呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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参章『京都姉妹校交流会』
京都姉妹校交流会ー⓪ー


人が寄り付かない秘境の山。そこの一角には、暖かい温泉が湧き出ている。その温泉の中で、自身の術式で太陽の光を照らしているのはサイボーグの呪霊、斬鬼。そしてそのそばで足湯に浸かっているのは、すっかり元通りになった火山頭の呪霊、漏瑚だ。漏瑚が煙管で煙草の煙を吸って英気を養っている。

 

「あー!!いたいたぁ!!じょーごー!!」

 

そこへ、やたらと騒がしい自分たちの頭、真人がやってきて、勢いよく温泉にダイブする。真人のそばには傑もついてきていた。

 

「身体はだいぶ戻ったみたいだね」

 

「まぁな。ここは居心地がいい。人間共も寄り付かん」

 

「肉体がないのも考え物だよねー。自己保管の効率悪いし」

 

「感謝しろよジジィ。あの毒の流れを呼んで解毒できるのは俺様だけなんだからなぁ」

 

漏瑚は赤女(あかめ)の術式反転切一文字の毒によって治療が不可能の状況下だったのだが、斬鬼の術式によって毒の流れを読んで解毒できたからこそ、こうして肉体を取り戻すことができた。

 

「ふんっ。・・・真人、お前もずいぶんと消耗しているな」

 

「あ、バレたー?宿儺と器、あいつら天敵でさー。たまたま手に入れたおもちゃ(順平)から始まった遊びだったけど・・・なかなかうまくいかないね。最初はよかったけど」

 

「おめぇはやり方が甘いんだよぉ。俺様だったら人質取ってハッキリ縛りを作らせてやるがなぁ。そんで、宿儺をこっちに引き入れて、人質はザクゥーってなぁ」

 

「うーわ、外道でえげつないねー」

 

「いや、そういう問題じゃないよ」

 

「あぁ?」

 

縛りについて話をしていると、傑が縛りの補足について軽く説明する。

 

「縛りはあくまで自分が自分に科すものだ。他者への介入や他者間との縛りは簡単ではないよ」

 

「人間なんざどうでもいいからよくわからんがぁ、要はめんどくせぇってことかぁ?」

 

「そういうこと」

 

話を聞いた真人は湯船でぶくぶく泡を作りながら、順平を改造した出来事の改善点を考える。

 

あれ(順平)の形を変えず、普通に致命傷を与えればよかったかなぁ?そうすれば宿儺の反転術式で治せたかも・・・。いや、あの性格だ・・・どちらにしろ断ってたか?)

 

どう転んでも宿儺の性格のせいで計画は破綻していたと考える真人は湯船から上がる。

 

「漏瑚、斬鬼。宿儺に触れてわかったけど、とりあえず夏油のプランを軸に進めていいと思う。宿儺にはそれだけの価値がある」

 

「・・・指を全て集め、宿儺に献上する・・・か」

 

「結果、それで俺様たちが全滅しても・・・だな」

 

「お、わかってるね」

 

自分たちが全滅する結果が待っていても、宿儺を復活させる。そんな傑の計画に賛同する真人に、漏瑚と斬鬼はニヤリと笑う。

 

「いいだろう。百年後の荒野で笑うのは儂である必要はない。呪いが人として立っていればそれでいい」

 

「斬鬼はどう?」

 

「ジジィが決めたんなら俺様は何も言わねぇよぉ。俺様はただ人として、呪いとして今を楽しめればそれでいいのよぉ」

 

「ははは、やっぱり斬鬼は、俺たちの誰よりも呪いだね」

 

理由が何であれ、漏瑚と斬鬼は利害の一致として、傑の計画を利用すると決めたようだ。

 

「じゃ、まず高専の保有する6本の指を回収するよ」

 

高専の持っている宿儺の指をわざわざ回収する。その点に漏瑚は疑問符を浮かべている。

 

「必要か?術師は宿儺の指を取り込ませるために虎杖悠仁を飼っているのでだろう?放っておいても勝手に食うだろ」

 

「高専上層部は虎杖悠仁の器としての強度を計りかねている。何本目から暴走するかとかね。取り込ませるのは、全ての指を揃えた後さ。例外は除いてだけど」

 

傑の言う例外というのは、言うまでも五条悟のことである。きっと『すーぐ食べさせたーい』とか考えてるに違いない。

 

「それまで待てないだろう?最悪、虎杖悠仁が上に消される可能性がある」

 

「おう待て待て。確かに待てねぇがよぉ、だったらあの女はどうよ?上層部のお気に入りなんだろ?奴さんが死刑を延期にゃできねぇのかぁ?」

 

斬鬼の言うあの女というのは、同じく協力関係にあるエスデスのことだ。

 

「確かに上層部は彼女を気に入ってるし、実際に彼女がこうだといえば揉め事を打ち消すだろうさ。普通ならね。ただ相手が宿儺ともなると彼女のカリスマも無意味だ。それほどまでに我が身が大事なのさ、上層部は」

 

どう転んだとしても、宿儺を警戒している上層部はあらゆる手を使ってどうにか悠仁を処分させたいと考えている以上、結局は同じ結果になると傑は断言する。

 

「どっちにしろってことかよぉ」

 

「虎穴に入らずんばか・・・さて、どうしたものか・・・」

 

傑の話に納得し、高専にある宿儺の指を回収することに賛同したはいいものの、敵地にどうやって足を踏み入れるべきか漏瑚は考える。

 

「手は打ってある。そのために、こちらの指を高専に回収させたんだから」

 

どうやって高専に侵入し、宿儺の指を回収するかのかという問題。順平の自宅に仕掛けた指を高専に回収させた時点で、計画が開始されているようだ。

 

