呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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自分のために

苦楽を元にしてきた大切な友達の沙良(さよ)の死。人としての心構えを説いてきたたった1人の家族、武虎の死。その原因であるサイボーグの呪霊に(たつみ)は天与呪縛、フィジカルギフテッドに覚醒し、武虎が持っていた剣の呪具で一太刀を入れた。サイボーグは初めてダメージを負ったが、この程度では祓われない。

 

「小僧が!!調子に乗ってんじゃねぇ!!」

 

サイボーグは斬られていない左腕で(たつみ)に打撃を与え、振り払った。

 

「ぐぁ・・・!」

 

フィジカルギフテッドに目覚めてまだ間もない(たつみ)は対処できず、壁に叩きつけられ、気絶してしまう。それだけではない。この一撃によって剣が真っ二つに折れてしまう。さらに最悪なことに、サイボーグは受けた傷が瞬く間に元通りになっていく。

 

「そんなに死にてぇなら望み通り、逝かせてやるぜぇ」

 

サイボーグは両手に電気の爪を創り上げ、(たつみ)を切り刻もうと彼に近づく。そんなサイボーグの背後にレオーネが回り込み、強烈な拳を振る舞おうとする。だがサイボーグはその動きを読み、すぐに振り向き、レオーネの放つ拳を左腕で受け止めた。

 

「ちぃ・・・!」

 

「いい加減てめぇも煩わしいんだよぉ!!」

 

サイボーグはレオーネの拳を受け止めたまま、彼女に蹴りを放ち、(たつみ)同様、壁に叩きつけた。

 

「がは・・・!」

 

「うぜぇんだよてめぇら!!雑魚の癖にしゃしゃり出やがってよぉ!!どうにもならねぇ癖によぉ!!」

 

サイボーグは背中の装甲を展開し、砲台のような出現させ、狙いを(たつみ)とレオーネに向けた。砲台の発射口からは電気が一か所に集まり、砲弾として大きくなっていく。あんなものが放たれれば、2人はただでは済まない。それどころか周りも吹き飛ばしてしまうだろう。

 

(こ、こいつはやべぇ・・・!せめて・・・(たつみ)だけでも・・・!)

 

「逃がしやしねぇ!!!まとめて逝かせてやるぜぇ!!!」

 

ドオォォォン!!!!ドカアアアアアアアン!!!!!

 

レオーネは(たつみ)を逃がそうと試みたが、サイボーグはそれ許さず、容赦なく電気の砲台を発射した。電気の砲撃は教室の壁をぶち抜き、破壊してみせた。その衝撃は、教室全体に響いている。

 

「いいか!雑魚は刈られるためにあるんだよぉ!わかったかぁ!!」

 

2人がいた場所には大きな土煙が発せられており、状況がよく見えない。

 

「て、もう聞こえるわけねぇかぁ!!ぐわぁっはっはっはっはっはぁ!!」

 

サイボーグは2人を始末したと考え、高らかに笑っている。すると・・・

 

「何これ?これどういう状況?」

 

「!」

 

土煙から男の声が聞こえてきた。サイボーグは笑いを止め、土煙に注目する。土煙が晴れるとそこには・・・気を失った長門と重傷者の家康(いえやす)を両手で掴んでいる銀髪の目隠し男がいた。沙良(さよ)と武虎の遺体もそばにあり、レオーネも(たつみ)無事だった。

 

「!!五条!!」

 

「や」

 

まさかの男の登場にレオーネは驚き、目隠し男、五条悟は長門を手放し、左手をあげて軽く会釈する。

 

「なんでここに・・・」

 

「いやー、本当は赤女(あかめ)が刀を取りに行く予定だったんだけど、急遽任務が入っちゃってねぇ。で、僕に雑用を押し付けたんで観光がてら馳せ参じたってわけ」

 

悟はボロボロの様子のレオーネを見て、笑っている。

 

「ははっ!てかボロボロだねぇ。写メ撮って皆に見せよーっと」

 

「おいやめろふざけんな!」

 

悟は許可なく携帯を取り出し、パシャパシャと今のレオーネの姿を連写する。写真を撮っている間にもサイボーグは悟に向けて電気の爪を振るおうとする。

 

「!!五条、後だ!!」

 

レオーネが注意を入れるが、もうすでに遅く、サイボーグは電気の爪を振るい、悟に攻撃した。だが、電気の爪は悟に当たる直前で止まり、攻撃が当たらない。

 

「で、君何?」

 

ようやく悟の注目がサイボーグに向けられた。

 

「んだ、こりゃあ!!?当たらねぇ!!!」

 

攻撃が当たらず、困惑するサイボーグに悟は裏拳をかました。その直後、悟はサイボーグに拳の連撃を放ち、最後の一撃に力を込めて、サイボーグを殴り飛ばした。

 

「はぐぅああああああああ!!!」

 

悟の連撃、強烈な一撃を喰らったサイボーグは吹っ飛ばされて外に出た。

 

(すげぇ・・・私でも歯が立たなかった呪霊を赤子の手をひねるみたいに・・・!やっぱ五条は強ぇ・・・!)

