呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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呪胎戴天

2018年 7月

 

西東京市に位置する英集少年院で特級仮想怨霊(名称未定)の呪胎が現れるという緊急事態が発生し、高専1年生4名が派遣されてこの場にやってきた。暗雲が立ち込め、雨が降り続いている英集少年院の現状を、頬が痩けて、実年齢より上に見えるような男性が説明する。

 

この男の名は伊地知潔高。高専時代では悟と赤女(あかめ)の後輩で、今も変わらず、呪術高専東京校の補助監督を務めている。

 

「我々の窓が呪胎を確認したのが3時間前。避難誘導9割の時点で、現場の判断により施設を閉鎖。半径500メートル以内の住民の避難が完了しています」

 

「伊地知さん、質問。窓ってなんすか?」

 

伊地知の説明の途中、悠仁は手をあげて気になった単語を質問する。

 

「窓というのは、呪いを視認できる高専関係者のことです。術師ではないですが」

 

「ほぉー、なるほど・・・」

 

「続けますよ」

 

質問を答え終え、伊地知は状況の説明を再開する。

 

「受刑在院者第二宿舎。5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されており、呪胎が変態を遂げるタイプの場合、特級に相当する呪霊に成ると予想されます」

 

((特級・・・!))

 

特級相当の呪霊に成る可能性に対し、恵と野薔薇は固唾を飲んでいる。特級の意味を理解している経験者2人はともかく、呪術師として未熟な(たつみ)と悠仁はいまいちピンとこないでいる。

 

「なぁ、俺特級とかいまいちよくわかってねぇんだけど」

 

「俺も俺も」

 

「「・・・・・・」」

 

まだまだ素人な2人に恵と野薔薇は呆れた様子だ。わかっていない2人のために、伊地知がわかりやすく等級について、通常兵器が呪霊に有効とした場合と仮定して説明する。

 

「では、バカでもわかるように説明しましょう。

まずは4級。木製バットで余裕です。

3級。拳銃があればまぁ安心。

2級。散弾銃でギリ。

1級。戦車でも心細い。

そして特級。まぁ、クラスター弾での絨毯爆撃でトントンでしょうかね」

 

「ヤッベぇじゃん!」

 

「そんな危険な任務を新入りの俺らが⁉」

 

伊地知の説明で特級がどれほど危険な存在であるか、そして今回の任務がいかに難易度が高いのか理解した悠仁と(たつみ)は驚愕する。

 

「本来、呪霊と同等級の術師が任務にあたるんだ。今日の場合だと五条先生と赤女(あかめ)先生とかな」

 

「そっか・・・」

 

「で、その五条先生や赤女(あかめ)は今どこにいるんだ?いないんだけど」

 

(たつみ)の言うとおり、本当ならこの任務を担当するはずの悟と赤女(あかめ)の姿はどこにもなかった。

 

「2人とも別々に出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人材じゃないんだよ、あの2人は」

 

どうやら2人は別任務でそれぞれどこかに出張に出かけているようだ。悟は呑気にお土産は期待するなと言っていたが。

 

「残念ながら、この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々あります。ただ、今回は緊急事態で異常事態です。絶対に戦わないこと。特級と会敵した時の選択肢は、『逃げる』か『死ぬ』かです」

 

伊地知の忠告に恵以外の3人は冷や汗をかいている。話を聞くだけでもこれが危険な任務であることが理解できるからだ。

 

「自分の恐怖には、素直に従ってください。君たちの任務はあくまでも生存者の確認と救出であることを忘れずに」

 

伊地知がこの任務の目的を話していると・・・

 

「あの・・・あの!正は!!?」

 

「ダメです!下がって!下がってください!」

 

「正は・・・息子の正は大丈夫なんでしょうか!!?」

 

在院者の母親と思われる女性が緊迫した様子で息子の安否を尋ねている。数名の補助監督が女性を入らせないように動いている。これを見た悠仁は悲しそうな顔をして口をつぐんでいる。

 

(面会に来ていた保護者です)

 

伊地知は悠仁の前に立って在院者の母親に嘘も入り混じった現状を簡潔に説明して、彼女を入らせないようにする。

 

「お引き取りください。何者かによって施設内に毒物が撒かれた可能性があります。現時点では、これ以上のことは申し上げられません」

 

「そんな・・・うぅ・・・どうして・・・どうしてこんなことに・・・!」

 

母親は息子が毒によって死んだかもしれない可能性に、顔に両手を覆って涙を流す。息子を思う母親の涙に、悠仁は強く決断する。あの人の息子を、絶対に助けると。

 

「・・・伏黒、和倉、釘崎・・・助けるぞ!」

 

「おう!」

 

「当然!」

 

助けたいという気持ちは(たつみ)と野薔薇も同じで、強く意気込んでいる。

 

「・・・・・・」

 

その中で恵だけは返事を全く返そうとはしなかった。

 

 

1年生4人と伊地知は英集少年院の中に入り、目的地である第二宿舎まで移動する。第二宿舎の中に入るのは1年生だけ。補助監督の伊地知は外で待機だ。

 

