呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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鉄骨娘

東京の原宿。4人目の1年生を出迎えるために、悠仁を含めた1年生はここにやってきた。悟と赤女(あかめ)は少し席を外しているため、3人は2人が戻ってくるのを待っている最中だ。その最中3人は高専の生徒数の少なさについて話している。

 

「1年がたった4人って少なすぎねぇ?」

 

「だよな。学校ってもっと生徒がいるもんなのにな」

 

「じゃあお前らは今まで呪いが見えるなんて奴会ったことあるか?」

 

「・・・ねぇな」

 

「俺もねぇな。親父もそうだって知ったの最近だし」

 

「それだけマイノリティなんだよ、呪術師は」

 

日本の呪術師が多いと言えど、それでも世界規模で数えても呪術師は1割しかいない。ゆえに高専に所属する生徒が仮に10人以下だと言われたとしても何ら不思議ではない。

 

「ていうか俺が4人目って言ってなかった?」

 

「なんかバタバタしてて到着が遅れてるんだと」

 

「入学はずいぶん前から決まってたらしいぞ。こういう学校だしな。何かしら事情があんだろ」

 

これから会う4人目の1年生ついて話していると、悟と赤女(あかめ)が戻ってきた。

 

「お待たせー。お、2人とも制服間に合ったんだね」

 

今悠仁と(たつみ)が着込んでいるのは、高専の制服だ。

 

「おお!ピッタリ合ってるぜ!」

 

「でも、俺たちの制服、伏黒とは微妙に違うんだな。俺、パーカーついてるし」

 

「俺も白金高校の名残でトレーナーがついてるぜ」

 

2人の言うとおり、2人の制服は恵のものとは少し違う。悠仁は学ランの下にパーカーがついてるし、(たつみ)は羽織っている学ランの下には白金高校でもお世話になっているトレーナーがついている。

 

「制服は希望があればいろいろといじってもらうことができる」

 

「え?でも俺、そんな希望出してねぇけど」

 

「俺も俺も」

 

入学してすぐバタバタしていたために、(たつみ)や悠仁が制服のカスタマイズなんて知るわけもない。ではなぜカスタマイズされているのか。その答えを赤女(あかめ)がさも当然のように答えた。

 

「ああ、それは私が勝手にカスタマイズを頼んだ。この方が喜ぶと悟が言っていたのでな」

 

「どう?イカしてるでしょ?赤女(あかめ)が2人のためにいろいろ考えたんだよ?」

 

どうやら2人の希望を聞かずに彼女が制服をアレンジしたようだ。そしてその行動の元凶となっているのが、悟である。

 

「希望とはいったい・・・」

 

「・・・ま、いっか」

 

「気をつけろ。赤女(あかめ)先生は五条先生の友人というだけあって、こういうこと平気でするぞ。しかも善意しかないから質が悪い」

 

希望を出せるにも関わらず、相談もなしに勝手にカスタマイズされたことに対し、(たつみ)は疑問符を浮かべている。悠仁は特に気にした様子はないようだが。そんな2人に恵が教師2人の忠告をした。

 

「それよりなんで原宿集合なんですか?」

 

「本人がここがいいって」

 

「おっ!見たことねぇクレープがある!」

 

「ああ!ポップコーン食いたい!」

 

田舎者2人が都会にはしゃいではいるが、悟と赤女(あかめ)が合流したので、4人目の1年を迎えに移動を開始する。少し歩いていると、モデルのスカウトマンが1人の一般女性にモデルのスカウトを行っているところを見かける。

 

「あ、どうも~。今お仕事中ですか?」

 

「いえ、違いますけど」

 

「実は今、モデルさんを探していまして・・・自分、こういうものですけど・・・お姉さん興味ないですか?」

 

「今急いでるんで」

 

「話だけでも・・・」

 

スカウトマンがしつこく一般女性にモデルのスカウトを試みるが、一般女性は全く興味なし。すると、高専の制服を着込んだ女子生徒がスカウトマンの肩を掴み上げた。

 

「ちょっとあんた。私は?」

 

高専の女子生徒はモデルに興味があるのか、自分はいけるのかと聞いてきた。

 

(ワタシハ!!??)

