呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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秘匿死刑

ここは、呪術高専の名もなき部屋。相変わらずこの部屋は至る所に札が貼られている。至る所にある蝋燭の火がゆらゆらと揺れている。そんな何もない部屋の中央にある椅子に、虎杖悠仁が拘束されている。眠っていた悠仁が目を覚まして、ぼやけた目線で最初に移ったのは、椅子に座って自分をじっと見つめている赤い瞳の女性だ。悠仁はぼやけた視界で、部屋の辺りを見回す。

 

「起きたか」

 

赤い瞳の女性、禪院赤女(あかめ)の一声で、悠仁は彼女に視線を向けた。だんだんと視界がハッキリしてきた。

 

「今のお前はどっちだ?虎杖悠仁か?それとも『両面宿儺』か?」

 

「・・・あんたは・・・確か・・・」

 

「禪院赤女(あかめ)。呪術高等で3年の担任兼1年の副担任をやっている。そして・・・死刑執行人でもある」

 

「呪術・・・」

 

意識が完全にハッキリした悠仁は思い出したかのように声をあげる。

 

「!!伏黒!先輩!あの・・・名前わかんないけど剣の人は!!?」

 

ガチィ!!

 

「あ?」

 

身体を動かそうとした悠仁だが、椅子に固定された縄で拘束されているため、身動きが1つも取れない。

 

「なんだよ・・・これ・・・」

 

「他人の心配をしている場合ではないぞ。虎杖悠仁。呪術界トップの判決が出た」

 

赤女(あかめ)は悠仁をじっと見つめ、決して覆らない判決を言い渡す。

 

「虎杖悠仁。お前を・・・秘匿処刑に処す」

 

悠仁がなぜ処刑されなくてはいけないのか。一体全体どういうことなのか。その全貌は・・・杉沢第三高校で起きた出来事まで遡る。

 

 

時は遡って、夜の杉沢第三高校の屋上。恵と(たつみ)が回収すべき特級呪物、両面宿儺を飲み込み、受肉してしまった悠仁。しかし悠仁は受肉したにも関わらず、自我をしっかり保っている。わけがわからない状況下の中、恵は悠仁を呪いとして祓うと宣言した。悠仁を殺すことと同じ発言をした恵に(たつみ)が異を唱える。

 

「お、おい!何言ってんだ!お前、自分が何を言ってんのかわかってんのか⁉」

 

「どけ、和倉!そいつはもう人間じゃない!」

 

「だからどういうことだって聞いてんだよ!!何が何だか意味がわかんねぇよ!!」

 

状況を理解している恵はともかく、何も理解していない(たつみ)が説明もなしに、はいそうですかと納得するわけがない。揉め事を起こしている2人に対し、殺害宣言を受けたはずの悠仁が止めに入る。

 

「ちょいちょいちょい。こんな時に喧嘩はやめようぜ。俺は何ともねぇし。それより伏黒も・・・えと・・・剣の人でいいや。剣の人もボロボロじゃん。俺もボロボロだし、早く病院行こうぜ」

 

先ほどまで悠仁の身体に浮かび上がっていた紋様は消えていき、両目の下に出てきた2つの目も消えている。状況を何にも理解していない悠仁はとことんまで軽い。だが恵の心境はそれとは全く真逆、深刻な状態だ。

 

(今しゃべってんのが呪物か虎杖かもこっちはわかんねぇんだよ!和倉も何もわかってねぇし・・・くそ!いったい、どうしたらいい・・・⁉)

 

問題が問題故に自己判断が難しくなってきている恵。異例中の異例の事態に、困り果てている恵に、救いの手が現れた。

 

「すまない恵、(たつみ)。少し遅れた」

 

「今どういう状況?」

 

「!赤女(あかめ)先生!五条先生!」

 

「や」

 

「うわあ!!?ビックリした!!」

 

いつの間にか恵のそばに現れた悟と赤女(あかめ)(たつみ)はビックリしてしりもちをついた。

 

赤女(あかめ)先生はともかく・・・五条先生はどうしてここに⁉」

 

「いやなに・・・私が遅れた理由というのが、悟の説得なんだ」

 

「いやー、この件は全部赤女(あかめ)に任せようかなーって思ってたんだけどね。来る気なかったし。でもさすがに特級呪物が行方不明となると、上がうるさくてね。(あね)さんの失敗の件もあるし。とりあえず観光ついでに行っときますかーってね」

 

「喜久福にくいついただけだろう」

 

「まぁねー。久しぶりに食べたいし。赤女(あかめ)だって食べたかったんでしょー?」

 

「うん」

 

「ほらー!やっぱ食いたいんじゃーん!」

 

「あの・・・世間話しながらボロボロの俺らを写メるのやめてもらっていいっすか?」

 

「ちっ・・・」

 

悟は赤女(あかめ)と世間話をしながらボロボロの恵と(たつみ)その姿をスマホで写真をパシャパシャと撮りまくっている。もちろん無許可で。そんな姿勢に恵は舌打ちをする。

 

「ねぇねぇ、これ2年のみんなに送ってもいい?」

 