「お気をつけて。帳を下ろします」

 

第二宿舎の中に入ろうとする1年生を見送った伊地知は結界術の1つ、帳を下ろす準備に入る。

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

伊地知が術を唱え終えると、空の空間が歪み、夜の空間が英集少年院を覆い尽くしていく。

 

「な、なんだ⁉まだ昼なのに、夜になっていくぞ⁉」

 

「帳だ。今回は住宅地が近いからな。外から俺たちを隠す結界だ」

 

「へぇー!すごいなぁ!」

 

「無知め」

 

帳の存在を知らない(たつみ)は驚き、悠仁ははしゃいでいる。そんな素人2人に野薔薇は呆れている。

 

「玉犬」

 

恵は犬の手影絵を作り、影から犬の式神、白の玉犬を召喚する。

 

「お、久しぶりだなー、お前!」

 

「呪いが近づいたらこいつが教えてくれる」

 

「そっかそっかー。おー、よすよすー」

 

「ほーら、わしゃわしゃー。頼りにしてっからなー」

 

(たつみ)と悠仁は登場した玉犬をもふもふと撫でる。玉犬は特に抵抗することなく大人しく撫でられている。

 

「行くぞ」

 

4人は扉を開け、玉犬を先行させて第二宿舎の中に入っていく。

 

「待て!」

 

中に入ってすぐに、恵が3人にストップをかける。立ち止まった3人は目の前に広がっている光景を見て、驚愕する。

 

「うぉっ⁉」

 

「なっ⁉」

 

「げっ⁉なにこれ⁉」

 

4人が見た光景とは、宿舎とは思えないほどに広く、数多くの建造物が数多くのパイプと絡み合い、立ち並んでいる。まるで暗くて歪な住宅街のような。

 

「ど、どうなってるんだ?2階建ての寮の中だよな?ここ」

 

「にしたってこれはおかしすぎるだろ・・・!なんで中に建造物が・・・」

 

「お、お、お、落ち着け!メゾネットよ!」

 

「違ぇよ・・・」

 

寮の中とは思え名ほどに歪な光景に3人は困惑しているが、この光景に恵は心当たりがある。

 

(呪力による生得領域の展開・・・こんな大きなものは初めて見た・・・)

 

ここが宿舎の中であるのは間違いない。ただ中に入った瞬間、自分たちはその生得領域の中に閉じ込められたのだと恵は推察する。と、ここまでの考えに至ると、恵はあることに気付いた。

 

「!扉は⁉」

 

「え?」

 

4人が先ほど入ってきた扉を確認しようと振り返った。だがそこに扉などなく、代わりにあるのは乱雑に配置されて道を閉ざしているパイプだけだった。

 

「⁉ド、ドアが・・・なくなってる!!?」

 

「なんで!!?私たち、ここから入ってきたわよね!!?」

 

「ドアはどこに消えちまったんだ!!?これじゃ出られねぇじゃん!!」

 

出口であるドアがなくなり、わけがわからず困惑する3人。

 

「「「どーしよう、あそれ、どーしよう」」」ズンチャカズンチャカ♪

 

「大丈夫だ」

 

困惑するあまりなぜか踊り出す3人を恵が落ち着かせる。

 

「こいつが出入り口の匂いを覚えてる」

 

「「「あらま~♡」」」

 

玉犬が出入り口の匂いを覚えているおかげでひとまずは出られなくなるという心配はなくなった。優秀な玉犬に3人は大はしゃぎする。

 

「わーしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!」

 

「よ~~~しよしよしよしよしよし!お前はいい子だぞ~!」

 

「ジャーキーよ!!ありったけのジャーキー持ってきてー!!」

 

「緊張感!!!」

 

緊急事態というのにまったく緊張感がない3人に恵が注意する。

 

「やっぱ頼りになるなぁ、伏黒は」

 

「!」

 

「お前のおかげで人が助かるし、俺も助けられる」

 

「・・・・・・」

 

屈託のない笑みを浮かべている悠仁の言葉に恵は何もしゃべらなかった。まるで、3人の思惑とは全く違うことを考えているような。

 

「・・・進もう」

 

4人は呪霊に警戒しつつ、玉犬を先行させて、領域と化した宿舎の先へと進むのであった。

 

 

玉犬の先行の下、辿り着いた先は広間のような場所であった。この場所に辿り着いた4人は誰が見ても異常すぎるものを目にする。その異常すぎるものとは・・・血まみれで下半身がなくなった在院者の遺体であった。すぐそばには、歪に丸まった何かが2つ置いてあった。少年院の服に人の顔、足、手、骨が見えていることから、この歪なものは在院者であることは明らかであろう。

 

「・・・っ!」

 

「ひ、ひでぇ・・・!」

 

「惨い・・・!」

 

「・・・3人・・・でいいんだよな?」

 

