呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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不平等な現実のみが平等に与えられている。


呪胎戴天ー弐ー

少年院の特級呪霊を宿儺が祓ったまではいいが、縛りなしで宿儺と入れ代わったことにより、悠仁は宿儺を抑え込むことに時間がかかってしまっている。それをいいことに宿儺は外で待っていた恵と(たつみ)の前に現れ、さらに目の前で宿主である悠仁の心臓を抜き取り、悠仁が戻らないように仕向けた。戦うことを強いられてしまった恵と(たつみ)は構える。

 

「わかってないんだな。あいつは・・・虎杖は戻ってくる。その結果自分が死んでもだ。そういう奴だ」

 

恵の言い分に対し、宿儺は吐き出した血を片手で拭い、嘲笑する。

 

「買い被りすぎだな。こいつは他の人間より多少頑丈で鈍いだけだ。先刻もな、今際の際で脅えに脅え、ごちゃごちゃと御託を並べていたぞ。断言する。奴に自死する度胸はない」

 

戦闘態勢に入る(たつみ)に恵は宿儺に聞こえないように話しかける。

 

(和倉、奴の手を見てみろ。なくなった腕が治ってる)

 

(!)

 

(治癒・・・反転術式が使えるんだ。だが、宿儺は受肉してる。心臓なしで生きられるとはいえ、ダメージはあるはずなんだ。虎杖が戻る前に、心臓を治させるんだ!心臓を欠いた身体では俺たちに勝てないと思わせるんだ)

 

力さえ証明させることができれば、宿儺は本気を出すために心臓を治すはずであると恵は考える。だが相手は宿儺。指3本とはいえ、その力は未知数。成功するかどうか懐疑的だ。

 

(そんなことできるのかよ⁉あの中にいた呪霊相手にろくに動けなかったんだぞ⁉)

 

(できるかできないかじゃねぇ!やるんだよ!)

 

(・・・っ!)

 

どの道やらなければ宿儺に殺されるだけだ。ならば、一か八かでもやるしかないのだ。

 

「せっかく外に出たんだ。広く使おう」

 

まず最初に動いたのは(たつみ)だ。(たつみ)は宿儺の懐に入り、拳や蹴りを放ち、連撃を繰り出す。しかし(たつみ)の猛攻を宿儺は難なく全て避ける。それもズボンのポケットに手を入れたままでだ。

 

(この小僧・・・呪力がないな。呪力で身体を強化していないにも関わず、これほど動けるとはな)

 

宿儺が(たつみ)の身体能力について推察していると、恵が召喚した鵺が突っ込んでくる。宿儺は突っ込んできた鵺の攻撃を軽く避けた。その避けたタイミングを狙うかのように、(たつみ)は宿儺に拳をを叩き込む。だが宿儺はその拳を片手で受け止める。

 

(機敏性だけではないな。腕力もそこそこ、身体もそれなりに頑丈そうだな。なるほど興味深い)

 

宿儺は(たつみ)の能力に対して、少なからず興味を持っている。拳を受け止められた(たつみ)は左手で腰の怨念刈りを抜き、宿儺に向けて振るう。

 

「だが・・・小僧、貴様はつまらんな」

 

バキィィィィン!!!

 

宿儺はもう片方の腕を振るい、(たつみ)の怨念刈りを簡単に叩き折った。宿儺が興味を示しているのはあくまで能力だけ。(たつみ)には、一切の興味を向けていない。

 

「皮肉なものだな。小僧が呪術師などと。小僧の存在そのものが、呪術師を否定しているというのにな!」

 

「う・・・うおああああああ!!」

 

宿儺は(たつみ)の腕を強く掴み、片手で彼を軽々と持ち上げ、再度突っ込んでくる鵺に向けて放り投げる。放り投げられた(たつみ)は鵺と衝突する。宿儺が(たつみ)を投げた直後、恵は鵺を一旦影に戻し、宿儺の背後を取る。

 

(面白い・・・こっちは式神使いのくせに、術師本人が向かってくるか!)

 

恵は背後より宿儺に向けて拳を振るう。だがしかし、当然恵に気づいている宿儺は彼が繰り出す拳を軽く動いて難なく躱す。恵は拳の連撃を繰り出し、宿儺を追撃するが、これも簡単に躱され、距離を取られる。距離を取った宿儺の背後で(たつみ)が蹴りを放とうとする。しかし(たつみ)のこの蹴りも宿儺は上半身を軽く屈んで蹴りを躱した。

 

「鵺!」

 

恵は鳥の手影絵を作り、影より再び鵺を召喚させ、鵺を宿儺に突っ込ませる。宿儺はこれも一歩後退して躱す。背後にいる(たつみ)が拳による連撃を放つが、宿儺はやはりこれも余裕で全て躱す。さらに鵺と連携して、恵が拳と蹴りを放つが、宿儺は余裕の笑みを浮かべて片腕で避けたり受け流している。

 

「もっとだ。もっと・・・もっと!もっと呪いを籠めて打ってみろ!」

 

恵が放った拳を宿儺は片手で受け止め、彼を身近まで引き寄せて拳を振るった。

 

「伏黒!!」

 

「大蛇!」

 

恵は拳をまともにくらいつつも、宿儺に見えないように蛇の手影絵を作った。これに応じ、影の中より蛇型の式神、大蛇が召喚され、宿儺の身体にかみつき、上空に持ち上げた。空高く持ち上げた直後、(たつみ)を持ち上げた鵺が宿儺の背後より現れる。

 

「くらええ!!」

 

鵺の足が開き、宿儺の真上で降ろされた(たつみ)は宿儺に強烈なかかと落としを繰り出した。攻撃は見事にヒット。

 

「畳みかけろ!!!」

 

(たつみ)が降りたタイミングで恵が鵺に指示を出した。鵺は翼に雷を宿し、宿儺に空中での連撃を放つ。少なからずともダメージは与えられているが、微々たるものだ。鵺の猛攻に対し、宿儺はニヤリと笑い・・・

 

パァン!!