「ダメに決まってるでしょ」

 

「おしゃべりはここまでにしよう。それより、見つかったか?特級呪物」

 

「・・・・・・」

 

「えーっと・・・それなんですけど・・・」

 

赤女(あかめ)が本題に入ったと同時に、恵は黙り込んでいる。(たつみ)自身もなんと報告すればいいのかわからず、口をまごまごさせている。その状況下に、ずっと置いてけぼりをくらっている悠仁が手をあげて、ヤバそうという焦燥感に駆られた顔をしながら申告する。

 

「あのー・・・」

 

「「ん?」」

 

「ごめんそれ・・・俺、食べちゃった」

 

「??????????」

 

悠仁から発せられた想定外な発言に、赤女(あかめ)は理解が追い付かず、疑問符を浮かび続けている。隣にいる悟も予想してなかったのか、ピタリと身体を静止させている。

 

「・・・・・・・・・・・・マジ?」

 

「「「マジ」」」

 

間が入った後の悟の問いに3人は声を合わせて肯定する。

 

「ん?んんんんんんん?」

 

悟はずずいっと悠仁の近づき、ほぼゼロ距離で彼の顔を見つめる。呪物が受肉しているかどうか・・・それを確認するために。

 

「・・・ハハッ、本当だ、混じってるよ。ウケる」

 

「本当に受肉しているのか?いつものボラではなく?」

 

「うん、してるねー。完全にしてる。嘘だと思うなら確かめてみなよ」

 

悟が悠仁からさっと離れ、今度は赤女(あかめ)が彼に近づき、じーっと見つめる。

 

「・・・・・・」

 

「えっと・・・何?」

 

「・・・お前、身体は何ともないのか?」

 

「別に・・・」

 

彼の様子から見ても、本当に何も異常ないようだ。

 

「宿儺と代われるか?」

 

「スクナ?」

 

「お前が食べた呪いのことだ」

 

宿儺が何を指しているのかはわからなかったが、赤女(あかめ)の指摘で自分の意識の中で抑え込んでいるそれがそうであると理解した悠仁。

 

「ああ・・・うん。多分できるけど」

 

先ほどまでの変貌ぶりがまるで嘘かのように普通にしている悠仁。しかし、赤女(あかめ)はわかる。彼から発せられる僅かな呪力は、先ほどまで呪物だった宿儺そのものであるということを。

 

「・・・(たつみ)、刀を頼む」

 

「うわっと⁉」

 

赤女(あかめ)は腰にかけていた刀を外し、それを(たつみ)に預け、屈伸を行う。

 

「ならば10秒だ。10秒経ったら戻ってこい」

 

「え・・・でも・・・」

 

「大丈夫。彼女、僕と同じ最強だから」

 

赤の他人であるはずの赤女(あかめ)の心配をする悠仁だが、悟が問題ないと言わんばかりの発言をする。

 

(自分で刀を外して制限を解除させた・・・赤女(あかめ)先生、本気だ・・・)

 

赤女(あかめ)は悠仁を殺さない程度、そして宿儺が相手ともなると生半可では挑めないと思っての決断で刀を手放したのだ。赤女(あかめ)が本気で戦うと理解し、恵は固唾を飲む。すると赤女(あかめ)は自分の手に持っていた手提げ袋を思い出し、それを恵に預ける。

 

「あ、恵はこれを預かっててくれ」

 

「?これは?」

 

「喜久福」

 

赤女(あかめ)が恵に預けたのは仙台名物、喜久福である。

 

「仙台名物は本当にうまいからな。つい買ってしまった。ちなみに私のお勧めは、ほうじ茶生クリーム味だ」

 

「それと僕のお勧めはずんだ生クリーム味~♪」

 

((この人たち土産買ってから来やがった!!人が死にかけてる時に!!))

 

自分たちが死ぬ思いで任務をこなしている間、呑気に土産を買ってきた最強2人に対し、恵と(たつみ)は憤慨している。特に恵は尊敬している赤女(あかめ)が悟と同じことをやってることに対し、この人もあの人()の友人なのだなと思った。

 

「言っておくがそれは土産じゃない。次の新幹線で私と悟が食べるものだ」

 

赤女(あかめ)が補足を入れている間にも、悠仁の身体中に紋様が浮かび上がってきた。肉体の主導権が宿儺に代わったのだ。主導権を握った宿儺は赤女(あかめ)の背後から襲い掛かろうとする。

 

「!!後ろ!!」

 

「危ねぇ!!」

 

「喜久福は他の土産とは・・・」

 

ドオオオオオン!!!!