異様すぎる人の死体を見て、(たつみ)と野薔薇は吐き気が込み上げてくる。4人の中で、恵は冷静でいる。悠仁は上半身だけの死体に駆け寄り、状態を確認する。その際に、在院者の名札が目に移った。在院者の名は・・・『岡崎 正』。この名前を見て、悠仁が真っ先に思い浮かべたのは、外にいた在院者の母親だ。

 

『正は・・・息子の正は大丈夫なんでしょうか!!?』

 

そう、この死体はあの母親の息子だったのだ。その息子がこのような惨い姿になってしまっては、母親はきっとさらに悲しみ、報われない気持ちでいっぱいになるだろう。だが悠仁の中では、次にやることは決まっていた。

 

「・・・この遺体、持って帰る」

 

「え?」

 

「虎杖?何言ってんだ?」

 

悠仁は正の遺体を持って帰ると言い出した。任務の内容はあくまでも生存者の確認、そして救出にある。遺体を回収することは含まれていない。悠仁の発言に戸惑いを見せる(たつみ)と野薔薇。

 

「あの人の子供だ」

 

「でも・・・」

 

「顔はそんなにやられてない。遺体もなしに死にましたじゃ、母親としたら納得できねぇだろ」

 

「言いたいことはわかるけど・・・でも・・・」

 

断固として考えを曲げる気がない悠仁。そんな悠仁に恵は彼のパーカーのフードを引っ張り、遺体から引きはがす。

 

「うわっ⁉」

 

「後2人の生存者を確認しなきゃならん。その遺体は置いてけ」

 

どこまでもドライな対応をする恵に悠仁は異議を唱える。

 

「冗談言うな!!振り返れば来た道がねぇんだぞ!!?後で戻る余裕はねぇだろ!!」

 

「後にしろじゃねぇ!置いてけって言ってんだ!ただでさえ助ける気のない人間を死体になってまで救う気は俺にはない!」

 

どうやら恵は3人と違って在院者を助けようという気持ちは一ミリも持ち合わせていないようだ。それも死体になったとすればなおさらだ。悠仁は彼の発言に反応して、彼の胸倉を掴み上げる。

 

「助ける気がない人間だと⁉どういう意味だ⁉」

 

「お、おい!虎杖も伏黒もやめろ!」

 

一触即発の雰囲気が漂い、(たつみ)は2人を止めようと仲裁に入る。

 

「ここは少年院だぞ。呪術師には現場のあらゆる情報が事前に開示される」

 

恵は死体になった正を持って帰らない理由を悠仁に明かす。

 

「岡崎正。そいつは無免許運転で下校中の女児をはねてる。二度目の無免許運転でだ」

 

「・・・っ!」

 

「お前は大勢の人間を助け、正しい死に導くことを拘ってるな。だが、自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする⁉」

 

岡崎正は一度無免許で車を運転したことがある。1回目は厳重注意で済んだかどうかはわからないが、少年院に入れられた原因はその二度目の無免許運転だ。それだけじゃない。その無免許運転が原因で下校中の女児をはねてしまった。1回目ならまだしも、2回目でこれだ。少年院に送られてもしょうがないことをした悪人なのだ。ゆえに、在院者を助ける理由が恵には持ち合わせていない。

 

「・・・っ!じゃあなんで俺は助けたんだよ!!!??」

 

悠仁の反論ともいえる問いかけに対し、恵はただ彼を睨みつけるだけで、何も答えようとしなかった。そんな彼らを(たつみ)が引きはがす。

 

「お前らいい加減にしろよ!!今はそんなことやってる場合じゃねぇだろ!!!」

 

「そうよ!!あんたらバッカじゃないの!!?少しは時と場所を弁えたらどうな・・・」

 

ドプンッ!

 

野薔薇が(たつみ)の意見に同意し、場を沈めようと近づこうとした時、彼女は何かに引きずられるに地面に飲まれていった。

 

「・・・釘・・・崎?」

 

「・・・おい・・・今の・・・まさか・・・」

 

野薔薇が突然地面に飲みこまれる光景を目の当たりにした(たつみ)は焦りが生じる。玉犬を見張りに付けていた恵は特にだ。

 

(バカな・・・⁉呪いの気配は玉犬が・・・)

 

恵が玉犬がいる方法に顔を向けて見ると、玉犬は大量の血を流し、白目を向いて壁に埋め込まれていた。恵は一目見てわかった。白の玉犬はもう機能しておらず、動かすこともできないと。同時に、強烈な危機感を感じ取った。この場にいては危険だと。

 

「虎杖!!和倉!!逃げるぞ!!釘崎を探すのはそれから・・・だ・・・」

 

【・・・・・・】

 

「「!!」」

 

恵がこの場から離れようと悠仁と(たつみ)に伝えようとした時、3人の間にいつの間にか呪霊が現れた。人に近い姿をしているが、異質だ。白い肌に足には布のようなものが巻かれており、目は4つついている。何よりも異常なのが呪力量。これまで会って来たそんじょそこらの呪霊とは格が違う。一目見ただけでもわかる。この呪霊は・・・特級に分類する呪胎だったものが呪霊と成った存在であると。

 

(間違いない・・・特級だ・・・!動けねぇ・・・!)