 

力を少し解放し、自分を銜えていた大蛇の身体を粉々に砕いた。

 

「!!!」

 

「なぁ。言ったろ?広く使おう!」

 

恵が驚いている間にも、宿儺は一瞬で恵の背後に立ち、彼の制服を握りしめ、力強く放り投げた。投げられた恵は木の枝に衝突しながら上空まで吹っ飛ばされる。それだけではない。目の前にはすでに宿儺がそこまで迫っており、強烈な蹴りが放たれる。

 

ドオオオオオン!!!

 

蹴りをくらった恵は力強く吹っ飛ばされ、住宅街の屋根に転ばされる。

 

「伏黒!!!」

 

「なんだ。お前も飛んでみたいのか?手伝ってやろうか?」

 

(たつみ)が恵に注意を向けた直後、すぐ背後に宿儺がいつの間にか現れた。(たつみ)が拳を振るうよりも先に、宿儺は彼にアッパーを繰り出し、空高くまで吹っ飛ばした。

 

「がっ・・・!」

 

(たつみ)が血反吐を吐きだす。だが宿儺の猛攻は止まらない。宙に浮かぶ(たつみ)の目の前に宿儺が現れ、強烈な拳を叩き込んだ。

 

ドォォン!!!ドォォォォォン!!!!!

 

宿儺に殴り飛ばされた(たつみ)は幾度もの建造物と衝突し、多大なダメージを負う。(たつみ)が落下しようとしたタイミングで、片足で恵を掴んでいる鵺が現れ、もう片足で彼を掴む。

 

(呪術云々じゃない・・・!パワーも・・・!アジリティも・・・!格が違う・・・!!)

 

格の違いを思い知らされた彼らの目の前には、既に宿儺がそこまで迫っていた。

 

「いい術式だ!!」

 

宿儺は両手を振り下ろし、強烈な一撃を放った。鵺は2人を守ろうと翼を広げ、衝撃を抑えようと試みる。

 

ドォォォォォン!!!!

 

だが宿儺が繰り出す一撃は強烈で、いともたやすく吹っ飛ばされ、建造物に衝突した。

 

(たつみ)、お前は強い』

 

(何が強いだ・・・!俺、めちゃくちゃ弱ぇじゃねぇかよ・・・クソ親父・・・!!)

 

相手が悪すぎたということもあるが、(たつみ)は自分の弱さに気付き、自身が自惚れていたことも気づき、今は亡き父に心の中で悪態をついて気を失った。

 

「和倉・・・くっ・・・」

 

辛うじて恵は動けるが、ダメージがかなり蓄積されており、今は立つのがやっとであろう。

 

(どうする・・・?生得領域を抜けるのに式神一通り使っちまった・・・。和倉もさっきの攻撃でダウンしちまった・・・。玉犬(白)と大蛇は破壊され・・・そのうえ鵺も限界だ・・・。壊される前に解いた方がいいな・・・)

 

恵は鵺が破壊される前に術式を解き、鵺を影に戻した。それを見た宿儺は恵の術式の詳細に気付いた。

 

「なるほど・・・。お前の式神、影を媒体にしているのか」

 

(今さらバレても問題はない・・・)

 

術式の詳細がバレても何も影響がないため、恵は開き直る。

 

「ならなんだ?」

 

(ふむ・・・呪符を使うありきたりな術式ではない・・・応用も利く・・・)

 

宿儺は顎に手を添え、恵の術式について考察する。

 

「・・・わからんな。そこの小僧はともかく、お前何であの時逃げた?」

 

「?」

 

あの時というのは、特級呪霊を前にして、悠仁を置いて逃げたことを指している。これには意味が存在している。宿儺の問いかけの意味を理解していない恵は疑問符を浮かべている。

 

「宝の持ち腐れだな。まぁいい。どの道その程度ではここは治さんぞ?」

 

宿儺は自身が着けた心臓の穴に親指を指している。2人の目論見は、宿儺には筒抜けのようだ。

 

(バレバレか・・・)

 

「つまらんことに命をかけたな。この小僧にそれほどの価値はないというのに」

 

宿主である悠仁に対し、宿儺は小ばかにした発言を取る。

 

『じゃあなんで俺は助けたんだよ!!!??』

 

よろよろと起き上がる恵の頭に浮かび上がるのは、悠仁が放った問いかけだ。

 

 

不平等な現実のみが平等に与えられている。

 

『誰かを呪う暇があったら、大切な人のことを考えていたいの』

 

疑う余地のない善人だった。

 

誰よりも幸せになるべき人だった。

 

それでも津美紀は呪われた。

 

俺の性別も知らずに『恵』なんて名前を付けた父親は今もどこかでのうのうと生きている。

 

因果応報は全自動ではない。

 

悪人は法の下で初めて裁かれる。

 

呪術師はそんな『報い』の歯車の1つだ。

 

少しでも多くの善人が・・・少しでも平等を享受できるように・・・

 

俺は不平等に人を助ける

 

 

立ち上がった恵は構えを取り、自身の身体に呪力を練り上げる。その呪力の強さは凄まじいものだった。

 

ビリビリビリッ

 

その凄まじい呪力を感じ取った宿儺はプレッシャーという名の電気が走り、愉快に笑う。

 

「いい・・・いいぞ・・・お前が命を燃やすのは、これからだったわけだ」

 

構えを取る恵はちらりと(たつみ)を見るが、行動に迷いはない。

 

『自分を犠牲にしようなんてこと、もう二度とすんな』

 

『仲間が死なれたら、胸くそ悪ぃだろうが』

 

(悪いがお前の言うことを聞いてる余裕はない。だが、お前の命は助ける!)

