呪術廻戦ー呪いを斬るー   作:先導

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京都姉妹校交流会ー③ー

交流会1日目、団体戦チキチキ呪霊討伐猛レース。三輪と戦闘を繰り広げている真希は自身の身体能力を活かし、華麗な身のこなしで薙刀を回し、彼女に一撃を振るう。三輪はこの一撃を刀で受け止めた。真希の一撃を防御した三輪は彼女の想像以上の強さに驚愕している。

 

(嘘でしょ・・・?この人・・・滅茶苦茶強い!!)

 

交流会が始まる前の話、三輪は真衣から真希の情報を1回聞いたことがある。

 

『真希ぃ?あんなんただの雑魚よ。呪いも見えない、呪具振り回すだけの一般人、万年4級。何で呪術師やってんのって感じ』

 

その話を聞いて三輪はちょっとした安心感を覚えていた。もしかしたら自分でも勝てるかもという期待を持っていた。だが今、こうして実際に打ち合ってみて、自分の認識は大きな間違いであると気づいた。

 

(真衣のバカ!!この人滅茶苦茶強い!!)

 

三輪は反撃に転じたいところではあるが、そんなことは許さないとばかりに真希の猛攻が繰り出し、なおかつ隙も無いためにそれができないでいる。その証拠に、真希が振るう薙刀の攻撃を三輪は刀で受けるか躱す程度しかできていない。

 

(相手は長物!間合いを詰めたいのに、躱す受けるで精いっぱい!!刀身が剥き出しなら、私は2回は死んでる!!これで4級術師?2級呪霊くらい、難なく倒せるでしょ!!)

 

薙刀の攻撃を刀で受け流した三輪に真希は一瞬の隙を見逃さず、彼女の腹部に布で巻かれた薙刀の刀身を叩き込んだ。

 

「がっ・・・!」

 

重い一撃を叩き込まれた三輪は倒れるが、すぐに起き上がり、さらに繰り出される真希の突きを刀で受け止める。しかし、一撃一撃の威力は重く、ちょっと受け止めただけでも三輪は後退り、崖際まで追い込まれる。

 

(っていうか、なんで障害物が多いこの森で、大刀を振り回せるの!!?)

 

障害物の木などお構いな真希は薙刀を回し、強烈な蹴りを三輪に打ち込んだ。崖から蹴り落とされた三輪は岩と衝突しながらも、川の中まで落ちていく。真希は追撃するかのように崖から飛び降り、薙刀を突き刺すように構えて三輪に強力な一撃を放つ。三輪はギリギリのタイミングで跳躍して躱し、ようやく真希から距離を取った。真希から距離を取った三輪は刀を納め、居合の構えを取る。

 

「シン・陰流―――簡易領域!」

 

シン・陰流『簡易領域』。半径2.21メートルの領域内に侵入した者をフルオート反射で迎撃する技。両足から展開時のポイントから離れると解除される。さらに、正面の敵に特化した抜刀は刀身を呪力で覆い、鞘の中で加速させるシン・陰流最速の技。ちなみに、赤女(あかめ)が使う見様見真似の独自の技、シン・陰流我流奥義はこのシン・陰流の技が基となっている。

 

(これで決めるなんて考えるな!まずはこれで、全力で隙を作る!)

 

全力で隙を作りたい三輪に対し、真希は彼女の技を見て、考察する。

 

(居合か。しかも何かタネがあるな。このリーチ差だ。私ってよりは呪具を払って隙を作りたいんだろう。と、くれば・・・)

 

三輪が考えていることを見抜いたは真希は彼女の意表を突くかのように、膝で自身の武器である薙刀を叩き折った。

 

(折った!!?リーチのアドバンテージをここで捨てるの!!?)

 

三輪が驚愕している間に真希は自分が叩き折った薙刀の柄を彼女に向けて槍のように投擲した。

 

(投げた!!)

 

三輪は放たれた薙刀の柄を刀を抜刀して払い除けた。だがその直後、柄に続くようにクナイが迫ってきた。そしてクナイの背後には真希が並行するように走って迫ってくる。

 

(暗器!!勘がいい!!デコイで潰しに来た!!)

 

策を真希に読まれた三輪は迫ってくるクナイを刀で払いのける。そしてその直後、真希が三輪の懐に入り、彼女に薙刀の切っ先を振り下ろす。三輪は慌ててその切っ先を刀で受け止めた。

 

(両足離れた!!でも大丈夫!一度離れて、ギリギリまで引き付けてから・・・)

 

三輪が距離を取ろうとする前に真希は彼女の刀の柄を掴み上げ、そのまま合気投げで三輪を川に叩き込む。投げられた三輪は転がって真希から距離を取り、態勢を立て直す。

 

(合気⁉器用な人!)

