呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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また明日

里桜高校で繰り広げられた戦闘。七海とシェーレの参戦で気を引き締め直す悠仁と(たつみ)。対して真人は右手の掌に目を生やし、左手を鋭利な刃物へと形を変え、態勢を立て直す。

 

(虎杖悠仁とあいつ()の動き注意を払いつつ、まずは七三呪術師から片付けるか)

 

まず最初に七海に狙いを定めた真人は走り込んで助走をつけ、高く跳躍して七海に斬撃を放とうとする。悠仁と(たつみ)、シェーレは散開し、七海は迫ってきた真人の斬撃を膝を屈んで躱し、真人に向けて鉈を振るう。地に着地した真人はバク転で鉈を回避する。その直後、真人は背後に回り込んだ悠仁に身体を向け、刃の左腕を振るった。悠仁は体を反らして躱した。

 

悠仁が攻撃を躱したタイミングで(たつみ)が真人に近づき、青龍刀による斬撃を放つ。真人は斬撃を屈んで躱し、さらに続く斬撃を後退して回避する。真人の背後に回ったシェーレはエクスタスの刃を開き、真人の胴体を真っ二つに切り裂こうとする。もちろん、これに気付いている真人は両腕の形を翼に変えて高く飛び、シェーレが放つ攻撃を躱した。上空を飛んだ真人は体を丸めて自身の形を変え、ハリネズミのように身体中から鋭利なトゲを複数放った。迫ってきたトゲの攻撃を4人は素早く動いて全て回避する。

 

(う~ん・・・これいいと思ったんだけどなぁ・・・やっぱ躱されたし)

 

地面に突き刺さったトゲを七海は鉈を、シェーレはエクスタス、(たつみ)は青龍刀で切り裂き、悠仁は拳を放って叩き折る。

 

(躱された後強度の弱い端から削られる。雑魚専用だな。やめよ)

 

自分が繰り出した技は4人には有効打にはならないとハッキリと理解した真人は形を変え、元の姿へと戻る。真人が着地するタイミングを狙い、七海と悠仁が攻撃を仕掛ける。鉈の一撃と強力な拳の一撃によって、地に衝撃が入り、土煙が発する。だが真人は形を変えて子供の姿となって攻撃を躱したため、当たっていない。だが弱点は見出した。

 

「奴は形を変える直前」

 

「呪力のタメがある!」

 

「よろしい」

 

攻撃を躱した真人は2人の次の一手を繰り出す前に、走って距離を取る。

 

(形を小さくしたままでも、虎杖悠仁に一撃で仕留められる危険がある。本当に天敵だなぁ)

 

魂の形を変え、元の姿に戻った真人の前に、(たつみ)とシェーレが現れ、2人は彼に攻撃を仕掛ける。真人は現れた2人の攻撃をバク転して躱す。

 

(たつみ)、攻撃の狙い時は」

 

「形を変えるその瞬間!」

 

「上出来です」

 

バク転を続け、(たつみ)とシェーレから距離を取る真人だが、背後には悠仁と七海が控えている。即席とは思えないほどに息の合った連携である。

 

(それに加えて、あいつ()のバカみたいな身体能力に、クソ強い悪運。ある意味では、厄介すぎる相手だなぁ。2人にはちょっと大人しくしてもらおうか)

 

このままでは自分は不利に陥ると判断した真人は口からあるものを吐き出した。それは、まだストックしていた改造人間であった。

 

(改造人間!まだストックしていたのですか!)

 

「2人のガキ共を殺せ」

 

形を成した数体の改造人間たちは真人の命令に従うかのように、(たつみ)と悠仁に襲い掛かる。改造人間によって連携を崩された七海とシェーレは2人を守るように動く。しかし、両腕を刃の形に変えた真人に阻まれる。真人の刃の両腕の攻撃を七海とシェーレはブリッジで躱し、後退する。

 

「やっぱり。あいつら、人間殺せないだろ」

 

(たつみ)と悠仁は呪術師である以前に善人の人間だ。化け物と化したとはいえ、何の罪もない人間を殺す行為は2人にとっては精神的にくるものがある。真人はそこを突いたのだ。小さな改造人間に襲われている(たつみ)と悠仁は散開して何体かの改造人間を振り切ろうとする。数体の改造人間は半々に分かれて(たつみ)と悠仁を追いかける。(たつみ)は自分のところに追いかけてきた改造人間の首を掴み上げ、青龍刀で頭を貫こうとする。

 

【あ・・・あ・・・あ・・・そぼ・・・】

 

「・・・っ!!」

 

改造人間の発せられた言葉から察するに、目の前の相手はおそらく子供だ。もう手遅れとはいえ、罪もない子供を殺さなくてはこの場は切り抜けられない。だがそれを割り切れるほど、(たつみ)も悠仁も大人ではないし、精神も丈夫ではない。(たつみ)が躊躇っている間にも、2体の改造人間が襲い掛かり、彼は床に押さえつけられる。

 

「ぐっ・・・くそ・・・!」

 

改造人間とはいえ、力は弱い。(たつみ)ならば振り切ることもできるし、殺すことだってできる。だがやはり、彼の善意の心が、判断を鈍らせる。すると・・・うっすらと自我を表に出した改造人間が口を開く。

 

【・・・お・・・ねがい・・・ころ・・・して・・・】

 

「・・・っ!!!」

 