 

恵自身もわかっているのだ。切り札を使うとどうなるのか。だがそれでも・・・どのような結果になろうとも・・・せめて(たつみ)の命は助けたいと恵は考える。

 

「なるほど・・・そうか・・・。それなら・・・魅せてみろ!!伏黒恵!!」

 

布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)・・・八握(やつかの)・・・」

 

恵が祓詞を唱えようとした時、恵は宿儺の異変に気がつき、呪力を霧散させた。

 

「・・・言っておくが俺は・・・お前を助けた理由に、論理的な思考を持ち合わせていない。危険だとしてもお前のような善人が死ぬのを見たくなかった。それなりに迷いはしたが・・・結局はわがままな感情論」

 

恵が話している間にも、宿儺の身体の紋様が徐々に消えていく。

 

「でも、それでいいんだ。俺は正義のヒーローじゃない。呪術師なんだ」

 

恵は構えを解き、顔をあげて、宿儺・・・いや悠仁に向けてこれが初めてかもしれない優しい表情を浮かべた。

 

「だからお前を助けたことを・・・一度だって後悔したことはない」

 

紋様が全て消え、身体の主導権が悠仁へと変わった。

 

「・・・そっか」

 

自分を助けた恵の理由を聞いた悠仁はにっこりと笑った。

 

「やっぱ伏黒は頭いいからなぁ。俺よりいろいろ考えてんだろ。お前の真実は正しいと思う。でも俺が間違ってるとも思わん」

 

悠仁が話していると、宿儺が空けた心臓の穴より血が溢れ、吐血もする。

 

「あー・・・悪い・・・そろそろだわ・・・」

 

肉体は悠仁に戻ったが、心臓はなくなったまま・・・それを表すこととは・・・彼の死である。

 

「伏黒も和倉も釘崎も・・・五条先生に赤女(あかめ)先生・・・は、心配いらねぇか・・・。長生き・・・しろよ・・・」

 

悠仁は最期の言葉を恵に残し、地に倒れ、息を引き取った。目の前で悠仁が死んだ。これを目の当たりにした恵は唇を噛みしめ、涙がこぼれないように顔を見上げた。暗雲の空が立ち込める中、雨は強く降り続ける。

 

 

・・・これは夢か・・・?

 

いや・・・夢なんだろうな。だってそうじゃなきゃ、目の前に沙良(さよ)家康(いえやす)がいる理由がわからねぇ。

 

(たつみ)、俺たちはそろそろ行くぜ』

 

『私たちはこっち。(たつみ)は現実に戻って』

 

・・・何言ってんだよ・・・俺たちは3人一緒で・・・

 

『お前はそっちで、やることがあるだろ?』

 

『いつまでも私たちに甘えてんじゃないの』

 

『じゃあな、(たつみ)

 

『来世があるなら、またそこで会おうね』

 

待ってくれ・・・俺は・・・俺は・・・

 

『かーーーーーーーつ!!!!!』

 

!!?お、親父!!?

 

『何とも情けない!!何たる軟弱!!それでもワシの息子か!!』

 

お・・・俺だって・・・いろいろ頑張って・・・

 

『その結果挫けそうになっとると・・・。お前の覚悟とやらはその程度だったのだな。それがお前の刃だと言うならば・・・いっそのこと折れてしまえ!!!!』

 

!!!か・・・勝手なこと言うなクソ親父!!!俺は・・・俺は・・・!!

 

 

「・・・ん・・・」

 

(たつみ)が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井・・・ではない。ここは高専の自分の部屋だ。

 

「・・・俺の部屋・・・?」

 

「おっ!やっと目を覚ましたな」

 

(たつみ)がここが自分の部屋だとハッキリすると、1人の女性が自分の顔を覗いている。かなり見知った顔だ。

 

「・・・姉さん?」

 

「そだよー。超美人なレオーネお姉さんだー」

 

自分を覗いていた金髪女性は、グラマースタイルを持つレオーネであった。

 

「だいたいの事情は赤女(あかめ)から聞いてるよ。厄介事に巻き込まれちゃったみたいだな。無事で何よりだよ」

 

「・・・俺・・・何で部屋に・・・?」

 

まだ意識がハッキリしてないのか、(たつみ)はなぜ自分の部屋で寝ていたのか全く分からない様子だった。

 

「お前さんは長いこと意識を失ってたんだ」

 

(たつみ)の疑問に答えたのは、第三者、保健室の壁にもたれかかっている大男だ。鍛え上げられた筋肉とリーゼント頭が特徴だ。

 

「目を覆いたくなるほどのダメージだったんだ。無理もないがな」

 

「・・・えっと・・・あんたは・・・」

 

「ブラートだ。呪術総監部の下で働いてる者だ。よろしくな」

 

「は、はぁ・・・」

 

こちらに近づいてきた大男、ブラートは(たつみ)に手を差し伸べ、握手を求めている。(たつみ)は戸惑いつつも握手に応じた。

 

「ブラっちがお前をここまで運んだんだ。感謝しなよー?」

 

「運ぶ・・・」

 

意識が完全にハッキリした(たつみ)は重要なことを思い出し、2人に問いかける。

 

「そ、そうだ!!伏黒は!!?虎杖はどうなったんだ!!?」

 

焦った表情をする(たつみ)の問いかけに対し、2人は何とも言えない表情をして、口を閉じる。短い沈黙の後、ブラートが口を開く。

 