 

自分でも勝つことが叶わなかった呪霊を相手に軽々と捻ってしまう悟に対し、レオーネは彼の強さを改めて実感する。悟はサイボーグを追いかけるように教室から飛び出し、地に着地する。

 

「五条・・・おめぇがあの五条悟か」

 

「そうだけど、最初の質問に答えてないよね?君、何者?」

 

悟はどうせ答えるはずがない質問をしつつ、サイボーグについて推察する。

 

(呪霊のくせにしっかりコミュニケーションが取れてる・・・その上この呪力量・・・未登録の特級か・・・。見た感じ最近生まれたってわけでもなさそうだし、何かの目的のためにここに来てるってのは間違いないっぽいね)

 

悟が推察している間にもサイボーグは彼の出現に忌々しく感じている。

 

(まさか最強の呪術師様が来るとはなぁ・・・。このまま続けてたら俺は祓われちまう・・・。お楽しみはまだまだ残ってるって―のによぉ・・・)

 

サイボーグは(たつみ)やレオーネを殺したいという気持ちは山ほどある。だが自分の力量と悟の力量の差を間違えるほど、サイボーグはバカではない。

 

(仕方ねぇ・・・命は惜しい。ここは逃げさせてもらうぜぇ)

 

サイボーグは逃げる算段を立てるために、自分の左手を掲げ、腕の装甲をパージした。放たれた腕の部品は形となり、数多くの機械生命体を生み出した。機械生命体は悟の周りを取り囲む。サイボーグのそばにも何体もいる。

 

「式神か⁉」

 

「目的の物は手に入ったぁ。てめぇと()り合ってたら身が持たねぇ。ここは帰らせてもらうぜぇ」

 

サイボーグは武虎が持っていた小さな箱を悟たちに見せ、逃げることを宣言した。

 

「⁉特級呪物・・・!オッサンを刺した時か・・・!」

 

サイボーグは武虎を刺す際に、ちゃっかりと特級呪物を回収していたようで、それに気がついたレオーネは驚愕し、苦虫を食い潰したような顔になる。

 

「それ見せられて逃がすと思う?」

 

「いーや、逃げさせてもらうぜぇ!」

 

サイボーグが指示を出すと、悟を囲んでいた機械の式神は一斉に彼に襲い掛かろうとする。

 

「襲撃用と護衛用に分けたかぁ・・・あいつ、慣れてるねぇ。仕方ない」

 

襲い掛かってくる機械の式神の攻撃を自身の術式で寸前で止めた悟は肩をすくめ、持っていた手提げ袋を術式でレオーネの元まで送った。

 

(あね)さん、それ持っといてよ」

 

「?これは?」

 

「北海道産名物スイーツの盛り合わせ。ここに来る回数も少なかったからさぁ。いろいろ目移りしちゃって、つい爆買いしちゃった♡」

 

(こ、こいつ・・・!!)

 

人が死にかけてる時に呑気に土産を買いに行っていた悟に対し、レオーネは怒りが込み上げてきた。

 

「これ、結構疲れるんだけど・・・久々にやるか」

 

悟が両手を翳すと、掌の空気が青く染まっていく。青の空気は徐々に大きくなっていく。

 

「出力最大・・・術式順転―――"蒼"」

 

悟が青の空気を投げ放つと、青の空気は地面を、木を、そして機械の式神さえも・・・ありとあらゆるものを吸い込み、悟の周りを駆け巡る。周りのもの全てを吸い込み終え、悟は術式順転、蒼を解除する。蒼に巻き込まれた機械の式神は残骸となり、破片が至る所に落ちていく。

 

ヒュゥゥゥン!

 

それと同時に、遠くで黒い航空機のような物体が空を飛んだ。悟には一目でわかっていた。あれが、先ほどまでもサイボーグであるということを。航空機に変形したサイボーグは猛スピードで前線を離脱していった。

 

「・・・残念。逃げられたか」

 

術式を使ってももう追いかけることはできないと判断した悟は術式を使って一瞬でレオーネの元まで戻ってきた。

 

「状況は後で聞くとして・・・とんでもないことになったねぇ・・・本命も死んじゃってるし・・・刀、どうしよっかなぁ・・・。このまま帰ったら赤女(あかめ)に怒られるかなぁ・・・」

 

これからどうしようかと悟が悩んでいる間にも、レオーネは家康(いえやす)の容態を確認する。すると、家康(いえやす)は口を開いた。

 

「・・・あんた・・・(たつみ)に伝えてくれ」

 

「!」

 

「お?」

 

沙良(さよ)はさぁ・・・あの化け物に最期まで屈しなかったんだ・・・。自分も怖かったのに・・・カッコよかったぜ・・・。だから・・・何があっても・・・屈しないでくれって・・・」

 

「・・・ああ。伝えといてやるよ」

 

レオーネは(たつみ)に伝える家康(いえやす)の最期の遺言を預かった。

 

「・・・この家康(いえやす)様も・・・最期は・・・」

 

家康(いえやす)はその言葉を最後に、息を引き取った。

 

「あの切り傷だったんだ。どの道助からなかったよ。もう気力だけで動いてたって感じだね」

 

