呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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雨後

高専の遺体安置所。硝子は悠仁の遺体を解体するための準備に入っている。医学について専門外の悟、赤女(あかめ)、伊地知に今できることは何もない。3人はただこの場に待機しているだけ。そんな時、悟が口を開く。

 

「僕はさ・・・性格悪いんだよね」

 

「知ってる」

 

「知ってます」

 

「伊地知、後でマジビンタ、2倍」

 

「ま、マジビンタ⁉」

 

(なぜ伊地知だけ・・・)

 

自分で言っといていざ肯定されるとビンタ宣言をする悟。しかも2人分を伊地知だけに。八つ当たりを通り越して理不尽極まりない。

 

「教師なんて柄じゃない。そんな僕がなぜ高専で教鞭をとっているのか・・・聞いて?」

 

「・・・何で・・・ですか・・・?」

 

悟が教鞭に立つ理由を強制的に尋ねるよう仕向ける悟に伊地知はそれに応じて理由を尋ねる。

 

「・・・夢があるんだ」

 

 

どこかもわからない場所。あるのは血のように赤い水と、数多くの異形の生物の頭骨に象られた寺のお堂のみ。そのお堂に悠仁と共に死んだはずの宿儺が玉座のように座っている。宿儺の視線の先には、同じく死んだはずの悠仁がいる。

 

「随分と殺気立っているな」

 

「当たり前だ。こちとらお前に殺されてんだぞ?」

 

「腕を治してやった恩を忘れるとはな」

 

「その後心臓取っちゃったでしょーが!!」

 

宿儺は悠仁を見て非常につまらなさそうな顔をしている。

 

「ここ・・・地獄か?死んでもてめぇと一緒なのは納得いかねぇけど・・・ちょうどいいや・・・。泣かす!!!」

 

悠仁は足元に置いてあった異形の頭骨を持ち、それを宿儺目掛けてぶん投げた。力強く投げられたため、お堂に激突した際、強い衝撃が走る。土煙が立ち込める中、無傷の宿儺は跳躍し、異形の身体の骨の上に着地する。その直後、悠仁は骨の上をよじ登り、宿儺まで迫ろうとする。

 

「歯ぁ、食いしばれ!!!」

 

悠仁が放つ拳の連撃を宿儺は避けたり、腕で受け流したりしてやり過ごす。そして、宿儺が拳を振るった瞬間、悠仁は拳を宿儺の拳と交差させ、足元に向けて打撃を与えた。そう、フェイントである。

 

(鼻から足場を・・・)

 

「引っ掛かってやん・・・の!!」

 

悠仁は隙をつけたと思い、足払いをして宿儺を転ばそうとした。

 

(取った!)

 

1本取れたと思った矢先、宿儺は一瞬で悠仁の背後に立ち、蹴りを躱した。

 

「あれ?」

 

「お前もつまらんな」

 

宿儺は後ろから悠仁を骨から蹴落とした。落とされた悠仁は赤い水に不時着する。

 

「ぷはっ!完璧入ったと思ったのに・・・どあ⁉」

 

悠仁が起き上がるも、宿儺が降りてきて、背中に乗られる。そして宿儺はそのまま悠仁の背中に座り込む。

 

「ここはあの世ではない。俺の生得領域だ」

 

「生得領域・・・?伏黒が言ってたような・・・」

 

「心の中と言い換えてもいい。つまり、俺たちはまだ死んでいない」

 

ここが生得領域の中・・・精神世界と言い換えてもいい。この中で意識がハッキリしているということは、現実世界の悠仁の心臓さえ治すことができれば、悠仁は生き返ることが可能となるようだ。宿儺はその際に、ある提案をする。

 

「お前が条件を呑めば、心臓を治し生き返らせてやる」

 

「偉っそうに・・・!散々イキっといて結局てめぇも死にたくねぇんだろ!」

 

「事情が変わったのだ。近いうち、面白いものが見れるぞ」

 

宿儺の脳裏に浮かび上がるのは、自分にプレッシャーを与えさせた恵の姿だ。どうやら宿儺はよほどに恵を気に入ったと見える。

 

「条件は2つ。1、俺が『契濶』と唱えたら1分間身体を明け渡すこと。

2、この約束を忘れること」

 

宿儺が心臓を治す条件は非常に簡単なものだった。だが簡単故にこの条件に裏があるのは明白だ。それをわかってることもあるが、宿儺の本性を理解した悠仁はこの条件を拒否する。

 

「ダメだ。何が目的か知らねぇが、きな臭すぎる。今回のことでようやく理解した。お前は邪悪だ。もう二度と身体は貸さん!」

 

悠仁が提案を拒否したので、宿儺は面倒くさそうに1つの約束事を付けた。

 

「ならばその1分間誰も殺さんし、傷つけんと約束しよう。・・・はー、うざ・・・」

 

「信じられるか!!」

 

悠仁は宿儺への不信感から拒否をする。ただこれはただの約束事ではない。

 

「信じる信じないの話ではない。これは『縛り』、制約だ。守らねば罰を受けるのは俺。身に余る私益を貪れば報いを受ける。それは小僧も身を持って知ったはずだ」

 

宿儺が言っているのは、特級呪霊を祓った後でもすぐに宿儺に代われなかったことを指している。つまりあれも何らかの縛りが課されていたのだ。

 

「前は大丈夫だっただろ!!」

 