「・・・安心しろ。伏黒は無事だ。釘崎って子もな」

 

「そ・・・そっか・・・」

 

「・・・だが・・・宿儺の器・・・虎杖悠仁は・・・死んだ」

 

「!!!!!」

 

恵と野薔薇が無事だと安堵したのも束の間、悠仁が死んだという絶望的な知らせに(たつみ)は目を見開かせ、唖然とする。同時に、その死因もハッキリと理解できた。

 

『俺はこれなしでも生きていられるが、小僧はそうはいかん。俺と代わることは死を意味する』

 

「・・・結局こうなっちまったのかよ・・・くそおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 

悠仁が戻ってくるまでに宿儺に心臓を治させる。それを果たすことができなかった(たつみ)は悔しさのあまり、壁に拳を叩きつけ、慟哭するのだった。

 

 

一方その頃、東京のどこかの道路交差点。様々な人間が行き交うこの場所に、奇抜的な格好をした女性が1人いた。胸元を開けた白い軍服のような衣装を着た、水色の長髪を持った女性だ。彼女の胸元には何かの紋様が刻まれてる。交差点を歩く女性。だが彼女1人で歩いているわけではない。すぐそばには同行者が数人いた。ただし・・・その同行者は人とはかけ離れすぎている。

 

「お前さん何考えてやがるぅ。俺様が死にそうになってまで取った指を雑魚なんざに取り込ませてよぉ」

 

その1人は、ところどころに赤いライン線が光り、黒い外装の機械の身体を持った呪霊だ。そう、(たつみ)にとっては憎き仇であるサイボーグだ。サイボーグの疑問に女性は答える。

 

「あの呪いの王だぞ?気になるとは思わんか?呪いの王の実力を」

 

一般人、非術師には呪霊の存在は見えない。ゆえにこの場にいる人間からすれば、ただ1人ごとを呟いている変わった格好をした女性という認識でしかない。

 

「わざわざ貴重な指を使ってまで確かめる必要があったかね?」

 

サイボーグと同じく疑問を口にしたのは同じく呪霊。その見た目は歯が黒く、一つ目が特徴的な火山頭である。この呪霊もサイボーグと同じく、人間の言葉を理解し、悠々と会話できている。

 

「中途半端な当て馬なんぞに意味はない。それなりの収穫はあった」

 

「フンッ、言い訳でないことを祈るぞ」

 

「ブフゥー、ブフゥー」

 

人の言葉を話せず、ただブフーと鳴くのは同じく呪霊。こちらはもはや人とはかけ離れており、フードを被ったタコのような姿をしている。

 

「ーーーーーーーーーー」

 

何を言っているのか全く理解できない言語を話すのは同じく呪霊。筋骨隆々で両目が位置する箇所に木のような角が特徴だ。この呪霊は布のようなもので片腕を封じている。理解できない言語にサイボーグは電気の爪を筋骨隆々の呪霊に突き立てた。

 

「てめぇはしゃべんじゃねぇよ!!!何言ってんのかわっかんねぇんだよぉ!!!」

 

「やかましいわ!!!!貴様はいちいちキレるでない!!!!」

 

殺気立つサイボーグを制したのは火山頭の呪霊であった。火山頭の呪霊の火山は興奮した影響でポーッと噴火している。

 

「だが言いたいことは理解できる。何を言っとるのかわからんのに内容は頭に流れ込んできて気色悪いのだ」

 

どうやら筋骨隆々の呪霊は言語が理解できない代わりに話した内容の意味は頭に流れ込むらしい。火山頭の呪霊とサイボーグはその感覚を嫌っているようだ。女性と呪霊たちが向かった先は、どこにでもあるファミレス店である。女性と呪霊たちは店の中に入店する。

 

「いらっしゃいませー。1名様のご案内でよろしいですか?」

 

「・・・ああ。1人だ」

 

非術師に呪霊が見えるわけがないため、女性は1人であると言い切った。呪霊たちは非術師を気にすることなく、店内の中に進入する。

 

 

高専内にある遺体安置所。死んでしまった術師は大抵はこの場所に運ばれてくることが多い。出張任務より戻ってきた悟と赤女(あかめ)は少年院の任務の詳細を伊地知から聞いていた。

 

「会敵した時の選択肢は逃げるか死ぬか・・・まずは絶対に戦わないことと彼らに忠告したのですが・・・」

 

伊地知はかなり申し訳なさそうに身体を縮こませながら、2人に報告をする。すると悟が口を開く。

 

「・・・わざとでしょ?」

 

「は?と、言いますと・・・?」

 

「特級相手。しかも生死不明の5人の救助に1年生の派遣はありえない。それに悠仁は、僕が無理を通して死刑に実質無期限の猶予を与えた。それを面白くない上が僕と赤女(あかめ)がいぬ間に特級を利用して、体よく彼を始末したってとこだろう」

 

「・・・あの老人たちならやりかねないな。実際、それで亡くなった術師を私は知っている」

 

赤女(あかめ)の脳裏に浮かび上がるのは、友と最愛の妹が呪詛師に堕ちるきっかけの1つとなった事件。後輩が・・・大切な仲間が死んだ忌まわしい事件。伊地知自身も上層部のやり方に対して心当たりがあるのかショックで顔を青ざめて、震えた手で口元を覆っている。

 

「他の3人が死んでも私や悟に嫌がらせができて、一石二鳥だなんてことを考えてるはずだ」

 

「いや・・・しかし・・・派遣が決まった時点では、本当に特級に成るとは・・・」

 

「成るとわかっていたとしたら?」

 

「あ・・・」

 

言いあったり後悔したりしたところでもう遅い。悠仁はもうすでに死んでしまったのだから。

 

「・・・犯人探しも面倒だ。いっそのこと上の連中・・・全員殺してしまおうか?