 

女子生徒に掴まったスカウトマンは彼女に対し、妙な危機感を覚えた。

 

「モデルよモデル。私はどうだって聞いてんの」

 

「いえ・・・今・・・急いでるので・・・」

 

「なんだコラ。逃げんなよ。ハッキリ言えや」

 

「ひいぃぃぃ!!」

 

スカウトマンが逃げようとその場から離れようとするも、女子生徒は逃がさないと言わんばかりに彼の首根っこを掴み上げた。もうこれだけで戦力外通告を受けたようなものだ。こんな恥ずかしい現場を悠仁たちは目撃する。しかも4人目の1年生というのが、彼女なのだから声をかけることに非常に抵抗がある。

 

「マジか・・・俺ら今からあれに話しかけるのかよ・・・」

 

「ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」

 

「ちっ・・・おめぇらもだよ」

 

恥ずかしいと言い張っている田舎者2人組はパーティ用サングラスをかけていて、ポップコーンやクレープを持っており、原宿を満喫している。明らかに都会に浮かれている田舎者の姿である。その姿に恵は田舎者2人組に舌打ちをする。

 

「おーい、こっちこっちー」

 

「やばぁ、あの目隠しどうなってんのー?」

 

「・・・・・・(今度から他人の振りしよう)」

 

それでも1番目立っているのはやはり目隠ししている悟だ。非常に珍しがっている観光客を見て、赤女(あかめ)は目立たないように悟と歩くときは他人のふりをすると誓った。

 

 

4人目の1年生と合流した5人はひとまず移動し、彼女の荷物を有料ロッカーに預けた。荷物をしまったところで、彼女は自分の同期となる男3人と対面する。

 

「では、改めて・・・自己紹介」

 

「釘崎野薔薇。喜べ男子、紅一点よ」

 

短髪のブロンドヘアの女子生徒、釘崎野薔薇は非常に図々しい発言をする。

 

「俺、虎杖悠仁!仙台から!」

 

「和倉(たつみ)!生まれも育ちも岩見沢!」

 

「・・・伏黒恵」

 

自己紹介をする男子3人を野薔薇はじとーっとした目線で見つめる。

 

まずは悠仁・・・

 

(見るからに芋臭い。絶対ガキの頃鼻くそ食ってたタイプね)

 

次に(たつみ)・・・

 

(明らかなるガキ。絶対アリの巣に小便かけてたタイプね)

 

最後に恵・・・

 

(名前だけって。私、偉そうな男とか無理。きっと重油まみれのカモメに火を点けたりするんだわ)

 

男子3人に対して明らかな偏見を抱いている野薔薇はため息をこぼした。

 

「はぁーぁ・・・私ってつくづく環境に恵まれないのね・・・」

 

「おいなんで人の顔を見てため息つくんだよ・・・!」

 

目の前で失礼な態度をとる野薔薇に(たつみ)はこめかみが引くつき、突っかかろうとする。

 

「これからどっか行くんですか?」

 

恵の問いかけに悟は得意げに笑ってる。

 

「くっくっく・・・せっかく1年が4人そろったんだ。そのうち3人はおのぼりさんときてる。・・・行くでしょ、東京観光」

 

「「「!!!」」」

 

東京観光に行くという宣言に田舎者3人組は目を輝かせている。

 

「「「東京!東京!東京!フリーダム東京ー!!」」」

 

「え・・・」

 

「・・・・・・」

 

すごくはしゃいでいる田舎者3人組とは対照的に、恵は怪訝な顔をしており、赤女(あかめ)は何も言うまいと言わんばかりの顔をして黙っている。

 

「やったー!先生マジ感謝!!大好き!!」

 

「TDL!!TDL行きたい!!」

 

「バッカ!TDLは千葉だろ!中華街にしよう先生!!」

 

「中華街だって横浜だろ!!」

 

「横浜だって東京だろ!!お前知らねぇのか地図見ろ!!」

 

「全然違ぇわバカ!!横浜は神奈川だっつーの!!」

 

「それでは、行き先を発表します」

 

大はしゃぎの田舎者3人組を悟は行き先発表で黙らせる。田舎者3人組は地に片膝をついてひれ伏した。恵は呆れた様子で、赤女(あかめ)はただ3人をじーっと見つめている。

 

「六本木」

 

「「「六本木?」」」キラキラッ

 

行き先が田舎者にとって未知の領域となる六本木に田舎者3人組は目を輝かせている。ただ恵と赤女(あかめ)は知っている。この後の展開を。

 

 

6人が移動し、辿り着いた場所は、呪いの気配が立ち込める廃ビルである。そして田舎者にとっては悲しいことに、ここは六本木ではない。

 

「どうだ、恵」

 

「いますね、呪い」

 

「「「嘘つきいいいいいいいい!!!!!!」」」

 

「六本木ですらねー!!!」

 

「騙しやがったなぁ!!!」

 

