が殺される瞬間を目の当たりにしたという家康(いえやす)はあまりの悲惨さ、彼女が死んだ事実に涙を流している。

 

「・・・・・・お前が・・・」

 

「・・・苦痛に満ちた絶望の顔ってたまらなくいいんだよなぁ。特に小娘の顔ときたら・・・気持ちよかったなぁ、小娘の感触ぅ」

 

サイボーグは否定することなく、(たつみ)を煽るように殺した際の動作を再現している。

 

「ザクゥーーッってなぁ!くっくっく」

 

自分を煽り、さらに大事な友達を傷つけ、殺したサイボーグに対し、(たつみ)は強烈な殺意が沸き上がり、理性が吹っ飛んだ。

 

うああああああああてめええええええええええ!!!!!

 

(たつみ)は椅子の足を手に持ち、サイボーグを殺すつもりで突撃する。

 

「効かねぇっつってんだろうがよぉ!!!」

 

サイボーグは腕で(たつみ)が振るった椅子を壊し、彼を殴り飛ばす。

 

「にげ・・・ろ・・・」

 

「殺す・・・!殺してやる・・・!」

 

「安心しろ。俺は優しいからなぁ。すぐにお友達のとこまで送ってやるぜぇ!!」

 

サイボーグは電気の爪を(たつみ)目掛けて伸ばした。迫りくる爪に(たつみ)は目を閉じた。だが、いつまで経っても痛みが来ない。不審に思った(たつみ)が目を開けると、そこには・・・間に入って自分を庇って、電気に爪に貫かれた武虎がいた。

 

「!!お・・・親父ぃ!!」

 

「バカ・・・野郎・・・!だから・・・外に出るなと、言っとろうが・・・!」

 

サイボーグが電気の爪を消すと、武虎は力なく、その場に倒れる。

 

「親父ぃ!!」

 

(たつみ)は武虎の元まで駆け寄る。相当深く刺さっており、もう助からないことは明白だ。

 

「親父!しっかりしろ親父!」

 

(たつみ)・・・もう何度目かわからんワシの最期の言葉・・・よく聞け・・・」

 

「最期って・・・縁起でもねぇこと言うなよ・・・!」

 

武虎は涙を流す(たつみ)に、最後の話をする。

 

「刃とは心を映す鏡・・・。人の心の在り方次第で、一騎当千の輝きを大きく放つ・・・。ワシは・・・その輝きを見るのが・・・何よりも好きだった・・・」

 

武虎は(たつみ)に手を伸ばす。(たつみ)は父の手を握る。

 

「何度でも言う。(たつみ)、お前は強い・・・強いからこそ・・・何者にも負けない輝きを手に入れろ。そのためにも・・・自分だけの刃を見つけろ。誰かのためじゃない・・・お前自身のために・・・」

 

「俺自身の・・・ために・・・」

 

「そのために必要なものを・・・お前に返そう」

 

言いたいことを言い終えた武虎の視界がぼやけてきた。

 

「お前と過ごした16年・・・まぁ・・・悪くなかった・・・」

 

「・・・親父・・・?」

 

武虎の手が(たつみ)の手からすり抜け、力なく下がり、目を閉じ、彼は息を引き取った。武虎が死んだ。(たつみ)は肌で感じ取ったのだ。

 

「・・・親父いいいいいいいいいいいい!!!!

 

目の前で武虎が死に、(たつみ)は涙を流し、大きな叫び声をあげた。その光景を黙って見ていたサイボーグは(たつみ)を嘲笑う。

 

「美しい親子愛だなぁ。魅入っちまうなぁ。だがなぁ・・・死んだら意味ねぇぇだろぉぉがよぉぉぉぉ!!ぐぁっはっはっはっはっは!!」

 

サイボーグの笑い声に対し、(たつみ)はとても冷めた顔をしている。その間にも、レオーネは何とか身体を動かせるまでに回復した。

 

(よし・・・!何とか動ける・・・今のうちに(たつみ)を・・・)

 

(たつみ)を何とか逃がそうとレオーネは行動に出るが、それよりも早く(たつみ)は武虎の腰にかけてあった剣を手に取り、サイボーグに突撃する。

 

「!!行くな(たつみ)!!殺されるぞ!!」

 

「てめぇはぁ!!てめぇだけはぁ!!!」

 

「わかんねぇ奴だなぁ・・・。無駄なんだよぉぉ!!」

 

サイボーグは(たつみ)に目掛けて電気の爪を振るう。が、ここで予想外なことが起きた。サイボーグが振るった電気の爪を(たつみ)は躱し、さらに剣を抜き、サイボーグの手に斬撃を与え、ダメージを与えた。

 

「何ぃぃ!!?」

 

(あれは・・・呪具!!?それに・・・(たつみ)のあの動き・・・さっきとはまるで別人・・・!)

 

レオーネとサイボーグが驚いている間にも、(たつみ)はサイボーグを蹴り上げ、高く飛び上がる。宙に浮く(たつみ)にサイボーグは右手を伸ばし、突きを放つ。(たつみ)は逃げることなく、その腕に剣を振るい、腕を斬っていき、サイボーグの懐に入る。

 

「なっ!」

 

「お前は・・・」

 

ザンッ!!!

 

俺が斬る!!!!

 

(たつみ)はサイボーグの胴体を剣で斬った。

 

「ぬぅああああああ!!」

 

サイボーグはこの斬撃によって、多大なダメージを負った。(たつみ)の動きを見て、レオーネは彼に抱いていた違和感の正体に気がついた。

 

レオーネはかつて、師匠である九十九由貴から聞いたことがあった。天与の暴君について。その男は、呪力が0にも関わらず、呪いを認知でき、呪力を完全に消し去ることで肉体は一線を画し、逆に呪いの耐性を得ることができた。

 

この少年、和倉(たつみ)からは呪力が一切感じられない。しかし彼はそれでも、呪いを見ることができる。そして・・・武虎が亡くなったその瞬間、彼は人間離れした身体能力を開花させた。それ即ち・・・彼には武虎の命と関連した縛りが設けられており、それが解除されたのだ。

 

「そうか・・・(たつみ)・・・お前、天与呪縛・・・フィジカルギフテッドだったのか」

 

世界にたった1人しかいないとされていた呪力0の天与呪縛。その出現はまさに・・・暴君の再誕ともいえる。




本編開始のあらすじは次話の投稿の際に編集します。
ちなみにオリキャラであるサイボーグのイメージボイスは黒のフェイスです。
もっとわかりやすくいうなら、『ぶらあああああ』や『アイテムなど使ってんじゃ』の人です。
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