 

三輪は刀を持って構え直そうとしたが、その肝心の刀が手元にないことに気付いた。

 

「・・・あれっ⁉」

 

なくなった刀がどこにいったのか・・・その答えは、真希が持っている。

 

「いい刀持ってんじゃん」

 

「太刀取り・・・」

 

そう、三輪を合気投げを放つ際に真希は彼女から刀を奪い取ったのだ。シン・陰流は刀がなければその効果を発揮することができない呪術。ゆえに刀を取られてしまった今、三輪はもはや戦力外にも等しい。

 

「返して・・・」

 

もうほぼ勝負がついたともいえる状況下の中、この戦闘をじっと見ている生物がいる。それは木の枝に留まっているカラスである。もちろん、このカラスの存在はこの交流会において重要な存在だ。

 

●

 

高専の作戦室。高専の教師たちは交流会の状況をモニターで見ているのだが、どうやってその映像を映しているのか。その答えは高専内の至る所にいるカラスの目だ。カラスたちの視界は今、今や監視カメラと同然で、それを操っている術師が今、教師たちと共にいるのだ。

 

高専のカラスを操っているのは、長い前髪を三つ編みにした銀髪の女性である。彼女の名は冥冥。お金目当てで術師をやっており、今回もお金で雇われてカラスを使ってモニターに映像を映しているのだ。

 

「ふふふ・・・面白い子じゃないか・・・。さっさと2級にでも上げてやればいいのに」

 

冥冥はモニターに映っている真希の強さを高く評価している様子である。等級以上の実力を持っているにも関わらず4級のままなのは、理不尽な理由がある。

 

「私もそう思ってるんですけどね、どうも赤女(あかめ)のお家の人が邪魔してるみたいなんですよねー」

 

「ホント、やんなっちゃうよねー。赤女(あかめ)の権限で黙らせられない?」

 

「無理だ。ただでさえ禪院家の連中には目の敵にされてるんだ。当主候補になったことでそれがさらに増えた。そんな奴らが聞く耳など持つものか」

 

「めんどくさ。さっさと手のひらを返してお互い認めてやりゃいいのにさ」

 

「ふふっ、金以外のしがらみは理解できないな」

 

「相変わらずの守銭奴だな、冥さんは」

 

真希の実家、禪院家の人間が彼女の実力を認めようとはせず、何かしらの圧力をかけて真希の昇給を阻んでいるらしいのだ。同じ禪院家の人間である赤女(あかめ)はこの事態に嘆いている様子だ。

 

「それより冥さん、さっきから気になっているのだが、悠仁の周りの映像がよく切れるんだが」

 

赤女(あかめ)の指摘したとおり、モニターには悠仁の姿がほとんど映っていなかった。映ったと思ったらすぐに視点が切り替わってしまい、悠仁がどうなっているかがわからない状況下にある。

 

「動物は気まぐれだからね。視覚を共有するのは疲れるし」

 

冥冥はあくまで白を切っている様子であるが、このモニターは冥冥の術式によって映し出されているものだ。例え動物の気まぐれであったとしても、意図して視点を切らしているのは明白だ。

 

「えぇ~、本当かなぁ。ぶっちゃけ冥さんってどっち側?」

 

白を切っていることに気付いている悟はぶっちゃけて冥冥はどちらの味方なのかを尋ねる。悟の呪術界の革命側か、上層部の保守派側か。

 

「どっち?私は金の味方だよ。金に換えられないものに価値はないからね。何せ、金に換えられないんだから」

 

とどのつまり、冥冥はお金さえ積めば誰の味方にでもなるどっちつかずの立場ということである。

 

「こうして冥さんを動かせたとなると、相当な大金を積まれているな、これは」

 

「へへ、いくら積んだんだか」

 

「・・・・・・」

 

悠仁のモニターだけを狙って切らしているとなると、今の冥冥の雇い主は悠仁を殺したがっている楽厳寺であるのは間違いないだろう。

 

(何を企んでいるか知らないけど、もうどうこうされる悠仁じゃないんだよ)

 

どんな悪巧みが来ようとも、楽厳寺の思い通りにはならないと確信している悟は静かに交流会の中継に視線を戻す。すると、この交流会に少し動きを見せた。

 

ボウッ!

 

「お、動いたね」

 

作戦室の壁に貼られている複数の札のうちの1つが赤い炎によって燃え尽き、壁に炎の後が残った。この炎の色が、この交流会でのポイントとなっている。

 

エリア内に放たれた呪霊には呪符が貼られており、呪霊消失と同時に対となっている観覧席の呪符も消滅する。事前に記録した呪力によって消滅反応が異なる。東京校が祓った場合には赤色、京都校が祓った場合には青色になる。二級呪霊を祓えなかった場合、記録された呪力の消滅反応の数によって勝負が決まる。ちなみに、東京校側には呪力がない真希と巽(たつみ)がいるので、記録外の消滅反応も赤色になる。

 

「みんなこの競技の趣旨がちょっとズレてないか?」

 

「1対1かぁ・・・みんなゲームに興味なさすぎじゃない?」

 

「何で仲良くできないのかしら・・・」

 

「歌姫に似たんだよ、きっと」

 

「私は五条だけよ!!」

 

競技の趣旨が明らかにズレた行動をしている両陣営に対し、歌姫は少し嘆いている様子である。

 

ちなみに先ほどの消滅反応・・・対となっている呪霊を祓ったのはパンダである。

 

●

 

一方の森の中。西宮と戦闘を繰り広げている野薔薇は森を出ない程度に飛んで移動している彼女を追いかけている。

 

「降りて来いよ、クソ魔女!」

 

「さっきから何度も降りてるじゃん。さっさと捕まえてみろよ、1年!」

 

西宮は飛行状態で箒の呪具を操り、野薔薇に向けて強い突風を放った。呪力が纏った強い風になびく野薔薇は突風で吹っ飛ばされそうになるが、気力で踏ん張る。

 

(私が浮くほどの呪力の風!砂利とか枝が混ざるとクソ痛い!気ぃ抜くと肉抉られるわね・・・!)

