呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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急襲

夜蛾との用事を果たすために山の車道を車で移動していた時、赤女(あかめ)は不穏な気配を感じ取り、明を先に向かわせた。1人になった時を見計らうように、火山頭の単眼の特級呪霊、漏瑚が襲撃してきた。

 

「お前・・・何者だ?」

 

漏瑚の攻撃を後ろに軽く飛んで躱した赤女(あかめ)が漏瑚に問いかけた。

 

「ヒャアッ!!!」

 

追撃するかのように、漏瑚が片手を片手を振り下ろすと、赤女(あかめ)の死角から突然火山のような突起物が現れた。

 

ボゥッ!!!ゴオオオオオオオオ!!!!

 

赤女(あかめ)がそれに気づいて振り向いた時には、穴から高火力の火炎が噴火し、周囲の森ごと赤女(あかめ)を容赦なく全身を焼き尽くす。火炎の放出が終わると、辺りは黒煙と火炎で溶けた地面が広がっていた。

 

「ふふふふふ・・・存外大したことなかったな・・・ん?」

 

目の前に広がる光景を見て、笑みを浮かべる漏瑚だったが、その笑みはすぐに消えた。

 

キィィンッ!!

 

「誰が・・・大したことないと?」

 

じっと目を凝らして見てみると、黒煙は何か得物に斬られたかのよう霧散していく。黒煙が完全に晴れるとそこには焼き尽くしたと思われていた赤女(あかめ)が無傷で刀を鞘に納めた状態で構えてそこに立っていた。

 

「・・・小童め・・・」

 

漏瑚は忌々し気な表情で赤女(あかめ)を睨みつけ、耳のコルクのようなものを回している。

 

(呪霊なのにコミュニケーションが取れる・・・加えてこの呪力量・・・未登録の特級だな。悟が言っていた特級とは違うようだが・・・少なくとも、今の宿儺より断然強い)

 

赤女(あかめ)は漏瑚を見て、彼が特級に相当する呪霊であると容易にわかる。

 

「5月の特級に6月の宿儺復活・・・今月の呪胎に加えてこの急襲・・・。特級とは、誰もが成れる存在ではないから特級という。こうも連続で特級案件が転がると、世界のバランスが崩れる」

 

「ふふふ、矜持が傷付いたか?」

 

「いや。あいにくそのようなものはとっくの昔に捨てた」

 

身構えて挑発的な言葉を並べる漏瑚に対し、赤女(あかめ)は冷静に鞘に納めた刀を手に持ったまま構え続ける。

 

「フンッ、その余裕・・・いつまで持つかのう?」

 

漏瑚はニヤリと笑みを浮かべたまま、火山頭から何かを噴射させている。

 

(わざわざ人がいないところで・・・いや、他の術師の加勢を避けたわけか)

 

漏瑚の火山頭から噴射していた何かは丸まりから解除し、鋭い針が備わり、羽が生えた不気味な蟲となった。その数数十体。

 

「火礫蟲!」

 

不気味な蟲は漏瑚の指示に従うかのように動き、赤女(あかめ)目掛けて突進してきた。

 

(少なくとも、私を狙ってきたのは間違いないな)

 

刀を持って構え続ける赤女(あかめ)から、強大な呪力が放たれ、彼女の周りを覆う。

 

「葬る」

 

スパッ!!!!

 

赤女(あかめ)が刀を抜刀した瞬間、向かってきた全ての蟲が刀によって切り裂かれる。

 

【ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!】

 

切り裂かれた蟲は口を開き、奇声をあげた。同時に、奇声の中に混じって奇妙な音が聞こえてきた。

 

(音・・・?)

 

赤女(あかめ)がその音を聞き取ると・・・

 

ドカアアアアアアアアン!!!!

 

切り裂かれた数十体の蟲は自爆して、巨大な火柱を立てた。その火柱から赤女(あかめ)が刀を鞘に戻して出てきた。

 

(音と爆発の二段構えか・・・なかなかに器用なことをする)

 

赤女(あかめ)が推察を立てると、死角から漏瑚が現れ、炎を片手に接近してきた。それに気づいた赤女(あかめ)はすぐに刀を持ち直し、いつでも抜刀できる構えを取る。それを見た漏瑚はあの構えに何かあると気づき、立ち止まる。

 

(あの構え・・・何かあるな・・・。近接戦を持ち込めばこちらが不利か・・・ならば・・・!)

 

近接戦は不利だと判断した漏瑚は片手を振るい、遠距離で炎を放った。赤女(あかめ)は迫ってきた炎を刀を構えたまま跳躍して躱した。

 

「デェェイヤアアアアアア!!!」

 

ゴオオオオオオオオ!!!!

 

漏瑚が片手を振ると、死角から再び火山のような突起物が現れ、赤女(あかめ)の着地と同時に高火力の炎が噴火し、赤女(あかめ)を焼き尽くす。

 

「まだまだぁ!!!」

 

さらに漏瑚は追撃として上空から高火力の炎を掌から大砲のように放った。炎に包まれている赤女(あかめ)はさらにその攻撃をまともにくらってしまう。

 

 

ドオオオオオン!!!

 

山で特訓していた(たつみ)とブラートはベースキャンプ場で、山に震動が起きたことを感じ取った。顔をあげて見ると、遠くから強烈な火柱が上がっているのを目撃した。

 

「な、なんだありゃあ!!?」

 

「・・・嫌な予感がするな・・・」

 

何か異変が起きたのではと思い、ブラートは起き上がり、様子を見に下山を始めた。それを見た(たつみ)は急いで彼についていった。

 

 

圧倒的な炎の熱量によって、大きな黒煙が立ち込めており、地面はドロドロに溶け、赤女(あかめ)がいた着地地点には軽い溶岩が出来上がっていた。

 

「こんなものか。蓋を開けてみれば弱者による過大評価。今の人間はやはり紛い物・・・真実に生きておらん」

 

最初に無事であったこと、火礫蟲が抜刀技で全て斬られたことは驚いたが、少し本気でかかってみればあっけなく戦闘が終わったと考える漏瑚。

 