「・・・・・・」

 

家康(いえやす)の最期を見届けたレオーネは目を閉じ、彼に黙祷を捧げた。

 

「で、ずっと気になってんだけど・・・この少年は?」

 

悟はようやく気絶している(たつみ)に注目を向けている。

 

「おっとそうだ・・・五条先生よ、この少年推挙ね」

 

「えぇ~?それってスカウトってこと?見込みあんの?」

 

「あるよ」

 

「・・・へぇ?」

 

(たつみ)のスカウトによる悟の質問にレオーネは即答で返した。その姿勢に悟は彼に興味が湧いた。

 

「呪術師はいつだって人手不足。度胸も運もある。高専で育て上げれば、きっといい戦力になる」

 

「ほっほ~う。どれどれ・・・」

 

悟は(たつみ)を見て、本当に逸材かどうかを確かめる。ジーっと見つめ、悟はレオーネに質問する。

 

「ねぇ、この少年特級相手に傷をつけた?」

 

「ああ。この目で見た。間違いねぇよ」

 

質問の答えを聞いた悟は非常に愉快に笑い始める。

 

「・・・あっはははは!すごいなぁ。こんな事ってあるんだ。・・・うん。確かに逸材中の逸材だね。あいつと同じってのは気に入らないけど、育て上げれば間違いなく、いい呪術師になる」

 

質問の答えと(たつみ)の呪力総量を見て、彼がフィジカルギフテッドであると確信した悟は彼を気に入った様子である。

 

「オッケー。後は僕に任せない」

 

(たつみ)を育てると決めた悟はニヒルに笑った。

 

 

そして現在、北海道岩見沢市内にある病院で事の顛末を思い出した(たつみ)に悟はその後の出来事を話し終えて、彼に告げる。

 

「てなわけで、君、転校ね」

 

「?????」

 

最初悟が何を言っているのか理解が追い付かず、疑問符を浮かべる。そして、理解が追い付いた時、ムンクのような表情を浮かべて叫ぶ。

 

「なんでそうなるんだよ!!??」

 

「だって君普通とは違うんだもん。それをこのまま腐らせるのはもったいないでしょ」

 

(たつみ)の問いかけに対し、悟は能天気に答えた。

 

「君だって薄々感づいてたんじゃない?他とは違うってさ。現に君は別の意味で持ってる側の人間だ」

 

「持ってる側・・・?」

 

悟の言葉を聞いて(たつみ)はサイボーグに斬りかかろうとした時に感じた感覚を思い出した。あれは本当に自分なのかと思うほどの感覚を。

 

「君のその力はね、呪力をなくす代わりに、驚異的な身体能力を得るってものだよ。その中でも呪具なしで呪いが見えるっていう結構強力なものだ。でもその力はまだ未完成でね、今はその感覚を取り戻している最中ってとこかな?呪術高専で呪いを学べば、その力は完全なものになる。どんな呪いにだって渡り合うことができるよ。どう?悪い話じゃないでしょ?」

 

転校をする前提で話を進めようとする悟に(たつみ)はいい加減異を唱えようとする。

 

「だからなんで転校する前提で話すんだよ!俺はその呪術高専に行くなんて一言も・・・」

 

「でもさぁ・・・今の日常に戻っても、君のお友達やお父さんはもういないんだよ?」

 

「・・・っ!」

 

「しかも、彼らを殺した呪いもまだ生きていて、どこかを彷徨ってる」

 

「!!」

 

大事な友達と父が死んだ、そしてその原因を作ったサイボーグがまだ生きていると知り、(たつみ)は布団を強く握りしめる。

 

「あの呪いを放っておいたら他の人たちが同じようになるかもしれないよ?もしかしたら・・・君の大事な人がまたそうなる可能性もある。それでもいいの?」

 

「・・・俺は・・・」

 

悟の問いかけに対し、(たつみ)は言葉を詰まらせている。

 

「・・・それじゃあ、君に2つの選択肢をあげる。お友達や父親がいない今の空虚な地獄を進むか、呪いと戦う修羅の地獄を進むか。ま、どっちを選んでも地獄であることには変わらないから、よく考えて、好きな地獄を選びなよ」

 

中々に意地の悪い選択肢を迫られ、(たつみ)は自分がどうしたいのか、何をすればいいのかを真剣に考え始める。

 

 

悟との話が終わった後、(たつみ)は診察室で診察を受けている。身体は順調に回復しているようなので、明日には退院できるだろうとのことだ。診察が終わり、(たつみ)は亡くなった3人の葬儀や火葬の手続きなどを考えながら、自分の病室に戻っていく。その途中で、長門が入院していた病室を見つけ、ついでにお見舞いしようと思い、長門の病室に入室する。病室のベッドで、長門は包帯が巻かれた痛々しい姿で眠っている。

 

「長門・・・」

 

長門は1年にとっては嫌みったらしで誰も好きにはなれかなった。だが(たつみ)は知っている。本当の長門を。彼はとても小心者でそれを悟られないように見栄を張っていた。見栄を張り続けるために、人の何倍も努力をする努力家だ。そんな彼を知っているから、(たつみ)は彼を憎みきることはできなかった。寝息を立てている彼を見て、(たつみ)は悟の去り際の言葉を思い出す。