 

突風が収まると、野薔薇は背後から強い強い呪力を感じ取り、顔を振り向く。その直後、西宮が乗っていた箒の呪具が突進してきて、柄が野薔薇の頬に直撃する。突進して野薔薇から離れた箒に再び西宮が乗り込む。自分の顔に打撃跡を残した西宮に野薔薇はさらに怒りを抱く。

 

「・・・よくも私のご尊顔を・・・!」

 

「顔の傷も男なら勲章、女なら欠点だもんねぇ」

 

「あぁ?」

 

「呪術師が実力主義だと思ってない?」

 

「実際そうだろ」

 

「それは男だけ」

 

「あ?」

 

西宮の言っていることが理解できず、野薔薇は怪訝な顔つきをしている。西宮は構わず話を続ける。

 

「女はね、実力があってもかわいくなければ舐められる。当然、かわいくっても実力がなければ舐められる。わかる?女の呪術師が求められるのは実力じゃない。完璧なの。そして真衣ちゃんはそれ以上の理不尽と戦っているの」

 

「てめぇがめんどくせぇのは・・・わかったよ!!」

 

野薔薇はポーチから数本の釘を呪力を纏わせて飛ばし、トンカチで打ち放つ。放たれた釘を西宮は箒の呪具を操って難なく躱し、野薔薇にさらに強い突風を放った。放たれた突風に野薔薇はこれも踏ん張って耐える。

 

(この子、1年の割に戦い慣れてる?何回吹っ飛ばしてもピンピンしてる・・・)

 

西宮は野薔薇の持つタフネスに多少なりとも驚いた様子を見せている。

 

「こちとら、ぶん投げ慣れてんだよ」

 

野薔薇がこのタフネスを身に着けられたのは、パンダとの特訓の成果がちゃんと出ている証である。

 

(これ以上質力をあげれば殺しかねない・・・いや・・・それは言い訳だ・・・攻めきれない理由は・・・狗巻君・・・!)

 

交流会は基本的に相手を殺すことを禁じられている。ゆえにある程度は力を制御しなくていけない。だが西宮が実力を出し切れない理由が2つ存在する。その1つが棘。西宮は交流会が始まる前の憲紀の話を思い出す。

 

『呪言は言霊・・・音に呪力を乗せるわけだから、こちらも耳から脳にかけてを呪力で守ればいい。呪言は対呪霊に特化した術式なんだ。清孝も言っていたが、術師にとっては来るとわかっていればそこまで怖いものじゃない』

 

(逆に言えば、来るか来ないかわからないと延々と気を散らされる・・・。ただでさえ頭の内側を守るなんて慣れてないのに・・・。いてもいなくても厄介・・・!)

 

どこで棘がこちらの様子を伺っているかわからない以上、下手に行動を取ったら棘の呪言によって叩き落とされる可能性が十分にある。これが1つの理由。

 

(さらにもう1つ厄介な・・・1番の理由・・・。マインちゃん・・・!マインちゃんは完全に中距離、遠距離タイプの呪術師。最初の狙撃はマインちゃんの術式によるものであるのは明らか。それに加えてあの威力・・・!あんなのをもう1度くらったらやられる!どこで私を狙っているのかわからない。パンダ君もいるし、メカ丸の足止めもいつまで持つか・・・。彼女は存在そのものが厄介!!)

 

攻めきれない最大の理由が狙撃手のマイン。1分1秒の狂いもない正確な狙撃と強大な威力の砲撃。あれをまともにくらえば西宮はリタイアしてしまうだろう。それを充分に理解できている彼女もメカ丸の足止めを踏まえても、気の緩みが命取りだと考えているのだ。

 

「説教は終わりかよ!!」

 

野薔薇はさらに釘を取り出し、トンカチで打ち放ち続ける。西宮は迫ってくる釘を1つずつ避けていく。

 

「真衣ちゃんが求められてるのは、完璧なんて生易しいもんじゃない」

 

西宮は野薔薇に呪術界の御三家の1つ、禪院家の内情を、そこで受けた真衣の苦しみを打ち明ける。

 

「エリート呪術師の家系、御三家の1つ禪院家。そこでは完璧なんて当たり前。『禪院家相伝の術式を引き継いでいること』。それ以外は落伍者として術師人生をスタートする。その中でも、女はスタートラインにすら立たせてもらえないこともあるの。『禪院家に非ずんば呪術師にあらず、呪術師に非ずんば人にあらず』。そんなかわいげのない家に一生仕えて蔑まれて生きる・・・。私たちが当然のように享受している環境を手にするのに・・・真衣ちゃんたち(・・)がどれだけ苦労しているか・・・虎杖君(呪い)を仲間だと勘違いできる頭でよく考えたら?」

 

抗弁を垂れる西宮に野薔薇はトンカチで釘をさらに打ち放つ。西宮は向かってきた釘を箒の呪具を操作して躱す。

 

「うるせぇよ。不幸なら何されても許されんかよ?じゃあ何か?逆に恵まれた人間が後ろ指さされりゃ満足か?」

 

野薔薇の脳裏に浮かび上がるのは、小学校の頃自分に優しく振るまい、友達として見てくれた存在、沙織の姿だ。

 

(そうやって・・・沙織ちゃんは・・・)

 

野薔薇は都会から来たという理由で沙織を迫害した地元の村の連中が嫌いだ。だからこそ、彼女は西宮の言い分が非常に気に入らなくてしょうがないのだ。

 

「どんな生い立ちだろうと、私はあいつが気に食わねぇ。同じ生い立ちでも、私は真希さんが大好きだ。それ以上の生い立ちを受けたっていう赤女(あかめ)先生も大好きだ。てめぇらこそ、これから呪おうとしてるバカがどんな人間か、考えたことあんのかよ!!完璧も理不尽も応える義理がどこにある?てめぇの人生は仕事かよ!!」

 

野薔薇は身勝手な連中に怒りを燃やし、事前に用意した術式を解き放つ。

 

「芻霊(すうれい)呪法―――『簪』!!」

 

ドドドドドドオオオオオオン!!!!