 

 

 

 

呪術廻戦ー呪いを斬るー

 

参章

京都姉妹校交流会

 

 

 

 

 

 

東京都立呪術高等専門学校の一室。七海とシェーレはソファーに座り、束の間の休息の時間を取っている。すると、彼らと相対するソファーに座っている悟はぐだーっとソファにもたれかかって無茶ぶりを言い出す。

 

「なーなみ~、なんか面白い話してぇ~・・・」

 

「・・・・・・」

 

「えっと・・・」

 

「無視しろ、シェーレ」

 

悟の無茶ぶりを七海は無視。シェーレが戸惑ってる中、悟の隣に座る赤女(あかめ)は無視するように言い放つ。

 

「・・・よし!わかった!じゃあ廃棄のおにぎりでキャッチボールしながら政教分離について語ろうぜー!動画上げて、炎上しようぜー!」

 

「何がわかったんでしょう?」

 

「お1人でどうぞ」

 

「廃棄のものでも食べ物を粗末にするな。殺すぞ」

 

「なんでよー?廃棄なんだし別にいいでしょー?」

 

「本当に殺されたいのか?」

 

「わーかったわーかったぁ。もう、冗談通じないんだからー」

 

赤女(あかめ)さんが言わなかったらやる癖に・・・)

 

廃棄する食べ物でもそれをおもちゃのように扱うことを許さない赤女(あかめ)は悟に異様な殺意が湧く。その殺気を感じ取った悟は呆気からんといった態度で案を取り下げた。七海の思うとおり、赤女(あかめ)が言わなかったらきっとやっていただろうが。

 

パンッパンッ

 

「五条悟の大好きなところで山手線ゲーム!」

 

「お前の大嫌いなところがお題の山手線ゲームならやる」

 

「・・・赤女(あかめ)、もしかしてさっきので怒ってる?」

 

「怒ってない」

 

「怒ってるじゃん」

 

「怒ってない」

 

冗談でも食べ物をおもちゃにすることに対して根に持っている赤女(あかめ)に悟はめんどくさいなぁと感じた。

 

「その調子で頼みますよ。今の虎杖君と和倉君には、あなたたちのバカさ加減が必要なのですから」

 

七海の発言で悟が思い浮かべたのは、自分が悠仁たちに言った言葉だ。

 

『重めの任務をいくつかこなしてもらう』

 

神奈川県での任務は確かに重めな任務ではあるが、悟の言う重いとはそういうことではなかった。

 

「重めって・・・そういう意味じゃなかったんだけどなぁ・・・」

 

「・・・呪術師をやるからには必ず向き合わなければいけないことだ。それが遅いか速いかというだけだ」

 

「そうなんだけどさぁ~・・・」

 

重めな任務をこなし、呪術師がいかに過酷な仕事なのかということを知った悠仁と(たつみ)のことを考える赤女(あかめ)は少しだけ目を瞑る。

 

「・・・シェーレ、吉野順平の自宅にあった宿儺の指について悠仁には・・・」

 

「・・・言えるわけがありません。伝えたら2人とも、いらない責任を感じるでしょうから」

 

「・・・やっぱりお前と七海に任せて正解だった」

 

いらない責任を感じさせないようにしたシェーレと七海の悠仁たちへの気遣いに赤女(あかめ)は笑みを浮かべる。

 

「それで、指はどうした?」

 

「ちゃんと上に提出しましたよ。五条さんに渡すと、虎杖君に食べさせるでしょう?」

 

「よくやった七海」

 

「ちっ」

 

宿儺の指を上層部に提出した七海に赤女(あかめ)は称賛する。逆に悟は残念そうに舌打ちをしている。

 

「でも、本当に復帰させていいんですか?交流会で存在が公になれば、また上層部に狙われるのでは?」

 

「だとしても、悠仁を徹底的に鍛え上げたんだ。今のあいつなら問題はない」

 

「そーそ。それはお前たちが1番わかってるんじゃないの?」

 

「「・・・・・・」」

 

確かに今の悠仁なら上層部のどんな差し金でも撥ね退けらるだろう。だがそれでも心配が拭えない七海とシェーレ。

 

「あー!!先生ー!!お、ナナミンとシェーレもいる!」

 

そこへ、噂をすればなんとやらと言わんばかりに悠仁がやってきた。その様子はどこかワクワクしており、目も輝かせている。

 

「なあなあ!早くみんなのとこいこーぜー!!」

 

今の悠仁の心境はこうなっている。

 

『死んだと思っていたのに・・・』仲間と感動の再会!!

 

初めまして!!第一印象のキメテ!!2年の先輩と初対面!!

 

京都校現る!!交流会開始!!『初心者のための交流会ってなぁに?』

 

これらの感情が合わさって、悠仁の感情は有頂天になりかけている。

 

「そうだな。(たつみ)はもう合流しただろうし、そろそろ行くとするか」

 

「あれ?もしかして、ここまで引っ張って、普通に登場するつもり?」

 

「ん?」

 

「えっ⁉違うの⁉」

 

そろそろ交流会会場に向かおうとする赤女(あかめ)に悟は彼女の腕を掴んでストップをかける。赤女(あかめ)と悠仁は疑問符を浮かべている。

 

「死んでた仲間が一月後、実は生きてましたなんて、術師やっててもそうないよ。・・・やるでしょサプライズ」

 

「「サプライズ・・・?」」

 

悟の言葉に赤女(あかめ)と悠仁はさらに疑問符を浮かべる。それとは対照的に七海は嫌な予感を感じている。

 

「ま、僕に任せてよ。1年は嬉しさと驚きで泣き笑い、2年も京都ももらい泣き、嗚咽のあまりゲロを吐く者もあらわれる。最終的に地球温暖化も解決する!!」

 