「地方民を弄びやがってぇ!!!」

 

悟に騙された田舎者3人組は最初とは打って変わって嘆き喚いている。

 

「近所にでかい霊園があってさ、廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したってわけ」

 

「やっぱ墓とかって出やすいの?」

 

素早く気持ちの切り替えをした悠仁の質問に恵が答える。

 

「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって思う人間の心の問題なんだよ」

 

「あー、学校とかも似た理由だったな」

 

恵の答えに思い出したかのように悠仁の反応に野薔薇が反応する。

 

「ちょっと待って、こいつそんなことも知らないの?」

 

「実は・・・」

 

野薔薇の疑問に(たつみ)は悠仁の経緯を全て答えた。

 

「飲み込んだぁ!!??特級呪物を!!??」

 

全ての経緯を聞いた野薔薇は驚愕し、非情にわかりやすく気味悪がっている。

 

「キッショ!!!ありえない!!!衛生管理キモすぎ!!!無理無理無理無理!!!」

 

「んだとぉ?」

 

「これに関してはお前文句言えねぇぞ」

 

「同感」

 

野薔薇に突っかかろうとする悠仁だが、彼女がこのような反応をするのは至極当然なので彼が文句を言うのはお門違いである。

 

「お前たちがどこまでやれるか知りたい。実地試験みたいなものだと考えてくれ。野薔薇、悠仁、(たつみ)、3人で建物内の呪いを祓ってきてくれ」

 

「げっ・・・」

 

赤女(あかめ)の指名で野薔薇は嫌そうな反応をしている。特級呪物を飲み込んだ悠仁と組むのも嫌そうだ。

 

「あれ?でも呪いは呪いでしか祓えないんだろ?俺、呪術なんて使えねぇよ?」

 

「君はもう半分は呪いみたいなものだから。身体には呪力が流れているよ。でもま、呪力のコントロールは一朝一夕じゃできないから、これを使いな」

 

悟は悠仁の疑問に答え、彼の呪力問題を一時解消するために、あるものを渡した。それは、刀身に穴が二つ空いている短刀であった。

 

「おお!」

 

「呪具屠坐魔。(たつみ)の怨念刈りと同じ、呪力が籠った武器さ。これなら呪いにも利く」

 

「ダサ・・・」

 

悠仁は受け取った呪具屠坐魔のデザインを気に入っている様子だが、野薔薇は不評のようだ。準備ができ次第、指名された3人は廃ビルの中に入ろうとする。そこへ、赤女(あかめ)が悠仁を呼び止める。

 

「悠仁、お前に1つ警告がある」

 

「ん?」

 

「宿儺は出すなよ」

 

赤女(あかめ)が出す警告とは、やはり宿儺に関係することだった。

 

「あれを使えばその辺りの呪いなど簡単に葬れるが、近くの人間も巻き込まれる」

 

「わかった。宿儺は出さない」

 

赤女(あかめ)の警告に悠仁は今回は宿儺は出さないと誓った。こんなにも軽く言えるのは、宿儺の本質をまだ最後まで理解してないからなのかもしれない。

 

「?早くしろよー!」

 

「はいはい・・・」

 

「じゃ、行ってくるぜ!」

 

「いってらっしゃーい」

 

悠仁が閉じられていたシャッターを自慢の力で開け、3人は廃ビルの中へと入っていく。残った恵、悟、赤女(あかめ)はこの廃ビルの外で待機だ。だが恵は廃ビルに入っていった3人を心配している様子だ。

 

「・・・やっぱ俺も行きますよ」

 

「無理しないの。病み上がりなんだから」

 

「でも虎杖は要監視でしょ?和倉だけじゃ心許ない」

 

「別に監視目的で(たつみ)を出したわけじゃない」

 

今回の呪い討伐に置いて、悟や赤女(あかめ)があの3人を選出したのは、本当に3人の実力を試すためだ。

 

「実地試験というのも嘘ではない。ただ・・・試されているのは野薔薇だけだ」

 

だがしかし、悠仁と(たつみ)はあくまでもついでだ。2人が今知りたがっているのは、野薔薇がどこまでやれるかだ。

 

 

廃ビルの中に入った3人は潜んでいるという呪霊を探しに中に進む。悠仁は呪霊を警戒して、壁や扉などに隠れながら先に進んでいる。だが(たつみ)と野薔薇は臆することなく、ずかずかと先へ進んでいく。そんな中で野薔薇は愚痴をこぼしている。

 

「・・・あー、ダルぅ。何で東京きてまで呪いの相手なんか・・・」

 