悠仁の言った前というのは、赤女(あかめ)と10秒間戦うことになった日のことを指している。

 

「ん?ああ・・・あの時は俺も代わりたかった。お前もあの女に言われてやっただけ。利害による縛り・・・呪術における重要な因子の1つだ」

 

つまりあの時は宿儺の要望と赤女(あかめ)の要望を同時に了承したため、縛りが成立した。だからあの時は10秒後、すんなりと主人核に戻ることができた。彼女もその縛りを理解したうえで発言したのだろう。

 

「・・・わかった。どいてくれ。条件を呑む」

 

悠仁が条件を了承したことを聞いた宿儺は素直に立ち上がる。

 

「・・・何がしてぇのかよくわからんけど・・・まぁ生き返るためだしな!!!」

 

重みがなくなった悠仁が起き上がった直後、彼は顔を向けた宿儺に向けて強烈な拳の一撃を放った。不意を突かれ、宿儺は彼の拳をまともにくらった。そう、ただ出まかせを言っただけ。悠仁はこの条件を了承していない。

 

「・・・何て言うわけねぇだろ。無条件で生き返らせろ。そもそもてめぇのせいで死んでんだよ」

 

不意を突かれた宿儺は口元を拭い、また1つ提案を出す。

 

「・・・ではこうしよう。今から殺し合って小僧が勝ったら無条件で、俺が勝ったら俺の縛りで生き返る」

 

「いいぜ。ボコボコに・・・」

 

ザシュッ!!

 

悠仁が提案に了承する直後、宿儺は術式を使って悠仁の頭を真っ二つに斬り裂いた。精神世界だから死にはしないが・・・結局悠仁は宿儺の縛りによって生き返ることを余儀なくされてしまった。

 

 

「夢・・・ですか・・・?」

 

「そ」

 

高専の遺体安置所。悟に強制的にとはいえ、教師になった理由を尋ねた伊地知に悟は自分の夢を話した。

 

「悠仁のことでもわかるとおり、上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿・・・腐ったみかんのバーゲンセール。そんなクソ呪術界を、リセットする」

 

とどのつまりは呪術界の改革・・・それが悟の夢。そんな話に伊地知と赤女(あかめ)は耳を傾ける。

 

「上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ、赤女(あかめ)の言うとおり上がすげ替わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃ、誰もついてこないしね。だから僕は教育を選んだんだ。強く聡い仲間を育てることを」

 

「初めて聞いた時は本当に驚いたものだ。悟がまさかそんなこと言いだすなんて想像すらしてなかった」

 

「ははは、懐かしいねぇ、あの時の驚き顔。超レアものだよ?」

 

悟は学生時代に赤女(あかめ)にこの夢のことを話した出来事を思い出し、軽く笑ってみせた。

 

「ま、そんなわけで、自分の任務を生徒に投げることもある。愛の鞭」

 

「それはお前がサボりたいだけだろ」

 

「はい伊地知マジビンタ3倍」

 

「ひっ!!?」

 

「やめてやれ」

 

発言したのは赤女(あかめ)なのに理不尽に伊地知にビンタ宣言をする悟。あまりの理不尽に脅える伊地知を気遣い、赤女(あかめ)が苦言を呈す。

 

「・・・みんな優秀だよ。特に、今赤女(あかめ)が担当してる3年『秤』。2年乙骨。彼らは僕たちに並ぶ呪術師になる」

 

悟は亡くなった悠仁の可能性を思い、悔しさで拳を握りしめる。

 

(悠仁もその1人だった・・・!)

 

悟が今、どういった感情を抱いているのか見ただけでわかってしまった赤女(あかめ)と伊地知は何と声をかければよいか、わからなかった。

 

「ちょっと君たち、もう始めるけど、そこで見てるつもりか?」

 

話している間に硝子の方は準備完了。これから解体が始まるのかと思った矢先、3人の中の緊迫が霧散し、目の前の光景に対して驚愕で目を見開いていた(悟はアイマスクなのでわからないが)。

 

「ん?」

 

3人の反応を見て何事かと思って悠仁の遺体に目を向けて見ると・・・

 

「おわっ!フルチンじゃん!」

 

死んだはずの悠仁が起き上がっていたのだ。3人はその瞬間を目撃して、先ほどの反応なのだ。

 

「ご、ごごごごご五、五条さん!!あ、ああああああ、あ、赤女(あかめ)さん!!い、いいいいい、生き・・・生きて・・・!!」

 

「くっくっく・・・伊地知うるさい」

 

「驚いたな・・・こんなこと初めてだ・・・」

 

悠仁の復活に驚愕する伊地知は呂律が回らなくなっている。目の前の奇跡を目の当たりにした悟は伊地知を黙らせつつ、笑みを浮かべている。赤女(あかめ)も悠仁が生き返り、嬉しさのあまり片手で顔を覆い、笑みを浮かべている。

 

「ちょっと残念・・・」

 

「あのー・・・恥ずかしいんすけど・・・誰?」

 

悠仁の復活に硝子はちょっぴり残念がっている。

 

「悠仁」

 

「ん?」

 

硝子と赤女(あかめ)がとりあえず悠仁が着れる服を持ってきた時、悟は彼に近づく。

 

「おかえり!」

 

「おっす!ただいま!」

 

パァン!

