呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

26 / 73
いつかの君へ

里桜高校に帳が降ろされた時間まで遡る。七海とシェーレは自分たちを慕うニット帽子を被った後輩呪術師、猪野琢真と共に真人が潜伏していた下水道までやってきた。下水道には真人によって改造された人間たちが蔓延っている。改造人間と戦っていると、七海のスマホに(たつみ)からの着信が来た。七海は通話に出て、対応をしている。

 

『俺たちは行くぜ、七海さん』

 

「ダメです。理由は今朝も言いましたね。帳まで降りたとなると、奴は生きているうえ、里桜高校にいる可能性が高い。すぐ戻ります。和倉君は虎杖君と共に待機してください」

 

頑なに意見を変えようとしない七海は(たつみ)に待機を命じて通話を切った。ただ七海は言ったところで2人は聞く耳を持たないと考えている。

 

(言っても無駄でしょうね・・・)

 

「七海さん、私が行きます。七海さんは猪野君と一緒に目の前の相手に集中してください」

 

シェーレはこの場を七海と猪野に託して、悠仁と(たつみ)の元へ急ぐ。効率的に考えれば、手分けした方がいいのだろうが、相手は特級呪霊。しかも自分と2人がかりでも祓うことが叶わなかった相手だ。2人を守りながらとなるとどうしても危険のリスクが高まる。となれば七海の出す決断は決まっている。

 

「・・・猪野君、私も里桜高校に向かいます。なので後のことを任せます」

 

「え"ぇ!!?」

 

たった1人で改造人間の相手を任された猪野は驚愕して声を荒げる。

 

「何か問題でも?」

 

「いやぁ・・・数がさぁ・・・多いよね?しかも人間なんでしょ?」

 

実力的に言えば、これだけの数の改造人間でも、やろうと思えば猪野1人でもどうにかなる。ただ数が多いのと元人間と戦うということがやはり乗り気ではない様子。ゆえに七海は彼のやる気を引き上げるための話を持ち上げる。

 

「シェーレさんにも話した一級呪術師推薦の件、君の分も引き受けてもいいですよ」

 

この猪野という男、一級術師昇格に必要な一級術師からの推薦を狙っているのだが、シェーレ同様、その推薦の相手に七海を推しており、強い拘りがある。その七海からの推薦がもらえるというのだ。猪野にとってはこれ以上にないくらいやる気の上がることだ。

 

「頑張るぞーーーー!!!!おーーーーーー!!!!」

 

案の定やる気を見せている猪野。七海はこの場を猪野に任せ、シェーレと共に急ぎ里桜高校に向かうのであった。

 

 

呪術師の待機場の廊下。七海の考えている通り、悠仁と(たつみ)が里桜高校へと向かおうと動き出している。そんな彼らの前に伊地知が立ちふさがる。

 

「どいてくれ、伊地知さん」

 

「・・・私たちの仕事は人助けです。その中にはまだ、君たち学生も含まれます」

 

少年院の一件、上層部の命令だとはいえ、まだ学生である悠仁たちを死地に送ったことを伊地知は後悔しており、責任を感じているのだ。ゆえに伊地知は、自分にとって、悠仁たちにとっての最善の選択を選んでいるのだ。

 

(私はもう、間違えない)

 

伊地知は呪術師ではないため、戦うことは極力禁止されている。だからこそ、彼に今できるのは2人を呼び止めることだけだ。

 

「行ってはいけません。虎杖君、和倉君」

 

自分たちを心配して言ってくれているのはわかる。だがそれでも彼らは、自ら進むことを選んだ。

 

「ごめん、伊地知さん」

 

悠仁と(たつみ)は伊地知の静止を振り切り、彼を通り過ぎて里桜高校へと向かっていく。自分ではどうすることもできない伊地知は悲しそうな顔をするのであった。

 

 

帳が降ろされた里桜高校。学校の廊下まで移動した順平を追いかけてきた悠仁と(たつみ)は彼に一発拳を放とうとする。

 

「澱月!!」

 

2人が放つ拳を順平はクラゲの式神、澱月を召喚し、防御に徹する。2人が放った拳は澱月の柔らかい身体によって打撃を吸収される。

 

(クラゲの式神⁉中に入られると、打撃が効かない⁉)

 

(打撃がダメなら・・・斬撃で行くしかねぇ!)