 

見ただけで恐怖が募るほどの特級呪霊を相手に、恵は大きすぎる恐怖心によって、冷や汗をかき、その場で動けないでいる。

 

(動け・・・動けよ・・・!こんな奴・・・あのサイボーグと比べたら全然大したことねぇのに・・・何で動かねぇ・・・!)

 

(たつみ)が白金高校で対面したサイボーグも特級に分類される呪霊だ。その力は、今目の前にいる特級呪霊よりも遥かに上だ。だが(たつみ)がサイボーグ相手に恐怖もなく動けたのは・・・強い憎悪と嫌悪に支配されていたからだ。フィジカルギフテッドに目覚めたとしても、その力は不完全すぎる。不完全故に、(たつみ)の身体の中で恐怖を敏感に感じ取り、身体が震えている。ゆえに動くことができない。

 

(動け・・・!動け、動け、動け、動け・・・!!)

 

悠仁も目の前の特級呪霊を相手に恐怖しており、動こうと思っても、咄嗟に動くことができない。必死に動くように念じる悠仁が思い浮かべるのは、祖父の遺言だ。

 

『人を助けろ』

 

その言葉が頭によぎった時、悠仁は辛うじて手を動かし、屠坐魔の柄を握りしめる。

 

「うああああああああああああああああ!!!!!!」

 

悠仁は自身の恐怖を無理やり振り払うかのように、屠坐魔を抜き、刃を特級呪霊に向けて振るった。

 

ザシュッ!!!!

 

「・・・虎、杖・・・?」

 

「う・・・嘘・・・だろ・・・?」

 

悠仁が振るった屠坐魔は特級呪霊には通用しなかった。いや・・・それどころか屠坐魔は特級呪霊の手によって折られ、屠坐魔を持った悠仁の手首が真っ二つに斬り落とされていて、彼の欠損個所から大量の血が溢れ出てしまっている。何をされたのか全く分からない。わからないからこそ、余計に恐怖が煽られていくのだ。

 

 

一方その頃、呪霊によって暗い空間に引きずり降ろされた野薔薇は辺りを見回しながら歩いていた。ここがどこなのかはわからないが、少なくともここが宿舎の中であることだけはわかっている。

 

「ちょっと・・・どこよここ・・・真っ暗で何も見えないんだけど・・・」

 

彼女が辺りを見回していると、背後で呪いの気配を感じ取った。

 

(!呪いの気配!)

 

野薔薇は釘とトンカチを手に取り、現れた呪霊を対面しようと後ろを振り返った時、彼女は自分の目を疑った。なぜなら、暗闇の中でうっすらと見える呪霊の数が、彼女のキャパを越えていたからだ。

 

(何・・・この数・・・!)

 

1人で戦うことを強いられているこの状況下。彼女も危機に瀕しているのであった。

 

 

特級呪霊と対面し、恐怖で動けなかった(たつみ)と恵。その中で無理やりながらに恐怖を振り払おうとして、動いたために片腕を斬り落とされた悠仁は腰のベルトを外し、片腕にベルトをきつく締めあげて応急で止血する。

 

「ここまで近づかれたらもう逃げられねぇ・・・!おい宿儺!俺が死んだらお前も死ぬんだろ⁉それが嫌なら協力しろよ!!」

 

悠仁はこの場を何とか切り抜けるために自分が抑え込んでいる宿儺に協力を要請する。悠仁の頬から宿儺の目と口がぐぱっと出現する。

 

「断る」

 

「!!」

 

宿儺から返ってきた返事は拒絶であった。それもそのはずだ。ここで悠仁が死んでも、彼にとっては何の痛手にもならないのだ。

 

「お前の中の俺が終わろうとも、切り分けた魂はまだ18もある」

 

悠仁が飲み込んだ指は2本。行方がわからない指は18本。つまりここで悠仁が死んだとしても、残り18本のうち1本を誰かが取り込めば、宿儺は再び蘇る。ゆえに宿儺が悠仁たちを助けるメリットは一切ない。そして何より、悠仁たちが生きようが死のうが、宿儺にはどうでもいいのだ。

 

「とはいえ、腹立たしいことにこの身体の支配者は俺ではない。代わりたいのならば代わるがいい。だがその時は・・・呪霊より先にそこのガキ共を殺す」

 

今この場で悠仁が宿儺に身体の主導権を渡してしまえば、宿儺は呪霊ではなく恵と(たつみ)を殺しにかかるだろう。これは脅しでも何でもない。宿儺ならば本気でやるだろう。それだけではない。狙いの矛先は野薔薇にも向けられる。

 

「次に女。あれは活きがいい。楽しめそうだ」

 

大事な仲間が宿儺の牙に向けられる。そんなことを悠仁が黙っているわけがない。

 

「んなこと俺がさせねぇよ・・・!」

 

「だろうな。だが俺にばかり構っていると、それこそ仲間が死ぬぞ?」

 

悠仁が宿儺に注意を向けている間にも、特級呪霊は大きく息を吸い込み、頬を膨らます。そして、自身の頬に収束させた呪力を3人の間にふっと吹きかけた。

 

ドオオオォォン!!!!!