 

『最後に1つ。君の持つ力は使いようによっては人を助けることができる。それを生かすか腐らせるかは・・・全部君次第だよ』

 

人を助けることができる。その言葉が頭がよぎり、(たつみ)は自分がやりたいことについて、考えてることをまとめ上げるのであった。

 

 

それから数日、無事退院を果たした(たつみ)は亡くなった3人の葬儀と火葬に参列した。参列者の中には当事者であるレオーネもいた。葬儀を終え、今は火葬に入っている。沙良(さよ)の家族と家康(いえやす)の家族は自分たちの子供の死に対し、深く悲しみ、大量の涙を流している。彼らの泣き声が聞こえる中、(たつみ)は武虎の遺骨を遺骨袋に詰めていく。

 

葬儀と火葬を全て終えた(たつみ)はレオーネと共にベンチに座り、沈んだ気分を落ち着かせている。

 

「姉さん、ありがとうな。沙良(さよ)家康(いえやす)・・・親父の葬儀に参列してくれて」

 

「まぁ・・・結局守ることができなかったからな。せめてこれくらいはしないと」

 

「そっか・・・」

 

寂しそうな顔をしている(たつみ)にレオーネは家康(いえやす)から預かった遺言を彼に伝えようと口を開く。

 

(たつみ)、亡くなった少年からお前に遺言を預かってきた」

 

「!家康(いえやす)が・・・俺に?」

 

「あのお嬢ちゃんは、あの呪いに対して臆しなかったらしいよ。だからお前も、何があっても屈しないでくれ・・・だってさ。いい友達なんだな」

 

「・・・沙良(さよ)・・・家康(いえやす)・・・」

 

あの残虐で卑劣なサイボーグ相手でも弱音を吐かなかった沙良(さよ)に尊敬の念を、死ぬ間際まで自分を想ってくれた家康(いえやす)に感謝の念を抱く(たつみ)は葬儀中と火葬中には流さなかった涙を流す。レオーネは彼が泣き止むまで、何も口を挟まず、背中をポンポン叩いて慰める。

 

しばらく経ち、泣き止んだ(たつみ)はレオーネに質問をする。

 

「姉さん・・・聞いてもいいか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「呪いの被害って・・・結構多いのか?」

 

(たつみ)の質問にレオーネはしっかりと答える。

 

「今回みたいな特殊なケースは稀だけど・・・被害規模だけで言ったらザラにあるね。呪いに遭遇して普通に死ねたら御の字・・・ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかったらまだマシといえる」

 

「あれで御の字・・・」

 

「呪術師になるなら今回以上の凄惨な現場を見るかもしれない。だから(たつみ)がそうならないって保証はどこにもない」

 

「・・・・・・」

 

今回以上の悲惨な出来事が待っている可能性があると示唆されて、(たつみ)は固唾を飲んでいる。

 

「ま!1回でいいからやってみろって!時給も高いぞぉ~?」

 

「バイトかよ⁉」

 

呪術師という危険な仕事をバイト感覚でほのめかすレオーネに(たつみ)はツッコミを入れる。とはいえ、呪術師という職業に足を踏み入れるべきかどうか、真剣に悩んでいたことは事実だ。確かに呪術師ならばあのサイボーグの行方を追うこともできるかもしれない。だけどそれは、ただ復讐したいからというだけの話ではない。彼の脳裏に浮かぶのは、父がいつも言っていたあの言葉だ。

 

『立派な刃になれ』

 

立派な刃というものが何なのか、(たつみ)にはまだわからない。だが、もしかしたら・・・呪術師でなら、その言葉の意味が見つかるかもしれない。ゆえに、彼はレオーネにもう1つ質問をする。

 

「・・・もう1つ質問いい?」

 

「なんだ?」

 

「呪いを祓い続けていれば、呪い殺される人たちは少しでも減るのか?」

 

「当然」

 

彼女の答えを聞いて、彼の決心がついた。

 

「だったらやってやる!俺は呪術師になる!呪いの存在がいて、それが人を殺すと知っちまった以上・・・それを理由に俺には関係ないってのうのうに過ごすなんてこと・・・俺にはできない!もしも沙良(さよ)家康(いえやす)が同じ立場だったなら、きっと同じ道を選んだと思う!」

 

(たつみ)の言葉を聞き、レオーネは彼の覚悟を試すような言葉をかける。

 

「覚悟は決まったってことでいいんだな?これ以上進んだら、もう二度と故郷に戻ってこれないかもしれないぞ」

 

「構わない。俺はもう、引き返さないと決めたんだ」

 

(たつみ)の決意は固く、決して揺らがなかった。彼の決断を聞いて、レオーネは笑みを浮かべ・・・

 

ムニュッ!