嘘八百感丸出しな悟の力説に対し、赤女(あかめ)と悠仁は・・・

 

「いいね!!」

 

「・・・悪くないな」

 

ころっと騙されるのであった。

 

「で、何をしたらいい?」

 

「何もしなくていい。僕の言うとおりにしろ。流れるままに~」

 

「だから俺何したらいい~?」

 

「・・・あの・・・生きてるだけでサプライズになるのでは・・・?」

 

「また赤女(あかめ)さんの悪い癖が出ている・・・」

 

サプライズする気満々な赤女(あかめ)と悠仁の様子を見てシェーレは何とも言えない表情をし、七海は呆れるような感情を抱いた。

 

 

一方その頃、交流会での合流地点。恵と2先生たちと合流した(たつみ)は何とも言えないような複雑そうな顔をしている。

 

「新入り、何だその顔は?なんか文句でもあんのかよ?」

 

「いや・・・なぜか知らねぇけど嫌な予感して・・・」

 

「は?あたしたちが何かやらかすとでも?会って早々失礼な奴ね」

 

「いや先輩たちじゃねぇよ・・・なんか別の何かっつーか・・・」

 

「何それ?意味わかんない」

 

「ま、別にいいけどよ」

 

初対面でいきなり何とも言えない顔をしている(たつみ)に真希とマインはかなり怪訝そうな顔をしている。

 

「まぁまぁ落ち着け。とりあえず、お前のことは伏黒から聞いてる。有望株なんだってな?しかもブラートからのお墨付きなら期待も高い。頼りにしてるぜ、1年」

 

「パンダがしゃべってる!!!???」

 

パンダがしゃべるという普通ではありえないことを目の当たりにした(たつみ)は当たり前ながら驚きが隠せない。

 

「シャケ」

 

「なんて?」

 

棘がおにぎりの具でしか会話しないことを知らない(たつみ)は彼が何を言っているのかわからないでいる。

 

「あたしは不安よ。こいつの顔立ちからして役に立たなさそうな失礼な奴だし」

 

「なっ!!?あんたも十分失礼だよ!!!」

 

初対面ながらに酷評をするマインに憤慨する(たつみ)。そんなマインの言い分に恵が少し反論する。

 

「こいつが任務先で何をやって来たかはわかりませんが・・・呪力なしでの単純な取っ組み合いで挑んだら・・・束になっても多分和倉が勝ちます」

 

「伏黒・・・!」

 

恵のフォローに対し、(たつみ)は持つべきものは友であると感動し、ちょっぴり涙をこぼす。恵からの(たつみ)の評価を聞いた2年生は全員目を見開かせている。

 

(ブラートからの評価だけじゃねぇ。東堂と戦った恵の評価も合わせれば信憑性はぐんと上がるな・・・)

 

恵の評価を聞いて真希は(たつみ)は使えると考え、笑みを浮かべる。

 

「面白れぇ。なら十分にこき使ってやるから覚悟しとけ」

 

「おう!」

 

「和倉」

 

真希の期待に応えるかのように元気に返事をする(たつみ)に恵が声をかける。

 

「お前任務先で何かあっただろ?」

 

「!・・・まぁ、な。ちょっと・・・気が滅入ることがあってさ・・・」

 

「・・・・・・」

 

(たつみ)の脳裏に浮かんでくるのは里桜高校での出来事である。

 

「でも大丈夫だ。もう気持ちの割り切りはできてんだ。交流会、勝とうぜ!」

 

「・・・ならいい」

 

なんとなく(たつみ)の変化に気付いて気遣ったが、彼の様子から見て、本当に大丈夫だろうと納得する恵。すると・・・

 

「な・・・何でみんな手ぶらなのぉ~~~!!!???」

 

「「「「「?」」」」」

 

遅れながらに野薔薇が集合場所にやってきた。彼女は今、旅行バックや旅行ケースを携えている。まるで修学旅行に向かう学生のようだ。

 

「よう釘崎。久しぶりー」

 

「あ、和倉。帰ってたのね・・・じゃなくて!!!ど、どういうこと!!??」

 

「お前こそ何だその荷物は?」

 

「何って・・・これから京都でしょ・・・?京都()姉妹交流会・・・」

 

何か勘違いをしている野薔薇にパンダが交流会の開催場所がどこなのかを教える。

 

「京都()姉妹校と交流会だ。東京で」

 

「嘘でしょおおおおおおおおおおお!!!???」

 

京都に行くと思い込んでいた野薔薇はここ、東京校現地で交流会をやると聞いて激しくショックを受けている。

 

「どおりで最近会話が噛み合わないわけだ」

 

「ですね」

 

「シャケ」

 

「去年勝った方の学校でやんだよ」

 

「勝ってんじゃねぇよ!!!バカ!!!」

 

交流会の開催場所について補足の説明をするパンダに野薔薇が胸倉を掴んで突っかかってきた。

 

「俺らは去年出てねぇよ。去年は人数合わせに憂太が参加したんだ」

 

「憂太って?」

 

「乙骨憂太。あたしたちと同じ2年だけど、今海外よ」

 

憂太のことを名前すら知らない(たつみ)にマインがこの場にはいない彼のことを軽く紹介している。

 

「去年勝ったって・・・そんなにすげぇのか?乙骨先輩って」

 

「去年は里香の解呪前だったし・・・圧勝だったらしいわよ?京都でやったから知らないけど」

 

里香という存在がなんであるかはわからない(たつみ)は圧勝で京都校に勝ったという憂太に対し、戦慄が走り、ごくりと固唾を飲んでいる。

 

「許さんぞ乙骨憂太ああああああ!!!!!会ったことねぇけどよおおおおおおお!!!!!!」

 