「その言い方だとなんか別の目的があるっぽいな」

 

「は?何それ?呪い祓いに来たんじゃないの?」

 

野薔薇は男2人の疑問に答えることなく、あることを提案・・・というか指示を出してきた。

 

「時短時短。二手に分かれましょ。私は1人で上から1フロアずつ調べるから、あんたらは下から。さっさと終わらせて、ザギンでシースーよ」

 

「おい、ちょっと待てよ。もうちょい真面目にやれって」

 

「和倉の言うとおりだよ。呪いって危ねぇんだからよ。知らんのか」

 

カッチーーン

 

ダダダダダッ、ゲシィ!!

 

「「あーーー!!」」

 

「最近までパンピーだった奴らに言われたくないわよ!!さっさと行け!!」

 

男2人に発言に苛立った野薔薇はわざわざ階段を下りて男2人蹴りを放った。

 

「だからってわざわざ蹴ることねぇだろ!!」

 

「今日ずっとお前の情緒がわかんねぇんだけど!!」

 

「だからモテないのよ!!」

 

「バカにすんな!!モテてるわ!!!」

 

「なんで俺がモテねぇって知ってんの!!?」

 

野薔薇は男2人に悪態をついて上に上がっていった。(たつみ)は見栄を張った発言をし、悠仁は野薔薇の言ったことが当たっていたので驚いている。

 

「てめぇは言うほどモテんのかよ・・・クソが」

 

「昼間のおっさん見たろ。絶対モテてねぇよあいつ」

 

キレて上に上がった野薔薇に対し、悪態をついている男2人。

 

「・・・で、お前モテてんの?」

 

「いや、見栄を張っただけ。実際モテてない」

 

「世知辛いね・・・」

 

(たつみ)は自傷気味に言っているが、地元では年上相手ならそれなりに人気が高かった。本人は気づいてないようだが。男2人が話していると、頭上より刃が迫ってきた。

 

ザシュッ!!

 

刃が迫るより先に、感がいい悠仁は屠坐魔を抜き、刃を切り払った。悠仁と(たつみ)が互いに距離をとると、2人の間に先ほど刃を振るった人の肉体を持った虫のような呪霊が降ってきた。

 

【れ・・・しぃと・・・ご、りよ・・・う・・・】

 

(出た!呪い!)

 

呪霊の出現に悠仁は屠坐魔を構える。呪霊は悠仁に近づき、まだ残っている右手の刃を振るった。悠仁は刃を躱し、呪霊の胴体に屠坐魔を突き刺す。そしてそのままスライディングで呪霊の足元を通り抜けながら、胴体を裂く。さらに反撃の隙を与えず、悠仁は呪霊の後脚と前脚を屠坐魔で斬り、呪霊の態勢を崩した。

 

「はあ!!」

 

とどめに悠仁は高く跳躍し、呪霊の脳天目掛けて屠坐魔を突きさした。呪霊は悶えていたが、力尽きて動かなくなった。

 

「・・・うん。動けるね、俺」

 

呪霊を倒した悠仁はケロッとしており、余裕が感じられる。

 

「虎杖の奴、やるなぁ。俺も負けてらんねぇ!」

 

悠仁の戦いぶりを見て、(たつみ)が意気込んでいると、背後より、槍のような頭をした蛇型の呪霊が現れ、槍の頭で彼を刺し貫こうと迫った。(たつみ)はそれに勘づき、バク転で呪霊の突きを躱した。突きを躱された呪霊は進路を変えず、そのまま悠仁を刺し貫こうとする。

 

ザシュッ!!

 

(たつみ)は腰の怨念刈りを抜き、着地と同時に呪霊の尻尾に怨念刈りを突き刺し、呪霊の進行を妨害した。呪霊は尻尾の痛みで動きを止め、身体を起き上がらせた。その瞬間を狙い、(たつみ)は怨念刈りを抜き、呪霊の胴体を真っ二つに斬った。胴体を斬られた呪霊は地面をのたうち回るが、(たつみ)が怨念刈りを振るい、頭の槍や首を斬ったことにより、活動を完全に停止させる。

 

「よぉし!どんなもんだ!」

 

「おぉ、やるなぁ」

 

1人でそれなりの大きさがあった呪霊を祓い、(たつみ)はガッツポーズを取る。(たつみ)の戦いぶりを見て、悠仁は感心した声をあげた。

 

 

「悠仁と(たつみ)はさ、イカレてんだよね」

 