 

野薔薇が術式を発動すると、彼女が放ち、木に打ち込まれた釘の呪力が爆発する。

 

(当たらない釘を飛ばし続けたのはこのため⁉)

 

迫ってくる呪力の爆発を西宮は箒の呪具をうまく操作して躱していく。爆発した呪力が1本の木が折れ、西宮に迫ってくる。

 

「ちぃ・・・!」

 

西宮は箒の呪具のスピードを落とし、ギリギリで倒れる木との衝突を免れる。野薔薇は西宮の進行先に向けて釘を打ち放つ。西宮はその釘を何とか避けるが、野薔薇は先ほど打ち込んだ釘に飛び乗り、さらに跳躍して西宮を落とそうと手を伸ばし、箒の藁を掴みとる。

 

「高度落としたって、それじゃ届かないでしょ!」

 

西宮は箒の呪具の藁に掴んでいる野薔薇を蹴り上げて下に落とす。

 

「いいや、届いたわよ!!」

 

野薔薇は制服から藁人形を取り出し、藁人形に何かを突き刺した。それは、西宮の箒の呪具の藁の枝1本だ。

 

「これで十分!!」

 

(私の箒の枝⁉さっき掠めたのね!)

 

芻霊(すうれい)呪法共鳴りは対象の部品の一部を藁人形に添えて、そこに釘を打ち込むことで発動する呪術。その対象は、何も人間や呪霊が対象というわけではない。部品の一部さえあれば、呪具だって発動対象になる。

 

「男がどうとか女がどうとか、知ったこっちゃねぇんだよ!!てめぇらだけで勝手にやってろ!!私は綺麗にオシャレしてる私が大好きだ!!強くあろうとする私が大好きだ!!私は・・・釘崎野薔薇なんだよ!!!」

 

カァァァン!!

 

野薔薇が藁人形に釘を打ち込んだことで、共鳴りが発動した。すると、西宮が乗っている箒の呪具は制御が効かなくなり、西宮と共に地面に向かって落ちていく。

 

(!箒が操作できない・・・!)

 

箒を操ることができなくなった西宮は成す術なく地面に不時着する。そんな彼女に野薔薇は攻撃を仕掛けようと動き出す。

 

(私がトンカチで殴れば下手すりゃ殺しちゃう!だから!!)

 

野薔薇は西宮が死なないように攻撃するために、あるものを取り出した。それは、殺傷能力がないピコピコハンマーだ。

 

(はっ⁉ピコピコ⁉)

 

ピコピコハンマーと侮るなかれ。どんな殺傷能力がないものでも、強い力を込めてさえいれば、重い一撃になる。

 

「はああああああああ!!!」

 

ピコーーンッ!!!!

 

「くっ・・・!」

 

野薔薇はピコピコハンマーで西宮の顔を叩き、さらに連続ピコピコを放つ。ピコピコハンマーに野薔薇の一撃が加わっているため、西宮はダメージを負う。

 

(もう1発!!)

 

野薔薇は彼女にとどめを刺そうと、ピコピコハンマーを振り下ろそうとした時・・・

 

ヒュンヒュンヒュン・・・ビシィ!!

 

「あ!!?」

 

野薔薇の背後から突然糸が伸びてきて、ピコピコハンマーを持っていた手が拘束される。さらに糸は野薔薇のもう片方の手も拘束し、両腕を振り下ろせないようにガッチリと固定する。

 

「なんだよこれ・・・うぁ!!?」

 

驚いている間にも、野薔薇は糸を通して誰かに引っ張られるかのように西宮から距離を取られる。

 

ピシッ!

 

「はい、そこまで」

 

「あ・・・」

 

糸を伸ばした張本人、ラバックは野薔薇を自分の元まで引っ張ってきて彼女の首筋に手刀を叩き込んだ。手刀を叩き込まれたことで、野薔薇は気を失った。倒れそうになる野薔薇をラバックは優しく支える。

 

「おっと・・・大丈夫だった?桃ちゃん」

 

「ラバ君・・・うん、ありがと・・・」

 

「それよりさっきの光、メカ丸の三重大祓砲(アルティメットキャノン)だよね?でもあいつから連絡が取れないんだよ。あの大技を出してこれなら多分負け濃厚。しかも張ってあった糸の消失反応からして、真衣ちゃんはマインちゃんに見つかって交戦してる」

 

「真衣ちゃんが!!?」

 

真衣がマインに見つかり、戦っていると聞いて西宮は驚く。

 

「おっと加勢するとか言わないでよ?今西宮ちゃんに倒れられたら俺たちが不利になる。それに、事情は知らないけどあの2人の溝はあの2人にしか埋められない。そんな気がするんだよね」

 

「・・・うん・・・」

 

本当は真衣に加勢したいところではあるが、彼女がマインに執着していることはわかっている。真衣のことを思うなら、手を出してはいけない。西宮は直観的にそう思った。

 

「俺は呪霊刈りを続行するから、桃ちゃんはパンダが戻ってくる前にここを離れて、みんなをサポートしてあげて」

 

「・・・ラバ君・・・あのね・・・私、真衣ちゃんに・・・」

 

「いいよ、わかってるから。真衣ちゃんだって、きっとわかってる」

 

「うん・・・」

 

この後の方針を決め、ラバックは近くの木のそばに野薔薇をそっと寝かせ、この場を去り、西宮は箒の呪具に跨り、宙に浮いてその場を去るのであった。

 

●

 

パァンパァン!!