 

澱月に打撃が通用しないと判断した(たつみ)は腰の青龍刀を抜いて構える。

 

「・・・もう1度言う・・・引っ込んでろよ、呪術師!関係ないだろ!」

 

「それはお前が決めることじゃねぇ!」

 

「俺たちの仕事は人を助けること!その中にはお前だって含まれてるんだよ、順平!」

 

2人の言い分に対し、順平は歯ぎしりを立てる。

 

「無闇な救済に何の意味があるんだ・・・!命の価値を、履き違えるなぁ!!!」

 

順平は召喚した澱月に呪術で指示を与える。指示を受け取った澱月は触手を伸ばし、悠仁と(たつみ)の身体に纏わりつこうとする。

 

「霊長ぶってる人間の感情・・・心は・・・全て魂の代謝・・・まやかしだ!まやかしで作ったルールで僕を縛るな。奪える命を奪うことを止める権利は誰にもない。そこで寝ててよ。僕には戻ってやることがある」

 

順平は戦闘が終わったと思い、体育館に戻ろうとする。

 

 

そもそも順平がどうして式神を操り、叩けるようになったのか。それは事件前に遡る。

 

「順平の術式は『毒』だね」

 

順平は下水道で真人の術式によって自身の力に目覚めた。その力というのが、澱月だ。

 

「呪力から精製した毒を式神の触手から分泌する。毒の加減、式神のサイズや可変はこれから覚えればいい。普通の術師が時間をかけて掴む感覚は俺が教えられるから、すぐに戦えるようになる。順平、才能あるよ」

 

これが順平が呪術を扱えるようになった経緯である。

 

 

ガシッ!

 

順平が体育館に戻ろうとした時、誰かに首根っこを掴まれる。その誰かとは、未だに澱月の触手に纏わりつかれている悠仁であった。

 

「誰に言い訳してんだよ」

 

スパパパパパンッ!!

 

悠仁が澱月の触手を引きちぎろうとした時、フィジカルギフテッドの身体能力で触手を全て避けた(たつみ)が青龍刀で悠仁に纏わりつく澱月の触手を全て斬った。身動きが取れるようになった悠仁は咄嗟に距離を取った順平の距離を一気に詰める。向かってくる悠仁に順平は澱月を前に出して、防御に徹する。悠仁は澱月に拳や蹴りを放つが、やはり打撃は利かない。澱月は触手を伸ばした悠仁に攻撃をする。

 

悠仁は跳躍で後退して触手を避ける。悠仁が避けたタイミングで(たつみ)が前に出て順平に接近しようとする。澱月は触手を伸ばして(たつみ)に攻撃を仕掛ける。(たつみ)は向かってくる触手の攻撃を青龍刀で次々と斬り裂いていく。そして、勢いを増した触手攻撃を(たつみ)はスライディングで躱して澱月を通り過ぎ、そのまま順平に強烈な蹴りを放つ。

 

「ぐぅ・・・!!」

 

さらに悠仁は澱月に呪力が籠った拳を放ち、奥にいる順平ごと殴り飛ばした。殴り飛ばされた順平は的度を突き破って外に出る。順平はなぜか毒が効かない悠仁に困惑している。

 

(なんで・・・⁉澱月の毒が効かない・・・⁉)

 

外に放り出された順平は澱月と共に自転車置き場の屋根に衝突する。この澱月のおかげで順平はそれほどのダメージはなかった。

 

(なんで邪魔をする・・・!!なんで・・・なんで・・・!なんで!!!)

 

優しい笑みを浮かべる母、凪の姿。そんな彼女の姿は、大量の血によって染まり、汚されていく。それが脳裏によぎった順平は歯ぎしりを立て、構えをとって澱月の触手の針を鋭利なものに変える。悠仁と(たつみ)は窓から飛び降り、左右に順平を挟み撃ちにしようとする。

 

(空中!身動きが取れない!・・・いや、潰すなら・・・着地寸前!!)