「逆恨みだな」

 

「うるさ・・・」

 

「シャケ・・・」

 

京都に行けないきっかけを作った憂太に対し怒りを燃やしている野薔薇に2年を含め、恵と(たつみ)も呆れている。

 

「・・・おい、来たぜ」

 

そうこう話しているうちに待ち人である京都府立呪術高等専門学校の2、3年の生徒全員がやってきた。

 

「あら、東京校の皆さん、お揃いで。わざわざお出迎え?気色悪い」

 

呪術高専京都校2年、禪院真衣。

 

「乙骨いねぇじゃん」

 

呪術高専京都校3年、東堂葵。

 

「いなくていいよ、あんなえげつねぇバケモン」

 

呪術高専京都校3年、ラバック。

 

「うるせぇコラ、早く菓子折りよこせオラぁ。八つ橋くずきりそばぼうろ」

 

「シャケ」

 

「腹減ってんのか?」

 

「うっさい。そんなとこ突っ立ってないでブブ漬けでもどうなのよ?」

 

「え?それ俺らに帰れって言ってる?」

 

野薔薇は八つ当たりするかのように京都の菓子折りを要求している。マインはそもそも京都校の陣営を歓迎していない様子である。

 

「何あの1年・・・?怖っ・・・」

 

野薔薇の言動に引いているのは黒ワンピースに俵のような金髪ツインテールが特徴の小柄な女子生徒だ。

 

呪術高専京都校3年、西宮桃。

 

[乙骨がいないのはいいとしテ、1年3人はハンデがすぎないカ?]

 

「ロボだ!ロボがいる!!」

 

「かっけぇ!!」

 

「敵を褒めんな!!」

 

京都陣営にロボット・・・と言うより傀儡人形がいることに対して、野薔薇は驚愕しており、傀儡人形に見惚れている(たつみ)にマインが怒鳴る。

 

呪術高専京都校2年、究極(アルティメット)メカ丸。

 

「呪術師に年は関係ないよ」

 

メカ丸の発言に年は関係ないと主張するのは糸が特徴の黒髪の男子生徒だ。

 

呪術高専京都校3年、加茂憲紀。

 

「特に伏黒君に三好さん。伏黒君は禪院家の血筋、三好さんは五条家の血筋だが・・・宗家より出来がよい」

 

「ちっ・・・」

 

「ケッ!いかにもな模範解答だな」

 

憲紀の言い分に対し、舌打ちをする。そこへ憲紀への苛立ちを隠さず挑発気味に発言するのは水色髪のポニーテールが特徴の男子生徒だ。

 

呪術高専京都校2年、加茂清孝。

 

「さすがは優等生。嫡男みてぇな半端者でも言うことが違うぜぇ。俺には真似できねぇ」

 

「・・・加茂家を侮辱する気か?清孝」

 

「侮辱してんのは本家だろーが。舐めてんじゃねぇぞオラ」

 

「はぁ・・・」

 

「まぁまぁ!2人とも落ち着いてください」

 

互いに睨みあい、火花を散らせる憲紀と清孝に真衣はため息をこぼす。内輪揉めをしている2人を落ち着かせるのは清孝たちの同級生の女子生徒である。

 

呪術高専京都校2年、三輪霞。

 

パンッ、パンッ

 

「はーい、内輪で喧嘩しない。まったくこの子らは・・・」

 

京都陣営の内輪揉めを止めたのは巫女服姿で顔に大きな一筋の傷跡を持った白いリボンで黒い長髪を結んでいる女性であった。

 

呪術高専準一級術師 京都校引率、庵歌姫。

 

「・・・で?あのバカ共は?」

 

「悟と赤女(あかめ)は遅刻だ」

 

「あのバカ1号が時間通りに来るわけないでしょ」

 

「バカ1号を止めてるバカ2号まで遅れてんのは珍しいな」

 

「誰もバカが五条先生と赤女(あかめ)先生とは言ってませんよ」

 

(先生人望なさすぎ!!)

 

生徒からバカと貶されている悟と赤女(あかめ)(たつみ)は2人に対し哀れに思った。

 

「ははは、相変わらず東京校のみんなは仲がいいねぇ。羨ましいよ」

 

東京校の生徒の仲の良さに微笑ましく笑ってやってきたのは、肩ぐるしさを全て捨て、ラフな服を着込んでいる赤いリボンとヘッドギアを着けたルージュ色の長髪の女性であった。

 

呪術高専準一級術師 京都校引率、チェルシー。

 

「ま、そう焦らなくても、あの2人なら来るでしょ」

 

ガラガラガラガラ!

 

「お、噂をすれば、だね」

 

「おっまたーー!!」

 

チェルシーは棒付き飴を口に咥えたと同時に、悟と赤女(あかめ)が台車にクーラーボックスと何かの人形を乗せて運んでやってきた。

 

「やっほー、悟く~ん♪」

 

「五条悟!」

 

「ちっ・・・五条悟・・・」

 

悟の登場にチェルシーは笑みを浮かべて手を振って歓迎、三輪は頬を緩ませ上機嫌、歌姫は舌打ちをして嫌そうな顔をしている。

 

「やぁや皆さんお揃いでー!私たち、出張で海外に行ってましてねー!今から赤女(あかめ)が皆にお土産を配りまーす!」

 

「唐突だな」

 

「時差ボケじゃない?」

 

めちゃくちゃテンションが高い悟に対し、東京校の陣営はかなり引いている。

 

「はい、京都のみんなにはとある部族をお守りを。多分ご利益があるはずだ。あ、歌姫にはないぞ?」

 

「いらねぇよ!!!!」

 

赤女(あかめ)は出張先で仕入れた部族のお守りを京都陣営(なぜか歌姫にはない)に渡していく。

 

「そして!東京のみんなにはこちら!!」

 

「ハイテンションな大人って不気味ね」

 

テンションが高めの悟に対し、東京陣営はかなり不気味がっている。

 

(・・・おいあのクーラーボックスってまさか・・・!)