 

「おぉ⁉」

 

「よく言った!それでこそ私が見込んだ男だ!」

 

彼を引き寄せ、思いっきり抱きしめた。その際に顔が彼女の胸に埋まり、柔らかい感触が伝わってくる。

 

(うぉ・・・やっぱデカ・・・!すげぇ・・・)

 

思春期が出てしまっている(たつみ)は顔を赤らめている。

 

「いやぁ~、君熱いねぇ~。気持ちのいい決断だ。君みたいなタイプ、嫌いじゃないよ」

 

「うおおお!!??」

 

そこへいつの間にか悟が現れ、(たつみ)はすぐさまレオーネから離れた。彼女は先ほどの状況を見られて特に気にした様子はなかったようだが。

 

「あんたいつから⁉」

 

「うんね~、葬儀に参加してくれての辺りからずっと」

 

「最初っからじゃねぇか!!」

 

割と最初からいたから今までの話を悟に聞かれ、そして先ほどの状況下を見られて、(たつみ)は恥ずかしさで穴に入りたい気分になった。

 

「明日の朝一で出発するから、今日中に荷物纏めておいてよ」

 

「?朝一って・・・どこに行くんだ?」

 

「東京だよ。(たつみ)はこれから東京にある呪術師の学校に転入するんだ」

 

「東京!!」

 

疑問に答えたレオーネの回答に、田舎者の(たつみ)は目を輝かせている。

 

「その名も・・・東京都立呪術高等専門学校」

 

「ちなみに1年生は君で3人目」

 

「少な!!」

 

これから転校する学校の1年生の在学数の少なさに(たつみ)は驚愕するのであった。

 

 

翌日、全ての荷物をまとめた(たつみ)は出発の前に沙良(さよ)家康(いえやす)、武虎の墓参りにやってきた。線香と手合わせを終え、そろそろ出発しようとした時・・・

 

「行くのか、(たつみ)

 

墓参りと(たつみ)の見送りにやってきた市長に声をかけられた。

 

「おう。もう決めたことなんだ」

 

「そうか・・・。では・・・ワシからの最後の餞別じゃ。こいつを持って行け」

 

市長はそう言って、鞄の中からちょっと高価そうな小さな像を(たつみ)に渡した。

 

「いざとなったらこれを・・・」

 

「売るんだな」

 

「違うわ!!!」

 

的外れな発言をした(たつみ)に市長はツッコミを入れた。

 

「肌身離さず持っていろ。きっと神様が助けてくださる」

 

「・・・ああ!ありがとな、市長!」

 

市長なりの気遣いを受け取った(たつみ)は市長に手を振り、墓地を後にした。こうして(たつみ)は様々な思いを抱き、呪いの世界に足を踏み入れた。

 

 

朝から昼にかけて、(たつみ)は悟の案内の下、東京にある筵山麓に辿り着いた。悟は(たつみ)にこの先にある呪術高専の説明をする。

 

「東京都立呪術高等専門学校。日本に2校しかない呪術教育機関の1校。表向きには私立の宗教系学校とされてるけど、多くの呪術師が卒業後もここを基点に活動していて、教育のみならず、任務の斡旋、サポートも行ってる呪術界の要だ」

 

「へぇ~・・・」

 

(たつみ)は説明を聞きながら、辺りと見まわしている。彼の描いていた東京のイメージとはだいぶ異なるからだ。

 

「にしても・・・結構山の中なんだな。ここってマジで東京?」

 

「東京も郊外はこんなもんよ?」

 

さらっと回答する悟に(たつみ)はこの場にはいないレオーネがどこにいるか質問する。

 

「そういえば姉さんは?」

 

「今頃は呪術界のトップの老人共のとこかな。何せ盗られたものが盗られたものだからねぇ。責任は免れないだろうさ」

 

「責任・・・大丈夫かな・・・」

 

「ま、何とかなるでしょ」

 

レオーネを心配する(たつみ)とは別に、悟は能天気に笑っている。

 

「とりあえず(たつみ)はこれから学長と面談ね」

 

「学長・・・」

 

「下手打つと入学拒否られるから気張ってね」

 

「えっ⁉そしたら俺浪人生!!?」

 

さらっと重要なこと言い放った悟に(たつみ)は驚愕する。

 

「ま、そんなに難しいことは考えず、自分の思ったことを言えばいいから、気楽に行きなよ気楽に」

 

「俺は今から不安です・・・」

 

話している間にも、目的地にたどり着いた悟は扉を開け、(たつみ)を連れて中に入った。

 

「遅いぞ、悟」

 

「!」

 

2人が入室すると、部屋の奥から男の声が聞こえてきた。奥にいる人物を見て、(たつみ)は目が点になる。

 

「8分遅刻だ。責めるほどでもない遅刻をする癖、直せと言ったはずだぞ」

 

なぜなら、目の前にいる大柄でサングラスをかけた厳つい見た目の男が見た目に似合わず、お世辞にもかわいいとも言い難い人形を手作りしているからだ。大男のそばには黒い服でネクタイを着けたロングヘアの女性が男が作った人形をじーっと見ている。

 

(オッサンがかわいいを作っている!)