外で待機している悟は、悠仁と(たつみ)に対してこのような評価をした。普通だったらバカにしたような発言だが、この業界ともなれば話は別だ。

 

「異形とはいえ、生き物の形をしたものを、自分を殺そうとしてくるものを、一切の躊躇なく()りに行く。君みたいに昔から呪いに触れてきたわけじゃない。普通の高校生活を送ってきた2人の男の子がだ」

 

「才能があっても、この嫌悪と恐怖に打ち勝てず、志半ばで挫折した呪術師を、恵も見たことあるだろう?」

 

「・・・・・・」

 

呪術師はイカレ仕事。日夜嫌悪と恐怖に戦う日々など、当たり前のことだ。術師本人のモチベーション、そしてイカレ具合は非常に重要になってくるのだ。そのイカレ具合を見るための実地試験だ。だからこそ、迷いのなく呪いを祓える悠仁と(たつみ)は何も問題はない。

 

「今日は彼女のイカレっぷりを確かめたいのさ」

 

野薔薇のイカレ具合を確かめるための実地試験。駆り出された悠仁と(たつみ)は本当についででしかないのだ。

 

「でも釘崎は経験者ですよね?今さらじゃないんですか?」

 

「呪いは人の心から生まれる。人口に比例して、呪いも多く強くなる。恵ならわかるはずだ」

 

「くく、野薔薇にわかるかなぁ?」

 

野薔薇は経験者であるのは間違いない。だがここは都会。地方とでは勝手が違いすぎる。

 

「地方と東京とでは、呪いのレベルが違う」

 

 

廃ビルの上階、マネキンが多くある部屋。1人でやってきた野薔薇は複数あるマネキンに視線を向ける。彼女はわかっているのだ。あのマネキンの中に、呪いが紛れ込んでいることが。

 

「・・・おい、そこの呪い。真ん中のマネキンだよ。それで隠れてるつもり?」

 

真ん中に位置しているマネキンに野薔薇は呼び掛けるが、動く気配は全くない。動かないならば好都合。野薔薇は制服の袖口から2つの釘とトンカチを取り出す。

 

「来ないなら、このまま祓うわよ!」

 

野薔薇は2つの釘に自身の呪力を流し込み、トンカチで呪力が籠った釘をマネキンに向けて打ち放った。2つの釘は見事、真ん中のマネキンの頭にヒットする。マネキンは衝撃で仰け反るが、倒れない。同時に、マネキンに隠れていた呪いが動き出し、目が複数現れ、ぎょろりと動く。動き出したマネキンに、野薔薇が忠告を入れる。

 

「それ、抜いたほうがいいわよ」

 

パチンッ!

 

野薔薇が指を鳴らすと、マネキンの頭に刺さっていた釘が動き出し、奥へ奥へと食い込もうとする。

 

「私の呪力が流れ込むから」

 

バァン!!

 

釘が完全にマネキンの頭に打ちこまれたその瞬間、釘にこもった呪力はマネキンの頭を貫き、バラバラに砕いた。

 

(決まった・・・!)

 

呪いを祓った野薔薇は得意げな顔を浮かべている。

 

ゴソッ!

 

「!」

 

その直後、奥で物音が聞こえ、段ボールに傾けていた板が地面に滑り落ちる。目をこらえてよく見てみると、積んでいた段ボールに1人の男の子が隠れていた。

 

(子供・・・?遊びに忍び込んで呪いにってところか・・・)

 

野薔薇はこの子供の状況を察して、彼に近づき、声をかける。

 

「ほら、もう大丈夫。おいで」

 

子供は非常に怯えており、首を横に振った。拒絶の意を示した子供に野薔薇は少なからずショックを受ける。

 

「・・・子供は美人に懐かないってのは、本当みたいね・・・。虎杖と和倉呼ぶか」

 

このままでは子供を保護できないと思い、男2人を呼ぼうと行動に入る野薔薇だったが・・・

 

「待って・・・!置いていかないで・・・!」

 

子供の背後より、毛むくじゃらで鼻の穴が3つあるナメクジのような目を持った呪霊が壁をすり抜けて現れ、子供の頭を鷲掴みにした。野薔薇はすぐに呪霊を祓おうと行動に出ようとしたが、動きを止めた。なぜなら、呪霊は子供の首に鋭い爪を突きつけたからだ。つまりは人質である。

 

(・・・っ!人質⁉この呪い・・・知性がある!)

