けど、僕のことを嫌いな人間が死ぬボタンなら・・・
迷わず押す
幼魚と逆罰
時はキネマシネマで起こった事件が起きる数時間前まで遡る。片目を前髪で隠した黒髪の少年、吉野順平は地元の学校、里桜高校をサボり、ここで映画を見に来ていた。映画のタイトルは『ミミズ人間3』。彼は映画を見て、学校で受けたストレスを解消しようとここまで来たのだが・・・解消どころか逆にストレスをあげることとなる。その原因というのが・・・自分の座席より遠くの座席に座っている3人組の不良グループにある。
(・・・最悪だ・・・。高校生が学校サボって映画館来るなよ・・・。僕もだけど・・・。本当・・・最悪だ・・・)
不良グループは映画が上映中だというのに、周りのことなど気にせず、ルールも守らずに雑談で盛り上がっている。といっても、ここには順平と不良グループ以外誰もいないが。ただ、それは順平のストレスをあげている要因の1つにすぎない。というのもあの不良グループは順平と同じ学校に通っており、順平は彼らに理不尽ないじめを受けていたのだ。彼らに呼ばれては弄ばれ、下手に反抗すれば理不尽に殴られたり、蹴られたりもした。そんな理不尽を受け続けてきた順平からすれば、彼らと同じ空間にいること自体がストレスでしかないのだ。
(全然内容入ってこない・・・。そこそこの偏差値でも、ああいう人種はいるんだな・・・)
不良グループがぺちゃくちゃおしゃべりをするせいで、順平は映画の内容が頭に入ってこない。
(しゃべるな・・・!)
順平は我慢して不良グループにバレないように映画館を鑑賞しているが、不良グループの1人の携帯から着信音が鳴った。
(電源を切れ・・・!)
上映中なのに好き放題やっている不良グループに対し、順平は文句を言いたいくらいにストレスが溜まっていく。すると、不良グループの背後にいつの間にか白髪のツギハギの男が立っていた。不良グループにツギハギの男は見えていない。
「君たち・・・マナーは守ろうね」
ツギハギの男が不良3人に触れた途端、彼らは大人しくなった。ツギハギの男が見えている順平は急に大人しくなった不良グループを不思議に思った。あんなに騒いでいたのに、なぜ急に大人しくなったのだろうと。
そして、上映終了後、順平は気になって不良グループに近寄り、様子を伺った。そこで、彼らの姿を見て、順平は絶句した。なぜなら不良グループの頭部は歪に歪められていたからだ。人間の頭部がこのように変形なんてすれば、脳圧が上昇して呼吸困難に陥る。そうなれば死んでしまう。つまり彼らはもうすでに死んでしまっているのだ。
「なんだこれ・・・」
困惑する順平が真っ先に脳裏に浮かんだのは、彼らの背後に立ったツギハギの男であった。不良グループはあの男に触られた途端に大人しくなった。今にして思えば、彼らはツギハギの男に触られた時から顔を変えられてしまったのかもしれない。そう考えた順平はいてもたってもいられず、映画館を出ていった。
(さっきの・・・人・・・?いや・・・こんなこと、人にできるのか⁉できたとして、それは本当に・・・人なのか⁉)
順平はツギハギの男に対し、様々な考察を交えながら、彼を追いに走るのであった。
●
そして現在、キネマシネマの路地裏。ツギハギの男・・・いや呪霊の真人に追いつき、順平は映画館で起きたことを尋ねた。真人はその質問に答えつつ、問いかける。
「やったのが俺なら・・・どうする?責める?彼らは君にとって・・・特別だった?」
真人の問いかけに対し、順平が脳裏に浮かんだのは自分に理不尽ないじめをしてきた不良グループだ。
『大丈夫大丈夫、食える食えるw』
『ひっでぇーw』
『かわいそー、泣いちゃってんじゃんw』
自分に理不尽を虐げてくる憎い人間を思い浮かべた順平の顔は、憎悪で満ち溢れていた。
「・・・僕にも・・・同じことが・・・できますか・・・?」
呪術廻戦ー呪いを斬るー
弐章
幼魚と逆罰
●
別時刻にて、キネマシネマから遠くない路地裏でも似たような事件が起きている。警察はこの2つの事件に駆り出されたのだが・・・同じく事件解決のために駆り出した術師が鑑識より先に現場にあがることになり、警察の捜査は後回しにされてしまっている。
「あいつら何者ですか?なんで鑑識より先に現場あげるんです?しかも1人はガキだったでしょ?」
現場に来ていた鑑識の1人が納得がいかないかのように愚痴をこぼしていた。
