交流会1日目、団体戦チキチキ呪霊討伐猛レース。ラバックとの戦闘を開始しようとした直後に自分が殴り飛ばした清孝に乱入され、
ドオオオオオン!!!
掌底をまともにくらった
(くっ・・・身体中が痛ぇ・・・。あいつなんて力だ・・・。あん時咄嗟に防御してなかったらやられてた・・・)
清孝が乱入してきた際に放った拳を
「うげっ!」
ズウウウウウウン!!!!
気付いた時には時すでに遅し。迫ってきた木は強い衝撃音と共に
「おいラバ、この1年よこせ。この俺に舐めた真似をした落とし前を、嫌というほどに味合わせてやる。てめぇは西宮のカバーなり呪霊刈りなり何でもやってろ。だが、俺の獲物をちょっとでも手ぇ出してみろ。殺すぞ」
『・・・そういう発想自体が東堂と同レベルだって気づけよ・・・』
「ああ!!?」
『どっちにしろノリに乗ったら俺らを巻き込むでしょ。もう好きにしなよ』
「へっ、そうこなくちゃなぁ」
清孝が通話を切った瞬間、彼が投げ放った木が真っ二つに切り裂かれ、裂け目の中央より、青龍刀を構えた
特級呪具、白虎斧・双刃
「ちぃ!」
迫ってきた白虎斧・右刃を
「なっ!!?」
それに感づいた
(あの斧、自在に軌道を変えられるのかよ・・・。攻撃力自体は青龍刀ほど高くないみたいだけど、あの怪力だ。斧にあいつの怪力を籠めることで重い一撃が成立する・・・。変幻自在の軌道攻撃にあいつ怪力が合わさると厄介だぜ・・・)
(野郎・・・結構痛めつけてやったのによく動きやがる・・・。しかもあの反射神経・・・。まさか真希と同じフィジカルギフテッドか?『メカ丸と同じ』ある意味逆の天与呪縛・・・。術式と引き換えに人間離れした身体能力を得る縛り・・・。禪院家じゃ絶対に認められねぇ力。敵に回すとこんなに厄介だとはな・・・。認識を改める必要がありそうだぜ)
互いに距離を取って身構える
「・・・お前に聞きたいことがある」
「あ?」
「悠仁を殺せっていうそっちの学長の指示、お前の意思でやってんのか?」
「・・・ちっ!ラバの野郎、いちいち余計なことを言いやがって・・・」
自分たち京都校がやろうとしていることを
「・・・あいにく俺は憲紀みてぇにジジィや御三家に共感性なんて一ミリも持ち合わせちゃいねぇ。が、利害は一致してる。野郎が嫡流として振る舞うこと、俺が加茂家の一員だと証明できることのな」
「・・・?」
「答えはイエスだ。ジジィの指示なんざ関係ねぇ。俺個人の意思で虎杖悠仁をぶっ殺す。それが加茂家にとって正しい判断だと思ってる」
「加茂家とか御三家とかよくわかんねぇけど・・・要は家の都合で殺すってことかよ」
「んなちゃちなもんじゃねぇ・・・よ!!!」
清孝は白虎斧・左刃をまたもブーメランのように投げ放つ。
「くっ・・・!」
「てめぇら素人は知らねぇだろ。加茂家の内情を・・・分家に落ちた者の苦労を」
「お前がめんどくせぇ奴だってことはよくわかったよ・・・!」
己が掲げる目標のために悠仁を殺そうとする清孝に対し、
●
一方その頃、悠仁と戦っている東堂は彼の術師としての力量をしっかりと目で見て、戦闘で測っている。
目より先に手が肥えることはない。良し悪しを見抜く目を養わねば、作品を生み出す手の成長は望めない。表現者の間でよく使われる文句。これはあらゆるジャンルに共通し、目の良い上達速度はそうでない者のそれをはるかに凌駕する。
悠仁と東堂の拳と蹴りの激しい打ち合い、悠仁の攻撃を防ぎつつ、攻撃を仕掛けていく東堂は右横拳を繰り出そうとする。対して悠仁はその攻撃を防御し、素早く左拳で東堂の顔に左拳の強烈な一撃を叩き込んだ。
(右横拳を繰り出した俺に対し、咄嗟に左
左拳の縦拳を繰り出した悠仁は東堂の頭と左腕を手で抑え、胴体を右足に絡ませる。
(成長している・・・
「うおおおお!!」
右足を東堂の胴体に絡ませた悠仁は力を込め、彼の体制を崩し、地面に叩きつける。
(なんて美しく崩してくれるんだ!)