「万事醜悪反吐が出る。本物の強さ、真実は死をもって広めるとしよう」

 

戦いが終わり、漏瑚は清々しい表情で背を向け、この場を後にしようと歩き出す。

 

「殺したと思って喜んでいるところ悪いが・・・まだ終わりではないぞ」

 

「ぬっ!!?」

 

だが背後から聞こえてきた声を聞いて、漏瑚は目を見開いた。振り返ってみれば、またも何事もなかったかのように無傷な赤女(あかめ)がそこにいた。

 

「・・・どういうことだ?」

 

本気で殺しにかかったのにもかかわらず赤女(あかめ)は生きている。これには漏瑚は驚きが隠せない。困惑する漏瑚に赤女(あかめ)がタネを明かす。

 

「結論から言うと・・・私に届いてない」

 

「馬鹿な。さっきとはわけが違う。威力も最初と比べ物にもならん。防げるはずがない」

 

「より正確に言うならば、私に炎が迫る前に内側から炎が破壊されたということだ」

 

「?」

 

内側から破壊されたの意味が理解できない漏瑚は怪訝な顔をしている。

 

「わかってないならもう1度実践してやる。さっきの炎を1度放ってみろ」

 

そう言って赤女(あかめ)はまた抜刀の構えを取り、漏瑚の炎が来るのを待っている。

 

(またあの構え・・・だが殺意はない・・・探るだけ探るか・・・)

 

警戒を高めている漏瑚は現段階では殺意がないことを確認し、探りを入れるため、言われた通り高火力の炎を赤女(あかめ)に放った。赤女(あかめ)は刀を構えたまま動かず、そのまま炎に包まれる。

 

(今のは先ほどのものと同等の威力・・・さて、禪院赤女(あかめ)はどうなった・・・んん!!?)

 

自分が放った炎がどうなったじーっと見ていると、炎の変化が起きて漏瑚は目を見開かせる。漏瑚が放った炎は、まるで得体の知らない何かに侵されたかのように、じわじわと焼き消されていく。そして炎に包まれたはずの赤女(あかめ)は全くの無傷である。

 

(ど、どうなっておる!!?炎が・・・逆に焼き尽くされておる!!これは・・・呪毒か!!?)

 

「正解だ。私の術式、一殺呪毒は本来対象に切り傷を与えなければ呪毒を流すことができない。私はその弱点を補うためにいくつかの対策を施している。その1つが、先ほどの技のアレンジだ」

 

先ほどから赤女(あかめ)が取っている構えは、後天的に習得できるある技の見様見真似。それを独自に改良したものだ。

 

「シン・陰流『簡易領域』。あれは範囲に狭い領域を展開し、領域展開を中和する技。私は見様見真似で得たこの技に一殺呪毒の呪力を送り込んだ。するとその性能は一気に変わる。この技を発動している時、私の一定範囲内に放たれた術式は中和されていき、最終的には無効化される。これは簡易領域ではないため、さすがに領域の中和は無理だがな」

 

「なっ!!?術式そのものを中和だと!!?」

 

「もっとわかりやすく言うならば、術式のみに利く毒ということだ。私はこの技を、シン・陰流我流奥義『玉砕』と名付けている」

 

赤女(あかめ)が放った技、シン・陰流我流奥義『玉砕』の詳細を聞き、漏瑚は驚愕し、これまで赤女(あかめ)が無傷でいられたからくりを理解した。

 

「さて、本来ならば今すぐにでも葬ってやるところだが、お前には聞きたいことが山ほどある。全て話すのであれば、楽に葬ってやる。しゃべらなければ・・・相当痛い目を見ることになるぞ」

 

「話すことなどない!!」

 

赤女(あかめ)の警告に対し、漏瑚は反発で返した。

 

「そうか。ならば・・・半殺しだ」

 

赤女(あかめ)が目をぎらつかせると同時に、刀を鞘から抜いた。刀は変色し、美しい白銀色へと変わる。

 

「貴様ぁ!!!!」

 

ズバァ!!!!

 

漏瑚が憤慨すると同時に、赤女(あかめ)は目も止まらぬ速さで刀を振るい、漏瑚の胴体を斬り裂いた。

 

「ごあ・・・!!」

 

「術式反転―――"切一文字"」

 

胴体に切り傷をつけられた漏瑚は血反吐を吐いた。

 

(速い!!ただ斬っただけではない・・・!!儂の身体に何かが付着しておる!なんだこれは・・・!!?わからぬ!わからねば!!)

 

「言ったはずだ。話さねば相当痛い目を見ると」

 

赤女(あかめ)はもう片方の手を握りしめ、呪力を纏わせる。呪力を纏った拳を傷口を抉りこむように打ち込んだ。1回だけではない。2回、3回、4回と連続で傷口に拳を叩き込む。そして最後は強烈な一撃を打ち込んで漏瑚を軽く吹っ飛ばす。

 

「ごは・・・!」

 

「一殺呪毒の順転は一撃喰らった時点で死ぬ。今お前が生きてられているのは、術式反転の方を使っているからだ。そして・・・シン・陰流我流奥義は反転でも使用が可能だ」

 

赤女(あかめ)は刀を鞘に戻して、再び構える。すると、赤女(あかめ)の膨大な呪力が刀に込められていく。

 

「シン・陰流我流奥義―――『一閃・白夜』」

 

ドオオオオオオオオン!!!!!

 

赤女(あかめ)が刀を抜刀したその瞬間、凄まじい斬撃波が繰り出され、辺り一面の森の木が次々と斬り倒されていく。斬撃波をくらった漏瑚は残った木の枝に衝突しながら吹っ飛ばされていく。態勢を立て直した漏瑚は片手を翳し、赤女(あかめ)に向けて炎を放とうとする。しかし・・・

 

キィィン!ザシュッ!!