 

子供を人質に取った呪霊は憎たらしい笑みを浮かべ、子供の首をほんの少しだけ刺した。これ以上動くと子供の命はないぞと言わんばかりに。レベルと言っても、単純な呪力の総量の話だけではない。『狡猾さ』。東京の呪霊は地方の呪霊と比べ、知恵が回る。知恵をつけた獣は時に残酷な天秤を突きつけてくる。命の重さを掛けた天秤を。その状況が今まさに、目の前で行われている。

 

(クソクソクソクッソオオオオオ!!こんな呪い、全然大したことないのに!!4級・・・最低でも3級の下の下でしょ!それを自覚してるんだ!それゆえの、人質作戦!!)

 

子供を人質に取られ、思うように動けない野薔薇は葛藤する。このまま呪いを祓うべきか、子供を助けるべきか。

 

(落ち着けよ私・・・私が死んだら・・・その後子供も死ぬ・・・。子供が死んでも・・・私は死なない・・・。合理的に考えて・・・私だけでも・・・助かった方がいいでしょ・・・!)

 

合理性を考えて、野薔薇は子供を見捨てて呪いを祓うという考えたが・・・彼女はその考えとは全く逆に、呪具である釘とトンカチ、ポーチを全て地面に置いた。人情を捨ててまで非常になりきることが、彼女にはできなかった。

 

「丸腰よ。その子を逃がして」

 

野薔薇は両手をあげて丸腰であることを証明し、子供を離すように呪霊に言った。だが相手は狡猾な呪い。相手が丸腰だろうがなんだろうが・・・自分さえ生き残ることができれば、後はどうでもいいのだ。それゆえに、子供を解放することなどはしない。

 

(私のバカ・・・!ほら、逃がしてくんねぇじゃん!)

 

優勢に立った呪霊は憎たらしく、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

 

「・・・最期に・・・沙織ちゃんに会いたかったな・・・」

 

野薔薇が最愛の友達の名を思い、呟いたその時・・・

 

ドゴンッ!!

 

「!!」

 

呪霊の背後の壁が砕け、穴が開いた。これは、隣の部屋にいる悠仁が繰り出したパンチによるものだ。

 

「あれ?外した?」

 

ドゴォォォン!!

 

手ごたえがないと感じ取った悠仁は持ち前馬鹿力を使って、壁を壊してこの部屋に入ってきた。呪霊は慌てて子供に自身の爪を突き刺し、人質作戦に出ようとする。

 

ザンッ!!

 

だがそれよりも先に悠仁は呪霊の腕を屠坐魔で斬り落とし、子供を救出する。

 

カァンッ!!

 

その直後、(たつみ)が天井の通気口の換気口を蹴とばして部屋に進入し、そのまま呪霊の脳天にかかと落としを放ち、さらにもう人質が取れないように蹴とばして、子供から距離を取らせた。

 

「虎杖!子供は⁉」

 

「大丈夫か?」

 

悠仁の問いかけに子供は首を縦に頷いた。首を少し刺されただけで、命に別状はない。

 

「大丈夫っぽい」

 

「よし!なら後はこのクソ野郎を祓うだけだ!」

 

(たつみ)は腰の怨念刈りを抜き、構える。一気に劣勢になった呪霊は起き上がり、勝てないと判断して壁をすり抜けて外に逃げようとする。

 

「!逃げるぞ!」

 

「逃がすか!!虎杖!その腕よこせ!!」

 

「へ?」

 

悠仁は言われた通りに自分が斬り落とした呪霊の腕を野薔薇に差し出した。野薔薇は学ランに隠し持っていた物を取り出し、呪霊の腕に乗せた。取り出したものとは、如何にもな藁人形であった。

 

「藁人形?」

 

「陰湿!」

 

芻霊(すうれい)呪法―――『共鳴り』!!」

 

カァァァン!!

 

野薔薇は呪霊の腕に乗せた藁人形に向けて、呪力が籠った釘をトンカチで叩き打ち込んだ。

 

 

廃ビルの外で待っていた3人は野薔薇たちが相手にしていた呪霊が出てきたところを確認した。

 

「お」

 

「祓います」

 

「待て」

 

恵が呪霊を祓おうと動こうとすると、赤女(あかめ)がストップをかけた。すると・・・

 

ドクンッ!ザクッザクッザクッ!!!!