 

森の別の場所では、木の枝の上でマインと真希の銃撃戦が勃発している。真衣が撃った1発の弾丸をマインは跳躍して後退し、空中でライフルガンを真衣に向けて3発の弾丸を撃ち放つ。真衣は向かってきた弾丸を別の木に飛び移りながら躱し、その最中で真衣はマインにリボルバーの弾丸を1発撃ち放つ。後ろの木の枝に移ったマインは向かってきた弾丸に弾丸を撃ち込んで相殺させた。直後、マインは真衣を追いかけるように木に飛び移りながら弾丸を何発も撃つ。

 

「ちぃ・・・!」

 

何発も迫ってきた弾丸を真衣は進路を変え、別の木の枝に飛び移って躱し、身を潜める。真衣は身を潜めながら顔を出し、マインに向けてまた1発の弾丸を撃ち放つ。マインはその弾丸を屈んで避ける。

 

「何そんなに必死になってんのよ。そんなに私なんかに勝ちたいわけ?」

 

真衣はマインに挑発を言い放ちながら、マインの足元に向かって弾丸を1発撃ち放つ。

 

「当たり前でしょ!!」

 

マインは真衣の挑発に対して、堂々とハッキリと言い放ちながら高く跳躍する。

 

「負けられないのよ・・・。あたしのためだけじゃない・・・真希のためにも!!」

 

真衣だけではなく、この交流会で自分たちが勝ちたい理由が、マインにはある。

 

●

 

時は遡って交流会開始数分前のこと。真希は恵と棘と共に作戦を立てている。そんな彼女に隠れて、マインは悠仁と巽(たつみ)に質問をする。

 

「あんたら、真希のことどう思ってんの?」

 

((どう答えても角立ちそう・・・!))

 

マインの質問に対し、悠仁と巽(たつみ)はどう答えても荒れそうであると考え、戦慄している。

 

「「と、とても素敵な女性かと・・・」」

 

「は?術師としての話よ」

 

「あ、そっち?」

 

「よ、よかったぁ~・・・」

 

女性としてではなく、術師としての話だとわかり、悠仁と巽(たつみ)は安堵する。

 

「正直、呪術云々はまだよくわかんねぇけど・・・喧嘩は超強い!重心って言うか・・・歩き方でもうヤバい」

 

「俺も真希先輩のことはよくわかんねぇけどさ・・・一目見た時から、この人強いなって思ったよ。もう雰囲気だけでもやべぇ」

 

悠仁と巽(たつみ)の評価は何も間違ってない。実際に真希は強い。2人の答えにマインは話しても問題ないと判断し、真希の等級を明かす。

 

「真希ね、あれで4級なのよ」

 

「えっ?マジっすか?」

 

「真希の実家は面倒な術師の家系でね、セルフ勘当みたいに出てった真希の昇級を邪魔してんのよ」

 

真希の昇級を邪魔をしている禪院家に対し、巽(たつみ)は疑問符を浮かべている。

 

「でもおかしくねぇか?術師の家系なら強い奴は大歓迎のはずだろ?」

 

「一度否定したものを認められないのよ。バカだから」

 

「でも、交流会で活躍して真希の名前がある程度広まれば、そういう嫌がらせも難しくなるよな」

 

巽(たつみ)の疑問に野薔薇が答え、交流会は真希にとって意味のあるものであるということをパンダが答える。

 

「そのために、まずは団体戦で勝つわよ」

 

「そういうわけよ。あんたら、真希さんのためにももういっぺん死ぬ気でやりなさい!」

 

「「はい・・・」」

 

「聞こえてんぞー」

 

「「「「いっ⁉」」」」

 

コソコソと話していたことが真希には筒抜けだったようで、マイン以外はビクついている。

 

「たくっ・・・余計なこと考えてんじゃねぇーよ」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すわ。1人でしょい込もうとするんじゃないわよ。ちょっとはあたしたちを頼りなさい」

 

「・・・けっ、烏合かよ」

 

真希は自分に気遣ってくれる仲間たちに悪態をつきつつも、笑みを浮かべるのであった。そんな真希にマインも笑みを浮かべるのだった。

 

●

 

交流会開始前の出来事を思い返し、マインは負けられない気持ちがより一層に強くなる。高く宙に浮くマインはライフルガンを構え、真衣が立っている足場に弾丸を撃ち放つ。真衣はマインに狙いを定めつつ枝が崩れ落ちる前に別の木の枝に飛び移ろうとする。

 

(足場を潰したからってなんだっつーのよ。銃使いが堂々と前線に出てバカじゃないの?)

 

真衣は別の木に飛び移る際にマインに弾丸をまた1発撃ち放つ。マインは向かってきた弾丸をまた弾丸で相殺し、別の木の枝に着地してライフルガンを横一閃に振るって弾丸を何発も撃ち放つ。マインが撃った弾丸は周りの木の枝をへし折って足場をなくし、さらに真衣が着地した木の枝もへし折る。

 

(ちぃ!これが狙いかよ!)