 

「ぬおおお!!」

 

いつの間にか懐に入られ、漏瑚は赤女(あかめ)が振るった刀によって、片手を斬り落とされる。赤女(あかめ)さらに追撃として漏瑚を蹴り飛ばす。蹴とばされた漏瑚はもう片方の手を使って器用に木の上まで離脱しようとする。だが行動を先読みした赤女(あかめ)は跳躍して先回りし、漏瑚を殴り飛ばす。そして、木を蹴り上げて赤女(あかめ)は漏瑚の頭を鷲掴みにして勢いに乗せて地面に擦り付ける。漏瑚は赤女(あかめ)を蹴り上げて何とか脱出し、距離を取る。

 

「ビャアアア!!!」

 

距離を取った漏瑚はまだ無事な右手を翳し、高火力の炎を赤女(あかめ)に向けて放った。だが炎を放った時にはすでに赤女(あかめ)はおらず・・・

 

キィン!スパッ!!

 

右手すらも刀によって斬り落とされる。漏瑚の腕を斬った赤女(あかめ)は背後に回り、足に黒く輝く呪力を身に纏わせ、蹴り上げた。

 

ドオオオン!!!!バッシャアアアアアアン!!!!

 

強烈な一撃をくらった漏瑚は吹っ飛ばされ、湖に勢いよく叩きつけられた。湖の水が漏瑚に雨のように降り注いでいる。そんな中、漏瑚はファミレスでエスデスとの会話を思い出す。

 

『まずは、肩慣らしに禪院赤女(あかめ)を葬るとしよう』

 

『その代わりに獄門疆をくれと・・・。構わないが・・・死ぬのはお前の方だぞ、漏瑚』

 

警告ともいえる彼女の言葉。漏瑚はこれを大袈裟と捉えていたが、今となってはその言葉の意味が十分に理解できた。特に、赤女(あかめ)が相手ならば。

 

(・・・眉唾ではなかったな・・・。奴の言うことが本当ならば、斬られた儂はもうすでに死んでおる・・・。生きておるのは奴の気まぐれ・・・!だが好都合!)

 

最終的には祓うつもりなのであろうが、今は殺すつもりがないのならば漏瑚にとっては好都合だ。

 

(儂に付着しておるこの毒・・・儂の呪力が逆流して乱しておる。傷が治らん上に呪力がうまく練られん。だが領域は展開できる。奴が順転を繰り出す前に、領域に引きずり込んでやる)

 

漏瑚は起き上がり、自らの腕に炎を灯して焼き落とした。腹部は再生できないが、自らの腕を欠損させたことによって失った腕が呪力で再生される。すると漏瑚はこちらに近づいてくる気配に気づいた。だがその気配は赤女(あかめ)のものではない。漏瑚は気配を感じ取った方角に視線を向けた。

 

「くそ・・・嫌な予感的中かよ・・・」

 

「・・・っ!」

 

この湖にやってきたのはこの山で特訓していた(たつみ)とブラートであった。嫌な予感が当たったことでブラートは頭をかき、(たつみ)は漏瑚を一目見て圧倒的威圧感を感じ取った。

 

「・・・あ、兄貴・・・あの火山頭・・・まさか・・・」

 

「そのまさかだ。あいつ・・・特級相当の呪霊だ」

 

「と、特級・・・!」

 

先日少年院で特級呪霊を見たばかりなのに、立て続けに別の特級呪霊を見たことにより、(たつみ)は足がすくんでいる。

 

「・・・なんだ貴様らは?術師か?」

 

「こ、こいつもしゃべるのかよ!!?」

 

「驚いたな・・・俺も悠長にしゃべる呪霊は初めて見た」

 

漏瑚が人の言語をしゃべっていることに対し、(たつみ)とブラートは驚いている。

 

「まぁいい。まずは貴様らからあの世に送ってやるとしよう。キェェェイ!!!!」

 

漏瑚は2人に向けて片手を翳し、高火力の炎を放った。

 

(たつみ)、俺から離れるなよ!!」

 

「兄貴⁉」

 

炎が迫ってくる中、ブラートは(たつみ)の前に出て、手に持っていた剣を地面に突き刺して叫ぶ。

 

「インクルシオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

ゴオオオオオオオオ!!!!

 

迫ってきた炎はブラートと(たつみ)を包み込んだ。黒煙が立ち込める中、漏瑚は2人を殺したと思い、笑みを浮かべる。が、その笑みはすぐに消えた。黒煙が晴れると、人影が2つ見えた。1人は(たつみ)。もう1人は・・・白銀の鎧を全身に身に纏い、槍の呪具を構えている大漢であった。

 

「あ、兄貴か・・・?」

 

「無事か?(たつみ)

 

発せられる声からして、この白銀の鎧を身に纏っているのはブラートのようだ。

 

「こいつは呪具インクルシオ。絶対的な防御力を誇る鎧の呪具だ」

 

「か・・・かっけえぇぇぇ!!」

 

「おお!わかるのか!こいつの良さが!」

 

(たつみ)は呪具インクルシオのカッコよさに惚れこみ、興奮している。ブラートもインクルシオを褒められてまんざらでもない様子だ。それとは対照的に漏瑚は驚愕で目を見開いている。

 

(あれはインクルシオ!!?よもやあの呪具を身に纏える術師が現れようとは・・・!あの大漢、何者だ!!?)