 

悠仁と(たつみ)が着地するタイミングを狙い、順平は澱月に指示を出す。澱月は2人は着地寸前のタイミングで触手を左右に伸ばし、貫こうとする。伸びてきた触手を(たつみ)は青龍刀で突き刺し、直撃を回避する。そして、悠仁は両拳に呪力を纏い、伸びてきた触手を叩き落として払いのける。

 

「順平が何言ってんのか、ひとっつもわかんねぇ!!」

 

悠仁の脳裏に浮かび上がってくるのは、悟からの教え、式神使いとの戦い方だ。

 

『式神使いは術師本人を叩きな』

 

式神使いは術師によって能力は違うが、基本的には術師本人の実力が疎かになることがある。悟が言いたいのはそこを突けということだ。

 

「それらしい理屈をこねたって、お前はただ、自分が正しいって思いたいだけだろ」

 

悠仁は呪力が纏った拳を纏い、順平に近づいて強力な拳を叩き込んだ。拳をまともにくらった順平は吹っ飛び、校舎の窓を突き破る。(たつみ)は順平が突き破った窓から校舎の中に入る。

 

「順平の動機は知らん。なんか理由があるんだろ?でも・・・それは本当に・・・あの生活を捨ててまでのことなのか⁉」

 

(たつみ)の脳裏に浮かび上がるのは、順平の自宅で、順平や凪、悠仁と共に笑いあった食卓での微笑ましい光景だ。

 

「人の心がまやかしなんて・・・あの人の前で言えるのかよ!!??」

 

(たつみ)は必死な思いで、順平に呼び掛け、説得を試みようとする。

 

「・・・人に・・・心なんてない・・・」

 

「お前まだ・・・」

 

「ないんだよ!!!!」

 

「「!」」

 

「そうでなきゃ・・・そうでなきゃ!!母さんも僕も・・・人の心に呪われたっていうのか!!」

 

涙を流しながらに人に心はないと訴える順平の言い分に(たつみ)と悠仁は目を見開く。

 

「そんなの・・・あんまりじゃないか・・・。もう・・・何が正しくて・・・間違っているのかも・・・」

 

もう後には引けないと考えているのか、順平は澱月に指示を与える。澱月は(たつみ)と悠仁に向けて触手を伸ばす。

 

ズンッ!!

 

向かってくる触手に(たつみ)と悠仁は避けようとはしなかった。これによって当然、2人は澱月の針に刺された。

 

「な・・・何で避けないんだよ・・・」

 

避けようと思えば避けられる攻撃を避けなかった2人に順平は目を見開いて驚愕する。澱月は順平の意思に応えるように、姿を消していく。

 

「・・・ごめん・・・何も知らないのに、偉そうなこと言った・・・」

 

「何があったのか話してくれ」

 

「「俺たちはもう、順平を呪ったりしない。だから・・・」」

 

どんなに苦しても、痛い思いをしても、自分と真剣に向き合ってくれる(たつみ)と悠仁に心を開いた順平はこれまでのことを全部話した。自分がイジメられていたことも、そして、凪が何者かによって殺されたことも、全部。

 

「そんな・・・母ちゃんが・・・」

 

ある日突然大切な家族な亡くなる悲しみ。(たつみ)は父親を、悠仁は祖父を亡くしているゆえに、順平が抱える悲しみがどれほどのものか、痛すぎるくらいに理解できる。

 

「・・・順平、高専に来いよ」

 

悠仁は順平の手を取り、彼を高専に迎え入れようと声をかけた。

 

「バカみたいに強い先生とか、頼りになる仲間がいっぱいいるんだ。みんなで協力すれば、順平の母ちゃんを呪った奴にきっと見つかる!必ず報いを受けさせてやる!一緒に戦おう!!」

 

コツッ、コツッ・・・

 

「「「!」」」

 

悠仁が順平を説得しようとしていると、階段から足跡が聞こえてきた。3人が足跡がした方向に視線を向けて見ると、そこには帳を下ろした張本人、真人がいた。

 

「誰だ?」

 

(なんだこいつ・・・?人・・・?)

 

(・・・違う、この感じ・・・人じゃない。こいつは・・・)

 

真人と初めて対面する(たつみ)と悠仁は直観的に彼が呪霊であることに勘付いた。

 

「初めましてだね、宿儺の器」

 

「・・・っ!!!」

 

「!!待って!!真人さん!!」

 

真人が両腕の形を変えようとした時、順平が彼を呼び止めようとした。

 

ドォン!!!