 

男のギャップが激しい光景に(たつみ)はそう思わずにはいられない。

 

人形を作っている男は夜蛾正道。この東京都立呪術高等専門学校の学長を務めている。

 

「責めるほどじゃないなら責めないでくださいよ。どーせ人形作ってんだからいいでしょ8分くらい」

 

反省の色なしの悟に対し、ロングヘアの女性が口を挟む。

 

「じゃあ逆に聞くが、お前が同じ立場だったら、どう感じる?」

 

「すげームカつく」

 

「そういうことだ。私も若干腹立ったからやめることだ」

 

「はいはいすみませんでしたー。はい、これでいいでしょ」

 

正論で返されて悟は反省なしで嫌みったらしな謝罪をして話を先に進めようと促している。

 

「・・・ところで、そいつがレオーネが言ってた武虎の?」

 

女性に話を振られて、(たつみ)は頭を下げて、挨拶をする。

 

「和倉(たつみ)です!本日の面談、よろしくお願いします!」

 

(たつみ)のお辞儀とあいさつに対し、夜蛾は口を開いた。

 

「何しに来た?」

 

「え・・・」

 

予想していなかった夜蛾の問いかけに(たつみ)は面を喰らって顔をあげた。

 

「いや・・・だから面談・・・」

 

「呪術高専にだ」

 

「・・・呪いを習いに・・・」

 

「その先の話だ」

 

夜蛾の質問の意図を理解していない(たつみ)に彼は訂正を入れながら質問を続ける。

 

「呪いを学び、呪いを祓う術を身に着け、その先に何を求める?」

 

夜蛾の問いかけによって(たつみ)は面談はもうすでに始まっているのだと理解した。

 

「俺は・・・呪いのせいで大事な友達と親父が殺されたんだ。放っておいたら、他の人を・・・もしかしたら、俺の故郷の人たちが殺されるかもしれない。それを止めたい」

 

「なぜ?」

 

サングラスでどんな表情をしているかわからないが、夜蛾から発せられる圧力に(たつみ)は言葉を詰まらせる。

 

「事件、事故、病気・・・君の知っている人間のみならず、知らない人間が死ぬのは当たり前のことだ」

 

「始まった」

 

「・・・・・・」

 

夜蛾の教育方針をよく知っている2人、悟はこの状況を面白がり、女性は(たつみ)に対し、少し哀れに感じ取った。

 

「それが呪いの被害だと看過できないというわけか?」

 

「い、いや・・・それもあるけど・・・立派な刃になるっていう目標もあって・・・」

 

(たつみ)は言葉を詰まらせながらも、何とか返答を続ける。ただその中で、夜蛾は立派な刃というワードが気になった。

 

「その立派な刃とやら・・・遺言などではなかろうな?」

 

「それは・・・」

 

「遺言なのだな?」

 

(たつみ)の反応からして、それが遺言であると理解した夜蛾。

 

「つまり君は、他人の指図で呪いに立ち向かうというわけだな?」

 

夜蛾はすっと立ち上がり、合否を言い渡す。下した合否は・・・

 

「不合格だ!」

 

ハッキリと不合格を言い渡した夜蛾は手を翳す。すると、そばに置いてあった人形の1つ、かっぱの皿をつけた変な人形が動き出した。

 

「う・・・動いた!!?人形じゃなかったのかよ!!?」

 

「呪骸・・・人形だよ。私の呪いが籠ってるがね」

 

夜蛾が人形、キャシィに指示を出したと同時に、キャシィは(たつみ)の目の前に迫る。(たつみ)は目の前に現れたキャシィが振るった拳を咄嗟に腕を構えて防御する。しかし・・・

 

(お・・・重てぇ・・・!これが人形の一撃かよ・・・⁉)

 

思っていた以上にキャシィの一撃が重く、防御していたにも関わらず、(たつみ)は吹っ飛ばされる。

 

「窮地にこそ人間の本音が出るものだ。納得がいく答えが聞けるまで攻撃は続くぞ」

 

「この野郎・・・!そもそも他人じゃなくて・・・家族の遺言だって―の!!」

 

(たつみ)はまた殴られる前に前に出て、思いっきりキャシィの顔面をぶん殴った。殴り飛ばされたキャシィは壁にぶつかって跳ね返り、また壁にぶつかって跳ね返るを繰り返している。素早くはね返るため、柱の蠟燭の火が風圧で消える。

 

「くそ・・・速ぇ・・・!」

 

(たつみ)は次にキャシィがはね返ってくるタイミングを狙い、再び殴り飛ばした。しかしキャシィはまたも壁にぶつかって跳ね返り、そのまま(たつみ)に体当たりをかまし、吹っ飛ばす。

 

「ぐあ・・・!痛ってぇ・・・!」

 

「家族も他人の内だろう」

 

キャシィは愉快な動きをして(たつみ)を煽っている。

 

(そうか・・・人形だから痛みとかねぇのか・・・!)