 

漏瑚はインクルシオをよく知っているのか、その表情には畏怖が込められており、冷や汗をかいている。そうこうしているうちにも、漏瑚を追ってきた赤女(あかめ)が追いつき、湖に着水する。

 

「!赤女(あかめ)!」

 

「!(たつみ)!ブラート!お前たちも来ていたのか!」

 

「お前さんがここにいるってことは、奴さんの狙いは・・・」

 

「ああ。私の命を狙っていたようだ」

 

夜蛾との約束を後回しにしてまでこの山にいる赤女(あかめ)と、ボロボロの様子の漏瑚を見て、一瞬でどういう状況下なのか理解したブラート。

 

「状況は理解できたぜ。手を貸そうか?」

 

「いや、お前は(たつみ)を守ってくれ。こいつには聞きたいことが山ほどある」

 

(ぬぅ・・・他の術師と合流してしまったか・・・。まぁいい。まとめて領域に引きずり込めばよい)

 

赤女(あかめ)が構え直すと同時に、漏瑚は次の一手を繰り出すための準備に入ろうとする。すると・・・

 

「はは、面白いことやってるねー。ぜひとも見学させてよ」

 

「どこ!!?ねぇ、ここどこ!!?えっ!!?えっ!!???」

 

状況が見えておらず、困惑している悠仁を片手で抱えている悟がいつの間にか現れた。赤女(あかめ)以外の全員は悟が現れたことにも驚いたが、何より驚いているのは・・・

 

「悟」

 

「!!五条悟!!?それにそいつは・・・!!」

 

「い、虎杖ぃ!!!!???」

 

「なんだとぉ!!!??」

 

「え!!?あっ!!赤女(あかめ)先生に和倉!!と、誰?ねぇ、これどういう状況!!??なんなのこれどういうこと!!?」

 

(宿儺の器・・・!)

 

死んだと思われていた悠仁が生きていることだ。特に、生きていると知らされていなかった(たつみ)とブラートは困惑しっぱなしだ。

 

「というわけで、今日見学するのはこの僕、五条悟と、虎杖悠仁君でーす」

 

「富士山!!頭富士山!!!」

 

周囲が驚いているのを無視して悟は呑気に自分と悠仁を紹介した。

 

 

そもそも悟がなぜここにいるのか・・・時間は遡って同じ山の別車道。悟は伊地知の車に乗って目的地に向かっている最中だ。

 

「学長との約束までまだ時間はありますけど、どこか寄ります?」

 

「いいよ。遅刻するなって言われて遅刻したら、面倒なこと言いそうだし」

 

悟が車の中で外の景色を眺めていると、山の中で不穏な気配を感じ取った。

 

「・・・止めて」

 

「え?ここでですか?」

 

伊地知は指示通りに車を止めた。悟は車から降りる。

 

「先行ってて?」

 

「え!!?これ、何か試されてます?本当に先に行ったら殴る的な・・・」

 

「僕を何だと思ってるの」

 

「あぁ・・・で、では・・・」

 

いろいろと戸惑っている伊地知は悟に言われた通りに車を走らせ、先に向かった。

 

「・・・さてと・・・」

 

悟が軽く息を吐くと、一瞬で瞬間移動し、その場からいなくなった。次に悟が現れたのは山の中の上空。彼は自身の術式で宙に浮いている。

 

「多分ここにいるだろうけど・・・どこかなー?」

 

ドオオオオオオオオン!!!!!

 

「お」

 

悟が周りを見回していると、遠くから強い衝撃音が聞こえてきた。悟がそちらに視線を移してみると、そこには赤女(あかめ)が漏瑚を蹂躙している姿が映った。

 

「おー、いたいた。派手にやってるねー。ウケる。さっさと祓っちゃえばいいのに」

 

悟はこの様子を面白がりながら、状況を考察する。

 

(あいつの呪力量から察するに、未登録の特級か。僕が北海道で見た奴とはレベルが違うようだけど・・・少なくとも今の宿儺よりは強いね)

 

悟がこの状況を考察していると、悟は思いついたかのような顔になる。

 

「あ、これ、ちょうどいいか」

 

悟はそう言うと同時に、一瞬で瞬間移動し、山から姿を消した。

 

 

悟が瞬間移動で向かった場所とは、高専であった。悟は高専の地下に入り、悠仁の様子を確認する。悠仁は呪骸に一定の呪力を流し込みながら映画を見ている。映画はクライマックスに突入しており、呪骸は鼻息を立てて眠り続けている。

 

(へぇ~・・・意外と呑み込みが早い・・・)

 

悠仁の様子を見て、悟は彼に感心している。

 

「悠仁」

 

「おあっ!!??五条先生⁉」

 

悟に呼び掛けられた悠仁はビクッとなって彼に顔を向ける。呪力は乱されておらず、呪骸は眠り続ける。

 

(話しかけても問題なし・・・速めに出力上げて、さっさと次の段階に進めそうだね)

 

今の悠仁ならば特訓の次の段階に進めそうであると悟は考える。

 

「用事は?」

 

「出かけるよ、悠仁」

 

「えぇっ!!?」

 

「課外授業」

 

悟は悠仁に課外授業をすると伝えて彼を掴み上げ、またも瞬間移動でこの場から悠仁と一緒に姿を消した。

 

 

そして今に至る。悠仁は湖の水に沈まず、水面を立っていることに驚いている。これも悟の術式によるものだ。

 

「あちゃー、(たつみ)もいたかー。ま、でもちょうどいっか」

 

「なんで・・・俺たち沈まねぇの⁉先生、俺、10秒前まで高専にいたよね?どうなってんの⁉」

 

「んー、飛んだの」

 

(あ、説明する気ないな・・・)

 

説明する気がない様子の悟を見て、悠仁は状況の開示要求を諦めた。

 

「おい五条!!どうなってんだこれは!!?なんで宿儺の器が生きてるんだ!!?」

 

「そうだよ!!俺が1番気になってるのはそれ!!マジでどういうことなんだよ!!?」

 

困惑している様子の(たつみ)とブラートに対し、悟は説明を無視して口を開く。

 

「ブラっちー、(たつみ)をそのまま捕まえといてー」

 

「「はあ!!??」」

 

「彼にも、呪術戦の頂点、『領域展開』について教えてあげたいの」

 

「領域・・・展開・・・?」

 

領域展開という聞きなれない単語に疑問を浮かべる(たつみ)。それとは別に漏瑚は悠仁を見つめている。

 

(宿儺の器・・・やはり生きていたか・・・)

 

エスデスから呪術師に勝てる条件を聞かされた時から、もしやとは思っていたが、やはり驚きは隠せてない漏瑚。

 

『呪術師最強と呼ばれる男、五条悟、及び最強の呪詛師殺しと呼ばれる女、禪院赤女(あかめ)を戦闘不能にさせること。

両面宿儺、虎杖悠仁を仲間に引き込むこと』

 

(今後のために虎杖は殺せん・・・まさか我々の目的に気付いて・・・?)