 

珍しく感情的に怒りを示している悟の殺気に伊地知はビクつく。

 

「やめておけ。そんなことしても上がすげ替わる。それでは意味がないとお前が1番わかっているだろ?」

 

「・・・ちっ」

 

赤女(あかめ)にわかっていることを告げられて、悟の殺気はなくなる。だがやり場のない怒りは残るため、舌打ちをする。すると、この遺体安置所に白衣を着た1人の長髪の女性が入ってきた。

 

「珍しく感情的だな」

 

「硝子」

 

「お疲れ様です!家入さん!」

 

彼女の名は家入硝子。この東京都立呪術高等専門学校の医師であり、悟と赤女(あかめ)の同期であり、赤女(あかめ)の親友でもある。

 

「彼のこと・・・ずいぶんとお気に入りだったんだな」

 

「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」

 

「伊地知をあまりいじめるな。私たちと上の間で苦労してるんだ」

 

硝子からの気遣いに対し、伊地知は妙に頬を赤らめ、変にときめき顔をしている。

 

(もっと言って・・・もっと言って・・・もっと言って・・・!)

 

「男の苦労なんて興味ねーっての」

 

「男からすればみんな興味ないと思うぞ。1名を除いて」

 

「そうか」

 

が、硝子の冷めたような納得に伊地知はショックを受ける。

 

「で・・・これが・・・宿儺の器か」

 

硝子が台の布を取り外す。布で覆われていたのは、悠仁の遺体であった。

 

「好きにバラシてもいいよね?」

 

「硝子・・・しっかり役立ててくれ」

 

「役立てるよ。誰に言ってんの」

 

硝子がここに来た理由は・・・悠仁の遺体を解体するためなのだ。それが決まりなのだから。

 

 

夏の暑い日差しが立ち上る高専の外。恵と野薔薇は建造物の屋根の日陰に入って少しは熱さを誤魔化している。恵は野薔薇に悠仁からの遺言を伝える。

 

「長生きしろよって・・・自分が死んでりゃ世話ないわよ・・・」

 

悠仁が死んだと知らされても、野薔薇は素っ気ない態度を取っている。

 

「・・・和倉は?」

 

「まだ部屋で寝てる」

 

「そ。・・・あんた、仲間が死んだの初めて?」

 

「タメは初めてだ」

 

「ふーん」

 

対する恵自身も今は平気そうに見える。気にはしてはいるだろうが、彼なりに前を向こうとしているのかもしれない。

 

「その割には平気そうね」

 

「お前もな」

 

「当然でしょ。会って2週間やそこらよ?そんな男が死んで泣きわめくほど、チョロい女じゃないのよ」

 

野薔薇は平然を装っているが・・・よく見てみると唇を噛みしめて、涙を堪えようとしているのがよくわかる。彼女自身も、悠仁の死に思うところがあるのだろう。

 

「・・・・・・熱いな・・・」

 

「・・・・・・そうね・・・夏服はまだかしら・・・」

 

2人の間に何とも言えないような静かな空気が流れる。聞こえるのはセミのうるさい泣き声だけだ。2人が再び黙り込んでいると・・・

 

「久しぶりに帰ってきてみれば・・・そんなとこで何してんのよ伏黒」

 

「いつにもまして辛気臭ぇ顔だなぁ、恵。お通夜かよ」

 

高専の制服を着込んだ2人の女子生徒が恵に話しかけてきた。1人は小柄でピンク髪のツインテールの少女。もう1人はメガネをかけたポニーテールの少女だ。

 

「三好先輩、禪院先輩」

 

「私を苗字で呼ぶんじゃねぇ」

 

ポニーテールの女子生徒が恵に異を唱えようとした時・・・

 

「真希、マイン・・・!」

 

シーサー像に隠れている人語を話す1匹の動物が2人の少女に呼び掛けている。隣には銀髪の男子生徒もいる。

 

「何?今話し中なんだけど?」

 

「し、知らないのかよ⁉あいつらが暗いわけ!」

 

「何のことだ?」

 

「マジで死んでるんですよ!昨日!1年坊が1人!」

 

「おかか」

 

「「・・・は・や・く・い・え・や!!!」」

 

1匹の動物の発言によって自分たちの失言に気がついた女子2人は大量の冷や汗をかき、ぎこちない動きをする。

 

「これじゃあ私らが血も涙もねぇ鬼みたいだろ!!??」

 

「実際そんな感じだぞ⁉」

 

「ツナマヨ」

 

「よーしぶっ殺す!あんたら風穴開けてハチの巣にしてやる!!」

 

ギャーギャーと騒ぎ出す3人と1匹の生徒たち。3人と1匹とは会ったことがない野薔薇はこの様子にじとーっとした顔をしている。

 

「何?あの人たち?」

 

「2年の先輩」

 

この光景に呆れつつ、恵が2年の先輩を野薔薇に紹介する。

 

「後輩にはもっと優しく接しないと」

 

「甘やかすだけが優しさかねぇ」

 

「禪院先輩。呪具の扱いなら学生一だ」

 

メガネをかけたポニーテールの女子生徒が禪院真希。

 

「あんたが優しさを出せるのは憂太がいる時だけでしょ」

 

「殺すぞ!!!」

 

「三好先輩。ライフルの呪具を使う射撃の天才だ」

 

ツインテールの女子生徒が三好マイン。

 

「すじこ」

 

「呪言師、狗巻先輩。語彙がおにぎりの具しかない」

 

学ランの襟元で口元を覆っている銀髪の男子生徒が狗巻棘。

 

「確かに憂太と一緒にいる時は丸くなるよな」

 