改造された子供自身、もうわかっているのだ。自分はもう助からないと。人を襲うことも、これ以上、こんな化け物みたいな姿でいることは耐えられない。そんな思いで、子供の改造人間は殺されて救われることを望んでいる。涙の代わりに涎を垂らす改造人間の苦しみに触れた(たつみ)は歯ぎしりをし、目を閉じ、苦渋の決断をする。

 

その一方で、真人の相手をしていた七海とシェーレは真人が形を変えた巨大な両腕によって校舎の壁に拘束されている。

 

「ちょっと予定を変更して、あんたたちを襲わせようと思うんだ」

 

身動きが取れない状況の2人に真人は両脇に人の腕を生やし、2人を改造しようと動き出している。

 

「今度は泣いちゃうかな?現実と理想の擦り合わせができていないガキ共は」

 

「それは違います。彼らは今まさにその擦り合わせの真っ最中」

 

「私もあまり賢いとは言えないので、強く言えませんがこれだけはハッキリ言えます」

 

拘束されている七海とシェーレは冷静に、真人の言葉に反論する。

 

「「バカはあなたです」」

 

パリィーン!!!

 

ドゴォ!!スパスパスパァ!!!

 

2人が結論を言い放ったその瞬間、上階の窓ガラスを破った悠仁が現れ、真人の右腕を叩き折り、素早く駆けつけた(たつみ)が青龍刀で真人の左腕と生えた両腕を全て斬り落とした。

 

(殺してきたか・・・!!)

 

苦渋の決断とはいえ、悠仁と(たつみ)は自分を襲ってきた改造人間の命を奪ってきた。そう来るとは思わなかった真人は好戦的な笑みを浮かべている。その直後、2人のおかげで身動きが取れるようになった鉈を構え、シェーレはエクスタスを構え、攻撃に転じようとしている。

 

七三と女(こっち)のネタは上がっている!インパクトの直前に形を変え・・・)

 

ドゴォ!!!!

 

2人の攻撃を防ぎ、形を変えて反撃に転じようとした真人であったが、その前に悠仁の拳を顔面にくらって妨害される。その直後、七海の鉈の攻撃、シェーレのエクスタスの斬撃によって真人の身体に傷を負う。さらにその直後、(たつみ)の青龍刀の斬撃によって右腕を斬り落とされる。何とか反撃しようとする真人だがさらに続く悠仁の打撃によってダメージを負う。その次、七海、シェーレの攻撃、また(たつみ)の攻撃、またまた悠仁の攻撃。この繰り返しによって真人はまともに反撃することもままならなくなった。そんな状況でも、真人の魂は高揚感で染まっていた。

 

(身代わりを作る隙がない・・・!ああ、なんて・・・なんて新鮮なインスピレーション!!これが・・・!)

 

死か!!!!!

 

(今ならできるよね)

 

真人にとどめを刺そうと悠仁と(たつみ)、七海とシェーレが一斉に同時攻撃を仕掛ける。その直後、真人は大きく口を開けた。口の中には、小さな人の手が4本あり、その4本の手は印相を結んでいる。

 

「領域展開―――」

 

真人の口の4本の手が印相を結び、術を唱えた瞬間、真人の周りに複数の巨大な手の影が出現し、真人を覆い尽くす。真人だけではない。巨大な手の影は七海とシェーレを包み込んだ。(たつみ)は巨大な手に触れられようとしたが、どういうわけかすり抜けしまい、彼を覆うことはできなかった。悠仁は巨大な手に阻まれるかのように追い返されている。

 

巨大な手の影に覆い尽くされた七海とシェーレは真人が作り上げた暗い空間に閉じ込められる。この暗闇の空間の至る所にある数多くの人の手が繋ぎ合わせ、格子のように2人を囲んでいる。これこそが、死のインスピレーションで会得した真人の領域展開・・・その名も・・・

 

「自閉円頓裹」

 

「・・・生得領域・・・!」

 

「・・・クソ・・・!」

 

自閉円頓裹の中に閉じ込められたシェーレは苦虫を嚙み潰したような表情をし、七海は若干ながらに忌々し気な感情を露にした。

 

「今はただ・・・君たちに感謝を」

 

この領域を作り上げるきっかけを作った2人に真人は感謝の言葉を述べた。

 

 

真人の領域をすり抜けた(たつみ)とはじき出された悠仁は出来上がった領域の結界を殴って無理やり中に入ろうとしている。

 

「クソ!ざけんな!!クソ!!クソ!!」

 

(なんでナナミンとシェーレを閉じ込めた⁉このままじゃ・・・このままじゃ!!)

 

何度も何度も結界を殴り続ける悠仁と(たつみ)は焦る気持ちでいっぱいになる。領域展開を敵側が使った場合の危険性を体験したがゆえに余計にだ。ゆえに、結界に穴が開くまで何度も殴り続ける2人。

 

 

自閉円頓裹の中、閉じ込められた七海とシェーレは動かず、その場に立ち尽くしている。動いたところでどうしようもならないことを理解してるがゆえに。普通なら閉じ込められても抵抗するだろうが、この領域ではそれは無意味だ。理由は、真人の術式が関係しているからだ。

 

(領域展開・・・呪力で構築した生得領域内で必殺の術式を必中必殺に昇華する・・・私が到達できなかった呪術の極致・・・)

 

(おそらく奴の魂に干渉する術式は『原型の掌で触れること』が発動条件・・・。ですがそれが必中の領域内となれば・・・)

 

((私たちは今、文字通り掌の上・・・!))