「俺も詳しくは知らねぇよ。でもお前も見たろ、あの仏さん。あれは人の領分を外れてる」
上司である男は非常に冷静で、この事件は自分たちでは解決できるものではないと悟っている。
「見てみぬフリしとけ。この仕事で定年退職したいならな」
上司の言うことに対し、部下は渋々ながら無理やり納得させた。
●
雨が降り積もるもう1つの事件現場の路地裏。そこを担当することになった
「見えますか?これが呪力の残穢です」
女性が指をさしているが、
「・・・いや全然見えないけど・・・」
「
「ん~~~?」
「おおお!見える見える!」
「はい。それが残穢です。今はそれで充分ですけど、いずれは気配で追えるようになってくださいね。それで初めて1人前になれるのですから。・・・私も人のことは言えませんが」
残穢を見て少しはしゃいでいる
「虎杖の奴、大丈夫かなぁ・・・」
「七海さんがいるので大丈夫ですよ。事実に基づき、己を律する。それが七海さんです。あの人が間違った選択肢をすることなんてありませんから」
「だといいけど・・・」
ある意味では、その七海という人物に振り回されていないかという心配もある
「残穢はそこまで長く続いていないようですね。追いましょう」
「よし!気張っていくぜ!」
「はい。あ、でも楽に終わるのなら、楽のままでいいかもですね」
女性の発言に対して、
「行きましょう」
女性はサクサクと残穢を辿って歩き始める。
(・・・な~んか微妙に噛み合ってないような・・・)
●
時は遡り、高専内。一月での山籠もり修行を終えた
「悪いな。俺はそろそろ総監部に戻らねぇといけなくて、引率ができないんだ」
「僕も
悟が開けた扉の先には、1人の男と1人の女性がいた。男はスーツ姿で髪は七三分けの金髪。さらに小さなグラサンも付けている。一方の女性は赤渕メガネをかけた薄紫のロングヘア。チャイナドレスを着ている。
「脱OL呪術師のシェーレさんと、脱サラ呪術師の七海健人君でーす!」
「「その言い方やめてください」」
女性、シェーレと金髪の七三分けの男、七海健人にウザ絡みをする悟に対し、2人は冷静にツッコミを入れる。
「呪術師って変な奴多いけど、この2人は会社を務めてただけあってしっかりしてるんだよねー。七海に至っては1級呪術師だし」
「他の方も、あなたには言われたくないでしょうね」
悟の発言に対し、七海は冷静に発言し、グラサンをかけ直す。
(グラサンにメガネ・・・目になんかつけてる人多いな・・・)
七海とシェーレと初対面する悠仁は彼らを見てそんなことを考えている。
「脱OLと脱サラって、元は会社を務めてたんだよね?なんで最初から呪術師やんなかったんすか?」
「まずは挨拶でしょう。初めまして、虎杖君、和倉君」
「初めまして、悠仁、
「「あ、はい。初め・・・まして・・・」」
「私が高専で学び、気づいたことは・・・呪術師はクソということです」
「「・・・んあ?」」
思ってもいなかった返答が返ってきて、2人は思わず呆気に取られている。七海はそれに構わず続ける。
「そして一般企業に働き気づいたことは・・・労働はクソということです!」
「「そうなの!!??」」
知りたいようで知りたくなかった七海の発言に2人は驚愕している。
「同じクソなら、より適性のある方を。出戻った理由なんてそんなもんです」
「暗いねー」
「ねー」
すごく暗い理由で呪術界に戻ってきた七海に対し、悠仁と悟はひそひそと話している。
「えっと・・・シェーレさんも似たような理由だったりする?」
「シェーレでいいですよ。私の場合は、もうちょっと別の理由があるのですが・・・それは移動の時に話しましょう。時間も押していますので」
「お、おう」
シェーレが呪術師をやる理由はひとまず車移動の時に話すということで納得をする
「虎杖君、和倉君。私が五条さんと同じ考えと思わないでください。私はこの人を信用してるし、信頼している」
「んっふふー♪」
「「うわっ・・・」」
七海の発言に対して悟はかなり得意げな顔をしており、その顔を見て2人はウンザリ君な表情をしている。
「でも尊敬はしてません!!」
「あ"あ"ん!!??」
上げて落とすような七海の発言に対し、悟は思わずヤンキー口調になってしまっている。
「上のやり口は嫌いですが、私はあくまで規定側です。話が長くなりましたね。要するに・・・私もあなたたちを呪術師として認めていない。呪術が使えないとしても。宿儺という爆弾を抱えていても。己は有用であると示すことに2人とも尽力してください」