 

(たつみ)は悟が指しているクーラーボックスの中身を察した様子である。すると、クーラーボックスの蓋が開き・・・

 

「はい!おっぱっぴー!!」

 

「故人の虎杖悠仁君でーーす!!!!!」

 

○島○○おのネタを披露した悠仁が中から出現した。かなりふざけた登場のしかたをする悠仁に対し恵と野薔薇・・・

 

「「・・・・・・」」

 

かなり冷めきったようなドン引き顔をしている。2年は反応に困った様子で立ち尽くしている。

 

(キャーーーー!!悠仁俺恥ずかしいよ!!!)

 

同期のふざけた行動に対し、(たつみ)は恥ずかしさを隠すように両手で顔を覆い尽くす。

 

「・・・ええええええええ!!!!???え!!??えええ!!??全然!!!!!嬉しそうじゃない!!!!!」

 

一同の予想とは全く違う反応に対し、悠仁はひどく動揺している。

 

(う・・・うそぉ・・・)

 

「はーい、京都のみなさーん、これが宿儺の器、虎杖悠仁君ですよー」

 

(きょ・・・京都の人らは・・・)

 

仲間たちがダメなら、京都の人たちにと淡い期待を向けようとする悠仁であるが・・・

 

(お土産に夢中うううううううううう!!!!!)

 

赤女(あかめ)からもらったお土産に夢中で誰1人として悠仁を気にも留めていない。・・・たった1人を除いて。

 

「宿儺の器・・・⁉」

 

悠仁の登場に驚き、困惑しているのは、夜蛾と共にやってきた京都校の学長である。

 

「どういうことだ・・・?」

 

呪術高専京都校学長、楽厳寺嘉伸。

 

「あ、楽厳寺学長~!いやぁ~、よかったよかったぁ。ビックリして死んじゃったらどうしようかと、心配しましたよ」

 

「・・・クソガキが・・・!」

 

学長が相手だろうとも恐れず、悟は憎たらしく楽厳寺を煽る。対し、楽厳寺はどこまでも生意気な悟を睨みつけている。

 

「・・・ん?思った反応と違うな・・・?」

 

「ははは、さすが悟君だね。おもしろいサプライズだったよ」

 

生徒が思ったような反応をしなかったため首を傾げ疑問符を浮かべている。そんな彼女にチェルシーが笑いながら近づく。

 

「・・・赤女(あかめ)、後で話があるから」

 

「・・・わかった」

 

赤女(あかめ)の耳元で囁くチェルシーは笑ってはいるが、目は全く笑っていなかった。話の内容を察した赤女(あかめ)は素直に首を縦に頷く。

 

「おい」

 

「は、はい・・・」

 

「なんか言うことあんだろ?」

 

先ほどから固まっていた悠仁は野薔薇に声を掛けられ、ビクつく。よく見てみると、野薔薇の目元にはうっすらと涙がこぼれていた。恵と(たつみ)はとりあえず謝っとけと言った顔をしている。

 

「・・・生きてたこと・・・黙っててすんませんでした・・・」

 

虎杖、合流。

 

 

悠仁が合流したところで、いよいよ2日間にわたって開催される東京・京都姉妹校交流会が開催された。第1日目である団体戦の競技内容は・・・

 

チキチキ呪霊討伐猛レース

 

このチキチキ呪霊討伐猛レースのルールを東京校の学長、夜蛾が説明する。

 

「ルールは簡単。指定された区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利となる。区画内には三級以下の呪霊も複数放たれており、日没までに決着がつかなかった場合、討伐数の多いチームに軍配が上がる。それ以外のルールは一切なし。もちろん妨害行為もありなわけだが・・・あくまで君たちは共に呪いに立ち向かう仲間だ。交流会は競い合いの中で仲間を知り、己を知るためのもの。相手を殺したり、再起不能の怪我を負わせることの、ないように」

 

ルール説明をしている中、夜蛾は締め技で悟をガッチリお仕置きしており、さらに器用にも逃げようとする赤女(あかめ)の片足を強く踏んづけ、逃げられないようにガッチリと固定させる。今2人が怒られている理由は3つある。

 

悠仁の生存を秘密にしていたこと

 

楽厳寺学長を煽りまくったこと(これは主に悟)

 

なんかムカつく(これも主に悟)

 

もちろん悟ならば防げるだろうが、生徒の手前もあるため、悟は甘んじてお仕置きを受けている(赤女(あかめ)はそうでもないため逃げようとしているが)。主に悟が痛めつけられてる光景を見て、歌姫はくすくすと笑っている。

 

「以上!開始時刻の正午まで解散!!」

 

ルール説明が終わり、各陣営は用意されたミーティングルームへ向かうのであった。

 

 

東京校側のミーティングルーム。自分が生きていたことを黙っていたかつ、あのふざけた登場をした悠仁は野薔薇の怒りによって遺影の額縁を顔に添えられていた。

 

「あのぉ~・・・これは見方によってはハードないじめなのでは・・・?」

 

「うるせぇ。しばらくそうしてろ」

 

「黙ってた俺も悪かったけど、これに関してはお前が1番悪いよ」

 

悠仁にしのごの言わせない野薔薇に対し、パンダが口を開く。

 

「まぁまぁ。事情は(たつみ)が説明したろ。許してやれって」

 

「パンダがしゃべった!!?」

 