 

今後のために悠仁を生かしておきたいと考える漏瑚は悟に目的がバレたのではと勘繰りを入れている。

 

「・・・なんだ貴様は?この小娘の加勢に来たのか?」

 

「加勢?違う違う。言ったでしょ?見学だって。今この子に、いろいろ教えてる最中でね。ま、君は気にせず、彼女と戦ってよ」

 

「わざわざ小娘の死に際を拝みに来るとは、愚かだな」

 

漏瑚は悟に向けて挑発している。対し、悟はこの挑発を嘲笑している。

 

「はははは、君相手に赤女(あかめ)はやられないでしょ。だって君・・・弱いもん」

 

ブチッ!!!ゴオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

挑発するつもりが逆に挑発されて、漏瑚はブチギレて両耳や火山頭から高出力の炎を噴火した。

 

「舐めるなよ小童が!!!!!!この場にいる全員、飲み込んでくれるわぁ!!!!!!」

 

ビリビリビリッ!

 

漏瑚から放たれた強い殺気とプレッシャーに悠仁は(たつみ)は圧倒されている。

 

(こいつが弱いだって・・・?そんなわけねぇ・・・これまでの呪いより・・・少年院の呪いより・・・あのサイボーグより・・・遥かに化け物・・・!!)

 

圧倒的な強さを肌で感じ取っている(たつみ)にブラートは腕を彼の肩に組ませる。

 

「大丈夫だ。俺から離れるなよ」

 

「兄貴・・・!」

 

「悠仁も、僕から離れちゃダメだよ」

 

ブラートの言葉に(たつみ)は彼に頼もしさを感じる。悟も悠仁を安心させようと、彼の頭をポンと手を置く。怒りに燃える漏瑚に赤女(あかめ)は刀を鞘に納め、構え直す。炎の噴火が収まった漏瑚は両手で印相を結ぶ。

 

「領域展開―――"蓋棺鉄囲山"

 

漏瑚が術を唱えたと同時に、周囲の景色が一気に変わった。一瞬真っ暗闇に覆われたかと思いきや、突然何もない空間から岩石と溶岩が溢れ出て、この場にいる全員を岩石の中に閉じ込めた。

 

「「な・・・なんだよ、これ・・・⁉」」

 

湖から突然このような溶岩溢れる灼熱空間に変わったことにより、ひどく困惑している(たつみ)と悠仁。当然、この溶岩は本物で飲み込まれてしまえば死んでしまうだろう。

 

「「うわっつ!!?アチチチチ!!!」」

 

「これが領域展開。術式を付与した生得領域を呪力で周囲を構築する。君たちが少年院で体験したのは、術式で付与されていない未完成の領域だ。ちゃんとした領域なら、1年全員死んでたよ。恵はわかってたんじゃないかな」

 

2人の脳裏に真っ先に思い浮かべたのは少年院の寄宿舎に入った途端に見たあの異常な光景だ。あれはこの領域展開が未完成のものだったらしく、もし完成していたら間違いなく1年生全員死んでいたと悟は断言する。

 

「領域を広げるのは滅茶苦茶呪力を消費するけど、それだけに利点もある。1つは環境要因によるステータス上昇」

 

「おお!ゲームのバフみたいなもんだね!」

 

悟の説明に悠仁はステータス上昇をゲームで例えた。

 

「そしてもう1つ・・・」

 

もう1つの説明を赤女(あかめ)がしようとした時、彼女の目の前に熱を帯びた巨大な岩石が迫った。赤女(あかめ)は抜刀してこの岩石を真っ二つに切り裂く。

 

(ちぃ・・・!並の術師なら領域に入れた時点で焼き切れるのだがな・・・)

 

漏瑚の考えていることが正しいのならば、この領域に入ってしまえば未熟な術師は焼け死んでしまうとのこと。だがまだまだ術師として未熟な悠仁と(たつみ)は焼かれていない。悠仁は宿儺の器であるためわかるが、(たつみ)に関しては、ある落とし穴があるがそれは伏せておく。

 

「領域内で発動した付与された術式は絶対当たる」

 

「「絶対!!?」」

 

「ずぇーったい!!」

 

赤女(あかめ)が言い放った言葉に反応して驚愕する2人に悟が過剰に肯定する。

 

「まぁ安心しろ。対処方法はいくつかある」

 

領域が発動した際に対処方法をブラートが説明する。

 

「1つはさっきみたいに呪術で受ける。もう1つは、あまりお勧めはできないが、領域外に逃げることだ」

 

「ま、大抵無理だけどね」

 

ブラートが提示した2つ目の対処方法を悟は補足を入れるように否定する。それだけ領域外に逃げることは危険だしリスクが高いのだ。

 

「貴様からもらった呪力を乱す呪毒、それをより濃い領域で中和してしまえば、解毒でき、儂の傷も治療できるのであろう?」

 

「可能だ」

 

「ん?毒?解毒?」

 

漏瑚の問いかけに対し、赤女(あかめ)は素直に肯定した。ここまでの状況を理解できていない悠仁は首を傾げている。

 

『獄門疆を儂にくれ!蒐集に加える』

 

(ここに来たのは半分は戯れ。殺せぬならそれはそれで構わぬと思っていた。だが、突き付けられたこの彼我の差を・・・呪霊としての!新たな人間としての矜持が!到底受け入れられん!!)