(顔面がら空き!取れる!逕庭拳でも!)
体制を崩した東堂に悠仁はがら空きとなった顔面に逕庭拳で一撃をもぎ取ろうとする。
(だがしかし!!)
ゴンッ!!
加速させて逕庭拳を放とうとする悠仁に対し、東堂は加速しきる前に体を起こし、額で悠仁の逕庭拳を受け止めた。
(!!加速しきる前の拳を額で受けやがった!)
「お前に食ってほしいのはそこじゃない」
東堂は悠仁の拳を下ろし、逕庭拳の利点と、欠点を述べる。
「お前の逕庭拳は人間離れした身体能力に通常遅れることのない速度の呪力が遅れることで生まれるものだな。トリッキーだ。並みの術師では何が起こったかわからず混乱するだろう。威力も十分。その程度の奴が相手ならな!」
「・・・っ!」
「特級には通じないぞ」
特級相手・・・例えば真人や漏瑚などが挙げられる。里桜高校で真人を祓えなかったのはこの欠点が主な原因であろう。
「どうする?親友」
「・・・俺の全力にドンピシャで呪力を乗せる」
「グッド!ではなぜ、呪力が遅れるのか!それは呪力を流しているからだ!」
「あ?」
東堂の言う呪力が流しているという意味を理解していない悠仁は唖然となる。
「いや、流す速度をあげようって話だろ?」
「呪力を流す。多くの術師がこれを意識的に行っている。『腹が立つ。』『はらわたが煮えくり返る。』負の感情から捻出される呪力はへそを基点に全身から流すのがセオリーだ。へそから胸を通り、肩、腕、そして拳へと呪力を流す。この体を部位で分ける意識が呪力の遅れを生む」
「!」
「呪力を流す。これ自体は間違いではない。しかしそれは初歩。その意識に囚われすぎてはいけない。一流の術師ほど、呪力の流れが読みづらいものだ。お前とは違う理由でな。俺たちは腹でものを考えるか?頭で怒りを発露できるか?」
「あ・・・」
「いいか、虎杖・・・俺たちは、全身全霊で世界に存在している。当たり前すぎて、みんな忘れてしまったことだ」
人間にとって当たり前のことで、大切なこと。それを思い出した悠仁は呪力の遅れを改善するコツを感覚的に学んだ。
「・・・ありがとう、東堂。なんとなく・・・わかった」
その証拠として、悠仁の身体中から、呪力が湧き出ていることが感じられる。
「ふっ・・・もう、言葉はいらないな」
悠仁の気迫に東堂は笑みを浮かべ、全力でそれに応えようと、呪力を湧き立たせる。
(手加減はしない・・・全力で!!導く!!!)
東堂の脳裏に思い描くのは、悠仁と共に過ごしてきた、『存在しない記憶』である。
(死ぬなよ虎杖!登って来い!高みへ!!)
東堂の悠仁への期待は、ますます高まっていくばかりである。
●
一方別の森の中、マインの術式によって落とされた西宮は撃った本人であるマインとパンダと野薔薇に取り囲まれている。
「ねぇあんた。そっちの
(!この子勘がいいな・・・。いや、それはパンダちゃんかマインちゃんの方かな・・・)
野薔薇が楽厳寺から下された指示内容を言い当てたことに西宮は多少驚いた様子を見せている。
「え・・・何それ?」
だが西宮はあくまでも白を切るような返答を返した。そんな西宮に野薔薇は挑発で返そうとする。
「別に隠さなくていいのよ。私だって殺す気でやるし。特にあいつ・・・真衣とかいう真希さんの出がらし」
「はぁ?」
野薔薇の挑発に対し、西宮は怒りの反応を見せている。
(なんだ、怒れんじゃん。私も今同じ気持ちだよ!!)
西宮の怒りと同じように怒りを示している野薔薇は挑発をさらに続ける。
「はぁ?じゃねぇよ。ペッパー君でももうちょいマシなレスポンスするわよ。あぁ、そういやそっちのメンバーにもいたわね、ペッパー君。スクラップにして不法投棄しようかしら」
挑発を続ける野薔薇に西宮は表情を強張らせ、額に血管が浮き出ようとしている。
(怖い・・・)
(ちょっとドン引きだわ・・・)
野薔薇からどす黒いオーラを漂わせており、それを感じ取ったパンダは彼女に若干ながらの恐怖を抱き、マインは彼女のあまりの口の悪さにドン引きしている。
ドォン!!