 

木の枝をへし折られたことによって真衣は態勢を崩して下に落下する。不時着する前に真衣はマインにまた1発弾丸を撃ち放つ。マインは木を蹴って跳躍して弾丸を躱し、真衣に向かって一直線に進んで彼女に拳を振るって打撃を与えた。

 

「ぐぅ!」

 

拳をもろにくらった真衣は地面に叩きつけられる。真衣が起き上がろうとした時、同時に着地したマインは彼女にアッパーを放ち、回し蹴りで蹴とばす。

 

「ああ!!」

 

蹴とばされた真衣は倒れ伏すも、何とか立ち上がろうとする。

 

(わかってた・・・マインには私なんかよりも才能があるってことくらい・・・)

 

実力が上なのだとしても、真衣にはマインに負けたくない理由がある。

 

●

 

11年前、禪院家の屋敷。真衣は遠くで自分たちのことについて話している大人たちの会話に聞き耳を立てている。

 

「聞いたか?『扇』の娘の話。片方は術式どころか、呪いも見えんらしい」

 

「やはり双子は凶兆か・・・」

 

「かえってよかったかもな。ただでさえ赤女(よそもの)のせいで立つ瀬がないのに、嫡男の給仕など目も当てられん」

 

このように、落ちこぼれの烙印を押され、常に大人から疎まれ続け、子供なのに給仕の手伝いをさせられたりと、いつも肩身の狭い人生を真希と真衣は送っていた。

 

●

 

そんな苦しい生活を送っている真衣には、唯一の安寧があった。

 

「真衣ー、最近コソコソと何してんだー?」

 

ただそれは真希は知らないし、これからも知らせるつもりは真衣には一切なかった。

 

「別に・・・何でもないよ・・・」

 

「何でもなくないだろ?最近一緒にいる機会も減って来たし。もしかして犬でも飼ったかー?」

 

「何でもないったら!」

 

「あ、おい!」

 

問い詰められた真希に真衣は逃げるように帰り道とは逆方向に向かった。

 

真希を振り払い、向かったのは彼女と初めて出会った河川敷。そこの橋の下に、彼女はいた。

 

「マイン、お待たせ」

 

「あ、真衣・・・今日も来てくれたんだ」

 

ボロボロな服を着た少女、マインは真衣が来たことで嬉しそうな笑顔を見せた。

 

「今日はパンを買ってきたんだ。一緒に食べよう」

 

「え・・・いいの?それ、真衣が買ったんでしょ?」

 

「いいの。マインと食べたかったから」

 

「真衣・・・ありがとう・・・」

 

自分と同じように疎まれ、幾度ものいじめにあい、ひどい仕打ちを受けてきたマイン。真衣はそんな彼女の心境をいたたまれなく思い、彼女と友達になった。2人は辛い日々をこうして支え合って生きてきた。真衣にとってマインと一緒に過ごす時間が、何よりの癒しになっていった。どんな痛い思いも、辛い思いも、苦しい思いも、こうしてバカみたいに笑い、楽しく話す時間が、嫌なことを全て忘れさせてくれる。こんな楽しい時間が、永遠に続けばいいのにと思っていた。

 

「あ・・・そろそろ帰らなきゃ・・・」

 

「・・・帰っちゃうの?」

 

「うん・・・帰らないとまた怒られるから・・・」

 

「真衣・・・また来てくれる?」

 

「うん。また来るから・・・また、待っててくれる?」

 

「・・・うん・・・あたし、待ってるから」

 

「約束だよ」

 

真衣とマインはお互いにまたここで会おうという約束を交わし、別れるのであった。

 

だが・・・この約束が果たされることはなかった。

 

翌日、同じように真衣が河川敷に辿り着くと、そこにはマインの姿はなかった。遅れてくるのかもしれないと思い、真衣は待ち続けた。雨が降ろうとも、時間が経とうとも、真衣は待ち続ける。だが、いつまでたってもマインが来ることはなかった。

 

「真衣ー!ここにいたのかよ!雨が降って来たし、早く帰るぞ!」

 

真衣を心配して探しに来た真希。真希は呆然と立っている真衣と共に、禪院家の屋敷へと戻る。

 

・・・嘘つき。

 

この日、真衣は約束を破ったマインに対し、憎しみを抱くようになった。

 

●

 

それから10年の時が経ち、真衣は京都府立の高専に所属する呪術師となった。呪術師になんて本当はなりたくなかったが、真希のせいで頑張らなくてはいけない。そう考える真衣は京都の街を歩いている時、偶然大嫌いな姉、真希の姿を見かけた。真希は東京校の呪術師となっているため、互いに離れ離れ。おそらくは任務の帰りなのだろう。わざわざ話すこともないため、この場を立ち去ろうとした時、真希の隣にいた人物を見て、目を見開いた。

 

ボサボサだった髪は綺麗に整えられたツインテール、土だらけの顔も艶やかな顔つき、ボロボロだった姿ももはや見る影もない。しかしその顔は見間違えるはずがない。かつての友であったマイン。彼女までもが呪術師をやっていたとは思わず、真衣は驚きを隠せなかった。

 

「パンダの土産、笹でいいわよね?」

 

※パンダは笹が嫌いです。

 

「それでいいだろ。パンダだし」

 

「土産選びも楽でいいわー」

 

同級生のパンダのお土産を選んでいるマインと真希の仲睦まじい姿を見て、真衣はマインに抱いた憎しみが膨れ上がり、拳を強く握りしめる。

 

なんでマインが呪術師に?

 

なんでよりにもよって真希と?

 

待ってるって言ったくせに。

 

嘘つき。

 

嘘つき嘘つき嘘つき!

 

あんたなんて・・・

 

大っ嫌い!!!!