 

真人は大きくした右腕で悠仁を壁に押さえつける。さらに伸ばした左手で(たつみ)に触れようとしたが、危険を察知した(たつみ)は跳躍して後退し、バク転して真人から距離をとる。

 

「虎杖!!!」

 

「あれ?君すごい勘がいいね。絶対触れたと思ったのに」

 

まさか避けられるとは思わなかった真人は(たつみ)に向けて驚いたような顔をしている。

 

「・・・ま、これはこれでありか♪」

 

だがすぐに真人は悪巧みを思いついたかのようなどす黒い笑みを浮かべている。

 

(バカか俺は!!ツギハギの人型呪霊!!ナナミンが言ってたまんまじゃねぇか!!)

 

真人の巨大な右手によって壁に押さえつけられた悠仁は呆然としている順平に呼び掛ける。

 

「逃げろ順平!!こいつとどんな関係か知らん!!けど、今は逃げてくれ!!頼む!!」

 

順平に逃げるように呼び掛ける悠仁だが、そうしている間にも真人は順平に近づく。

 

「!てめぇ!!順平から離れろ!!」

 

それに気づいた(たつみ)は鞘に納めた青龍刀を抜く。真人に心酔している順平は彼を庇うように両手を広げ、攻撃を仕掛けようとする(たつみ)を呼び止める。

 

「和倉君やめて!!真人さんは悪い人じゃ・・・」

 

悪い人じゃない。順平がそう言葉を紡ごうとした時、脳裏に浮かび上がったのは下水道で見た巨大な改造人間と、小物のように小さく改造人間を。それが頭に浮かんだ時、彼は気づいた。いや・・・失念していた。真人がどういう存在なのかを。

 

(悪い・・・人・・・)

 

全てに気がつき、目を見開いて呆然とする順平の肩を、真人が『触る』。

 

「順平はさ、まぁ頭いいんだろうね。でも、熟慮は時に短慮以上の愚行を招くものさ。君ってその典型!」

 

真人は順平に顔を近づけ、嘲笑うかのように耳元で囁く。

 

「順平って、君がバカにしている人間のその次くらいにはバカだから。だから・・・死ぬんだよ?」

 

無為転変

 

真人の術式が発動したその瞬間、順平は無理やり魂の形を変えられ、異形の化け物と化した。その光景を目撃した(たつみ)と悠仁は目を見開いた。

 

「・・・順・・・平・・・?」

 

「さあ、ラウンド2だ!」

 

化け物と化した順平は真人に背中を押され、呆然とする(たつみ)に殴りかかった。自我を失った順平に殴られた(たつみ)は順平の頭を両腕で掴み、動きを止めようとする。

 

「順平!!しっかりしろ!!俺だ!!和倉(たつみ)だ!!わかんねぇのかよ!!!??」

 

順平を取り押さえる(たつみ)だが、順平は(たつみ)を何度も何度も殴り続ける。痛みに耐え続ける(たつみ)は何度も順平に呼び掛ける。

 

「順平!!頼む!!止まってくれ!!順平!!」

 

「和倉・・・順平・・・!」

 

未だに真人に押さえつけられている悠仁は何とか順平を治さなければと考える。だが自分にはどうすることもできない。そう考えたのか悠仁は悪手中の悪手に触れようとする。

 

「宿儺・・・宿儺ぁああああああ!!!」

 

必死になって叫ぶ悠仁の声に、宿儺が反応し、彼の頬から口と目がぐぱっと出現する。宿儺の出現に真人は狙い通りと言った笑みを浮かべる。

 

「なんだ?」

 

「何でもする!!俺のことは好きにしていい!!だから、俺の心臓を治した時みたいに!!順平を治してくれ!!!」

 

自分の身体を明け渡すことを条件に順平を治してくれと懇願する悠仁に(たつみ)は断固としての反対の意を示す。

 

「!!何言ってんだ虎杖!!ダメだ!!考え直せ!!宿儺がどういう奴なのかもう忘れたのかよ!!??」

 

必死になって悠仁を止めようとする(たつみ)だが、自分が押さえつけている順平に殴られたことにより、それ以上の言葉は続かなかった。

 

「頼む!!!!!」

 

悠仁の懇願に対し、宿儺の答えは決まっており、彼を嘲笑うかのような笑みを浮かべる。

 

「断る!」

 

拒否の言葉。その言葉に悠仁と(たつみ)は顔を強張らせ、真人は意外そうな顔をしている。

 

「てめぇ・・・!!」

 

(いいぞ・・・あの『縛り』はしっかり忘れているな)

 

悠仁の心臓を治す際に科した『その出来事を忘れろ』という縛り。それがしっかりと働いていることを確認した宿儺はこの現状を嘲笑うかのように笑い飛ばす。

 

「ヒヒッ・・・ケヒッ・・・愉快愉快!!矜持も未来も!!お前の全てを捧げて俺に縋ろうと!!何も救えないとは!!」

 

宿儺が悠仁を笑い飛ばしている中、自分の読みが外れた真人はどういうことか思案する。

 

(縛りを断った?魂の形は反転術式でどうこうなるものではないけれど・・・他人を治すのは専門外か?)