「お」
「「!!」」
パンダは突如として発せられた呪力に敏感に反応したが、対応が間に合わず、森の奥からの射撃をまともにくらってしまい、倒れる。
「パンダ先輩!!」
「ちぃ!!」
パンダが倒れたことによって、野薔薇に焦りの表情を見せ、マインは先ほど射撃が放たれた方角にライフルを構える。
[呪骸だゾ。死にはしないサ。しばらく動けんがナ]
森の奥から現れたのは、西宮のカバーにやってきた傀儡、メカ丸であった。
[で、誰がペッパー君だっテ?]
「待ってメカ丸。あんたはマインちゃんの相手をしてて。この1年は私がかわいく叩き直す」
西宮は箒の呪具に跨ってゆっくりと木から降りていく。
「真衣ちゃんの苦労・・・女が呪術師として生きていく意味を教え込んでやる」
西宮の野薔薇に対する敵意に対して、野薔薇は強い睨みを利かせる。
「勝手に話を進めるんじゃないわよ。ま・・・言わなくてもこいつぶっ壊すつもりだけど!!」
マインはライフルガンに呪力を流し込み、呪力の弾丸をメカ丸に向けて撃ち放った。メカ丸は屈んで弾丸を回避しする。続けてマインはメカ丸の足元を狙って弾丸を撃ち込む。だがメカ丸はそれよりも早く高く跳躍し、弾丸を躱してマインに拳を放とうとする。迫りくる拳をマインは避けようともしない。なぜなら彼女は知っているからだ。
パンダがやられていないことを。
「なんちって」
[!!!]
マインとメカ丸のちょうど真ん中に位置していたパンダは起き上がり、迫ってきたメカ丸に向けて強烈なパンチを繰り出した。対応が遅れたメカ丸はパンダの拳を顔面でくらい、後退する。
「出たがりか?コソコソ隠れて援護に徹しろよ。みっともないぞ、レディに手をあげて」
[・・・・・・]
「ま、仲良くやろうぜ。
お仲間同士。呪骸であるパンダから発せられたこの言葉にメカ丸は歯ぎしりを立てている。
[人形風情が・・・知った口ヲ!!]
パンダの発言に怒りを示したメカ丸は右腕の強襲武装を展開する。
「やれやれ、呪霊刈りはどこへやら」
構えを取るパンダに対し、メカ丸は強襲武装より、強靭な刃を数本展開し、指も爪のように鋭利になる。
[
「うおっ!!」
「避けろパンダ!!」
[
メカ丸の右手はドリルのように回転し、右肘部のブースターを点火させて推進力を加算させ、パンダに向けて強烈な突きを放った。パンダはギリギリでメカ丸が放った突きを躱したが、その一撃は非常に強力で背後にあった木は強い衝撃によって斬り倒されてしまう。
[ちょこまかト・・・]
機敏な動きをするパンダに対し、メカ丸は鬱陶しそうに毒づく。そんなメカ丸の側面にマインが現れ、弾丸を3発撃ち放つ。視覚外の射撃にメカ丸は冷静に対処する。
[
メカ丸の右腕の強襲装甲の刃は収納され、代わりに剣山のようなトゲが出現し、迫ってきた弾丸をメカ丸は剣山の腕で3発全て防いだ。
「ちっ・・・」
視覚外から弾丸を撃ったにも関わらず弾を全て防がれ、マインは舌打ちをする。
(こいつがここにいるってことは、桃をカバーしにきた奴がもう1人くらいいるわよね。さっさとこいつ片付けて・・・なんならほっといてそいつ探すか野薔薇を加勢したいとこだけど・・・こいつ射撃があるのよね。そう簡単には見逃してくれそうにないか・・・)
メカ丸の強さを考察するマインは彼に1つの質問を投げかける。
「あんた強いわね。何級?」
手元にある京都校の情報を元にマインはメカ丸がどれほどの等級に位置するか予想を立てる。
今ある情報でわかっているのは・・・
1級が東堂のみ。
準1級が棘、憲紀。
2級が恵、ラバック。
準2級がマイン、パンダ、清孝。
3級が野薔薇、真衣。
4級が真希のみ。
そして今どの等級に配置されてるのかわからないのが悠仁、
情報はないが、マインの予想を立てるなら、西宮は2級か準2級、三輪が3級か4級、そして肝心のメカ丸が3級か準2級となっている。
(桃、霞、メカ丸の情報はないけど・・・あたしの予想だとこんな感じね。野薔薇にはちょっと荷が重いわね)
マインが頭の中で予想を立てている間に、メカ丸はマインに顔を向け、左袖を破り捨て、左掌の砲台を展開する。
[対呪霊の格付けが今必要とは思えんガ、教えてやル。準1級ダ]
「え?」
メカ丸の等級が予想を上回って準1級だと知り、マインは一瞬だけ唖然となる。
[
メカ丸は唖然となっている彼女に構わず、強力な砲撃を撃ち放った。その砲撃によってマインは正気に戻る。
(!攻撃範囲が広い!)