 

●

 

大嫌いな相手に負けたくなんかない。そんな考えが頭を巡らせる真衣はリボルバーの弾丸をリロードし、接近戦に持ち込もうとするマインに狙いを定め、弾丸を1発ずつ撃ち放つ。マインは真衣が撃った弾を走って1発、2発、3発と全て避け、最後の6発目はライフルガンで弾丸を撃ち放ち、相殺させる。

 

(6発撃ったわね!もうリロードなんてさせない!)

 

6発目の弾丸を相殺させたマインは真衣のリボルバーに狙いを定めてライフルガンを構える。

 

(あんたなんて・・・大っ嫌い!!だから・・・初恋も・・・術式も・・・あんたに・・・教えたことはない!!)

 

マインがライフルガンを構えたところを狙い、鼻血を垂らした真衣は『7発目』の弾丸を撃ち放った。7発目の弾丸にマインは目を見開かせた。

 

構築術式。己の呪力を元に物質を0から構築する術式。領域展開における結界内での生得領域の具現化とは異なり、構築術式で一度生成された物質は術式終了後も消えることはない。それゆえに、呪力消費が激しく、体への負荷が大きい。真衣には1日1発の弾丸を作るのが限界だ。そのため、わかりやすく、弾数でブラフを張るためのリボルバーは、真衣の術式には最適なのだ。

 

その1発さえ決めればいい。それでマインに勝てるなら・・・後はなんだっていい。真衣はそう考えている。

 

(私の・・・勝ちよ)

 

真衣は自身の勝利を確信し、一筋の涙を流しつつも、笑みを浮かべた。

 

バチィ!!

 

真衣が撃った7発目の弾丸によって、マインは後退ったが、倒れることはなかった。7発目の弾丸は着弾時になるはずのない音を鳴らして、弾かれたかのように地面に落ちた。全ての一部始終を見ていた真衣は、驚きで唖然としている。

 

(嘘・・・弾かれた・・・?)

 

浪漫呪法は無限を収束し、発散させる術式。マインはこの術式を『弾が装填されていないライフルガン』を媒介に使用をしているが、本来この術式は媒介なしで使用ができる。だがこの術式は自身を銃として見立て、弾丸を撃ち込むことを想定して使うことがセオリー。それゆえに、高度な呪力操作が求められており、一度射程がブレると弾丸の射程距離が短くなり、威力も4分の1まで落ち、弾丸を1発弾くことが限界だ。こういった術式であるために、マインはライフルガンを含めた銃型の呪具を媒介にして、術式の安定性を100%のものにしていたのだ。

 

そして今、マインは目の前に迫ってきた7発目の弾丸を咄嗟に媒介なしの無限の弾丸を自分の眼先に放った。それによって、無限の弾丸は7発目の弾丸の衝突と同時に軽く爆散。この衝撃によってマインは後退り、7発目の弾丸は弾かれ、危機を脱出したのだ。

 

「ぷはっ・・・やっぱり媒介なしで使うもんじゃないわね・・・めっちゃ疲れるし」

 

マインはさっきの衝撃でちょっとしたダメージを負ったが、ケロッとしており、軽く息を吐いた。

 

「・・・っ!」

 

渾身の1発を防がれた真衣は顔を強張らせ、やけくそ気味でマインに近接戦を持ち込んだ。だがそんな付け焼き刃のような接近戦では、戦い慣れているマインに通用するはずもなく、逆に真衣はマインの肘打ちを顔に叩き込まれ、ライフルガンでリボルバーを弾かれ、最後に蹴とばされて木に叩きつけられる。

 

(わかってた・・・どんなに頑張っても・・・どんなに手を伸ばそうとも・・・私じゃマインには勝てない・・・。常に上を目指し続けるあいつに・・・追い抜けるはずがないって・・・。それでも私は・・・マインに・・・私を裏切ったあいつにだけは・・・負けたくなかった。負けたく・・・ないのに・・・!!)

 

木に叩きつけられた真衣にマインはライフルガンを向け、勝利宣言をする。

 

「あたしの勝ちよ、真衣」

 

完璧な敗北を突きつけられた真衣は彼女に問いかける。

 

「・・・何で・・・待っててくれなかったの・・・?」

 

「はあ?いったい何の話をしてんのよ?」

 

「ずーーっと待ってたのに!!!あの河川敷でずっと!!!雨の中でもあんたが来るのを待ち続けたのに!!!」

 

「!」

 

「待ってるって言ったくせに!!逆に私が待たされて・・・結局あんたは来なかった!!いざまた顔を見せたと思ったら呪術師になってた?なんでそんな大事なことを勝手に決めるのよ!!!なんで不安がないみたいに未来に向かってずかずかと前に進めるのよ!!!・・・どうして私と一緒に・・・落ちぶれてくれなかったの・・・?」

 

子供の頃からの不満や怒りを爆発させるかのように、真衣は涙が溜めながらマインに問い詰める。マインは真衣の主張に対し、ライフルガンを下ろし、真衣と真っ直ぐ向き合う。

 

「・・・何も相談しなかったことは謝るわ。でも、言ったらあんた、絶対に止めようとするでしょ。あたしは、落ちこぼれのままで終わるなんて絶対に嫌。もっと上に・・・上に上って、勝ち組にのし上がりたいのよ。もう誰も、あたしと同じ思いをする奴を生まないためにも」

 

「・・・っ」

 

マインの主張に対し、真衣は唇を噛みしめている。

 

「あんたも呪術師続けなさいよ。やめたりなんかしたらあたしは・・・あんたを本当に軽蔑するから」

 

マインはライフルガンを担ぎ、真衣に背を向けて森を去っていく。マインの主張に何も言い返せなかった真衣は蹲る。

 