 

恵と(たつみ)が忠告を入れるが、遅かった。宿儺が赤女(あかめ)に向けて腕を振るったことにより、辺りの衝撃が走り、土煙が発せられる。土煙が晴れ、恵が目を開けてみると、すぐ目の前には宿儺。そして、宿儺の腰部に赤女(あかめ)が呑気に座り込んでいた。

 

「それで、中の生クリームがもう声も出せないほどにうまくてな・・・」

 

「っ!はぁ!!」

 

宿儺はすぐに赤女(あかめ)に向けて腕を振るうが、赤女(あかめ)はその攻撃を宿儺の背中を転がるように身体を捻って躱した。宿儺は腕を振るい、蹴りも放ちながら攻撃を仕掛けるが、赤女(あかめ)は軽い身のこなしで全ての攻撃を躱していく。

 

「生徒の前なのでな。恥ずかしい格好は見せられない」

 

次に宿儺が伸ばした腕を赤女(あかめ)は今度は避けることなく、掴みとり、背負い投げの要領で宿儺を地面に叩きつけた。赤女(あかめ)の攻撃はまだ終わらない。宿儺が起き上がるより先に、赤女(あかめ)は宿儺を宙に浮かせ、そして右拳を振るって宿儺に打撃を与え、吹っ飛ばした。

 

(この女・・・恐ろしく早い・・・。速度だけではない・・・腕力も強い・・・)

 

宿儺が吹っ飛んでいる間にも赤女(あかめ)は宿儺の目の前に迫り、追撃の蹴りを放つ。蹴とばされた宿儺は鉄柵に激突する。

 

「全く・・・いつの時代も厄介なものだな・・・呪術師は!」

 

宿儺はすぐに鉄柵から離れ、猛スピードで赤女(あかめ)に接近し、強大な呪力を纏った腕を振るった。

 

ドォォォォン!!!

 

宿儺が放った呪力は凄まじい衝撃が走り、学校の一部が崩壊した。あまりの凄まじい破壊により、大きな土煙が立ち込める。

 

「だからとて、どうという話でもないが・・・⁉」

 

シュンシュンッ!!

 

余裕を見せていた宿儺だったが、土煙の中より呪力が纏った複数の瓦礫が宿儺に迫る。宿儺は腕を振るい、難なく全ての瓦礫を破壊したがその直後、赤女(あかめ)が宿儺の目の前に現れ、手を伸ばして宿儺の頭を鷲掴みにする。

 

ドオオオオン!!

 

宿儺の頭を鷲掴みにした赤女(あかめ)が力を込め、地面に叩きつけた。

 

「7、8、9・・・」

 

赤女(あかめ)は宿儺を抑えつけたまま、10秒のカウントダウンを口にしている。そろそろ10秒が経過しようとしているのだ。

 

「そろそろか・・・」

 

ドクンッ!

 

約束の10秒が経過した時、宿儺の意識が悠仁の意思で抑え込まれようとしている。

 

(クソ・・・まただ・・・乗っ取れない。この虎杖とかいう小僧・・・いったい・・・何者・・・だ・・・?)

 

赤女(あかめ)が宿儺から離れたと同時に、宿儺の意識が完全に悠仁に抑え込まれ、目を閉じた。紋様が消えたその直後、主人核である悠仁がパチッと目を開けた。

 

「――――おっ!大丈夫だった?」

 

ケロッとしている悠仁はすぐに起き上がり、赤女(あかめ)に怪我がないか確認をする。

 

「・・・これは驚いたな。本当に制御できている」

 

「あっははは!これはすごいねー。うん、すごいよ」

 

受肉しているにも関わらず、悠仁は自我を失わず、平然としている。しかもあの宿儺を相手にだ。これには少なからず赤女(あかめ)は驚いているし、悟は愉快そうに笑っている。

 

「でもちょっとうるせーんだよなぁ・・・あいつの声がする」

 

赤女(あかめ)たちには聞こえてないようだが、どうも悠仁には抑え込まれた宿儺の声が聞こえているらしい。

 

「それで済んでいるだけでも奇跡だ」

 

赤女(あかめ)は悠仁に近づき、彼の首筋に手刀を叩き込んだ。これによって悠仁は意識を失い、その場倒れようとしたところを赤女(あかめ)が支える。

 

赤女(あかめ)先生⁉」

 

「ちょ、ちょっと⁉いったい何を⁉」

 

「安心しろ。気絶させただけだ」

 

「気絶って・・・」

 

全ての事情を分かっている3人はともかく、そもそも受肉のことさえ知らない(たつみ)は終始困惑しっぱなしだ。

 

「次に目覚めた時、宿儺に身体を奪われてなければ、こいつは『器』の可能性がある」

 

「器・・・?」

 

「その説明は帰った後にする」

 

「さて、ここで恵にクエスチョン。彼をどうすべきかな?」

 

「・・・仮に器だとしても、呪術規定に則れば虎杖は死刑対象です」

 

「!おい、伏黒!!」

 

「でも・・・」

 

死刑対象と言われても意味がわからない(たつみ)は異を唱えようとした時、恵は続けて言葉を紡ぐ。

 

「・・・死なせたくありません」

 

恵はハッキリと悠仁を死なせたくないと言った。この言葉を聞いた(たつみ)は少し驚いている。

 

「それは私情か?」

 

「私情です。何とかしてください」

 

恵の言葉を聞いた赤女(あかめ)は今度は(たつみ)に視線を向ける。

 