 

特級呪霊が放った呪力の威力は想像以上で、呪力が着弾した床はふっと息を吹いたとは思えないほどに大きく抉られていた。さらに恐ろしいことに、この呪霊は術式を一切使っていない。ただ呪力を飛ばしただけだ。

 

(・・・呪いがわからない俺でもわかる・・・。今のは姉さんや伏黒、釘崎のものとは全然違う・・・!多分、呪力を飛ばしただけだ・・・!)

 

特級呪霊の恐ろしさを目の当たりにした恵と(たつみ)は軽く放心する。特級呪霊は力の差を見せつけて、ケタケタと嘲笑っている。

 

「伏黒!!!和倉!!!」

 

「「!!」」

 

放心していた2人は悠仁の必死の呼びかけで意識が戻る。

 

「釘崎連れてここから逃げろ!!3人がここを出るまで、俺がこいつを食い止める!!出たら何でもいいから合図してくれ!!そしたら・・・俺は宿儺に代わる」

 

3人が宿舎から出るまで特級呪霊を足止めするという無謀なことを言いだした悠仁に恵と(たつみ)はその提案を否定する。

 

「何言ってんだ!!お前を置いて逃げるなんてできるか!!」

 

「それだけじゃない!!特級相手に片腕で足止めなんて、できるわけねぇだろ!!」

 

「よく見ろって。楽しんでる・・・完全に舐めてんだよ、俺たちのこと。時間稼ぎくらい何とかなる」

 

悠仁の言うとおり、特級呪霊は身体をくねくねしながら悠仁たちを挑発している。確かにこれならば1人が残れば2人は逃げ出すことができるかもしれない。しかし、残った1人が助かる保証などどこにもない。最悪、死ぬことだってありえる。

 

「そしたらお前はどうなるんだよ!!?死ぬかもしれねぇんだぞ!!?」

 

「ダメだ、そんなこと・・・」

 

「伏黒、和倉」

 

受け入れられない提案を拒み続ける恵と(たつみ)に悠仁は顔を向ける。

 

「頼む」

 

「「・・・っ!」」

 

どの道全員で戦っても、特級呪霊には勝てない。そうこうしている間にも野薔薇が危機に陥っているのかもしれない。様々な考えが飛び交い、2人は苦渋の決断をする。

 

「死ぬと思ったら絶対に逃げろよ!!絶対だぞ!!死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

「急ぐぞ、和倉!!」

 

恵と(たつみ)は特級呪霊に背を向け、別の出入り口で広間から出ようとする。それを見た特級呪霊は逃がさないと言わんばかりに動き出そうとした。それと同時に、悠仁はそうはさせまいとし、特級呪霊に殴りかかった。これによって2人は広間を出ることができたが、屠坐魔は壊れている。呪いを祓うことができなくなった悠仁は絶望的な窮地に立たされるのであった。

 

 

広間から脱出した恵と(たつみ)は進路を走り、この先に続く長い段差を飛び降りる。

 

「鵺!!」

 

恵が鳥の手影絵を作ると、彼の影より、仮面をつけたような鳥型の式神、鵺が召喚される。恵と(たつみ)は鵺の足を掴み、段差を降りて地に着地する。着地したと同時に、恵は鵺を元の影に戻す。

 

「玉犬!」

 

恵は今度は犬の手影絵を作り、影より黒の玉犬を召喚する。

 

「釘崎を探せ!!」

 

野薔薇の匂いを覚えている黒の玉犬を先行させ、2人はその後をついていく。

 

(死ぬんじゃねぇぞ・・・虎杖!釘崎!)

 

恵と(たつみ)は悠仁と野薔薇の無事を祈りながら、もっと奥へと進んでいく。

 

 

真っ暗闇の空間の中、野薔薇は数多くの呪霊を祓ってきたが、まだ数体残っている。もう釘は1本も残っていない。それに加えて、トンカチの取っ手も壊されてしまい、成す術がなくなった。野薔薇は大きな口を持った目がない呪霊に足を掴まれる。そばにいるキノコ型の呪霊はケタケタと笑っている。

 

「お前・・・顔覚えたからな!絶対に呪ってやる!」

 

大きな口を持った呪霊は野薔薇を丸呑みにしようと、大きく口を開けた。徐々に口に運ばれようとしていた時・・・

 

ザシュッ!!