パンダがしゃべっていることにやっぱり驚く悠仁。

 

「シャケシャケ」

 

「なんて?」

 

「初めて会った時もそうだけど、この人なんでおにぎりの具でしかしゃべらねぇの?」

 

(たつみ)が抱く棘への疑問に対し、恵が答える。

 

「狗巻先輩は呪言師だ。言霊の増幅、強制の術式だからな。安全を考慮して語彙絞ってんだよ」

 

「てことは、死ねって言ったら相手が死ぬってことか?」

 

「最強じゃん」

 

「そんな便利なもんじゃないさ」

 

棘の術式、呪言の不便さをパンダが説明する。

 

「実力差でケースバイケースだけどな、強い言葉を使えばでかい反動がくるし、最悪自分に還ってくる。語彙絞んのは、棘自身を守るためでもあるのさ」

 

「へー・・・意外に不便なんだな」

 

「で、先輩は何でしゃべれんの?新種のパンダとか?」

 

棘の術式に(たつみ)は納得し、悠仁は未だになぜパンダがしゃべれるのか疑問を抱いている。

 

「人の術式をペラペラと・・・」

 

「いいのよ別に。棘の術式はそういう次元を超えてるから」

 

「だな。・・・んなことより悠仁」

 

「ん?」

 

「屠坐魔返せよ。悟から借りたろ?」

 

真希は悠仁に対し、呪具屠坐魔の返却を要求している。悠仁が呪術界にやって来たばかりの頃に悟から渡された屠坐魔は真希のものだったらしい。それがわかった悠仁は状況をまとめる。

 

まず悟が真希から屠坐魔を借りた。次に悟が悠仁に屠坐魔を渡した。そして少年院で屠坐魔を壊した。最終的に屠坐魔は返ってこない。

 

(ひぃぃぃ・・・!!)

 

真希に怒られると悟った悠仁は顔を青ざた。

 

「・・・五条先生が・・・持ってるよ・・・」

 

「ちっ!あのバカ目隠し!」

 

「だから言ったでしょ。アホ目隠しに預けたら返ってこないって」

 

「「・・・・・・」」

 

屠坐魔がどうなったかの終止符を知っている恵と(たつみ)はじとーっと悠仁に視線を送っている。余談ではあるが別室にいる悟はこの話に感づいてくしゃみをしたとかしなかったとか。

 

「・・・で?どうするよ?団体戦形式はまぁ予想通りとして、メンバーが2人増えちまった。作戦変更か?時間ねぇぞ」

 

「おかか」

 

「そりゃこのペーペー共次第でしょ。使えなきゃ話にならないし」

 

「だな。悠仁と(たつみ)は何ができんだ?」

 

「殴る、蹴る」

 

「俺はそれプラス斬る」

 

「そういうの間に合ってんだよなぁ・・・」

 

「「えぇ・・・」」

 

自分の得意分野はもうすでに間に合っていると明かされ、悠仁と(たつみ)はショックを受ける。

 

「和倉に関しては最初に言ったとおりです。虎杖も、死んでいる間何をしていたかは知りませんが・・・呪力なしのぶつかり合いなら和倉といい勝負しますし、東京校、京都校と全員でぶつかり合えば・・・虎杖が勝ちます」

 

「おお・・・」

 

2人に対して高い評価を出している恵の言葉にパンダは感心した声をあげる。

 

(この2人、ただの田舎者だと思ってたけど・・・あの筋肉ゴリラ(東堂)とやり合った伏黒が大きく出るってことは・・・もしかしたらって可能性もあるわけね)

 

話を聞いただけなら突っぱねていたところだが、実際に東堂と戦ったことのある恵が大きい評価を出すなら、戦力としては問題ないと判断するマイン。

 

「口先だけなら何とでも言えるわ。実戦で証明してみなさい」

 

マインはきつめの言葉を2人に向けて放ち、闘志を湧かせるのであった。

 

 

京都校側のミーティングルーム。この一室に京都校生徒が全員集まっており、楽厳寺は彼らに向けて指示を出す。

 

「宿儺の器・・・虎杖悠仁は殺せ」

 

交流会での殺人は禁止されている。だがそのルールを無視するかのように楽厳寺は悠仁を殺せと言い放った。そうするだけの理由はやはり宿儺である。

 

「あれは人ではない。ゆえに全て不問。事故として処理する。遠慮も躊躇もいらんぞ」

 

(胸くそ悪ぃしダリィー・・・)

 

(やだなぁー・・・)

 

宿儺の器とはいえ、善良そうな人間を殺さないといけないという指示にラバックと三輪はあまり乗り気ではなさそうな顔をしている。

 

「殺すも何も、彼死なないからここにいるんですよね?」

 

「先の虎杖の死は自死だと聞いておる。敵対術師にとどめを刺す時、気をつけねばならぬことは・・・加茂憲紀」

 

「はい。死後呪いに転ずることを防ぐために、呪力で殺します」

 

「そうだ。他者の呪力で殺せば何の問題もない。現在、肉体の主導権は虎杖悠仁にある。宿儺が出てこなければただの一回生だ。くびるのは・・・」

 

ドガァ!!!

 

楽厳寺が話をしている最中、東堂が聞くに堪えないと言わんばかりに障子扉を蹴とばした。

 

「くだらん!勝手にやってろ!」

 

これ以上話を聞く気がない東堂は部屋を退室しようとする。そんな彼に憲紀が呼び止める。

 

「戻れ東堂。学長の話の途中だ」

 

「11時から散歩番組に高田ちゃんがゲスト出演する・・・これ以上説明いるか?」

 

「録画すればいい。戻れ」

 

 

「リアタイと録画両方見んだよ!!!!舐めてんのか!!!!」

 

 

(そこかよ・・・!)