「・・・(たつみ)、お前も同じ意見か?」

 

「・・・さっきの戦闘と言い、死刑と言い、何が何だか俺にはわかんねぇよ。わかんねぇけど・・・虎杖はすげぇいい奴なんだ。それをそっちの都合で殺されるとか・・・冗談じゃねぇ!!」

 

何も知らないから言えることだろうが・・・知っていたとしても、(たつみ)は同じことを言うだろう。悠仁ほどの善人が何もしていないのに殺されるなんて間違っていると。

 

「・・・どちらにせよ、当主候補でしかない私にはそんな権限はない。だが悟ならば・・・」

 

2人の気持ちを理解した赤女(あかめ)は悟に近づき、悠仁を預ける。

 

「くっくっく・・・かわいい生徒の頼みだ。任せなさい!」

 

悠仁を抱えた悟は楽しそうに笑いながら、2人にグッドサインを送った。

 

 

そして現在、今に至るというわけだ。

 

「ということで改めて・・・お前、死刑」

 

今の状況と回想が全くかみ合っておらず、悠仁はジトーッとした目で彼女を見つめている。

 

「回想と展開が合ってねぇんだけど・・・」

 

「一応は悟も頑張った方だが・・・結局覆らなかったというだけだ」

 

あの後悟の方で上層部と揉めあったようだが、結果は覆らなかったようだ。ただし、補足付きでだが。

 

「まぁ、話は最後まで聞け。死刑は死刑でも、執行猶予が付いた」

 

「執行猶予・・・今すぐじゃねぇってことか」

 

「そうだ。一から説明させてもらう」

 

なぜ執行猶予が付いたのか。その理由を説明するために赤女(あかめ)は脱いだ黒のコートのポケットからあるものを取り出した。それは、悠仁が食べた指と同じものであった。

 

「これはお前が食べた呪物と同じものだ。全部で20本ある。うちではそのうち6本を保有している」

 

「20本?・・・ああ、手足で?」

 

「いや、宿儺は腕が4本ある」

 

赤女(あかめ)は宿儺の指を宙に放り投げ、そして落ちてきたタイミングで呪力を籠った拳を放った。拳で吹っ飛ばされた指は壁に穴を開けて埋め込まれる。傷は全くついていない。それを見た悠仁は目を見開いて驚愕している。

 

「見ての通りだ。これは壊すことも斬ることもできない。それだけ強力な呪いだ」

 

赤女(あかめ)は椅子から立ち上がり、壁に埋め込まれた指を回収する。

 

「日に日に呪いは強まっている。現存の呪術師では封印が追い付かない。そこでお前だ」

 

「え?」

 

「お前が死ねば、中の呪いも死ぬ。指1本とはいえ、呪いの王の復活で上は大慌てでな。今すぐお前を殺せと騒いでいる」

 

受肉とは言ってみれば主人核の肉体と一心同体を意味する。主人核の肉体が死ねば、当然ながら受肉した呪いも死ぬ。呪術界のトップは宿儺によって多大な被害が出ないうちに悠仁を殺せと言っているのだ。そこに悠仁の意志などないに等しい。

 

「だが今後宿儺に耐えうる器が生まれてくる保証はどこにもない。ゆえに悟はこう提言した。『どうせ殺すなら、全ての指を取り込ませてから殺せばいい』と」

 

全部で20本ある宿儺の指。その全てを悠仁に取り込ませてから殺す。それ即ち、両面宿儺の完全消滅を意味する。呪術全盛期では宿儺の手によって手を焼かされてきた。で、あるならばここで根絶やしにするのが正しい選択だ。しかし、悠仁は生粋の善人だ。そんな少年が呪術界の都合によって殺されるのは、赤女(あかめ)自身も気分がいいものではない。ゆえに選ばせるのだ。尤も酷な選択を。

 

「上もこれを了承した。だからお前には、2つの選択肢を選ばなくてはならない。『今すぐ私に殺されて死ぬ』か、『全ての宿儺を見つけ出し、取り込んでから死ぬ』か。先に言っておくが・・・お前に拒否権はない」

 

どちらに転んでも死刑であることには変わりない。両親がおらず、祖父をなくしたばかりの悠仁には、あまりにも酷すぎる選択肢である。

 

 

翌日、杉沢病院の廊下。(たつみ)は昨日事件に巻き込まれた井口と佐々木の様子を確認するためにやってきた。呪術規定、特級呪物の受肉について、いろいろ聞かされた(たつみ)はかなり複雑な気分だ。事情はだいたいは理解したが、それで納得したのかと言われれば、全然そんなことはない。むしろ理不尽であると考える。そんなごちゃごちゃな気分で病院の廊下を歩く(たつみ)は、悩む元凶を作った本人である悠仁とばったりと出くわす。

 

「あ、虎杖・・・」

 

「お、剣の人!」

 

「その呼び方やめてくんない?俺には和倉(たつみ)って名前があんだわ」

 

「ああ、そっか。和倉、和倉ね」

 

ようやく(たつみ)の名前を聞いた悠仁はすぐに彼の名前を覚える。

 