 

彼女の危機に駆けつけた(たつみ)が呪霊の腕を怨念刈りで斬り落とした。その直後、恵が召喚した蛇型の式神が呪霊の頭を噛み抑えた。宙に浮く野薔薇を同じく恵が召喚したカエル型の式神が長い舌を伸ばし、キャッチした。カエルの式神はキャッチした野薔薇をそのまま口に咥える。

 

「おおおおおおお!!」

 

(たつみ)はそばにいたキノコ型の呪霊の1体を怨念刈りで斬り祓って着地し、俊敏に動いて残りのキノコ型呪霊を斬り祓い、最後に跳躍して、大きな口を持つ呪霊の脳天に怨念刈りを突き刺して、全ての呪霊を祓った。

 

「無事か、釘崎!!」

 

「何とか・・・」

 

「脱出するぞ!!」

 

「カエル・・・苦手なんですけど・・・」

 

「悪かったな!!」

 

のんびりしている余裕はない。2人は負傷した野薔薇を連れて、宿舎の出口へと急ぐのであった。

 

 

一方その頃、特級呪霊の足止めをしていた悠仁はもう見ていられないほどにボロボロにやられていた。布のようなものを脱ぎ捨てた特級呪霊によって、ひどく痛めつけられたのだ。特級呪霊の放つ呪力の攻撃を耐えていた悠仁は意識的に考えないようにしていたが、宿儺の指を食べてしまったことによる後悔の念を抱き、死にたくないと考えてしまった。そして、呪力の衝撃波を受けて、思い知らされた。

 

自分は・・・ものすごく弱いと。

 

「・・・自惚れてた・・・俺は強いと思ってた・・・。死に時を選べるくらいには、強いと思ってたんだ・・・。でも違った・・・。俺は・・・弱い!全然弱すぎる・・・!!」

 

悠仁は指を失った手と手を失った腕を泣きそうになる目元を覆う。

 

「あーーーー!!死にたくねぇ!!嫌だ・・・嫌だよぅ!!でも・・・死ぬんだ・・・!」

 

片手と片腕で覆った両目からは涙が溢れていた。

 

(正しい死か?じゃねぇよ!甘えんな!)

 

悠仁の脳裏に浮かび上がってくるのは、夜蛾の面談の際に放たれた言葉だ。

 

『呪術師に悔いのない死などない』

 

今のこの状況は、今まさに、夜蛾が言ったことと体現しているも同然だ。

 

(それでも・・・この死が正しかったと言えるように・・・)

 

『呪いは人間の負の感情より生まれる』

 

(ならば、憎悪も、恐怖も、後悔も!!すべて出し切る!!拳に、乗せろ!!!)

 

悠仁は自身が感じている憎悪、恐怖、後悔を自身の腕に、自らの中に流れる呪力と共に全て拳に乗せる。そして、悠仁は特級呪霊に近づき、全てを乗せた呪力の拳を打ち放つ。だが特級呪霊は悠仁の全てを乗せた拳を片手で難なく受け止め、ニタニタと笑っている。

 

「クソ・・・!!」

 

拳が特級呪霊に届かず、悔しがっていると・・・

 

ウオオオオオオオオン!!!

 

遠くより、黒の玉犬の鳴き声が聞こえてきた。これを聞いた悠仁は3人が宿舎から脱出できたのだと理解した。

 

(この泣き声は・・・伏黒の合図・・・!)

 

玉犬の鳴き声を聞いた悠仁はこの状況下をどうにかするために、自分の中にいる宿儺と入れ替わる。入れ代わったことにより、悠仁の顔の怪我が治り、身体に宿儺である証明である紋様が浮かび上がる。

 

ゾゾゾゾゾッ!!

 

雰囲気が変わったことを感じ取った特級呪霊は宿儺となった悠仁から離れる。

 

「つくづく忌々しい小僧だ。この俺を完全に舐めてやがる」

 

宿儺は自分と入れ替わった悠仁に対し、悪態をついた。それとは対照的に特級呪霊は先ほどまでの煽りが嘘かのように、恐怖で震えている。

 

「少し待て。今考えてる。どうすれば、あの小僧を後悔させられるかをな」

 

宿儺が特級呪霊に肩を軽く叩いて落ち着かせようとする。だがそれとは逆に特級呪霊はビクビクしている。

 

(まぁ・・・恵と巽(あちら)を追ったところで直前で小僧に代わるのがオチか・・・。となると、奴らが1番困るのは・・・)

 

宿儺が考えた策は、自分が特級呪霊を連れて恵と(たつみ)の前に現れるという、振出しに戻る策だ。

 

(これだろうな・・・振り出しに戻してやる)

 

悪巧みを考えた宿儺はさっそく行動に出ようと、特級呪霊に呼び掛ける。特級呪霊は宿儺を警戒し、距離を取る。

 

「おい、ガキ共を殺しに行くぞ。ついてこい」

 

宿儺はそう言って欠損した指を治し、特級呪霊に背を向けた。背中越しでも伝わる威圧感。特級呪霊は自身の恐怖を振り払うかのように、両手に自身の呪力を纏わせ、放とうとしている。当然、宿儺はこれに気がつく。

 

「・・・バカが」

 

特級呪霊が呪力の塊を放ったと同時に、宿儺は欠損した腕を翳した。すると、欠損した手が瞬く間に治っていき、特級呪霊の呪力を弾いた。

 

「・・・あ。いかん。こっちも治してしまった」

 

自分が斬り落としたはずの宿儺の腕が元通りになり、特級呪霊は口をあんぐりと開けて驚愕している。

 

「散歩は嫌か?ま、元来呪霊は生まれた場に留まるものだしな。よいよい。なら・・・ここで・・・死ね」

 

特級呪霊の行動が不快に感じ取ったのか、宿儺は一瞬で特級呪霊の懐に入り、顔を鷲掴みにして床に叩きつけた。

 

「おい、どうした?もう終わりではないだろうな?」

 

宿儺の煽りに対し、特級呪霊は怒りが込みあがり、起き上がろうとする。

 

「そうだ。ほら、がんばれがんばれ」

 

起き上がろうとする特級呪霊に宿儺は煽りながら顔面を踏みつける。同時に、床にも衝撃が入り、崩壊する。

 

ガシッ!