 

悟が片手をあげると、悠仁は満面な笑みで復活を祝して軽快なハイタッチを交わしたのであった。

 

 

悠仁が復活したことで、もう用はないとして遺体安置所から退室した悟、赤女(あかめ)、硝子はこの後悠仁をどうするかについて、廊下を歩きながら話し合っている。

 

「あー・・・報告、修正しないとね・・・」

 

「いや、このままでいい。また狙われる前に、悠仁に最低限力をつける時間が欲しい」

 

「それがいいだろうな。今戻っても、同じことの繰り返しだ。硝子、すまないが記録上、悠仁は死んだままにしてくれ」

 

「んー?じゃあ、虎杖がっつり匿う感じ?」

 

「いや、交流会までには復学させる」

 

「?それはなんでだ?」

 

「簡単な理由さ。若人から青春を取り上げるなんて、許されてないんだ。何人たりともね」

 

悟が思い出すのは、自分たちの学生時代の楽しかった青春の日々だ。

 

「僕1人でもいいんだけど・・・僕と赤女(あかめ)とじゃあ、得意分野が全然違う。赤女(あかめ)、悪いけど協力してよ」

 

赤女(あかめ)が思い浮かべるのは、悟が自分に呪術界改革に協力を求めた出来事だ。

 

「もちろん、協力する。お前の夢がどこまで通用するか、近くで見てみたい」

 

悟に強く信頼されているは赤女(あかめ)その当時を思いだし、笑みを浮かべながら今回も協力に応じるのであった。

 

 

一方その頃、東京にあるファミレス。ここで働く従業員たちは今日も楽しく働いている。その中の1人の従業員が強い危機感を感じ取っている。その原因となっているのが、5番テーブルに座っているエスデスと、その周りにいる呪霊たち。男には呪霊は見えていない。だが呪霊の禍々しい気を男は肌で感じているのだ。

 

(俺は今からバイトをばっくれる!!昔から責任感は強い方だった!給料も全部4人の義妹を大学に通わせるために貯金している!そんな俺でも抗えない生存本能!!あのテーブルに近づけば死ぬ!!!)

 

1人の従業員がそんなことを考えているとは露知らず、エスデスは呪霊たちと呪術師に勝てる算段を話し合っている。

 

「五条悟・・・禪院赤女(あかめ)・・・やはり我々が束になっても殺せんか・・・」

 

「ひらひらと逃げられるか・・・最悪お前たち全員祓われる。私も両方を相手にするのは骨が折れる。だから片方は殺すより、封印に心血を注ぐことをお勧めしよう」

 

「封印?その手立ては?」

 

最強と呼ばれる2人を封印することは難しいだろう。だがそれを可能にできる物が存在する。エスデスはその封印できる代物の名を口にする。

 

「特級呪物『獄門疆』を使う」

 

獄門疆という呪物の名を聞いた漏瑚は一つ目を見開かせている。

 

「っ!!!獄門疆!!?持っているのか!!?あの忌みものを!!!」

 

漏瑚は嬉々とした様子で興奮しており、頭の火山が軽く噴火する。

 

「漏瑚、興奮するな。熱くなる」

 

漏瑚が興奮した影響で辺りの気温温度が上昇する。それこそ、冷房の風がちっとも利かなくなるほどに。エスデスが漏瑚を制している。そんな彼女を見た店長は注文しないことにしびれを切らしている。もちろん、店長に呪霊は見えていない。

 

「5番全然注文しねぇなぁ。誰か急かして来いよ。1人でテーブル席だし」

 

「すみません店長・・・俺、辞めます!!」

 

「え?はあ!!?おい、ちょっと待てよ!!」

 

その中で強い危機感を感じ取っている従業員が突然辞めると言い出し、店長は困惑する。1人の従業員は生存本能に従い、逃げるようにファミレスから出ていった。

 

「私行きます?」

 

「もういいよ・・・」

 

店長は仕方ないとし、自分が注文を聞きに行こうと5番テーブルに近づく。

 

(?冷房ついてるよな・・・?)

 

店長は店内が熱くなっていることに違和感を感じつつも、エスデスがいる5番テーブルに近づいた。

 

「お客様。ご注文はお決まりです・・・」

 

ボゥッ!!!!

 

店長が彼女に注文を聞こうとしたその瞬間、突如として店長が炎に包まれた。突然人が炎に巻かれ、焼け死んだことにより、店内は大騒ぎだ。

 

「きゃああああああああああああああああああ!!!!????」

 

混沌と化した店内でも、エスデスは氷のように冷静だ。

 

「あまり騒ぎを起こすなよ」

 

「これでいいだろう?」

 

ボワッ!!ボワボワボワボワァ!!!!