 

(俺だってリアタイで高田ちゃん見てぇのに・・・!)

 

あまりにも自分勝手な理由で話を切り上げようとする東堂に真衣とラバックは呆れ、憲紀と楽厳寺は顔を強張らせる。

 

「いいかお前ら!爺さんもよく聞け!女の趣味が悪いお前らには、当の昔に失望している!謀略、策略、勝手にやれ。ただし!!次俺に指図してみろ。殺すぞ

 

言いたいことを言い終えた東堂は今度こそ部屋から退室するのであった。

 

 

話が終わり、楽厳寺も部屋から退室して、この場に残った東堂を除いた京都校の生徒たちはこの交流会でどう動くか話し合っている。

 

「どうします?あの様子じゃ作戦行動なんて無理ですよね・・・?学長もどっか行っちゃったし・・・あの人に殺されたくないですよ・・・」

 

「いいんじゃないかな?どーせあいつ東京陣営まっしぐらだぜ?勝手に暴れてくれるんなら、俺らは呪霊刈りに専念できるし」

 

「でも私たちは虎杖悠仁を殺さなきゃでしょ?」

 

(マジでやんの・・・?)

 

(やりたくねぇ~・・・)

 

悠仁を殺したくないと考えている三輪とラバックは本当に心の中では嫌な気持ちでいっぱいになっている。

 

「あの人、殺すまではやらないんじゃない?やりそうではあるけれど」

 

[そうなるト、東堂を監視し虎杖悠仁にとどめを刺す役が必要だナ]

 

((俺(私)は嫌だ!))

 

「呪霊の相手もあるから、どーせ2人1組み(マンツ―セル)ですし、ちょうどいいですかね」

 

「いや、高専に所属する術師の中に、虎杖悠仁のような半端者がいるのは由々しき事態だ。交流会以前の問題・・・加茂家嫡流として、見過ごせん」

 

「ケッ!嫡男に同意すんのは癪だが、同意見だ。虎杖悠仁・・・野郎の存在そのものが加茂家の品位をさらに汚す。見逃してやる理由が全くねぇ」

 

悠仁を逃がさないために、憲紀は1つの提案をする。

 

「私たち全員で虎杖悠仁を襲撃する」

 

憲紀が出した提案に西宮が手をあげて異議を唱える。

 

「待って。虎杖君と狗巻君が一緒にいたらどうするの?呪言師を前に雁首揃えるのはリスキーだよ。最悪一網打尽にされちゃうんじゃ・・・」

 

[確かにナ]

 

「それがどうしたよ?野郎がいるとわかっていれば、そこまで脅威じゃねぇだろ。呪言をぶっ放す前に潰せばいいんだからよぉ」

 

「マインだけは私にやらせて。できれば真希と茶髪の1年も」

 

「その発言、東堂と同レベルだよ」

 

東堂と同レベルにされたくない真衣は憲紀に怒りを向ける。とはいえ、これで京都陣営の算段は整った。後は実行に移すのみ。

 

 

一方その頃、教師たちが待機する一室とは別の部屋。チェルシーに呼び出された赤女(あかめ)はソファに腰かけ、彼女と対面する。

 

「それで、話というのは何だ?」

 

「言わなくても察しはついてるでしょ?宿儺の器・・・虎杖悠仁のことだよ」

 

悠仁に関する話題が出てきて、赤女(あかめ)は予想通りといった様子である。楽観的に見えるが、チェルシーの考え方はかなり現実的でシビアだ。ゆえに、これから話す内容も予想がつく。

 

「結論から言うね。虎杖悠仁はさっさと殺した方がいいよ」

 

予想は的中した。悠仁が宿儺の器である以上、このような話が自分に振ってくるのは赤女(あかめ)でも簡単に予想できる。

 

「理由はもちろんわかるよね?生きた災害と呼ばれた両面宿儺。あれが齎した災害や術師を含む被害者数・・・それは歴史が物語っている。それが今受肉を果たして復活した。肉体の主導権は虎杖悠仁が握ってるみたいだけど・・・指何本食べさせたら暴走するとか、何本目で暴走するとか、そんなことを考えたことってある?」

 

「ある」

 

「だったら虎杖悠仁が宿儺を抑えている今がチャンスだと思わない?完全ではないにしろ、もしも宿儺が表立ってしまったら、どれほどの被害が出るかわからない」

 

「・・・・・・」

 

「私だって上層部は嫌いだよ?けど今回ばかりは上層部は正しい判断をしてる。1人の人間の命と、日本の未来の安寧。どちらを取るかなんて考えるまでもない。誰が何と言おうと、私は虎杖悠仁の処刑には賛成だよ」

 

如何にもな現実的で公平、そして合理的で正しい理由。彼女の言うとおり、先の未来の安寧を考えるなら、危険の種である宿儺の器は排除した方が合理的だ。だがそれでも、赤女(あかめ)も譲らない。

 

「お前の言ってることは何も間違ってない。悠仁に指を食べさせることは危険が孕む。だが悟は言ったところで理解しない。というより、理解した上で食べさせてる」

 

「そうだよ。だから悟君にはこんな話なんて無駄。でも赤女(あかめ)は違うでしょ?」

 

「お前の言うとおり、危険分子である悠仁は宿儺が表立つ前に葬る方が1番いいだろうとは思う。だが・・・」

 

「だが?」

 

「悠仁がいなければ助からなかった命があったことを私は知っている。七海とシェーレもそれに当てはまっている」

 

「それはただの結果論」

 

「結果論でもこの事実は覆らない。そしてこれからも、悠仁を必要とする人間が現れると信じている。だから、どのような結果になろうとも、私は悠仁の行く末を見守る。誰が何と言おうと、これだけは譲れない」