「マイン、下がれ!」
迫ってくる砲台にパンダが彼女の前に出て、全身に呪力を纏って防御に徹する。砲撃は見事にパンダに直撃したが、それほど大きいダメージは負っていない。
「っぷぅ・・・」
(この出力では核をピンポイントで狙わなければ無意味カ・・・)
砲撃を放ったメカ丸の左腕は冷却のために籠った熱を放熱する。マインはその隙を逃さなかった。
(!放熱!タメも残しもでかい!その分、隙も大きい!)
マインはこの好機を逃さず、パンダをかいくぐってメカ丸に3発の弾丸を撃ち放つ。放熱で隙ができたメカ丸はもろにその3つの弾丸をくらってしまう。
[グッ・・・!]
ダメージでよろめくメカ丸の前に、今度はパンダの拳が迫ろうとしていた。
呪骸。内側に呪いを宿し、自立可能な無生物の総称。人工的な呪骸には心臓となる核が存在する。パンダは傀儡呪術学の第一人者、夜蛾正道の最高傑作。感情を持って生まれた呪骸・・・突然変異呪骸。
パンダは、パンダじゃない!!!
「オラオラオラオラオラオラぁ!!!!」
パンダは強烈なラッシュパンチをメカ丸に何度も何度も叩き込む。
(捉えどころのない動キ・・・!)
「うおおおお!!」
さらにパンダはラッシュからの強烈な拳を叩き込み、メカ丸を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされたメカ丸は態勢を立て直し、パンダに近接戦闘を持ち込もうと動く。しかしメカ丸の進行をマインが弾丸を何発も撃ち放たれ、妨げられる。弾丸を回避するメカ丸は跳躍する。しかし読みが当たったマインは狙いをメカ丸から外さず、さらに弾丸を撃ち込む。放たれた弾丸は宙に浮かぶメカ丸に見事に全弾命中。
(なんという正確な射撃・・・!)
よろめくメカ丸は両肘のブースターを点火させて態勢を立て直し、ブースターをさらに点火してマインに突っ込んで突きを放とうとする。対するマインはこの攻撃を避けようとはせず、ライフルのギアをチェンジし、向かってくるメカ丸狙いを定め続ける。そして、攻撃がヒットする直前で、マインは引き金を引いた。
ドォォン!!
(ぐぁ!!ショットガンだト・・・!)
引き金を引いたことにより、弾丸はショットガンのように散開発射し、メカ丸に直撃する。ショットガンの弾丸をもろにくらったメカ丸はよろめき、後退する。
「えい」
ズシィィン!!!
さらにそこへパンダのヒップアタックが炸裂し、メカ丸は吹っ飛ばされる。
「まぁ、俺みたいなのがいたら、噂くらいは聞くわな。そうじゃないってことは、お前は呪骸じゃなくて、本体の術師が別のところで遠隔操作してる感じか。だからって呪骸扱いされてキレんなよ。俺と一緒は嫌か?傷ついちゃうぞ・・・。傷ついちゃおっかなーー!!!!」
「[・・・・・・]」
自分と同じ扱いをされることが嫌なメカ丸に対して、パンダはクワッとこっちを見てすごいリアルなパンダの顔をして傷ついたアピールをしている。対するメカ丸は無言、味方であるマインは白けたような顔をしている。
「・・・で?こいつがただの傀儡なら、本体はどこにいるのよ?探せる範囲なの?」
「んー・・・呪力出力からして、そう遠くにはいないはず・・・いや、ギリ場外だな」
「そうなってくると探しても時間の無駄ね。その間こいつフリーになるし。うん、やっぱりこいつぶっ壊すわ」
[・・・どちらも叶わんサ。天与呪縛。知っているカ?自らが自らに科す通常の縛りとは違う、生まれながらに強制された縛りのことダ]
生まれた時から強制された縛り、天与呪縛。その縛り内容は人によって様々ではあるが、必ず身体に何かしらの影響がある。
[俺には生まれつき右腕と膝から下の肉体、さらに腰から下の感覚がなイ。肌は月明かりにも焼かれるほど脆ク、常に全身の毛穴から針を刺されたように痛ム。その代償として俺ハ、広大な術式範囲と実力以上の呪力出力を与えられタ]
これらの能力は術師としてはかなり魅力的なものではあるが、その代償が大きく、人間としての尊厳を破壊されたも同然である。さらにこの天与呪縛は生まれた時に科せられたものであるため、本人の意思など考慮されるはずがない。
[望んで手に入れた力じゃなイ。呪術を差し出し肉体が戻るのであれば喜んでそうするサ]
天与呪縛の中で最も過酷な縛りを持って生まれたメカ丸の本体は、これらのせいで今まで日の光が当たらない生活を送ってきた。それゆえに、彼は呪骸という存在が、憎らしいほどに疎ましいのだ。
[俺はナ、俺を差し置いテ、呪骸のお前がのうのうと日の下を歩いているのが・・・
どうしようもなク、我慢ならんのダ!!!!]