 

「惨めだなぁ?このうえなく惨めだぞ小僧。ケヒヒヒヒ・・・!」

 

(でもまぁ、俺の狙いはこれから。そのためにこいつ()を生かしてるわけだし・・・これはこれで・・・)

 

予想外なことではあるが、真人は今目の前の光景を見て笑みを浮かべ・・・

 

「・・・くっ、くくく・・・」

 

ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!!

 

自分たちをバカにするように大笑いする宿儺と真人に対し、悠仁と(たつみ)の心は、どうしようもないほどに冷め切り、どす黒い感情がふつふつと沸騰するかのように湧き上がってくる。

 

【・・・ゆう・・・じ・・・た・・・つみ・・・】

 

魂を変えられ、身体に限界が来た順平は倒れそうになったところを、(たつみ)の服を強く掴む。

 

【・・・な・・・んで・・・?】

 

自分の死さえも信じることができなかった順平は涙を流し・・・(たつみ)から手を離し、静かに倒れ、息を引き取った。順平が高専の仲間として、みんなと共に笑いあうあったかもしれないいつかの光景。それを全て無に帰した真人に対して、(たつみ)はどす黒い感情で染まり切った。

 

「あはははは・・・あ?もう死んだ?まあちょっと乱暴に形変えたからねぇ・・・こんなもんか・・・」

 

ズバァ!!!!

 

「・・・あれ?」

 

笑っていた真人の両腕はいつの間にか懐に入った(たつみ)によって両肩ごと斬り落とされていた。(たつみ)は高く跳躍して、青龍刀を構える。

 

(こいつらみんな同じだ・・・。こいつらはどこまで行っても呪いだ。人を騙し、食い物にして自分の肥やしにする・・・)

 

ゾワッ・・・!!

 

(たつみ)のどす黒い殺気が入り混じった冷めた顔を見た真人はどういうわけか、得体のしれない寒気を感じ取った。

 

(お前みたいなクズは・・・俺が・・・斬り刻む!!!!!

 

ズババババババババ!!!!

 

速すぎる剣の連撃に真人は避けられず、胴体を斬り刻まれる。斬り刻まれた真人は大量の血を噴出した。だがいくら斬り刻もうと、魂の形を維持できる真人にとっては、致命傷にはならない。

 

「はは!スゴイスゴイ!想像以上だ!でも残念。効かないよ。俺は魂の形を保って・・・」

 

ドグャアッ!!!

 

(たつみ)が真人の両腕を斬り落としたことによって身動きが取れるようになった悠仁は余裕を見せている彼に顔に呪力を籠めた強力な拳を叩きつけた。

 

(変わった打撃だ。おもしろい・・・!)

 

殴られ、吹っ飛ばされた真人は魂の形を変えて両腕を元通りにして、バク転で着地する。

 

「話は最後まで聞けよ。俺は魂の・・・」

 

ブシャア!

 

「!!?」

 

いくら攻撃しても効かないと言おうとした時、真人の鼻から鼻血が出てきた。先ほどの(たつみ)の斬撃はもう治っているが、悠仁からもらった打撃の傷はいくら術式を使っても、治ることはなかった。

 

(なっ・・・⁉どういうことだ・・・?魂の形ごと叩かれた・・・?)

 

魂の形を叩かれる事態など、真人にとっては初めてのことだ。どういうことか思案していると、すぐにその原因に気付いた。

 

(そうか・・・!虎杖悠仁は器!常に肉体の内に自分以外の魂がある状態・・・だから自然に・・・知覚しているのか!!魂の輪郭を!!)