 

「呪術師は常に死と隣り合わせ」

 

夜蛾はマッチに火をつけ、消えた蝋燭の火を灯し直す。

 

「自分の死だけではない。呪いを殺された人を横目に、呪いの肉を切り裂かねばならぬ時もある。不快な仕事だ。ある程度のイカレ具合と高いモチベーションは不可欠だ。それを他人に言われたから?笑わさせるな!まだ復讐を果たすためだと言われた方が納得がいく」

 

「ふざけんな!!俺は・・・」

 

君は、自分が呪いに殺された時も、そうやって父親のせいにするのか

 

「!!」

 

夜蛾に痛いところを突かれた(たつみ)は目を見開いて驚愕する。

 

「・・・あんた、すっげぇ嫌なこと言うな・・・」

 

「気付きを与えるのが教育だ」

 

「俺は・・・」

 

(たつみ)は何と言うか考えていると、そんな暇を与えないと言わんばかりにキャシィに殴られる。

 

「ぐはぁ・・・!!」

 

「死に際の心の在り様を想像するのは難しい。だがこれだけは断言できる。今のままだと、大好きな父を呪うことになるかもしれんぞ。呪術師に悔いのない死などない。今一度問う。君は何しに呪術高専に来た」

 

(たつみ)は態勢を立て直し、襲い掛かろうとするキャシィに立ち向かおうとする。

 

(確かに俺は・・・親父の遺言に左右されてるのかもしれない。でも・・・立派な刃になれ・・・。この意味を教えてくれたことなんて、今まで1回もない。それは・・・人に頼るんじゃなくて・・・自分で答えを見つけろってことだ!!)

 

(たつみ)は襲い来るキャシィに思いっきりタックルをかまし、抱き抑えてキャシィの動きを封じる。

 

「自分だけの刃を見つける!そのためにも、立派な刃が何なのかっていう答えを、探さなくちゃいけない!」

 

これが正解なのは自分でもわからない。それでも、(たつみ)は自分の考えを夜蛾にぶつける。

 

「正直、親父の言う刃が何を意味してるのか、俺にはわからねぇ。その答えを、親父は教えてはくれなかった。それは、自分のことは自分で考えろってことだ。だからこそ、答えは自分で探さなきゃいけないんだ!」

 

「・・・・・・」

 

「もしかしたら答えが見つからないのかもしれない。そもそも正解なんてどこにもないのかもしれない。だけど・・・俺は生きてここにいる!それには何か意味があるのかもしれない!ならその意味を、俺自身の手で見つけたい!誰かに言われたからじゃねぇ・・・俺自身の意思だ!!自分の生き様で、後悔しないためにも!!」

 

(たつみ)の心からの本音を聞き、夜蛾は黙り込む。しばらくの沈黙が続くと、夜蛾は口を開く。

 

「・・・赤女(あかめ)、寮を案内してやれ。それから諸々のセキュリティの説明もな」

 

「はい」

 

「!それじゃあ・・・」

 

夜蛾は(たつみ)に顔を向け、改めて合否を言い渡す。

 

「合格だ。ようこそ呪術高専へ」

 

呪術高専への入学が認められた。これによって(たつみ)は笑みを浮かべた。

 

「よろ・・・」

 

バキィ!!!!

 

「どおお!!??」

 

よろしくと言おうとしたタイミングでキャシィが(たつみ)の腕をすり抜け、彼の顔を思いっきりぶん殴った。

 

「あ、すまん。術式を解くの、忘れてた」

 

何はともあれ、こうして(たつみ)は呪術高専に所属する術師として迎え入れられた。

 

 

面談後、(たつみ)赤女(あかめ)と呼ばれる女性の案内の下で、今日から住むことになる寮の部屋に案内された。

 

「おおお!めっちゃ広い!!」

 

「今日からここがお前の部屋だ。好きに使うといい」

 

(たつみ)は広い部屋に案内され、さっそく届けられた荷物を広げ、家具をどこに置くか悩んでいる。

 

「・・・先ほどの面談、いい答えだった。さすがは武虎の息子だな」

 

「!そういえばあんた、最初に会った時も親父のこと知ってるようだったけど・・・」

 

女性は改めて、(たつみ)に自己紹介をする。

 

「禪院赤女(あかめ)。この呪術高専で3年の担任兼1年の副担任をやってる。武虎とは以前から刀の注文をしていた客だ」

 

「親父の・・・客・・・」

 

女性、禪院赤女(あかめ)が武虎の客だったと知り、(たつみ)は少なからず驚いている。と同時に、武虎が生前、秘密裏で刀を作っていた日のことを思い出した。

 

「武虎は呪術師にとってはその名知らずの呪具職人だった。彼に呪具の製造を依頼する者は少なくなかった。私もそのうちの1人だ」

 

「そうだったのか・・・」

 

赤女(あかめ)(たつみ)が飾った武虎の遺影に近づき、手を合わせる。

 

「だから今回、武虎が死んだという知らせは、非常に残念に思う」

 

武虎に黙祷を捧げている赤女(あかめ)(たつみ)は彼女の腰にある刀に目を向ける。

 

「親父が作ったその刀、あんたの注文だったんだな」

 

「ああ。武虎の、最後の一品だ」

 

「・・・その刀、大事に使ってくれ。きっと親父も喜ぶ」

 

「もちろんだ。大事に使わせてもらう」

 