「パンダ先輩」

 

見た目通りのパンダがパンダ。

 

「後1人乙骨先輩って唯一手放しで尊敬できる人がいるが・・・今は海外」

 

「あんた、パンダをパンダで済ませる気か」

 

簡潔な自己紹介で唯一気になる点に対してツッコミを入れる野薔薇。

 

「いやぁ、すまんなぁ、喪中に。許して、この通りだ!」

 

2年生は言い合いが終わり、2年の男?代表としてパンダが謝罪し、1年生に会いに来た本題に入る。

 

「実は、お前たちに京都姉妹校交流会に出てほしくてな」

 

「京都姉妹校交流会ぃ?」

 

聞いたこともない行事に野薔薇は頭に疑問符を浮かべている。

 

「何それ?」

 

「京都にあるもう1校の高専との交流会だ。でも2、3年のメインのイベントですよね?」

 

2、3年がメインとなるイベントならば1年たちが参加することは普通はないのだ。だが1年が参加できる方法は消去法で存在する。

 

「その3年のボンクラが停学中なんだ。だからお前ら出ろ」

 

その消去法というのが人数合わせだ。本来赤女(あかめ)が担当する3年生が全員停学処分をくらっていて交流会に参加できないのだ。そこで白羽の矢が立ったのが、1年生である。

 

「その交流会って何するの?スマブラ?Wii版なら負けないわよ?メテオで復帰潰すの!」

 

「あんたバカでしょ。それならあんたら誘わずこの4人でやるっつーの」

 

野薔薇の的外れな発言に辛辣な発言をするマインは得意げな表情で交流会について説明する。

 

「交流会は高専の東京校、京都校、それぞれの学長が提案した勝負方法を1日ずつ2日間かけて行うわけだけど、そんなもんは建前で、初日が団体戦、2日目が個人戦って決まってんの」

 

「シャケ」

 

「団体戦って・・・戦うの!!?呪術師同士で!!?」

 

交流戦が呪術の競い合いという呪術師同士の戦いであると理解した野薔薇は驚愕している。

 

「ああ。殺す以外なら何してもいい呪術合戦だ」

 

「逆に殺されないように、キッチリ鍛えてやるから感謝なさい」

 

交流会や特訓に参加するのはいい。だがその際に野薔薇は1つの疑問点が浮かび上がる。

 

「ん?ていうか、そんな暇あんの?人手不足なんでしょ?呪術師は」

 

「い~い質問ですね~。今はな」

 

野薔薇の疑問にパンダが答える。

 

「冬の終わりから春までの人間の陰気が初夏に呪いとなってドカッと現れる繁忙期って奴だ」

 

「年中忙しいって時もあるが、ボチボチ落ち着いてくると思うぜ」

 

「へぇ~・・・」

 

知らなかった事実に野薔薇は納得する。

 

「で、やるだろ?仲間が死んだんだもんな?」

 

真希の挑発交じりの問いかけに対し、恵と野薔薇の答えは決まっている。

 

「「やる!」」

 

2人の頭に浮かび上がるは、悠仁の後ろ姿であった。

 

(私は)

 

(俺は)

 

((強くなるんだ!そのためならなんだって・・・!))

 

悠仁の死に報いるためにも、強くなりたい。2人の想いは同じだ。

 

「でもシゴキも交流会も意味ないと思ったら即やめるから」

 

「同じく」

 

先輩相手に言うことを言う後輩の姿に2年生たちは笑っている。

 

「へっ!」

 

「随分生意気な後輩ね」

 

「ま、こんくらい生意気な方が、やりがいがあるわな」

 

「おかか」

 

こうして、2年生の指導の下、恵と野薔薇の特訓が始まるのであった。

 

 

高専の屋上、悠仁の死にまだ立ち直れていない(たつみ)はブラートとレオーネに連れられてここに来ている。

 

「呪術師やってるとな、親しかった奴が突然死にましたなんて話はよくあることだ。次はあの人が死ぬかもしれない。もしかしたら今度は自分かもしれない。俺たちはそんな嫌悪と恐怖と日夜戦っているんだ。だからある程度のイカレ具合やモチベーションが非常に重要なる」

 

ブラートの話を聞いて、(たつみ)が思い浮かべるのは夜蛾の面談だ。

 

『呪術師は常に死と隣り合わせ。自分の死だけではない。呪いを殺された人を横目に、呪いの肉を切り裂かねばならぬ時もある。不快な仕事だ。ある程度のイカレ具合と高いモチベーションは不可欠だ』

 

夜蛾の言っていた意味が理解できていなかったということもあるが、今回の悠仁の死によって、この仕事が一種の汚れ仕事であると、(たつみ)は痛感した。

 

「イカレ具合か・・・。じゃあ俺は中途半端だな・・・。未だに虎杖の死を受け入れられてねぇ・・・」

 

またも沈んだ表情をする(たつみ)を見て、レオーネは肩を竦めて彼に近づき・・・

 

ムギュッ!