 

真人に対して、尋常ではないほどの殺気を纏わせている悠仁。そんな彼に(たつみ)が並び立つ。

 

「・・・(たつみ)、手を貸してくれ」

 

「・・・やれるか、悠仁」

 

「おう」

 

この状況下で、お互いに下の名前を呼び合った2人には、真人にたいして明確な殺意が溢れ出ている。これから2人が言い放つ言葉は、今まで彼らの口から出た言葉全てが噓だったのかと思えるくらいに腹の底から出た本音である。

 

「「ぶっ殺してやる・・・!!」」

 

「はっ・・・祓ってやるの間違いだろ、呪術師」

 

真人は2人から放たれる殺気にも臆することなく、嘲笑うかのような笑みを浮かべて、口の周りを舐めずる。態勢を整える真人は自分が考えた計画をおさらいする。

 

(虎杖悠仁は自らの命を顧みない。人質の外的な縛りは夏油に止められている。ならば、殺したいほどに憎い相手を殺せない時、彼は宿儺に頼るだろうか?順平で足りなければ、相方のこいつ()を目の前で変えてやればいい。それでもダメなら生徒を1人ずつ変えてやればいい。利害を超えた憎しみで宿儺との交渉を促し、虎杖悠仁の縛りを科す。それで宿儺をこちらに引き入れる確率が上がれば万々歳。だがこれは俺が彼より強いことが大前提。なかなかどうして・・・天敵!!!

 

「うおおおおおおおおああああああああああ!!!!!」

 

大きな雄たけびを上げる悠仁は真人に猛接近して両拳に呪力を纏って打撃を放つ。真人は悠仁の攻撃を躱し、両腕を鳥の翼に変え、階段を登ろうとする。だが高く跳躍して階段を一気に登り切った(たつみ)追いつかれ、両翼を斬り落とされる。翼を斬られ、態勢が崩れる真人に(たつみ)は彼の顔面を強く何度も何度も殴り倒し、そして回し蹴りを放って階段から落とす。こちらに迫ってきた真人に悠仁は呪力を籠った拳を連続で叩きつける。ダメージを負った真人は両足をバネに変え、高く跳躍して2人から距離を取り、両腕を元の形に戻す。

 

(ころころ形を変えやがる!締めや投げからの組み立ては考えない方がいいか?)

 

(こいついくら斬っても形を変えて元通りになりやがる!一撃与えても決定打にはならねぇか!)

 

(虎杖悠仁の攻撃が効くとわかった以上、形を変え的を大きくするのは得策じゃない)

 

(((ならば!!)))

 

3人は有効打になりえそうな策を考え、構えをとる。

 

(何百回でも何千回でも・・・ぐちゃぐちゃになるまで叩き潰す!!!!)

 

(何千回何万回でも・・・元通りにならねぇくらいにバラバラに細切れにしてやる!!!!)

 

(より洗礼された殺すための形!殺すためのインスピレーションを!体現しろ!!!)

 

真人は両腕の形を変え、いくつもの鎖鎌の刃を生成し、その全てを悠仁と(たつみ)に放つ。伸びて廊下の至る所を斬って迫ってくる刃を2人は的確に躱して後退する。この攻撃によって校舎の壁は壊れ、2人は飛び出し、運動場に着地する。真人は逃がさないと言わんばかりに右腕をドリルの形に変え、それを悠仁に目掛けて放つ。迫ってきたドリルに悠仁は跳躍して躱し、ドリルについている紐となっている真人の腕を掴みとる。

 

「いつまでも伸び続けるわけじゃねぇだろ・・・!」

 

悠仁がこの紐を利用し、真人を引きずり降ろそうとした時・・・

 

ブシュッ!!!!

 

悠仁が掴んだ紐から鋭利なトゲが生えてきて悠仁の両手を貫いた。

 

ガシッ!!

 

悠仁は両手の痛みに構わず、紐を強く握りしめ、真人を引きずり出して投げ飛ばす。引っ張り出された真人は青龍刀を構えて接近した(たつみ)に胴体を斬り、右腕を斬り落とされる。

 

(クソ!浅ぇ・・・!!)