赤女(あかめ)(たつみ)が刀を見つめ、しんみりとした空気が漂う。そのタイミングで悟が空気を読まずに入室してきた。

 

「お疲れサマンサ―!・・・て、何よこの空気?お通夜?」

 

「悟、ノックくらいしろといつも言ってるだろ」

 

「メンゴ♪(たつみ)に同じ1年生を紹介しようと思ってね」

 

「俺と同じ1年?」

 

この呪術高専に在籍する同期の存在に(たつみ)は興味を向けている。

 

「スゥー・・・めっぐみいいいいいいいいい!!」

 

悟はスーッと息を吸い、大きな声で(たつみ)の同期となる1年の名を呼ぶ。

 

ガチャッ

 

「部屋隣なんですから大きな声出さなくても聞こえてます」

 

すると、隣の部屋から1人の少年が出てきた。ツンツンした黒髪を持った少年は訝し気に目を細めている。

 

「ていうか、空室なんて他にいくらでもあったでしょ」

 

「だって賑やかな方がいいでしょ?よかれと思って」

 

「ちょうど両隣が空いてたからよかった」

 

「よくないです。ありがた迷惑です」

 

黒髪の少年は部屋割りについてあまり受け入れていない様子だ。とはいえ、もう決まったことだから受け入れるほかないのだが。

 

「紹介するよ。僕のかわいい息子・・・」

 

「さらっと嘘をつくのやめてください」

 

「伏黒恵。(たつみ)と同じ1年の生徒だ。仲良くな」

 

悟の嘘は置いておいて、(たつみ)は黒髪の少年、伏黒恵に近づき、握手をしようと手を伸ばす。

 

「和倉(たつみ)だ!生まれも育ちも岩見沢!よろしくな!」

 

「・・・伏黒恵」

 

(たつみ)の挨拶とは対照的に、恵は淡々として素っ気なく、握手も交わさない。その対応に(たつみ)はちょっと引くつく。

 

「・・・それだけ?他に言うことは?」

 

「別に。一緒なのは授業と任務で十分だろ」

 

「こいつ・・・!」

 

ドライな対応をする恵に(たつみ)は笑みを浮かべたまま、こめかみをピクピクさせている。

 

「もう1人の1年は少しバタバタしてるようでな。到着が遅れるそうだ。しばらくは、お前たち2人で任務にあたってもらうことになるからそのつもりで頼む」

 

「了解です」

 

「げー・・・」

 

もう1人の1年が遅れるため、2人で任務にあたることに対し、恵は冷静に受け止め、(たつみ)は嫌そうな反応をしている。

 

「さてと・・・自己紹介も済んだことだし、親睦も兼ねて、2人にはさっそく任務に行ってもらいます!」

 

「い、いきなり実戦投入⁉」

 

転校して間もなくいきなり呪術師の任務にあたるとは思わなかった(たつみ)は驚愕している。

 

「ま、実戦って言ってもただの回収任務だから、気楽にいきなよ」

 

「回収任務?」

 

「呪いによる被害は呪霊だけとは限らない」

 

呪術師の任務についてよくわかっていない(たつみ)に恵が説明する。

 

「呪物の中には、置いてるだけで周囲に呪いをまき散らしたり、呪いを呼び寄せたりする危険なものが多い。そういったものには大抵封印が施されてるものだが、長い年月が経って呪いが強まり、封印が緩み、周囲に被害を齎す可能性がある。その事態を防ぐために、呪物を回収する必要がある」

 

「先日、レオーネが当たっていた任務もこの回収任務にあたる。呪いの元を絶つという意味でも、大事な任務だ。そのことを胸に刻み込むようにな」

 

回収任務の重要性をよく理解した(たつみ)は首を縦に頷く。

 

「しかし・・・本当に2人にやらせるのか?特級が現れたばかりなのだろう?」

 

「そんな予定外なこと1回や2回起きるわけないでしょ?大丈夫、恵は強いんだから。何とかなるでしょ」

 

今回の回収任務で少し心配している赤女(あかめ)とは対照的に、悟はかなり呑気だ。

 

「その回収するべき呪物って、何なんだ?」

 

(たつみ)の質問に、赤女(あかめ)は回収するべき呪物の名を口にする。

 

「・・・特級呪物『両面宿儺』」

 

「!!!!」

 

両面宿儺。その呪物の名を聞いた恵は驚愕で目を見開いている。呪いの世界に足を踏み入れたばかりの(たつみ)には、それが何なのかわからず、首を傾げることしかできなかった。

 

 

一方その頃、宮城県仙台市にある杉沢第三高校。

 

「ん?なにこれ?」

 

杉沢第三高校に通う1人の男子生徒があるものを見つけた。それは小さな箱だ。男子生徒はその箱を開けて中を確認する。中身は札が巻かれていた何かであった。

 

「お、札が巻かれてる。怖」

 

男子生徒は軽い気持ちで札が巻かれた何かをまじまじと見つめている。

 

「これ、先輩に持って行ったら気に入るかな?持って帰ろ」

 

男子生徒は札に巻かれた何かを箱と一緒に持って行ってしまう。持って行った代物が男子生徒の人生を変える代物だとも知らずに。

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