 

領域内で術式を発動する。それ即ち、必中・・・必殺技が必ず当たるということに他ならない。真人の術式の発動条件が原型の掌に触れるとなれば・・・七海とシェーレは掌に触れられている状態に相違ない。後は真人が術式を発動するだけで、2人の命を簡単に奪える。ゆえに、どうすることもできないのだ。

 

(・・・呪術師をやっている以上、いずれどこかで死ぬかもしれないと七海さんは言った。私はそれを理解した上で呪術師になることを選んだ)

 

詰み状態の中、シェーレは平常心を保つために、息を吐く。

 

(後悔のない死に方などないと学長さんは言っていた。呪術師はクソと七海さんはいつも言っていた。しかし・・・私はそのクソの呪術師になったことを後悔したことは、一度もありません。だって・・・私は頭のネジが外れていますから)

 

シェーレは落ち着いた状況の中で、自分が呪術師になる前の日々を振り返っていた。

 

 

シェーレという人間は日本人ではない。極稀に現れる呪術師の可能性を秘めた外国人だ。日本と比べても、海外では呪霊と呪術師が生まれる確率は1割も満たないほどに少ない。そんな僅かな確率の中で呪力を持って生まれたシェーレは地元で呪霊を見たことは1度もない。

 

そんな彼女はハッキリ言ってドジだ。幼い頃から何をやっても失敗ばかり。彼女自身も、誇れるものが何1つ持たないと考えている。

 

『あいつはどこか頭のネジが外れてる』

 

自分の周りでは、いつもそんな風に言われてからかわれてきた。そんな彼女にも唯一、友と呼べる存在がいた。彼女はシェーレのドジを決して笑わなかった。彼女と共に過ごす時間が唯一の幸福であった。その友からいつも、日本のことを話してくれた。話を聞くにつれて、彼女の中に日本への憧れが芽生え、その思いが日に日に強まっていく。

 

『日本に行ってみたい』

 

シェーレはそんな気持ちが芽生えた。両親でさえも自分を腫れ物扱いされている彼女にとって、地元は住み心地がいいとはとても言えなかった。ゆえに、日本への憧れも強くなっていった。

 

そんなある日、友は日本に引っ越すことになった。その知らせを聞いた時、シェーレはひどく悲しんだ。そんな彼女に友は言った。

 

『生きてさえいれば、きっとどこかでまた会える』

 

その言葉を聞いて、シェーレは彼女に約束した。いつか必ず、日本に行くと。そして必ず、また会おうと。そうして、シェーレは友を見送った。この約束を胸に抱きながら。

 

そして二十歳になった彼女は、ついに地元から出て、日本へと渡り歩いた。

 

 

「ここのお勧め、カスクートですよ」

 

「え?」

 

日本に移住してからそれなりの時が経ったある日のこと。職業探しの帰りに昼御飯にパンを買おうとしていたどれにしようかと悩んでいた時、女性店員がカスクートを勧めてきた。

 

「お姉さん、外国の人でしょ?挙動でなんかわかっちゃって・・・」

 

「ああ・・・はい。初めてのお店なので、どれにしようかと悩んじゃって・・・」

 

「カスクート、おいしいですよ。コンビニのよりずっと」

 

「じゃあ・・・カスクート1つお願いします」

 

会計を済ませ、カスクートを購入したシェーレは店の外に出て、女性店員に顔を向ける。彼女について、ずっと気になってる存在がいた故に。

 

(・・・あれは・・・なんなんでしょう・・・?)

 

蠅頭。4級にも満たない雑魚呪霊。飛行機の中にも似たような存在が人に憑いていたところを見たことがあった。彼女がそれを指摘して見ると、何もいないと言われ怪訝な顔をされた思い出がある。またあんな顔をされるのが嫌だと思った彼女はその蠅頭を放置することにした。彼女が帰路を歩いている時に、スーツを着込んだ金髪の男とすれ違ったのだが、お互いに他人なので気にも留めなかった。

 

 

シェーレの職業探しは散々である。お決まりのドジが連発して、中々定職に就くことが叶わなかった。失敗の日々を繰り返し、長い時が流れてようやく定職に就くことができた。だが、入社早々またもドジをやらかしてしまい、失敗を繰り返してしまう。その状況にお冠な上司は彼女を呼び出し、説教をする。

 

新人(チェリーガール)・・・なんなのこの体たらく?仕事(ビジネス)舐めてる?」

 

「すいません・・・」

 

「いいかい?(ユー)仕事(ビジネス)は会社の利益を守ること!そのための資料(ペーパー)作成(クラフト)ができてないとお話(スピーチ)にならないじゃない!」

 

「はい・・・」

 

「今のままのスキルじゃあ、報酬(マニー)をあげるどころか、クビ(グッバイ)をあげなきゃいけなくなるよ?そうならないためにもスキルアップスキルアップ!次はちゃんとグッドな資料(ペーパー)を提出してよ?」

 

「・・・わかりました・・・」

 

サッカーなどで例えると、シェーレは今イエローカードを渡された状態となっている。次に失敗したらレッドカード・・・クビになる可能性は十分にある。それを重々理解しているシェーレはため息をこぼした。

 

 

翌日、資料を作成したはいいが、また失敗をやらかさないか不安になり、シェーレは重い足取りになる。曲がり角を曲がろうとした時・・・

 

ドンッ!