 

漏瑚がそう言って手を軽く動かすと、店内にいる従業員と客が次から次へ、わけもわからず炎に包まれて焼き殺されていった。

 

「ケホッ・・・高い店にしなくて正解か・・・」

 

エスデスは炎の煙たさに軽く咳をし、上の報告が面倒だなと呑気なことを考えている。

 

「エスデス・・・儂は宿儺の指何本分の強さだ?」

 

「甘く見積もっても、8、9本分くらいだな」

 

漏瑚は宿儺の指と比較した強さをエスデスに尋ね、その答えにニヤリと笑った。

 

「十分!獄門疆を儂にくれ!蒐集に加える。その代わり・・・五条悟と禪院赤女(あかめ)は儂が殺す」

 

獄門疆の交換条件として、最強と謡われている悟と赤女(あかめ)を殺すと漏瑚は自信もって言い切った。彼にはそれほどの自信と矜持があるのだ。

 

「まずは、肩慣らしに禪院赤女(あかめ)を葬るとしよう」

 

漏瑚はそう言って、あまりの恐怖で店内から逃げようとした最後の従業員を、自身の術式で焼き殺した。

 

 

一方の高専の運動場。2年生のシゴキを受けている野薔薇は現在、パンダに追いかけられている。他の2年生はその様子を見ていた。しばらくすると、ジャージに着替えてきた恵がやってきた。

 

「伏黒遅い!!!」

 

「やっと来たか・・・」

 

「昆布」

 

「今までどこほつき歩いてたのよ⁉」

 

「何でもいいでしょ」

 

何も答えなかったが、恵はつい先ほどまで岡崎正の母親の自宅に向かって、彼の名札を添えて死亡報告をしていたのだ。名札は特級呪霊から逃げる際、彼の服から破って持って帰ったのだ。当然、息子の死の報告に母親は悲しんだ。恵はその母親の悲しんだ顔が忘れられない。

 

「・・・禪院先輩や三好先輩は、呪術師としてどんな人たちを助けたいですか?」

 

「は?あたしがどんな人を助けようと、あたしの勝手でしょ?」

 

「つーか、私のおかげで誰が助かろうと知ったこっちゃねぇよ」

 

恵は興味本位で2人の先輩からどんな人を救いたいか尋ねたが、どれも望むような回答ではなかった。

 

「聞かなきゃよかった」

 

「ああ!!?」

 

「何⁉なんか文句あんの⁉」

 

「別に」

 

「伏黒おおおおおおおおお!!!」

 

恵の素っ気ない態度に真希とマインが突っかかろうとした時、パンダにジャイアントスイングされている野薔薇が彼に必死に呼びかける。

 

「面接対策みたいな質疑応答してんじゃないわよ!!!!交代!!!もう学ランはしんどい!!!かわいいジャージを買いに行かせろぉ!!!」

 

「いくぞぉ~。それぇ~」

 

「ギニャーーーーーー!!!!!」

 

パンダは軽いノリでそのまま野薔薇を放り投げた。

 

「・・・あの2人は何してんですか?」

 

「受け身の練習」

 

「高菜」

 

「お前らは近接弱っちぃからなぁ」

 

確かにこれまでの2人の戦闘を見てみると、それほど近接戦闘が得意ではない。

 

「とりあえずあんたらのレベルに合わせてあげる。伏黒、あんたはあたしとよ」

 

マインはそう言って普段は使わない二丁拳銃の呪具(弾はゴム)を構えて恵を軽く挑発してみせる。

 

「まずは、マインに1本取ってみろよ。話はそれからだ」

 

真希にそう促され、恵はマインとの模擬戦を開始するのであった。

 

 

一方その頃、強くなるためにブラートに教えを請うた(たつみ)は特訓のために山に連れてこられている。この山は人が通ることはほとんどないため、(たつみ)の特訓場にはピッタリなのだそうだ。頂上までの道が整備されているが、2人はあえてここを通らず、かなり危険な道を通って山を登っていく。

 

「資料を見る限りだと、(たつみ)は1年の中で近接はナンバーワンの強さだ。勘も鋭い。だがお前は3人と違って呪力が0。呪力による身体強化ができねぇ。加えて・・・16年も身体を酷使しなかったせいで肉体が衰えてる。それのせいでお前の身体能力や勘が肉体にまるでついてこれてねぇ。だからまず最初にお前に必要なのは、お前の能力に見合った肉体だ」

 

最初に必要なものが能力に見合った肉体と言われても彼にはピンと来なかった。

 

「肉体って言われても、俺毎日筋トレは欠かさずやってるぞ?」

 

「その程度じゃたかが知れてるだろ」

 

一応筋トレはやっているようだが、それだけでは足りないとブラートは指摘する。

 

「何も筋トレが無駄っていうわけじゃねぇ。ただお前がやってきた筋トレは一般人がよくやる常識量のそれだ。それだけじゃちっとも足りねぇ。もっときつめの訓練じゃなきゃ意味がねぇ。お前にはその中で特にきついものをやってもらう」

 

「ど、どんな特訓なんだい?」

 

「まぁ慌てるな。もうすぐで着く」

 

しばらく歩いて辿り着いた場所とは、水がよく澄んだ川であった。川の水は緩やかに流れている。

 

「まずは初級レベルだ。スタート地点からゴール地点まで、川の流れを逆らって泳いでもらう。もちろん、ただ普通に泳ぐんじゃないぞ?」

 

ブラートは背負っている大きなリュックを下ろし、中から何かを取り出した。取り出したものとは、兵士などがよく着そうな鎧であった。

 

「こいつを身に着けて泳いでもらう」

 

「よ、鎧⁉」

 

「養育カリキュラムにある鍛錬方法の1つだ。鎧はそれなりの重さがある。今日は行けそうなレベルに合わせてはいるが、毎日レベルを徐々に上げていくから、このレベルでへばるんじゃねぇぞ?」

 

初級レベルといっても、川の流れに逆らって泳ぐにはそれなりの能力が求められてくる。それに加えて、重い鎧を付けたままでだ。ハードルが高すぎる。さらに付け足すならば、(たつみ)が受け取った鎧の重さはかなりあり、着るだけでも一苦労しそうなものだ。