七海の正論ともいえる発言に悠仁と
「・・・俺が弱くて使えないことなんて、ここ最近嫌というほど思い知らされてる。でも俺は強くなるよ。強くなきゃ、死に方さえ選べねぇからな」
「・・・俺だって、強くならないといけねぇんだ。強くならないと、仲間を守ることも、立派な刃の意味も見つけ出せねぇからな」
2人の強くなりたいという強い気持ちに悟やブラートは笑みを浮かべている。
「言われなくてもさ、上の連中に俺たちのこと、認めさせてやるよ」
「そういうわけだからさ、もうちょい、待っててよ」
「・・・いえ、私ではなく、上に言ってください」
「「あ、はい」」
2人の発言に対しても七海はドライに対応して、2人はずっこける。
「ぶっちゃけ私はどうでもいい!!」
「「はいはい!」」
七海の何度目かのぶっちゃけがあったものの、こうして悠仁、
●
路地裏の事件を担当する
「1つ確認なんだけど・・・映画館の被害者もここの被害者と同じ死因だったんだよな?」
「ええ、そう聞いています」
「頭が変形しちまうってことは・・・やっぱり犯人は呪霊か?」
「その可能性は大いにあると思います。ただ話によれば、映画館の監視カメラには、被害者以外には少年が1名いるとのことです。彼がやったという可能性も捨てきれませんが、そちらの身元特定は警察の人たちにお任せ・・・」
シェーレが犯人についての推測をしていると、近くで妙な呪力を感知した。彼女が感じたものに視線を向けて見ると、そこには人とよく似ているようで全く異なる呪霊を発見する。
【み・・・み・・・みぃ・・・たぁ・・・なぁ・・・】
「!!呪霊!」
「ストップです」
呪霊を見た途端、
「こちらの呪霊は私が片付けますので、
「もう1体⁉」
【おべ・・・んとう・・・は・・・い・・・か・・・が・・・?】
シェーレの指摘で
「勝てないと判断したら呼んでください。すぐに駆け付けますので」
「いや・・・少し舐めすぎじゃないか?俺のこと・・・」
「舐める舐めないの話ではありません。私は大人であなたは子供です。七海さんにあなたを任された以上、私には自分より優先する責任があります」
「ガキ扱いなら舐められてた方がよかったよ・・・!」
シェーレは四つん這いになっている呪霊に近づき、背負っている呪具を手に取る。すると、呪具に覆っていた包帯が解かれていく。その全貌は、鞘に収まったままの人間サイズほどの大きなハサミであった。
「あなたたちはいくつか死線を越えてきましたが、それで大人になったというわけではありません。枕もとの抜け毛が増えていた。お気に入りの総菜パンがコンビニから姿を消したり。そういう小さな絶望の積み重ねが、人を大人にしていくのです」
シェーレが大きなハサミ、エクスタスの切っ先を呪霊に向けたその瞬間、呪霊はシェーレに向かって襲い掛かってきた。呪霊の攻撃をシェーレは難なく躱す。するとシェーレは呪霊の攻撃を躱しながら自身の術式について明かす。
「私の術式はどんな相手でも強制的に弱点をつくり出すことができるというものです。7対3。対象の長さを線分した時、この比率の点に攻撃を当てることができればクリティカルヒット。私より格上の相手にもそれなりのダメージを与えることができますし、呪力が弱いものであれば、このハサミの鞘を抜かずとも一刀両断できます」
術式の詳細を話しながら呪霊の攻撃をさばいていくシェーレ。この説明は、同じく呪霊の攻撃を躱している
「
「あっ!!?俺に言ってんのそれ!!?ちょ・・・ああああああ!!!」
まさか自分に向けてしゃべっていたとは思わず、
「いてて・・・そういう手の内ってばらしてもいいのかよ?」
「バレても問題のない術式、問題のない相手、そしてバラすことでミスリードを誘うのであれば問題ありません」
(呪いに集中したいけど、話は聞かないとダメっぽいな・・・)
「もちろん、メリットはあります。手の内を晒すという縛りが術式効果を底上げさせるのです。こんな風に」
シェーレが鞘が収まったままのハサミを持って構えた瞬間、彼女の呪力が大きく膨れ上がり、ハサミの切っ先に纏った。呪霊がシェーレに突っ込んできた時、彼女の視線に、呪霊の長さが線分した線が現れ出る。どこが7対3なのかを見極めたシェーレはそのウィークポイントを狙って大きなハサミを振るった。
ザシュッ!!!