 

「あ・・・!」

 

曲がり角の先にいた人物にぶつかり、シェーレは盛大に転んで資料を落としてしまう。慌てて起き上がろうとした時、今度はその拍子でメガネを落としてしまうシェーレ。

 

「す、すいません・・・あ・・・メガネメガネ・・・」

 

シェーレがメガネを探していると、ぶつかった相手は彼女が落としたメガネと資料を拾い上げ、彼女に渡す。

 

「これですよね?」

 

「あ・・・ありがとうございます」

 

シェーレはぶつかった相手・・・上司である七海にお礼を言いながらメガネを受け取った。

 

「・・・シェーレさん・・・ですよね?本日提出する資料、ところどころにミスがあります」

 

「えっ!!?そんな・・・どうしましょう・・・もう失敗はできないのに・・・」

 

ミスを指摘されたシェーレは困り果てた様子で動揺している。その様子に七海は見てられないと言わんばかりに首を横に振っている。

 

「・・・この後お昼休憩でしたよね?私もそろそろ休憩に入るので、少し時間をください」

 

「?はい・・・」

 

昼休憩に七海からの呼び出しをくらい、シェーレは憂鬱な気分になった。

 

 

問題の昼休憩。七海は呼び出したシェーレに資料作成の基本やコツなど1つ1つ丁寧に教えていった。そして完成した資料は、彼女にとって今までの中で1番いい出来であった。

 

「わぁ・・・!あ、ありがとうございます、七海さん!!」

 

「お金を預かるということは人生を預けるということでもあります。利益追求とリスクのバランスは言わずもがなですね。何も難しく考える必要はありません。お客様に対して真摯であること。それは接待においても同じことです。その心がけを忘れないように」

 

「は、はい!!」

 

アドバイスを伝え終えた七海は席を立ちあがり、仕事に戻ろうとしている。

 

「あ、あの・・・七海さん・・・わからないところがあれば・・・また聞きに来てもいいでしょうか・・・?」

 

「・・・私も暇ではありません。開いている時間帯でも構わないなら・・・お好きにどうぞ」

 

「!ありがとうございます!」

 

七海の空いている時間でならば聞きに来てもいい。そう言われたシェーレは笑みを浮かべ、心身と頭を下げて彼にお礼を言った。

 

 

それからシェーレは七海の教えを元に仕事に取り組んだ。わからないことがあれば七海に聞き、そのアドバイスを活かして工夫をする。相も変わらずドジをやらかすが、仕事効率はメキメキと上達し、上司にも褒められるほどになった。七海と出会ってから、彼女は仕事に対し、やりがいを感じるようになった。そう思えるようになったのは七海のおかげだ。

 

『七海に恩返しがしたい』

 

そう考えたシェーレは仕事の合間に上司や同僚に七海の好きなものを尋ね、贈り物を何にするかを考える。その結果贈り物に選んだのはカスクートである。

 

ある日の会社の休憩時間、シェーレは七海は屋上にいることを同僚から聞き、贈り物のカスクートを持って、屋上へと向かっている。屋上のドアまで辿り着いた時・・・

 

「元より私は生きがいとは無縁の人間です。3、40歳まで適当に稼いで、後は物価の安い国で人生を謳歌する・・・あなたはそんなつまらない人間を迎え入れたいですか?」

 

七海が誰かと話している声が聞こえてきた。シェーレは気になってドアの窓から外の様子を覗く。そこにいるのは七海と、黒い服を着た短髪の女性だ。

 

(会社の人じゃない・・・あの人はどなた・・・?)

 

会社の人間じゃない者がどうやって入ってきたのか、七海とはどういう関係なのか・・・シェーレは気になりつつも隠れて話に耳を傾ける。

 

「それは猿に埋もれてるからだよ。少なくとも高専にいた頃の七海は、もっと輝いていたよ」

 

「猿・・・以前のあなたは非術師をそんな呼び方にしなかった。あの人の影響ですか?」

 

「半分正解で半分不正解。これが私の本音だよ。非術師・・・猿はクソだよ。弱いくせに数が多いってだけで偉そうにふんぞり返って・・・しまいには呪術師を化け物扱い。そんな猿の厚顔ぶりが吐き気が催すほどに反吐が出る」

 

「だから呪詛師になったと?」

 

「逆に七海はなんで呪術師やめたの?」

 

「あなたが非術師が嫌いなように、私も呪術師が嫌いだからですよ。呪術師はクソです。他人のために命を投げ出す覚悟を時に仲間に強要しなくてはならない。あなただって理解しているでしょう」

 

「それやめたんじゃなくて逃げただけでしょ」

 

「・・・・・・」

 

高専?非術師?呪術師?呪詛師?聞いたことがないワードがポンポン出てきて、何の話をしているのかわからなくなるシェーレ。

 

「・・・七海さ、さっき物価の安い国で人生を謳歌するって言ってたよね?七海にこんなクソ労働を強いる猿のとこで働いて得た物に何の価値があるわけ?ただ人生を浪費してるだけじゃない」

 

「・・・・・・」

 

「七海はいい術師なんだから猿に埋もれるのはもったいないよ。私と来なよ七海。一緒に呪術師だけの楽園を創ろう」

 

「・・・一般人を皆殺しにしてまでですか?」

 

「!!?」

 

ガサッ!