「身体大丈夫だった?伏黒は元気?」

 

「俺は大した怪我はないけど、伏黒は今宿で寝てる」

 

「そっか。で、お前何しに来たの?」

 

「巻き込まれたお前の先輩の見舞いだよ」

 

「そっか」

 

(たつみ)の返答を聞いて、悠仁は笑みを浮かべている。

 

「?なんだよ?」

 

「いや。伏黒もそうだけど・・・お前って、いい奴だな」

 

悠仁の素直すぎる言葉に(たつみ)は少し照れ、頬を掻いている。と、同時に、こんな善人がなんで処刑されなければいけないんだという考えも芽生えてくる。そう考えているうちに、井口が入院している病室に辿り着く。悠仁たちはドアをノックしてから病室に入る。病室には、佐々木が見舞いに来ていた。

 

「虎杖・・・」

 

「どんな具合っすか?井口先輩」

 

「大丈夫って、お医者さんは言ってたけど・・・まだ意識が戻ってないの」

 

生きていることは幸いではあるが、呪いに襲われたことへのショックのせいなのかどうかはわからないが、井口は未だに意識が戻らない状況下にあるらしい。今回の事件に責任を感じている(たつみ)は前に出る。

 

「あなたは?」

 

「呪術高専の者です。今回の件、お二方を巻き込んでしまい・・・大変、申し訳ございませんでした」

 

(たつみ)は佐々木に頭を下げて謝罪する。その謝罪に佐々木の中にある罪悪感が込み上げてきて、彼女は涙を流す。

 

「ううん!あなたは悪くない!悪いのは・・・私なんだ・・・。私が夜の学校なんかに・・・誘ったから・・・」

 

「・・・・・・」

 

「信じられないと思うけど・・・変な・・・化け物が襲ってきて・・・私も捕まって・・・」

 

「信じるよ」

 

涙を流しながら語る佐々木の言葉に、悠仁は口を開いた。

 

「和倉が言うには、あいつらは化け物じゃなくて呪いなんだ。あの指は、特級呪物っていって、呪いを寄せたり、強くする効果があったんだよ。だから悪いのは和倉でも先輩でもなくて・・・あれを拾ってきた俺なんだよ」

 

悠仁は指を拾った自分の浅はかさを悔いり、拳を強く握りしめる。

 

「ごめんな。でも、大丈夫。明日には、井口先輩治せる人が来てくれるから」

 

「虎杖・・・?」

 

「悪い先輩。俺、行かなきゃならないところがあるんだわ」

 

悠仁自身もわかっているのかもしれない。これが先輩との最後の会話になるかもしれないことを。それゆえなのか、彼の表情は寂しそうだった。

 

「バイバイ」

 

悠仁は佐々木に手を振って、病室を後にした。戸惑う(たつみ)は佐々木にお辞儀をしてから、悠仁を追って病室を後にした。

 

 

悠仁が向かった場所とは、火葬場であった。火葬場の入り口には悟と赤女(あかめ)が待っていた。少し話す時間はあるため、悠仁と(たつみ)は2人が座るベンチに座り込む。

 

「亡くなったのは?」

 

「爺ちゃん。でも親みたいなものかな」

 

「そっか。すまないね、そんな時に」

 

「・・・それで、どうするか決まったか?」

 

赤女(あかめ)の問いかけに対し、悠仁は呪いの被害について質問をする。

 

「・・・こういうさ、呪いの被害ってけっこうあんの?」

 

「・・・前回同様、今回は特殊なケースだけど、被害の規模だけで言ったらザラにあるかな」

 

「前回?」

 

「俺のとこにあったんだよ。こういった被害が。呪いにあって普通に死ねたら御の字、ぐちゃぐちゃになっても死体が見つかったらまだマシだって。マジでその通りだと思ったよ」

 

被害規模を聞いた悠仁は顔を俯かせ、考え込む。

 

「宿儺の捜索をするとなれば、凄惨な現場を見ることになる。かと言ってお前がそうならないと言うことはできない」

 

「ま、赤女(あかめ)が提示した地獄、好きなのを選んでよ」

 

話し込んでいるうちにも、火葬の時間がやってきた。中に入り、倭助の火葬を済ませる。3人に見守られる中、悠仁は倭助の遺体を遺骨袋に入れる。

 

「・・・宿儺が全部消えればさ、呪いで苦しむ人が少しは減るかな?」

 

「もちろん」

 

悠仁の質問に悟は答える。遺骨袋に骨を入れ終えた悠仁は遺骨袋の蓋を閉める。

 

「・・・あの指、まだある?」

 

「ああ、私が持ってる」

 

赤女(あかめ)はコートから宿儺の指を取り出し、それを悠仁に渡した。

 

「・・・改めて見ると・・・気色悪いなぁ・・・」

 

指を見て怪訝な顔をする悠仁だったが、意を決し、彼は宿儺の指を口に入れ、噛まずに飲み込む。

 

(!また食った!)

 

(2本目・・・確率は10分の1・・・)

 

(さて、どうなる?)