 

「お、重・・・!いきなりハードルが高すぎやしない?」

 

「この程度もこなせないようでは、強くなるなんて一生できないぞ」

 

(たつみ)は少し弱音を吐いたりしたが、ブラートに指摘され、気を引き締め直す。

 

「強くなりたいんだろう?虎杖の死に報いたいんだろう?」

 

強くなりたい。その気持ちに嘘は一切ない。もう二度と大事な仲間が死んでしまうなんてことが起きないように。特級相手でも仲間が守れるように。そのためならば、どんなキツイ訓練だってやる。(たつみ)はの心は、熱く燃えている。

 

「・・・よっしゃあ!やってやる!」

 

(たつみ)はさっそく服を着たまま鎧をつける作業に入る。やはりかなり苦労はしたが、何とか着こなした。そして、休む暇もなく、初級レベルの鎧泳ぎを開始するのであった。

 

 

一方その頃、高専の地下。高専関係者、及び上層部に悠仁が生きていると知られるわけにはいかないため、悟と赤女(あかめ)はこの場所で悠仁の特訓をつけることにした。

 

「私の見立てだと、近接戦闘では(たつみ)に次ぐか、それ以上か・・・。どちらにしても悠仁は頭1つ抜けてると思う。今お前が覚えるべきは、呪力のコントロール。そして呪術に関する最低限の知識だな」

 

赤女(あかめ)が現在悠仁に必要な能力を述べていると、悠仁はにこやかに笑っている。

 

「?どうした?」

 

「いやぁ。やっぱ修行付けてもらうなら五条先生や赤女(あかめ)先生の方がいいと思ってたから嬉しくて」

 

にこにこ笑った後、悠仁は2人に修行をつけてもらいたい理由を述べた。彼が思い浮かべるのは、宿儺が恵と(たつみ)の2人と戦っていたあの出来事だ。

 

「俺は弱くて誰も助けらんなかった。それどころか伏黒や和倉を殺しかけた。今のままじゃ、あいつらに顔向けできねぇ」

 

あの時の出来事は宿儺が主な原因があるため、悠仁に非はないのだが、あれらを自分の責任だとして、重く受け止めているようだ。

 

「強くなりたい!俺に最強を教えてくれ!」

 

悠仁の強い思いを聞いた悟と赤女(あかめ)は笑みを浮かべる。

 

「ふっふーん、お目が高い」

 

「先生、自分で最強って言ってたけどね」

 

「はーい、じゃあまずはこの僕、五条悟の呪力コントロール講座!あちらの缶ジュースをご覧ください」

 

悠仁は悟に言われた通り、机に置いてあったお茶と缶ジュースに顔を向けた。じっと見ていると、お茶の缶が何かに直撃し、中身をぶちまけた。隣の缶ジュースは何か捻られるかのように捻じれ、中身をぶちまける。

 

「おおお!!?」

 

こっち(お茶)が呪力で、こっち(缶ジュース)が術式」

 

飲み物を粗末にするなと無言で悟を殴っている(無下限バリアで届いていない)赤女(あかめ)は置いておいて、潰れた缶にはそれぞれ術式や呪力の違いがあるようだが、なぜかキメ顔の悠仁には全く理解できなかった。

 

「なるほど、わからん」キリッ!

 

「んー、そうだねぇ・・・。呪力を電気、術式を家電に例えようか。電気だけじゃ、ちょっと使い勝手悪いでしょ?だから家電に電気を流して様々な効果を得るわけ。こっち(お茶)はただ呪力をぶつけただけ、こっち(缶ジュース)は呪力を術式に流して発動した呪術で捻じった」

 

悟の呪術と呪力の違いを聞いて、悠仁はピコーンと閃いた。

 

「つまり!これからチョベリグな術式を身に着けると!!」

 

「いや、悠仁は呪術使えないよ」

 

「・・・えぇ?」

 

自分の考えをあっさりと否定された悠仁はカチーンッと固まった。

 

「簡単な式神とか結界術は別として、基本的に術式は生まれながらに身体に刻まれてるものだ。だから術師の実力は才能がほぼ8割って感じなんだよねぇ」

 

実質的に呪術が使えない悠仁は才能なしと言われてるようなもので、彼はショックで紙のようにぺらぺらと床に倒れる。

 

「・・・大丈夫か?」

 

「いや・・・俺もサンダーとかファイアーとかパワーボムができると思ってたから・・・」

 

「パワーボムはできるだろ」

 

「あ~・・・ダメだこらぁ~・・・霊丸とか卍解とか螺旋嵐とかどどん波とかさぁ~・・・」

 

「・・・おもしろい」

 

赤女(あかめ)はやる気なくぺらぺらになって拗ねている悠仁を面白がってツンツンと突っつく。

 

(今は使えないだけ・・・そのうち君の身体には、宿儺の術式が刻まれる)

 

それとは対照的に悟は悠仁に対し、相応の思惑があるようで、ニヤリと笑っている。

 

「できないことはガン無視していこう!君の長所をさらに伸ばす!悠仁の体術に呪力をさらに上乗せするんだ!下手な呪術よりこういう基礎でごり押しした方が僕は僕は怖いよ。赤女(あかめ)もどっちかっていうと基礎のごり押しタイプだし」