「なんだよ、もう終わったのかよ」

 

そこへ、三輪の刀を持った真希がいつの間にか真衣の隣に立っていた。

 

「マインの奴、ちょっとは楽しみを残しとけっての。・・・大丈夫か?」

 

真希はマインに軽めの悪態をつきつつ、真衣を気遣うように声をかける。体を蹲って座る真衣は真希に問いかける。

 

「・・・何で・・・家を出たの・・・?」

 

「あ?言わなくてもわかんだろ。お前だって高専に来たじゃねぇか」

 

「私は!!呪術師なんてなりたくなかった!!」

 

「!」

 

「私とマインがこうなったのも、全部あんたのせいよ!!!あんたが頑張るから私も頑張ざるを得なかった!!努力も痛いのも怖いのももううんざり!!!落ちこぼれることの何が悪いの!!?禪院家(うち)でこき使われて何が悪いの!!?適当に雑用こなして、適当に生きていく!!それで十分じゃない!!なんで・・・マインもあんたも・・・落ちこぼれれになるのが嫌なのよ・・・!!」

 

まるで八つ当たりするかのような真衣の怒号に真衣は憂いたような表情で口を開く。

 

「・・・あのままじゃ・・・私は私を嫌いになってた・・・それだけだよ。マインもそう思ったから・・・お前から離れたんじゃないかな」

 

「・・・っ・・・!」

 

「・・・ごめんな・・・」

 

真希は真衣に一言謝罪を入れて、この森から離れるように歩き出した。

 

●

 

私は・・・真希が大嫌い・・・

 

『真衣。どうしたんだよ。早くしろよー』

 

『・・・いやだぁ・・・』

 

『なんだよー。遅れたらまた怒られるぞ』

 

『いるもん・・・』

 

『またぁ?ん~・・・仕方ねーなー。ほら、目瞑ってろ』

 

『え?』

 

『見えなきゃいねぇのと同じだよ』

 

昔から不安なんてないみたいに・・・未来へずかずか突き進むあんたが大嫌いだった・・・

 

『お姉ちゃん・・・手放さないでよ・・・』

 

『放さねーよ』

 

『絶対だよ』

 

『しつけーなー』

 

『絶対・・・おいてかないでよ』

 

『当たり前だ。姉妹だぞ』

 

それなのに・・・

 

『家を出るか。真希』

 

『雑用係は足りてんだろ。心配しなくても、そのうち戻って来るさ、ご当主様』

 

『なぜ戻る?』

 

『私が、禪院家当主になる!』

 

『ぶわっはっはっはっは!!ならばこちらも赤女(あかめ)と同様、相応の試練を与えようぞ!』

 

『勝手にしろよ』

 

『真衣にもな』

 

『あいつは関係ねぇだろ』

 

・・・嘘つき。

 

マインだって同じよ・・・。

 

『知ってる?ここから見える星は結構きれいなんだよ』

 

『夜に屋敷出たことないからわかんない・・・』

 

『えー、もったいないなぁ・・・』

 

『羨ましい・・・』

 

『んー・・・じゃあ!いつかあたしが大きくなったら、連れだしてあげる!』

 

『本当?』

 

『うん!そしたらここできれいな星空、一緒に見ようね!』

 

『・・・うん!約束だよ!』

 

『うん!約束!』

 

・・・約束したのに・・・。

 

●

 

1人取り残された真衣は唇を噛みしめ、涙を流した。

 

「・・・2人とも嘘つき・・・。大っ嫌い・・・」

 

京都姉妹交流会 団体戦

 

禪院真衣

      ーリタイア

釘崎野薔薇




じゅじゅさんぽ

深夜の1時

ぐぅ~・・・

三輪(お腹減ったなぁ・・・確か冷蔵庫に・・・昼に残した枝豆が・・・)

食堂には清孝、ラバック、真衣、西宮の先約が。しかも、その枝豆を食している。

4人「ん?」

三輪(えぇ~・・・)

西宮「もぐもぐ・・・ごめん」

三輪「もう少し申し訳なさそうにしてくださいよ」

清孝「んだぁ?腹減ってんのかぁ?軽くなんか作ってやろうか?」

女子「それだけは勘弁して!!!!」

ラバック「お前の料理洒落になってねぇんだよ!!!東堂ですら気絶する特級呪物レベルだぜ!!?」

清孝「んだとコラァ!!!」

西宮「はぁ・・・しょうがない。ほら、これで勘弁ね」

差し出されたのはカップラーメンシーフード味。

三輪「いやー・・・さすがに深夜のカップラーメンは・・・」

西宮「ふっふっふ・・・これならどう?」

西宮流カップラーメンシーフードアレンジ!

1、鷹の爪をハサミで細かく切り、カップラーメンシーフードに。

2、牛乳は容器の半分くらい

3、熱湯は内側の線まで(牛乳の分、お湯はぐつぐつしたもので)

3分待って完成。いざ試食

三輪「(う、うまい!)
   すごいおいしいですよこれ!」

西宮「でっしょー?」

真衣「私も今度やろうかしら?」

清孝「俺もなんかアレンジ考えるか」

ラバック「お前はアレンジするな絶対に」

三輪「こんなにおいしいなら、こっちを食べればよかったのに」

西宮「いやー、さすがに深夜のラーメンは翌日に響く」

真衣「うんうん」

清孝「おまけに健康に悪い。血圧に糖質が蓄積されんぞ」

ラバック「・・・ごめんね、霞ちゃん」

三輪「・・・・・・」

完
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