 

これが私情と言われようとも、赤女(あかめ)は自分が信じたもののために全力を尽くす。そういう姿勢が話の中で感じ取ったチェルシーは呆れている。

 

「呆れた。赤女(あかめ)はそういう私情を持ってこないと思ってたのに」

 

「私情を持ってきてるのは、お互い様だ」

 

赤女(あかめ)の発言を聞いて、チェルシーはピクリと反応する。

 

「ん?どういう意味かな?」

 

「お前そうまでして悠仁の処刑を勧めようとするのは・・・京都の生徒を・・・歌姫を宿儺の脅威から守るためなのだろう?」

 

「・・・っ!」

 

「私もお前も中々に甘いな」

 

赤女(あかめ)の核心を突いた発言にチェルシーは頬を赤らめ、照れ隠し同然のように、どこからかハリセンを取り出し、彼女を軽く叩く。

 

「ちーがうっての!あくまで私の精神衛生上で・・・」

 

「歌姫が大事なのは否定しないんだな」

 

「・・・もう、本当生意気。私の方が先輩なのに」

 

チェルシーは不貞腐れたようにそっぽを向く。

 

「納得してくれとは言わない。せめて、交流会だけでもいい。悠仁の軌跡を見てやってくれないか?」

 

「・・・・・・」

 

お願いともいえる赤女(あかめ)の言葉に、チェルシーが目線を送ろうとした時・・・

 

「ねぇーちょっと聞いてよ赤女(あかめ)ー。歌姫ったら僕といる間ずぅーっとキレてんの。僕悪いことしてないのに」

 

「別にキレてないって言ってるでしょ」

 

話を遮るかのように悟が入室してきて、後から歌姫も入ってくる。悟と歌姫の入室でチェルシーは元の表情に戻る。

 

「・・・ははは、ちょっとは誤魔化す努力はした方がいいよ歌姫。キレてるのバレバレだよー」

 

「あんたねぇ・・・」

 

「悟、今日のサプライズの件、忘れたとは言わせないぞ」

 

「そーんな細かいことはいいじゃなーい。さて、4人そろったわけで・・・本題ね」

 

歌姫がチェルシーの隣に座ったところを確認し、悟は赤女(あかめ)の隣にドカッと座り込んで、真剣みを帯びた表情で本題に入る。

 

「高専に呪詛師・・・あるいは呪霊と通じてる奴がいる」

 

「「!!??」」

 

高専の者が呪霊と繋がっている・・・普通ならありえないことを聞かされた歌姫とチェルシーは驚愕する。

 

「ありえない!!呪詛師ならまだしも、呪霊と!!?」

 

「そういうレベルの奴が近年現れるようになったんだ。人語を介し、徒党を組み、計画的に動いている。本人的には呪詛師とだけ通じてるかもしれないが」

 

「そういうこと。京都側の調査を、歌姫とチェルシーに頼みたい」

 

悟の調査依頼に対し、チェルシーは質問をする。

 

「・・・割って入るようで悪いけど・・・もしも私たちが内通者だったらどうするの?」

 

「ないない。2人とも弱いし、歌姫に至ってはそんな度胸ないでしょ?」

 

バッチャーーーン!!!!

 

悟の発言に癪に触った歌姫はお茶が入った湯飲みを彼に向けて投げ放った。悟は術式で防いだため、お茶は届いていない。

 

「歌姫、お茶を粗末にするな」

 

「こーわ。ヒスはモテないよ?」

 

「お前ら!!!私の!!!方が!!!先輩なんだよ!!!!」

 

「まー、とりあえず今は保留でよくない?」

 

もうすぐ団体戦が始まる。調査は一旦は保留ということで結論づけるのであった。

 

 

団体戦開始までもう間もなく。教師がスタートの合図が出れば、競技開始だ。互いの陣営は現在、本拠点の外で待機している。そんな中、恵が悠仁に声をかける。

 

「虎杖」

 

「んー?」

 

「大丈夫か?」

 

「おー。なんか大役っぽいけど、なんとかなんべ」

 

「そうじゃねぇ。なんかあったろ?」

 

「あ?なんもねーよ」

 

恵に問いかけに対し、悠仁は笑ってごまかしているが、彼はそう言う誤魔化しはいらないと言わんばかりに見つめている。

 

「・・・・・・あった。でも、大丈夫なのは本当だよ。むしろそのおかげで、誰にも負けたくねぇんだ」

 

悠仁の脳裏に浮かぶのは里桜高校での戦い、待機場で七海と話したことの出来事だ。そのおかげで、悠仁は前に進めるし、もっと強くなりたい意欲が湧いている。

 

「・・・ならいい。俺も、割と負けたくない」

 

「なーにが割とよ!一度ぶっ転がされてんのよ?中途半端でやったら承知しないわよ!!」

 

「マインさんの言う通り!圧勝!!コテンパンにしてやんのよ!真希さんのためにも!」

 

「・・・そういうのやめろ」

 

「明太子」

 

「そう!真希のためにもな!」

 

「よーし!伏黒の雪辱戦も兼ねて、絶対勝つぞ!!」

 

「お前もそういうのやめろ」

 

東京陣営のコンディションはバッチリ、やる気も十分に満ち溢れている。

 

「へへっ、そんじゃまぁ・・・勝つぞ!!」

 

悠仁は彼らの前に立ち、ズバッと仕切り上げる。

 

ゲシッ

 

「「何仕切ってんだよ(のよ)」」

 

「いてっ!」

 

堂々と仕切る悠仁に真希とマインが彼の尻を蹴り上げる。交流会1日目、チキチキ呪霊討伐猛レースの開幕はもう間もなくだ。

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