 

悟の指摘にペラペラだった悠仁はピクリと反応する。

 

「さっき赤女(あかめ)も言ってたけど、肉弾戦の才能はピカイチだからねぇ」

 

「!!でもでも!それなら俺もうできるぜ!」

 

「「起きろよ」」

 

やっとペラペラ状態から戻った悠仁はちゃんと呪力が込められると言い張る。まだ起きようとしてない悠仁を赤女(あかめ)が起こす。

 

「あの時、なんとなくコツは掴んだ」

 

少年院で特級呪霊と戦っていた時、彼は確かに下手ながらも呪力は込められていた。

 

「じゃあやってごらん?ここに打ち込んで?どうせできないから」

 

悟は同じことは起こらないと宣言したうえで、掌を差し出して、拳を受け止める体制に入った。

 

「怪我してもしんないよ?」

 

「いいからはよはよ」

 

悠仁は自身の拳に力を込め、悟の掌に向けて拳を放った。悟は難なくこれを受け取る。そして呪力は全く籠められていなかった。

 

「籠ってなかったね、呪力」

 

「なんで!!?」

 

呪力が込められてなかったことに驚く悠仁にその理由を赤女(あかめ)が答える。

 

「呪力の源は負の感情だ。お前の言うあの時はおそらく、怒りや恐怖に満ち溢れてたのだろうな」

 

その説明を聞いた瞬間、悠仁はまたピコンと閃いた。

 

「あ!呪力を使う時、常にブチギレてなきゃいけねぇのか!確かに伏黒も常にキレ気味だったかも」

 

「全然違う」

 

悠仁の出した解釈を速攻で否定する赤女(あかめ)

 

 

悠仁の解釈を肌で感じ取ったのか外にいる恵はピキーンと反応し、こめかみを引くつかせている。

 

「どうした?」

 

「今、とてもイラっとしました」

 

「あ?」

 

「いや、先輩じゃなく・・・」

 

「無駄話してる場合じゃないわよ」

 

何のイラつきかはわからないが、恵はとりあえず訓練を再開する。ちなみに野薔薇は未だにパンダのジャイアントスイングを受けている。

 

「交流会まで一月半。手加減してるあたしに1本取れないと話にならないわよ」

 

「そういうことだ。ボサボサしてんなよ。次、お前も長いもん試してみろ」

 

真希は恵に持っていた薙刀の模擬刀を投げ渡す。難なく受け取った恵は薙刀の模擬刀を構えてみる。

 

「・・・意外としっくりきますね」

 

模擬刀は初心者でも扱いやすいのか、恵にはかなりしっくりきている様子だ。

 

 

場は高専の地下に戻り、悟は悠仁に呪力の制御訓練の重要性を説明する。

 

「みんな僅かな感情の流れから呪力を捻出する訓練をしてるんだ。逆に大きく感情が触れた時、呪力を無駄遣いしないようにね。訓練方法はいくつかあるけど、悠仁にはかなりしんどいものをやってもらうよ」

 

「ど、どんな・・・」

 

どのような訓練が待っているのか、悠仁は固唾を飲む。悟が出す呪力制御の訓練とは・・・

 

「映画鑑賞」

 

映画鑑賞が訓練内容と聞き、悠仁は疑問符を浮かべている。

 

「映画鑑賞ぉ?」

 

「そ!名作からC級ホラー、地雷のフランス映画まで、起きてる間はぶっ通しでだ!」

 

「もちろんただ普通に見るんじゃないぞ」

 

そう言って赤女(あかめ)は隣の部屋からあるものを持ってきた。それは、長い手にボクシンググローブを付けてぐーすか眠っている熊の呪骸だ。

 

「これと一緒に見るんだ」

 

「何?このキモかわいい人形?」

 

「かわいいか?」

 

「私は普通にかわいいと思う」

 

「えぇ・・・?」

 

お世辞にもかわいいとは言い難い人形を悠仁と赤女(あかめ)はかわいいと言い張り、自分の感性がおかしいのかと思い始める悟。

 

「これは学長特製の呪骸だ」

 

「あー、やっぱりか!趣味が同じ!」

 

赤女(あかめ)は悠仁に熊の呪骸を渡す。夜蛾が作った呪骸を受け取った悠仁は趣味に納得がいった。

 

「・・・で?全然要領が得ないんだけど」

 

「焦らない焦らない。そろそろだよ」

 

悠仁がじーっと熊の呪骸を見ていると・・・

 

パチッ!ボコォ!!!!

 

「んごぉ!!??」

 

突然呪骸が目を覚まし、手を伸ばして悠仁の顎にアッパーを放った。

 

「その呪骸は一定の呪力を流し続けないと今みたいに襲ってくるよ」

 

「いっでぇええええ!!!」

 

「さっきも言ったとおり、ここにはいろんな映画が揃ってるから、ドキドキ、ハラハラ、ワックワク!泣けて笑えて胸糞悪くなれる。まずはその呪骸を起こさず、無傷で映画を1本見通すこと。これがどんな感情下でも、一定の呪力出力を保つ訓練。多すぎても少なすぎてもダメだよ」

 

「今は悠仁でも出せる微弱な呪力に設定してはいるが、徐々に大きな出力を要求してくるから、最後まで気を抜くなよ」

 

「抜きたくても抜けねぇよこれじゃあ・・・」

 

悠仁が再び呪骸を持つと、呪骸は暴れ出す。少しの呪力を送ると眠りだし、悠仁は一安心。がその直後また暴れ出すの繰り返しで悠仁は内心ハラハラしっぱなしだ。

 

「何から見る?これなんておススメだよ。ヒロインがムカつくんだけどさ、最後派手に死ぬの」

 

「これもおススメだな。黒幕の大臣がものすごく腹立つんだが、最後惨たらしく死ぬんだ」

 

「すんげぇネタバレ・・・」

 

映画のラストをネタバラシされてその2作品は見る気が一気に失せてくる悠仁。

 

「そうだなぁ・・・最初はアクション・・・」

 

バキッ!!