 

踏み込みが足りなかったと判断した(たつみ)は真人が反撃に出られる前バク転して身体を反転し、彼に強烈な拳を叩きつけ、校舎の壁に叩きつけた。

 

「・・・放すだろ普通」

 

真人はまたも斬り落とされた腕の形を変え、元通りにする。

 

(形を広げすぎると操作性と強度が落ちるな)

 

真人が自身の術式の操作性を考察している間にも、(たつみ)は両手で青龍刀を持ち直し、力いっぱい地面に叩きつけて土煙を発する。土煙で周りが見えなくなった真人。殺気の気配を辿って(たつみ)を追いかけようとする真人だが、その隙を狙うかのように土煙から悠仁が現れ、呪力が籠った強烈な拳を腹部に叩き込まれる。拳を叩き込まれた真人はダメージを負いながらも、ニヤリと笑い・・・

 

グサッ!!!!

 

腹部に鋭利なトゲを生やし、悠仁の腹部を数か所貫いた。

 

「がっ・・・!」

 

「悠仁!!」

 

「はぁー・・・君たちじゃ俺には勝てないよ。さっさと代わんなよ、宿儺にさ」

 

真人は原型の手で悠仁の身体に触り、術式を発動する。

 

「無為転変」

 

ドクンッ・・・!

 

真人が術式を使用した直後、得体のしれない強烈な寒気を感じ取り、心臓が高鳴った。真人の視線の先には・・・お堂の玉座に座っている宿儺の姿があった。彼は今、術式によって宿儺の魂を見ている状態なのだ。

 

『俺の魂に触れるか・・・。共に腹の底から小僧を笑った仲だ。一度は許す。二度はない』

 

宿儺は真人に対し、1つの警告を告げる。

 

『分を弁えろ、痴れ者が』

 

宿儺から放たれる威圧感に真人は呆然としている。

 

ガシッ!

 

真人が呆然としている時、悠仁は両手で彼の頭を掴み上げる。

 

「代んねぇよ・・・!言ったよな・・・ぶっ殺してやるって・・・!」

 

ゴシャア!!!!

 

悠仁は真人の頭を掴み上げたまま、そのまま強烈な頭突きを放った。出血するほどの頭突きを悠仁は何度も、何度も真人に放つ。倒れそうになる真人に悠仁は彼の顔に強烈な蹴りを放った。

 

「うおおおおおおおお!!!!!」

 

呪力を纏った拳で真人を殴りつけようとする悠仁だが、目の前にあったのは真人の服のみ。真人本人は、いつの間にか悠仁の背後に立っていた。

 

「は・・・?」

 

呆気にとられる悠仁に真人は棍棒のような手で攻撃を仕掛けようとした。

 

バキィ!!!

 

そこへ、(たつみ)が真人に近づき、彼の顔面をぶん殴った。拳をまともにくらった真人は吹っ飛ばされ、(たつみ)は逃がさずに真人に近づき、青龍刀で連続で斬り続ける。何度も何度も斬られ続ける真人は(たつみ)の横一閃の斬撃をまともにくらい、腹部を斬られ、大きな傷口が開く。

 

ポンッ

 

だがその大きな傷口から人の手が生えてきて、(たつみ)の身体を触った。(たつみ)に触った真人はニヤリと笑う。

 

「!(たつみ)ぃ!!!」

 

「無為転変」

 

術式が発動した。これで(たつみ)は身体の形を変えられることになるだろう。

 

バキィ!!

 

「・・・は?」

 

だが(たつみ)は体の形が変えられることなく、真人の顔面を殴り飛ばした。そして(たつみ)は自分が吹っ飛ばした真人に近づき、両腕と腹部の腕を青龍刀で斬り落とした。

 

(どういうことだ・・・?俺ちゃんと触ったよな?なのになんで・・・?)

 

『人の手』で触ったにも関わらず術式が発動しなかった。そのことに真人はひどく困惑したが、その原因はすぐにわかった。(たつみ)が身体を向けた時、トレーナーの中から何か落ちてきた。それは、彼が高専に向かう前に、岩見沢の市長よりもらった小さな像であった。像には何かが刺さったような穴が開いている。

 

(!ご神体の像!俺が触ったのは魂じゃなくこのへんてこりんな像に帯びた呪力!順平の毒も、俺の術式もこれのせいで届いていなかったわけか!なんて悪運!)