凄まじい怒気を纏ったメカ丸は顔の構造が変形し、口より砲台が出現して、狙いをパンダに定める。銃口には凄まじいほどの熱量が集まっている。
[
(!すんげぇ呪力量!しかもこの位置!射線上に野薔薇!こいつはやべぇ!!)
膨大な呪力出量を感じ取り、今から放たれる砲撃が危険であると肌で感じ取っているパンダ。そして、射線上には西宮と戦っている野薔薇がいる。避ければ彼女を巻き込んでしまう。ゆえに、避けられない。
(だがなぁ・・・忘れてないか?西宮を撃った最初の砲撃。それを出したのが誰なのかを!!)
メカ丸の砲撃に対し、パンダの隣にいたマインは慌てる様子はなく、ライフルをメカ丸の銃口に狙いを定める。
(!真正面から撃つつもりカ!無駄なことダ!!)
「『収束』、『発散』。あたしの術式は至る所にある無限を収束させ、それを発散させるというものよ。今まで撃ってきた弾はその無限を現実に持ってきて、視認できるようにしたもの。でもあたしの術式の真骨頂はそこじゃない」
マインはライフルの銃口に呪力を溜め込み、自身の術式の開示をしている。
「肉を切らせて骨を断つって言葉を知ってる?あたしの術式はまさにそれを体現していてね。あたしがピンチだと感じて、そのピンチが多ければ多いほど、あたしの呪力は増し、強大な一撃を放つことが可能になる。この意味がわかる?あんたは今、『強力な砲撃を放とうとしている』。『そしてこっちは避けられない理由がある』。これをピンチと呼ばずしてなんて呼ぶの?」
マイン自身の膨大な呪力と、そして術式の開示によって、銃口に溜まっていたエネルギーがより強大なものへと変貌していく。
「あんたの攻撃、裏目に出たわね。ピンチになればなるほど、あたしは強い!!!」
互いのエネルギーが溜まり、メカ丸とマインは、強力な砲撃を撃ち放つ!
[
「浪漫呪法―――『満開』!!」
ドオオオオオオオオオオオン!!!!!!
メカ丸の砲撃と、マインの術式による砲撃が同時に撃ち放たれ、互いに衝突しあう。メカ丸の砲撃が強く押してだしていれば、マインの砲撃が負けじと押し返す。互いに均衡を保っている2つの強烈な砲撃は・・・やがて耐え切れず・・・
ドカアアアアアアアアアアアン!!!!!!
爆風がお互いを包み込むような、凄まじい大爆発を引き起こした。砲撃の衝突による爆発によって発せられた煙が晴れると、辺りは焦土と化している。そして肝心のメカ丸とマイン、パンダはというと・・・メカ丸は多少のダメージは負ったものの、動くには問題ない。対してマインとパンダは・・・少しすすを被っているが、こちらも問題なく動ける。
(バカナ・・・⁉
最大火力の一撃を相殺され、無効化されたことにメカ丸は動揺を隠せないでいる。とはいえ、マインもメカ丸を壊すつもりでいたため、こうして無事であることに多少なりとも驚いてる。
「驚いたわ。ぶっ壊すつもりでいたのに。不幸話ついでに、術式情報を小出しにした一撃。あんた、なかなかの術師ね。・・・でもあんた、真衣の次くらいにムカつくわ」
メカ丸本体の経緯にマイン自身も思うところはある。だがだからと言って呪骸をひがむ理由にはならないと考える彼女は彼に対し、イラつきを感じている。
「あたしの手でその性根を叩き直したいところだけど・・・さっきのであんたのお仲間が感づいたかもしれない。ならあまり時間はかけられない。そして残念なことに、あたしは短期決戦には向いてない。だから・・・」
マインはメカ丸に背を向け、パンダの腕をポンと叩く。
「あたしの分まで、しっかりとぶん殴ってきなさいよ、パンダ」
「・・・たく・・・普段は横暴なくせしてさぁ・・・いざそんな期待を込められちゃあ・・・」
マインからの期待を感じ取ったパンダはその姿を変貌させた。肉体は筋肉質となり、手も、足も、そして顔もゴリラに近いものへと変わった。
「無性に答えたくなっちゃうでしょうが」
パンダ・ゴリラモード。
[なんだ・・・その姿は・・・⁉]
パンダは、パンダじゃない!!!