 

悠仁が見たい映画を希望した時、呪骸が悠仁の顔面にパンチを繰り出した。

 

「あーーーもーーーーー!!!!!」

 

悠仁はキレて呪骸を地面に叩きつけた。

 

「はい、イライラしてても呪力は一定」

 

こうして悠仁の楽しくもムカつく映画鑑賞会という名の呪力制御訓練が始まるのであった。

 

 

一方の山の中。鎧泳ぎというハードすぎる特訓を何とかこなした(たつみ)は次なる特訓のため、ブラートと共にベースキャンプを張るのに最適な場所へと移動する。

 

「肉体の他にも、お前には足りてないものがある。それは何だと思う?」

 

「え?う~ん・・・」

 

突然投げかけられた質問に(たつみ)は少し考えて答える。と、ここで(たつみ)は宿儺に壊された怨念刈りを思い出す。

 

「・・・呪いが祓えることができる武器・・・とか?呪いは呪いでしか祓えないから・・・」

 

「はっはっは。まぁそうだな。フィジカルギフテッドは呪具がないと呪いを祓えないからな。だがな、そんなものよりも、もっと大事なものが他にある。戦いにおいて最も重要なことだ」

 

「んー?なんだろう・・・?」

 

出した答えは不正解だったようで、本当に必要なものは何か、(たつみ)は真剣に考える。すると・・・

 

ヒュンッ!!

 

(たつみ)が背負っていた薪が何かによって突き飛ばされる。振り返ってみるとそこには、木の姿をした呪霊が自身の枝を伸ばしていた。どうやら先ほど何かとは、この呪霊の枝だったようだ。

 

「げっ!呪い!!」

 

(たつみ)の手元には呪具がない。この状態で呪霊に襲われたらひとたまりもない。呪霊が今度は(たつみ)に向けて枝を伸ばしたその時・・・

 

シュンッ!!ザクゥ!!!

 

ブラートが素早く剣を投擲し、それが呪霊の一つ目に直撃した。

 

「木獣だな。気をつけろ、3級だと思って油断してると食われるぜ」

 

一つ目を潰され、木獣は見事祓われたが、この呪霊は1体だけではなかった。他の木もよく見てみると、至る所に木獣が擬態しており、こちらを伺っている。

 

「つーわけで、ここは俺が請け負った任務の討伐対象、木獣が蔓延る山だ。今のお前に必要なのは観察眼だ。こいつらはそれを養うのにぴったりだ。熱いだけじゃ生き残れないぜ?」

 

木獣が何体か動き出したのを見て、(たつみ)は1体の木獣を刺した剣を手に取り、構える。

 

「これも特訓だ。その呪具を使って可能な限りでいい。どれが木獣か見極めながら戦ってみな」

 

「おう!」

 

意気揚々と答える(たつみ)のやる気は十分だ。

 

「傷ついたら、俺がベースキャンプで手厚く介抱してやるからな!」

 

「なんでそこで顔が赤くなるんだよ!!?」

 

このタイミングでなぜか頬を赤くして発言するブラートに(たつみ)は若干引き気味である。ちなみに、この様子を見ていた木獣もなぜか顔を赤くしていた。

 

 

高専の運動場、ちょうどいい時間帯になったため、恵たちは休憩に入っており、野薔薇はさっそくジャージを買いに街へと向かって行った。休憩の最中、とある議題が出た。

 

「呪具の持ち運びかぁ・・・」

 

「得物で近接を補うのは賛成ですけど、術式上両手はパッと開けられるようにしたいんです。刀とかも鞘に納めるロスがあるし・・・」

 

恵の術式は両手を使って手影絵を作ることで発動する。ゆえに両手を使う呪具などは、逆にデメリットにもなりえるのだ。

 

「禪院先輩は2つ以上持ち歩くこととかザラですよね?三好先輩も予備のライフルを持って行く時もありますし。そういう時はどうしてるんですか?」

 

「「パンダに持たせてる」」

 

(聞かなきゃよかったパート2・・・)

 

恵の問いかけに対し、真希とマインはさも当然のように答えた。質問したことを若干ながら後悔してる恵。

 

「物を出し入れできる呪霊を飼ってる術師とかもいるよな」

 

「それは無理だろ、レアだし。飼い慣らすにも時間がかかる」

 

「何よりあいつ気色悪いのよ。あんなのに大事な呪具を入れるなんて嫌よ」

 

「私は欲しいけどな。見つけたら私に教えろよ?」

 

「カルパス1年分」

 

「カルパス食べるパンダってどうなのよ・・・」

 

2年生が話し込んでいる間、恵は少年院での宿儺の言葉を思い返す。

 

『わからんな。そこの小僧はともかく、お前何であの時逃げた?』

 

『宝の持ち腐れだな』

 

(あれは俺には特級に勝てる可能性があった・・・そういう意味だったんだろうか・・・?)