 

一般人を皆殺しにする。七海の口から出た女性の考え方にシェーレは思わず絶句して、パンが入った紙袋を落としてしまう。

 

「誰!!?」

 

「!!」

 

紙袋の音を拾い上げたのか女性は恐ろしい形相でこちらに振り向いた。隠れてたことがバレたシェーレは思わずその場から逃げた。あれはいったい何なのか・・・呪術師とは何なのか・・・。シェーレはそんなことばかり考えていた。

 

その出来事から翌日・・・七海は会社を自ら退社した。

 

 

七海が会社から去った後、シェーレは仕事に生きがいを感じなくなった。これまで以上にミスを連発するようになって、彼女はとうとうクビを言い渡され、露頭を迷うことになった。しかし、彼女を絶望に追いやったのはそれだけではない。ニュースで変死体となった被害者が見つかったという記事。その変死体となったのが、かつて地元で共に過ごした友達だった。このニュースを見て、シェーレの頭は何もかもが真っ白になった。

 

それから彼女はもう、生きることがどうでもよくなった。かと言って死ぬも嫌。そんなどうしようもない考えが頭の中を巡り、もうごちゃごちゃである。そんな中でも彼女は、初めて来たパン屋に通い続けている。

 

「・・・大丈夫ですか?ちゃんと寝れてます?」

 

「・・・あなたこそ、疲れが溜まってるように見えますが?」

 

「あ、わかっちゃいましたー?最近なんか、肩が重いというか・・・眠りも浅いし・・・」

 

女性店員からその話を聞いて、シェーレが目に留まったのは、未だ彼女に纏わりついている蠅頭だ。

 

「・・・私のかつて務めてた会社は、お金持ちの人からお金を預かって、その人をよりお金持ちにする・・・。私はその会社のOLを務めてました。正直私がいなくなっても誰も困りません。パン屋がないとパンを食べたい人が困りますよね。でも、そういう人間のサイクルを外れた会社の人たちがお金払いがよかったりするんです。冷静に考えてみると、おかしい話ですよね」

 

「・・・し、嫉妬・・・?」

 

「違います」

 

「あはは・・・すみません。私にちょっと難しい話かと・・・」

 

自分でもなぜ自分の情報を打ち明けたのかわからない。ただシェーレは直観的に、話さないといけない。そう思ったのだ。

 

「・・・一歩前に出てもらえますか?」

 

「?」

 

女性店員は彼女に言われた通りに一歩前に出た。するとシェーレは手を動かし、何かを払いのける動作を取った。

 

グシャア!!

 

すると、女性に纏わりついていた蠅頭がバラバラになった。

 

「え?」

 

「肩、どうですか?」

 

「え?はい・・・え⁉軽い!!」

 

蠅頭が祓った直後、女性店員に感じていた肩の重みがなくなっていた。これを見てシェーレは、自分の直観は間違ってなかったと安堵する。

 

「違和感が残るようでしたら病院へ。失礼します」

 

「あ!!ちょっと!!待って!!」

 

シェーレはカスクートの会計を済ませて、店を後にした。女性店員は慌ててシェーレを呼び止めた。

 

「あの!!ありがとーー!!また来てくださいねーー!!」

 

「・・・!」

 

ありがとう。その言葉を聞いて、シェーレは目を見開き、報われたかのような笑みを浮かべた。

 

(ありがとう・・・その言葉を聞いたのは・・・いつ以来でしょう・・・。私には無縁の言葉だと思っていたのに・・・)

 

久しぶりに感じた高揚感を抱きながら、帰路を歩いていると、途中で蠅頭とは比べ物にならない呪霊と出くわした。異形の化け物を見ても、彼女は恐ろしく冷静だった。彼女は、自分の中を回る呪力を直感的に解放し、呪霊を祓った。そこで彼女は、ようやく気付いた。

 

『頭のネジが外れてるから、自分にはこの仕事が向いている』

 

自分のこの力があれば、社会のゴミである呪いを掃除できる。

 

その考えに至ったシェーレは以来、呪術師となって呪霊を祓っていく日々を送った。呪霊を祓う生活を送っていると、無断で呪霊を祓っている呪術師がいるという話が呪術界の耳に入った。その呪術師と言うのがシェーレである。自分たちの優位性が損なわれることを危惧した上層部はこの事態を解決ために、1人の呪術師が派遣された。その呪術師というのが・・・

 

「・・・あなたでしたか」

 

呪術界に再び戻ってきた七海であった。会社でお世話になった七海と再会することができた。シェーレはこの時、呪術師になるのは、やはり運命であったと考えるようになった。以来彼女は、呪術高専東京校所属の呪術師として、七海の部下として働くようになったのである。

 

 

呪術師になった経緯を振り返ったシェーレは懐かしい笑みを浮かべながら、覚悟が決まったかのようにメガネを外した。背中合わせにしている七海も自身のグラサンを外す。

 

「無為転変。君たちに感謝を」

 

「・・・必要ありません。それはもう大勢の方にいただきました」

 

「同じくです」

 

「「・・・悔いはない」」

 

覚悟が決まった2人に対し、真人は自身の術式を発動する。その瞬間・・・

 

パリィィィン!!!

 

領域の結界内にヒビが入り、悠仁と(たつみ)が外から拳を叩き込み、領域に穴を開けて侵入してきた。

 

(・・・何で入れる・・・?)