 

宿儺の指を飲み込んだ悠仁の身体に、宿儺が出てくる際の紋様が浮き始める。途端、悠仁は苦しみだし、胸を抑える。

 

「!いた・・・」

 

「まぁ待って」

 

(たつみ)が悠仁に駆け寄ろうとするが、それを悟に止められる。同時に、赤女(あかめ)は片手で刀を持ち、刃をちらつかせる。もしこれで宿儺が出るようならば、悟が何と言おうと、赤女(あかめ)は悠仁を問答無用で葬るつもりでいる。だがもしも・・・本当に宿儺の器であるならば・・・。

 

「・・・くく・・・ははは・・・」

 

静かに笑い声をあげる悠仁はガバッと起き上がる。表に出てきたのは・・・

 

「うえあ・・・まっずぅ!笑えてくるわ!」

 

悠仁の人格の方であった。身体の紋様もすぐに消えていく。これを見て、悟と赤女(あかめ)の疑念は確信へと変わった。

 

(確定だな・・・)

 

(うん。肉体の耐性だけじゃない。宿儺を相手に難なく自我を保てる・・・1000年生まれてこなかった逸材)

 

猛毒であるはずの宿儺の指を食らい、無事でいることに加え、2本目でも受肉した宿儺を抑え込めている様子から見て、悠仁が『宿儺の器』であると確信した悟と赤女(あかめ)は彼をじっと見ている。

 

「ん?どったの?」

 

「いや、何でもない」

 

「・・・指を食ったということは、覚悟は決まったという解釈でいいのか?」

 

赤女(あかめ)が問いているのは、呪術師になる覚悟があるのかどうかである。どのみち、死刑が確定している彼が今を生きるためには、これしかない。断れば待っているのは死だけであるがゆえ。赤女(あかめ)の問いかけに悠仁は頭をかきながら答える。

 

「・・・全然。なんで俺が死刑なんだって思ってるよ。でも、呪いは放っとけねぇ」

 

悠仁は倭助の遺影をじっと見つめる。

 

「・・・ほんっとうにめんどくせぇ遺言だよ」

 

悠仁は(たつみ)みたいな覚悟があるわけではない。だがどんな形でもいい。どうせ最後に待っているのが死であるのならば、せめて、大勢の人間を助け、大勢に囲まれて死にたい。死刑云々の話ではない。自分の生き様で、後悔はしないように。

 

「宿儺は全部食ってやる。後は知らん。てめぇの死に様は、もう決まってんだ」

 

悠仁の決断を聞いて、(たつみ)は笑みを浮かべている。納得のいく答えを聞いて、赤女(あかめ)もふっと笑い、悟はにかっと笑う。

 

「ああ。それでいい。その時のことはその時に決めればいい」

 

「いいねぇ。君みたいなタイプは嫌いじゃない。楽しい地獄になりそうだ」

 

「朝一で出発する。今日中に荷物を纏めておけ」

 

「?どっか行くの?」

 

「東京」

 

悠仁の疑問に答えたのは、頭に包帯を巻いた恵であった。

 

「伏黒!元気そうじゃん!」

 

「これ見てそう思うか?」

 

的外れな発言をする悠仁に恵は呆れている。

 

「お前はこれから、俺たちと同じ呪術師の学校に転入するんだ」

 

「へ?」

 

「東京都立呪術高等専門学校。それが俺たちの学校だ」

 

「おめでと~。君で1年生で4人目の生徒だ」

 

「えっ、少な!!」

 

これから高専に転入することになった悠仁は生徒の少なさにやっぱり驚く。

 

 

翌日、祖父の墓参りを終えた悠仁は東京に辿り着き、(たつみ)赤女(あかめ)の案内の下で筵山麓を歩いている。

 

「すげぇ山ん中だな。ここ本当に東京?」

 

「どこでも郊外はこんなものだ」

 

歩いている中で悠仁はこの場にいない3人について尋ねる。

 

「伏黒たちは?」

 

「悟と一緒に高専に戻っている。今頃は術師の治療を受けて部屋で休んでると思う」

 

ちなみに、恵たちを連れて悟が先に帰ったのは、赤女(あかめ)がそう言ったからだ。悟だと必ず責められない遅刻をするから前もって先手を打ったのだ。ちなみに帰るように言われた悟は終始面白くなさそうな顔をしていたが、赤女(あかめ)はこれを無視した。

 

「とりあえず、悠仁はこれから学長と面談だ」

 

「学長・・・」

 

「もし不合格を言い渡されたら即死刑もありえるから答える時は慎重にな」

 

「ええ!!?そしたら俺、人生終了!!?」

 

赤女(あかめ)の忠告にたいしてオーバーなリアクションをする悠仁。

 

「なんだ、貴様が頭ではないのか」

 

突如として宿儺の声が聞こえてきた。だが発しているのは悠仁の口からではない。ではどこから発しているのか・・・

 

「力以外の序列はつまらんな」

 

それは、悠仁の頬に口がにょきっと現れ、そこから発せられている。

 

バチンッ!