●
時は遡り、パンダが小さかった頃に遡る。パンダの面倒を見る夜蛾は彼にある事実を伝える。
「パンダ。お前には、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるんだ」
「いませんけど」
「いや、いる。お前の中にな」
「・・・このパンダなんで敬語なんですか?」
「知らん・・・」
たまたま今日パンダの世話をしていた
「俺の中?」
「ああ。いつかわかるさ。その2人はいつだって・・・」
●
いつだって、力を貸してくれる。
「頼んだわよ!!」
この場をパンダに託したマインはこの戦線から離れるために走り出した。
[!!逃がすカ!]
メカ丸は逃がすまいと左掌をマインに向けて砲台を放とうとするが、それを阻むパンダが目の前まで迫った。パンダは右手に呪力を乗せ、メカ丸に掌底を放とうとする。
[っ!!
メカ丸は砲撃をやめ、咄嗟に右腕の
「うおおおおおおお!!!」
パンダが放った掌底は
(呪骸の心臓となる核は本来1つ。だが俺の中には3つの核があり、メインの核を入れ替えることでボディを
バランス重視パンダ核。
短期決戦パワー重視お兄ちゃんゴリラ核。
そして照れ屋なお姉ちゃん。
お姉ちゃんの核は初撃で瀕死状態。さっきのはマインの満開がなけりゃ、パンダ核もヘロヘロだっただろう。ただマインの言うとおり仲間がもう1人いるとすれば、急がねぇと。ゴリラモードで片を付ける!)
パンダがゴリラモードで決着をつける方針を決めている間、吹っ飛ばされたメカ丸は森を抜け、高専の敷地内にある屋敷の屋根と衝突し、後ずさる。
(清孝ほどのパワーはない・・・だが今の掌打・・・内部に響ク!ガードしてもダメージを負ウ!)
「気付いたな。これがゴリラモードも得意技・・・
防御不能!!!
防御不可能の技、
(次
対して、パンダはメカ丸が次にどう出るか予想を立てる。
(ゴリラモードはゴリゴリに呪力食うからなぁ、ゴリラだけに。この短時間が勝負どころだ。右腕は潰せた。最大火力はもう撃てないよな?左と口は剣なし、砲撃のみか?だとしてもむやみに撃ってこないはず。メカ丸は二度の砲撃で俺を仕留め損なったと思っている。実際にはマインの分を除いて、1つの核はしっかり瀕死にしているのにな。次は核ピンポイントの0距離射撃か、斬撃でかかってくる。だが!近接なら俺に分がある)
パンダは崖から飛び降り、メカ丸を追いかけるかのように屋敷の屋根の上に着地する。メカ丸とパンダ、お互いが睨みあい、同時に動き出す。パンダが繰り出す強烈な猛攻をメカ丸はブースターを使ってうまく避けていく。メカ丸はパンダが強烈な一撃を避け、もう一撃放とうとしたタイミングで両足でパンダの肩を掴み、ブースターを使ってパンダを屋根に叩き込み、その拍子で屋根から転げ落ちる。
「うお!うおおおおおお!!」
大したダメージを受けていないパンダは屋根から降りて、メカ丸に掌底を放つ。メカ丸はその一撃を避けて跳躍し、パンダに向けて
「うぉ・・・とおおおおおおおお!!!」
パンダは
「うおおおおおお!!」
パンダはメカ丸を逃がすまいと追いかける。追いかけてくるのはメカ丸の予想通りだ。屋根を移動していくが、その先にはもう他の屋敷はない。だがここで十分だ。迫ってくるパンダにメカ丸は屋根に着地した際に拾った瓦を投げ放つ。
(瓦!さっき屋根から拾ったのか!)
メカ丸は自分が投げ放った瓦を蹴り壊して、パンダに目くらましを仕掛ける。直後、メカ丸はブースターを使ってジェット加速でパンダの背後に回った。
(目くらましからのジェット加速!こいつ慣れてやがる!)