 

最初こそ殺せないならば条件通りに事を進めようと考えていた。しかし、こうして自分と相手の実力の差を見せつけられ、一撃で祓えるにも関わらず祓わないという行為に漏瑚は舐められていると感じている。これでもかと呪霊としての矜持をへし折られた漏瑚は、赤女(あかめ)の取った行動に後悔させるように、全力を持って殺しにかかろうとする。

 

「領域に対する最も有効的な手段・・・こっちも領域を展開する。同時に領域が展開された時、より洗練された術がその場を制するんだ。相性とか呪力量にもよるけど」

 

領域展開の有効的な対処法を話す悟は、内心とてもワクテカした気分になっている。

 

(さて・・・内容自体は知ってるけど、生で見るのは僕も初めてだからね・・・。赤女(あかめ)の領域展開・・・堪能させてもらおうかな)

 

悟がそんな考えを持っているのとは露知らず、赤女(あかめ)は抜いた刀を鞘に納める。

 

「灰すら残さんぞ!!禪院赤女(あかめ)ぇ!!!!」

 

漏瑚は術式をフルパワーで放ち、大量の溶岩が赤女(あかめ)に迫ろうとする。対する赤女(あかめ)は赤い瞳をギラつかせ、両手を合わせて、印相を結ぶ。

 

「領域展開―――"神樂海紅"

 

赤女(あかめ)が領域展開の術を唱えると、次の瞬間、構築された世界が塗り替わった。

 

赤女(あかめ)の足元から鮮明な水が大量に溢れ出し、迫りくる溶岩を全て消し去った。水が地面全てを覆い尽くすと、岩石は全て取り払われ、水の中より不気味ながらに美しい赤色の桜の木が成る。そして、辺りの空間は夜になり、空には不気味に輝く赤い満月の光が空間を照らす。

 

(・・・何が起こった?儂の領域が押し退けたのか・・・?)

 

今目の前で何が起きたのかわからず、自分の領域が赤女(あかめ)の領域に簡単に押し負けてしまったと完全に理解するには時間がかかった。

 

(・・・身体が動かん。指1つ動かせん。金縛りか・・・?・・・いや・・・違う・・・儂の身体が、悲鳴を上げておる・・・!この空間一帯に瘴気が充満しておる・・・。この領域に入ったその瞬間、儂は毒に侵された・・・。故に・・・動けん・・・!)

 

漏瑚が状況を全て理解した頃には、既に赤女(あかめ)は彼の背後に立っていた。彼女の手には、者から抜いた刀があり、刀身には呪霊の血がついている。

 

「この領域内は、呪毒で満たされている。入って来た時点で対象者の身体を蝕む。呪毒とは文字通り呪いの毒。体内に取り込めば、身体の機能を奪い、最後には必ず死を齎す。それこそ、毒に蝕まれたとも気付かずに、何もできないまま、な」

 

赤女(あかめ)はこの領域内の見えない毒の説明をし、刀を振って空を切り、刀についた血を払う。水面に映る赤い満月は、赤女(あかめ)と漏瑚の影を映している。

 

「だが、何度も言うがお前には聞きたいことが山ほどある。だから今は・・・この程度で済ませておく」

 

キィンッ!ブシュアアア!!!!

 

赤女(あかめ)が刀を鞘に納めると、水面に映る満月は真っ二つに切り裂かれる。それと連動するかのように、漏瑚の首が真っ二つに斬られ、呪霊の血が噴水のように溢れでた。

 

パリィィィンッ!!

 

領域が解除された時、漏瑚に残ったのは頭のみ。漏瑚の頭はころころと野原を転がり、赤女(あかめ)に容赦なく顔を踏みつけられ、銀色に輝く刀身を向けられる。

 

「さて・・・まず1つ・・・誰の命令でここに来た?」

 

漏瑚の頭を踏みつける赤女(あかめ)は1つ目の質問を投げかけた。

 

「ヒューッ、イカすー♪」

 

「ははは、手を貸す必要もなかったな」

 

たった1人で漏瑚を戦闘不能にさせた赤女(あかめ)に悟とブラートは称賛している。

 

(す・・・すげぇ・・・特級が相手なのに・・・こうもあっさりと・・・)

 

(これが・・・呪術師最強の片割れ・・・生き物としての・・・格が違う・・・!)

 

赤女(あかめ)の実力を目の当たりにした(たつみ)と悠仁はその圧倒的強さに固唾を飲んでいた。

 

 

山から少し離れた崖にて、戦いの一部始終を観測していた者がいた。その1人はエスデス。そしてすぐそばには漏瑚の仲間であるサイボーグと2つの木のような角を持った筋骨隆々の呪霊だ。

 

「・・・やはり、こうなったか」

 

「ジジィ・・・だからやめとけって言ったのによぅ」

 

「・・・・・・」

 

一部始終を見ていたエスデスは少し呆れ果てた様子である。

 

「私は『奴』との縛りで、高専関係者にお前たちの関係を見られるわけにはいかないのでな。ここは退かせてもらう」

 

エスデスは縛りの関係上、手を下すわけにはいかないためこの場を去ろうとする。とはいえ、縛りなしでも彼女には漏瑚を助けるという気持ちは持ち合わせていないが。

 

「助けたいなら好きにしろ。お前たちにそんな情があるかは知らんがな」

 

「ーーーーー。ーーーーーーーーーーー」

 

「ジジィが言ってたろ。俺たちこそが真の人間。情はあるぜ。てめぇにはわからんだろうがな」

 

そう言ってサイボーグは自身の身体を航空機に変形させ、漏瑚の元へ移動する。筋骨隆々の呪霊もそれに合わせ、その場から姿を消す。

 

「・・・ああ、わからんとも。弱者の気持ちなんぞな」

 

表向きには協力関係にあるようだが、エスデスは呪霊たちに対して、心底見下している様子だ。

 

 

一方、赤女(あかめ)による頭1つだけとなった漏瑚の尋問は続いていた。

 

「命令されて動いているわけではないな。となると、私や悟を殺した方がいいと提案されたというわけか」

 

「え?僕?完全に巻き込まれじゃん。やだねー」

 

「どちらにしても・・・交渉相手は誰だ?」

 

「くっ・・・!誰が言うか・・・小童が・・・!」

 

頭だけになっても死なない漏瑚は死んでも口を割ろうとはしない。その様子に赤女(あかめ)は漏瑚をさらに強く踏みつけ、彼の単眼に刀をぎらつかせる。

 

「早くしゃべらないと、次は目を潰すぞ」

 

「貴様・・・!!」

 

「うおっ、怖・・・」

 

「ていうか・・・呪いって会話できんだね。普通過ぎてスルーしてたわ」

 

是が非でも漏瑚から情報を聞き出したい赤女(あかめ)は物騒なことを言いだしている。対し悠仁は今更ながら呪霊との会話が成立できていることに気がついた。

 

「あ、てかスルーしかけてたけど・・・虎杖、お前なんで生きてんの?」

 

「もしかして・・・中にいる宿儺のおかげか?」

 

「あ、忘れてた。和倉・・・と、誰っすか?」

 

普通に悠仁が生きていたことに対し、(たつみ)とブラートは悠仁をまじまじと見つめる。すると・・・

 

ズドォォン!!