 

外にいる術師は領域には入れないと思っていた真人は驚きで目を見開く。だが、領域はその気になればどんな術師でも入ることができる。

 

なぜなら、結界内の耐性をあげるほど、外からの攻撃が弱くなるからだ。領域は閉じ込めることに特化した結界。逆に侵入することは非常に簡単だ。なぜなら侵入者にメリットがないからだ。神樂海紅や自閉円頓裹のように領域に入れた時点で勝ちが確定するとなればなおさらだ。

 

だが・・・悠仁の内には・・・触れてはいけない(もの)がある。

 

『言ったはずだぞ。二度はないと』

 

ヒュッ!!ズバ!!!!

 

「「「「!!」」」」

 

真人の術式によって宿儺が顕現した。宿儺が手を動かしたその直後、真人の身体に大きな斬り傷ができた。突然真人にダメージが負ったその事態に、4人は目を見開く。

 

天上天下唯我独尊。己の快・不快のみが生きる指針。七海が死のうと、真人が死のうと、宿儺にとってはどうでもいい。唯一の好奇は恵ただ1人。それ以外は、心底どうでもいいのだ。

 

パリィィィィン!!!!

 

宿儺によって受けた多大なダメージによって領域を展開する呪力が枯渇し、結界が破壊される。真人は受け、大きなく出血する切り傷を抑え、膝をついた。

 

(何が起こったんだ・・・?)

 

何が起きたのかわからず、戸惑っている(たつみ)。それは悠仁も同じだが、瀕死の真人を見て、真っ先にある考えがよぎった。

 

失血、七海、限界、生存、領域・・・殺せる!!!!

 

「殺す!!!!!」

 

殺せるなら今がチャンス。そう考えた悠仁は誰よりも真っ先に真人に接近する。

 

(領域展開・・・何て呪力消費だ・・・!まさに切り札、最終奥義・・・!それを宿儺め・・・!だが、ここが瀬戸際!!絞り出せ、最後の呪力を!!!)

 

真人はこれから繰り出される攻撃に備え、自分の身体の形を変え、大きく膨れ上がって巨大化する。

 

(的がデカい。呪力の流れも凪いでいる。カウンターはない。確実に攻撃を当てられる!!)

 

最後のチャンス。そこにもう駆け引きなど必要ない。そこにあるのは限りなく、透明な・・・殺意!!!!

 

悠仁は的が大きくなった真人に向けて、1ヶ月の特訓で編み出した技を放つ。

 

 

「悠仁の呪力は遅れてやってくるな」

 

「遅れて?」

 

1ヶ月の特訓の一環、赤女(あかめ)との組み手で彼女が悠仁の繰り出す技について指摘する。

 

「悠仁の瞬発力に呪力が追い付いていない。呪力を留める技術も未熟だから軌跡に残りがちだ。それが変則的な呪力の流れを作っている。拳が当たったと認識した直後に呪力がぶつかってくる。つまり、一度の打撃に二度のインパクトが生まれる。この技を・・・そうだな・・・名づけるとしたら・・・」

 

逕庭拳

 

「かっこいい!!」

 

「なかなか狙ってできることじゃない。間違いなく、これは大きな武器になる」

 

 

「逕庭拳!!!!」

 

ドォォン!!!!

 

悠仁が炸裂した呪力の拳を真人の腹部に叩き込んだ。そしてその直後、悠仁の呪力が流れ込み、真人の身体に呪力に衝撃が走った。その瞬間・・・

 

パァァン!!!!

 

真人の身体が破裂した。

 

「やったか!!?」

 

(たつみ)は真人が破裂したことによって倒したのかと考えるが、打撃を与えた悠仁は手応えを全く感じなかった。

 

(なんだ・・・?この手応えのなさは・・・?)

 

悠仁が疑問符を浮かべていると、シェーレは排水溝に向かって走り出す。排水溝の隙間に、魂の形を変えた真人が入ろうとしている。

 

「バイバぁ~イ」

 

「!!待て!!!」

 

「楽しかったよ」

 

ズウゥゥゥン!!!!

 

シェーレは排水溝に向けてエクスタスを突き刺した。だが手応えはなく、真人はそのまま下水道の中に入っていった。

 

「すいません、七海さん。逃げられました」

 

「チッ・・・」

 

逃げられたとわかった七海はすぐに下水道に待機している猪野に連絡を取る。

 

「猪野君、本丸が排水溝から逃走しました。・・・ええ。私たちがいた地点から東南を虱潰しにお願いします。今なら君でも祓える」

 

用件を言い終えた七海は通話を切る。

 

「私たちも追いましょう!」

 

ドサッ・・・

 

「「!!悠仁⁉」」

 

「虎杖君!!」

 

身体の方に限界が来たのか、悠仁は力なくその場に倒れた。急に倒れた悠仁に(たつみ)とシェーレ、七海が駆け寄る。

 

(動け身体・・・!殺すんだろ、あいつを・・・!ぐちゃぐちゃに・・・叩き殺・・・)

 

悠仁は真人に対する殺意を強く抱きながら、意識が途切れ、視界が暗転した。

 

 

下水道の中。ひどい重傷を負った真人は痛む身体を無理に動かし、地面を這いずってようやく出口の前までたどり着く。後は上に上れば、追跡を逃れることができる。真人は壁にもたれかかり、自分が触れた宿儺の魂を思い浮かべる。

 