 

【オアアアアアアアアアアアア!!!!!】

 

野薔薇が釘を打ち込んだ藁人形と連動するかのように、大きな棘のようなものが呪霊の身体を体内から貫いた。これが致命打になった呪霊は塵となって消えた。

 

トンカチを使い、釘を飛ばし、飛ばした釘から呪力を流し込み、時には対象者の欠損した一部を利用し、藁人形で呪い殺す術式。これが野薔薇の術式、『芻霊(すうれい)呪法』。

 

「・・・・・・」

 

「これが野薔薇の術式か」

 

「いいね。ちゃんとイカレてた」

 

野薔薇が呪霊を祓ったことにより、悟は満足気な笑みを浮かべている。

 

 

私が小1の頃、東京から村に越してきて沙織ちゃん。

 

お人形さんみたいに、かわいくて、聖母みたいに優しかった沙織ちゃん。

 

そんな沙織ちゃんを、村の奴らは仲間外れにした。

 

『田舎者をバカにしている』と、勝手に被害妄想を膨らませて、沙織ちゃんを追い出した。気持ち悪いったらありゃしない。

 

聞いたことない手作りのお菓子を、お店のはもっとおいしいんだよと笑ってごちそうしてくれた沙織ちゃん。

 

あの村にいたら、私は死んだも同然。

 

沙織ちゃん・・・私、東京に来たよ。

 

いつか会えたら・・・あの時言ってたお店、連れてってね。

 

 

呪霊を祓い、実地試験が終わった直後、悠仁と(たつみ)は野薔薇に突っかかる。

 

「だから言ったろ?1人は危ないって。真面目にやれって」

 

「1人は危ないって言われてないわよ!」

 

「言っ・・・・てなかった⁉」

 

「どっちにしても結果的に危なかったんだからな!反省しやがれ!」

 

「うっさいわねぇ!細かいことをぐちぐちと!」

 

「つーか、物言いてぇのはお前もだぞ虎杖!」

 

「え?俺?」

 

自分も矛先が向けられるとは思わなかった悠仁はきょとんとしている。

 

「通気口がいいっつったのに、なんでわざわざ壁ぶっ壊すんだよ!!ありえねぇだろ!!」

 

「最短なんだからしょうがないだろ!!」

 

「だからってわざわざ素手で壁ぶっ壊すか普通!!?」

 

「そーよ!何食って育てば素手で壁ぶち破れんのよ!!」

 

「鉄コンじゃなかったんだよ!!」

 

「鉄コンじゃなくても無理よ、普通!!」

 

「おまけに無傷とか・・・化け物かよ!!?」

 

「化け・・・そこまで言う!!?」

 

揉めあっている田舎者3人組の姿を見て子供は苦笑いを浮かべている。

 

「・・・しかしさぁ・・・俺もしこたま聞かれたけどさぁ・・・お前何で呪術高専来たんだよ?」

 

「あ、それ俺も気になった」

 

「なんでって・・・」

 

悠仁の問いかけに対し、野薔薇は大声を張り上げて、高専に入学した理由を話す。

 

「田舎が嫌で東京に住みたかったから!!!!!!!!」

 

「「えーーーーーーーーー!!!???」」

 

まさかの理由で高専に入学した野薔薇に悠仁と(たつみ)は驚愕する。

 

「お金のこと気にせず上京するには、こうするしかなかったの♡」

 

「かわいこぶんなよ、気持ちわりぃ」

 

「あ?(怒)」

 

「そんな理由で命かけられんの?」

 

「かけられるわ。私が私であるためだもの」

 

呆れるような悠仁の問いかけに、野薔薇は笑みを浮かべ、迷いなく答えた。

 

「そういう意味では、あんたらにも感謝してる。私が死んでも、私だけが生き残っても、明るい未来はなかったわ。ありがとう」

 

野薔薇は子供の頭を優しくなで、自分たちを助けてくれた悠仁と(たつみ)に優しい笑みを浮かべた。

 

「まぁ、理由がなけりゃ偉いってわけでもねぇか」

 

「そうだな。何とかなったし、それでいいか」

 

「はい!お礼言ったからチャラ―!貸し借りナーシ!」

 

せっかくの雰囲気が野薔薇の性格のおかげで全て台無しになり、男2人は呆れる。

 

「なんだ、こいつ・・・」

 

「きっとバカなんだよ・・・」

 

何はともあれ、廃ビルにいる呪いは全て祓った。もうここには用がないため3人は子供を連れて外に出るのであった。

 

 

恵、悟、赤女(あかめ)は子供を家まで送り届けている。悠仁、(たつみ)、野薔薇は3人が戻ってくるまで待機しているのだが、野薔薇は落ち着きなく貧乏ゆすりをしている。

 

「・・・私、お腹減ると機嫌が悪いの知ってた?」

 

「知るかよ・・・」

 