 

突然赤女(あかめ)の目の前に木の幹が空から降ってきて地に突き刺さった。地に突き刺さった木の幹は一瞬で周囲に美しい花びらを咲かせ、花畑が完成する。

 

「わー、お花だー」

 

「きれいー」

 

「あはははー」

 

花から発せられる香りによってこの場にいる全員が安心感を覚え、徐々に繊維が逸れていく。が、悟たちは自分の頬を叩いて、正気に戻る。

 

(呪術、だよな・・・?戦意が削がれる)

 

3人が隙を見せた瞬間、まだのほほんとしている悠仁の背後から突如植物のツタが生えてきて彼の足を掴み持ち上げた。

 

「うわああ!!?」

 

「!虎杖!!」

 

悠仁の声で正気に戻った(たつみ)は彼を助けようと動いた時、上空より等身の機械生命体が何体も降りてきた。

 

「おわっ!!」

 

(!あれは・・・岩見沢で見た式神。ということは・・・)

 

岩見沢で見た機械の式神を見て、悟はもしやと思い空を見上げる。上空では航空機に変形しているサイボーグが自身の部品を外して何体もの式神を落としていっている。

 

「!あいつは・・・!」

 

航空機になっても、(たつみ)は決して間違えたりしない。友と父の仇を。サイボーグを見た(たつみ)は強い憎悪が湧いてきた。

 

バッ!

 

悟たちが注意を逸れたタイミングを見計らい、筋骨隆々の呪霊が姿を現し、漏瑚の頭を回収して戦線を離脱する。それを確認したサイボーグも機械の式神を落としながら戦線を離脱する。

 

「てめぇ!!待ちやがれ!!」

 

サイボーグを追いかけようとする(たつみ)だが、複数の機械の式神によって道を阻まれる。

 

「先生!俺は大丈夫!そいつらを追って・・・ごめん!!嘘!!ヘルプ!!」

 

悠仁は悟たちに呪霊たちを追うように言ったが、木のような化け物が現れて、顔を青ざめて助けを求めた。

 

ザンッ!!

 

赤女(あかめ)は木の化け物を刀で斬り祓い、悠仁を救出する。ブラートは(たつみ)を襲おうとした機械の式神を槍を振るって薙ぎ払った。最後に悟は上空から降ってくる残りの機械の式神を、術式反転、赫の衝撃波で全て蹴散らした。

 

「兄貴・・・」

 

「事情は聞いてる。だが今追うのはやめな。本気で仇を討ちたいならな」

 

「・・・くっ・・・!」

 

やっと仇を見つけたのに、今は見逃さなければいけない歯がゆさに、(たつみ)は悔しさをにじませる。とはいえ、サイボーグも特級呪霊。今戦ったところで相手にはならない。(たつみ)もそれは今日のことで十分に理解できたことだろう。

 

「悟、先ほどの呪霊は?」

 

「逃げられた。片方は逃げるのがうまいし、もう片方は気配を消すのがうまい。火山頭よりもよっぽど不気味だ」

 

「特級レベルが徒党を組んでいる・・・ということか」

 

「くく、楽しくなって来たねぇ」

 

逃げられてるにも拘らず、悟はワクワクした気持ちで愉快に笑っている。対する赤女(あかめ)とブラートは特級呪霊たちが徒党を組んでいることに対し、緊迫感を増している。

 

「・・・どーもスミマセンでした。私のせいで逃げられてしまいまして。ここに連れてきたのは先生ですよね?」

 

(たつみ)は呪霊が逃げられる要因を作ったことに対し、土下座して謝罪している。

 

「悠仁、(たつみ)・・・ていうか、みんなにはあれに勝てるくらい、強くなってほしいんだよねぇ」

 

「えっ⁉あれにかぁ・・・」

 

漏瑚レベルになってほしいというハードルの高さに悠仁は苦い顔をしている。

 

「目標は具体的な方がいいでしょ?いやー、連れてきてよかったー」

 

「いや・・・何が何だかわかんなかったんだけど・・・マジかこの人・・・」

 

どこまでも楽観的な悟に対し、悠仁は心底呆れ果てている。すると、(たつみ)は悠仁の背後から彼の肩を強く掴む。

 

「わからないっていえば・・・お前、俺に何か言う事あるよな・・・?」

 

「あ・・・えっと・・・」

 

今日この日まで悠仁は死んでいたと思い込んでいた(たつみ)は悠仁に対し、激しい怒りを向けられていた。それを感じ取った悠仁は冷や汗をかいている。

 

「えと・・・ただいま?」

 

「謝れやあああああああああ!!!!俺お前が死んだと思っていろいろこっ恥ずかしいこと言ったんだぞ!!??なんで生きてんだよ!!??生きてるんだったら最初っから名乗り出ろやあああああああああ!!!!」

 

「すいませんでしたあああああああああ!!!」

 

求めてない言葉が返ってきて、(たつみ)は悠仁の胸倉を掴んでぐわんぐわんと揺らす。悠仁は速攻で謝った。

 

「その辺にしときな。どういうことかはわからんが、虎杖が生きてたのなら、上に知られるのはまずい。だから隠しておく必要があったんだろ?」

 

「さすがブラっち。説明不要で助かるよ」

 

「ブラっち?」

 

「・・・兄貴がそう言うなら・・・」

 

「兄貴?」

 