 

「お」

 

特級呪霊は宿儺の足を掴みとり、投げ飛ばそうとしたが・・・

 

ザシュッ!!!

 

「呪霊といえど、腕は惜しいか?」

 

いつの間にか腕を斬り落とされ、その腕は破片に座り込んでいる宿儺が持っていた。

 

「ケヒッ、ケヒッ、ヒヒ!」

 

圧倒的な力で特級呪霊を蹂躙する宿儺は邪悪な笑い声をあげている。

 

 

宿舎から脱出した恵と(たつみ)は気を失った野薔薇を急ぎ伊地知の車に乗せた。

 

「避難区域10キロまで広げてください」

 

「伏黒君は?」

 

「ここで虎杖が戻るのを待ちます。和倉、お前は高専に戻れ」

 

「冗談言うな。俺も残るぞ。あいつを残して行ったのは、俺たちの責任だ」

 

恵は(たつみ)も逃がそうと考えたが、そう言われてしまっては反論ができない。最悪自分が彼を逃がせばいいと考えた恵は首を縦に頷いた。

 

「わかりました。私も釘崎さんを病院へ届けたら、なるべく早く戻ります」

 

「いや、伊地知さんはいてもあんまり意味ないので。どうせなら一級以上の術師をよこしてもらうようお願いします。ま、いないと思うけど」

 

「・・・努力いたします・・・」

 

恵に痛いところを突かれた伊地知は渋い顔つきになる。とはいえ、事実なので反論できないが。伊地知は車を運転し、野薔薇を病院へと運ぶ。

 

(大丈夫だよな・・・?ちゃんと戻って来るよな・・・虎杖・・・)

 

悠仁の中には宿儺がいる。宿儺ならば特級呪霊相手など大したことないだろうが・・・あれは邪悪だ。万が一となると・・・。そう考えると不安が募ってくる。恵は、自分が悠仁を助けようとした時のことを思い浮かべた。

 

(・・・和倉には悪いが・・・あいつがもしもの時は・・・)

 

『死なせたくありません』

 

『私情です。何とかしてください』

 

(・・・俺にはあいつを始末する責任がある)

 

その最悪の事態にならないことを祈りつつ、恵は(たつみ)と共に、悠仁が戻るのを待つのであった。

 

 

宿舎の中。宿儺と特級呪霊の戦いは・・・もはや戦いとは呼ぶにはあまりにも勝負にならなさすぎる。特級呪霊は両腕だけでなく、両足を斬り落とされ、それと共に壁に埋め込まれている。対する宿儺は無傷だ。

 

「おい、知ってるか?我々は共に特級という等級に分類されるそうだ。俺と・・・お前がだぞ?」

 

自分をバカにする宿儺に対し、特級呪霊は壁から抜け出し、両腕と両足を生やして治している。

 

「いいぞ特級。がんばれがんばれ」

 

宿儺は特級呪霊を煽ってきている。両腕、両足を治し終えた特級呪霊は壁から抜け出し、地に着地し、得意げにニッと笑っている。

 

「嬉しそうだな?誉めてやろうか?だが呪力による治癒は人間と違い、呪霊にとって難しいことではないぞ?お前も、この小僧も、呪いの何たるかを、まるでわかっていないなぁ」

 

宿儺は悠仁が拳に込めた呪力の出し方、そして、特級呪霊の出し方に異議を唱えた。

 

「いい機会だ、教えてやる。本物の呪術というものを」

 

宿儺が動き出すと、特級呪霊はその恐ろしさから身構える。宿儺は両手に印相を結ぶ。

 

「領域展開―――"伏魔御廚子"

 

宿儺が術を発動すると、彼の背後より様々な異形の生物の頭骨に象られた禍々しき寺のお堂が出現する。その瞬間・・・

 

キンッ、クパァ!!

 

特級呪霊の身体が5枚おろしにされ、両腕もバラバラに斬り刻まれた。

 

「3枚におろしたつもりだったんだが、やはり弱いな、お前」

 

呆気からんと発言する宿儺。これだけでも、特級呪霊との力の差が天と地ほどにあるというのが、嫌というほどにわかる。

 

「そうそう、これこれ・・・」

 

宿儺は特級呪霊の身体に空いていた穴に指を入れ、何かを取り出した。それは、行方がわからない18本の宿儺の指のうちの1つだった。

 

「これはもらっていくぞ」

 

ボウッ!!