 

悠仁は自分の頬に出てきた宿儺の口を蚊を叩くかのように叩いて宿儺を黙らせようとする。

 

「悪ぃ、先生。たまに出てくんだわ」

 

「ずいぶんと面白い身体になったものだな」

 

人の顔に口が出現するという異常すぎる光景だが、赤女(あかめ)はともかく、悠仁本人も驚いた様子は全くない。

 

「貴様には借りがあるからな」

 

「あ!また!」

 

宿儺の口は今度は悠仁の左手に現れた。

 

「小僧の身体を物にしたら、真っ先に殺して食ってやる」

 

「呪いの王に狙われるとは光栄だな」

 

宿儺からの宣告に対し、赤女(あかめ)は静かに返すだけである。悠仁は左手を叩き、今度こそ宿儺の口を黙らせた。

 

「やっぱこいつ有名なの?」

 

「両面宿儺は腕が4本、顔が2つある仮想の鬼神。だがそいつは実在した人間だ。1000年以上前の話だがな」

 

悠仁の質問に赤女(あかめ)は宿儺がどれほど脅威ある存在であるかを語る。

 

「呪術全盛の時代、術師が総力を挙げて奴に挑み、敗れた。宿儺の名を冠し、死後呪物として時代を渡る死蝋さえ、私たちは消し去ることができなかった。まごうことなき呪いの王だ」

 

宿儺について聞いた悠仁は実にシンプルな質問を投げかける。

 

「・・・先生とどっちが強い?」

 

「う~ん・・・今の状態ならともかく、全ての力を取り戻したら、私や悟の2人がかりでも厳しいだろうな」

 

「・・・負けちゃう?」

 

「・・・・・・」

 

悠仁の質問に対し、赤女(あかめ)は勝つと断言することなく、ただ黙っているだけだった。

 

「先生?」

 

「勝つさ」

 

勝つと断言したのは、夜蛾が待っている部屋から出てきた悟であった。

 

「お!五条先生!」

 

「や。待ってたよ」

 

「わざわざ待っていたのか」

 

「そりゃ待つさー。だって僕の生徒になるわけだし?」

 

「そのセリフは、悠仁が無事面談で合格できてから言え」

 

「はいはい、相変わらず真面目だね」

 

もう悠仁は自分の生徒であると気が早い様子の悟に赤女(あかめ)が冷静に指摘する。指摘された悟は肩を竦める。

 

「さあ、中に入るぞ。学長がお待ちだ」

 

蝋燭の明かりが灯った薄暗い部屋の奥では、相変わらず厳つい形相でかわいいとは言い難い人形を作っている夜蛾が待っていた。

 

 

悠仁が面談を行っている間の時間、(たつみ)は恵の様子を見に、彼の部屋までやってきた。(たつみ)は見舞いついでに彼の部屋で頼んだピザを食べている。

 

「すっかり良くなったな。安心したぜ」

 

「いや・・・見舞いに来るなら普通にしろよ。何で人の部屋でピザ食ってんだよ」

 

「遠慮せずに食えよ。見舞い品だ」

 

「だったらもっと消化にいいもんよこせよ。てか、お前が食ってんじゃねぇ」

 

自分の見舞いに来ているのにピザを取ったり、怪我人の前でピザを食べたりと、(たつみ)の行動にいろいろと文句を言っている恵。ピザの一切れを食べ終えた(たつみ)は少し真剣な顔をして、頭を下げた。

 

「・・・伏黒、ごめん」

 

「?」

 

「俺、お前のこと勝手に苦手意識を持って、いろいろと誤解してた」

 

恵と初めて会った時、彼の素っ気ない態度で(たつみ)は偏見で苦手意識を持っていた。しかし、今回の任務を通して、全てとまではいかないが、彼の人柄を知った。だからこそ偏見で彼を見ていた自分を恥じた。それゆえの謝罪だ。

 

「・・・別にいい。わかってもらおうとも思ってなかったしな」

 

謝罪を受けた恵は特に気にした様子はなく、相変わらず素っ気ない態度をとる。ただ、(たつみ)が言いたいのは謝罪だけじゃない。

 

「でも・・・自分を犠牲にしようなんてこと、もう二度とすんな」

 

2級呪霊と戦ったあの時、(たつみ)と悠仁の加勢がなければ、今頃は死んでいたかもしれない。それなのに自分のことよりも(たつみ)と悠仁たちの命を優先し、自分の命を蔑ろにした。(たつみ)はその点に対して怒っているのだ。

 

「俺はここに来たばっかだからお前のことはまだ何1つわからねぇけどよ・・・俺たちは同じ学校の仲間だろ。仲間が死なれたら、胸くそ悪ぃだろうが」

 

「・・・・・・」

 

「まぁそりゃ、経験が浅い俺じゃまだ頼りねぇだろうけどさ・・・ちょっとは頼ってくれよ。お前だって1人くらい、大事な人はいるだろ」

 

(たつみ)の言葉を聞いて恵は顔を俯かせ、自分がこの呪いの世界に足を踏み入れたきっかけを作った女性の姿を思い浮かべた。

 