 

彼の顔を自身の胸に引き寄せる。

 

「お前はどーも優しすぎるなぁ。呪術師には似合わないほどに。お姉さん心配になってきたぞー」

 

「・・・姉さんは、メンタル強いんだね。いや、虎杖を知らないから・・・か?」

 

(たつみ)は彼女の行動に少し呆れつつも、人の死に対しても平然としている姿にちょっと驚いている。

 

「なんで呪術師やってるか聞いてもいい?」

 

(たつみ)の問いかけに対し、レオーネは一旦彼を放し、呪術師に身を置いている理由を語る。

 

「気に入らん奴ボコってたら師匠にスカウトされた」

 

それ以上の言葉は・・・返ってこなかった。

 

「・・・えっ⁉終わり⁉それだけなの⁉」

 

「?呪術師やる理由なんてそれだけで十分でしょ?」

 

あまりにもサバサバしているレオーネに(たつみ)は驚きを隠せなかった。

 

「きっかけは私のシマで呪術を利用した人身売買をしてる奴がいるって話が飛び交っていてな。しかも、狙ってるのが非術師の女ばかりらしい。中には私の知人もいた。で、気に入らんからさっさと見つけてぶっ殺したってわけ」

 

「え?でも呪術規定に沿ったら・・・」

 

「そうだな。無断で術師を殺したら呪詛師扱いさ。ま、呪詛師になったらなったでやりようはいくらでもあったよ。だから特に気にしてなかったな。そん時だったかな、師匠に会ったのは」

 

レオーネは当時の自分を振り返り、初めて師匠と出会った時の言葉を思い出す。

 

『ははっ、気持ちのいい()りっぷりだねぇ。君はどんな男がタイプかな?』

 

『・・・あんた誰?』

 

「わけわからんかったよ。いきなり人の男の好みを聞いてきてさ」

 

(あ、最初に会ったあれ、師匠のリスペクトだったんだ・・・)

 

(たつみ)はレオーネと初めて出会った時に聞かれた質問が師匠になぞらえたものであると理解した。

 

「師匠は特級って立場を利用して私を呪術師に組み込んで罪を帳消しにしたんだ。で、晴れて呪術師として、以降は呪いをぶっ潰す稼業に回ったってわけ」

 

レオーネは当時殺した呪詛師のことを思い出し、高揚とした気分が込み上げてきた。

 

「でもあの時クソ野郎を殺した時の感覚が忘れられなくってな。で、思ったんだよ。呪術師でなら合法的に悪党をぶっ殺せるってな。その中でも最高の権力で甘い蜜を啜って調子に乗ってる呪術界腐敗の元凶であるトップのジジィ共は最高の獲物だ。今は赤女(あかめ)の顔を立てるために大人しくはしてるが・・・ゴーサインが出たその時は・・・みんながスカッとするように、おぞましくぶっ殺してやるんだ」

 

(な、なんてアウトロー・・・!逆にたくましい・・・!)

 

彼女のアウトロー加減を聞いて、(たつみ)は彼女に対し逆にたくましいと評価した。

 

「ま、こんなろくでなしだから、知人だろうが何だろうが、そこまで深く沈まないってわけだ」

 

レオーネはこの場にブラートがいることを思い出し、舌を出す。

 

「と、これ話しちゃまずかったかな?」

 

「聞かなかったことにしてやるよ。俺も上は嫌いだしな」

 

上が嫌いという発言を聞いて、(たつみ)は若干ながら引っ掛かりを感じた。

 

「そういえば、呪術界腐敗って言ってたけど・・・上ってそんなにヤバいのか?」

 

「・・・今回の虎杖の死亡はな、特級を利用して体よく始末したいっていう上の思惑があるんだ。お前らはそれに巻き込まれた」

 

「!!なんだよ・・・それ・・・!」

 

呪術界の腐敗を知り、理不尽極まりない任務を割り振った上層部に対し、(たつみ)は強い怒りが込み上げてくる。

 

「この業界でやっていく理由は様々だが、みんな覚悟を持って挑んでる。呪術界の腐敗を知ったお前はどうする?今ならまだ、引き返せるぞ」

 

「・・・俺は・・・」

 

話を聞いてもなお、呪術師を続ける決心があいまいで、口をまごまごさせている。すると・・・

 

「だああああああああああ!!」

 

「⁉」

 

下の方から野薔薇の悲鳴が聞こえてきた。ここから運動場を覗いてみると、野薔薇がパンダに投げ飛ばされる光景が目に移った。

 

「釘崎・・・と、パンダ!!??」

 

「お嬢ちゃんの方は、とっくに覚悟を決めてるみたいだぞ。仲間の死を受け止めたうえでだ」

 

「・・・・・・」

 

ブラートの言葉を聞き、(たつみ)は特訓している野薔薇に視線を向ける。

 

(釘崎の奴、自分で言ってたもんな。自分が自分であるために東京に来たって。それで命を賭けることになっても。釘崎だけじゃねぇ。伏黒だって、虎杖を助けようと命張ってたじゃねぇか。あの時も・・・今回だって・・・。それに比べて俺は・・・)

 

運動場で繰り広げられている光景を目の当たりにし、野薔薇が呪術師をやる覚悟と、自分を犠牲にしてまで誰か助けようとする恵の姿を思い出す。

 

「・・・実はな、伏黒から伝言を預かってるんだ」

 

「・・・伝言?」

 

「あー、伏黒っていうか・・・その虎杖とかいう奴からかな?」

 

「!」

 

レオーネは恵から預かった悠仁の伝言に(たつみ)は耳を傾ける。

 

「死に際でこんな事他人に言うなんてなかなかできないぞ?長生きしろよってさ」

 

「っ!!」

 

自分は死ぬというのに、最後の最後まで相手のことを気にかける悠仁の遺言に(たつみ)は目を見開く。そこで(たつみ)はようやく気付いた。自分は、悠仁の死を言い訳に逃げようとしていたことに。同時に、どう逃げたって、仲間が死んだという真実の呪いが、いつまでも付き纏うことを。

 

(いつまでいじけてんだ俺は・・・!甘えんな・・・!!俺が泣いたところで、虎杖は生き返らねぇ!だったら・・・俺は俺らしく・・・前を向かねぇと!)

 

バキッ!!