シェーレがハサミを振るったその瞬間、呪霊の両手両足が両断された。しかも、ハサミの鞘が収まったままの状態でだ。両手両足を失った呪霊は立つこともできず、倒れ伏した。
「私からは以上です」
シェーレはハサミの鞘にこびりついた血を一振りすることで一滴残さず払った。
「・・・すいません」
シェーレは呪霊に対し、礼儀正しく頭を下げ、一言の謝罪の言葉を述べた。彼女が呪霊を倒した一部始終を見た
(すげぇ・・・あんなバカでけぇハサミを軽々と振っただけじゃなくて・・・そもそも鞘を抜かずに呪いをぶった切った・・・。あの鞘を抜いたら、どんだけの切れ味になるんだ・・・?)
「・・・
「へっ?」
シェーレの指摘で自分がよそ見をしていたことに気付いた
「よそ見は感心しませんね」
「話しかけたのだーーれ!!?」
話しかけられたことに対して文句を言いたい
●
時は遡り、一月の特訓を終え、山から下山しようとした時にまで遡る。
「ここまでの特訓、よく耐えてきたな。そんなお前に俺からのご褒美だ」
「ご褒美?」
ブラートは元より渡すつもりであったものを自分の鞄の中から取り出し、それを
「おおおお!!かっけぇ!!」
「その剣が振るう一撃は龍の逆鱗を砕き、その刃は、龍の牙さえも切り裂くとされている。その特級呪具の名は・・・青龍刀」
「お、おおお!見た目だけでなく、名前もかっこいい!!」
「そいつは1級呪術師でもなかなかお目にかかれないほどのレア物の呪具だ。呪詛師御用達のオークションで売れば10億はくだらねぇ」
「じゅ・・・!!??」
10億という大金がかかるほどの呪具であると聞き、
「・・・兄貴、やっぱりこれ受け取れねぇよ。そんなすげぇ呪具を・・・」
「いいんだよ、持って行け」
「でも・・・」
「お前の素養や経験値・・・こいつを使うには十分な資格がある。それだけ俺はお前を高く買ってるんだ。お前ならできる」
ブラートにそこまで高い評価を出してくれていたとは思わず、
「・・・へっ・・・尊敬する人にそこまでのことを言われちゃあ・・・その期待に応えねぇと・・・漢じゃねぇ!」
●
ザンッ!!
青龍刀で呪霊を払いのけると同時に、呪霊の胴体を切り払った。さらに
(青龍刀は高い斬撃性能がある呪具。術式が付与されていなくとも、特級が相手でもそれなりのダメージを与えることができる。そこにフィジカルギフテッドの身体能力が合わせ持てば、やられる方はたまったものじゃありませんね・・・。さらに末恐ろしいのは、彼の能力はまだ100%に至っていないという点にある)
シェーレは
(
【う・・・おぁ・・・】
シェーレが
「すいません。今とどめをさ・・・」
シェーレが呪霊にとどめを刺そうとした時、呪霊の腕を見て動きを止めた。呪霊の腕には、腕時計が着けられていた。
「・・・嘘でしょう?」
この呪霊の正体について勘づいたシェーレはかなり険しい顔つきになっている。
(まさか・・・そんな・・・!こんなことがありえるのですか⁉)
シェーレはまず確信を得るためにスマホを取り出し、呪霊の写真を撮る。撮った写真を見て、シェーレの顔はさらに険しくなる。
「
「えっ!!?急にどうした!!?」
呪霊にとどめを刺そうとした
「これを見てください」
「ん?」
シェーレは自分が撮った呪霊の写真を
「私が相手をしていた呪霊を撮影しました」
「え・・・呪霊ってこういうのには写らないはずじゃ・・・」
「・・・落ち着いて聞いてください。私たちが戦っていたのは・・・」
シェーレが口にするこの呪霊の正体を聞いた
●
『人間だよ。いや・・・元人間って言った方がいいかな』
川崎市にある建物にある呪術師の待機場。シェーレと
『映画館にいた3人と、路地裏にいた被害者の2、3人と同じだな。呪術で身体の形を無理やり変えられてる』
「それだけなら初めに気付けますよ。私たちが戦った2人と、シェーレさんと和倉君が戦った2人には、呪霊のように呪力がみなぎっていた」