 

宿儺が背を向けた瞬間、特級呪霊は突如出現した紫色の炎によって焼かれ、完全に消滅した。

 

「・・・終わったぞ!不愉快だ!代わるのならさっさと代われ!」

 

宿儺は自分の中にある悠仁の意識に呼び掛ける。だが彼が呼び掛けても、悠仁の人格はいつまでたっても出てこなかった。

 

「・・・どうした、小僧?」

 

さすがにすぐに入れ代わらなかったことに怪訝に思った宿儺だったが、すぐにその原因に気付いた。それを見抜いた宿儺は・・・凶悪で邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

少年院の外で悠仁の帰りを待っている恵と(たつみ)。すると恵は宿舎の中の生得領域が消えたは反応に気付いた。

 

「!!」

 

「どうした、伏黒?」

 

(生得領域が閉じた!特級が死んだんだ!後は虎杖が無事に戻れば・・・)

 

ゾワッ!

 

突如として、恵と(たつみ)の身体に得体のしれない悪寒が走った。その原因は、2人のすぐ後ろにいる。

 

「残念だが、奴なら戻らんぞ」

 

2人の背後に、いつ間にか宿舎から脱出した宿儺が現れた。宿儺から放たれる圧倒的な威圧感に2人は大量の冷や汗をかいている。

 

「そう怯えるな。今は機嫌がいい。少し話そう」

 

震えている2人をよそに、宿儺は歩き、2人の前に立つ。

 

「これは何の縛りもなく俺を利用したツケだな。俺と代わるのに少々手こずっているようだ。まぁそれも、時間の問題だろう」

 

宿儺は今着込んでいる高専の制服を掴み、破り捨てた。

 

「そこで、俺に今できることを考えた」

 

そう口にした瞬間、宿儺はとんでもない行動に出た。

 

ズンッ!!!

 

何と宿儺は自分の腕で自分の身体を貫いた。宿儺の身体の中から嫌な音が聞こえてくる。

 

「自分の身体に・・・手を・・・⁉」

 

「な、何を・・・?」

 

「くくくく・・・」

 

宿儺は身体からおびただしい血を流し、身体から何かを取り出した。取り出したものは、ドクンッ、ドクンッと脈を打っている。そう、これは・・・心臓だ。

 

「し・・・心臓・・・!!??」

 

「小僧を人質にする」

 

「人質・・・⁉」

 

「ああ。俺はこれなしでも生きていられるが、小僧はそうはいかん」

 

今の宿儺の身体は悠仁のもの。受肉を果たした宿儺は心臓なしでも問題なく生きていられるが、心臓は人間にとって生きるために必要な腎臓だ。抜き取られてしまったら死んでしまう。ゆえに人質として成立する。

 

「俺と代わることは死を意味する。そしてさらに・・・ダメ押しだ」

 

宿儺はズボンのポケットより、特級呪霊より取り出した宿儺の指を取り出し、それを口に入れ、飲み込む。

 

(宿儺の指!中にいた特級呪霊が取り込んでいたのか!)

 

悠仁の身体に取り込んだ指は2本。それに加えて今回の1本。これによって宿儺の力がまた1つ蘇った。

 

「さてと、晴れて自由の身だ。もう怯えていいぞ。殺す。特に理由はない」

 

宿儺の理由なき殺意が恵と(たつみ)に向けられる。

 

「くそっ!こんなところで、わけもわからず死んでたまるか!」

 

この場を切り抜けるには戦うほかないと悟った(たつみ)は身構える。この状況の中、恵が思い浮かべるのは杉沢第三高校で悠仁が受肉し、自分が彼を殺すと宣言したあの日だ。

 

「・・・あの時と立場が逆転したな」

 

今この状況下は、あの時の立場が逆になっていた。




じゅじゅさんぽ

伊地知「はい・・・はい、かしこまりました。よろしくお願いいたします・・・はい・・・」ぺこぺこ・・・

3人「じぃー・・・」

伊地知「?どうしました?」

野薔薇「伊地知さんって電話でお辞儀するよね」

伊地知「ははは・・・こう・・・電話する時って、電話するぞって気持ちを作るので、没入してしまうというか・・・」

野薔薇「わかる・・・私も脱毛する時、埋没毛して首痛めたこと何回もあるもん。もちろん、毛穴も痛めた」

悠仁「それは同じなの?」

(たつみ)「基準がわからん・・・。あ、伏黒は電話の時よくイライラしてるよな」

恵「それは電話じゃなくて五条先生のせいだ」

悠仁「和倉はよく頭をかいたり、腹かいてるときあるよな、電話する時。かゆいの?」

(たつみ)「いや、それはただの癖」

野薔薇「虎杖はよくうろうろしてるわよ、電話してる時」

伊地知「電話といえば、皆さん、肩で電話を挟んでながら通話できますか?」

恵、問題なし

(たつみ)、問題なし

悠仁、問題なし

野薔薇、スマホをスーッと落とす

野薔薇「あ・・・あああああああああああ!!!」

スマホ、パリーーンッ!!

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