(あれが呪いの王、両面宿儺・・・。現時点では漏瑚より呪力の総量では劣るはず・・・。なのに・・・あの存在感・・・魂の格が違う)

 

悠仁が取り込んだ宿儺の指は3本。漏瑚の強さは宿儺の指8、9本分。ゆえに現時点で呪力総数は宿儺の方が少ないのだが、魂の格は指の本数とは比べ物にならない。

 

(これは確信だ・・・。俺たちが全滅しても、宿儺さえ復活すれば呪いの時代が来る)

 

宿儺の復活。呪いの時代を求めている真人たちにとっては願ったり叶ったりのことなのだが、現在の真人は、その願いとは全く真逆のことを考えている。

 

「しかし参ったなぁ・・・。俺は今・・・どうしようもなく虎杖悠仁を殺したい!!!」

 

宿儺を復活させるには宿主である悠仁を生かす必要がある。だが今、真人にあるのは、悠仁に対する明確で強烈な殺意。ゆえにもどかしい気持ちでいっぱいになる。

 

「う~~ん・・・もどかしい・・・!でもまぁいいかぁ・・・。身体とは違って、魂は何度でも殺せる」

 

肉体ではなく、魂を殺す方向性で行く真人は非常にどす黒い笑みを浮かべている。

 

「次はどう殺してやろうか・・・」

 

 

夜、里桜高校近くの呪術師の待機場。そこでは、真人によって形を変えられ、亡くなった被害者たちが遺体袋に入れられ、1人1人に追悼が捧げられている。おそらく、その中には順平や(たつみ)たちが殺した子供の改造人間も含まれているだろう。

 

「・・・助けてやることができなくてごめん・・・。ごめんな・・・順平」

 

(たつみ)は被害に遭った子供たちと順平に対し、深く謝罪している。その様子は悲哀で満ちており、シェーレはどう声を掛ければいいかわからなかった。そこへ、隣の部屋で安静にしていた悠仁が入ってきた。

 

「!悠仁。もう平気なのか」

 

「・・・うん。大丈夫」

 

悠仁の表情はどことなく重く暗いものだった。里桜高校であれほどのことがあったのだ。無理もない話だが。

 

「安静にしろと言われたでしょ、虎杖君」

 

この部屋に七海が入ってきて、悠仁に声をかける。

 

「・・・説教?」

 

「命を助けてもらった相手に、説教もクソもないでしょう」

 

「・・・俺が?」

 

七海とシェーレの命を救ったと言われても、領域に入っただけの悠仁にはピンと来なかった。七海は冷静に、自分たちが助かった理由を話す。

 

「ツギハギの術式は他人の魂に干渉する。君が領域に侵入したことで、宿儺の逆鱗()に触れてしまったのでしょう。おかげで助かりました」

 

「・・・でも俺、代わってねぇよ」

 

「宿儺が出たのではなく、奴が入ったんです」

 

「・・・じゃあ、助けたのは俺じゃない。こいつの気まぐれだ」

 

宿儺が手を下したのであれば、自分は誰も助けてられていないと主張する悠仁。逆に言えば、悠仁が宿儺を取り込んでいなければ、2人は死んでいたどころか、それ以上の被害が出たかもしれないゆえに、非情に皮肉な話である。

 

「・・・ナナミン。俺は今日人を殺したよ。人は死ぬ。それは仕方ない。ならせめて正しく死んでほしい。そう思ってたんだ。だから引き金を引かせないことばかり考えてた。でも、自分で引き金を引いて、わかんなくなったんだ。正しい死って何?」

 

「そんなこと私たちにだってわかりませんよ。善人が安らかに、悪人が罰を受け死ぬことが正しいとしても、世の中の多くの人が善人でも悪人でもない。死は万人の終着ですが、同じ死は存在しない。それらを全て正しく導くというのはきっと苦しい。私はお勧めしません。・・・などと言っても、君はやるのでしょう」

 

任務は失敗に終わっただろうが、今回のことで悠仁と(たつみ)という人間を理解することができた。今はそれで十分だろうと結論づけ、七海は言葉を紡ぐ。

 

「死なない程度にしてくださいよ。今日君たちがいなければ私やシェーレさんが死んでいたように、君たちを必要とする多くの人が大勢現れる。虎杖君と和倉君はもう、呪術師なのですから」

 

七海は言いたいことを言って、部屋から退室する。悠仁と(たつみ)は真の意味で命の重さを知り、七海に呪術師と認められた。今日の任務で様々な感情が交差し、2人は涙ぐんでいる。そんな2人にシェーレは後ろから優しく、聖母のように抱きしめた。

 

「七海さんには内緒にしてあげます。だから、泣きたいなら泣いてもいいんですよ」

 

「・・・いいのかよ、上司がそんなに甘くて。七海さんとは大違いだぞ」

 

「んー・・・いいんじゃないですか?私は上司と呼べるほど、偉い人でもありませんから」

 

「・・・はは、そっか・・・」

 

シェーレの優しさに触れた悠仁と(たつみ)は一筋の涙を流しつつ、笑みを浮かべる。

 

「「ありがとな、シェーレ」」

 

「・・・こちらこそです」

 

2人を優しく抱きしめるシェーレは笑みを浮かべ、思いふけっている。

 

(七海さん・・・私が戦う理由・・・もう1つできました)

 

彼女の笑みからは、清々しいものを感じ取れた。

 