 

今自分がやるべきことをようやく気付いた(たつみ)は自分が逃げないように、下を向かないようにと、決意表明するかのように自分自身の頬を殴りつけた。

 

(それに俺は・・・立派な刃になるって意味を、まだ全然わかってねぇ。それを見つけないと・・・沙良(さよ)家康(いえやす)・・・虎杖に合わす顔がねぇ)

 

(たつみ)が思い浮かべるのは、いつも自分に立派な刃になれと言ってきた武虎の姿だ。

 

(たくっ・・・死んでも呪ってきてんじゃねぇよ。全部親父が言ったことだろうが。絶対に・・・折れてなんてやるもんか!!)

 

(たつみ)は殴った拍子で態勢が崩れ、しりもちをつく。

 

「・・・改めて覚悟を決めたってことでいいんだな?」

 

「ああ。今のは気合注入だ」

 

(たつみ)は起き上がり、2人に向けて宣言する。

 

「俺は改めて誓うぜ!俺は絶対に死なねぇ!虎杖の死に報いられるように、俺は強くなる!強くならないと、どんな刃も折れちまうからな!」

 

(たつみ)の力強い決意表明を聞き、2人はふっと笑う。

 

「中々熱い回答じゃねぇか!気に入ったぜ!!」

 

バシィ!!

 

「いてぇ!!」

 

ブラートは愉快に笑いながら(たつみ)の背中を力強く叩いた。

 

「本気で強くなりたいのなら俺と組みな!俺がお前を真の漢にしてやる!」

 

「お・・・おお・・・なんて頼もしい・・・!」

 

ブラートの心強い申し出に対し、(たつみ)は感動で震える。

 

「つーわけで、今日から俺のことは兄貴かハンサムって呼びな!ミッチリ鍛えこんでやるぜ!」

 

「おお!よろしく頼むぜ、兄貴!!」

 

(たつみ)はブラートから差し出された手を握り、熱い握手を交わした。こうして、(たつみ)とブラートの間で史上最高で熱い師弟関係が築かれたのだった。

 

「気をつけろよ、そいつゲイだぞ」

 

「!!!??」

 

まさかの衝撃的な告白を聞いて、(たつみ)は思わずブラートから離れる。

 

「はっはっは・・・おいおい・・・誤解されちまうだろ?なぁ?」

 

ブラートはあまり否定しておらず、なぜか頬を赤らめている。意外と・・・いやかなりまんざらでもないのかもしれない。

 

(せめて否定くれよ!!)

 

(たつみ)は先ほどの熱さに水を差されたかのように、顔を青ざめるのであった。

 

 

一方その頃、東京にあるファミレス。テーブル席に案内された水色髪の女性は呪霊たちの話を聞いていた。

 

「・・・つまりお前たちの将は今の人間と呪いの立場を逆転させたいと、そういう解釈でいいか?」

 

「まぁ、だいたいはな。だが少し違う」

 

呪霊たちの代表格ともいえる火山頭の呪霊・・・漏瑚は後ろの席にいる人間たちを見つめる。

 

「人間は嘘でできている。表に出る生の感情や行動には必ず裏がある。だが、負の感情・・・憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ、『真に純粋な真の人間』なのだ。偽物は消えて然るべき」

 

負の感情より生まれた呪霊たちこそが嘘偽りのない真の人間であると主張する漏瑚。その主張を聞いた女性は今の現実を口にする。

 

「現状において、消されるのはお前たちの方だ」

 

「だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?6人いる特級呪術師の1人、最初の特級、エスデスよ」

 

6人いる特級呪術師の1人にして、最初の特級にして、氷の女王と呼ばれる呪術師、エスデスは漏瑚たち呪霊が勝てる下準備を口にする。

 

「戦の前に、2つの条件をクリアできれば、見込みはあるだろうな」

 

「なんだその2つの条件とは?」

 

「まず1つ、呪術師最強と呼ばれる男、五条悟、及び最強の呪詛師殺しと呼ばれる女、禪院赤女(あかめ)を戦闘不能にさせること。

2つ、両面宿儺、虎杖悠仁を仲間に引き込むこと」

 

1つ目の条件に関してはわかる。だが2つ目の条件は不可解なものだ。宿儺の器である悠仁はもうすでに死んでいる。この時点で2つ目の条件は破綻しているのだ。

 

「・・・ちょっと待て。死んだのであろう?その虎杖悠仁というガキは」

 

もちろん、悠仁が死んだという情報を知っている漏瑚は困惑している。

 

「弱者は淘汰されて当然。本当に弱者ならば・・・な」

 

2つ目の条件を提示したエスデスはまるで確信しているかのように、二ッと怪しく笑ってみせた。この笑みが意味することとは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許可なく見上げるな。不愉快だ・・・小僧」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら降りてこい・・・見下してやっからよ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




じゅじゅさんぽ「シャケ!」

数日前のこと・・・

真希「臭い」

パンダ「臭くない」

真希「臭い」

パンダ「臭くなああああああい!!!!」クワッ!!

パンダ、ボロボロにされる。

パンダ「・・・なんで俺のこと、畜生みたいに扱うんだよぅ・・・」

真希「パンダだからな」

棘「高菜」

マイン「いや、まんま獣臭でしょ。あたしが風呂入れって言ってんのにこいつちっとも聞かないのよ?」

パンダ「濡れるのが嫌なんだよ・・・。でも俺はお前らと違って汗かかないし、毎日ちゃんとファブってる。だから・・・臭くない」

そして現在。

真希「・・・ということがあった」

マイン「絶対臭いから、あんたら嗅いでみなさい」

恵と野薔薇、パンダの匂いを嗅ぐ。

恵「・・・別に臭くない・・・お日様の匂いって感じですね・・・」

女子3人「お・ひ・さ・ま・・・⁉」

女子、衝撃が走り、ちょっぴりときめく。

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