 

恵にはまだ調伏できていない式神が何体かいる。それを抜きにしてもやりようはいくらでもあった。それこそ特級に勝てるほどに。宿儺はそれを指摘しているのかと考える恵は手を伸ばし、自分の影に触れた。すると、恵は閃き、試しに影に手を突っ込んでみた。すると、恵の指は影の中に入っていく。

 

「ツナツナ」

 

「ん?なんだよ?」

 

「・・・先輩。何とかなりそうです」

 

光明を得た恵は笑みを浮かべていた。

 

 

一方高専の地下。映画鑑賞という名の特訓を行っている悠仁は呪骸に一定の呪力を送り込みながら呑気にソファに寝ころびコーラを飲みながら映画を見ている。映画の名シーンが流れようとした時・・・

 

バキィ!!!!

 

「ぶっ!!!!」

 

呪力が少し乱れ、呪骸が起きて悠仁をぶん殴った。殴られた悠仁は口に含んでいたコーラを吹いてしまう。

 

「コーラ飲んでる時はやめろよ!!!」

 

「「飲むなよ」」

 

呑気にコーラを飲んでいた悠仁に悟と赤女(あかめ)が冷静にツッコミを入れる。

 

「お家映画にはポテチかコーラでしょ!!?」

 

「それはそうねぇ」

 

とはいえ、悠仁の気持ちは理解できるのか、悟は賛同している。が、特訓とは無関係だ。

 

「じゃあ、私は用事があるからそろそろ出る。悟、遅刻はするなよ」

 

「はいはいわかってますよー」

 

「悠仁もその調子で頑張ってくれ」

 

「こんなんで強くなれんのー?」

 

暴れる呪骸を抑えている悠仁はこれで本当に強くなれるのか懐疑的である。

 

「・・・あ、そうだ。悠仁、ちょっと聞きたいんだが・・・」

 

「ん?」

 

「お前、死んでる時宿儺と話したか?」

 

「話?」

 

「心臓を治すに至って、条件や契約を持ちかけられなかったか?」

 

足を止めてまでの赤女(あかめ)の質問に悠仁は少し考える素振りを見せる。

 

「あー・・・なんか話した気はするけど・・・思い出せねぇんだよなぁ・・・」

 

しかし、いくら考えても、話した内容を思い出せないようだ。

 

「・・・・・・そうか」

 

それを見た赤女(あかめ)はもうすでに何らかの縛りが課せられてしまっているのだろうと推測をする。とはいえ、それを確かめる術はないため、仕方なく今は用事を済ませることを優先するのであった。

 

 

高専を出た後、赤女(あかめ)は車で目的地まで移動している。車は現在、山の車道を通っている。車を運転しているのは金髪の女性補助監督である。

 

彼女の名は新田明。伊地知の後輩で呪術高専東京校の補助監督の1人である。

 

「予定通り、学長との約束まで時間はたっぷりあるっス。希望があればどこか寄りますっス」

 

「そうだなぁ・・・たまには手土産を買っておこうか。近くの商店街まで頼む」

 

「はいっス!」

 

赤女(あかめ)は車の中で夜の山の景色をじっと見つめている。

 

「・・・・・・止めろ」

 

「えっ⁉ここでっスか⁉」

 

すると彼女は突然停車指示を出した。明は指示通りに車を停車させ、赤女(あかめ)はここで降りる。

 

「すまないが少し用事を思い出した。先に行って学長には少し遅れると伝えてくれ」

 

「えっ⁉用事⁉こんな山の中でっスか⁉」

 

「大丈夫だ。後で悟も来るから、伊地知を拉致って合流する」

 

「言い方・・・。わ、わかりましたっス」

 

山の中でどんな用事があるのか気になるところだが、赤女(あかめ)なら大丈夫だと思い、指示通りに車を走らせて先に向かって行った。これでこの場に残ったのは赤女(あかめ)1人のみ。

 

「・・・さて」

 

赤女(あかめ)が車が見えなくなるまで見送り、軽く息を吐いて、鞘に納めた刀の柄を手に持って構えたその時・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィィエェェェェッ!!!!!」

 

ズドォォォンッ!!!!

 

赤女(あかめ)の頭上より、何者かが現れ、彼女を勢いよく踏みつぶそうと襲い掛かってきた。赤女(あかめ)は後ろに軽く飛んで回避するが、襲撃者が着地した瞬間、地面が深く抉れてクレーターが出来上がる。

 

人語を話す単眼の火山頭の特級呪霊、漏瑚の急襲である。




じゅじゅさんぽ

五条悟のGOGO五条

悟「今日は、僕の母校、東京都立呪術高等専門学校に来ています。おやぁ?さっそく困ってる人がいますね。先生かな?どうやら今停学中の3年生に送る課題作りに悩んでるそうですね。アドバイスしていきましょう」

悟、赤女(あかめ)の耳元に近づく。

悟「君はせまーい歩道を歩いている。目の前には大体の男子大学生。彼らは君に気付いていない。殺意が湧くだろう?すると・・・」

赤女(あかめ)「うるさいぞ悟。悠仁にフラれたからってこっちに来るな」

悟「・・・・・・フラれてないもん」

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