『そればっかりは犯人に術式のことを聞くしかないな。ただ『脳幹の辺り』にいじられた形跡がある。おそらく意識障害、錯乱状態を作り出すためだろう。脳までいじれるなら、呪力を使えるように人間を改造することも可能かもしれん。脳と呪力の関係はまだまだブラックボックスだからな』
あまりにも気が遠くなりそうな情報を述べた硝子は悠仁と
『そうだ、虎杖と和倉は聞いてるか?』
「あ・・・うっす」
「あ、はい・・・聞いてます」
『こいつらの死因はざっくり言うと、『体を改造させられたことによるショック死』だ。君たちが殺したんじゃない。その辺り、はき違えるなよ』
「「・・・はい・・・」」
一通りの情報共有ができた七海は自身のスマホの通話を切った。
「・・・どっちもさ、俺にとっては同じ重さの他人の死だ。それでもこれは・・・趣味が悪すぎだろ・・・!!」
人間を呪霊のように改造させて、人を襲わせる。そのような非人道的な行為をした犯人に対し、悠仁は激しい怒りを示している。隣にいる
(この子たちは他人のために本気で怒れるのですね・・・)
他人のために本気で怒ることができる2人に対し、シェーレは2人のことが少しは理解できた。すると、七海がすっと立ち上がる。
「私たちが追ってきた残穢とシェーレさんたちが追っていた残穢事態がブラフで、私たちは誘い込まれたのでしょう。相当なやり手です。これはそこそこで済みそうにない。気張っていきましょう」
「はい!」
「「おう!」」
七海の仕切りの言葉に、3人は返事で返し、事件解決のための取り組みに気合を入れ直すのであった。
●
一方その頃、下水道の中。ここのパイプにハンモックを張って寝転がって本を読んでいる真人は自分についてきた順平に特級呪霊について説明をする。
「特級仮想怨霊。そう呼ばれる呪霊がいる。呪霊は人間が漏出した呪力の集合体。実在しなくとも、共通認識のある畏怖のイメージは強力な呪いとなって顕現しやすい」
「共通認識のある畏怖のイメージ・・・有名な妖怪や怪談ってことですか?」
「そ!トイレの花子さんとか九尾の妖狐とかいろいろ。呪術師はそれを特級仮想怨霊として登録し、警戒してる。正体不明な強力な呪いも、とりあえず仮想怨霊としてカテゴライズする辺り・・・それしか見えてないって感じだよね。でも人々が常に恐れてるのは、そんなおとぎ話じゃないだろ?」
真人の問いかけに対し、順平は考える素振りを見せる。
「・・・天災とか?」
順平の出した答えに真人はにっこりと笑みを浮かべた。
「君との会話はストレスがなくて助かるよ」
「!いや、そんな・・・」
真人に褒められ、少し照れている様子の順平。すると・・・
おおおおぉぉぉぉ・・・
下水道のさらに奥に、不気味な呻き声が聞こえてきた。順平が気になって中を覗こうとした時、いつの間にか彼のそばまで真人が降りてきて、顔を近づける。
「人々は、大地を、森を、海を、天候を、恐れてきた。それらに向けられた呪力は大きすぎるがゆえに、形を得る前に知恵をつけ、今まで息を潜めていたんだ」
自然の災害によって生まれた呪霊。それが、漏瑚、斬鬼、花御、陀艮の4体の特級呪霊なのであろう。
「みんな、誇らしい俺の仲間さ」
真人は順平の前髪をあげ、隠していた片目を見る。順平の片目の眉の上にあるのは、タバコなどによって押し付けられたような火傷跡があった。
「・・・真人さんは・・・何の呪いなんですか・・・?」
順平の問いかけに、真人は答える。
「人間。俺は、人が人を憎み、恐れた腹から、生まれた呪いだよ」
下水道の奥から聞こえてくる呻き声は、徐々に大きくなっていった。
●
呪術師の待機場、七海たちは高専関係者である窓が集めた報告を元に、事件の犯人の拠点とも思われる場所を特定することに成功した。七海はそれを悠仁たちに伝える。悠仁たちのそばにはこの事件解決のために派遣された伊地知もいる。
「ここ最近の失踪者、変死者、窓による残穢の報告をまとめました。これである程度、犯人のアジトが絞られます」
「よし!さっそく乗り込もうぜ!」
「いえ、まだまだある程度です」
特定に成功したと言ってもある程度まで。アジトに乗り込む気でいる
「私とシェーレさんは調査を続けますので、虎杖君と和倉君は別の仕事を」