 

事件後の里桜高校。あの事件以来、学校ではある取り組みが行われるようになった。それは、少しでもいじめがなくなるようにと、いじめに関するアンケートである。実を言うと、生徒の中には伊藤たち不良グループによる順平のいじめを目撃した者はいた。だが、自分がいじめの標的になったらという恐怖心から、今日まで見てみぬフリを貫いてきた者が多い。だが何人かは、このアンケートを見て、このままではいけないと思い、真剣にアンケート用紙に素直な気持ちを書いていく。徐々にだが、里桜高校はいい方向に変わっていくだろう。

 

そして何より1番変わったのは、ちゃんと見ていなかったとはいえ、順平のいじめを見てみぬフリをしていた外村である。あのいじめのアンケートを積極的に取り組むように進言したのは、おそらくだが彼であろう。外村は一室の教室に、伊藤を呼び出して問いかけている。

 

「吉野のあの傷、お前がやったんだな、伊藤」

 

「・・・あん時ブルってなんもできなかった人にあーだこーだ言われたくないんすけど。学校辞めて引っ越したんだろあいつ?もうよくね?」

 

呼び出された伊藤はあまり反省してる様子が見られず、不貞腐れた態度をとっている。どうやら順平の件は死んだことは公にはせず、学校を退学して引っ越ししたということで片付けられたようだ。彼が死んだという事実を知っているのは、ほんの一部で、おそらくではあるが外村もその1人であろう。

 

「つーか俺、あれから左腕まともに動かねぇんすけど」

 

伊藤の左腕は澱月の毒の後遺症によって、動かすことがままならないらしい。

 

「今聞いてるのは罪の話だ。お前に下った罰については、1人で噛みしめろ」

 

「先生の罰は?」

 

「俺はこれからだ。まずは見えていなかったものをちゃんと見る。俺も・・・お前も・・・吉野の心を殺した罪を、一生背負って生きていくんだ。見ているからな!伊藤!」

 

いじめをなくす取り組みで、全てが変わるかはわからない。だが、その気持ちを忘れない限り、里桜高校のいじめ問題は、多く減るのは間違いないだろう。

 

 

東京の高専の廊下。出張から戻ってきた悟と赤女(あかめ)は七海とシェーレから任務の報告を聞いている。そこへ、廊下を歩く悠仁がやってきた。より一段と成長した悠仁の姿を見て、悟と赤女(あかめ)は笑みを浮かべる。

 

(正しい死に様なんてわかりゃしない。ならせめて・・・わかるまで・・・あいつを殺すまで・・・もう俺は・・・負けない)

 

 

(たつみ)は気持ちを切り替え、心機一転して高専に戻ってきた。彼を出迎えたのは、帰りを待っていてくれた恵。彼のそばに2年の先輩たちが4人そろっている。久しぶりに同期の顔を見て、(たつみ)は笑みを浮かべる。

 

(俺は人を殺した。そんな俺が立派な刃になれるかどうかなんてわからねぇ。でも、目を背けちゃいけない。死んだ人の十字架と無念を背負って、俺は前に進まないといけない。そのためにも、俺はもっと、強くなる!!)

 

残酷な現実を受け入れつつ、彼らは今日も、前へと進んでいく。呪いを祓う・・・呪術師として。




じゅじゅさんぽ

半月前・・・高専の一室。恵と野薔薇、2年と共に夕飯。献立は鍋。

野薔薇「もういいかしら」

棘「シャケシャケ」

真希、肉団子を一口・・・

真希「お、この肉団子うまいな。作ったの誰だ?」

恵「あ、俺です。簡単にできますよ」

棘「高菜」

パンダ「はむ。もぐもぐ・・・」

マイン「へぇー、伏黒って自炊できんのね。意外でもないけど」

恵「いや・・・これは虎杖に教わりました」

一同「・・・・・・」

一気に冷めた空気に・・・

野薔薇「・・・そっか・・・虎杖の・・・遺作」

真希・マイン「それは違くない(ねぇか)?」

一方その頃山の中。(たつみ)とブラート、食事中。献立、鍋。

ブラート「この肉団子なかなかうまいな」

(たつみ)「ああ、それ、虎杖から教えてもらったんだよ。兄貴でも簡単に作れるよ」

ブラート「・・・そうか。虎杖に感謝して、よく味わって食べないとな」

(たつみ)「まぁ・・・その本人生きてるんですけどね・・・」

ブラート「はっはっはっは」

一方その頃、高専の地下。悠仁、悟と赤女(あかめ)と共に食事中。献立、やっぱり鍋。

悠仁「へっくし!!!」

赤女(あかめ)ふぉのにくふぁんごふまいふぁ(この肉団子うまいな)

悟「本当本当。うまいよこれ」

悠仁「おお。それすげぇ簡単にできんだよ。伏黒や和倉でも作れるよ。教えたから」

悠仁、上を見上げる。

悠仁「早く2人に会いてぇなぁ・・・」



弐章『幼魚と逆罰』  完

参章『京都姉妹校交流会』



アンケート終了

アンケートの結果、伍章は前半と後半にわけて制作決定。

アンケート結果はこちら。

起首雷同後の章を選ぶなら?(呪術廻戦のアカメが斬る!零の物語を入れるなら)【重要アンケート】

  • 赤女が主役の伍章
  • 七海と黒女が主役の伍章
  • それより渋谷事変が伍章
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