「・・・善処はする」

 

恵はそう言って、ピザに手を伸ばし、一切れを口に運んだ。

 

「てか全然食ってねぇじゃん。もっと食えよ」

 

「そもそも病人にピザっつーのがおかしいだろ」

 

湿っぽい話を終わりにして、(たつみ)はいろいろな話題をあげ、恵がそれを受け流すのであった。

 

(・・・虎杖の奴、大丈夫かな?殴られてなきゃいいけど・・・)

 

(たつみ)は面談を受けている悠仁がうまくやっているか、少し心配になった。彼の予想が的中し、悠仁は現在、夜蛾の呪骸に殴られているのだが、それはまた別の話。

 

 

夜蛾の呪骸に殴られはしたものの、何とか入学を認められた悠仁は悟と赤女(あかめ)に寮の部屋に案内された。

 

「おおお!広い広い!」

 

部屋に案内された悠仁は部屋の広さにとてもはしゃいでいる。

 

「2、3年は今全員出払っているが、すぐ会えると思うぞ。人数少ないし」

 

「・・・でも悠仁が戦う必要なくない?宿儺の指は僕たちが取ってくるから、君はここで待ってればいいじゃん」

 

悟の言い分に対し、悠仁は少しムッとした表情をしている。確かにそれならば呪いに脅かされることもないだろうが、そんなことは悠仁の性分が許さない。

 

「いい。やるったらやる。ぐーたらしてる俺にボロボロの伏黒や和倉が指届ける絵面はウケるけどな」

 

「くく、確かに」

 

のんびりしてる悠仁にボロボロの恵や(たつみ)が宿儺の指を持ってくるというシュールな絵面を想像した悟は笑っている。

 

「・・・どちらにしても、悠仁が前線に出ないなんてことはありえないがな」

 

「あっ!試したな!!」

 

「そんな簡単に見つかるなら、とっくに全部見つけてるっちゅー話」

 

赤女(あかめ)の発言に自分は試されていたと思った悠仁は彼女に抗議しようとする。そこへ、悟が一から説明する。

 

「気配が大きすぎるもの、息を潜めているもの、すでに呪霊に取りこまれているもの。探すということに関して、これほど面倒なものもない。でも、今は君がいる。君の中の宿儺が、力を取り戻すために指の在り処を教えてくれる。君は器であると同時に、探知機、レーダーでもあるわけだ。だから、現場にいないと始まらない」

 

「そんな親切かぁ?こいつ」

 

「少なくとも友好的ではないな」

 

悟が一通り説明するが、最初に顕現した時もそうだが、宿儺は自分たちに対して友好的ではない。指の在り処を教えてくれないかもしれない。

 

「そこはwinwinの関係を築けると思う」

 

「また無責任を・・・」

 

どこまでも楽観的な考え方をする悟に赤女(あかめ)は呆れている。すると、隣の部屋から恵と(たつみ)が出てきた。

 

「お、虎杖!」

 

「げっ、また隣かよ」

 

「おお!伏黒!和倉!今度こそ元気そうだな!」

 

怪我が治った恵の姿を見て、悠仁は嬉しそうにしている。

 

赤女(あかめ)先生、部屋割りを決めてるのあなたでしたよね?和倉の件といい、どういうつもりです?」

 

「もぐもぐ・・・1年は1年でくっついた方がいいと思ってな。私なりの配慮だ」

 

「その配慮いりません。てかそれ俺のピザじゃないですか。勝手に食べないでください」

 

いつの間にか恵の部屋に置いてあったピザを勝手に食べている赤女(あかめ)の部屋決めに対して、恵は文句を言っている。その間にも悠仁は恵の部屋の中を覗く。

 

「おおお!ちゃんとしてる!」

 

「だろ?そう思うだろ?」

 

「だーから・・・迷惑だって」

 

恵の部屋を覗く悠仁と(たつみ)にも文句を言っているが、2人は聞く耳を持たない。

 

「ま、そんなことはいいじゃない!それより明日はこの5人でお出かけだよ♪」

 

「明日は4人目の1年生を迎えに行く」

 

まだ会ったことのない4人目の1年生。3人の注目はそこに集まった。

 

 

一方その頃、岩手県の盛岡市にある盛岡駅。ここでの駅に停車している電車の連結が終わり、東京駅に向かって出発する。出発した電車には、高専の制服を着た女子がいた。

 

「盛岡までで、既に4時間。ようやくあのクソ田舎ともおさらばね」

 

高専の制服を着た女子は高そうな駅弁を食べながら、これから向かう都会、東京に想い馳せている。

 

「午後には東京かぁ・・・スカウトされたらどうしよう。スタダとか」

 

彼女の名は釘崎野薔薇。到着が遅れていたという4人目の1年生である。




現在は対策が仮実施されてるようなので、画面が表示できていますが、DDoSアタックされていたと知った時はマジで嘆きました・・・。何してくれてんねんという怒りさえ覚えるほどです。おかげで予定が台無しです。本当、どうなってるんでしょうね・・・。
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