七海はホワイトボードにある1枚の写真を貼り付けた。写真に写っているのは順平の姿であった。
「映画館にいた少年、吉野順平。彼は被害者と同じ高校の同級生だそうです」
七海はリモコンを操作してテレビをつけて、映画館で手に入れた監視カメラの映像を映した。
「監視カメラの映像と彼の佇まいからして、彼が呪詛師である可能性は低いと考えていました。ただ、被害者と関係があるとなれば話は別です」
「呪詛師?」
「そういや兄貴も名前だけは言ってたな。呪詛師ってなんだ?」
「悪質な呪術師のことですよ。要するに、呪術で犯罪を行うことを厭わない呪術師です」
呪詛師という初めて聞くワード(
「手順は伊地知君に任せていますので、2人で吉野順平の調査をお願いします」
「「おす!」」
七海の調査依頼に悠仁と
「あ、そういえば俺、伊地知さん以外の補助の人知らねぇや」
「あ、俺も俺も」
「まぁ、虎杖君が生きてるって知ってるの、私だけですから、必然的に・・・」
悠仁が生きていると知っている補助監督は伊地知だけ。となれば任務に同行できる補助監督は伊地知しかいないのだ。
「そっかー!いっくぞーー!!」
伊地知の答えに納得した悠仁は気合を入れて任務に向かって行き、
「・・・シェーレさん。何か言いたげですね?」
「・・・ある程度ではなく、もうわかっているのですよね?犯人の居場所」
「もちろん。犯人はその気になれば残穢なんて残さずに現場を立ち去れるはずです」
最初に言ったある程度というのは嘘で、本当はすでに犯人の居場所を特定できていた。最初に嘘をついた理由は、悠仁と
「私たちはまた誘い込まれています。私たちで乗り込むリスクと2人を連れていくリスク。前者を選んだまでです。彼らはまだ子供ですから」
七海の言いたいことは理解はできる。理解できるからこそ、シェーレは七海に何か言おうとした時・・・
「なーなみせんせー!!」
「?悠仁?」
「ごめん、虎杖が言い忘れてたことがあるって聞かなくて・・・」
待機場に悠仁と
「2人とも、気をつけてね!」
笑みを浮かべ自分たちを気にかけてくれる悠仁の優しさに、シェーレは笑みを浮かべている。
「・・・虎杖君。私は教職じゃないので先生はやめてください」
「じゃあナナミン!」
「ぶふっ!」
「2人とも引っ叩きますよ」
(ナナミン・・・)
悠仁が出した七海のあだ名に
●
翌日、悠仁と
「いました」
「あれ?私服?」
「この時間って学校のはずじゃ・・・」
2人の言うとおり、順平の服装は私服で学校の制服ではない。
「高校にはしばらく行っていないみたいですね」
伊地知の推測通り、順平は学校には向かっておらず、街中を歩いている。
「ここからは、車を降りますよ。行きましょう」
順平が交差点を渡り切ったところで3人は車を降り、順平にバレないように後をつける。悠仁の手元には、あまりにも非力で無害そうな呪霊が入れられている小さな檻がある。調査のための手順とは果たして・・・
じゅじゅさんぽ
悟「シェーレちゃーん、なーなみ!お出かけしよ?」
七海「いえ、遠慮します」
シェーレ「え?でも・・・」
悟「いや、ま、マジで!大事な話があるんだって!」
七海「ソレハタイヘンダ」
悟「まだ何も言ってないよ!!?」
シェーレ「えっと・・・」
七海「行きますよ」
シェーレ「あ、はい」
悟「ちょっと!!?」
かまってちゃんの悟はそれから、至る所で七海にウザ絡みをする。
悟に警戒する七海
シェーレ「七海さん、大丈夫ですか?」
七海「一応は問題ありません」
財布を取り出そうとした時、ポケットに悟からの手紙が入っていることに気付いた七海。
手紙「ち○○」
七海・シェーレ「・・・・・・」ブチッ!
悟のしょうもない行為に2人はキレそうになる。
完
起首雷同後の章を選ぶなら?(呪術廻戦のアカメが斬る!零の物語を入れるなら)【重要アンケート】
-
赤女が主役の伍章
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七海と黒女が主役の伍章
-
それより渋谷事変が伍章