「それ以前に不機嫌じゃない時あんのか・・・?」

 

情緒が意味不明な野薔薇に男2人は何度目かわからないあきれ顔をする。しばらくしていると、悟たちが戻ってきた。

 

「お疲れサマンサー!子供は送り届けたよー。今度こそ飯行こうか!」

 

「ビフテキ!」

 

「シースー!」

 

「天ぷーら!」

 

「任せなさーい!」

 

田舎者3人組はそれぞれが都会で食べたいものの希望を言った。3人のノリに悟もノリノリである。

 

「恵はどうする?悟の奢りだぞ」

 

「・・・・・・」

 

赤女(あかめ)は恵が何が食べたいのかと尋ねた。恵は何も答えず、スマホをいじっている。赤女(あかめ)は恵のスマホ画面を確認する。

 

「・・・・・・よし、じゃあ行くとするか」

 

「あ・・・」

 

その直後、赤女(あかめ)は悟と一緒に田舎者3人組を連れて都会の店に行こうとする。置いていかれそうになった恵は慌てて追いかける。

 

「あ、今日1番の収穫忘れてた。あんたら、私の荷物取ってきてよ」

 

「はあ?なんで俺らが?貸し借りなしだろ?」

 

「私の呪力で勝てたのよ。文句ある?」

 

「おいしいとこ持ってっただけじゃねぇか」

 

「俺らの実力知らねぇだろうが。なぁ、伏黒」

 

「ん?伏黒?どうしたんだよ?」

 

「別に」

 

「出番がなくて拗ねてんの」

 

「ププー、子供~」

 

「それも恵らしさだ」

 

「「ははは!」」

 

6人は都会のお店に行く道中、愉快な話で盛り上がった。しかし・・・その翌日、賑やかなこの瞬間が一気に崩れ去る出来事が起こることになるとは、この時の1年生たちはまだ知らない。

 

 

記録

 

2018年 7月

 

西東京市、英集少年院

 

同・運動場上空

 

特級仮想怨霊(名称未定)

その呪胎を非術師数名の目視で確認。

 

緊急事態のため、

高専1年生4名が派遣され、

 

内1名 死亡




じゅじゅさんぽ

野薔薇「虎杖、和倉、私はパーを出すぞ」

(たつみ)(虎杖、釘崎を先に潰すぞ)

悠仁(・・・っ)

3人「ジャンケンポンッ!」

悠仁、(たつみ)、チョキ

野薔薇、グー

野薔薇「よっしゃああ!!」

悠仁「だあああああ!!」

(たつみ)「きったねぇ!フェイントかよ!!」

晩御飯、すしに決定

悟「すしかぁ。銀座のいつものとこでいっかぁ」

赤女(あかめ)「いや、生徒も一緒なんだ。もっと高いとこでもいいんじゃないか?」

悟「あれ?もしかして奢られる気満々?赤女(あかめ)には奢らないけど?」

赤女(あかめ)「え?」

悟「え?」

野薔薇「ザギン、フゥー!」

(たつみ)「まぁ、すしでもいっか」

悠仁「俺、回転ずしがいい」

野薔薇「あぁん⁉けっ!虎杖お前ほんと、けっ!伏黒も何か言えよ!」

(たつみ)「虎杖、回転ずしはいつでも食えるだろ、安いんだから」

恵「俺もさすがにどうせならうまい方が。五条先生の金だし」

悠仁「カップ焼きそばと焼きそばが別物のように、回転ずしも別物なんだよ!」

野薔薇「私はすしが食いてぇんだよ」

悠仁「すしは食事だけ!回転ずしはレジャーなんだよ!遊園地だのTDLだの!」

恵「ふわぁ~・・・」

(たつみ)「早くしろよ・・・眠・・・」

悠仁「てか釘崎、ド田舎出身って言ってたけど、回転ずし行ったことあんの⁉」

野薔薇「うっ・・・!」

悟「僕のフェイバリットはすしおーだが初めてならりっぱずしだろうね」

赤女(あかめ)「私も初めて行ったのはりっぱずしだな。今も気に入ってる」

悠仁「先生たちわかってんじゃん」

野薔薇「おいまだ行くとは・・・」

悠仁「釘崎よく聞け・・・りっぱずしはな、すしが新幹線に乗ってくるんだ!」

野薔薇「んなっ!!?」

野薔薇、カルチャーショック!

悠仁「運転士さーん!この子回転ずし初めてなんだ!国道沿いの駐車場のバカでかいりっぱずしまで!!」

晩御飯、回転ずしに決定!

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