(たつみ)を落ち着かせるブラートと初対面の悠仁は悟の呼び方や(たつみ)の呼び方が気になり、かなり疑問符を浮かべている。

 

「目標を設定したら、後は駆け上がるだけ。ブラっち、引き続き、(たつみ)を一月頼むよ」

 

「おう、わかった」

 

「悠仁、君はちょっと予定を早めて、これから一月、映画見て赤女(あかめ)と戦ってを繰り返す」

 

「先生と⁉う~ん・・・一月後、俺生きてるかなぁ・・・?」

 

「縁起でもないこと言うなよ・・・お前が言うと重いから・・・」

 

「その後は実践。この際だから、2人には重めの任務をいくつかこなしてもらう。基礎と、その応用。しっかり身に着けて、交流会でお披露目と行こうか!」

 

悟の話の途中、気になるワード対し、悠仁と(たつみ)は手をあげる。

 

「「はい、先生!」」

 

「はい、悠仁君!(たつみ)君!」

 

「「・・・交流会って、何?」」

 

「・・・言ってなかったっけ?」

 

交流会の詳細を聞かされてなかった2人の頭には疑問符を浮かべるばかりであった。

 

(・・・何か忘れてるような・・・?ま、いっか)

 

赤女(あかめ)は何か大事な約束があったような気がしたが、気のせいだと思い、忘れることにした。

 

 

「・・・・・・遅い!!!」

 

「ひっ・・・!」

 

悟と赤女(あかめ)の到着が遅れていることに、夜蛾は怒り心頭である。

 

 

一方、どこかのマンション。このマンションに部屋を借りているエスデスは自室に向かって足を歩めている。数分も経たず、自室に辿り着いたエスデスは扉を開け、中に入る。中には、マンションとは思えない空間が広がっている。

 

中は太陽の光が差し込める青い空、白い砂浜、澄んだ青い海。まるで南国の島だ。

 

「・・・ずいぶんつまらん領域だな」

 

そう、この空間も領域展開によるものである。この領域を張っているのは海をぷかぷか浮かんでいるタコの呪霊、陀艮のものである。

 

「やあ、おかえり」

 

エスデスを出迎えたのは、ビーチチェアに座っている1人の男だ。その男の特徴は、長い髪を持ち、五条袈裟を着込んだ大柄の男だ。そして最大の特徴は・・・額にある『縫い目跡』である。

 

「漏瑚はどうした?エスデス」

 

彼女に質問しているのは五条袈裟の隣にいる男だ。白髪にオッドアイ、身体の至る所にツギハギがある。

 

「瀕死だ。花御(はなみ)斬鬼(ざんき)が救出に向かったから無事だとは思う」

 

「無責任だなぁ。君が焚きつけたんだろう?」

 

「それを言うなら、悪巧みを持ちかけたこいつに言うべきだ。なぁ?夏油」

 

「ふふふ、私に責任を押し付けるのかい?」

 

感情が読めず、不敵に笑う五条袈裟を着た男の名は夏油傑。1年前、百鬼夜行という呪術テロを引き起こした最悪の呪詛師と呼ばれる男だ。少し話していると、扉が開く音が聞こえてきた。

 

「噂をすれば・・・漏瑚。花御。斬鬼」

 

この領域内に入ってきたのは筋骨隆々の呪霊、花御。そしてサイボーグ、斬鬼。花御の手には漏瑚の頭がある。

 

「無事で・・・何より♪」

 

「どこをどう見て言っている・・・!」

 

「それで済んだだけマシだろう」

 

エスデスの発言に対し、漏瑚は彼女を睨みつける。当の彼女は特に気にした様子はなく、肩を竦めて帽子を深くかぶり直す。すると、傑は立ち上がる。

 

「これでわかったと思うけど、禪院赤女(あかめ)は非常に危険だ。だが、やりようはいくらでもある。だが問題なのは五条悟の方だ。彼の実力は底が知れないし、『弱み』も少ない。ゆえに、封印対象は五条悟に絞る。しかるべき時、しかるべき場所、こちらのアドバンテージを確立したうえで、封印に望む。決行は10月31日渋谷・・・詳細は追って連絡するよ」

 

傑はエスデスに顔を向けた。

 

「君はそれでいいかな?」

 

「構わん。代わりに、わかってるな?」

 

「ま、縛りがあるからね。こっちも無下にはできないよ」

 

彼女の了承を得た次は、ツギハギの男に顔を向ける。

 

「君もいいね?真人」

 

「異論ないよ」

 

ツギハギの男は読んでいた本を閉じた。

 

「狡猾にいこう。呪いらしく・・・人間らしく」

 

このツギハギの男の名は真人。人間の姿をとっているが彼もまた、特級に相当する呪霊である。




じゅじゅさんぽ

3人「イチニ、サンシ、イチニ、サンシ」

漏瑚「・・・何をしておる?」

傑「ブラジル体操」

ブラジル体操終了

真人「ぼちぼち暖まって来たかな」

エスデス「では、一勝負と行こうか」

傑「ふふ、そうだね」

足元には漏瑚の頭

漏瑚「んん?貴様ら何をするつもりだ?」

ピーッ!ゲシィ!!

漏瑚「んぎぃ!!?」

プレイボール!

真人「夏油君!」

傑にパス

傑「シュート!」

ゲシィ!!!

漏瑚「ぎゃあああああああああああ!!!!」

エスデス「甘い!!」

ベキィ!!!

漏瑚「ぬああああああああああ!!!!」

漏瑚の頭、ゴールパイプに衝突し、傑の元へ

傑「真人君!」

真人にパス

エスデス「来い!止めてやる!」

真人「オーバーヘッド・・・シューーーート!!!!」

ドグシャア!!!!

漏瑚「かいいいいいいいいいいい!!!!!」

ゴールイン! サッカーの勝者、傑&真人

漏瑚(こいつら・・・後で殺す・・・!!)





赤女(あかめ)のシン・陰流は門下生の男(死にたくない願望の一級術師)の戦いぶりを見て覚えたという感じです。(要するに盗み見で覚えた)なので門下生ではないです。
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