(今度こそ外さン!!核は最も呪力の濃い・・・)
メカ丸は呪力を感知して、パンダの中にある核を見つけ出し、そこに左掌底を放つ。
(ココ!!!)
掌底を放った直後、メカ丸は0距離の
「おっふぅ・・・」
[よくやった方ダ。人形にしてはナ]
核を破壊できたと思ったメカ丸がパンダを押し倒そうとした直後・・・
ガシィ!!
[!!]
突然パンダが動き出し、メカ丸の左腕を掴んで身動きを取れなくした。
「その辺の呪骸と一緒にすんなよ。核の位置くらい呪力操作でブラフを張るさ。
(そもそも数誤魔化してるし)」
身動きが取れなくなったメカ丸にパンダはもう片方の手で頭に掌底を放ち、左腕をもぎ取って吹っ飛ばした。掌底をまともにくらったことにより、メカ丸は動作機能が完全に停止し、動かなくなる。
「お前の敗因は・・・人形舐めすぎ!!!」
勝負がつき、パンダはメカ丸の左腕を放り投げ、動けなくなったメカ丸に話しかける。
「俺は俺で生まれた時から何1つ周りと同じじゃなかったし、その辺りはお前と分かり合えると思うんだがなぁ。まぁ俺は人間羨ましいと思ったことないけど」
[何?]
「だって人間気持ち悪いじゃん!!」
[!]
パンダの予想外の発言にメカ丸は驚愕している。
「目標のために命がけで頑張っちゃったりさ、サバサバしてんだかウジウジしてんだかよくわかんねぇし。んま、そういう俺にはない部分が好きなんだけどな。キモイけど」
パンダの脳裏に浮かび上がるのは、今の2年メンバーと共に苦楽を共にしてきた大切な友達、乙骨憂太の姿である。パンダは元のパンダの姿に戻る。
「メカ丸もいろいろ大変なんだろ?でも大変な奴が正しいとは限んねぇよ。っていうか、別に俺はお前の敵じゃない。何で呪術師やってんだ?それしかやることなかったのか?ま、別に何でもいいけどさ。何か叶えたいことがあるのなら、俺はお前を手伝うぜ」
[・・・・・・]
パンダの言葉にメカ丸は京都校の仲間と過ごしてきた日々を思い返す。
『メカ丸、大技を無駄打ちするな。敵が目の前の1体だけとは限らないぞ』
自分に的確なアドバイスをくれる憲紀。
『メカ丸よ、女のタイプも即答できない奴が、呪術師として1人前になれると思うな』
自分に助言・・・いやよくわからないことを言ってくれる東堂。
『メカ丸、暇ができたらうちの貸本屋に来いよ。いい品を特別にタダで貸してやるよ』
1人の友人のように気軽に声をかけてくれるラバック。
『メカ丸。イライラする時は遠慮なく俺に怒りをぶつけろ。しっかり受け止めてやる』
不器用ながらにストレス発散に付き合ってくれる清孝。
『メカ丸、これ、義理ですけど・・・チョコの代わりです!エボルタ単3が好きと聞きました!』
『・・・俺はそういうんじゃなイ』
『えぇ!!?だって真衣が・・・』
『『きゃははははは!』』
騙されていたことに気付かなかった三輪と、そんな彼女を見ておかしくて笑う真衣と西宮。
高専京都校で過ごしてきたくだらなくて何気ない平和な日常。それがメカ丸にとってかけがえのない宝物になっていた。そんな彼が呪術師として叶えたいこと。それはたった1つ。
いつか健康的で怪我が一切ない元の身体で、京都校のみんなに直接会うこと。
[・・・いつカ・・・みんなと・・・一緒に・・・]
「ん?もっかい言って」
メカ丸の呟きを聞き逃したパンダに対し、彼は悪態で返した。
[俺の姿を見た後でモ、手伝うなんてセリフが吐けるかナ]
「え?はははは。ルックスに関して俺がどうこう言うと思ってんのかよ?パンダだぞ?」
メカ丸の悪態に対して、パンダは気にしておらず愉快そうに笑っている。
「じゃあな。今度見舞いくらい行かせろよ」
[・・・うるせェ、クソ人形]
パンダはメカ丸に手を振り、競技に戻ろうとしていたが、すぐに戻ってきた。
「忘れてた」
[?]