 

強い強運によって澱月の毒や真人の術式から免れた(たつみ)に対し、強運も侮れないとし、舐めてかかったことを大きく反省する。

 

(てゆーかこいつ、像のせいで気付かなかったけど、そもそも呪力が0なのか!なるほど・・・えげつない身体能力にも納得だ)

 

(たつみ)の身体能力の正体に気がついた真人はいろいろ合点がいったように納得している。と同時に、像を落とした今、彼に1発でも触れば形を変えられることも可能であることも理解した。真人は両腕と腹部を元通りにして、ニヤリと笑う。

 

「いやー、ごめんごめん。俺君のことすっかり舐めてたよ。でも・・・悪運はそう何度も続かねぇだろ!!」

 

もうこれ以上の幸運は起こらないと断定し、真人は足を馬の足に変えて、(たつみ)に触れようと接近する。すると・・・

 

「エクスタス!!!」

 

ビカーーッ!!

 

「うわっ!!?これは!!」

 

突然(たつみ)の目の前で強烈な光が放たれ、真人は思わず目を閉じ、動きを止めてしまう。

 

ザシュッ!!

 

その直後、真人の両足は真っ二つに切り裂かれる。地に倒れそうになる真人は両手で跳躍し、空中で両足を元通りにする。(たつみ)の目の前には、この場に駆けつけた七海とシェーレがそこに立っていた。先ほどの光はシェーレのハサミ、エクスタスによる金属発光によるものである。

 

「シェーレ!」

 

「ナナミン!」

 

「よかった、2人とも無事ですね」

 

2人ともちゃんと生きていることに対し、シェーレは安心したような笑みを浮かべている。

 

「七海さん、シェーレ、俺たち・・・」

 

「説教は後で。現状報告を」

 

七海は冷静な対応で、2人に現状の報告を求めた。

 

「・・・2人・・・助けられなかった・・・」

 

(どこまでも他人のことを・・・)

 

自分がいくら傷つこうとも、他人の命を優先する悠仁に七海は呆れる。

 

「まずは君たちの身体のことを」

 

「俺は平気だ。でも悠仁が怪我を・・・」

 

「俺も平気だよ。いっぱい穴空いてっけど」

 

「「・・・平気の意味・・・」」

 

「後、学校の人ら、全員体育館でぶっ倒れてる」

 

悠仁たちの報告によって今の状況下をだいたい理解できた七海とシェーレ。

 

「なんだ、ピンピンしてるじゃん。お姉さんに七三呪術師。お互い、無事で何よりだね。ハグでもするかい?再会を祝して」

 

真人は突然現れた七海やシェーレが現れても、挑発的な笑みは崩さない。すると、真人の鼻から一筋の鼻血が出てきた。七海とシェーレはその瞬間を見逃さず、目を見開く。

 

「虎杖君、和倉君、あの鼻血は?」

 

「え?悠仁が殴った時に出た」

 

「いつ?」

 

「俺がいっちゃん最初に殴った時」

 

「2人は奴の手に触れましたか?」

 

「うん」

 

「俺も触られたけど・・・岩見沢のみんなが守ってくれたんだ」

 

(たつみ)は落とした小さな像を拾い上げる。これを見た七海とシェーレはあの像が真人の術式から守ってくれたのだと理解する。

 

「私と七海さん、(たつみ)の攻撃は奴には通用しません」

 

「「えっ!!?はっ!!?なんで!!?」」

 

「理由は説教の時に」

 

攻撃が効かないと聞かされた悠仁と(たつみ)が困惑している。七海が2人を落ち着かせる。その間、シェーレは真人の攻略法を整理する。

 

(1、悠仁に奴の術式は効かない・・・。

2、悠仁を殺せない理由がある・・・。どちらにしても、この状況は好都合ですね・・・)

 

悠仁に真人の術式は通用しないことと悠仁を殺すことができない理由がある。この考察でシェーレは真人を祓う方法を見出した。同じ意見を持っている七海は口を開く。

 

「しかし、動きは止められます。お互いが作った隙に、攻撃を畳みかけていきましょう」

 

真人を祓う機会はここしかない。そう判断した七海は3人に連携して攻撃をするように提案をした。

 

「ここで確実に祓います」

 

「はい」

 

「「おう!!」」

 

七海の一声でシェーレはエクスタスの鞘を抜き、(たつみ)は青龍刀を構え直し、悠仁は鼻血を拭って戦闘態勢を整える。戦いはここからが正念場だ。

起首雷同後の章を選ぶなら?(呪術廻戦のアカメが斬る!零の物語を入れるなら)【重要アンケート】

  • 赤女が主役の伍章
  • 七海と黒女が主役の伍章
  • それより渋谷事変が伍章
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。