「携帯貸して」
京都姉妹交流会 団体戦
●
一方の森の中、西宮を挑発した野薔薇は現在、その彼女に悪戦苦闘している。そんな野薔薇を陰から狙っている者がいる。そう、メカ丸と共に西宮をカバーしに来た真衣だ。真衣はリボルバーの呪具を構えて、野薔薇に狙いを定めている。
「有効射程ギリギリ・・・」
ここなら当てられると判断した真衣がリボルバーの引き金を引こうとした時・・・
カチャッ
「!」
「うちのパシリに何してんのよ、真衣」
メカ丸の戦闘から離れたマインが彼女に向けてライフルの銃口を突き付けられる。
「二度も同じことを言わせないでくれる?ムカつくのよ」
「・・・あら、ずいぶんすすだらけじゃない。なかなかお似合いよ」
真衣は不敵な笑みを浮かべてマインを挑発してきた。
「あんたみたいな落ちこぼれでも懸命な判断ができるのね。あんたがパシリを撃ってたら、あたしがあんたに弾丸を撃ち込んでたもの」
真衣の挑発に対し、マインも挑発で返した。
「で?ここからどうする?仲間をここに呼ぶ?あたしは構わないわよ?どうせあたしが勝つもの」
「・・・あんたって無粋よね。楽しみ方っていろいろあるでしょ?みんなでボコボコにするより、1人で楽しみたいの。それをいつだってあんたは邪魔をする」
真衣は憎しみが籠った顔つきでマインを睨みつけ、リボルバーの銃口を彼女に突きつけた。
「いいわ、かかってきなさいよ。いい加減あんたをぶん殴りたいと思ってたところよ」
真衣の憎悪に対し、マインは挑戦的な笑みで返事を返すのであった。
●
時は遡って11年前。幼少期の真衣は双子の姉、真希と共に禪院家の使い走りで外に出ており、今はその帰り。河原の橋を渡ろうとした時、真衣はいつもとは違う光景を目の当たりにした。それは、衣服も身もボロボロで、髪もボサボサになっているピンク髪の女の子が1人、橋の下ですすり泣いている光景だ。ちょうど自分たちと同じ年頃の女の子だ。真衣はその女の子のことが気になっている。
「真衣~早くしろよぉ~。まさかまたいんのかぁ?」
先にサクサクと住んでいる真希は女の子の存在に気付いていない。別にほっといても問題ないのだがあの痛ましい姿。真衣はどうも他人事のようには思えなかった。
「お姉ちゃんは先に帰ってて」
「え?お、おい!」
真衣は急かす真希を置いて橋の下にいる女の子の下に駆け寄った。
「あなたもいじめられたの?」
「?」
真衣に声を掛けられた女の子は彼女に顔を合わせた。
「私と同じだね・・・」
「同じ・・・?」
「ねぇ、名前は?」
「・・・マイン・・・」
「マイン・・・私と似た名前だね」
女の子、マインに親近感を持った真衣は彼女に手を差し伸ばす。
「私は真衣。あなたでよければ・・・お友達になろう」
この記憶こそが、真衣とマインが初めて出会った出来事であり、真衣が初めて友達ができた日でもあった。
じゅじゅさんぽ
メカ丸[・・・・・・]
真衣「メカ丸、憲紀に歌姫先生が呼んでたって伝えといて」
西宮「メカ丸~、これ、ラバ君に渡しといて~」
三輪「メカ丸!ちょうどよかった!これ東堂先輩と清孝君に!」
メカ丸[・・・お前ラ・・・何でいつも俺に通すんダ?]
女子「ギクッ!」
思い返す男子たちの言葉
東堂『今話しかけんな。高田ちゃんが生配信中だ』
ラバック『違う!これは決して覗きではなくて警備・・・ああああああ!!!でも、これはこれで・・・!』
憲紀『いばらぎ?いばらきだぞ。そんなことも知らないのか?』
清孝『んなつまんねぇことで声かけてんじゃねぇよ!!!舐めてんのかぁ!!?あぁ!!?』
真衣、西宮(めんどくせぇからに決まってんじゃん)
東堂の強面顔、鼻息を荒くするラバックのスケベ顔、憲紀のガンギマリ、清孝のキレ顔を思い出す三輪
三輪(普通にまだ怖いんだよなぁ・・・)
女子(・・・て言ったら、もう頼まれてくんないかもなぁ・・・)
メカ丸[・・・・・・]
三輪「メカ丸!」
メカ丸[ン?]
三輪「頼りにしてますよ!」
息が合うようにグッドサインを送る女子たち。
女子「さぁ~、任務だ~」
メカ丸[いや・・・理由ヲ・・・]
1人取り残されるメカ丸
メカ丸[・・・まぁ・・・頼られてるなら・・・いいカ・・・]
完